【解決手段】回転子積層鉄心1は、少なくとも一つのカシメ14aと少なくとも一つのカシメ13aとが設けられた複数の打抜部材Wが所定方向に積層されたものである。回転子積層鉄心1の中心部には、積層方向に沿って回転子積層鉄心1を貫通して延びる中心孔が設けられている。積層方向において隣り合う打抜部材Wのうち、対応するカシメ13a同士が結合されていると共に、対応するカシメ14a同士が結合されている。打抜部材Wにおいて、カシメ13aはカシメ14aよりも外周縁側に位置している。カシメ13a同士の締結力はカシメ14a同士の締結力よりも小さい。
前記打抜部材には、前記第1のカシメがM(Mは1以上の自然数)個設けられており、前記第2のカシメがN(NはMよりも大きい自然数)個設けられている、請求項1に記載の積層鉄心。
前記第4のパンチには、前記第1のカシメに対応する位置に第1の押圧突起が設けられていると共に、前記第2のカシメに対応する位置に第2の押圧突起が設けられており、
前記4の工程では、前記金属板を前記第4のパンチで打ち抜いて前記打抜部材を形成する際に、前記第1のカシメの凹部を、対応する前記第1の押圧突起で押圧しつつ、前記第2のカシメの凹部を、対応する前記第2の押圧突起で押圧する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記4の工程では、前記金属板を前記第4のパンチで打ち抜いて前記打抜部材を形成する際に、前記第1のカシメの凹部のうち側壁面及び底壁面の一方を、対応する前記第1の押圧突起で押圧しつつ、前記第2のカシメの凹部のうち側壁面及び底壁面の一方を、対応する前記第2の押圧突起で押圧する、請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。
【0014】
≪実施形態の概要≫
[1]本実施形態の一つの例に係る積層鉄心は、少なくとも一つの第1のカシメと少なくとも一つの第2のカシメとが設けられた複数の打抜部材が積層された積層体を備える。積層体の中心部には、積層体の積層方向に沿って積層体を貫通して延びる中心孔が設けられている。積層方向において隣り合う打抜部材のうち、対応する第1のカシメ同士が結合されていると共に、対応する第2のカシメ同士が結合されている。打抜部材において、第2のカシメは、第1のカシメよりも外周縁側に位置している。第2のカシメ同士の締結力は第1のカシメ同士の締結力よりも小さい。
【0015】
本実施形態の一つの例に係る積層鉄心では、第2のカシメ同士の締結力は第1のカシメ同士の締結力よりも小さい。そのため、一の打抜部材が他の打抜部材に対して積層される場合には、一の打抜部材における第1のカシメの凸部が他の打抜部材における第1のカシメの凹部に対して相対的に嵌入されがたいが、一の打抜部材における第2のカシメの凸部が他の打抜部材における第2のカシメの凹部に対して相対的に嵌入されやすい。従って、比較的変形しやすい外周縁側に位置している一の打抜部材における第2のカシメは、他の打抜部材における第2のカシメと位置ずれが生じたとしても、当該他の打抜部材における第2のカシメと結合しやすくなる。その結果、積層方向において隣り合う打抜部材同士を第1及び第2のカシメによって適切に締結することにより、積層鉄心の精度の向上を図ることが可能となる。
【0016】
[2]上記第1項に記載の積層鉄心において、打抜部材には、第1のカシメがM(Mは1以上の自然数)個設けられており、第2のカシメがN(NはMよりも大きい自然数)個設けられていてもよい。ところで、上記のとおり、一の打抜部材における第1のカシメの凸部が他の打抜部材における第1のカシメの凹部に対して相対的に嵌入されがたい。そのため、一の打抜部材における第1のカシメの凸部が他の打抜部材における第1のカシメの凹部内に完全に嵌まり込まず、第1のカシメの周囲において隙間が生じやすい傾向にある。一方、一つの第2のカシメのみを見た場合、第2のカシメ同士は相対的に嵌入されやすいものの、一つの打抜部材に設けられる第2のカシメの数が多くなると、第2のカシメ同士が嵌入されがたくなり得る。これは、製造誤差等により、積層方向において隣り合う一対の打抜部材において対応する第2のカシメ同士の位置に僅かなずれが生ずるためである。そのため、第2項に記載の積層鉄心のように、第1のカシメよりも第2のカシメの数が多いと、第1のカシメの周囲において生じた隙間と同程度の隙間を、第2のカシメによって形成することができる。従って、打抜部材同士の隙間の均一性がより高まる。その結果、積層鉄心の精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0017】
[3]上記第1項又は第2項に記載の積層鉄心において、第2のカシメの突出量は第1のカシメ同士の突出量よりも小さくてもよい。
【0018】
[4]上記第1項〜第3項のいずれか一項に記載の積層鉄心において、積層体のうち中心孔の周囲には、積層方向に沿って積層体を貫通して延びる複数の磁石挿入孔が設けられており、積層体のうち複数の磁石挿入孔と中心孔とで囲まれる部分は、積層体の主部として機能し、積層体のうち各磁石挿入孔と積層体の外周面とで囲まれる部分はそれぞれ、島状を呈する副部として機能し、各副部は、接続部によって主部に対して一体的に連結されており、第1のカシメは、打抜部材のうち主部に対応する領域に設けられており、第2のカシメは、打抜部材のうち副部に対応する領域に設けられていてもよい。この場合、打抜部材のうち特に変位が生じやすい副部に対応する領域に第2のカシメが設けられているので、積層方向において隣り合う当該領域同士を第2のカシメでしっかりと結合することができる。従って、島状の副部を有する回転子積層鉄心においても、精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0019】
[5]本実施形態の他の例に係る積層鉄心の製造方法は、帯状の金属板に第1の貫通孔を第1のパンチにより形成する第1の工程と、少なくとも一つの第1のカシメを第2のパンチにより金属板に形成する第2の工程と、少なくとも一つの第2のカシメを第3のパンチにより金属板に形成する第3の工程と、金属板を第4のパンチで打ち抜いて、第1の貫通孔、第1のカシメ及び第2のカシメが設けられた打抜部材を形成する第4の工程と、複数の打抜部材を積層して積層体を構成する第5の工程とを含む。第5の工程では、積層方向において隣り合う打抜部材の間で第1の貫通孔同士が重なり合うことにより、積層方向に沿って積層体を貫通して延び且つ積層体の中心部に位置する中心孔を構成している。積層方向において隣り合う打抜部材のうち、対応する第1のカシメ同士が結合されていると共に、対応する第2のカシメ同士が結合されている。打抜部材において、第2のカシメは、第1のカシメよりも外周縁側に位置している。第2のカシメ同士の締結力は第1のカシメ同士の締結力よりも小さい。本実施形態の他の例に係る積層鉄心の製造方法は、上記第1項に係る積層鉄心と同様の作用効果を奏する。
【0020】
[6]上記第5項に記載の方法において、第2の工程では、M(Mは1以上の自然数)個の第1のカシメを第2のパンチにより金属板に形成し、第3の工程では、N(NはMよりも大きい自然数)個の第2のカシメを第3のパンチにより金属板に形成し、打抜部材には、第1のカシメがM(Mは1以上の自然数)個設けられており、第2のカシメがN(NはMよりも大きい自然数)個設けられていてもよい。この場合、上記第2項に係る積層鉄心と同様の作用効果を奏する。
【0021】
[7]上記第5項又は第6項に記載の方法において、第2のカシメの突出量は第1のカシメ同士の突出量よりも小さくてもよい。
【0022】
[8]上記第5項〜第7項のいずれか一項に記載の方法において、第4のパンチには、第1のカシメに対応する位置に第1の押圧突起が設けられていると共に、第2のカシメに対応する位置に第2の押圧突起が設けられており、4の工程では、金属板を第4のパンチで打ち抜いて打抜部材を形成する際に、第1のカシメの凹部を、対応する第1の押圧突起で押圧しつつ、第2のカシメの凹部を、対応する第2の押圧突起で押圧してもよい。この場合、第1のカシメ同士及び第2のカシメ同士をより強固に結合することが可能となる。
【0023】
[9]上記第8項に記載の方法において、4の工程では、金属板を第4のパンチで打ち抜いて打抜部材を形成する際に、第1のカシメの凹部のうち側壁面及び底壁面の一方を、対応する第1の押圧突起で押圧しつつ、第2のカシメの凹部のうち側壁面及び底壁面の一方を、対応する第2の押圧突起で押圧してもよい。ところで、第1の押圧突起の形状が第1のカシメの凹部の形状と略一致していると、第1の押圧突起を、対応する第1のカシメに対して精度よく位置決めする必要がある。同様に、第2の押圧突起の形状が第2のカシメの凹部の形状と略一致していると、第2の押圧突起を、対応する第2のカシメに対して精度よく位置決めする必要がある。しかしながら、第6項に記載の方法によれば、第1及び第2の押圧突起がそれぞれ対応する第1及び第2のカシメの凹部の一部の壁面を押圧するので、第1及び第2の押圧突起の位置決めを必ずしも高精度に行う必要がなくなる。そのため、積層鉄心をより低コストで且つ効率的に製造することが可能となる。
【0024】
[10]上記第5項〜第9項のいずれか一項に記載の方法は、第4の工程の前に、複数の第2の貫通孔を第5のパンチにより金属板に形成する第6の工程をさらに含み、第5の工程では、積層方向において隣り合う打抜部材同士で複数の第2の貫通孔同士が重なり合うことにより、積層方向に沿って積層体を貫通して延び且つ中心孔の周囲において並ぶ複数の磁石挿入孔を構成しており、積層体のうち複数の磁石挿入孔と中心孔とで囲まれる部分は、積層体の主部として機能し、積層体のうち各磁石挿入孔と積層体の外周面とで囲まれる部分はそれぞれ、島状を呈する副部として機能し、各副部は、接続部によって主部に対して一体的に連結されており、第1のカシメは、打抜部材のうち主部に対応する領域に設けられており、第2のカシメは、打抜部材のうち副部に対応する領域に設けられていてもよい。この場合、上記第4項に係る積層鉄心と同様の作用効果を奏する。
【0025】
≪実施形態の例示≫
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0026】
[回転子積層鉄心の構成]
まず、
図1〜
図4を参照して、回転子積層鉄心1の構成について説明する。回転子積層鉄心1は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、回転子積層鉄心1に端面板及びシャフト(共に図示せず)が取り付けられてなる。回転子が固定子(ステータ)と組み合わされることにより、電動機(モータ)が構成される。
【0027】
回転子積層鉄心1は、
図1に示されるように、円筒形状を呈している。すなわち、回転子積層鉄心1の中央部分には、中心軸Axに沿って回転子積層鉄心1を貫通して延びる中心孔1a(貫通孔)が設けられている。中心孔1a内には、シャフトが配置可能である。
【0028】
回転子積層鉄心1のうち中心孔1aの周囲には、中心軸Axに沿って回転子積層鉄心1を貫通して延びる複数の磁石挿入孔10(貫通孔)が設けられている。本実施形態では、回転子積層鉄心1には4つの磁石挿入孔10が設けられている。
【0029】
具体的には、本実施形態では、磁石挿入孔10は、第1の部分10aと、第2の部分10bと、第3の部分10cとを有する。第1の部分10aは、中心孔1a近傍を延びている。第2の部分10bは、第1の部分10aの一端から連続して回転子積層鉄心1の外周面に向けて、回転子積層鉄心1の径方向に沿って延びている。第3の部分10cは、第1の部分10aの一端から連続して回転子積層鉄心1の外周面に向けて、回転子積層鉄心1の径方向に沿って延びている。従って、本実施形態では、中心軸Ax方向から見て、磁石挿入孔10が略C字形状を呈している。なお、磁石挿入孔10の形状は、その他の形状(例えば、楕円形状、長円形状(角が丸い四角形状)、弧状等)であってもよい。磁石挿入孔10の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0030】
本実施形態では、周方向において隣り合う磁石挿入孔10において、第1の部分10aの端部同士は隣接している。そのため、各磁石挿入孔10の第1の部分10aは、中心軸Ax方向から見て、全体として四角形状を呈している。回転子積層鉄心1のうち中心孔1aと各磁石挿入孔10の第1の部分10aとで囲まれる部分R1は、回転子積層鉄心1の主部1bとして機能する。一方、回転子積層鉄心1のうち各磁石挿入孔10と回転子積層鉄心1の外周面とで囲まれる部分R2はそれぞれ、島状を呈しており、主部1bに対して副部1cとして機能する。
【0031】
図1及び
図2に示されるように、中心軸Ax方向から見て、第2及び第3の部分10b,10cの先端部(磁石挿入孔10の両端部)はそれぞれ、回転子積層鉄心1の外周面近傍まで延びている。そのため、各第2の部分10bの先端と回転子積層鉄心1の外周面との間、及び、各第3の部分10cの先端と回転子積層鉄心1の外周面との間は、第1の接続部(ブリッジ)1dを構成している。一方、一の磁石挿入孔10における第2の部分10bは、周方向において隣り合う他の磁石挿入孔10における第3の部分10cと隣接している。そのため、隣り合う第2の部分10bと第3の部分10cとの間は、第2の接続部(ブリッジ)1eとして機能する。すなわち、各副部1cは、第1及び第2の接続部1d,1eを介して、主部1bに対して一体的に連結されている。本実施形態において、第1及び第2の接続部1d,1eの幅は、共に極めて細く設定されており、例えば0.1mm〜1mm程度であってもよい。
【0032】
磁石挿入孔10のうち第1の部分10a内には、少なくとも一つの永久磁石11が配置されている。中心軸Ax方向から見て、磁石挿入孔10の大きさは永久磁石11の外形よりも大きい。永久磁石11の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0033】
永久磁石11が挿入された後の磁石挿入孔10内には、樹脂材料12が充填されている。樹脂材料12は、永久磁石11を磁石挿入孔10内に固定する機能と、上下方向で隣り合う打抜部材W同士を接合する機能とを有する。樹脂材料12としては、例えば熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。なお、樹脂材料12として熱可塑性樹脂を使用してもよい。
【0034】
回転子積層鉄心1は、複数の打抜部材W(打抜部材)が積み重ねられた積層体である。複数の打抜部材Wの積層方向は、中心軸Axの延在方向でもある。打抜部材Wは、後述する電磁鋼板ES(金属板)が所定形状に打ち抜かれた板状体である。中心軸Ax方向から見た打抜部材Wの形状は、中心軸Ax方向から見た回転子積層鉄心1の形状と略同一である。回転子積層鉄心1は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に回転子積層鉄心1の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0035】
各副部1cには、一つのカシメ部13が設けられている。具体的には、カシメ部13は、
図3に示されるように、回転子積層鉄心1の最下層以外をなす打抜部材Wの副部1cに形成されたカシメ13a(第2のカシメ)と、回転子積層鉄心1の最下層をなす打抜部材Wの副部1cに形成された貫通孔13bとを有する。カシメ13aは、打抜部材Wの表面側に形成された凹部と、打抜部材Wの裏面側に形成された凸部とで構成されている。一の打抜部材Wのカシメ13aの凹部は、当該一の打抜部材Wの表面側に隣り合う他の打抜部材Wのカシメ13aの凸部と接合される。一の打抜部材Wのカシメ13aの凸部は、当該一の打抜部材Wの裏面側において隣り合う更に他の打抜部材Wのカシメ13aの凹部と接合される。貫通孔13bには、回転子積層鉄心1の最下層に隣接する打抜部材Wのカシメ13aの凸部が接合される。貫通孔13bは、回転子積層鉄心1を連続して製造する際、既に製造された回転子積層鉄心1に対し、続いて形成された打抜部材Wがカシメ13aによって締結されるのを防ぐ機能を有する。
【0036】
主部1bのうち各角部(周方向において隣り合う第1の部分10aの端部の間)には、カシメ部14が一つずつ設けられている。カシメ部14は、
図4に示されるように、回転子積層鉄心1の最下層以外をなす打抜部材Wの主部1bに形成されたカシメ14a(第1のカシメ)と、回転子積層鉄心1の最下層をなす打抜部材Wの主部1bに形成された貫通孔14bとを有する。カシメ14aは、打抜部材Wの表面側に形成された凹部と、打抜部材Wの裏面側に形成された凸部とで構成されている。一の打抜部材Wのカシメ14aの凹部は、当該一の打抜部材Wの表面側に隣り合う他の打抜部材Wのカシメ14aの凸部と接合される。一の打抜部材Wのカシメ14aの凸部は、当該一の打抜部材Wの裏面側において隣り合う更に他の打抜部材Wのカシメ14aの凹部と接合される。貫通孔14bには、回転子積層鉄心1の最下層に隣接する打抜部材Wのカシメ14aの凸部が接合される。貫通孔14bは、回転子積層鉄心1を連続して製造する際、既に製造された回転子積層鉄心1に対し、続いて形成された打抜部材Wがカシメ14aによって締結されるのを防ぐ機能を有する。
【0037】
図1及び
図2に示されるように、各副部1cに設けられているカシメ部13は、主部1bに設けられているカシメ部14よりも、回転子積層鉄心1の外周縁側に位置している。
図3及び
図4に示されるように、カシメ13aの突出量はカシメ14aの突出量よりも小さい。そのため、カシメ13a同士の締結力は、カシメ14a同士の締結力よりも小さい。
【0038】
複数の打抜部材W同士は、カシメ部13,14に加えて、他の接合方法が用いられていてもよい。他の接合方法としては、例えば、接着剤又は樹脂材料を用いた接合、溶接による接合などが挙げられる。
【0039】
[積層鉄心の製造装置]
続いて、
図5を参照して、回転子積層鉄心1の製造装置100について説明する。
【0040】
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から回転子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120(送出部)と、打抜装置130と、コントローラ140(制御部)とを備える。
【0041】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラ140からの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0042】
コイル材111を構成する電磁鋼板ESの長さは、例えば500m〜10000m程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、例えば0.1mm〜0.5mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、より優れた磁気的特性を有する回転子積層鉄心1を得る観点から、例えば0.1mm〜0.3mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの幅は、例えば50mm〜500mm程度であってもよい。
【0043】
打抜装置130は、コントローラ140からの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを複数のパンチにより順次打ち抜き加工して打抜部材Wをそれぞれ形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材Wを順次積層して回転子積層鉄心1を製造する機能とを有する。
【0044】
コントローラ140は、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及び打抜装置130をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、送出装置120及び打抜装置130に送信する。
【0045】
[積層鉄心の製造方法]
続いて、回転子積層鉄心1の製造方法について、
図5〜
図10を参照して説明する。
【0046】
図5に示されるように、電磁鋼板ESが送出装置120によって打抜装置130に送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位が所定のパンチに到達すると、中心孔1aに対応する貫通孔の形成(いわゆる内径抜き)、各磁石挿入孔10に対応する貫通孔の形成、カシメ13a又は貫通孔13bの形成、カシメ14a又は貫通孔14bの形成、電磁鋼板ESからの打抜部材Wの打ち抜き(いわゆる外径抜き)がそれぞれ行われる。
【0047】
カシメ13aは次のように形成される。すなわち、
図6(a)に示されるように、コントローラ140からの指示信号に基づいて打抜装置130が動作すると、ストリッパ134がダイプレート133に向けて降下して、電磁鋼板ESがダイプレート133及びストリッパ134によって挟持される。この状態でさらに打抜装置130が動作すると、ストリッパ134に設けられている貫通孔134aを通じてパンチP1(第3のパンチ)が降下して、ダイプレート133に保持されたダイ133a内へと電磁鋼板ESをパンチP1の先端部が押し出す。これにより、電磁鋼板ESにカシメ13aが形成される。カシメ14aも、
図6(b)に示されるように、カシメ13aと同様にパンチP2(第2のパンチ)によって形成される。
【0048】
パンチP1の先端部の長さd1は、パンチP2の先端部の長さd2よりも短く設定されている。そのため、カシメ13aの突出量はカシメ14aの突出量よりも小さくなる。なお、長さd1は例えば0.20mm程度であってもよく、長さd2は例えば0.35mm程度であってもよい。
【0049】
電磁鋼板ESからの打抜部材Wの打ち抜きは次のように行われる。すなわち、
図7に示されるように、コントローラ140からの指示信号に基づいて打抜装置130が動作すると、ストリッパ134がダイプレート133に向けて降下して、電磁鋼板ESがダイプレート133及びストリッパ134によって挟持される。この状態でさらに打抜装置130が動作すると、ストリッパ134に設けられている貫通孔134bを通じてパンチP3(第4のパンチ)が降下して、ダイプレート133に保持されたダイ133b内へとパンチP3の先端部が挿入される。これにより、パンチP3の先端部によって電磁鋼板ESから打抜部材Wが打ち抜かれる。
【0050】
パンチP3の先端面には、
図8に示されるように、複数の押圧突起P3a(第2の押圧突起)と、複数の押圧突起P3b(第1の押圧突起)とが設けられている。押圧突起P3a,P3bは、当該先端面から当該先端面に対して交差する方向に突出している。複数の押圧突起P3aは、電磁鋼板ESに設けられているカシメ13aに対応する位置にそれぞれ設けられている。複数の押圧突起P3bは、電磁鋼板ESに設けられているカシメ14aに対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0051】
パンチP3が電磁鋼板ESから打抜部材Wを打ち抜く際には、押圧突起P3aが、対応するカシメ13aを押圧すると共に(
図8(a)参照)、押圧突起P3bが、対応するカシメ14aを押圧する(
図8(b)参照)。ここで、押圧突起P3aの幅は、カシメ13aの凹部の幅よりも小さく構成されている。そのため、押圧突起P3aは、カシメ13aの凹部の底壁面を押圧するが、当該凹部の側壁面には当接しない。同様に、押圧突起P3bの幅は、カシメ14aの凹部の幅よりも小さく構成されている。そのため、押圧突起P3bは、カシメ14aの凹部の底壁面を押圧するが、当該凹部の側壁面には当接しない。
【0052】
押圧突起P3aの高さd3は、カシメ13aの凹部の深さと同程度であってもよいし、当該深さよりも大きくてもよい。同様に、押圧突起P3bの高さd4は、カシメ14aの凹部の深さと同程度であってもよいし、当該深さよりも大きくてもよい。なお、高さd3は例えば0.25mm程度であってもよいし、高さd4は例えば0.40mm程度であってもよい。
【0053】
パンチP3によって電磁鋼板ESから打ち抜かれた打抜部材Wは、
図7に示されるように、下型131に設けられた排出孔131a内において、シリンダ131b上によって弾性的に支持される。すなわち、シリンダ131b上において複数の打抜部材Wが積層され、カシメ13a同士が結合されると共にカシメ14a同士が結合されることにより、回転子積層鉄心1が構成される。
【0054】
シリンダ131bは、ステージ131cに設けられた孔131e内に配置されており、コントローラ140からの指示信号に基づいて、上下方向に移動可能に構成されている。具体的には、シリンダ131bは、シリンダ131b上に打抜部材Wが積み重ねられるごとに間欠的に下方に移動する。シリンダ131b上において打抜部材Wが所定枚数まで積層され、回転子積層鉄心1が形成されると、
図9に示されるように、シリンダ131bの表面がステージ131cの表面と同一高さとなる位置にシリンダ131bが移動する。その後、コントローラ140からの指示信号に基づいてプッシャ131dが動作し、プッシャ131dがシリンダ131b上の回転子積層鉄心1をステージ131cに払い出す。
【0055】
[作用]
ところで、打抜部材Wが電磁鋼板ESからパンチP3で打ち抜かれる際、中心孔1aに対応する貫通孔が打抜部材Wの中心部に存在しているので、打抜部材Wが当該貫通孔に向けて若干変形することがある。すなわち、打抜部材Wの外周縁には、径方向内側に向かう荷重が作用する。特に、回転子積層鉄心1の主部1bと副部1cとを一体的に連結する第1及び第2の接続部1d,1eは上記のとおり細い。そのため、打抜部材Wのうち第1及び第2の接続部1d,1eに対応する部分が変形しやすい。従って、副部1cが変位してしまうことにより、積層方向において隣り合う打抜部材の間で、カシメ部同士の締結力が低下したり、そもそもカシメ同士が適切に締結されずに、打抜部材のうち副部に対応する部分においてめくれが発生しうる。
【0056】
しかしながら、以上のような本実施形態では、カシメ13a同士の締結力はカシメ14a同士の締結力よりも小さい。そのため、一の打抜部材Wが他の打抜部材Wに対して積層される場合には、一の打抜部材Wにおけるカシメ14aの凸部が他の打抜部材Wにおけるカシメ14aの凹部に対して相対的に嵌入されがたいが、一の打抜部材Wにおけるカシメ13aの凸部が他の打抜部材Wにおけるカシメ13aの凹部に対して相対的に嵌入されやすい。従って、比較的変形しやすい外周縁側に位置している一の打抜部材Wにおけるカシメ13aは、他の打抜部材Wにおけるカシメ13aと位置ずれが生じたとしても、当該他の打抜部材Wにおけるカシメ13aと結合しやすくなる。しかも、打抜部材Wのうち特に変位が生じやすい副部1cに対応する領域にカシメ13aが設けられているので、積層方向において隣り合う当該領域同士をカシメ13aでしっかりと結合することができる。その結果、積層方向において隣り合う打抜部材W同士をカシメ部13によって適切に締結することにより、回転子積層鉄心1の精度の向上を図ることが可能となる。
【0057】
本実施形態では、パンチP3の先端面に押圧突起P3a,P3bが設けられており、パンチP3によって電磁鋼板ESを打ち抜く際に、押圧突起P3aが、対応するカシメ13aを押圧すると共に、押圧突起P3bが、対応するカシメ14aを押圧している。そのため、カシメ13a同士及びカシメ14a同士をより強固に結合することが可能となる。
【0058】
ところで、押圧突起P3aの形状がカシメ13aの凹部の形状と略一致していると、押圧突起P3aを、対応するカシメ13aに対して精度よく位置決めする必要がある。同様に、押圧突起P3bの形状がカシメ14aの凹部の形状と略一致していると、押圧突起P3bを、対応するカシメ14aに対して精度よく位置決めする必要がある。しかしながら、本実施形態では、パンチP3によって電磁鋼板ESを打ち抜く際に、押圧突起P3aがカシメ13aの凹部の底壁面を押圧すると共に、押圧突起P3bがカシメ14aの凹部の底壁面を押圧している。そのため、押圧突起P3a,P3bの位置決めを必ずしも高精度に行う必要がなくなる。従って、回転子積層鉄心1をより低コストで且つ効率的に製造することが可能となる。
【0059】
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0060】
例えば、
図10に示されるように、押圧突起P3aの高さがカシメ13aの深さよりも小さく構成されており、押圧突起P3bの高さがカシメ14aの深さよりも小さく構成されていてもよい。そのため、パンチP3が電磁鋼板ESから打抜部材Wを打ち抜く際、押圧突起P3aは、カシメ13aの凹部の側壁面を押圧するが、当該凹部の底壁面には当接しない。同様に、押圧突起P3bは、カシメ14aの凹部の側壁面を押圧するが、当該凹部の底壁面には当接しない。この場合も、押圧突起P3a,P3bの位置決めを必ずしも高精度に行う必要がなくなる。従って、回転子積層鉄心1をより低コストで且つ効率的に製造することが可能となる。
【0061】
押圧突起P3aの形状がカシメ13aの凹部の形状と略一致していてもよいし、押圧突起P3bの形状がカシメ14aの凹部の形状と略一致していてもよい。
【0062】
上記の実施形態では、一つの副部1cに対して一つのカシメ部13が設けられていたが、一つの副部1cに対して複数のカシメ部13が設けられていてもよい。上記の実施形態では、主部1bに対して4つのカシメ部14が設けられていたが、主部1bに対して少なくとも一つのカシメ部14が設けられていてもよい。
【0063】
上記の実施形態では、副部1cにカシメ部13が設けられており、主部1bにカシメ部14が設けられていたが、カシメ部13がカシメ部14よりも回転子積層鉄心1の外周面側に位置していれば、カシメ部13,14が形成される位置は特に限定されない。すなわち、カシメ部13がカシメ部14よりも回転子積層鉄心1の外周面側に位置していれば、カシメ部13,14が共に副部1cに設けられていてもよいし、カシメ部13,14が共に主部1bに設けられていてもよい。
【0064】
ところで、上記のとおり、一の打抜部材Wにおけるカシメ14aの凸部が他の打抜部材Wにおけるカシメ14aの凹部内に完全に嵌まり込まず、カシメ14aの周囲において隙間が生じやすい傾向にある。一方、一つのカシメ13aのみを見た場合、カシメ13a同士は相対的に嵌入されやすいものの、一つの打抜部材Wに設けられているカシメ13aの数が多くなると、カシメ13a同士が嵌入されがたくなり得る。これは、製造誤差等により、積層方向において隣り合う打抜部材Wの間で、対応するカシメ13a同士の位置に僅かなずれが生ずるためである。そこで、上記の実施形態ではカシメ部13,14の数が同一であったが、カシメ部13の数がカシメ部14の数よりも多くてもよい。すなわち、一つの打抜部材Wに対して、M(Mは自然数)個のカシメ14aと、N(NはMよりも大きい自然数)のカシメ13aとが設けられていればよい。この場合、カシメ14aの周囲において生じた隙間と同程度の隙間を、カシメ13aによって形成することができる。従って、打抜部材W同士の隙間の均一性がより高まる。その結果、回転子積層鉄心1の精度の向上を図ることが可能となる。
【0065】
一つの打抜部材Wに複数のカシメ13aが設けられている場合、数個のカシメ13aが互いに隣り合って一つの組を形成するように配置されていてもよい。同様に、一つの打抜部材Wに複数のカシメ14aが設けられている場合、数個のカシメ14aが互いに隣り合って一つの組を形成するように配置されていてもよい。
【0066】
上記の実施形態では、カシメ13aの凸部の突出量がカシメ14aの凸部の突出量よりも小さくなるように構成されていたが、カシメ13a同士の締結力がカシメ14a同士の締結力よりも小さければ、カシメ13a,14aの形態はこれに限られない。例えば、平面視におけるカシメ13aの大きさが平面視におけるカシメ14aの大きさよりも小さければ、カシメ13a同士の締結力がカシメ14a同士の締結力よりも小さくなる。あるいは、カシメ13aのクリアランス(カシメを形成するためのパンチの外周面とダイの内周面との差)の大きさがカシメ14aのクリアランスの大きさよりも小さければ、カシメ13a同士の締結力がカシメ14a同士の締結力よりも小さくなる。なお、カシメ13a同士及びカシメ14a同士の締結力は、例えば、カシメ13a,14aの周囲において回転子積層鉄心1を切断した後に、打抜部材W同士を引き剥がし、そのときに要する力の大きさを測定することにより求めてもよい。
【0067】
上記の実施形態では、カシメ13a,14aが断面台形状を呈していたが、カシメ13a,14aの断面形状はこれに限られず種々の形状(例えば、断面V字形状、断面U字形状等)であってもよい。
【0068】
図11(a)に示されるように、周方向において隣り合う磁石挿入孔10において、第1の部分10aの端部同士は、隣接しておらず、互いにある程度離間していてもよい。すなわち、第2の接続部1eの幅がある程度太く設定されていてもよい。この場合も、回転子積層鉄心1のうち中心孔1aと各磁石挿入孔10の第1の部分10aとでおおよそ囲まれる部分R1(
図11(a)に示される形態において具体的には、回転子積層鉄心1のうち中心孔1aと第1の部分10aと第2の接続部1eとで囲まれる部分R1)が、回転子積層鉄心1の主部1bとして機能する。
【0069】
図11(b)に示されるように、中心軸Ax方向から見て、第2及び第3の部分10b,10cの先端部(磁石挿入孔10の両端部)はそれぞれ、回転子積層鉄心1の外周面近傍まで延びておらず、離間していてもよい。すなわち、第1の接続部1dの幅がある程度太く設定されていてもよい。この場合も、回転子積層鉄心1のうち各磁石挿入孔10と回転子積層鉄心1の外周面とである程度囲まれる部分R2(
図11(b)に示される形態において具体的には、回転子積層鉄心1のうち各第1の部分10aと回転子積層鉄心1の外周面と第1の接続部1dとで囲まれる部分R2)はそれぞれ、回転子積層鉄心1の副部1cとして機能する。
【0070】
図示はしていないが、第1及び第2の接続部1d,1eが共にある程度太く設定されていてもよい。この場合も、回転子積層鉄心1のうち中心孔1aと各磁石挿入孔10の第1の部分10aとでおおよそ囲まれる部分R1(例えば、回転子積層鉄心1のうち中心孔1aと第1の部分10aと第2の接続部1eとで囲まれる部分R1)が、回転子積層鉄心1の主部1bとして機能すると共に、回転子積層鉄心1のうち各磁石挿入孔10と回転子積層鉄心1の外周面とである程度囲まれる部分R2(例えば、回転子積層鉄心1のうち各第1の部分10aと回転子積層鉄心1の外周面と第1の接続部1dとで囲まれる部分R2)はそれぞれ、回転子積層鉄心1の副部1cとして機能する。
【0071】
上記の実施形態では、回転子積層鉄心1について説明したが、
図12及び
図13に示されるような分割可能な固定子積層鉄心2、分割不可能な固定子積層鉄心(図示せず)などの他の形態の積層鉄心に本発明を適用してもよい。
【0072】
ここで、
図12に示される固定子積層鉄心2の構成について説明する。固定子積層鉄心2は、複数の打抜部材Wが積み重ねられた積層体である。固定子積層鉄心2は、固定子(ステータ)の一部である。固定子は、固定子積層鉄心2に巻線が取り付けられたものである。固定子が回転子(ロータ)と組み合わされることにより、電動機(モータ)が構成される。
【0073】
固定子積層鉄心2は、
図12に示されるように、円筒形状を呈している。すなわち、固定子積層鉄心2の中央部分には、中心軸Axに沿って延びる中心孔2a(貫通孔)が設けられている。中心孔2a内には、回転子が配置可能である。
【0074】
固定子積層鉄心2は、ヨーク部21と、複数のティース部22と、複数のカシメ部13,14とを有する。ヨーク部21は、円環状を呈しており、中心軸Axを囲むように延びている。ヨーク部21の径方向における幅、内径、外径及び厚さはそれぞれ、モータの用途及び性能に応じて種々の大きさに設定しうる。
【0075】
各ティース部22は、ヨーク部21の内縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク部21の径方向に沿って延びている。すなわち、各ティース部22は、ヨーク部21の内縁から中心軸Ax側に向けて突出している。固定子積層鉄心2においては、12個のティース部22がヨーク部21に一体的に形成されている。各ティース部22は、ヨーク部21の周方向において、略等間隔で並んでいる。隣り合うティース部22の間には、巻線(図示せず)を配置するための空間であるスロット25が画定されている。
【0076】
複数のカシメ部13は、ヨーク部21に設けられている。カシメ部14は、ティース部22に一つずつ設けられている。カシメ部13の数はカシメ部14の数よりも多い。本実施形態において、積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、カシメ部13,14によって締結されている。
【0077】
打抜部材Wのうちヨーク部21に対応する部分(ヨーク対応部分)には、12本の切断線CLが設けられている。各切断線CLは、ヨーク対応部分を横断すると共にティース部22に対応する部分(ティース対応部分)を間に置くように径方向に沿って延びている。各切断線CLは、ヨーク対応部分の周方向において、略等間隔で並んでいる。各切断線CLは、例えば、電磁鋼板ESを切り曲げ加工又は打ち抜き加工した後、切り曲げ部位又は打ち抜き部位(加工済部位)をプッシュバックして、被加工板の元の位置(被加工位置)に圧入することにより、形成されてもよい。電磁鋼板ESが切り曲げ加工又は打抜き加工されると、加工済部位が塑性変形して若干延びるので、加工済部位が被加工位置へ圧入されると、加工済部位と電磁鋼板ESとは、人手では簡単に外れない程度にしっかりと嵌まり合う。
【0078】
切断線CLの形状は、
図12に示されるような凹凸状に限定されず、ヨーク対応部分の外周縁と内周縁との間を横断していれば、直線状、曲線状、クランク状、弧状、円弧状等の種々の形状であってもよい。切断線CLの形状が直線状である場合には、径方向に沿って延びていてもよいし、径方向に対して所定の角度傾斜した状態で延びていてもよい。切断線CLの形状が直線状である場合には、小さな力でヨーク対応部分を切断線CLにおいて個片化しやすい傾向にある。
【0079】
固定子積層鉄心2に所定の力を付与して固定子積層鉄心2を切断線CLにおいて個片化すると、一つの固定子積層鉄心2から、複数の鉄心片26(
図12では12個の鉄心片26)が得られる。換言すれば、固定子積層鉄心2も、複数の鉄心片26が組み合わされた組物であるともいえる。一つの鉄心片26は、一つのヨーク片部21aと、一つのティース部22とで構成されている。ヨーク片部21aは、ヨーク部21が切断線CLで分離されたときのヨーク部21の一部分である。従って、固定子積層鉄心2は、中心軸Axの周方向において隣り合う鉄心片26がヨーク片部22aの端部(切断線CL)において仮接続されることにより一体化されたものである。
【0080】
図13に示されるように、一つのヨーク片部21aに対して複数のティース部22が設けられていてもよい。具体的には、一つのヨーク片部21aに対して2つのティース部22(二叉状のティース部22)が設けられていてもよい。
図13に示されるように、ヨーク片部21aに三つのカシメ部13(カシメ13a)が周方向において並ぶように設けられていると共に、これらのカシメ部13の内側に一つのカシメ部14(カシメ14a)が設けられていてもよい。