特開2019-221097(P2019-221097A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧
特開2019-221097電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム
<>
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000006
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000007
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000008
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000009
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000010
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000011
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000012
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000013
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000014
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000015
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000016
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000017
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000018
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000019
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000020
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000021
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000022
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000023
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000024
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000025
  • 特開2019221097-電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム 図000026
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-221097(P2019-221097A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20191129BHJP
【FI】
   H02J13/00 301D
   H02J13/00 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-118424(P2018-118424)
(22)【出願日】2018年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】桐原 健太
(72)【発明者】
【氏名】坪田 亮
(72)【発明者】
【氏名】小海 裕
(72)【発明者】
【氏名】戸邊 澄人
(72)【発明者】
【氏名】谷津 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】堀井 博夫
【テーマコード(参考)】
5G064
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064BA02
5G064BA03
5G064BA09
5G064CB08
5G064CB17
5G064DA03
(57)【要約】
【課題】電力系統の安定化を図るため、電力系統の運用者に対しリアルタイムで発生する不安定振動の発生源と特定された発生源の保証テスト結果を提示する電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システムを提供する。
【解決手段】計測対象の計測データと、前記計測データの周波数成分を算出するための周波数特定パラメータとを入力として、振動周波数を算出する多信号周波数特定部と、算出された振動周波数を入力として、電力系統に発生した不安定振動の発生源候補を算出する発生源候補算出部と、発生源候補の保証テスト結果を算出する発生源保証テスト部と、振動周波数と発生源候補と保証テスト結果を表示する表示部とを備えることを特徴とする電力系統運用支援装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象の計測データと、前記計測データの周波数成分を算出するための周波数特定パラメータとを入力として、振動周波数を算出する多信号周波数特定部と、
算出された振動周波数を入力として、電力系統に発生した不安定振動の発生源候補を算出する発生源候補算出部と、
前記発生源候補の保証テスト結果を算出する発生源保証テスト部と、
前記振動周波数と前記発生源候補と前記保証テスト結果を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする電力系統運用支援装置。
【請求項2】
前記多信号周波数特定部は、前記計測データの相関性に基づいてグルーピングした計測データグループを作成し、前記計測データグループの周波数成分を算出し、主要周波数成分をスクリーニングして前記振動周波数を算出することを特徴とする請求項1に記載の電力系統運用支援装置。
【請求項3】
前記多信号周波数特定部は、プローニ解析、フーリエ解析、またはウェーブレット解析のうち少なくともいずれか1つを用いて周波数成分を算出することを特徴とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力系系統運用支援装置。
【請求項4】
前記発生源候補算出部は、前記計測データと前記振動周波数を入力として、周波数領域内で加速エネルギーを算出し、その大きさによって発生源候補を算出することを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電力系統運用支援装置。
【請求項5】
前記発生源保証テスト部は、算出された発生源候補と系統トポロジーデータと系統モデルと保証テストパラメータとを入力として、前記発生源候補の保証テスト結果を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電力系統運用支援装置。
【請求項6】
前記保証テストパラメータは、発生源の周波数成分を算出するモードクラスタリングテストと、シミュレーションで不安定振動を再現するシミュレーション再現テストと、不安定振動の伝播から発生源を求めるトラベリングウェーブテストのうち少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電力系統運用支援装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電力系統運用支援装置と、
前記計測対象の計測データを取得する計測器と、
前記発生源候補と、前記保証テスト結果と、前記計測対象に対する制御指令を作成するための制御パラメータと、前記計測データを入力として、前記制御指令を作成する制御指令作成装置と、
前記制御指令を入力として、制御を実行する計測対象と、
を備えることを特徴とする振動抑制システム。
【請求項8】
前記計測器は、前記制御指令に基づいて実行した制御が有効であるか否かを測定し、
前記制御指令作成装置は、
制御が有効であると判断された場合は、追加の制御指令を作成し、
制御が有効でないと判断された場合は、制御上限に達していない場合は代案の制御指令を作成し、制御上限に達した場合は前記電力系統運用支援装置にアラームを出力することを特徴とする請求項7または8に記載の振動抑制システム。
【請求項9】
前記制御パラメータは、振動を抑制するための制御ルール、他の制御指令を作成するためのルール、または前記他の制御指令を作成できる回数の少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項7または8に記載の振動抑制システム。
【請求項10】
計測対象の計測データと、前記計測データの周波数成分を算出するための周波数特定パラメータとを入力として、振動周波数を算出するステップと、
算出された振動周波数を入力として、電力系統に発生した不安定振動の発生源候補を算出するステップと、
前記発生源候補の保証テスト結果を算出するステップと、
前記振動周波数と前記発生源候補と前記保証テスト結果を表示するステップと、
を備えることを特徴とする電力系統運用支援方法。
【請求項11】
前記計測対象の計測データを取得するステップと、
請求項10に記載の電力系統運用支援方法で算出された前記発生源候補および前記保証テスト結果と、前記計測対象に対する制御指令を作成するための制御パラメータと、前記計測データとを入力として、前記制御指令を作成するステップと、
前記制御指令を入力として、制御を実行するステップと、
を備えることを特徴とする振動抑制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統においては、再生可能エネルギーの導入や設備の老朽化などによる電力系統の複雑化が進んでいる。そのため、電力系統の安定化が困難になり、電力系統の不安定振動が発生している。この不安定振動は電力系統の停電を誘発してしまう可能性があるため、発生源を特定し制御することで電力系統を安定化する必要がある。しかし、不安定振動は電力系統の複数個所に影響を及ぼすため、発生源の特定が困難である。
【0003】
本発明に関する技術分野の背景技術として、以下の技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、その課題として「電力系統の複雑化が進む中、設備導入がされず、既存の設備を最大限に活用して安定供給をするアプリケーションが不足している(訳)」と記述されている。その解決手段として、「過去に発生した不安定事象の、フェーザデータ、トポロジーデータ、イベントのログ、プロテクションセッティング、を入力として振動安定度解析を用いて不安定振動の発生源をオフラインで推定する。この結果を用いて、保護制御方法の見直し、運用方法の提案をする(訳)」と記述されている。
【0005】
また、非特許文献1には、「計測データから、フーリエ解析で振動周波数を特定し、振動周波数領域での発電機や負荷のエネルギーを推定し、不安定振動の発生源を特定する手法(訳)」と記述されている。
【0006】
また、非特許文献2には、「不安定振動の発生源候補を算出する手法を用いた上で、(i)発生源分離後に不安定振動の継続を確認する(ii)発電所内のデータを用いて確認をする、などで不安定振動発生源のライブラリを作成する。不安定振動ライブラリを用いることで、発生源を特定する(訳)」と記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0282508号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S. Maslennikov, Bin Wang, Eugene Litvinov, “Locating the Source of Sustained Oscillations by Using PMU measurements,” IEEE Power and Energy Society General Meeting, 2017
【非特許文献2】Bin Wang, Kai Sun, “Location methods of oscillation sources in power systems: a survey”, 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、不安定振動の過去データなどを用いて、オフライン解析で不安定振動の発生源を特定する。しかし、オフライン解析で不安定振動の発生源を特定していることを対象としているため、オンラインで発生している未知の不安定事象の発生源を特定することができない。
【0010】
非特許文献1では、フーリエ解析で算出した振動周波数領域においての発電機や負荷エネルギーを推定し、不安定振動の発生源を特定するため、リアルタイムの発生源特定が可能である。しかし、フーリエ解析を用いた周波数特定は、不安定振動発生後から大きな解析窓を必要とするため、発生源特定までの時間を要する。その間、電力系統の不安定振動が悪化し、停電を誘発してしまう可能性が考えられる。
【0011】
非特許文献2では、不安定振動の発生源候補を算出し、不安定振動の抑制度を運用者が判断することで発生源候補の評価をしている。しかし、このような手法では、実際の操作を行うまで評価ができず、結果として無駄な操作をしてしまう可能性がある。そのため算出された発生源の保証テストをし、その結果を運用者に提示することでより正確に判断する必要がある。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、リアルタイムで発生する不安定振動の発生源と特定された発生源の保証テスト結果を提示する系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の一つは、「計測対象の計測データと、前記計測データの周波数成分を算出するための周波数特定パラメータとを入力として、振動周波数を算出する多信号周波数特定部と、算出された振動周波数を入力として、電力系統に発生した不安定振動の発生源候補を算出する発生源候補算出部と、発生源候補の保証テスト結果を算出する発生源保証テスト部と、振動周波数と発生源候補と保証テスト結果を表示する表示部とを備えることを特徴とする電力系統運用支援装置。」としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電力系統の運用者に対し運用支援ができる電力系統運用支援装置および方法、並びに振動抑制システムを提供することができる。
【0015】
より具体的には、本発明の一実施例によれば、多信号周波数特定部と発生源特定部の発生源保証テストを用いることにより、運用者に高速に不安定振動の発生源と保証テスト結果を提示でき、運用者が不安定振動を抑制する支援ができる。
【0016】
上記以外の課題、構成及び効果は実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1における電力系統運用支援装置の全体構成例を示す図。
図2】実施例1における電力系統運用支援装置のハード構成と電力系統の構成例を示す図。
図3】計測データデータベースに蓄えられる計測データの一例を示す図。
図4】系統トポロジーデータの一例を示す図。
図5】系統モデルデータの一例を示す図。
図6】系統運用支援装置の処理全体を記す処理フローの例を示す図。
図7】多信号周波数特定部における処理フローの例を示す図。
図8】多信号周波数特定部におけるグルーピングの例を示す図。
図9】多信号周波数特定部における周波数成分算出の例を示す図。
図10】多信号周波数特定部における主要周波数成分スクリーニングの例を示す図。
図11】発生源候補算出部における処理フローの例を示す図。
図12】発生源候補算出部における周波数領域の加速エネルギーを算出する例を示す図。
図13】発生源候補算出部における加速エネルギーの優劣から発生源候補を算出する例を示す図。
図14】発生源候補の例を示す図。
図15】発生源保証テストにおける処理フローの例を示す図。
図16】発生源保証テストにおける保証テスト結果の例を示す図。
図17】発生源保証テストにおける保証テストの一例であるモードクラスタリングテストの原理説明図。
図18】発生源保証テストにおける保証テストの一例であるシミュレーション再現テストの原理説明図。
図19】表示画面の例を示す図。
図20】実施例2における振動抑制システム20の全体構成例を示す図。
図21】実施例2における振動抑制システム20の処理フリーの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について、図面を用いて詳細に説明する。下記はあくまでも実施の例に過ぎず、下記具体的内容に発明自体が限定されることを意図するものではない。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例に係る電力系統運用支援装置および方法を説明するために、実施例1を用いる。実施例1は、電力系統運用支援装置を電力系統の安定化運用に適用した事例を示している。
【0020】
図1図2を用いて、実施例1に係る電力系統運用支援装置1の全体構成を説明する。
【0021】
図1は、実施例1に係る電力系統運用支援装置1の全体構成例を示す図である。電力系統運用支援装置1は計算機システムで構成されることになるが、図1では、電力系統運用支援装置1が保有するデータベースDBと内部における処理機能をブロック化して示している。
【0022】
電力系統運用支援装置1は、データベースDBとして、計測データデータベースDB1、周波数特定パラメータデータベースDB2、系統トポロジーデータデータベースDB3、系統モデルデータベースDB4、保証テストパラメータデータベースDB5、振動周波数データベースDB6、発生源候補データベースDB7、保証テスト結果データベースDB8を備える。
【0023】
電力系統運用支援装置1は、処理機能として、多信号周波数特定部2、発生源候補算出部3、発生源保証テスト部4、表示部5を備える。必要に応じて適宜他のデータベース及び処理機能を備えるようにしても良い。
【0024】
計測データベースDB1は、計測データD1を格納する。図3は、計測データD1の一例を説明する図である。電力系統12の計測対象からの計測データD1として、例えば時刻D11、測定値D12、測定情報D13などがある。これらは、電力系統12の複数地点にある計測対象から収集されたものであってもよく、後述する計測器10に関する様々な情報を含んでもよい。これらの情報は、計測器10の導入日、平均誤差、メーカー、タイプ、製造番号、商品番号、稼働時間、稼働率、などであってもよい。
【0025】
周波数特定パラメータデータベースDB2は、周波数特定パラメータD2を格納する。周波数特定パラメータD2は、後述する処理ステップS102で用いる欠損補完方法の定義、処理ステップS103で用いる相関係数の閾値、処理ステップS104で周波数成分を算出する手法、処理ステップS105で用いるスクリーニングの閾値などを含む。
【0026】
系統トポロジーデータデータベースDB3は、系統トポロジーデータD3を格納する。図4は、系統トポロジーデータD3の一例を説明する図である。系統トポロジーデータD3は、電力系統12の各種装置、機器などの接続状態を表すものである。例えば、電力系統の母線B、送電線L、発電機G、負荷Ld、STATCOM、SVR、などの繋がりを示す。系統トポロジーデータD3は、電力系統内で把握できる機器情報をできるだけ把握するために使われる。
【0027】
系統モデルデータベースDB4は、系統モデルデータD4を格納する。図5は、系統モデルデータD4の一例を説明する図である。系統モデルデータD4は、電力系統12の解析を行うために必要な電力系統のパラメータなどを保有する。電力系統のパラメータとは、例えば、電力系統内にある発電機のモデル、送電線のモデル、負荷のモデルなどであってもよい。
【0028】
保証テストパラメータデータベースDB5は、保証テストパラメータD5を格納する。保証テストパラメータD5は、保証テストをするためのテストケース一覧とテストの種類を含む。テストの種類につては後述する。
【0029】
振動周波数データベースDB6は、振動周波数D6を格納する。振動周波数D6は、電力系統の不安定事象の周波数である。
【0030】
発生源候補データベースDB7は、発生源候補D7を格納する。発生源候補D7は、算出された振動周波数領域およびその領域の発生源候補を示す。
【0031】
保証テスト結果データベースDB8は、保証テスト結果を格納する。
【0032】
多信号周波数特定部2は、計測データベースDB1と周波数特定パラメータデータベースDB2のデータを入力とし、振動周波数データベースDB6を形成する。
【0033】
発生源候補算出部3は、振動周波数データベースDB6のデータを入力とし、発生源候補データベースDB7を形成する。
【0034】
発生源保証テスト部4は、振動周波数データベースDB6と系統トポロジーデータベースDB3と系統モデルデータベースDB4と保証テストパラメータDB5のデータを入力とし、発生源候補データベースDB7を形成する。
【0035】
表示部5は、振動周波数データベースDB6と発生源候補データベースDB7と保証テスト結果データベースDB8を入力とし、支援情報として表示する。
【0036】
図2は、実施例1における系統運用支援装置1のハード構成と電力系統12の構成例を示す図である。
【0037】
図1では、系統運用支援装置1をデータベースDBと、処理機能の観点から記述しているが、図2ではハード構成の観点で記述している。ハード構成で記述した場合には、系統運用支援装置1は、データベースDB、メモリH1、通信部H2,入力部H3,CPU91、表示部5、並びに複数のプログラムデータベース、これらを接続するバスH4とを備える。データベースDBの構成は図1と同様である。
【0038】
プログラムデータベースとして、多信号周波数特定プログラムデータベース2、発生源候補算出プログラムデータベース3、発生源保証テストプログラムデータベース4を備える。
【0039】
多信号周波数特定プログラムデータベース2は多信号の計測データから、不安定な振動を特定するためのシーケンスを格納する。発生源候補算出プログラムデータベース3は、不安定振動の振動周波数を基に、振動の発生源を特定するためのシーケンスを格納する。発生源保証テストプログラムデータベース4は、特定された発生源を保証するためのテストシーケンス、および評価方法を格納する。
【0040】
入力部H3は、例えば、キーボードスイッチ、マウス等のポインティング装置、タッチパネル、タブレット、カメラなどを用いた目線推定装置、脳波変換装置、音声指示装置等の少なくともいずれか一つを備えて構成されるが、これに限られず、他のユーザーインターフェースであってもよい。
【0041】
通信部H2は、通信ネットワーク11に接続するための回路及び通信プロトコルを備える。
【0042】
メモリH1は、例えば、RAM(Random Access Memory)として構成され、各プログラムデータベース2、3から読み出されたコンピュータプログラムを記憶したり、各処理に必要な計算結果データ及び画像データ等を記憶したりする。メモリH1は、計測データデータベースDB1、表示用の画像データ、計算結果データ等の計算一時データ及び計算結果データなどを一旦格納するメモリである。演算処理においては、メモリH1の物理メモリを使用するが、仮想メモリを使ってもよい。
【0043】
表示部5は、メモリH1に格納されたデータに基づいて送られた画像データを表示する。表示部5は、例えばディスプレイやプリンタ装置や音声出力装置、または携帯端末やウェアラブルの一つ以上として構成される。
【0044】
CPU91は、各プログラムデータベース(2、3、4)からメモリH1に読み出された所定のコンピュータプログラムを読み込んで実行し、各種データベース(DB1からDB8)内のデータの検索等などを演算処理する。CPU91は、一つまたは複数の半導体チップとして構成してもよいし、または、計算サーバのようなコンピュータ装置として構成してもよい。
【0045】
図2に例示する電力系統12には、計測器10aや計測器10bが含まれる(以下、計測器10と示す)。計測器10は、電力系統の各所における計測値を計測し、計測結果を、通信ネットワーク11を介して、系統運用支援装置1の通信部H2に送信する。系統運用支援装置1が受信した計測結果は一時的にメモリH1に保持され、その後計測データD1として計測データデータベースDB1に記憶保存される。
【0046】
ここで、計測器10の例としては、PMU(Phasor Measurement Units)やVT(Voltage Transfomer)やPT(Power Transfomer)やCT(Current Transfomer)やテレメータ(TM:Telemeter)などの電力系統に設置される計測機器や計測装置がある。また、計測器10は、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)などの電力系統に設置される計測値の集約装置であってもよい。
【0047】
次に、実施例1における系統運用装置1の処理フローを説明する。
【0048】
図6は、系統運用支援装置1の処理全体を記す処理フローの例である。処理ステップS1〜S4に沿って、内容を説明する。
【0049】
処理ステップS1では、計測データD1から電力系統の振動周波数を算出する。図7乃至図10を用いて処理ステップS1を詳細に説明する。
【0050】
図7は、処理ステップS1の詳細な処理フローを説明する図である。処理ステップS101では、計測データD1と周波数特定パラメータD2を読み込む。処理ステップS102では、読み込んだ計測データD1の欠損値を補完する。処理ステップS103では、計測データD1の相関性からグルーピングする。処理ステップS104では、各計測データグループの周波数成分を算出する。処理ステップS105では、算出した主要周波数成分をスクリーニングし振動周波数を算出する。処理ステップS106では、処理ステップS105で算出した振動周波数を出力する。
【0051】
処理ステップS102では、一部のデータに欠損を補完する。計測データD1は、電力系統の通信網を介して収集されるデータのため、パケットロスが発生することが考えられるためである。これには、例えば、複数計測点を用いたマトリックス補完、複数計測点の重回帰補完モデルなどを用いてもよい。
【0052】
図8は、処理ステップS103の例を示す図である。計測データD1として、2つ以上の同じ種類の信号を計っているとする。本実施例では複数個所の有効電力Pを測定している場合の例を説明する。なお、グルーピングの対象として用いるデータは、例えば三相電圧のA相とB相のような単一測定器の異なる信号でもよく、複数の測定器の信号でもよい。
【0053】
計測された各信号間の相関係数rxyを相関係数算出式(1)を用いて算出する。
【0054】
【数1】
【0055】
式(1)の相関係数とは、信号Xと信号Y間の線形相関性を表すものである。ここで、
rxyとはXとYの相関係数(-1から1)、XiとYiは各信号のi個目のデータサンプルである。また、X、Y(いずれも式(1)中では上バー付)は各信号における平均値である。
【0056】
このように各信号間の相関係数を算出することにより、線形関係にある二つ以上の信号、すなわち共有の振動成分を持ち相関係数が高い組合せから信号グループを算出することができる。相関係数の高い組合せとは、例えば相関係数が0.8以上を示す。
【0057】
図9は、処理ステップS104の例を示す図である。まず、一つのグループとして認識された計測データD1の単一信号103aと単一信号103cを一つの信号として結合し、統合信号104aを算出する。次に、統合信号104aに対し、この周波数成分104bを算出する。本実施例では、プローニ解析を用いて算出しているが、解析手法はフーリエ解析やウェーブレット解析でも良い。これにより、短い解析窓においても、周波数成分を数理上算出可能になる。
【0058】
図10は、処理ステップS105のスクリーニングを説明する図である。図面上の円は周波数成分であり、円の大きさは信号処理上算出される周波数成分の強さである振幅を表す。処理ステップS105では、波数成分における振幅幅が小さいもの、また減衰率が高いものをスクリーニングで除外する。これはプローニ解析やフーリエ解析やウェーブレット解析などで算出される数理上の周波数成分や系統内で発生する、つまり計測データDB1には本来存在しない周波数成分が発生し、その後の処理影響を及ぼすのを阻止するためである。ここでスクリーニングされた周波数成分を振動周波数D6とする。
【0059】
図11乃至図14を用いて処理ステップS2を詳細に説明する。
【0060】
図11は、処理ステップS2の詳細な処理フローを説明する図である。処理ステップS201では計測データD1と、処理ステップS105で算出した振動周波数D6を読み込む。処理ステップS202では周波数フィルタを作成する。周波数フィルタとして、例えば特定周波数のみを対象とするバンドパスフィルタなどを用いる。処理ステップS203では各周波数領域における加速エネルギーを算出する。処理ステップS204では加速エネルギーの優劣により各周波数領域の発生源候補D7を算出する。処理ステップS205では、発生源候補D7を出力する。
【0061】
図12は、処理ステップS202と処理ステップS203の詳細説明をする図である。計測データD1の中に電力系統の有効電力P、無効電力Q、電圧V、位相θなどが蓄積されている場合、処理ステップS202では、これらを振動周波数に基づいたバンドパスフィルタを用いて各領域のエネルギーWを式(2)を用いて算出する。
【0062】
【数2】
【0063】
処理ステップS203では、上記の式で算出されたエネルギーの傾き203aと203b、すなわち加速エネルギーを、式(3)を用いて算出する。
【0064】
【数3】
【0065】
なお、式(2)及び式(3)については非特許文献1で説明されている。
【0066】
これにより、各不安定振動の周波数領域毎に、発生源を算出することができる。不安定振動の発生源は電力系統を不安定にする加速エネルギーを注入するため、これを算出することで不安定振動の発生源を特定できる。
【0067】
図13は、加速エネルギー203の例を示す図である。加速エネルギーは、各母線毎、または地域毎に算出される。ここで、正の値となるものは、電力系統にエネルギーを注入することになるため、発生源候補とみなす。正の値が複数ある場合は、電力系統の発生源は複数あるとみなし、その比率に基づいて発生源の影響度を算出する。
【0068】
図14は、発生源候補D7の一例を示す図である。発生源候補D7が複数ある場合は、貢献度の高いものを表示順、タグ、などで示すことで複数の発生源があることを強調する。
【0069】
処理ステップS3では、保証テストの結果を算出する。図15乃至図18を用いて処理ステップS3を詳細に説明する。
【0070】
図15は、処理ステップS3の詳細な処理フローを説明する図である。処理ステップS301では、発生源候補D7と系統トポロジーデータD3と系統モデルD4と保証テストパラメータD5とを読み込む。ステップS302では、保証テストの計算配分を算出する。処理ステップS303では保証テストパラメータで指定された保証テストを実施する。処理ステップS304では保証テスト結果を出力する。
【0071】
保証テストの種類には、例えば周波数成分を機械学習によって解析し、不安定振動の発生源の周波数成分を算出するモードクラスタリングテストや、シミュレーションで不安定振動を再現するシミュレーション再現テストや、不安定振動の伝播から発生源を求めるトラベリングウェーブテストなどがある。これらのテストは、別の発生源特定手段を用いた場合の結果との比較結果を算出するために行う。
【0072】
図16は、モードクラスタリングテストを説明する図である。計測データD1から得られた周波数成分を機械学習アルゴリズムによりクラスタリングし、各クラスター毎に位相が最も進んでいるものを発生源とみなす。これを発生源候補D7と比較する。
【0073】
図17は、シミュレーション再現テストの説明をする図である。このテストでは、発生源候補D6と系統モデルD4と系統トポロジーデータを用いることによって、電力系統の不安定振動を再現する。このシミュレーションで得られたシミュレーションデータを計測データD1と比較し、類似性を判断することで、発生源候補の保証テストを行う。
【0074】
図18は、保証テスト結果D8の一例を示す図である。図16で示すように、各テストの結果との比較結果が蓄積される。保証テスト結果D8は、不安定振動の発生源を異なる観点から追求することができるため、発生源候補が正しいという保証につながる。
【0075】
処理ステップS4では、算出した結果を表示部5に表示する。図19は、表示の具体例を示す図である。表示部5は、例えばコントロールセンター内の系統運用者が見るものである。表示部5には、振動周波数D6と発生源候補D7と保証テスト結果D8を表示するGUIまたは具備する。これらの情報は、電力系統図の上に表示されてもよく、ログとして表示されてもよく、表として表示されてもよく、地図上に表示されてもよい。
【0076】
以下、本実施例の効果について説明する。
【0077】
本実施例においては、振動周波数と発生源候補は多信号周波数特定部により高速性が担保される。これは、計測信号のグループを作成することにより、小さい解析窓でも周波数特定精度を維持できるからである。これにより、不安定振動が発生してから、計測データとして不安定振動の周波数を観測できるまでの時間が信号処理上短くなる。
【0078】
また、保証テスト結果を見ることでその発生源の正確性を判断でき、運用者が迅速に不安定振動を抑制することができる。
【0079】
また、発生源候補算出部3で算出した発生源候補を、発生源保証テスト部4で保証テストを実施することにより、不安定振動の発生源をより正確に特定することが出来る。
【0080】
また、表示部5を電力系統運用者が確認した際、電力系統運用は現在発生している電力系統の不安定振動の振動周波数と、その発生源候補と、保証テスト結果を運用者が容易に確認することができる。
【実施例2】
【0081】
実施例2は、実施例1の電力系統運用支援装置1を、振動抑制システムに適用した場合の構成例である。
【0082】
図20は、振動抑制システム20の構成例を示す図である。振動抑制システム20は、電力系統運用支援装置1の各種出力と制御パラメータD9と計測データD1とを入力とし制御指令を作成する制御指令作成装置5と、制御指令を入力とし制御指令を実行する制御対象7(実施例1の計測対象に相当)と、制御対象7の計測データD1を取得する計測器10、を備えることを特徴とする。その他の図1の電力系統運用支援装置1と共通する説明は省略する。
【0083】
制御パラメータD9は、抑制用の制御ルール、制御の効果が不十分であった場合の代案制御指令を作成するためのルール、およびに代案制御指令を作成できる回数を含む。抑制用の制御指令を作成するためのルールと代案制御指令を作成するためのルールは、例えばデータテーブルであってもよく、ロジックを含むアルゴリズムであってもよい。
【0084】
図21は、本実施例の処理フローを説明する図である。
【0085】
処理ステップS2001では発生源候補と保証テスト結果と追加制御パラメータを読み込む。処理ステップS2002では発生源抑制の制御指令を作成する。処理ステップS2003では制御対象が制御指令を基に動作する。処理ステップS2004では計測器で制御効果を計測する。
【0086】
処理ステップS2005では制御が有効であるか否かを評価する。例えば評価方法として、動揺の減衰効果を評価する。処理ステップS2005の結果がYESの場合、すなわち制御が有効であると判断された処理ステップS2006に移行する。処理ステップS2006では、追加制御パラメータに基づき追加制御指令を作成する。処理ステップS2007では追加制御指令を実施し、終了する。
【0087】
処理ステップS2005の結果がNOであった場合には、処理ステップS2008に移行する。処理ステップS2008では、制御上限(追加制御パラメータD9に蓄積されているデータ)に達しているかを確認し、YESの場合は処理ステップS2011へ、NOの場合は処理ステップS2009へ移行する。処理ステップS2009では、追加制御パラメータ(代案制御指令を作成するためのルール)に基づき代案制御指令を作成する。処理ステップS2010では代案制御指令を実施し、処理ステップS2004へ戻る。処理ステップS2011では、アラームを電力系統運用支援装置に送信する。
【0088】
本実施例の効果について説明する。電力系統運用支援装置1で特定された発生源および保証テストでは、確実な発生源が特定されているとは限らない。そのため、一度の制御でその発生源を遮断し、振動を抑制することにリスクがある。そこで、本実施例では、まず想定される発生源を制御し、その結果に基づき制御対象を変更するか、または同じ制御対象で追加制御をするかを判断する。振動抑制用の制御が有効である場合、同じ制御対象で追加制御をすることで、早急な振動抑制を可能とする。また、初期の振動抑制用の制御が効果的でない場合には、別の発生源候補に対して制御指令を作成する。どの制御指令を用いても効果がない場合には、アラームをあげることにより、異常事態を電力系統運用者と電力系統運用装置1に知らせることができる。これにより、不安定振動の発生源に対してより迅速に対処することが出来る。
【符号の説明】
【0089】
1:電力系統運用支援装置
2:多信号周波数特定部
3:発生源候補算出部
4:発生源保証テスト部
5:表示部
6:制御指令作成装置
7:制御対象
10:計測器
11:通信ネットワーク
12:電力系統
91:CPU
DB1:計測データデータベース
DB2:周波数特定パラメータデータベース
DB3:系統トポロジーデータベース
DB4:系統モデルデータベース
DB5:保証テストパラメータデータベース
DB6:振動周波数データベース
DB7:発生源候補データベース
DB8:保証テスト結果データベース
DB9:追加制御パラメータデータベース
DB10:アラーム
H1:メモリ
H2:通信部
H3:入力部
H4:バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21