【解決手段】コイル32の内側コイルエンド部34は、軸線方向Daから見て、軸線方向Daで隣接する他のコイル32の内側コイルエンド部34と重なる位置に、他のコイル32の内側コイルエンド部34を軸線方向Daから収容可能な内側切欠き部37A,37Bを備える。コイル32の外側コイルエンド部35は、軸線方向Daから見て、軸線方向Daで隣接する他のコイル32の外側コイルエンド部35と重なる位置に、他のコイル32の外側コイルエンド部35を軸線方向Daから収容可能な外側切欠き部38A,38Bを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコイルのように、帯状の線材を渦巻き状に巻回する場合、コイルエンドが大型化するため分布巻きにすることが困難になる場合がある。また、特許文献1のように帯状の線材を渦巻き状に巻回したコイルや、複数の細い導線を束ねたリッツ線などの線材により形成されたコイルは、導体の占積率が低くなるためコイル及び回転電機が大型化してしまう場合がある。
【0005】
特許文献2のモータは、駆動するために高電圧・大電流が必要となる。そのため、大型の変圧器が必要となり、システム全体が大型化してしまうという課題がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、小型化を図り商品性を向上可能なコイル、回転電機、回転電機システム及び永久磁石の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一態様によれば、コイルは、軸線方向に複数が重ねて配置されて軸線回りの位相が互いに異なるように配置されたコイルである。コイルは、内側コイルエンド部と、外側コイルエンド部と、コイルスロット部と、を備えている。内側コイルエンド部は、前記軸線を中心とした周方向に延びている。外側コイルエンド部は、前記軸線を中心とした径方向で前記内側コイルエンド部よりも外側に配置されて前記周方向に延びている。コイルスロット部は、前記径方向に延びて前記周方向における前記内側コイルエンド部の端部と前記外側コイルエンド部の端部とを電気的に接続する。前記内側コイルエンド部は、前記軸線方向から見て、前記軸線方向で隣接する他のコイルの内側コイルエンド部と重なる位置に、前記他のコイルの内側コイルエンド部を前記軸線方向から収容可能な内側切欠き部を備えている。前記外側コイルエンド部は、前記軸線方向から見て、前記軸線方向で隣接する他のコイルの外側コイルエンド部と重なる位置に、前記他のコイルの外側コイルエンド部を前記軸線方向から収容可能な外側切欠き部を備えている。
【0007】
この第一態様では、内側コイルエンド部に内側切欠き部を備え、外側コイルエンド部に外側切欠き部を備えている。そのため、軸線方向に複数のコイルを重ねて配置して、これらコイルの軸線回りの位相が互いに異なるように配置した場合に、軸線方向で隣接する他のコイルの内側コイルエンド部を内側切欠き部に収容するとともに、軸線方向で隣接する他のコイルの外側コイルエンド部を外側切欠き部に収容することができる。ここで、他のコイルにも内側切欠き部と外側切欠き部とが形成されているため、軸線方向で複数のコイルを重ねた際に、隣接するコイルの内側切欠き部同士及び外側切欠き部同士が互いを収容し合う状態にすることができる。そのため、複数のコイルを重ねたコイル組立体の軸線方向の寸法を短くすることができる。
また、内側切欠き部や外側切欠き部が配置される箇所には、積層板部が配置されないため、内側切欠き部や外側切欠き部の導体の占積率が低下することを抑制できる。
したがって、渦電流損を低減しつつコイルエンドの小型化を図ることが可能となる。
【0008】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る内側コイルエンド部は、第一の内側切欠き部と、第二の内側切欠き部と、を備えていてもよい。第一の内側切欠き部は、前記軸線方向の一方に隣接する他の第一のコイルの内側コイルエンド部と重なる位置に設けられている。第一の内側切欠き部は、前記第一のコイルの内側コイルエンド部を前記軸線方向の一方から収容可能に形成されている。第二の内側切欠き部は、前記軸線方向の他方に隣接する他の第二のコイルの内側コイルエンド部と重なる位置に設けられている。第二の内側切欠き部は、前記第二のコイルの内側コイルエンド部を前記軸線方向の他方から収容可能に形成されている。
この第二態様では、内側コイルエンド部に第一の内側切欠き部と第二の内側切欠き部とを備えている。そのため、軸線方向の一方に他の第一のコイルを重ねて配置し、軸線方向の他方に他の第二のコイルを重ねて配置した場合に、他の第一のコイルの内側コイルエンド部を第一の内側切欠き部に収容することができる。同様に、他の第二のコイルの内側コイルエンド部を第二の内側切欠き部に収容することができる。そのため、複数のコイルを重ねたコイル組立体の内側コイルエンド部側における軸線方向の寸法を短くすることができる。
【0009】
この発明の第三態様によれば、第一又は第二態様に係る外側コイルエンド部は、第一の外側切欠き部と、第二の外側切欠き部とを備えていてもよい。第一の外側切欠き部は、前記軸線方向の一方に隣接する他の第一のコイルの外側コイルエンド部と重なる位置に設けられている。第一の外側切欠き部は、前記第一のコイルの外側コイルエンド部を前記軸線方向の一方から収容可能に形成されている。第二の外側切欠き部は、前記軸線方向の他方に隣接する他の第二のコイルの外側コイルエンド部と重なる位置に設けられている。第二の外側切欠き部は、前記第二のコイルの外側コイルエンド部を前記軸線方向の他方から収容可能に形成されている。
この第三態様では、外側コイルエンド部に第一の外側切欠き部と第二の外側切欠き部とを備えている。そのため、軸線方向の一方に他の第一のコイルを重ねて配置し、軸線方向の他方に他の第二のコイルを重ねて配置した場合に、他の第一のコイルの外側コイルエンド部を第一の外側切欠き部に収容することができる。同様に、他の第二のコイルの外側コイルエンド部を第二の外側切欠き部に収容することができる。そのため、複数のコイルを重ねたコイル組立体の外側コイルエンド部側における軸線方向の寸法を短くすることができる。
【0010】
この発明の第四態様によれば、第一から第三態様の何れか一つの態様に係るコイルスロット部は、前記軸線と交差する方向に複数積層されて、前記コイルスロット部を流れる電流の周波数に対する表皮深さよりも前記積層される方向の厚さが小さい積層板部を備えていてもよい。
この第三態様では、コイルスロット部に、軸線と交差する方向に複数積層された積層板部を備えている。軸線方向で隣接する他のコイルの位相が異なり、且つコアレスである場合等において、コイルスロット部には、軸線方向で隣接するコイルで発生した磁束が軸線方向に鎖交し易い。しかし、コイルスロット部には、コイルスロット部を流れる電流の周波数に対する表皮深さよりも積層される方向の厚さが小さく形成された積層板部が設けられている。これにより、積層板部が積層される方向に電流が流れ難くなっている。そのため、他のコイルによって発生させた磁束がコイルスロット部に対して軸線方向で鎖交したとしても、積層板部の積層された方向に渦電流が発生することを抑制できる。
【0011】
この発明の第五態様によれば、第一から第四態様の何れか一つの態様に係る積層板部は、前記コイルスロット部の延びる方向と同一方向に延びていてもよい。
第五態様のように構成することで、渦電流の発生を抑制しつつコイルスロット部の剛性低下も抑制できる。
【0012】
この発明の第六態様によれば、第一から第五態様の何れか一つの態様に係る内側切欠き部は、前記内側コイルエンド部のうち前記内側切欠き部が形成されていない箇所における前記軸線方向の寸法の半分以上の深さ寸法を有するようにしてもよい。前記外側切欠き部は、前記外側コイルエンド部のうち前記外側切欠き部が形成されていない箇所における前記軸線方向の寸法の半分以上の深さ寸法を有するようにしてもよい。
この第三態様では、内側切欠き部は、内側切欠き部が形成されていない箇所における内側コイルエンド部の軸線方向の寸法の半分以上の深さ寸法を有し、外側切欠き部は、外側切欠き部が形成されていない箇所における外側コイルエンド部の軸線方向の寸法の半分以上の深さを有する。そのため、軸線方向で複数のコイルを重ねて、隣接するコイルの内側切欠き部同士が互いを収容し合う状態とし、隣接するコイルの外側切欠き部同士が互いを収容し合う状態にすると、コイル組立体の軸線方向の寸法が一つのコイルの軸線方向の寸法と同等になる。
したがって、分布巻にした場合に、コイルエンドを小型化することが可能となる。
【0013】
この発明の第七態様によれば、第一から第六態様の何れか一つの態様に係る回転電機は、互いに独立した複数の磁性材が絶縁材を介して重ね合わされた線材を備え、前記線材は、前記軸線を中心とした周方向で複数回巻き回された状態とされていてもよい。
このようにすることで、隣り合う磁性材が絶縁材によって電気的に絶縁されるため、渦電流損をより一層低減し、発熱や効率低下を抑制できる。さらに、電流密度が大きくなることを抑制できるため、ジュール熱による発熱も抑制することができる。
【0014】
この発明の第八態様によれば、回転電機は、互いに独立した複数の磁性材が絶縁材を介して重ね合わされた線材を備え、前記線材は、前記軸線を中心とした周方向で複数回巻き回された状態とされている。
【0015】
この発明の第九態様によれば、回転電機は、アキシャルギャップ型の回転電機である。回転電機は、ステータと、ケーシングと、ロータと、回転軸と、を備えている。ステータは、軸線方向に重なるとともに軸線回りの位相が互いに異なる第一態様から第七態様の何れか一つの態様に係る複数のコイルを備える。ケーシングは、軸線を中心とした径方向の外側からステータを覆っている。ロータは、永久磁石を有している。ロータは、軸線方向で複数のコイルと対向するように配置されている。回転軸は、ケーシングに支持されてロータと共に軸線回りに回転可能となっている。
第九態様のように構成することで、渦電流損を低減しつつ小型化を図ることができるため、高速回転させた際の効率向上を図ることができる。
【0016】
この発明の第十態様によれば、第九態様に係る前記ケーシングは、冷媒が流れる冷媒流路を内部に備え、前記ステータの外側コイルエンドの少なくとも一部は、前記冷媒流路の内部に配置されていてもよい。
この第十態様のように構成することで、コイルを冷媒によって直接的に冷却することができるため、冷却性能を向上することができる。したがって、コイルを空冷のみで冷却する場合と比較して、空気流路を小さくしたり、空気と接触するコイルの面積を小さくしたりすることができる。その結果、回転電機の小型化や軽量化を実現できる。
【0017】
この発明の第十一態様によれば、第九又は第十態様に係るステータ及びロータは、前記軸線方向に間隔をあけて複数段設けられていてもよい。
このようにステータ及びロータが軸線方向に間隔をあけて複数段設けられている場合、段数が多いほど小型化の効果が大きくなる。
【0018】
この発明の第十二態様によれば、第九から第十態様の何れか一つの態様に係るステータは、前記ケーシングに支持されるモールド部を備え、前記モールド部は、複合材料からなるようにしてもよい。
このように構成することで、モールド部の熱伝導、絶縁性、耐熱性の調整を容易に行うことができる。
【0019】
この発明の第十三態様によれば、第十二態様に係るモールド部は、前記コイルを軸線方向から覆うアキシャルモールド部を備え、前記アキシャルモールド部は、前記複数のコイルを収容する溝を有するようにしてもよい。
このように構成することで、コイルとモールド部との接触面積を向上できるため、コイルに対してモールド部をより強固に固定することができる。
【0020】
この発明の第十四態様によれば、第十三態様に係るアキシャルモールド部は、軸線を中心とした周方向に冷媒を流す周方向冷媒流路を備えるようにしてもよい。
このようにすることで、コイルを効率よく冷却することができる。
【0021】
この発明の第十五態様によれば、第九から第十四態様の何れか一つの態様に係る永久磁石は、前記軸線を中心とした周方向に並んで配置された複数の磁石ブロックを有し、前記軸線を中心としたリング状に形成されていてもよい。さらに、前記ロータは、トルク伝達部と、外側リング部とを備えていてもよい。トルク伝達部は、前記軸線を中心とした径方向の外側に向かって前記永久磁石を押圧するとともに、前記永久磁石に作用する前記軸線を中心とした回転方向へのトルクを前記回転軸へ伝達する。外側リング部は、前記永久磁石に遠心力が作用した際に、前記永久磁石が前記径方向の外側へ変位することを抑える。
このように構成することで、例えば、ロータが高速回転して、遠心力により永久磁石が径方向外側に変位や変形をしたとしても、トルク伝達部が永久磁石を径方向の外側に向かって押圧するため、永久磁石とトルク伝達部との間に隙間が形成されない。その結果、永久磁石から回転軸へのトルク伝達が阻害されることを抑制できる。
【0022】
この発明の第十六態様によれば、第十五態様に係るトルク伝達部は、キー部と、バネ部と、面接触部と、を備えていてもよい。キー部は、前記回転軸又は、前記回転軸の外周面に固定された内側リング部に形成されたキー溝内に配置され、前記径方向にスライド可能とされる。バネ部は、前記キー部を前記径方向の外側へ向かって付勢する。面接触部は、前記キー部により前記径方向の内側から押圧されて、前記永久磁石の内周面に全面が面接触する外側面を有している。
このように構成することで、面接触部が径方向の外側に向かって付勢されるので、永久磁石に遠心力が作用したとしても、面接触部の外側面の全面が永久磁石の内周面に面接触した状態を維持できる。
【0023】
この発明の第十七態様によれば、第十五態様に係るトルク伝達部は、弾性屈曲部と、面接触部と、を備えていてもよい。弾性屈曲部は、前記径方向に圧縮変形可能なU字状のバネ部を有している。面接触部は、前記弾性屈曲部により前記径方向の内側から押圧されて、前記永久磁石の内周面に全面が面接触する外側面を有している。
このように構成することで、面接触部が径方向の外側に向かって付勢されるので、永久磁石に遠心力が作用したとしても、面接触部の外側面の全面が永久磁石の内周面に面接触した状態を維持できる。さらに、遠心力によって永久磁石の内周面の角度が変化したとしても、U字状のバネ部が弾性変形することで、面接触部の外側面を内周面の角度変化に追従させることができる。したがって、永久磁石の内周面に面接触部の外周面の全面を面接触させて、永久磁石のトルクを効率よく内側リング部に伝達させることができる。
【0024】
この発明の第十八態様によれば、回転電機は、複数のコイルを有したステータと、永久磁石を有し前記複数のコイルと対向するように配置されたロータと、前記ロータと共に軸線回りに回転可能な回転軸と、を備えた回転電機である。前記永久磁石は、前記軸線を中心とした周方向に並んで配置された複数の磁石ブロックを有し、前記軸線を中心としたリング状に形成されている。前記ロータは、トルク伝達部と、外側リング部と、を備える。トルク伝達部は、前記軸線を中心とした径方向の外側に向かって前記永久磁石を押圧するとともに、前記永久磁石に作用する前記軸線を中心とした回転方向へのトルクを前記回転軸へ伝達する。外側リング部は、前記永久磁石に遠心力が作用した際に、前記永久磁石が前記径方向の外側へ変位することを抑える。
【0025】
この発明の第十九態様によれば、第十八態様に係るトルク伝達部は、キー部と、バネ部と、面接触部と、を備えていてもよい。キー部は、前記回転軸又は、前記回転軸の外周面に固定された内側リング部に形成されたキー溝内に配置され、前記径方向にスライド可能とされる。バネ部は、前記キー部を前記径方向の外側へ向かって付勢する。面接触部は、前記キー部により前記径方向の内側から押圧されて、前記永久磁石の内周面に全面が面接触する外側面を有している。
【0026】
この発明の第二十態様によれば、第十九態様に係るトルク伝達部は、弾性屈曲部と、面接触部と、を備えていてもよい。弾性屈曲部は、前記径方向に圧縮変形可能なU字状のバネ部を有している。面接触部は、前記弾性屈曲部により前記径方向の内側から押圧されて、前記永久磁石の内周面に全面が面接触する外側面を有している。
【0027】
この発明の第二十一態様によれば、回転電機システムは、第十一態様に係る回転電機を備える回転電機システムである。回転電機システムは、発電機により発電された電力を変換する電力変換器を備える。電力変換器は、コンバータと、インバータと、を備えている。コンバータは、複数の前記ステータのそれぞれに接続され、前記ステータの交流出力を直流変換する。インバータは、複数の前記コンバータのそれぞれに接続され、前記コンバータの直流出力を交流変換する。複数の前記インバータのうち、同相の交流出力を行う複数のインバータの出力端子がそれぞれ直列接続されている。
この第二十一態様のように構成することで、複数段設けられたステータ毎にコンバータによって直流変換された後にインバータによって交流変換される。同相の交流出力を行う複数のインバータの出力端子は、それぞれ直列接続されているため、インバータが直列接続された数の分だけ、高電圧化することができる。また、回転電機の回転数によらず、インバータによって所望の周波数の電力を得ることができる。
したがって、回転電機の出力を一つのコンバータやインバータによって電力変換したりする場合と比較して、定格電圧の低いコンバータやインバータを用いることができるため、部品コストを抑制できる。さらに、変圧器を用いずに、回転電機全体の出力電圧を分圧して取り出すことができるため、変圧器を省略して部品点数を低減することができる。
【0028】
この発明の第二十二態様によれば、第二十一態様に係るコンバータは、前記ステータのコイル毎に設けられ、一つの前記コイルから出力される単相の交流出力を直流変換するようにしてもよい。
この第二十二態様のように構成することで、回転電機の有するステータの段数に制限されることなく、所望の相数の交流出力を得ることができる。
【0029】
この発明の第二十三態様によれば、第二十一態様に係るコンバータは、前記ステータの各段に対して一つずつ設けられ、インバータは、前記ステータの各段から出力される多相の交流出力を直流変換するようにしてもよい。
この第二十三態様のように構成することで、ステータ毎にコンバータ及びインバータを設ければ良いため、回転電機が多数のステータを有する場合には、部品点数の増加を抑制できる。
【0030】
この発明の第二十四態様によれば、回転電機システムは、各相のコイルが複数の分割コイルからなる発電機と、発電機で発電された電力を変換する電力変換器とを備える。電力変換器は、コンバータと、インバータと、を備えている。コンバータは、前記分割コイルに対して一つずつ接続され、前記分割コイルの交流出力を直流変換する。インバータは、複数の前記コンバータのそれぞれに接続され、前記コンバータの直流出力を交流変換する。複数の前記インバータのうち、同相の交流出力を行う複数のインバータの出力端子は、それぞれ直列接続されている。
第二十四態様では、コイルの出力は、分割コイル毎にコンバータによって直流変換された後にインバータによって交流変換される。同相の交流出力を行う複数のインバータの出力端子は、それぞれ直列接続されているため、インバータが直列接続された数の分だけ、高電圧化することができる。また、回転電機の回転数によらず、インバータによって所望の周波数の電力を得ることができる。
【0031】
この発明の第二十五態様によれば、回転電機システムは、多相のコイルからなる層が複数層設けられた発電機と、発電機で発電された電力を変換する電力変換器と、を備える。電力変換器は、コンバータと、インバータと、を備えている。コンバータは、各層に対して一つずつ設けられ、各層の前記多相のコイルから出力される多相の交流出力を直流変換する。インバータは、複数の前記コンバータのそれぞれに接続され、前記コンバータの直流出力を交流変換する。複数の前記インバータのうち、同相の交流出力を行う複数のインバータの出力端子は、それぞれ直列接続されている。
第二十五態様では、コイルの出力は、多相のコイルからなる層毎にコンバータによって直流変換された後にインバータによって交流変換される。同相の交流出力を行う複数のインバータの出力端子は、それぞれ直列接続されているため、インバータが直列接続された数の分だけ、高電圧化することができる。また、回転電機の回転数によらず、インバータによって所望の周波数の電力を得ることができる。
【0032】
第二十四態様、第二十五態様によれば、回転電機の出力を一つのコンバータやインバータによって電力変換したりする場合と比較して、定格電圧の低いコンバータやインバータを用いることができるため、部品コストを抑制できる。さらに、変圧器を用いずに、回転電機全体の出力電圧を分圧して取り出すことができるため、変圧器を省略して部品点数を低減することができる。
【0033】
第二十六態様によれば、第九から第二十態様の何れか一つの態様に係る回転電機に用いる永久磁石の製造方法は、渦電流損の上限値及び磁石コストの上限値をそれぞれ設定し、前記渦電流損と前記永久磁石の分割数との関係、及び、前記磁石コストと前記永久磁石の分割数との関係に基づいて、前記渦電流損の上限値及び前記磁石コストの上限値を上回らない範囲で軸線を中心とした周方向又は径方向における永久磁石の分割数を決定する。
このようにすることで、回転電機の製品要求(効率、コスト)を満たすように、周方向と径方向との何れか一方における永久磁石の分割数を最適化することができる。
【0034】
第二十七態様によれば、第九から第二十態様の何れか一つの態様に係る回転電機に用いる永久磁石の製造方法は、渦電流損の上限値及び磁石コストの上限値をそれぞれ設定し、前記渦電流損と磁石アスペクト比との関係、及び、前記磁石コストと磁石アスペクト比との関係に基づいて、前記渦電流損の上限値及び前記磁石コストの上限値を上回らない範囲で前記永久磁石を構成する複数の磁石ブロックの磁石アスペクト比を決定する。
永久磁石を周方向及び径方向の両方に分割する場合に、回転電機の製品要求(効率、コスト)を満たすように、永久磁石の磁石ブロックの磁石アスペクト比を最適化することができる。
【0035】
第二十八態様によれば、永久磁石の製造方法は、回転電機に用いる永久磁石の製造方法であって、渦電流損の上限値及び磁石コストの上限値をそれぞれ設定し、前記渦電流損と前記永久磁石の分割数との関係、及び、前記磁石コストと前記永久磁石の分割数との関係に基づいて、前記渦電流損の上限値及び前記磁石コストの上限値を上回らない範囲で軸線を中心とした周方向又は径方向における永久磁石の分割数を決定する。
【0036】
第二十九態様によれば、永久磁石の製造方法は、回転電機に用いる永久磁石の製造方法であって、渦電流損の上限値及び磁石コストの上限値をそれぞれ設定し、前記渦電流損と磁石アスペクト比との関係、及び、前記磁石コストと磁石アスペクト比との関係に基づいて、前記渦電流損の上限値及び前記磁石コストの上限値を上回らない範囲で前記永久磁石を構成する複数の磁石ブロックの磁石アスペクト比を決定する。
【発明の効果】
【0037】
上記コイル、回転電機、回転電機システム及び永久磁石の製造方法によれば、小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、この発明の実施形態におけるコイル、回転電機及び回転電機システムを図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
この発明の第一実施形態における回転電機システムは、回転電機と電力変換器とを備えている。この第一実施形態の回転電機は、アキシャルギャップ型の発電機である。この第一実施形態の発電機は、例えば、風力発電や水力発電等で用いる交流発電機である。なお、回転電機は、発電電動機(モータジェネレータ)であっても良い。
【0040】
図1は、この発明の第一実施形態における発電機の概略構成を示す構成図である。
図1に示すように、この第一実施形態における発電機100は、回転軸10と、ロータ20と、ステータ30と、ケーシング40と、を備えている。
回転軸10は、ケーシング40に支持されて軸線a回りに回転可能になっている。回転軸10には、例えば、タービンや風車等の駆動源から回転エネルギーが入力される。なお、回転軸10は、冷却用の空気が通る中空な円筒状に形成しても良い。
【0041】
ロータ20は、回転軸10の外周面10aから軸線aを中心とした径方向Drの外側(以下、単に径方向外側Droと称する)に向かって延びている。すなわち、ロータ20は、回転軸10と共に軸線a回りに回転可能となっている。この第一実施形態で例示するロータ20は、軸線aを中心とした円盤状に形成され、その径方向Drの中央部に永久磁石(図示せず)を有している。この実施形態の発電機100では、軸線方向Daに間隔をあけて複数段のロータ20が設けられている。なお、ロータ20において永久磁石よりも径方向外側Droに配置される部分には、ロータ20回転時に作用する遠心力に対して補強を行う補強材を配置しても良い。
【0042】
ステータ30は、軸線方向Daで僅かな隙間を介してロータ20と対向するように配置されている。つまり、上述したロータ20と同様に、軸線方向Daに間隔をあけて複数段のステータ30が設けられている。この実施形態では、軸線方向Daに二つのロータ20を軸線方向Daの外側から二つのステータ30により挟み込むように配置されている。これらステータ30は、モールド部31を介してケーシング40に支持されている。ステータ30は、軸線方向Daに重なるとともに軸線a回りの位相が互いに異なる複数のコイル32(詳細は後述する)を備えている。これらコイル32は、いわゆるコアレス型のコイル32であり、これらコイル32と対向するように上述したロータ20の永久磁石が配置されている。
【0043】
ケーシング40は、径方向外側Droからステータ30及びロータ20を覆っている。この実施形態のケーシング40は、軸線方向Daの両端部が閉塞された円筒状、言い換えれば中空な円柱状に形成されている。ケーシング40は、更に、軸線方向Daの両端部に軸受41を有し、これら軸受41によって回転軸10を回転自在に支持している。
【0044】
図2は、この発明の第一実施形態におけるステータを軸線方向から見た図である。
図3は、この発明の第一実施形態における一相分のコイルを軸線方向から見た図である。
図2、
図3に示すように、この第一実施形態における一つのステータ30は、コイル32として、三相分のコイル32u,32v,32wを備えている。これら三相分のコイル32u,32v,32wは、例えば銅などの金属によってそれぞれ同一形状に形成されている。これら三相分のコイル32u,32v,32wは、軸線方向Da(
図2における紙面表裏方向)で重なるように配置されている。これら三相分のコイル32u,32v,32wは、軸線a回りの位相が互いに異なっている。この第一実施形態においては、それぞれ30度ずつ位相が異なっている。なお、コイル32u,32v,32wの表面には、絶縁性の被膜が形成され、コイル32u,32v,32wは互いに電気的に絶縁されている。なお、以下の説明において、コイル32u,32v,32wの相を区別する必要のない場合には、単にコイル32と総称する場合が有る。
【0045】
図3に示すように、一相分のコイル32は、軸線aを中心とした径方向外側Droに突出するように形成された四つの巻回部33を備えている。これら四つの巻回部33は、軸線aを中心とした周方向Dcで、90度毎に設けられている。なお、
図2,3において、図示都合上、コイル32の端部を省略しているが、コイル32は、周方向の両側にそれぞれ端部を有している。これら端部には、口出し線(図示せず)が接続されている。これら口出し線の端部には、後述する電力変換器が接続される。この実施形態におけるステータ30のコイル32の巻き方は、コアレスではあるが、複数のスロットに渡る分布巻であり、且つ波巻きとなっている。
【0046】
コイル32は、内側コイルエンド部34と、外側コイルエンド部35と、コイルスロット部36と、を備えている。
内側コイルエンド部34は、周方向Dcに延びている。内側コイルエンド部34は、コイル32における最も軸線aに近い位置に配置されている。この実施形態における内側コイルエンド部34は、四つ設けられ、周方向Dcに等間隔で配置されている。この実施形態で例示する内側コイルエンド部34は、軸線方向Daから見て、径方向内側Driに向かって凸となる曲線状に形成されている。内側コイルエンド部34は、内側コイルエンド部34の延びる方向に垂直な断面が矩形状に形成されている。
【0047】
外側コイルエンド部35は、内側コイルエンド部34よりも径方向外側Droに配置されている。外側コイルエンド部35は、周方向Dcに延びている。この実施形態における外側コイルエンド部35は、四つ設けられ、周方向Dcに等間隔で配置されている。外側コイルエンド部35の周方向第一側Dc1の端部35aは、径方向外側Droから見て、内側コイルエンド部34の周方向第二側Dc2の端部34bと重なるように配置されている。
【0048】
同様に、外側コイルエンド部35の周方向第二側Dc2の端部35bは、径方向外側Droから見て、内側コイルエンド部34の周方向第一側Dc1の端部34aと重なるように配置されている。この実施形態で例示する外側コイルエンド部35は、軸線方向Daから見て、周方向Dcの中央部に角部35cが配置されたL字状に形成されている。また、外側コイルエンド部35は、内側コイルエンド部34と同様に、外側コイルエンド部35の延びる方向に対して垂直な断面が矩形状になっている。なお、外側コイルエンド部35の断面形状は上記形状に限られない。
【0049】
コイルスロット部36は、径方向Drに延びて内側コイルエンド部34の端部34aと、外側コイルエンド部35の端部35bと、を電気的に接続するとともに、内側コイルエンド部34の端部34bと、外側コイルエンド部35の端部35aと、を電気的に接続する。この第一実施形態におけるコイルスロット部36は、径方向Drに直線状に延びている。
【0050】
図4は、この発明の第一実施形態におけるコイルの一つの巻回部を示す斜視図である。
図4に示すように、内側コイルエンド部34は、軸線方向Daから見て、軸線方向Daで隣接する他相のコイル32の内側コイルエンド部34と重なる位置(
図2参照)に、内側切欠き部37A(第一の内側切欠き部)及び内側切欠き部37B(第二の内側切欠き部)を備えている。ここで、他相のコイル32とは、
図4に示すコイル32がコイル32vの場合、コイル32u(他の第一のコイル)及びコイル32w(他の第二のコイル)(
図2参照)が相当する。
【0051】
内側切欠き部37A,37Bは、他相のコイル32の内側コイルエンド部34を軸線方向Daから収容する。この実施形態で例示する内側切欠き部37A,37Bは、他相のコイル32の内側コイルエンド部34の幅よりも僅かに大きい幅を有した角溝状に形成されている。内側切欠き部37A,37Bの深さ寸法d1は、内側コイルエンド部34のうち内側切欠き部37A,37Bが形成されていない箇所における軸線方向Daの寸法w1の半分以上になっている。この実施形態では、内側切欠き部37A,37Bの深さ寸法d1が軸線方向Daの寸法w1の半分の場合を例示している。
【0052】
外側コイルエンド部35は、内側コイルエンド部34と同様に、軸線方向Daから見て、軸線方向Daで隣接する他相のコイル32の外側コイルエンド部35と重なる位置(
図2参照)に、外側切欠き部38A(第一の外側切欠き部)及び外側切欠き部38B(第二の外側切欠き部)を備えている。外側切欠き部38A,38Bは、他相のコイル32の外側コイルエンド部35を軸線方向Daから収容する。この実施形態で例示する外側切欠き部38A,38Bも、上記内側切欠き部37A,37Bと同様に、他相のコイル32の外側コイルエンド部35の幅よりも僅かに大きい幅を有した角溝状に形成されている。外側切欠き部の深さ寸法d2は、内側コイルエンド部34のうち内側切欠き部37A,37Bが形成されていない箇所における軸線方向Daの寸法w2の半分以上になっている。この実施形態では、外側切欠き部の深さ寸法d2が軸線方向Daの寸法w2の半分の場合であり、且つ、寸法w1と寸法w2が等しい場合を例示している。
【0053】
例えば、コイル32vの巻回部33の場合、一つの巻回部33は、周方向第一側Dc1に、コイル32uの内側コイルエンド部34を収容する内側切欠き部37Aと、U相コイルの外側コイルエンド部35を収容する外側切欠き部38Aと、を備えている。その一方で、周方向第二側Dc2に、コイル32wの内側コイルエンド部34を収容する内側切欠き部37Bと、コイル32wの外側コイルエンド部35を収容する外側切欠き部38Bと、を備えている。
つまり、コイル32の一つの巻回部33には、内側コイルエンド部34と外側コイルエンド部35とが二つずつ形成されている。二つの内側切欠き部37A,37Bは、それぞれ軸線方向Daで互いに反対側に開口するように形成され、同様に、二つの外側切欠き部38A,38Bは、それぞれ軸線方向Daで互いに反対側に開口するように形成されている。
【0054】
したがって、コイル32u、コイル32v、及びコイル32wをそれぞれ軸線方向Daで重ねることで、隣接するコイル32の内側切欠き部37A,37B同士及び外側切欠き部38A,38B同士が向かい合って互いを収容し合う状態になる。そのため、コイル32u,32v,32wを重ねたコイル組立体であるステータ30の軸線方向Daの寸法を、一つのコイル32における軸線方向Daの寸法程度に短くすることができる。
【0055】
コイルスロット部36は、複数の積層板部39を備えている。積層板部39は、軸線と交差する方向に複数積層されている。積層板部39は、外側コイルエンド部35や内側コイルエンド部34と同じ銅などの金属によって形成されている。これら積層板部39は、コイルスロット部36を流れる電流の周波数に対する表皮深さよりも積層される方向(以下、単に積層方向と称する)の厚さが小さい。例えば、表皮深さdは、d=(2ρ/ωμ)
1/2で求めることができる。ここで、ωは角速度、ρは導電率、μは透磁率である。この第一実施形態における積層板部39は、幅寸法及び厚さが一定な帯状に形成されている。
【0056】
上述したステータ30は、鉄心等のコアを有していないコアレス型である。コイル32を形成する銅の透磁率は、空気の透磁率と同等である。そのため、
図2のように配置されたコイル32のコイルスロット部36は、軸線方向Daで隣接する他相のコイル32によって発生した磁束が鎖交し易い。磁束が鎖交することによって生じる渦電流の大きさは、板厚に比例するので、上記のように表皮深さdよりも厚さの小さい積層板部39を複数積層することで、鎖交磁束により生じる渦電流を小さくすることができる。この実施形態で例示する積層板部39は、コイルスロット部36の延びる方向である径方向Drに延びている場合を例示している。しかし、積層板部39の延びる方向は、磁束が鎖交する軸線方向Daと交差する方向であればよい。
【0057】
図5は、この発明の第一実施形態における電力変換器の概略構成を示す図である。
図5に示すように、この第一実施形態における回転電機システム1は、上述した発電機100と、電力変換器50と、を備えている。電力変換器50は、複数のコンバータ51と、複数のインバータ52とを備えている。電力変換器50は、上述した発電機により発電された電力を変換する。この実施形態における電力変換器50は、発電機によって発電された交流電力を、商用周波数(例えば、日本国においては50Hz又は60Hz)の三相交流電力として出力する。
【0058】
コンバータ51は、複数のステータ30のそれぞれに接続されている。言い換えれば、複数のコンバータ51は、それぞれ異なる段のステータ30に接続されている。これらコンバータ51は、各ステータ30の交流出力を直流変換する。より具体的には、コンバータ51は、ステータ30の各段に対して一つずつ設けられている。コンバータ51は、ステータ30の各段から出力される三相の交流出力を直流変換する。つまり、上述したコイル32u,32v,32wから出力された三相の交流電力を、一つの直流電力に変換する。なお、コンバータ51としては、ダイオードを用いる整流回路や、スイッチング素子によるブリッジ回路を用いることができる。
【0059】
インバータ52は、複数のコンバータ51のそれぞれに接続されている。言い換えれば、一つのコンバータ51に対して、一つのインバータ52が接続されている。インバータ52は、コンバータ51の直流出力を交流変換する。これら複数のインバータ52のうち、同相の交流出力を行う複数のインバータ52の出力端子は、それぞれ直列接続されている。
【0060】
より具体的には、U相の交流出力を行う複数のインバータ52uの出力端子がそれぞれ直列接続され、V相の交流出力を行う複数のインバータ52vの出力端子がそれぞれ直列接続され、W相の交流出力を行う複数のインバータ52wの出力端子がそれぞれ直列接続されている。この実施形態において、上述したインバータ52uが直列接続されたU相の電力線UL、インバータ52vが直列接続されたV相の電力線VL、及び、インバータ52wが直列接続されたW相の電力線WLは、それぞれ中性点で接続されたY結線となっている場合を例示している。しかし、Y結線に限られるものでは無く、他の結線形態であっても良い。なお、以下の説明において、インバータ52u,52v,52wの相を区別する必要のない場合には、単にインバータ52と総称する場合がある。
【0061】
この実施形態において、U相の交流出力を行うインバータ52uの数と、V相の交流出力を行うインバータ52vの数と、W相の交流出力を行うインバータ52wの数とは、それぞれ同一になっている。各相の交流出力を行うインバータ52は、それぞれ図示しないコントローラによってPWM制御されている。各相の交流出力を行うインバータ52をn個直列に接続している場合、各相の交流出力の波形を整えるために、各インバータ52のPWM制御の周期は1/n周期ずつずらすようにしてもよい。また、各相の交流出力の波形を整えるために、リアクトルを接続するようにしても良い。なお、コンバータ51やインバータ52の設置数は、上述した設置数に限られず、コンバータ51やインバータ52の定格電流が小さい場合などには、複数のコンバータ51やインバータ52を適宜並列接続して用いるようにしても良い。
【0062】
上述した第一実施形態では、軸線方向Daで隣接する他のコイル32の位相が異なり且つコアレスであることで、コイルスロット部36には、軸線方向Daで隣接するコイル32で発生した磁束が軸線方向Daに鎖交し易い。しかし、コイルスロット部36に、軸線aと交差する方向に複数積層された積層板部39を備えている。しかも、積層板部39は、コイルスロット部36を流れる電流の周波数に対する表皮深さdよりも積層される方向の厚さが小さく形成されている。これにより、積層板部39が積層される方向に渦電流が流れ難なる。そのため、他のコイル32によって発生する磁束がコイルスロット部36に対して軸線方向Daで鎖交したとしても、渦電流が発生することを抑制できる。
【0063】
第一実施形態では、更に、内側コイルエンド部34に内側切欠き部37A,37Bを備え、外側コイルエンド部35に外側切欠き部38A,38Bを備えている。そのため、軸線方向Daに複数のコイル32を重ねて配置して、これらコイル32の軸線a回りの位相が互いに異なるように配置した場合に、軸線方向Daで隣接する他のコイル32の内側コイルエンド部34を内側切欠き部37A,37Bに収容するとともに、軸線方向Daで隣接する他のコイル32の外側コイルエンド部35を外側切欠き部38A,38Bに収容することができる。ここで、他のコイル32にも内側切欠き部37A,37Bと外側切欠き部38A,38Bとが形成されているため、軸線方向Daで複数のコイル32を重ねた際に、隣接するコイル32の内側切欠き部37A,37B同士が互いを収容し合うとともに、外側切欠き部38A,38B同士が互いに収容し合う状態とすることができる。これにより、複数のコイルを重ねたコイル組立体の軸線方向Daの寸法を短くすることができる。
第一実地形態では、内側切欠き部37A,37Bや外側切欠き部が配置される箇所に、積層板部39が配置されていない。そのため、内側切欠き部37A,37Bや外側切欠き部38A,38Bの導体の占積率が低下することを抑制できる。また、内側コイルエンド部34、外側コイルエンド部35は、磁束が鎖交し易い場所に配置されないため、積層板部39を有さなくても渦電流の影響は無視できる。
したがって、渦電流損を低減しつつステータ30のコイルエンドを小型化することが可能となる。そして、高速回転させた際には、発電機100の効率向上を図ることができる。
【0064】
第一実施形態では、積層板部39は、コイルスロット部36の延びる方向と同一方向に延びている。そのため、渦電流の発生を抑制しつつコイルスロット部36の剛性低下も抑制できる。
第一実施形態では、更に、内側切欠き部37A,37Bは、内側切欠き部37A,37Bが形成されていない箇所における内側コイルエンド部34の軸線方向Daの寸法の半分以上の深さ寸法を有するため、コイル組立体であるステータ30の軸線方向Daの寸法を一つのコイルの軸線方向Daの寸法と同等にできる。
したがって、分布巻であってもステータ30のコイルエンドを小型化することが可能となる。
上述した第一実施形態では、ステータ30及びロータ20が軸線方向Daに複数段設けられているため、ステータ30の段数が多いほど発電機100の小型化の効果が大きくなる。
【0065】
第一実施形態では、コンバータ51は、複数のステータ30のそれぞれに接続され、ステータ30の交流出力を直流変換する。インバータ52は、複数のコンバータ51のそれぞれに接続され、コンバータ51の直流出力を交流変換する。同相の交流出力を行う複数のインバータ52の出力端子は、それぞれ直列接続されている。そのため、インバータ52が直列接続された数の分だけ、電力変換器50の出力電圧を高電圧化することができる。また、発電機100の回転数によらず、インバータ52によって所望の周波数の電力を得ることができる。
したがって、発電機100の出力を一つのコンバータやインバータによって電力変換したりする場合と比較して、定格電圧の低いコンバータ51やインバータ52を用いることができるため、部品コストを抑制できる。さらに、変圧器を用いずに、発電機100全体の出力電圧を分圧して取り出すことができるため、変圧器を省略して部品点数を低減することができる。
【0066】
第一実施形態では、コンバータ51は、ステータ30の各段に対して一つずつ設けられている。コンバータ51は、更に、ステータ30の各段から出力される三相の交流出力を直流変換している。そのため、ステータ30毎にコンバータ51及びインバータ52を設ければ良いため、発電機100が多数のステータ30を有する場合には、コイル32の相ごとに直流変換する場合と比較して、部品点数の増加を抑制できる。また、同相のインバータ52がコンバータ51を介して接続されている各ステータ30は、それぞれ物理的に離間されるため、これらステータ30のそれぞれのコイル32間の電気的な絶縁処理が不要になる。
【0067】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を図面に基づき説明する。この第二実施形態における回転電機は、上述した第一実施形態の回転電機に対して、冷媒を介してコイルを冷却する冷却構造を加えたものである。そのため、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0068】
図6は、この発明の第二実施形態におけるコイルを拡大した軸線を含む断面図である。
図7は、この発明の第二実施形態における冷媒流路の軸線と垂直な断面図である。
この第二実施形態の発電機200も、第一実施形態の発電機100と同様に、アキシャルギャップ型の交流発電機である。発電機200は、第一実施形態と同様に、発電電動機であっても良い。
図6、
図7に示すように、この第二実施形態の発電機(回転電機)200は、上述した第一実施形態の発電機100と同様に、回転軸10と、ロータ20と、ステータ30と、ケーシング40と、を備えている。
【0069】
ケーシング40は、径方向外側Droからステータ30及びロータ20を覆っている。この第二実施形態のケーシング40は、軸線方向Daに延びる外周部42の内部に冷媒流路43を備えている。冷媒流路43は、少なくとも一部がステータ30の径方向外側Droに配置されている。この第二実施形態における冷媒流路43は、複数のステータ30のそれぞれの径方向外側Droに位置する環状に形成されている。この冷媒流路43には、冷媒供給装置(図示せず)から冷却水などの冷媒が供給される。なお、冷媒流路43の形状は環状に限られない。
【0070】
ケーシング40は、冷媒流路43と、ロータ20等が配置されるケーシング40の内部空間Sとを連通させる貫通孔44を備えている。これら貫通孔44は、軸線方向Daでステータ30が配置されている位置と同一位置に、周方向Drに間隔をあけて形成されている。より具体的には、これら貫通孔44は、周方向Dcで、コイル32の角部35cが形成されている複数の外側コイルエンド部35の中央位置とそれぞれ同一の位置に形成されている。
【0071】
ステータ30は、ケーシング40の内径よりも大径に形成されている点を除き、第一実施形態と同様の構成である。ステータ30の外側コイルエンド部35の少なくとも一部は、上述した貫通孔44を介して冷媒流路43中に配置されている。貫通孔44の内周面と、貫通孔44を通る外側コイルエンド部35の外面との間には、貫通孔44の内周面と外側コイルエンド部35との隙間から冷媒が漏れないようにOリング45が挟み込まれている。上記のように構成することで、外側コイルエンド部35は、冷媒によって直接的に冷却可能になっている。
【0072】
したがって、上述した第二実施形態によれば、冷媒流路43を流れる冷媒によって外側コイルエンド部35を直接的に冷却することができる。そのため、熱伝導によりコイル32全体の冷却性能を向上することができる。その結果、コイル32を空冷のみで冷却する場合と冷却性能を同一にした場合、ケーシング40内部の空気流路を小さくしたり、空気と接触するコイル32の面積を小さくしたりすることができる。その結果、発電機200の小型化や軽量化を実現できる。
【0073】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態を図面に基づき説明する。この第三実施形態における回転電機は、上述した第一実施形態に対して、電力変換器の構成が異なるだけである。そのため、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0074】
図8は、この発明の第三実施形態における電力変換器の
図5に相当する図である。
図8に示すように、この第三実施形態における回転電機システム301は、発電機300と、電力変換器350と、を備えている。電力変換器350は、複数のコンバータと、複数のインバータとを備えている。電力変換器350は、第一実施形態と同様のアキシャルギャップ型の発電機300により発電された電力を変換する。この実施形態における電力変換器350は、発電機300によって発電された交流電力を、商用周波数(例えば、日本国においては50Hz又は60Hz)の三相交流電力(
図8中、U相、V相、W相)として出力する。
【0075】
コンバータ351は、複数段設けられたステータ30の各コイル32にそれぞれに接続されている。これらコンバータ351は、それぞれ一つのコイル32から出力される単相交流を直流変換する。より具体的には、コンバータ351は、一つのステータ30に対して三つずつ設けられている。言い換えれば、コイル32u,32v,32wからそれぞれ出力された単相交流を、三つの直流電力に変換する。なお、コンバータ351としては、ダイオードを用いる整流回路や、スイッチング素子によるブリッジ回路を用いることができる。
【0076】
インバータ52は、複数のコンバータ351のそれぞれに接続されている。つまり、第一実施形態と同様の構成であり、一つのコンバータ351に対して一つのインバータ52が接続されている。インバータ52は、コンバータ351の直流出力を交流変換する。これら複数のインバータ52のうち、同相の交流出力を行う複数のインバータ52の出力端子は、それぞれ直列接続されている。より具体的には、U相の交流出力を行う複数のインバータ52uの出力端子がそれぞれ直列接続され、V相の交流出力を行う複数のインバータ52vの出力端子がそれぞれ直列接続され、W相の交流出力を行う複数のインバータ52wの出力端子がそれぞれ直列接続されている。第一実施形態と同様に、上述したインバータ52uが直列接続されたU相の電力線UL、インバータ52vが直列接続されたV相の電力線VL、及び、インバータ52wが直列接続されたW相の電力線WLは、それぞれ中性点で接続されたY結線となっている場合を例示している。しかし、Y結線に限られるものでは無く、他の結線形態であっても良い。
【0077】
この第三実施形態において、U相の交流出力を行うインバータ52uの数と、V相の交流出力を行うインバータ52vの数と、W相の交流出力を行うインバータ52wの数とは、第一実施形態と同様に、それぞれ同一になっている。インバータ52は、それぞれ図示しないコントローラによってPWM制御されている。この第三実施形態においても、第一実施形態と同様に、インバータ52をn個直列に接続している場合、各相の交流出力の波形を整えるために、各インバータ52のPWM制御の周期は1/n周期ずつずらすようにしてもよい。また、各相の交流出力の波形を整えるために、リアクトルを接続するようにしても良い。なお、コンバータ351やインバータ52の設置数は、上述した設置数に限られず、コンバータ351やインバータ52の定格電流が小さい場合などには、複数のコンバータ351やインバータ52を適宜並列接続して用いるようにしても良い。
【0078】
したがって、上述した第三実施形態によれば、発電機300の有するステータ30の段数に制限されることなく、所望の相数の交流出力を得ることができる。つまり、上述した第一実施形態では、ステータ30の段数が電力変換器350から出力される交流の相数の倍数である必要があるが、第三実施形態では、第一実施形態のようにステータ30の段数が制限されることが無い。
【0079】
第三実施形態では、更に、第一実施形態と同様に、発電機300の出力を一つのコンバータやインバータによって電力変換したりする場合と比較して、定格電圧の低いコンバータ351やインバータ52を用いることができるため、部品コストを抑制できる。さらに、変圧器を用いずに、回転電機全体の出力電圧を分圧して取り出すことができるため、変圧器を省略して部品点数を低減することができる。
【0080】
(第四実施形態)
次に、この発明の第四実施形態を図面に基づき説明する。この第四実施形態における回転電機システムは、上述した第一実施形態に対して、発電機の構成が異なるだけである。そのため、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。
上述した第一から第三実施形態の発電機がアキシャルギャップ型の発電機であったのに対して、この第四実施形態の発電機は、ラジアルギャップ型の発電機である。この発電機は、さらに、複数のコイルが、同一の鉄心に巻き回されている。
【0081】
図9は、この発明の第四実施形態における発電機のステータの概略構成を示す図である。
図9に示すように、この第四実施形態の発電機400は、回転軸(図示せず)と、ロータ420と、ステータ430と、ケーシング(図示せず)と、を備えている。
ステータ430は、鉄心60と、複数層のコイル432と、を備えている。鉄心60は、周方向Dc周りに連続する環状に形成されている。鉄心60の径方向内側Driには、周方向Dcに間隔をあけて複数のスロット61が形成されている。
【0082】
コイル432は、鉄心60のスロット61内に配置されている。この第四実施形態で例示する一つのスロット61内には、絶縁パネル62によって複数(n個)の部屋が形成されている。これら複数の部屋は、径方向Drに複数並んでいる。これら複数の部屋に、それぞれ異なるY結線を構成する複数のコイル432が収容されている。言い換えれば、一つのスロット61の内部には、異なるY結線を構成するコイル432が径方向Drに積層されて層状をなしている。さらに、コイル432と鉄心60とが電気的に絶縁されるように、コイル432と鉄心60との間にも絶縁パネル(図示せず)が配置されている。なお、絶縁パネル62及びコイル432と鉄心60との間の絶縁パネル(図示せず)は、それぞれ、相間電圧や相電圧(鉄心=接地電位)に応じた絶縁性能を有していればよく、例えば、フェノール樹脂等の合成樹脂からなる板材やマイカテープ等を用いることができる。なお、
図9において、一つのスロット61内に、それぞれ異なるコイル432が三層設けられている場合を例示したが、一つのスロット61内に形成されるコイル432の層数は、三層に限られない。二層であったり、四層以上であったりしても良い。
【0083】
図10は、この発明の第四実施形態におけるコイルの等価回路を示す図である。
図10に示すように、この第四実施形態における発電機400は、それぞれY結線された三つのコイルからなる三相コイルU1,U2,・・・Un(nは3以上の自然数)と、三相コイルV1,V2,・・・Vn(nは3以上の自然数)と、三相コイルW1,W2,・・・Wn(nは3以上の自然数)と、を備えている。
【0084】
三相コイルU1は、三つのコイルLua1,Lub1,Luc1を備えるとともに、端子ua1,ub1,uc1を備えている。三相コイルU2は、三つのコイルLua2,Lub2,Luc2を備えるとともに、端子ua2,ub2,uc2を備えている。三相コイルUnは、三つのコイルLuan,Lubn,Lucnを備えるとともに、端子uan,ubn,ucn(nは3以上の自然数)を備えている。これら三相コイルU1,U2,・・・Un(nは3以上の自然数)は、永久磁石を有するロータ420が軸線a回りに回転すると、電力変換器450(後述する)から出力される三相交流(U相、V相、W相)のうちU相を出力するための電力を発生する。
【0085】
三相コイルV1は、三つのコイルLva1,Lvb1,Lvc1を備えるとともに、端子va1,vb1,vc1を備えている。三相コイルV2は、三つのコイルLva2,Lvb2,Lvc2を備えるとともに、端子va2,vb2,vc2を備えている。三相コイルVnは、三つのコイルLvan,Lvbn,Lvcnを備えるとともに、端子van,vbn,vcn(nは3以上の自然数)を備えている。これら三相コイルV1,V2,・・・Vn(nは3以上の自然数)は、永久磁石を有するロータ420が軸線a回りに回転すると、後述する電力変換器450(後述する)から出力される三相交流(U相、V相、W相)のうちV相を出力するための電力を発生する。
【0086】
三相コイルW1は、三つのコイルLwa1,Lwb1,Lwc1を備えるとともに、端子wa1,wb1,wc1を備えている。三相コイルW2は、三つのコイルLwa2,Lwb2,Lwc2を備えるとともに、端子wa2,wb2,wc2を備えている。三相コイルWnは、三つのコイルLwan,Lwbn,Lwcnを備えるとともに、端子wan,wbn,wcn(nは3以上の自然数)を備えている。これら三相コイルW1,W2,・・・Wn(nは3以上の自然数)は、永久磁石を有するロータ20が軸線回りに回転すると、電力変換器450(後述する)から出力される三相交流(U相、V相、W相)のうちW相を出力するための電力を発生する。
【0087】
この第四実施形態では、三相コイルU1、U2,・・・UnのLua1、コイルLua2、・・・及びコイルLuanは、鉄心60の同一スロット61内に収容されている。同様に、コイルLub1、コイルLub2、・・・及びコイルLubnも、同一スロット61内に収容されている。さらに、コイルLuc1、コイルLuc2、・・・及びコイルLucnも、同一スロット61内に収容されている。
【0088】
三相コイルV1、V2,・・・VnのLva1、コイルLva2、・・・及びコイルLvanは、鉄心60の同一スロット61内に収容されている。同様に、コイルLvb1、コイルLvb2、・・・及びコイルLvbnも、同一スロット61内に収容されている。さらに、コイルLvc1、コイルLvc2、・・・及びコイルLvcnも、同一スロット61内に収容されている。
【0089】
三相コイルW1、W2,・・・WnのLwa1、コイルLwa2、・・・及びコイルLwanは、鉄心60の同一スロット内に収容されている。同様に、コイルLwb1、コイルLwb2、・・・及びコイルLwbnも、同一スロット内に収容されている。さらに、コイルLwc1、コイルLwc2、・・・及びコイルLwcnも、同一スロット内に収容されている。
なお、三相コイルU1、U2,・・・Unと、三相コイルV1、V2,・・・Vnと、三相コイルW1、W2,・・・Wnとの収容されるスロット61は、それぞれ異なっている。
【0090】
図11は、この発明の第四実施形態における電力変換器の概略構成を示す図である。
図11に示すように、電力変換器450は、複数のコンバータ51と、複数のインバータとを備えている。電力変換器は、上述した発電機により発電された電力を変換する。この実施形態における電力変換器は、第一実施形態と同様に、発電機によって発電された交流電力を、商用周波数(例えば、日本国においては50Hz又は60Hz)の三相交流(U相、V相、W相)電力として出力する。
【0091】
複数のコンバータ51は、三相の交流出力を直流変換する。この第四実施形態では、複数のコンバータ51として、U相コンバータ51u1,51u2,・・・51un(nは3以上の自然数)、V相コンバータ51v1,51v2,・・・51vn(nは3以上の自然数)、W相コンバータ51w1,51w2、・・・51wn(nは3以上の自然数)を備える。これら複数のコンバータ51は、第一実施形態と同様に、ダイオードを用いる整流回路や、スイッチング素子によるブリッジ回路を用いることができる。
【0092】
この第四実施形態におけるU相コンバータ51u1には、端子ua1,ub1,uc1が接続されている。U相コンバータ51u2には、端子ua2,ub2,uc2が接続されている。U相コンバータ51unには、端子uan、ubn,ucnが接続されている。V相コンバータ51v1には、端子va1,vb1,vc1が接続されている。V相コンバータ51v2には、端子va2,vb2,vc2が接続されている。V相コンバータ51vnには、端子van,vbn,vcnが接続されている。W相コンバータ51w1には、端子wa1,wb1,wc1が接続されている。W相コンバータ51w2には、端子Wa2,Wb2,Wc2が接続されている。W相コンバータ51wnには、端子wan,wbn,wcnが接続されている。
【0093】
インバータ52は、複数のコンバータ51のそれぞれに接続されている。言い換えれば、一つのコンバータに51対して、一つのインバータ52が接続されている。インバータ52は、コンバータ51の直流出力を交流変換する。第一実施形態と同様に、これら複数のインバータ52のうち、同相の交流出力を行う複数のインバータ52の出力端子は、それぞれ直列接続されている。
【0094】
より具体的には、U相の交流出力を行う複数のインバータ52uの出力端子がそれぞれ直列接続され、V相の交流出力を行う複数のインバータ52vの出力端子がそれぞれ直列接続され、W相の交流出力を行う複数のインバータ52wの出力端子がそれぞれ直列接続されている。すなわち、第四実施形態の電力変換器450では、それぞれ各相でn個(nは3以上の自然数)のインバータ52が直列接続されている。この第四実施形態では、U相の交流出力を行うインバータ52uの数と、V相の交流出力を行うインバータ52vの数と、W相の交流出力を行うインバータ52wの数とは、それぞれ同一になっている。なお、この第四実施形態において、上述したインバータ52が直列接続されたU相、V相、W相の電力線UL,VL,WLは、中性点で接続されたY結線となっている場合を例示しているが他の結線方法であっても良い。
【0095】
各相の交流出力を行うインバータ52は、それぞれ図示しないコントローラによってPWM制御されている。各相のインバータ52をn個(nは3以上の自然数)直列に接続している場合、各相の交流出力の波形を整えるために、各インバータ52のPWM制御の周期は1/n周期ずつずらすようにしてもよい。また、各相の交流出力の波形を整えるために、リアクトルを接続するようにしても良い。なお、コンバータ51やインバータ52の設置数は、上述した設置数に限られず、コンバータ51やインバータ52の定格電流が小さい場合などには、複数のコンバータ51やインバータ52を適宜並列接続して用いるようにしても良い。
【0096】
上述した第四実施形態では、ラジアルギャップ型で三相のコイル432からなる層が複数設けられた発電機400の出力を、上述したような複数のコンバータ51と複数のインバータ52とを用いて電力変換している。そのため、発電機400の回転数によらず、インバータ52によって所望の周波数の交流電力を得ることができる。さらに、発電機400全体の出力電圧を、変圧器を用いずに分圧して取り出すことができるため、変圧器を省略して部品点数を低減することができる。
【0097】
第四実施形態では、さらに同相の交流出力を行うn個のインバータ52の出力端子が、それぞれ直列接続されている。そのため、インバータ52を直列接続させる数を増加させることで、容易に交流出力を高電圧化することができる。さらに、発電機400の出力を一つのコンバータやインバータによって電力変換したりする場合と比較して、定格電圧の低いコンバータ51やインバータ52を用いることができるため、部品コストを抑制できる。
【0098】
(第五実施形態)
次に、この発明の第五実施形態を図面に基づき説明する。この第五実施形態における回転電機システムは、上述した第三実施形態に対して、発電機の構成が異なるだけである。また、第四実施形態に対して、コンバータの構成が異なるとともにコイル数が異なるだけである。そのため、
図9を援用し、上述した第三、第四実施形態と同一部分に同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0099】
この第五実施形態の発電機も、第四実施形態と同様に、ラジアルギャップ型の発電機である。発電機は、回転軸と、ロータ420と、ステータ430と、ケーシングと、を備えている(何れも図示せず)。
ステータ430は、第四実施形態と同様に、鉄心60と、複数層のコイル432と、を備えている。鉄心60は、周方向Dc周りに連続する環状に形成されている。鉄心60の径方向内側Driには、周方向Dcに間隔をあけて複数のスロット61が形成されている。
【0100】
コイル432は、鉄心60のスロット61内に配置されている。一つのスロット内には、絶縁パネル62によって複数(n個)の部屋が形成されている。これら複数の部屋は、径方向Drに複数並んでいる。これら複数の部屋に、それぞれコイル432が収容されている。言い換えれば、一つのスロットの内部には、異なるコイル432が径方向Drに積層されて層状をなしている。コイル432と鉄心60とが電気的に絶縁されるようにコイル432と鉄心60との間にも絶縁パネル(図示せず)が配置されている。
【0101】
図12は、この発明の第五実施形態におけるコイルの等価回路を示す図である。
図12に示すように、この第五実施形態における発電機500は、それぞれ三つの分割コイルからなる三相コイルA1,A2,・・・An(nは3以上の自然数)を備えている。三相コイルA1は,分割コイルLa1,Lb1,Lc1を備え、三相コイルA2は、分割コイルLa2,Lb2,Lc2を備えている。三相コイルAnは、分割コイルLan,Lbn,Lcn(nは3以上の自然数)を備えている。
【0102】
分割コイルLa1,La2,・・・Lanは、永久磁石を有するロータ20が軸線a回りに回転することで、電力変換器550から出力される三相交流(U相、V相、W相)のうちU相を出力するための交流電力を発生する。分割コイルLb1,Lb2,・・・Lbnは、ロータ20が軸線a回りに回転することで、電力変換器550から出力される三相交流(U相、V相、W相)のうちV相を出力するための交流電力を発生する。分割コイルLc1,Lc2,・・・Lcnは、ロータ20が軸線回りに回転することで、後述する電力変換器から出力される三相交流(U相、V相、W相)のうちW相を出力するための交流電力を発生する。
【0103】
この第五実施形態では、分割コイルLa1,La2,・・・Lan(nは3以上の自然数)は、鉄心60の同一スロット61内に収容されている。同様に、分割コイルLb1,Lb2,・・・Lbn(nは3以上の自然数)も、同一スロット61内に収容されている。さらに、分割コイルLc1,Lc2,・・・Lcn(nは3以上の自然数)も、同一スロット61内に収容されている。
【0104】
図13は、この発明の第五実施形態における電力変換器の
図11に相当する図である。
図13に示すように、電力変換器550は、複数のコンバータ351と、複数のインバータ52とを備えている。電力変換器550は、上述した発電機500により発電された電力を変換する。この実施形態における電力変換器550は、第一実施形態と同様に、発電機500によって発電された交流電力を、商用周波数(例えば、日本国においては50Hz又は60Hz)の三相交流(U相、V相、W相)電力として出力する。
【0105】
複数のコンバータ351は、それぞれ単相の交流出力を直流変換する。この第五実施形態では、複数のコンバータ351として、U相コンバータ351u1,351u2,・・・351un(nは3以上の自然数)、V相コンバータ351v1,351v2,・・・351vn(nは3以上の自然数)、W相コンバータ351w1,351w2,・・・351wn(nは3以上の自然数)を備えている。これら複数のコンバータ351は、第一実施形態と同様に、ダイオードを用いる整流回路や、スイッチング素子によるブリッジ回路を用いることができる。
【0106】
U相コンバータ351u1には、コイルLa1の端子a1,a1’が接続されている。U相コンバータ351u2には、コイルLa2の端子a2,a2’が接続されている。第nU相コンバータ351unには、コイルLanの端子an,an’が接続されている。以下同様に、第一V相コンバータ351v1には、コイルLb1の端子b1,b1’が接続されている。第二V相コンバータ351v2には、コイルLb2の端子b2,b2’が接続されている。第nV相コンバータ351vnには、コイルLbnの端子bn,bn’が接続されている。第一W相コンバータ351w1には、コイルLc1の端子c1,c1’が接続されている。第二W相コンバータ351w2には、コイルLc2の端子c2,c2’が接続されている。第nW相コンバータ351wnには、コイルLcnの端子cn,cn’が接続されている。
【0107】
インバータ52は、複数のコンバータ351のそれぞれに接続されている。つまり、第四実施形態と同様に、一つのコンバータ351に対して、一つのインバータ52が接続されている。インバータ52は、コンバータ351の直流出力を交流変換する。これら複数のインバータ52のうち、同相の交流出力を行う複数のインバータ52の出力端子は、第一実施形態と同様に、それぞれ直列接続されている。
【0108】
より具体的には、U相の交流出力を行う複数のインバータ52uの出力端子がそれぞれ直列接続され、V相の交流出力を行う複数のインバータ52vの出力端子がそれぞれ直列接続され、W相の交流出力を行う複数のインバータ52wの出力端子がそれぞれ直列接続されている。すなわち、第五実施形態の電力変換器550では、第四実施形態と同様に、それぞれ各相でn個(nは3以上の自然数)のインバータ52が直列接続され、U相の交流出力を行うインバータ52uの数と、V相の交流出力を行うインバータ52vの数と、W相の交流出力を行うインバータ52wの数とは、それぞれ同一になっている。なお、この第五実施形態において、上述したインバータ52が直列接続されたU相、V相、W相の電力線UL,VL,WLは、中性点で接続されたY結線となっている場合を例示しているが他の結線方法であっても良い。
【0109】
各相の交流出力を行うインバータ52は、それぞれ図示しないコントローラによってPWM制御されている。この第五実施形態も上述した第四実施形態と同様に、各相の交流出力を行うインバータをn個(nは3以上の自然数)直列に接続している場合、各相の交流出力の波形を整えるために、各インバータのPWM制御の周期は1/n周期ずつずらすようにしてもよい。さらに、各相の交流出力の波形を整えるために、リアクトルを接続するようにしても良い。なお、コンバータ351やインバータ52の設置数は、上述した設置数に限られず、コンバータ351やインバータ52の定格電流が小さい場合などには、複数のコンバータやインバータを適宜並列接続して用いるようにしても良い。
【0110】
上述した第五実施形態の発電機500は、第四実施形態と同様に、ラジアルギャップ型で三相のコイル432からなる層が複数設けられている。この第五実施形態の発電機500の出力は、複数のコンバータ351と複数のインバータ52とを用いて電力変換している。そのため、第四実施形態と同様に、発電機500の回転数によらず、インバータ52によって所望の周波数の電力を得ることができる。さらに、変圧器を用いずに、発電機500全体の出力電圧を分圧して取り出すことができるため、変圧器を省略して部品点数を低減することができる。
【0111】
第五実施形態では、さらに同相の交流出力を行うn個のインバータ52の出力端子が、それぞれ直列接続されている。そのため、インバータ52を直列接続させる数を増加させることで、容易に交流出力を高電圧化することができる。さらに、発電機500の出力を一つのコンバータやインバータによって電力変換したりする場合と比較して、定格電圧の低いコンバータ351やインバータ52を用いることができるため、部品コストを抑制できる。
【0112】
この第五実施形態では、三相コイルA1,A2,・・・Anの各コイルの単相出力が、コンバータ351によって直流変換される。そのため、第四実施形態のように、コンバータ51によって三相交流を直流に変換する場合と比較して、発電機500のコイル層数が3の倍数等、相数によって制限されることがない点で有利となる。
【0113】
(第六実施形態)
次に、この発明の第六実施形態を図面に基づき説明する。この第六実施形態における回転電機は、上述した第一実施形態の回転電機に対して、コイルの構造が異なる。そのため、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0114】
図14は、この発明の第六実施形態における
図3に相当する図である。
図15は、この発明の第六実施形態における線材を拡大した図である。
この第六実施形態における発電機(図示せず)も、第一実施形態の発電機100と同様にアキシャルギャップ型の交流発電機である。発電機は、回転軸10と、ロータ20と、ステータ630と、ケーシング40と、を備えている。一つのステータ630は、三相分のコイル632と、モールド部31と、を備えている。
【0115】
図14に示すように、一相分のコイル632は、軸線aを中心とした径方向外側Droに突出するように形成された四つの巻回部33を備えている。これら四つの巻回部33は、軸線aを中心とした周方向Dcで、90度毎に設けられている。コイル632は、第一実施形態のコイル32と同様に、内側コイルエンド部34と、外側コイルエンド部35と、コイルスロット部36と、を備えている。なお、内側コイルエンド部34は、第一実施形態と同様に、内側切欠き部37A,37B(
図4参照)を有していてもよい。外側コイルエンド部35は、外側切欠き部38A,38B(
図4参照)を有していてもよい。
【0116】
コイル632は、二つの端部t1,t2を有している。端部t1は、コイル632の径方向内側Driに形成されている。端部t2は、コイル632の径方向外側Droに形成されている。これら端部t1,t2は、口出し線(図示せず)に接続される。第六実施形態におけるステータ630のコイル632の巻き方は、第一実施形態と同様に、コアレスではあるが、複数のスロットに渡る分布巻であり、且つ波巻きとなっている。なお、端部t1の位置は、内側コイルエンド部34に限られず、また、端部t2の位置は、外側コイルエンド部35に限られない。
【0117】
コイル632は、線材Wmを備えている。線材Wmは、軸線aを中心とした周方向Dcで複数回、巻き回された状態になっている。言い換えれば、コイル632は、一本の線材Wmが四つの巻回部33を形成しつつ、軸線a(言い換えれば、磁束が鎖交する方向)と交差する方向に積層された状態となっている。なお、径方向Drで隣り合う線材Wmの間には電位差が生じるため、この電位差が大きい場合には、線材Wm同士を電気的に絶縁するために、例えば、線材Wmの間に絶縁紙や、繊維含有率の高いGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のプリプレグなどを挟むようにしてもよい。
【0118】
図15に示すように、線材Wmは、複数の磁性材層Mmと絶縁材層Imとを備えている。複数の磁性材層Mmは、互いに独立している。複数の磁性材層Mmは、絶縁材層Imを介して重ね合わされている。磁性材層Mmは、銅を用いることができる。この実施形態における磁性材層Mmは、銅製の平角線を用いる場合を例示している。磁性材層Mmの平角線としては、例えば、アスペクト比が20(厚さ:幅)よりも大きい薄い平角線を用いてもよい。平角線のアスペクト比は、例えば、40±10としてもよい。この平角線の厚さは、コイル623を流れる電流の周波数に対する表皮深さよりも小さい。なお、線材Wmは、表面にポリイミド等の絶縁層が電着等により形成されたものを用いてもよい。
【0119】
絶縁材層Imは、複数の磁性材層Mmをそれぞれ電気的に絶縁している。絶縁材層Imとしては、電気的な絶縁性に優れた、有機材料(例えば、プラスチック)や、複合材料(例えば、GFRPのプリプレグ)を用いることができる。絶縁材層Imは、線材Wmが巻き回されて複数の巻回部33を形成した状態で、隣り合う磁性材層Mm同士を固定している。例えば、絶縁材層Imが複合材料で形成される場合、複数の巻回部33を形成した後に焼結させることで、隣り合う磁性材層Mm同士を固定することができる。上記のように絶縁材Imによって隣り合う磁性材Mm同士を固定することで、振動を抑制し、コイル632の摩耗や損傷を抑制することができる。
【0120】
したがって、第六実施形態によれば、隣り合う磁性材層Mmが絶縁材層Imによって電気的に絶縁されるため、コイル632の全域で渦電流損を低減し、発熱や効率低下を抑制できる。さらに、電流密度が大きくなることを抑制できるため、ジュール熱による発熱をより一層抑制することができる。
【0121】
(第七実施形態)
次に、この発明の第七実施形態を図面に基づき説明する。この第七実施形態における回転電機は、上述した第一、第六実施形態の回転電機に対して、ケーシングの構造が異なる。そのため、上述した第一、第六実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
図16は、この発明の第七実施形態におけるステータの断面図である。
図17は、
図16におけるXVII方向から見た図である。
図18は、
図16におけるXVII方向からステータ単体を見た図である。
図19は、この発明の第七実施形態におけるアキシャルモールド部の断面図である。
【0122】
この第七実施形態における発電機(図示せず)も、第一実施形態の発電機100と同様にアキシャルギャップ型の交流発電機である。発電機は、回転軸10(図示せず)と、ロータ20(図示せず)と、ステータ730と、ケーシング40(図示せず)と、を備えている。一つのステータ730は、三相分のコイル732と、モールド部731と、を備えている。なお、コイル732は、上述した第一実施形態のコイル32又は第六実施形態のコイル632を用いることができる。
【0123】
図16、
図17に示すように、モールド部731は、モールド本体部731Aと、アキシャルモールド部731Bと、を備えている。モールド本体部731Aは、コイル732を径方向外側Droの外側から覆うように形成される。このモールド本体部731Aは、ケーシング40(図示せず)に支持される。モールド部731の材料は、例えば、複合材料(例えば、繊維強化複合材料等)、セラミックを用いることができる。この実施形態におけるモールド本体部731Aの内部には、軸線方向Daに延びる二つの冷媒流路743A,743Bが形成されている。これら冷媒流路743Aと冷媒流路743Bとの一方に外部から冷媒が流入し、他方から外部へ冷媒が流出する。なお、モールド部731の添加材(言い換えれば、フィラー)としては、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、及びマイカ粒子等を用いることができる。ピッチ系炭素繊維を用いた場合、熱伝導性の向上の点で有利となる。ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いた場合、強度向上の点で有利となる。さらに、マイカ粒子を用いた場合、絶縁性向上の点で有利となる。
【0124】
アキシャルモールド部731Bは、コイル32を軸線方向Daから覆うように形成されている。この実施形態におけるアキシャルモールド部731Bは、軸線方向Daから見て円盤状に形成されている。
【0125】
図17から
図19に示すように、アキシャルモールド部731Bは、溝Grと、周方向冷媒流路743Cと、を備えている。
溝Grは、複数のコイル32を軸線方向Daから収容する。この実施形態における溝Grは、
図18に示すように、軸線方向Daに三つのコイル32を重ねた形状に対応するように軸線方向Daに凹んで形成されている。
【0126】
周方向冷媒流路743Cは、周方向Dcに冷媒を流す。
図19に示すように、この実施形態における周方向冷媒流路743Cは、軸線方向Daから見てC字状に形成されている。このC字状に形成された周方向冷媒流路743Cの周方向の一端が、上述した冷媒流路743Aと冷媒流路743Bとの何れか一方に接続され、周方向冷媒流路743Cの周方向の他端が、上述した冷媒流路743Aと冷媒流路743Bとの他方に接続されている。つまり、冷媒は、周方向冷媒流路743Cの一端と他端との間を周方向Dcに流れる。この実施形態では、径方向Drにおける周方向冷媒流路743Cの寸法は、周方向Drにおけるアキシャルモールド部731Bの寸法よりも僅かに小さく形成されている。
【0127】
この実施形態における周方向冷媒流路743Cには、周方向冷媒流路74の内部を径方向に隔てる複数のC字状の壁部743Ca〜743Ccが形成されている。これら壁部743Ca〜743Ccを設けることで、周方向冷媒流路743Cの内部を流れる冷媒の流量が、径方向Drで偏ることを抑制できる。なお、冷媒として絶縁油脂を流すようにしてもよい。このように絶縁油脂を流した場合、絶縁性の向上を図ることができる。周方向冷媒流路743Cが三つの壁部743Ca〜743Ccを備える場合を例示した。しかし、これら壁部743Ca〜723Ccを省略してもよい。さらに周方向冷媒流路743Cは、四つ以上のC字状の壁部を設けてもよい。
【0128】
したがって、第七実施形態によれば、モールド部731を複合材料にすることで、熱伝導、絶縁性、耐熱性の調整を容易に行うことができる。
さらに、モールド部731の冷媒流路743に冷媒や絶縁油脂を流すことで、冷却、絶縁性の向上を図ることが可能となる。
また、アキシャルモールド部731Bが溝Grを有することで、コイル732に対してモールド部731をより強固に固定することができる。さらに、アキシャルモールド部731Bとコイル732との接触面積を増加することができる。そのため、冷媒の流量を増加させずにコイル732を効率よく冷却することができる。
【0129】
(第八実施形態)
次に、この発明の第八実施形態を図面に基づき説明する。
この発明の第八実施形態における回転電機システムは、第一実施形態と同様に、回転電機と電力変換器とを備えている。この第八実施形態の回転電機は、アキシャルギャップ型の発電機である。この第八実施形態の発電機は、例えば、風力発電や水力発電等で用いる交流発電機である。なお、回転電機は、発電電動機(モータジェネレータ)であっても良い。
【0130】
回転電機は、一般に、高速回転させるようにすれば、例えば、小型化、軽量化、高効率化を図ることができる。しかし、回転電機は、ロータを高速回転させることで、ロータの磁石に作用する遠心力が大きくなる。そのため、磁石が変形するなどして、磁石とロータ軸との間に空隙が生じ、磁石からロータ軸へのトルク伝達が阻害される可能性がある。この第八実施形態の回転電機システムでは、磁石とロータ軸との間のトルク伝達低下を抑制することが可能となる。なお、以下の説明においては、
図1を援用して回転電機システムの全体構成について説明する。また、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0131】
図1に示すように、この実施形態における回転電機である発電機100は、回転軸10と、ロータ820と、ステータ30と、ケーシング40と、を備えている。
回転軸10は、ケーシング40に支持されて軸線a回りに回転可能になっている。回転軸10には、例えば、タービンや風車等の駆動源から回転エネルギーが入力される。
ロータ820は、回転軸10の外周面10aから径方向外側Droに向かって延びている。すなわち、ロータ820は、回転軸10と共に軸線a回りに回転可能となっている。ロータ820は、軸線aを中心とした円盤状に形成され、その径方向Drの中央部に永久磁石821(
図20参照)を有している。この実施形態の発電機100では、軸線方向Daに間隔をあけて複数段のロータ820が設けられている。
【0132】
ステータ30は、軸線方向Daで僅かな隙間を介してロータ820と対向するように配置されている。ステータ30は、ロータ820を回転駆動させるための回転磁界を発生させるコイル32を有している。
ケーシング40は、径方向外側Droからステータ30及びロータ820を覆っている。ケーシング40は、軸線方向Daの両端部に軸受41を有し、これら軸受41によって回転軸10を回転自在に支持している。
【0133】
図20は、この発明の第八実施形態におけるロータの断面図である。
図21は、この発明の第八実施形態におけるロータを軸線方向から見た図である。
図20、
図21に示すように、ロータ820は、内側リング部822と、トルク伝達部823と、永久磁石821と、外側リング部824と、を備えている。
【0134】
内側リング部822は、回転軸10に固定される。内側リング部822は、複数の扇台状の第一ブロック822aを周方向Dcに並べて配置されている。これら第一ブロック822aは、それぞれボルト等の締結具により回転軸10の外周面に形成された凸部810に締結される。この実施形態における内側リング部822は、フェノール樹脂等の合成樹脂により形成することができる。また、内側リング部822は、炭素繊維強化プラスチック等の複合材により形成してもよい。また、これら第一ブロック822aは、その径方向外側Droを向く外周面に、それぞれ径方向内側Driに凹むように形成されたキー溝822aaを有している。
【0135】
トルク伝達部823は、永久磁石821を径方向外側Droに押圧するとともに、永久磁石821に作用する軸線aを中心とした回転方向へのトルクを回転軸10へ伝達する。言い換えれば、トルク伝達部823は、ロータ820の回転時、遠心力による永久磁石821の変位や変形しても、永久磁石821の回転方向へのトルクを回転軸10へ効率よく伝達する。この第八実施形態におけるトルク伝達部823は、キー部823aと、バネ部823bと、面接触部823cと、をそれぞれ有している。
【0136】
キー部823aの端部は、上述したキー溝822aa内に配置され、径方向Drにスライド可能とされている。言い換えれば、キー部823aは、キー溝822aaに対して径方向Drに出没可能に形成されている。
バネ部823bは、キー部823aを径方向外側Droに向かって付勢している。バネ部823bは、例えば、キー部823aの径方向内側Driの端部と、キー溝822aaの底部との間に圧縮状態で配置することができる。このバネ部823bとしては、例えば、コイルバネを用いることができる。バネ部823bは、キー部823aを径方向外側Droに向かって付勢可能なバネであれば板バネ等、他の弾性部材であってもよい。
【0137】
面接触部823cは、リング状に配置された永久磁石821の径方向Drの内周面821iに平行な外側面823oを有している。面接触部823cは、キー部823aにより径方向内側Driから押圧されることで径方向外側Droに付勢されている。これにより外側面823caの全面が内周面821iに対して面接触するようになっている。この実施形態における永久磁石821の内周面821iは、軸線aを中心とした円筒状に形成されている。面接触部823cの外側面823oは、軸線方向Daから見て、この内周面821iと同等の曲率半径を有している。
【0138】
永久磁石821は、軸線aを中心としたリング状に形成されている。この永久磁石821は、周方向Dcに並んで配置された複数の扇台状の磁石ブロック821aによって形成されている。
【0139】
外側リング部824は、ロータ820の回転時に作用する遠心力に対して補強を行う補強材として機能する。言い換えれば、外側リング部824は、遠心力等により永久磁石821が径方向外側Droに変位することを抑えている。この実施形態における外側リング部824は、永久磁石821を径方向外側Droから覆うリング状に形成されている。この外側リング部824は、炭素繊維強化プラスチック等の複合材により形成することができる。
【0140】
したがって、第八実施形態によれば、面接触部823cが径方向外側Droに向かって付勢されるので、永久磁石821に遠心力が作用したとしても、面接触部823cの外側面の全面が永久磁石821の内周面821iに面接触した状態を維持できる。その結果、永久磁石821と回転軸10との間のトルク伝達低下を抑制することが可能となる。
なお、上述した第八実施形態では、ロータ820が内側リング部822を備える場合について説明したが、例えば、内側リング部822のキー溝822aaを回転軸10に形成して内側リング部822を省略するようにしてもよい。
【0141】
(第八実施形態の変形例)
上述した第八実施形態では、トルク伝達部823が、キー部823a、キー溝822aa、及び、バネ部823bを備える場合について説明した。しかし、トルク伝達部は、遠心力による永久磁石821の変位や変形の有無にかかわらず、永久磁石821に作用する軸線aを中心とした回転方向へのトルクを回転軸10へ伝達可能な構成であれば、上記構成に限られない。例えば、
図22のように構成してもよい。なお、この第八実施形態の変形例では、上述した第八実施形態と同一部分に同一符号を付して重複説明を省略する。
【0142】
図22は、この発明の第八実施形態の変形例におけるトルク伝達部の断面図である。
図22に示すように、第八実施形態の変形例におけるトルク伝達部923は、弾性屈曲部923aと、面接触部923cと、をそれぞれ有している。トルク伝達部923は、第八実施形態のトルク伝達部823と同様に、ロータ回転による遠心力で永久磁石821の変位や変形が生じても、永久磁石821の回転方向へのトルクを回転軸10へ効率よく伝達可能とする。
【0143】
弾性屈曲部923aは、内側リング部822と面接触部923cとの間に配置されている。弾性屈曲部923aは、面接触部923cを径方向外側Droに付勢する。弾性屈曲部923aは、軸線aを中心としたリング状に形成されている。弾性屈曲部923aの径方向内側Driの基部kは、内側リング部822に固定され、径方向外側Droの端部tは、面接触部923cに固定されている。弾性屈曲部923aは、軸線方向Daで少なくとも一回折り返されたU字状のバネ部923abを備えている。バネ部923abは、ロータ920にトルク伝達部923を装着した状態で、径方向Drに圧縮変形されている。この弾性屈曲部923aは、例えば、合成樹脂によって形成することができる。
【0144】
面接触部923cは、リング状に配置された永久磁石821の径方向Drの内周面821iに平行な外側面923oを有している。面接触部923cは、弾性屈曲部923aにより径方向外側Droに付勢されている。これにより面接触部923cの外側面823oの全面が、永久磁石821の内周面821iに対して面接触するようになっている。この実施形態における面接触部923cの外側面923oは、軸線方向Daから見て、永久磁石821の内周面821iと同等の曲率半径を有している。
【0145】
したがって、第八実施形態の変形例によれば、上述した第八実施形態の作用効果に加えて、遠心力によって永久磁石821の内周面821iの角度が変化したとしても、U字状のバネ部が弾性変形することで、面接触部923cの外側面923oを内周面821iの角度変化に追従させることができる。その結果、永久磁石821の内周面821iに面接触部923cの外側面923oの全面を面接触させて、永久磁石821のトルクを効率よく内側リング部822に伝達させることができる。
【0146】
なお、上述した第八実施形態及び変形例で説明したロータ820,920は、上述した第一から第七実施形態と適宜組み合わせて用いてもよい。また、第一から第七実施形態以外の回転電機に用いるようにしてもよい。
【0147】
(第九実施形態)
次に、この発明の第九実施形態を図面に基づき説明する。
この発明の第九実施形態における回転電機システムは、第一実施形態と同様に、回転電機と電力変換器とを備えている。この第九実施形態の回転電機は、アキシャルギャップ型の発電機である。この第九実施形態の発電機は、例えば、風力発電や水力発電等で用いる交流発電機である。なお、回転電機は、発電電動機(モータジェネレータ)であっても良い。
【0148】
回転電機における永久磁石は、一般に、軸線aを中心とした周方向Dcと径方向Drとのうち、一つの方向に分割数を増加させるにつれて、渦電流損が低減する。さらに、回転電機における永久磁石は、同一の分割数の場合、周方向Dcと径方向Drとのうち、一つの方向に分割した場合の方が、周方向Dcと径方向Drとの両方に分割した場合よりも渦電流損が低減する。
【0149】
しかしながら、周方向Dcと径方向Drとのうち、一つの方向に分割数を増加させると、磁石ブロックの厚さが薄くなり、加工精度の要求が高くなる。そのため、コストが増加するという課題がある。この第九実施形態の回転電機の永久磁石の製造方法では、永久磁石の分割数を最適化することが可能となる。
【0150】
図23は、縦軸を渦電流損及び磁石コストとし、横軸を磁石分割数としたグラフである。
図23に示すように、渦電流損は、永久磁石の分割数が増加する(
図23中、「少」から「多」に向かう)につれて低下する。より具体的には、渦電流損の低下率は、分割数が「0」に近いほど高くなり、分割数が増加するにつれて低くなる。一方で、磁石コストは、永久磁石の分割数が増加するにつれて増加する。より具体的には、磁石コストの増加率は、永久磁石の分割数の増加に伴い僅かに高くなる。なお、「磁石コスト」は、永久磁石を構成する磁石ブロックの成形に掛かる費用を意味する。
【0151】
この第九実施形態では、回転電機の製品要求(効率、コスト)を満たす渦電流損の上限値及び磁石コストの上限値をそれぞれ設定し、
図23のグラフにおいて、これら渦電流損及び磁石コストの各上限値を上回らない範囲で、永久磁石の分割数を決定する。
【0152】
したがって、第九実施形態によれば、回転電機の製品要求(効率、コスト)を満たすように、周方向Dcと径方向Drとの何れか一方における永久磁石の分割数を最適化することができる。
【0153】
(第九実施形態の変形例)
上述した第九実施形態では、永久磁石を永久磁石の周方向Dcと径方向Drとの何れか一方に分割する場合について説明した。しかし、永久磁石を分割する方向は、周方向Dcと径方向Drとの両方であってもよい。この第九実施形態の変形例においては、永久磁石を構成する磁石ブロックの形状(分割形状;磁石アスペクト比)を決定する。ここで、アスペクト比とは、磁石ブロックの周方向Dcの寸法と、径方向Drの寸法との比であり、この実施形態で例示するアスペクト比は、軸線方向Daから見た磁石ブロックの(長辺の長さ)/(短辺の長さ)である。
【0154】
図24は、縦軸を渦電流損及び磁石コストとし、横軸を磁石アスペクト比としたグラフである。
図24に示すように、渦電流損は、永久磁石の磁石アスペクト比が高くなるにつれて低くなる。より具体的には、渦電流損の低下率は、磁石アスペクト比が低いほど高くなり、磁石アスペクト比が高くなるにつれて低くなる。一方で、磁石コストは、永久磁石の磁石アスペクト比が高くなるにつれて高くなる。より具体的には、磁石コストの増加率は、永久磁石の磁石アスペクト比が上昇するにしたがって僅かに高くなっていく。
【0155】
この第九実施形態の変形例では、回転電機の製品要求(効率、コスト)を満たす渦電流損の上限値及び磁石コストの上限値をそれぞれ設定し、
図24のグラフにおいて、これら渦電流損及び磁石コストの各上限値を上回らない範囲で、永久磁石の磁石アスペクト比を決定する。
【0156】
したがって、第九実施形態の変形例によれば、永久磁石を周方向Dc及び径方向Drの両方に分割する場合に、回転電機の製品要求(効率、コスト)を満たすように、永久磁石の磁石ブロックの磁石アスペクト比を最適化することができる。
【0157】
なお、第九実施形態及び第九実施形態の変形例により製造した永久磁石は、第一から第八実施形態と適宜組み合わせて用いてもよい。また、第一から第八実施形態以外の回転電機の永久磁石に用いるようにしてもよい。
【0158】
(その他の変形例)
この発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した各実施形態の電力変換器50,350,450,550は、U相、V相、W相のそれぞれで、3つ以上のインバータ52を直列接続する場合について説明した。しかし、インバータ52を直列接続する数は3つ以上に限られず、例えば、2つのインバータ52を直列接続するようにしても良い。
【0159】
上述した各実施形態の電力変換器50,350,450,550は、三相交流を出力する場合について説明したが、出力する交流は、三相に限られない。例えば、単相や二相の交流を出力するようにしても良い。また、複数系統の単相や二相の交流を出力するようにしても良い。
上述した第四実施形態では、絶縁パネル62によって一つのスロット61内に複数(n個)の部屋が形成されている場合を例示した。しかし、複数のコイル432の分離や絶縁する構造は、第四実施形態で例示した構造に限られない。複数のコイル432を分離、絶縁可能であれば、如何なる構成であっても良い。
【0160】
上述した第六実施形態では、発電機がアキシャルギャップ型の交流発電機である場合について説明した。しかし、アキシャルギャップ型の発電機に限らず、例えば、ラジアルギャップ型の発電機に適用してもよい。