【解決手段】線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)細胞外ドメイン(ECD)及び/又はFGFR1、ECD融合分子を含む医薬、及び該医薬を投与することを含む固形がんの治療方法、又はFGFR1、ECD及び/又はFGFR1、ECD融合分子と少なくとも1種の抗血管新生剤を投与することを含む固形がんの治療方法。
VEGFレベルと比較してより高いFGF2レベルを有し、VEGFレベルと比較してより高いFGF2レベルが、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)細胞外ドメイン(ECD)又はFGFR1 ECD融合分子に対するがんの治療反応性の指標であるがんを対象において治療する方法であって、対象に治療有効量のFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子を投与することを含む、方法。
線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)細胞外ドメイン(ECD)又はFGFR1 ECD融合分子での治療から恩恵を受けうる対象を特定する方法であって、対象から得られた試料中のFGF2及びVEGFのレベルを決定することを含み、試料中におけるVEGFレベルと比較してより高いFGF2レベルが、対象が線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)細胞外ドメイン(ECD)又はFGFR1 ECD融合分子での治療から恩恵を受けうることを示す、方法。
がんが、腎がん(腎細胞がん等)、肝がん(肝細胞がん等)、肺がん、結腸がん、肝がん、乳がん、胃がん、卵巣がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、神経膠芽腫、中皮腫、及び前立腺がんから選択される、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
VEGFレベルと比較してより低いFGF2レベルを有するがんを対象において治療する方法であって、対象に治療有効量のFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子と治療有効量の少なくとも1種の抗血管新生剤を投与することを含む、方法。
線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)細胞外ドメイン(ECD)又はFGFR1 ECD融合分子と少なくとも1種の抗血管新生剤での治療から恩恵を受けうる対象を特定する方法であって、対象から得られた試料中のFGF2及びVEGFのレベルを決定することを含み、試料中におけるVEGFレベルと比較してより低いFGF2レベルが、対象が線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)細胞外ドメイン(ECD)又はFGFR1 ECD融合分子と少なくとも1種の抗血管新生剤での治療から恩恵を受けうることを示す、方法。
がんが、腎がん(腎細胞がん等)、肝がん(肝細胞がん等)、肺がん、結腸がん、肝がん、乳がん、胃がん、卵巣がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、神経膠芽腫、中皮腫、及び前立腺がんから選択される、請求項14から34の何れか一項に記載の方法。
中皮腫を治療する方法において、中皮腫の対象にFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子と、パクリタキセル、カルボプラチン、ドセタキセル、ペメトレキセド、及びシスプラチンから選択される少なくとも1種の治療剤を投与することを含む、方法。
FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子と少なくとも1種の治療剤の投与が中皮腫における血管密度を減少させる、請求項36から39の何れか一項に記載の方法。
対象が、パゾパニブ、ベバシズマブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、ソラフェニブ、及びスニチニブから選択される少なくとも1種の治療剤で以前に治療されている、請求項1から49の何れか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
ここで使用される項目の見出しは、構成上の目的のために過ぎず、記載される主題を限定すると解釈されるべきではない。
【0051】
定義
別途定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。更に、文脈上別途要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0052】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)、酵素反応、並びに精製技術に関連して使用される所定の技術は、当該技術分野において既知である。多くのそのような技術及び手順は、とりわけ、例えば、 Sambrook等 Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))に記載されている。更に、化学合成、化学分析、医薬品、処方、及び送達、並びに患者の治療に関する所定の技術も当該技術分野において既知である。
【0053】
この出願において、別途記載のない限り、「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。複数項従属請求項の文脈において、「又は」の使用は、一項を越える先行する独立又は従属請求項を選択的にのみ引用する。また、「要素」又は「成分」等の用語は、特に別途指定のない限り、一ユニットを含む要素及び成分と、一を越えるサブユニットを含む要素及び成分の双方を包含する。
【0054】
ここで使用される場合、全ての数字は、近似値であり、測定誤差及び有効数字の丸めを考慮して変動しうる。所定の測定された量の前の「約」の使用は、試料の不純物、測定誤差、人為的ミス、及び統計的変動、並びに有効数字の丸めによる変動を含む。
【0055】
本開示に従って用いられる場合、別途指定のない限り、次の用語は次の意味を有すると理解されなければならない。
【0056】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用できて、ヌクレオチドのポリマーを指す。そのようなヌクレオチドのポリマーは、天然及び/又は非天然のヌクレオチドを含んでもよく、限定されないが、DNA、RNA、及びPNAを含む。「核酸配列」は、核酸分子又はポリヌクレオチドを含むヌクレオチドの直鎖配列を指す。
【0057】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は互換的に使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小長に限定されない。そのようなアミノ酸残基のポリマーは、天然又は非天然のアミノ酸残基を含んでもよく、限定されないが、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体、及び多量体を含む。完全長タンパク質及びその断片の双方が該定義に包含される。該用語はまたポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化等も含む。更に、本発明の目的のために、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する修飾、例えば、欠失、付加、及び置換(通常、本質的に保存的である)を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的変異誘発のように計画的であってもよく、又はタンパク質を産生する宿主の変異もしくはPCR増幅に起因するエラーのように偶発的であってもよい。ポリペプチドが特定のアミノ酸配列「からなる」場合、それは翻訳後修飾、例えば、グリコシル化及びシアリル化等をなおも含みうる。
【0058】
「FGFR1細胞外ドメイン」(「FGFR1 ECD」)という用語は、完全長FGFR1 ECD、FGFR1 ECD断片、及びFGFR1 ECD変異体を含む。ここで使用される場合、「FGFR1 ECD」という用語は、シグナルペプチドを伴うか又は伴わない、細胞内及び膜貫通ドメインを欠くFGFR1ポリペプチドを指す。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDは、配列番号:1及び2から選択されるアミノ酸配列を有するヒト完全長FGFR1 ECDである。ここで使用される「完全長FGFR1 ECD」という用語は、細胞外ドメインの最後のアミノ酸まで延びるFGFR1 ECDを意味し、N末端シグナルペプチドを含んでも又は含まなくてもよい。ここで定義される場合、完全長FGFR1 ECDの最後のアミノ酸は353位にある。従って、ヒト完全長FGFR1 ECDは、配列番号:2(成熟型)又は配列番号:1(シグナルペプチドを伴う)に対応するアミノ酸配列からなりうる。ここで使用される場合、「FGFR1 ECD断片」という用語は、完全長ECDのN及び/又はC末端から一又は複数の残基が欠失された、FGF−2に結合する能力を保持するFGFR1 ECDを指す。FGFR1 ECD断片は、N末端シグナルペプチドを含んでも又は含まなくてもよい。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD断片は、配列番号:4(成熟型)又は配列番号:3(シグナルペプチドを伴う)に対応するアミノ酸配列を有するヒトFGFR1 ECD断片である。
【0059】
ここで使用される場合、「FGFR1 ECD変異体」という用語は、アミノ酸付加、欠失、及び置換を含み、FGF−2に結合可能なままであるFGFR1 ECDを指す。そのような変異体は、親FGFR1 ECDと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、又は99%同一でありうる。2つのポリペプチドの%同一性は、類似性を決定するためのデフォルト設定でBestfitプログラムを使用して、2つのポリペプチドのアミノ酸配列を比較することによって決定される類似度スコアによって測定することができる。Bestfitは、Smith及びWatermanのAdvances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所相同性アルゴリズムを使用して、2つの配列間の最良の類似セグメントを見つけ出す。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD変異体は、配列番号:4の配列と少なくとも95%同一である。
【0060】
FGFR1 ECDポリペプチドの参照アミノ酸配列と、少なくとも、例えば95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、参照ポリペプチドの各100個のアミノ酸当たり最高5つのアミノ酸変化を含みうることを除いて、ポリペプチドのアミノ酸配列が参照配列と同一であるものである。換言すると、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、参照配列中のアミノ酸残基の5%までが欠失していても、もしくは別のアミノ酸で置換されてもよいか、又は参照配列中の全アミノ酸残基の5%までの数のアミノ酸が参照配列に挿入されてもよい。これらの参照配列の変化は、参照アミノ酸配列のNもしくはC末端の位置、あるいは参照配列中の残基間に個々に散在するか、又は参照配列中の一又は複数の近接グループとして散在する、これらの末端の位置の間のどこでも起こってもよい。
【0061】
実際、何れか特定のポリペプチドが、例えば、配列表に記載される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列又はポリペプチド配列と、少なくとも70%、80%、90%、又は95%同一であるかどうかは、Bestfitプログラム等の既知のコンピュータプログラムを使用して常套的に決定することができる。特定の配列が、本発明による参照配列と例えば95%同一であるかどうかを決定するためにBestfit又は他の配列アライメントプログラムを使用する場合、当然、参照アミノ酸配列の全長にわたって同一性のパーセンテージが算出され、参照配列中のアミノ酸残基の合計数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるようにパラメータが設定される。
【0062】
ここで使用される場合、「hFGFR1−ECD.353」及び「hFGFR1.353」という用語は、配列番号:1(シグナルペプチドを伴う)又は配列番号:2(シグナルペプチドを伴わない、成熟型)に対応する完全長ヒトFGFR1 ECDを指すために互換的に使用されうる。
【0063】
ここで使用される場合、「hFGFR1−ECD.339」及び「hFGFR1.339」という用語は、配列番号:3(シグナルペプチドを伴う)又は配列番号:4(シグナルペプチドを伴わない、成熟型)に対応するヒトFGFR1 ECDを指すために互換的に使用されうる。
【0064】
更なるhFGFR1 ECDは、例えばその全体があらゆる目的のためにここに出典明示により援用される米国特許第7678890号に記載される。
【0065】
「FGFR1 ECD融合分子」という用語は、FGFR1 ECDと、一又は複数の「融合パートナー」とを含む分子を指す。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDと融合パートナーとは共有結合(「融合」)している。融合パートナーもポリペプチド(「融合パートナーポリペプチド」)である場合、FGFR1 ECD及び融合パートナーポリペプチドは、連続するアミノ酸配列の一部であってもよく、融合パートナーポリペプチドは、FGFR1 ECDのN末端又はC末端の何れかに結合していてもよい。そのような場合、FGFR1 ECD及び融合パートナーポリペプチドは、FGFR1 ECD及び融合パートナーポリペプチドの双方をコードするコード配列から単一ポリペプチドとして翻訳されうる(「FGFR1 ECD融合タンパク質」)。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDと融合パートナーとは、例えば、ペプチド結合以外の化学結合等の他の手段によって共有結合される。ポリペプチドを他の分子(例えば、融合パートナー)に共有結合させる多くの既知の方法が使用されうる。他の実施態様では、FGFR1 ECDと融合パートナーとは、少なくとも一つのアミノ酸又は化学部分から構成される「リンカー」を介して融合されうる。
【0066】
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDポリペプチドと融合パートナーとは、非共有的に連結される。幾つかのそのような実施態様では、それらは、例えば、結合対を使用して連結されうる。例示的な結合対は、限定されないが、ビオチン及びアビジン又はストレプトアビジン、抗体及びその抗原等を含む。
【0067】
例示的な融合パートナーは、限定されないが、免疫グロブリンFcドメイン、アルブミン、及びポリエチレングリコールを含む。幾つかの例示的なFcドメインのアミノ酸配列を配列番号:8から10に示す。幾つかの実施態様では、Fcと融合したFGFR1 ECDは、「hFGFR1 ECD−Fc」と称される。幾つかの実施態様では、Fcドメインは、IgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 Fc、及びIgG4 Fcから選択される。
【0068】
ここで使用される場合、「hFGFR1−ECD.339−Fc」、「hFGFR1.339−Fc」、及び「FP−1039」という用語は、配列番号:6(シグナルペプチドを伴わない、成熟型)及び配列番号:5(シグナルペプチドを伴う)から選択されるアミノ酸配列を指すために互換的に使用されうる。hFGFR1−ECD.339−Fcで治療されうる非限定的な例示的がんは、限定されないが、肺がん、結腸がん、乳がん、胃がん、頭頸部がん、前立腺がん、子宮内膜がん、肉腫、小細胞肺がん、卵巣がん、カポジ肉腫、ホジキン病、白血病、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫(脳がん)、横紋筋肉腫、ウイルムス腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、膀胱がん、精巣がん、リンパ腫、胚細胞性腫瘍、結腸と直腸のがん、消化管がん、消化管間質腫瘍、甲状腺がん、多発性骨髄腫、膵がん、中皮腫、悪性胸膜中皮腫、血液/リンパ腺がん、悪性腹膜中皮腫、食道がん、腎細胞がん、多形神経膠芽腫、及び肝がんを含む。
【0069】
「シグナルペプチド」という用語は、哺乳動物細胞からのポリペプチドの分泌を促進する、ポリペプチドのN末端に位置するアミノ酸残基の配列を指す。シグナルペプチドは、哺乳動物細胞からポリペプチドを排出する際に切断され得、成熟タンパク質を形成する。シグナルペプチドは、天然又は合成であってもよく、それらが付着するタンパク質に対して異種又は相同であってもよい。例示的なシグナルペプチドは、限定されないが、FGFR1シグナルペプチド、例えば、配列番号:7のアミノ酸配列等を含む。例示的なシグナルペプチドはまた異種タンパク質由来のシグナルペプチドも含む。「シグナル配列」は、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を指す。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDはシグナルペプチドを欠く。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDは、天然FGFR1シグナルペプチド又は異種シグナルペプチドでありうる少なくとも一つのシグナルペプチドを含む。
【0070】
「ベクター」という用語は、宿主細胞中で増殖されうる一又は複数のクローン化ポリヌクレオチドを含むように操作されうるポリヌクレオチドを記述するために使用される。ベクターは、次の要素の一又は複数を含みうる:複製起点、対象とするポリペプチドの発現を調節する一又は複数の制御配列(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー等)、及び/又は一又は複数の選択可能なマーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子、及び比色分析法で使用されうる遺伝子、例えばβ−ガラクトシダーゼ)。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞において対象とするポリペプチドを発現させるために使用されるベクターを指す。
【0071】
「宿主細胞」は、ベクター又は単離ポリヌクレオチドのレシピエントとなり得るか、又はレシピエントとなった細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞でありうる。例示的な真核細胞は、哺乳動物細胞、例えば、霊長類又は非霊長類動物細胞;真菌細胞;植物細胞;及び昆虫細胞等を含む。例示的な哺乳動物細胞は、限定されないが、293及びCHO細胞、並びにそれらの誘導体、例えば、それぞれ293−6E及びDG44を含む。
【0072】
ここで使用される「単離された」という用語は、天然に典型的に見出される成分の少なくとも一部から分離されている分子を指す。例えば、それが産生された細胞の成分の少なくとも一部から分離されている場合、ポリペプチドは「単離されている」と称される。発現後に細胞によってポリペプチドが分泌される場合、それを産生した細胞からポリペプチドを含む上清を物理的に分離することは、ポリペプチドの「単離」であると考えられる。同様に、ポリヌクレオチドが、天然に典型的に見出される、より大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合、ゲノムDNA又はミトコンドリアDNA)の一部ではない場合、又はそれが産生された細胞の成分の少なくとも一部から分離される場合、例えば、RNAポリヌクレオチドの場合、ポリヌクレオチドは、「単離された」と称される。よって、宿主細胞中のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドが天然においてそのベクター中に見出されない限り、「単離された」と称されうる。
【0073】
「抗悪性腫瘍組成物」という用語は、少なくとも一種の活性な治療剤、例えば「抗がん剤」を含む、がんの治療に有用な組成物を指す。治療剤(抗がん剤)の例は、限定されないが、例えば、化学療法剤、増殖抑制剤、細胞傷害性薬剤、放射線療法に使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及びがんを治療するための他の薬剤、例えば、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、AVASTIN(登録商標))、抗HER−2抗体(例えば、トラスツズマブ、HERCEPTIN(登録商標))、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ、RITUXAN(登録商標))、上皮増殖因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標))、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(登録商標)、イマチニブメシレート))、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、次の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGF受容体、TRAIL/Apo2の一又は複数に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、並びに他の生理活性及び有機化学薬剤等を含む。これらの組合せもまた本発明に含まれる。
【0074】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学化合物を指す。化学療法剤の例は、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標));スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン並びにメチルアメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);Δ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));βラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、及び9−アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼルシン及びビセレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログのKW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えば、Nicolaou等, Angew. Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)を参照);CDP323、経口α−4インテグリン阻害剤;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D−99(MYOCET(登録商標)、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝物、例えば、メトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、ペメトレキセド(ALIMTA(登録商標));テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎物質、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2'−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T−2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE
TM)、及びドセタキセル(例えば、TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金剤、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、及びビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリン重合による微小管形成を防止するビンカ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤のRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含むレチノイド、例えばレチノイン酸;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE−58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC−α、Raf、H−Ras、及び上皮増殖因子受容体(EGF−R);ワクチン、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ、NEXAVAR(登録商標)、Bayer);SU−11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリホシン、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI−779;ティピファニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;Bcl−2阻害剤、例えば、オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;EGFR阻害剤(以下の定義を参照);チロシンキナーゼ阻害剤(以下の定義を参照);セリン−スレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ロナファルニブ(SCH6636、SARASAR
TM);及び上記の何れかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体;並びにCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略称)及びFOLFOX(5−FU及びロイコボリンと組合せたオキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標))を用いた治療レジメンの略称)等の、上記のうちの2つ以上の組合せを含む。
【0075】
ここで定義される化学療法剤は、がんの増殖を促進する可能性のあるホルモンの影響を、調節し、低下させ、遮断し、又は阻害するように作用する「抗ホルモン剤」又は「内分泌治療薬」を含む。これらは、それら自体がホルモンであってもよく、限定されないが、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4−ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン、及びSERM3等の選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)を含む、混合アゴニスト/アンタゴニストプロファイルを持つ抗エストロゲン剤;アゴニスト特性を有しない純粋な抗エストロゲン、例えば、フルベストラント(FASLODEX(登録商標))、及びEM800(このような薬剤は、エストロゲン受容体(ER)の二量体化を遮断し、DNA結合を阻害し、ER代謝回転を増加させ、かつ/又はERレベルを抑制しうる);アロマターゼ阻害剤(ホルメスタン及びエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))等のステロイドアロマターゼ阻害剤、並びに例えば、アナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))及びアミノグルテチミ等の非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、並びにボロゾール(RIVISOR(登録商標))、メゲストロール酢酸塩(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、及び4(5)−イミダゾール等の他のアロマターゼ阻害剤を含む);リュープロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、及びトリプトレリンを含む、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;プロゲスチン、例えば、メゲストロール酢酸塩及びメドロキシプロゲステロン酢酸塩、エストロゲン、例えば、ジエチルスチルベストロール及びプレマリン、並びにアンドロゲン/レチノイド、例えば、フルオキシメステロン、全てのトランス−レチノイン酸及びフェンレチニドを含む、性ステロイド;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD);抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド及びビカルタミド;並びに上記の何れかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体;並びに上記の2つ以上の組合せを含む。
【0076】
「血管新生因子又は血管新生剤」は、例えば、血管新生、内皮細胞増殖、血管の安定性、及び/又は脈管形成等を促進する、血管の発生を刺激する増殖因子を指す。例えば、血管新生因子は、限定されないが、例えば、VEGF及びVEGFファミリーのメンバー(VEGF−B、VEGF−C及びVEGF−D)、PlGF、PDGFファミリー、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンジオポエチン)、エフリン、デルタ様リガンド4(DLL4)、del−1、線維芽細胞増殖因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/分散因子(SF)、インターロイキン−8(IL−8)、レプチン、ミッドカイン、ニューロピリン、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、血小板由来増殖因子、特にPDGF−BB又はPDGFR−β、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、形質転換増殖因子−α(TGF−α)、形質転換増殖因子−β(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)等を含む。また、創傷治癒を加速させる因子、例えば、成長ホルモン、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、VIGF、上皮増殖因子(EGF)、CTGF及びそのファミリーのメンバー、並びにTGF−α及びTGF−βも含まれる。例えば、Klagsbrun及びD'Amore (1991) Annu. Rev. Physiol. 53:217-39;Streit及びDetmar (2003) Oncogene 22:3172-3179;Ferrara及びAlitalo (1999) Nature Medicine 5(12):1359-1364;Tonini等 (2003) Oncogene 22:6549-6556(例えば、既知の血管新生因子を列挙する表1);及び Sato (2003) Int. J. Clin. Oncol. 8:200-206を参照のこと。
【0077】
「抗血管新生剤」又は「血管新生阻害剤」は、血管新生、脈管形成、又は望ましくない血管透過性を直接的又は間接的の何れかで阻害する、低分子量物質、ポリヌクレオチド(例えば、阻害性RNA(RNAi又はsiRNA)を含む)、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体、又はそれらのコンジュゲートもしくは融合タンパク質を指す。抗血管新生剤は、血管新生因子又はその受容体に結合し、その血管新生活性を遮断する薬剤を含むことが理解されなければならない。例えば、抗血管新生剤は、例えば、上に定義したような血管新生剤に対する抗体又は他のアンタゴニストであり、例えば、VEGFに結合する融合タンパク質、例えば、ZALTRAP
TM(アフリベルセプト)、VEGFに対する抗体、例えば、AVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)、又はVEGF受容体(例えば、KDR受容体もしくはFlt−1受容体)に対する抗体、抗PDGFR阻害剤、例えば、GLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ)、VEGF受容体シグナル伝達を遮断する小分子(例えば、PTK787/ZK2284、SU6668、SUTENT(登録商標)/SU11248(リンゴ酸スニチニブ)、AMG706、又は例えば、国際特許出願国際公開第2004/113304号に記載されるもの)である。抗血管新生剤はまた天然の血管新生阻害剤、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン等も含む。例えば、 Klagsbrun及びD'Amore (1991) Annu. Rev. Physiol. 53:217-39;Streit及びDetmar (2003) Oncogene 22:3172-3179(例えば、悪性黒色腫の抗血管新生療法剤を列挙する表3);Ferrara及びAlitalo (1999) Nature Medicine 5(12):1359-1364;Tonini等(2003) Oncogene 22:6549-6556(例えば、既知の抗血管新生因子を列挙する表2);及びSato (2003) Int. J. Clin. dOncol. 8:200-206(例えば、臨床試験で使用される抗血管新生剤を列挙する表1)を参照のこと。
【0078】
ここで使用される「VEGF」又は「VEGFA」という用語は、165−アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子及び関連する121−、189−、及び206−アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子を指し、その天然に生じる対立遺伝子及びそのプロセシング型と共にLeung等 (1989) Science 246:1306、及びHouck等(1991) Mol. Endocrin, 5:1806に記載されている。「VEGF」という用語はまたマウス、ラット又は霊長類等の非ヒト種由来のVEGFも指す。特定の種に由来するVEGFは、例えばヒトVEGFはhVEGF、マウスVEGFはmVEGF等の用語によって示されることもしばしばある。「VEGF」という用語はまた165−アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8から109又は1から109を含むポリペプチドの切断型を指すためにも使用される。何れかのそのような形態のVEGFへの言及は、例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」、「VEGFA
109」、又は「VEGF165」によって本出願では特定されうる。「切断型」の天然VEGFのアミノ酸位置は、天然VEGF配列において示されるように番号付けされる。例えば、切断型天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然VEGFの位置17(メチオニン)でもある。切断型天然VEGFは、KDR及びFlt−1受容体に対して天然VEGFに匹敵する結合親和性を有する。
【0079】
「VEGFアンタゴニスト」は、限定されないが、一又は複数のVEGF受容体に対するその結合を含む、VEGFの活性を中和し、遮断し、阻害し、抑止し、低減し、又は妨害することができる分子を指す。VEGFアンタゴニストは、限定されないが、抗VEGF抗体及びその抗原結合断片、VEGFに特異的に結合し、それによって一又は複数の受容体に対するその結合を封鎖する受容体分子及び誘導体、抗VEGF受容体抗体、VEGF受容体アンタゴニスト、例えば、VEGFRチロシンキナーゼの小分子阻害剤(例えば、パゾパニブ)、及びVEGFに結合するイムノアドヘシン、例えば、VEGFトラップ(例えば、アフリベルセプト)を含む。ここで使用される「VEGFアンタゴニスト」という用語は、特に、VEGFに結合してVEGFの活性を中和し、遮断し、阻害し、抑止し、低減し、又は妨害することができる、抗体、抗体断片、他の結合ポリペプチド、ペプチド、及び非ペプチド小分子を含む分子を含む。従って、「VEGF活性」という用語は、特に、VEGFによって媒介されるVEGFの生物活性を含む。
【0080】
ここで使用される「VEGFトラップ」という用語は、VEGFに結合してVEGFの活性を中和し、遮断し、阻害し、抑止し、低減し、又は妨害することができるタンパク質、例えば、融合分子を意味する。VEGFトラップの一例はアフリベルセプトである。
【0081】
「抗VEGF抗体」又は「VEGFに結合する抗体」という用語は、該抗体がVEGFの標的化において診断及び/又は治療剤として有用であるように十分な親和性と特異性を伴ってVEGFに結合できる抗体を意味する。抗VEGF中和抗体は、ヌードマウスにおいて様々なヒト腫瘍細胞株の増殖を抑制し(Kim等, Nature 362:841-844 (1993);Warren等, J. Clin. Invest. 95:1789-1797 (1995);Borgstrom等, Cancer Res. 56:4032-4039 (1996);Melnyk等, Cancer Res. 56:921-924 (1996))、また虚血性網膜疾患のモデルにおいて眼内血管新生を阻害する。Adamis等, Arch. Ophthalmol. 114:66-71 (1996)。例えば、抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患又は状態の標的化及び妨害における治療剤として使用することができる。例えば、米国特許第6582959号、同第6703020号;国際公開第98/45332号;同第96/30046号;同第94/10202号、同第2005/044853号;欧州特許第0666868B1号;米国特許出願公開第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、同第20050112126号、同第20050186208号、及び同第20050112126号;Popkov等, Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004);及び国際公開第2005012359号を参照のこと。選択される抗体は、通常VEGFに対して十分に強力な結合親和性を有する。例えば、抗体は、100nM〜1pMのKd値でhVEGFに結合しうる。抗体親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴法に基づくアッセイ(PCT出願公開第2005/012359号に記載されるようなBIAcoreアッセイ等)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、及び競合アッセイ(例えば、RIA)によって決定されうる。抗体は、例えば、治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物活性アッセイに供されうる。そのようなアッセイは、当該技術分野において知られており、標的抗原及び意図される抗体の用途に依存する。例として、HUVEC抑制アッセイ、腫瘍細胞増殖抑制アッセイ(例えば、国際公開第89/06692号に記載されるもの)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ(米国特許第5500362号)、及びアゴニスト活性又は造血アッセイ(国際公開第95/27062号を参照)が挙げられる。抗VEGF抗体は、通常、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D又はVEGF−E等の他のVEGF相同体にも、PlGF、PDGF又はbFGF等の他の増殖因子にも結合しない。
【0082】
一実施態様では、抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体;限定されないが、「rhuMAb VEGF」又は「AVASTIN(登録商標)」としても知られる「ベバシズマブ」として既知の抗体を含む、組換え型ヒト化抗VEGFモノクローナル抗体(Presta等 (1997) Cancer Res. 57:4593-4599を参照のこと)を含む。AVASTIN(登録商標)は、現在市販されている。ベバシズマブを用いて治療されうる非限定的な例示的がんは、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、乳がん、腎がん、卵巣がん、多形神経膠芽腫、小児骨肉腫、胃がん及び膵がんを含む。ベバシズマブは、その受容体に対するヒトVEGFの結合を遮断するマウス抗体A.4.6.1に由来する、変異ヒトIgG1フレームワーク領域及び抗原結合相補性決定領域を含む。ベバシズマブと他のヒト化抗VEGF抗体は、米国特許第6884879号及び同第7169901号に更に記載される。更なる抗VEGF抗体は、PCT出願公開第2005/012359号及び同第2009/073160号;米国特許第7060269号、同第6582959号、同第6703020号;同第6054297号;国際公開第98/45332号;同第96/30046号;同第94/10202号;欧州特許第0666868B1号;米国特許出願公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126;及びPopkov等, Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004)に記載されている。
【0083】
ここで使用される場合、「VEGF耐性腫瘍」及び「VEGF耐性がん」は、参照試料、細胞、又は組織よりも高いレベルのFGF2を伴う腫瘍又はがんを意味する。幾つかの実施態様では、VEGF耐性腫瘍は、VEGFのレベルと比較してより高いレベルのFGF2を有する。幾つかの実施態様では、VEGF耐性腫瘍試料におけるVEGFレベルに対するFGF2レベルの比は1より大きい。幾つかの実施態様では、VEGF耐性腫瘍を持つ対象は、パゾパニブ、ベバシズマブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、ソラフェニブ、及びスニチニブから選択される少なくとも1種の治療剤で以前に治療されている。
【0084】
ここで使用される場合、「パゾパニブ耐性腫瘍」及び「パゾパニブ耐性がん」は、初期にはパゾパニブに反応したが、もはや反応しないか少ない程度に反応する腫瘍又はがんを意味する。幾つかの実施態様では、パゾパニブ耐性腫瘍又はがんは、パゾパニブの存在下で、もはや退縮しないか又は進行さえする。
【0085】
「対象」及び「患者」という用語は、哺乳動物を指すためにここでは互換的に使用される。幾つかの実施態様では、対象又は患者はヒトである。他の実施態様では、限定されないが、げっ歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳類実験動物、哺乳類家畜、哺乳類競技動物、及び哺乳類ペットを含む、他の哺乳動物を治療する方法もまた提供される。
【0086】
ここで使用される「試料」又は「患者試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/又は生理学的な特徴に基づいて特徴付けられ及び/又は特定される、細胞実体及び/又は他の分子実体を含む興味ある対象から得られるか又は対象に由来する組成物を指す。例えば、「疾患試料」という句及びその変形は、特徴付けられる細胞実体及び/又は分子実体を含むことが予測されるか又は分かっている、興味ある対象から得られる任意の試料を指す。「組織又は細胞試料」とは、対象又は患者の組織から得られた類似する細胞の集合を意味する。組織又は細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結された、及び/又は保存された、臓器もしくは組織試料又は生検組織又は吸引液由来の固形組織;血液又は任意の血液成分;大脳脊髄液、羊水、腹水、又は間質液等の体液;対象の妊娠又は発達における任意の時期からの細胞であってもよい。組織試料はまた初代又は培養細胞又は細胞株であってもよい。任意選択的に、組織又は細胞試料は、疾患組織/臓器から得られる。組織試料は、保存料、抗凝血剤、緩衝液、固定液、栄養剤、抗生物質等の、本来の組織には自然に混合されない化合物を含みうる。
【0087】
ここで使用される「参照試料」、「参照細胞」、又は「参照組織」は、特定するために本発明の方法又は組成物が使用される疾患又は症状に罹患していないことが分かっているか又は考えられる供給源から得られた試料、細胞、又は組織を指す。幾つかの実施態様では、参照試料、参照細胞、又は参照組織は、本発明の組成物又は方法を使用して疾患又は症状が特定される同じ対象又は患者の健常な身体部分から得られる。幾つかの実施態様では、参照試料、参照細胞、又は参照組織は、本発明の組成物又は方法を使用して疾患又は症状が特定される対象又は患者ではない1人以上の個体の健常な身体部分から得られる。
【0088】
ここで使用される「がん」及び「腫瘍」は、動物における任意の異常な細胞又は組織の成長又は増殖を指す互換的な用語である。ここで使用される場合、「がん」及び「腫瘍」という用語は、固形がん及び血液がん/リンパ腺がんを包含し、また悪性、前がん性、及び良性の増殖、例えば異形成等も包含する。がんの例として、限定されないが、細胞腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられる。このようながんのより特定の非限定的な例として、扁平上皮がん、小細胞肺がん、下垂体がん、食道がん、星状細胞腫、軟部肉腫、非小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、消化管がん、消化管間質腫瘍、膵がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、胃がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん、腎がん、肝がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝臓がん、脳がん、子宮内膜がん、精巣がん、胆管細胞がん、胆嚢がん、胃がん、黒色腫、中皮腫、及び様々な種類の頭頸部がんが挙げられる。
【0089】
「VEGFレベルと比較してより高いレベルのFGF2を伴う細胞」は、細胞中のVEGF mRNA又はタンパク質のレベルよりもFGF2 mRNA又はタンパク質のレベルがより高い細胞を意味する。「VEGFレベルと比較してより高いレベルのFGF2を伴うがん」は、細胞の少なくとも一部がVEGF mRNA又はタンパク質レベルよりも高いレベルのFGF2 mRNA又はタンパク質を有するがんを意味する。幾つかの実施態様では、「細胞の少なくとも一部」はがん試料の細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%である。幾つかの実施態様では、VEGFレベルと比較してより高いレベルのFGF2を伴う細胞又は細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較してより高いレベルのFGF2を有するがんは、1より大きいVEGFに対するFGF2の比を有している。幾つかの実施態様では、VEGFレベルと比較してより高いレベルのFGF2を伴う細胞又は細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較してより高いレベルのFGF2を有するがんは、VEGFよりも5%、7%、10%、12%、15%、17%、20%、又は25%多いFGF2を有する。幾つかの実施態様では、FGF2及びVEGFのレベルはmRNAレベルである。幾つかのそのような実施態様では、レベルは、定量的RT−PCR、マイクロアレイ、デジタルPCT、RNA−Seq、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ(RPA)、ノーザンブロット法、及びインサイツハイブリダイゼーション(ISH)から選択される方法によって決定される。幾つかの実施態様では、レベルは定量的RT−PCRによって決定される。幾つかの実施態様では、レベルはマイクロアレイによって決定される。幾つかの実施態様では、FGF2及びVEGFのレベルはタンパク質レベルである。幾つかのそのような実施態様では、レベルは、免疫組織化学、ELISA、質量分析法、逆相プロテインアレイ(RPPA)、抗体アレイ、ナノ−イムノアッセイ、ウェスタンブロット法、及びキャピラリープロテイン分析アッセイから選択される方法によって決定される。
【0090】
「VEGFレベルと比較してより低いレベルのFGF2を伴う細胞」は、細胞中のVEGF mRNA又はタンパク質のレベルよりもFGF2 mRNA又はタンパク質のレベルがより低い細胞を意味する。「VEGFレベルと比較してより低いレベルのFGF2を伴うがん」は、細胞の少なくとも一部がVEGF mRNA又はタンパク質レベルよりも低いレベルのFGF2 mRNA又はタンパク質を有するがんを意味する。幾つかの実施態様では、がん試料の細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が、VEGF mRNA又はタンパク質レベルと比較して低いレベルのFGF2 mRNA又はタンパク質を有する。幾つかの実施態様では、VEGFレベルと比較してより低いレベルのFGF2を伴う細胞又は細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較してより低いレベルのFGF2を有するがんは、1未満のVEGFに対するFGF2の比を有している。幾つかの実施態様では、VEGFレベルと比較してより低いレベルのFGF2を伴う細胞又は細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較してより低いレベルのFGF2を有するがんは、VEGFよりも5%、7%、10%、12%、15%、17%、20%、又は25%少ないFGF2を有する。幾つかの実施態様では、FGF2及びVEGFのレベルはmRNAレベルである。幾つかのそのような実施態様では、レベルは、定量的RT−PCR、マイクロアレイ、デジタルPCT、RNA−Seq、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ(RPA)、ノーザンブロット法、及びインサイツハイブリダイゼーション(ISH)から選択される方法によって決定される。幾つかの実施態様では、レベルは定量的RT−PCRによって決定される。幾つかの実施態様では、レベルはマイクロアレイによって決定される。幾つかの実施態様では、FGF2及びVEGFのレベルはタンパク質レベルである。幾つかのそのような実施態様では、レベルは、免疫組織化学、ELISA、質量分析法、逆相プロテインアレイ(RPPA)、抗体アレイ、ナノ−イムノアッセイ、ウェスタンブロット法、及びキャピラリープロテイン分析アッセイから選択される方法によって決定される。幾つかの実施態様では、レベルは免疫組織化学によって決定される。
【0091】
ここで使用される「治療」は、ヒトを含む哺乳動物の症状に対する治療薬の任意の投与又は適用を含み、例えば、退縮を引き起こすことによって、又は機能の損失、不足、もしくは欠陥を回復もしくは修復することによって、又は非効率的なプロセスを刺激することによって、症状もしくは症状の進行を阻害すること、症状もしくはその進行を阻害することもしくは遅延させること、その発達を停止すること、症状を部分的もしくは完全に軽減すること、又は症状を治癒することを含む。幾つかの実施態様では、「治療」は、治療される個体又は細胞の自然の経過を変更するための臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理学的過程の間に行うことができる。望ましい治療の効果は、疾患の発生又は再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的帰結の低減、転移の予防、疾患進行の速度の減速、病態の回復又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含む。
【0092】
分子又は分子の組合せの「有効量」又は「治療有効量」は、単独で、又は他の治療薬と組合せて投与されたときに、対象の少なくともサブセットにおいて症状を治療し、及び/又は、腫瘍細胞の増殖を阻害するのに十分な量を意味する。所定の実施態様では、治療有効量は、投薬時と必要な期間の間、所望の治療又は予防的結果を達成するために有効な量を指す。本発明のFGFR1融合タンパク質の治療有効量は、例えば、個体の病態、年齢、性別、及び体重、並びに個体においてFGFR1融合タンパク質が所望の応答を誘発する能力等の要因に従って変化しうる。治療有効量はまた治療的に有益な効果が、FGFR1融合タンパク質の任意の毒性又は有害作用を上回る量である。がんの場合、薬物の有効量は、がん細胞の数を減少させ;腫瘍サイズを縮小させ;がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度まで遅らせ、典型的には停止する);腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度まで遅らせ、典型的には停止する);腫瘍増殖をある程度まで阻害し;腫瘍の治療を可能にし、及び/又は疾患に伴う症状の一又は複数をある程度まで軽減しうる。薬物は、増殖を防ぎ及び/又は既存のがん細胞を死滅させうる範囲で、細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であってもよい。
【0093】
「予防有効量」は、投与時と必要な期間の間、所望の予防的結果を達成するために有効な量を指す。必ずではないが典型的には、予防投与は、疾患の前又は早期段階で対象に用いられるため、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
【0094】
「阻害」又は「阻害する」という用語は、任意の表現型特性の減少もしくは停止、又はその特性の発生頻度、程度、もしくは可能性の減少もしくは停止を指す。非限定的な例示的阻害は、腫瘍増殖の阻害を含む。
【0095】
治療剤の投与の恩恵又は治療剤の投与に対する反応の文脈においてここで使用される「恩恵」、「治療上の恩恵」、「反応性」、及び「治療反応性」という用語は、例えば、疾患進行のある程度の阻害(遅延及び完全な停止を含む);疾患エピソード及び/もしくは症状数の減少;病巣サイズの縮小;疾患細胞の隣接する末梢器官及び/もしくは組織への浸潤の阻害(すなわち、低減、遅延、及び完全な停止);疾患転移の阻害(すなわち、低減、遅延、及び完全な停止);疾患病変の退縮又は消失を必ずではないがもたらしうる自己免疫応答の低下;疾患に関連する一又は複数の症状のある程度の軽減;治療後の無病期間の長さ、例えば、無増悪生存期間の増加;全生存期間の増加;より高い奏効率;及び/又は治療後の所与の時点での死亡率の減少等の様々なエンドポイントを評価することによって、測定することができる。
【0096】
一又は複数の更なる治療剤と「組合せた」投与は、共投与(同時投与を含む)及び任意の順序の継続投与(すなわち、逐次投与)を含む。
【0097】
「薬学的に許容される担体」は、対象に投与するための「薬学的組成物」を一緒に含む治療剤と共に使用される、当該技術分野において一般的である無毒性の固体、半固体、もしくは液体の増量剤、希釈剤、封入材料、製剤補助剤、又は担体を指す。薬学的に許容される担体は、用いられる投与量及び濃度ではレシピエントに非毒性であり、製剤の他の成分と適合性である。薬学的に許容される担体は、用いられる製剤に適している。例えば、治療剤が経口投与される場合、担体はゲルカプセルであってもよい。治療薬剤が皮下投与される場合、担体は、理想的には、皮膚に刺激性を示さず、注射部位反応を引き起こさない。
【0098】
治療組成物及び方法
FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子を使用してがんを治療する方法
幾つかの実施態様では、本発明は、がん細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較してより高いFGF2レベルを有するがんを治療する方法を提供する。幾つかの実施態様では、がん試料の細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が、VEGF mRNA又はタンパク質レベルと比較して高いレベルのFGF2 mRNA又はタンパク質を有する。そのようながんは、幾つかの実施態様では、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)細胞外ドメイン(ECD)又はFGFR1 ECD融合分子を用いた治療に特に反応することが見出された。従って、幾つかの実施態様では、VEGFレベルと比較してより高いFGF2レベルを有するがんを治療する方法は、治療有効量のFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子を対象に投与することを含む。幾つかの実施態様では、対象におけるがんの治療方法は、対象に治療有効量の線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)細胞外ドメイン(ECD)又はFGFR1 ECD融合分子を投与することを含み、ここで、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子の投与前に、がんの細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較してより高いレベルのFGF2を有していると判定されている。幾つかの実施態様では、がん試料の細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が、VEGF mRNA又はタンパク質レベルと比較して高いレベルのFGF2 mRNA又はタンパク質を有していると判定されている。そのような方法において、がんにおけるVEGFレベルと比較して高いFGF2レベルが、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子に対するがんの治療反応性の指標である。幾つかの実施態様では、方法は、対象に治療有効量のFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子と治療有効量の少なくとも1種の抗血管新生剤を投与することを含む。幾つかの実施態様では、抗血管新生剤はVEGFアンタゴニストである。幾つかの実施態様では、VEGFアンタゴニストは、パゾパニブ、ベバシズマブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、ソラフェニブ、又はスニチニブから選択される。幾つかの実施態様では、VEGFアンタゴニストは、パゾパニブ、ソラフェニブ、及びアキシチニブから選択される。
【0099】
幾つかの実施態様では、本発明は、がん細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較してより低いFGF2レベルを有するがんを治療する方法を提供する。幾つかの実施態様では、がん試料の細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が、VEGF mRNA又はタンパク質レベルと比較して低いレベルのFGF2 mRNA又はタンパク質を有する。幾つかの実施態様では、レベルはmRNAレベルである。幾つかの実施態様では、レベルはタンパク質レベルである。幾つかの実施態様では、VEGFレベルと比較して低いFGF2レベルを有するがんを治療する方法は、対象に治療有効量のFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子と治療有効量の少なくとも1種の抗血管新生剤を投与することを含む。幾つかの実施態様では、対象におけるがんの治療方法は、対象に治療有効量の線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)細胞外ドメイン(ECD)又はFGFR1 ECD融合分子と治療有効量の少なくとも1種の抗血管新生剤を投与することを含み、ここで、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子と少なくとも1種の抗血管新生剤の投与前に、がんの細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較してより低いレベルのFGF2を有していると判定されている。幾つかの実施態様では、がん試料の細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が、VEGF mRNA又はタンパク質レベルと比較して低いレベルのFGF2 mRNA又はタンパク質を有していると判定されている。幾つかの実施態様では、抗血管新生剤はVEGFアンタゴニストである。幾つかの実施態様では、VEGFアンタゴニストは、パゾパニブ、ベバシズマブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、ソラフェニブ、又はスニチニブから選択される。幾つかの実施態様では、VEGFアンタゴニストは、パゾパニブ、ソラフェニブ、及びアキシチニブから選択される。
【0100】
幾つかの実施態様では、がんは、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、脳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、咽頭がん、肝がん、腎がん、神経膠芽腫、及び膵がんから選択される。所定の実施態様では、がんは乳がん、食道がん、及び肺がんから選択される。幾つかの実施態様では、がんは腎がん、例えば腎細胞がんである。幾つかの実施態様では、がんは肝がん、例えば肝細胞がんである。幾つかの実施態様では、がんは肺がんである。幾つかの実施態様では、肺がんは非小細胞肺がん及び小細胞肺がんから選択される。幾つかの実施態様では、肺がんは扁平上皮がんである。幾つかの実施態様では、がんは頭頸部がんである。幾つかの実施態様では、頭頸部がんは頭頸部の扁平上皮がんである。幾つかの実施態様では、がんは腎がん(腎細胞がん等)、肝がん(肝細胞がん等)、神経膠芽腫、及び中皮腫から選択される。幾つかの実施態様では、がんは腎細胞がんである。幾つかの実施態様では、がんは肝細胞がんである。幾つかの実施態様では、がんは中皮腫である。幾つかの実施態様では、がんは神経膠芽腫である。
【0101】
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDは、配列番号:1から4から選択されるアミノ酸配列を有する。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDは、配列番号:2及び4から選択されるアミノ酸配列を有する。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD融合分子は、配列番号:5及び6から選択されるアミノ酸配列を有する。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD融合分子は、配列番号:6のアミノ酸配列を有するFGFR1 ECD.339−Fcである。
【0102】
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子は、一又は複数の更なる抗がん治療と共に投与される。更なる抗がん治療の例として、限定されないが、手術、放射線療法(照射療法)、生物学的療法、免疫療法、及び化学療法、又はこれらの治療の組合せが挙げられる。また、細胞傷害性薬剤、抗血管新生剤及び抗増殖性薬剤を、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子と組合せて使用することができる。方法及び用途の何れかの所定の態様では、本発明は、治療有効量のFGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子と一又は複数の化学療法剤とを対象に投与することにより、がんを治療することを提供する。幾つかの実施態様では、対象のがんは、以前に治療されていない。様々な化学療法剤が、本発明の併用治療の方法及び用途に使用されうる。考慮される化学療法剤の例示的かつ非限定的なリストは、ここで「定義」の項に提供されている。
【0103】
幾つかの実施態様では、本発明は、治療有効量のFGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子と一又は複数の抗血管新生剤とを対象に投与することにより、がんを治療する方法を提供する。幾つかの実施態様では、本発明は、治療有効量のFGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子と一又は複数のVEGFアンタゴニストとを対象に投与することにより、がんを治療することを提供する。幾つかの実施態様では、本発明は、治療有効量のFGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子と一又は複数のVEGFアンタゴニストとを、一又は複数の化学療法剤と組合せて対象に投与することにより、がんを治療することを提供する。幾つかの実施態様では、一又は複数のVEGFアンタゴニストは、抗VEGF抗体及び/又はVEGFトラップである。幾つかの実施態様では、VEGFアンタゴニストは、パゾパニブ、ベバシズマブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、ソラフェニブ、又はスニチニブから選択される。幾つかの実施態様では、VEGFアンタゴニストはパゾパニブ、ソラフェニブ、及びアキシチニブから選択される。
【0104】
幾つかの実施態様では、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ロイコボリン、ペメトレキセド、ソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、エトポシド、トポテカン、VEGFアンタゴニスト、抗VEGF抗体、VEGFトラップ、アフリベルセプト、及びベバシズマブから選択される少なくとも1種の更なる治療剤と組み合わせてFGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子を対象に投与することを含むがんを治療する方法が提供される。他の例では、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ロイコボリン、ペメトレキセド、ソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、エトポシド、トポテカン、VEGFアンタゴニスト、抗VEGF抗体、VEGFトラップ、アフリベルセプト、及びベバシズマブから選択される少なくとも1種の更なる治療剤と組み合わせてFGFR1−ECD.339−Fcを対象に投与することを含むがんを治療する方法が提供される。幾つかの実施態様では、FGFR1−ECD.339−Fcとドセタキセルを対象に投与することを含むがんを治療する方法が提供される。幾つかの実施態様では、FGFR1−ECD.339−Fc、パクリタキセル、及びカルボプラチンを対象に投与することを含むがんを治療する方法が提供される。幾つかの実施態様では、FGFR1−ECD.339−Fc、ペメトレキセド、及びシスプラチンを対象に投与することを含むがんを治療する方法が提供される。幾つかの実施態様では、がんは、肝がん(肝細胞がんを含む)、腎がん(腎細胞がんを含む)、神経膠芽腫、及び中皮腫から選択される。幾つかの実施態様では、がんは腎細胞がんである。幾つかの実施態様では、がんは肝細胞がんである。幾つかの実施態様では、がんは中皮腫である。幾つかの実施態様では、がんは神経膠芽腫である。
【0105】
幾つかの実施態様では、がんの対象にFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子を投与することを含むがんを治療する方法が提供され、ここで、対象は、パゾパニブ、ベバシズマブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、ソラフェニブ、及びスニチニブから選択される少なくとも1種の治療剤で以前に治療されている。幾つかの実施態様では、対象は、アキシチニブ、パゾパニブ、及びソラフェニブから選択される少なくとも1種の治療剤で以前に治療されている。幾つかの実施態様では、対象はパゾパニブで以前に治療されている。幾つかの実施態様では、対象のがんはパゾパニブ治療中又は治療後にパゾパニブ耐性になっている。幾つかの実施態様では、パゾパニブ耐性がんの対象にFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子を投与することを含むパゾパニブ耐性がんを治療する方法が提供される。幾つかの実施態様では、該方法はパゾパニブとFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子を投与することを含む。
【0106】
幾つかのそのような実施態様では、対象はVEGF耐性がんに罹患している。VEGF耐性がんは、幾つかの実施態様では、高レベルのFGF2を発現し、及び/又は1より大きいFGF2/VEGF比を有する。幾つかの実施態様では、VEGF耐性がんの対象は、パゾパニブ、ベバシズマブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、ソラフェニブ、及びスニチニブから選択される少なくとも1種の治療剤で以前に治療されている。幾つかの実施態様では、少なくとも1種の治療剤は、パゾパニブとソラフェニブから選択される。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子はアキシチニブと組み合わせて投与される。
【0107】
幾つかの実施態様では、対象は、該対象が単独で又は一又は複数の更なる薬剤との組合せで、ある薬剤での完全な又は部分的な一連の治療を受けた場合に、その薬剤で以前に治療されたと考えられる。幾つかのそのような実施態様では、対象はその薬剤又は薬剤の組合せに反応しなかった場合があり、あるいはその薬剤又は薬剤の組合せに初期には反応した場合があるが、薬剤又は薬剤の組合せに対する反応性が少なくなっているか又は非反応性になっている場合がある。反応性は、例えば治療されているがんの増殖及び/又は転移によって、決定されうる。
【0108】
幾つかの実施態様では、がん(VEGF耐性がんを含む)は、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、脳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、咽頭がん、肝がん、腎がん、神経膠芽腫、中皮腫、及び膵がんから選択される。幾つかの実施態様では、がん(VEGF耐性がんを含む)は腎がん、例えば腎細胞がんである。幾つかの実施態様では、がん(VEGF耐性がんを含む)は肝がん、例えば肝細胞がんである。幾つかの実施態様では、がん(VEGF耐性がんを含む)は中皮腫である。
【0109】
幾つかの実施態様では、がんの対象にFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子を投与することを含む、固形がんにおいて血管密度を減少させる方法が提供される。幾つかの実施態様では、固形がんにおいて血管密度を減少させる方法が提供され、ここで、がんはVEGFレベルと比較して高いFGF2レベルを有しており、該方法はがんの対象にFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子を投与することを含む。幾つかの実施態様では、がんの対象にFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子を投与することを含む、VEGF耐性固形がんにおいて血管密度を減少させる方法が提供される。幾つかの実施態様では、がんは腎がん(例えば腎細胞がん)、肝がん(例えば肝細胞がん)、肺がん、結腸がん、肝がん、乳がん、胃がん、卵巣がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、神経膠芽腫、中皮腫、及び前立腺がんから選択される。幾つかの実施態様では、がんは、腎がん(例えば腎細胞がん)、肝がん(例えば肝細胞がん)、神経膠芽腫、及び中皮腫から選択される。幾つかの実施態様では、がんは腎細胞がんである。幾つかの実施態様では、がんは肝細胞がんである。幾つかの実施態様では、がんは中皮腫である。
【0110】
幾つかの実施態様では、血管密度は当該分野の方法によって決定される。幾つかの実施態様では、血管密度は実施例11に記載のように決定される。幾つかの実施態様では、血管密度は全腫瘍試料で決定される。
【0111】
FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えば、FGFR1−ECD.339−Fc)を含有する薬学的組成物が、特定の適応症のための治療有効量で投与される。治療有効量は、典型的には、治療される対象の体重、対象の身体的状態もしくは健康状態、治療される症状の広範さ、及び/又は治療される対象の年齢に依存する。一般に、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えば、FGFR1−ECD.339−Fc)は、1用量当たり約50μg/kg体重から約100mg/kg体重の範囲の量で投与されるべきである。任意選択的に、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えば、FGFR1−ECD.339−Fc)は、1用量当たり約100μg/kg体重から約30mg/kg体重の範囲の量で投与することができる。更に任意選択的に、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えば、FGFR1−ECD.339−Fc)は、比吸光度1.42mL/mg*cmを使用して計算して、1用量当たり約0.5mg/kg体重から約20mg/kg体重の範囲の量で投与することができる。所定の実施態様では、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えば、FGFR1−ECD.339−Fc)は、比吸光度1.42mL/mg*cmを使用して計算して、約8mg/kg体重から約20mg/kg体重の範囲の量で投与される。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えば、FGFR1−ECD.339−Fc)は、約8mg/kg体重から約16mg/kg体重(あるいは1.11mL/mg*cmの比吸光度を使用して計算した場合、約10mg/kg体重から約20mg/kg体重)の用量で投与される。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えば、FGFR1−ECD.339−Fc)は、1.42mL/mg*cmの比吸光度を使用して計算して、約8mg/kg体重、約10mg/kg体重、約11mg/kg体重、約12mg/kg体重、約13mg/kg体重、約14mg/kg体重、約15mg/kg体重、約16mg/kg体重、約17mg/kg体重、約18mg/kg体重、約19mg/kg体重、又は約20mg/kg体重の用量で投与される。幾つかの実施態様では、FGFR1融合タンパク質は、比吸光度1.11mL/mg*cmを使用して計算された約10mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様では、FGFR1融合タンパク質は、比吸光度1.11mL/mg*cmを使用して計算された約20mg/kg体重の用量で投与される。FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子はまた上記用量のうちの1つから別の用量の範囲で投与されてもよい。幾つかの実施態様では、投与量は、週2回、毎週、隔週、毎週と隔週の間の頻度で、3週毎、4週毎、又は毎月投与されてもよい。
【0112】
所定の実施態様では、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子の投与量は、使用される比吸光度(EC)に依存して二通り計算することができる。比吸光度は、タンパク質のグリコシル化が考慮されているかどうかに依存して異なる。一実施態様では、FGFR1−ECD.339−Fcのアミノ酸組成に基づく比吸光度は、例えば、1.42mL/mg*cmである。別の実施態様では、FGFR1−ECD.339−Fcの糖鎖部分並びにアミノ酸部分を考慮した場合、比吸光度は、1.11mL/mg*cmである。表1に示されるように、1.11mL/mg*cmのECを使用するFGFR1−ECD.339−Fcの用量の計算は、計算用量を28%増加させる。2つの比吸光度を用いて計算される用量は異なるが、モル濃度、又は投与される薬物の実際の量は同一である。別途記載のない限り、ここで開示される用量は、それぞれ、グリコシル化を考慮に入れない比吸光度を使用して計算される。これらの投与量を、FGFR1−ECD.339−Fcのグリコシル化を考慮に入れた比吸光度を用いて計算された投与量と如何に比較するかを表1に示す。表1から分かるように、ここで1.42mL/mg*cmのECを使用する約8mg/kg(例えば7.8及び8.0)の投与量は、1.11mL/mg*cmのECを使用して計算した場合の約10mg/kg(例えば10.0及び10.2)の投与量に相当する。ここで1.42mL/mg*cmのECを使用する約16mg/kg(例えば15.6及び16.0mg/kg)の投与量は、1.11mL/mg*cmのECを使用して計算した場合の約20mg/kg(例えば20.0及び20.5)の投与量に相当する。上記「定義」の項目で述べたように、ここで提供される測定された数値は近似値であり、丸められた更なる有効数字を有する値を包含する。例えば、8mg/kgは、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、及び8.45等の有効桁数が2桁の値を包含し、これらの各々は8に丸められる。同様に、16mg/kg等の値は、例えば、15.6及び16.0等の、16に丸められる有効桁数が3桁の値を包含する。
【0113】
FGFR1 ECD、FGFR1 ECD融合分子、及び/又は少なくとも1種の更なる治療剤を含有する薬学的組成物を、必要に応じて対象に投与することができる。所定の実施態様では、有効用量の治療用分子が、一又は複数回対象に投与される。様々な実施態様では、有効用量の治療用分子が、少なくとも2ヶ月に1回、少なくとも1ヶ月に1回、少なくとも1ヶ月に2回、週1回、週2回、又は週3回、対象に投与される。様々な実施態様では、有効用量の治療用分子が、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも1年間、対象に投与される。
【0114】
所定の実施態様では、FGFR1 ECD、FGFR1 ECD融合分子及び少なくとも1種の更なる治療剤の併用投与は、別々の製剤又は単一の薬学的製剤を用いた同時投与を含む共投与、並びに任意の順序の継続投与を含む。任意選択的に、両方の(又は全ての)活性薬剤が、同時にそれらの生物活性を発揮する時期が存在する。FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えば、FGFR1−ECD.339−Fc)と組合せて投与される治療剤の治療有効量は、医師又は獣医師の判断に委ねられる。投与量の投与及び調整は、治療される状態の最大管理を達成するために行われる。用量は、使用される治療剤の種類、治療を受ける特定の患者、疾患の段階、及び治療計画の所望の積極性等の要因に更に依存する。
【0115】
所定の実施態様では、患者はFGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えばFGFR1−ECD.339−Fc)と抗血管新生剤の組合せで治療される。幾つかの実施態様では、抗血管新生剤はVEGFアンタゴニストである。幾つかの実施態様では、VEGFアンタゴニストはVEGFトラップ(例えばアフリベルセプト)である。幾つかの実施態様では、VEGFアンタゴニストはチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、パゾパニブ、アキシチニブ、ソラフェニブ、又はスニチニブ)である。幾つかの実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。幾つかの実施態様では、VEGF抗体はベバシズマブである。ベバシズマブの一例示的投薬量は約0.05mg/kgから約20mg/kgの範囲である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg又は15mg/kgの一又は複数回の用量(あるいはその任意の組合せ)が患者に投与されうる。そのような用量は、間欠的に、例えば毎週、隔週、又は3週毎に投与されうる。
【0116】
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子(例えばFGFR1−ECD.339−Fc)は、他の治療剤、例えば化学療法剤又は抗血管新生剤と組合せて、治療剤の推奨され又は処方された投薬量及び/又は頻度で投与される。
【0117】
幾つかの実施態様では、更なる治療剤は、食品医薬品局等の治療処置の認可に責任のある機関によって承認された投与量で、又は製造者の推奨する投与量で投与される。
【0118】
投与経路及び担体
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子は、静脈内及び/又は皮下投与されうる。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子は、別の経路、例えば、動脈内、非経口、鼻腔内、筋肉内、心臓内、心室内、気管内、頬側、直腸内、腹腔内、皮内、局所的、経皮的、もしくはくも膜下腔内経路により、又はさもなければ移植もしくは吸入により、投与することができる。様々な実施態様では、少なくとも1種の更なる治療剤を、静脈内、動脈内、皮下、非経口、鼻腔内、筋肉内、心臓内、心室内、気管内、頬側、直腸内、腹腔内、皮内、局所的、経皮的、及びくも膜下腔内を含む様々な経路により、又はさもなければ移植もしくは吸入によりインビボで投与することができる。主題組成物の各々は、単独で、又は組合せて、錠剤、カプセル剤、散剤、粒剤、軟膏、溶剤、坐剤、浣腸剤、注射剤、吸入剤、及びエアロゾル剤等の、固体、半固形、液体、又は気体形態の調製物に処方することができる。
【0119】
様々な実施態様では、FGFR1 ECD、FGFR1 ECD融合分子、及び/又は少なくとも1種の更なる治療剤を含有する組成物は、薬学的に許容される担体と共に製剤で提供され、多種多様な担体が当該技術分野において知られている(例えば、Gennaro, Remington: The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons: Drugfacts Plus, 20版(2003);Ansel等, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7版, Lippencott Williams and Wilkins (2004);Kibbe等, Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3版, Pharmaceutical Press (2000)を参照のこと)。ビヒクル、アジュバント、担体、及び希釈剤を含む様々な薬学的に許容される担体が公的に利用可能である。更に、様々な薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、浸透圧調整剤、安定剤、湿潤剤等も、公的に利用可能である。所定の非限定的な例示的担体は、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びこれらの組合せを含む。幾つかの実施態様では、治療剤は、定義の項目において上に示したブランド名の薬として、又はジェネリック均等物として処方される。幾つかの実施態様では、ドセタキセルは、Taxotere(登録商標)(Sanofi Aventis)、又はジェネリック均等物として処方される。
【0120】
様々な実施態様では、FGFR1 ECD、FGFR1 ECD融合分子、及び/又は少なくとも1種の更なる治療剤を含有する組成物は、植物油もしくは他の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル、又はプロピレングリコール等の水性又は非水性溶媒中に、それらを溶解させ、懸濁させ、又は乳化させることによって、あるいは所望の場合、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤及び保存料等の一般的な添加物と共に、注射用に製剤化することができる。様々な実施態様では、組成物は、例えば、加圧された許容される噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等を使用して、吸入用に製剤化されうる。組成物はまた、様々な実施態様では、生分解性又は非生分解性ポリマーを用いて徐放性マイクロカプセルに製剤化されうる。非限定的な例示的生分解性製剤は、ポリ乳酸−グリコール酸ポリマーを含む。非限定的な例示的非生分解性製剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む。そのような製剤を作製する所定の方法は、例えば、欧州特許出願公開第1125584A1号に記載されている。
【0121】
各々が一又は複数の用量のFGFR1 ECD、FGFR1 ECD融合分子、及び/又は少なくとも1種の更なる治療剤を収容する一又は複数の容器を含む薬学的投薬パック(ドーセージパック)も提供される。所定の実施態様では、単位調剤(ユニットドーセージ)が提供され、該単位調剤は、FGFR1 ECD、FGFR1 ECD融合分子、及び/又は少なくとも1種の更なる治療剤を、1種又は複数種の更なる薬剤と共にもしくはこれを伴わないで含有する、予め定まった量の組成物を含む。所定の実施態様では、そのような単位調剤は、単回使用の注射用プレフィルドシリンジで供給される。様々な実施態様では、単位調剤に含まれる組成物は、生理食塩水、ショ糖等、緩衝液、例えば、リン酸塩等を含み得、及び/又は安定した有効なpH範囲内で製剤化されうる。あるいは、所定の実施態様では、組成物は、適切な液体、例えば滅菌水の添加によって再構成することができる凍結乾燥粉末として提供されてもよい。所定の実施態様では、組成物は、限定されないが、ショ糖及びアルギニンを含む、タンパク質凝集を阻害する1種又は複数種の物質を含有する。所定の実施態様では、本発明の組成物は、ヘパリン及び/又はプロテオグリカンを含有する。
【0122】
幾つかの実施態様では、投薬パックは、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子、及び/又は適切ならば少なくとも1種の抗血管新生剤を投与する前に、がんがVEGFレベルと比較してより高いFGF2レベルを有するかどうかを決定するための説明書、及び/又はがんがVEGFレベルと比較して低いFGF2レベルを有するかどうかを決定するための説明書を含む。幾つかのそのような実施態様では、説明書は、VEGFレベルと比較してより高いFGF2レベルが、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子に対する治療反応性の指標であることを示す。
【0123】
ここで使用される「説明書」という用語は、限定されないが、ラベル、添付文書(パッケージ挿入物)、コンピュータ可読媒体(例えば、ディスケット、コンパクトディスク、又はDVD)等の電子形態で利用可能な説明書、インターネット等を経由して遠隔で利用可能な説明書を含む。投薬パックが、説明書へのアクセス、説明書へのリンク(例えば、ユニフォームリソースロケータ、つまりurl)、又は説明書のコピーを入手するための他の機構(例えば、返信はがき、そこから説明書を要求することができる物理的住所、そこから説明書を要求することができる電子メールアドレス、説明書を入手するためにかけることができる電話番号等)を提供する場合、投薬パックは説明書を含むと考えられる。
【0124】
FGFR1 ECD及びFGFR1 ECD融合分子
非限定的な例示的FGFR1 ECDは、完全長FGFR1 ECD、FGFR1 ECD断片、及びFGFR1 ECD変異体を含む。FGFR1 ECDは、シグナルペプチドを含んでもよいか、又は欠いてもよい。例示的なFGFR1 ECDは、限定されないが、配列番号:1、2、3、及び4から選択されるアミノ酸配列を有するFGFR1 ECDを含む。
【0125】
非限定的な例示的FGFR1 ECD断片は、(シグナルペプチドを有しない成熟型の第1のアミノ酸から数えて)アミノ酸339で終端するヒトFGFR1 ECDを含む。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD断片は、(シグナルペプチドを有しない成熟型の第1のアミノ酸から数えて)アミノ酸339とアミノ酸360の間で終端する。例示的なFGFR1 ECD断片は、限定されないが、配列番号:3及び4から選択されるアミノ酸配列を有するFGFR1 ECD断片を含む。
【0126】
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDは、配列番号:1から4から選択される配列を含む。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECDは、配列番号:1から4から選択される配列からなる。FGFR1 ECDが、配列番号:1から4から選択される配列「からなる」場合、FGFR1 ECDは、グリコシル化及びシアリル化等の様々な翻訳後修飾を含んでも又は含まなくてもよい。換言すると、FGFR1 ECDが特定のアミノ酸配列からなる場合、近接するアミノ酸配列中に更なるアミノ酸を含まないが、アミノ酸側鎖、N末端アミノ基、及び/又はC末端カルボキシ基に対する修飾を含みうる。
【0127】
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD融合分子は、シグナルペプチドを含む。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD融合分子は、シグナルペプチドを欠く。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD融合分子のFGFR1 ECD部分は、配列番号:1から4から選択される配列を含む。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD融合分子のFGFR1 ECD部分は、配列番号:1から4から選択される配列からなる。FGFR1 ECD融合分子のFGFR1 ECD部分が、配列番号:1から4から選択される配列「からなる」場合、FGFR1 ECD融合分子のFGFR1 ECD部分は、グリコシル化及びシアリル化等の様々な翻訳後修飾を含んでも又は含まなくてもよい。換言すると、FGFR1 ECD融合分子のFGFR1 ECD部分が特定のアミノ酸配列からなる場合、近接するアミノ酸配列中にFGFR1由来の更なるアミノ酸を含まないが、アミノ酸側鎖、N末端アミノ基、及び/又はC末端カルボキシ基に対する修飾を含みうる。更に、FGFR1 ECDは融合分子に結合しているため、FGFR1 ECDのN末端及び/又はC末端に更なるアミノ酸が存在し得るが、それらのアミノ酸はFGFR1配列に由来するものではなく、例えば、リンカー配列又は融合パートナー配列に由来しうる。
【0128】
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD融合分子の融合パートナー部分は、Fc、アルブミン、及びポリエチレングリコールから選択される。非限定的な例示的融合パートナーはここで検討される。
【0129】
本発明者は、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子と少なくとも1種の抗血管新生剤の投与が、がん細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較して低いFGF2レベルを有するがんにおいて、抗血管新生剤単独での治療よりも、より効果的であることを見出した。本発明者は、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子の投与が、がん細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較してより高いFGF2レベルを有するがんにおいて効果的であることを更に見出した。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子の投与は、単剤療法としてそのようながんにおいて効果的である。
【0130】
VEGFレベルと比較して高いFGF2レベルを有するがんは、FGF2レベルがVEGFレベルよりも高いけれども、幾つかの実施態様では、参照試料、細胞、又は組織と比較してFGF2とVEGFの双方が高いレベルである場合がある。VEGFレベルと比較して低いFGF2レベルを有するがんは、FGF2レベルがVEGFレベルよりも低いけれども、幾つかの実施態様では、参照試料、細胞、又は組織と比較してFGF2とVEGFの双方が高いレベルである場合がある。
【0131】
幾つかの実施態様では、VEGFレベルと比較して高いFGF2レベルを有するがんでは、FGF2レベルがVEGFレベルよりも高い限り、FGF2レベルが参照細胞のFGF2レベルよりも高いか又は低い場合があり、VEGFレベルが参照細胞のVEGFレベルよりも高いか又は低い場合がある。同様に、幾つかの実施態様では、VEGFレベルと比較して低いFGF2レベルを有するがんでは、FGF2レベルがVEGFレベルよりも低い限り、FGF2レベルが参照細胞のFGF2レベルよりも高いか又は低い場合があり、VEGFレベルが参照細胞のVEGFレベルよりも高いか又は低い場合がある。
【0132】
融合パートナー及びコンジュゲート
ここで検討されるように、FGFR1 ECDは、少なくとも1つの融合パートナーと組み合わされてもよく、その結果としてFGFR1 ECD融合分子を生じる。これらの融合パートナーは、精製を促進し得、FGFR1 ECD融合分子は、インビボ半減期の増加を示しうる。FGFR1 ECDの好適な融合パートナーは、例えば、水溶性ポリマー等のポリマー、免疫グロブリンの定常ドメイン;ヒト血清アルブミン(HSA)の全部又は一部;フェチュインA;フェチュインB;ロイシンジッパードメイン;テトラネクチン三量体形成ドメイン;マンノース結合タンパク質(マンノース結合レクチンとしても知られる)、例えば、マンノース結合タンパク質1;及びここに記載され、また米国特許第6686179号に記載されているFc領域を含む。非限定的な例示的FGFR1 ECD融合分子は、例えば、米国特許第7678890号に見出すことができる。
【0133】
FGFR1 ECD融合分子は、ポリアミノ酸又は分岐点アミノ酸をFGFR1 ECDに付着させることによって調製することができる。例えば、ポリアミノ酸は、(融合分子によって達成される利点に加えて)FGFR1 ECDの循環半減期を延長する役割を果たす担体タンパク質であってもよい。本発明の治療目的のために、このようなポリアミノ酸は、理想的には、中和抗原反応又は他の有害な反応を有しないか又は生じないものであるべきである。そのようなポリアミノ酸は、血清アルブミン(HSA等)、更なる抗体もしくはその一部、例えば、Fc領域、フェチュインA、フェチュインB、ロイシンジッパー核因子赤血球誘導体−2(NFE2)、神経網膜ロイシンジッパー、テトラネクチン、又は他のポリアミノ酸、例えば、リジンから選択されうる。ここに記載されるように、ポリアミノ酸の付着位置は、N末端もしくはC末端、又はその間の他の場所であってもよく、選択された分子に化学リンカー部分を介して連結されてもよい。
【0134】
ポリマー
ポリマー、例えば、水溶性ポリマーは、生理学的環境において典型的に見出されるような水性環境において、FGFR1 ECD融合分子の沈殿を減少させるための融合パートナーとして有用でありうる。本発明において用いられるポリマーは、治療用の生成物又は組成物の調製に薬学的に許容されるものである。
【0135】
好適な、臨床的に許容される水溶性ポリマーは、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレインコポリマー、ポリ(β−アミノ酸)(ホモポリマー又はランダムコポリマーの何れか)、ポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー(PPG)及び他のポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(POG)(例えば、グリセロール)及び他のポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、又はポリオキシエチル化グルコース、コラン(colonic)酸又は他の炭水化物ポリマー、Ficoll、又はデキストラン、並びにこれらの混合物を含む。
【0136】
ここで使用される場合、ポリエチレングリコール(PEG)は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されてきた形態の何れか、例えば、モノ−(C
1−C
10)アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリエチレングリコール等を包含することが意図される。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中におけるその安定性のために、製造において利点を有しうる。
【0137】
ここで使用されるポリマー、例えば、水溶性ポリマーは、如何なる分子量であってもよく、分岐もしくは非分岐であってもよい。幾つかの実施態様では、ポリマーは、約2kDaから約100kDaの平均分子量を有する(「約」という用語は、ポリマーの調製中に、ある分子は記載の分子量よりも多く計量され、ある分子は少なく計量されることを示す)。各ポリマーの平均分子量は、約5kDaから約50kDa、又は約12kDaから約25kDaであってもよい。一般に、分子量が高いほど、又は分岐が多いほど、ポリマー:タンパク質の比率が大きい。所望の治療プロファイル、例えば、持続放出の期間、もしある場合には、生物活性に及ぼす影響、取り扱い易さ、抗原性の程度又は欠如、及びFGFR1 ECDに対するポリマーの他の既知の影響に依存して、他のサイズを用いることもできる。
【0138】
本発明において用いられるポリマーは、典型的には、ポリペプチドの機能的又は抗原性ドメインに与える影響を考慮してFGFR1 ECDに付着される。一般に、化学的誘導体化は、タンパク質を活性化ポリマー分子と反応させるために使用される任意の好適な条件下で実施されうる。ポリマーを活性部分に連結するために使用されうる活性化基は、スルホン、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフレート、トレシレート、アジリジン、オキシラン、及び5−ピリジルを含む。
【0139】
本発明のポリマーは、典型的には、アミノ酸のアルファ(α)もしくはイプシロン(ε)アミノ基又は反応性チオール基が異種ポリペプチドに付着されるが、好適な反応条件下でポリマー基に付着するのに充分に反応性であるタンパク質の何れかの反応基にポリマー基が付着され得ることも考えられる。従って、ポリマーは、遊離アミノ基又はカルボキシル基等の反応基を介してFGFR1 ECDに共有結合されうる。遊離アミノ基を有するアミノ酸残基は、リジン残基及びN末端アミノ酸残基を含みうる。遊離カルボキシル基を有する残基は、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、及びC末端アミノ酸残基を含みうる。反応性チオール基を有するものはシステイン残基を含む。
【0140】
ポリマー、例えば、水溶性ポリマーでコンジュゲートされた融合分子を調製するための方法は、それぞれ一般的に、(a)ポリペプチドが一又は複数のポリマーに付着する条件下でFGFR1 ECDをポリマーと反応させることと、(b)反応生成物を得ることとを含む。各コンジュゲーションの反応条件は、当該分野で知られているもの又は後に開発されるものの何れかから選択されうるが、修飾されるべきタンパク質を不活性化させる温度、溶媒、及びpHレベル等の反応条件への曝露は回避するか又は制限するように選択されるべきである。一般に、反応に最適な反応条件は、既知のパラメータ及び所望の結果に基づいて臨機応変に決定される。例えば、ポリマー:ポリペプチドコンジュゲートの比率が大きいほど、コンジュゲート産物の割合が大きくなる。(過剰な未反応ポリペプチド又はポリマーが存在しない反応効率という点で)最適な比率は、例えば、所望の誘導体化の程度(例えば、モノ−、ジ−、トリ−等)、選択されるポリマーの分子量、ポリマーが分岐又は非分岐であるかどうか、及び使用される反応条件等の要因によって、決定されうる。ポリペプチドに対するポリマー(例えば、PEG)の比率は、一般に1:1から100:1の範囲である。一又は複数の精製コンジュゲートを、とりわけ、透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、及び電気泳動を含む標準的な精製技術によって、各混合物から調製することができる。
【0141】
N末端を化学修飾したFGFR1 ECDが特に所望される場合がある。分子量、分岐等、反応混合物中のFGFR1 ECD分子に対するポリマーの割合、実施される反応の種類、及び選択されたN末端を化学修飾したFGFR1 ECDを得る方法によって、ポリマーを選択することができる。N末端を化学修飾したFGFR1 ECD調製物を得る方法(必要ならば、他のモノ誘導体化部分からこの部分を分離する)は、化学修飾したタンパク質分子の集団からの、N末端を化学修飾したFGFR1 ECD材料の精製によるものであってもよい。
【0142】
選択的なN末端化学修飾は、特定のタンパク質における誘導体化に利用可能な異なる種類の第1級アミノ基の異なる反応性(リジン対N末端)を利用した還元的アルキル化によって達成することができる。適切な反応条件下で、カルボニル基含有ポリマーを用いて、N末端でのタンパク質の実質的に選択的な誘導体化が達成される。例えば、タンパク質のリジン残基のε−アミノ基とN末端残基のα−アミノ基との間のpKaの差を利用することを可能にするpHで反応を実施することによって、タンパク質のN末端にポリマーを選択的に付着させることができる。このような選択的誘導体化によって、タンパク質へのポリマーの付着が制御される:タンパク質のN末端でポリマーとのコンジュゲーションが優勢的に起こり、リジン側鎖アミノ基等の他の反応基の著しい修飾が起こらない。還元的アルキル化を用いると、ポリマーは、上述の種類のものであってもよく、タンパク質へのカップリングのために単一の反応性アルデヒドを有するべきである。単一の反応性アルデヒドを含むポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドもまた使用されうる。
【0143】
一実施態様では、本発明は、化学的に誘導体化したFGFR1 ECDがモノ−又はポリ−(例えば、2〜4個の)PEG部分を含むことを考慮する。ペグ化は、利用可能なペグ化反応の任意のものによって実施されうる。ペグ化したタンパク質産物を調製する方法は一般に(a)タンパク質が一又は複数のPEG基に付着する条件下で、ポリペプチドをポリエチレングリコール(PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体等)と反応させることと、(b)反応生成物を得ることとを含む。一般に、最適な反応条件は、既知のパラメータ及び所望の結果に基づいて臨機応変に決定される。
【0144】
当該技術分野において知られている多くのPEG付着方法が存在する。例えば、欧州特許出願公開第0401384号;Malik等, Exp. Hematol., 20:1028-1035 (1992);Francis, Focus on Growth Factors, 3(2):4-10 (1992);欧州特許出願公開第0154316号;欧州特許出願公開第0401384号;国際公開第92/16221号;国際公開第95/34326号;及びここで引用されるペグ化に関連する他の刊行物を参照のこと。
【0145】
ペグ化は、例えば、反応性ポリエチレングリコール分子とのアシル化反応又はアルキル化反応を介して実施されうる。従って、本発明に係るタンパク質産物は、アシル基又はアルキル基を介してPEG基を付着させたペグ化タンパク質を含む。このような産物は、モノペグ化又はポリペグ化(例えば、2〜6もしくは2〜5個のPEG基を含むもの)されてもよい。PEG基は一般にアミノ酸のα−又はε−アミノ基でタンパク質に付着されるが、好適な反応条件下でPEG基に付着するのに充分に反応性であるタンパク質に付着した何れかのアミノ基にPEG基が付着されうることも考えられる。
【0146】
アシル化によるペグ化は、一般に、ポリエチレングリコール(PEG)の活性エステル誘導体を、FGFR1 ECDと反応させることを含む。アシル化反応の場合、選択されるポリマーは、典型的には単一の反応性エステル基を有する。任意の既知の又は後に発見される反応性PEG分子を、ペグ化反応を実施するために使用することができる。適切な活性化PEGエステルの一例は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)にエステル化したPEGである。ここで使用される場合、アシル化は、限定されないが、治療用タンパク質と、ポリマー、例えば、PEG:アミド、カルバメート、ウレタン等との間に次の種類の結合を含むことが考えられる(例えば、Chamow, Bioconjugate Chem., 5:133-140 (1994)を参照のこと)。反応条件は、現在知られている条件又は後に開発される条件の何れから選択されてもよいが、修飾されるべきポリペプチドを不活性化させる温度、溶媒、及びpH等の条件は回避するべきである。
【0147】
アシル化によるペグ化は、一般にポリ−ペグ化タンパク質を生じる。連結する結合はアミドであってもよい。得られる生成物は、実質的に(例えば、>95%)モノ−、ジ−、又はトリ−ペグ化のみの場合がある。しかしながら、ペグ化の程度がより高い幾つかの種が、使用される特定の反応条件に応じた量で生成される場合がある。所望されるならば、更に精製されたペグ化種を、とりわけ、透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、及び電気泳動を含む標準的な精製技術によって、混合物(特に未反応種)から分離することができる。
【0148】
アルキル化によるペグ化は、一般に還元剤の存在下でPEGの末端アルデヒド誘導体をポリペプチドと反応させることを含む。還元的アルキル化反応では、選択されるポリマーは、単一の反応性アルデヒド基を有するべきである。例示的な反応性PEGアルデヒドは、水に安定性であるポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、又はそのモノC
1−C
10アルコキシもしくはアリールオキシ誘導体である(例えば、米国特許第5252714号を参照のこと)。
【0149】
マーカー
更に、本発明のFGFR1 ECDは、融合ポリペプチドの精製を促進するペプチド等のマーカー配列に融合されうる。マーカーアミノ酸配列は、とりわけ、pQEベクター(Qiagen, Mississauga, Ontario, Canada)中に提供されるタグ等のヘキサヒスチジンペプチドであってもよく、これらの多くは市販されている。Gentz等, Proc. Natl. Acad. Sci. 86:821-824 (1989)に記載されるように、例えば、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製をもたらす。精製に有用な別のペプチドタグである赤血球凝集素(HA)タグは、インフルエンザHAタンパク質由来のエピトープに対応する。(Wilson等, Cell 37:767 (1984))。これらの上記融合体の何れも、ここに記載されるFGFR1 ECDを使用して遺伝子操作されうる。
【0150】
オリゴマー化ドメイン融合パートナー
様々な実施態様では、オリゴマー化は、限定されないが、多価性、結合強度の増加、及び異なるドメインの組合せた機能を含む、幾つかの機能的利点を融合タンパク質に提供する。従って、幾つかの実施態様では、融合パートナーは、オリゴマー化ドメイン、例えば、二量体化ドメインを含む。例示的なオリゴマー化ドメインは、限定されないが、α−ヘリックスコイルドコイルドメインを含むコイルドコイルドメイン、コラーゲンドメイン、コラーゲン様ドメイン、及び所定の免疫グロブリンドメインを含む。例示的なコイルドコイルポリペプチド融合パートナーは、限定されないが、テトラネクチンコイルドコイルドメイン、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質のコイルドコイルドメイン、アンジオポエチンコイルドコイルドメイン、及びロイシンジッパードメインを含む。例示的なコラーゲン又はコラーゲン様オリゴマー化ドメインは、限定されないが、コラーゲン中に見出されるもの、マンノース結合レクチン、肺サーファクタントタンパク質A及びD、アディポネクチン、フィコリン、コングルチニン、マクロファージスカベンジャー受容体、並びにエミリン(emilin)を含む。
【0151】
抗体Fc免疫グロブリンドメイン融合パートナー
融合パートナーとして使用されうる多くのFcドメインが、当該技術分野において知られている。幾つかの実施態様では、融合パートナーはFc免疫グロブリンドメインである。Fc融合パートナーは、天然に生じる抗体に見出される野生型Fc、その変異体、又はその断片でありうる。非限定的な例示的Fc融合パートナーは、ヒトIgG、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の、ヒンジ並びにCH2及びCH3定常ドメインを含むFcを含む。更なる例示的Fc融合パートナーは、限定されないが、ヒトIgA及びIgMを含む。幾つかの実施態様では、Fc融合パートナーは、例えば、IgG1中にC237S変異を含む(例えば、配列番号:8を参照)。幾つかの実施態様では、Fc融合パートナーは、米国特許第6900292号に記載されるように、P331S変異を有するヒトIgG2のヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含む。所定の例示的なFcドメイン融合パートナーは、配列番号:8から10に示される。
【0152】
アルブミン融合パートナー及びアルブミン結合分子融合パートナー
幾つかの実施態様では、融合パートナーはアルブミンである。例示的なアルブミンは、限定されないが、それらが融合されるポリペプチドの血清半減期又はバイオアベイラビリティを増加させることができるヒト血清アルブミン(HSA)及びHSAの断片を含む。幾つかの実施態様では、融合パートナーは、アルブミン結合分子、例えば、アルブミンに結合するペプチド又はアルブミンに結合する脂質又は他の分子とコンジュゲートする分子である。幾つかの実施態様では、HSAを含む融合分子は、例えば米国特許第6686179号に記載されているようにして調製される。
【0153】
融合パートナーの例示的な付着
融合パートナーは、FGFR1 ECDのN末端又はC末端に共有結合的に又は非共有結合的に付着させることができる。付着は、例えば、アミノ酸側鎖(例えば、システイン、リジン、セリン、又はスレオニンの側鎖等)を介して、N末端又はC末端以外のFGFR1 ECD内の場所でも起こりうる。
【0154】
共有結合的な付着又は非共有結合的な付着の何れかの実施態様では、融合パートナーとFGFR1 ECDとの間にリンカーが含まれてもよい。そのようなリンカーは、少なくとも一つのアミノ酸又は化学部分から構成されうる。融合パートナーをFGFR1 ECDに共有結合的に付着させる例示的な方法は、限定されないが、融合パートナとFGFR1 ECDを単一のアミノ酸配列として翻訳すること、及び融合パートナーをFGFR1 ECDに化学的に付着させることを含む。融合パートナーとFGFR1 ECDが単一のアミノ酸配列として翻訳される場合、更なるアミノ酸が、融合パートナーとFGFR1 ECDとの間にリンカーとして含まれてもよい。幾つかの実施態様では、融合パートナー及び/又はFGFR1 ECDの単一発現コンストラクトへのクローニングを促進するために、リンカーは、それをコードするポリヌクレオチド配列に基づいて選択される(例えば、特定の制限酵素部位を含むポリヌクレオチドが、融合パートナーをコードするポリヌクレオチドとFGFR1 ECDをコードするポリヌクレオチドとの間に配されてもよく、制限酵素部位を含むポリヌクレオチドが、短いアミノ酸リンカー配列をコードする)。融合パートナーとFGFR1 ECDとが、化学的手段によって共有結合的にカップリングされる場合、典型的には、カップリング反応の間に様々なサイズのリンカーが含まれてもよい。
【0155】
融合パートナーをFGFR1 ECDに非共有結合的に付着させる例示的な方法は、限定されないが、結合対を介した付着を含む。例示的な結合対は、限定されないが、ビオチン及びアビジン又はストレプトアビジン、抗体及びその抗原等を含む。
【0156】
共翻訳修飾及び翻訳後修飾
本発明は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断、又は抗体分子もしくは他の細胞リガンドへの結合によって、翻訳中又は翻訳後に差次的に修飾されるFGFR1 ECD及びFGFR1 ECD融合分子の投与を包含する。多くの化学的修飾の何れも、限定されないが、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼによる特異的な化学的切断;NABH
4;アセチル化;ホルミル化;酸化;還元;及び/又はチュニカマイシンの存在下における代謝合成を含む知られた技術によって実施することができる。
【0157】
本発明に包含される更なる翻訳後修飾は、例えば、N結合又はO結合炭水化物鎖、N末端又はC末端終端のプロセシング、アミノ酸骨格への化学部分の付着、N結合又はO結合炭水化物鎖の化学修飾、及び原核生物宿主細胞の発現の結果としてのN末端メチオニン残基の付加又は欠失を含む。FGFR1 ECD及びFGFR1 ECD融合分子の様々な翻訳後修飾の非限定的な考察は、例えば米国特許第7678890号に見出すことができる。
【0158】
FGFR1 ECD及びFGFR1 ECD融合分子の発現と産生ベクター
FGFR1 ECDをコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。また、FGFR1 ECD融合分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。そのようなベクターは、限定されないが、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等を含む。
【0159】
幾つかの実施態様では、CHO又はCHO由来細胞におけるポリペプチドの発現に最適化されているベクターが選択される。例示的なこのようなベクターは、例えば、Running Deer等, Biotechnol. Prog. 20:880-889 (2004)に記載されている。
【0160】
幾つかの実施態様では、ベクターは、ヒトを含む動物におけるFGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子のインビボ発現のために選択される。幾つかのそのような実施態様では、ポリペプチドの発現は、組織特異的な様式で機能するプロモーターの制御下にある。例えば、肝臓特異的プロモーターは、例えば、PCT国際公開第2006/076288号に記載されている。様々な発現ベクターの非限定的な考察は、例えば米国特許第7678890号に見出すことができる。
【0161】
宿主細胞
様々な実施態様では、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子は、原核細胞、例えば、細菌細胞中で、又は真核細胞、例えば、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞中で発現させることができる。そのような発現は、例えば、当該技術分野において既知の手順に従って実施されうる。ポリペプチドを発現させるために使用することができる例示的な真核細胞は、限定されないが、COS7細胞を含むCOS細胞、293−6E細胞を含む293細胞、CHO−S及びDG44細胞を含むCHO細胞、並びにNSO細胞を含む。幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子に対して所定の所望される翻訳後修飾を行う能力に基づいて、特定の真核生物宿主細胞が選択される。例えば、幾つかの実施態様では、CHO細胞が、293細胞で産生される同じポリペプチドよりもより高いレベルのシアリル化を有するFGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子を産生する。
【0162】
所望の宿主細胞への核酸の導入は、限定されないが、リン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン媒介形質移入、カチオン性脂質媒介形質移入、電気穿孔、形質導入、感染等を含む、当該技術分野において既知の任意の方法によって達成することができる。非限定的な例示的方法は、例えば、Sambrook等, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3版 Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載されている。核酸は、当該技術分野において既知の方法に従って、所望の宿主細胞中に一過性に又は安定に形質移入することができる。宿主細胞及び宿主細胞中のポリペプチドの方法に関する非限定的な考察は、例えば米国特許第7678890号に見出すことができる。
【0163】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、当該技術分野において既知の方法に従って、遺伝子操作されたか又はポリペプチドをコードする核酸分子を形質移入した動物においてインビボで産生させることができる。
【0164】
FGFR1 ECDポリペプチドの精製
FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子は、当該技術分野において既知の様々な方法によって精製することができる。そのような方法は、限定されないが、親和性マトリックス又は疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用を含む。好適な親和性リガンドは、FGFR1 ECD又は融合パートナーの任意のリガンドを含む。FGFR1に結合する抗体の場合の好適な親和性リガンドは、限定されないが、FGFR1自体及びその断片を含む。更に、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、又は抗体親和性カラムを使用してFc融合パートナーに結合させ、FGFR1 ECD融合分子を精製することもできる。また、FGFR1 ECDに対する抗体を使用してFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子を精製してもよい。疎水性相互作用クロマトグラフィー、例えば、ブチル又はフェニルカラムも、幾つかのポリペプチドを精製するのに好適である場合もある。ポリペプチドを精製する多くの方法が当該技術分野において知られている。ポリペプチドを精製する様々な方法の非限定的な考察は、例えば米国特許第7678890号に見出すことができる。
【0165】
FGFR1 ECD及び/又はFGFR1 ECD融合分子の恩恵を受ける患者を特定する方法
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子の投与から恩恵を受けうるがんに罹患している患者を特定する方法が提供される。幾つかのそのような実施態様では、該方法は、対象から得られた試料中においてがん細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較して高いレベルのFGF2を含むかどうかを決定することを含む。幾つかの実施態様では、がん試料の細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が、VEGF mRNA又はタンパク質レベルと比較して高いFGF2 mRNA又はタンパク質レベルを有していると判定されている。幾つかの実施態様では、VEGFレベルと比較して高いFGF2レベルは、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子に対するがんの治療反応性の指標である。幾つかの実施態様では、試料は、がんを有するか又は有することが疑われる患者から採取される。がん細胞の少なくとも一部におけるVEGFレベルと比較しての高いFGF2レベルの発見は、がんを有するか又は有することが疑われる患者が、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子療法の恩恵を受けうることを示す。幾つかの実施態様では、患者は、腎がん、肝がん、神経膠芽腫、又は中皮腫を有するか又は有することが疑われる。
【0166】
幾つかの実施態様では、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子と少なくとも1種の抗血管新生剤の投与から恩恵を受けうるがんに罹患している患者を特定する方法が提供される。幾つかのそのような実施態様では、該方法は、対象から得られた試料中においてがん細胞の少なくとも一部がVEGFレベルと比較して低いレベルのFGF2を含むかどうかを決定することを含む。幾つかの実施態様では、がん試料の細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が、VEGF mRNA又はタンパク質レベルと比較して低いFGF2 mRNA又はタンパク質レベルを有していると判定されている。幾つかの実施態様では、試料は、がんを有するか又は有することが疑われる患者から採取される。がん細胞の少なくとも一部におけるVEGFレベルと比較しての低いFGF2レベルの発見は、がんを有するか又は有することが疑われる患者が、FGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子及び少なくとも1種の抗血管新生剤療法の恩恵を受けうることを示す。幾つかの実施態様では、患者は、腎がん、肝がん、神経膠芽腫、又は中皮腫を有するか又は有することが疑われる。
【0167】
幾つかの実施態様では、FGF2レベル及び/又はVEGFレベルは、研究施設によって決定される。研究施設は、病院の研究室又は病院とは独立した研究室でありうる。幾つかの実施態様では、FGF2レベル及び/又はVEGFレベルの決定後、決定の結果が医療従事者に伝えられる。幾つかの実施態様では、FGF2レベルがVEGFレベルと比較され、比較の結果が医療従事者に伝えられる(例えば「VEGFより高いFGF2」、「VEGFより低いFGF2」、「FGF2/VEGF>1」、「FGF2/VEGF<1」等)。幾つかの実施態様では、患者がFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子療法の恩恵を受けるかどうか、又は該療法に反応を示すかどうかを判定する目的のために結果が伝えられる。幾つかの実施態様では、患者がFGFR1 ECD又はFGFR1 ECD融合分子及び少なくとも1種の抗血管新生剤療法の恩恵を受けるかどうか、又は該療法に反応を示すかどうかを判定する目的のために結果が伝えられる。幾つかの実施態様では、医療従事者は、限定されないが、医師、看護師、病院の管理者及びスタッフ等を含む。
【0168】
タンパク質レベルを決定する任意の好適な方法が使用されうる。所定の実施態様では、試料中のタンパク質レベルは、免疫組織化学(「IHC」)及び染色プロトコルを使用して検査される。組織片の免疫組織化学的染色は、試料中のタンパク質の存在を評価又は検出する信頼できる方法であることが示されている。免疫組織化学技術は、一般に発色法又は蛍光法によって、細胞抗原をインサイツでプローブし可視化するために抗体を利用する。
【0169】
組織試料は、一般的な方法によって固定され(すなわち保存され)うる(例えば、 "Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology," 3版(1960) Lee G. Luna, HT (ASCP) 編者, The Blakston Division McGraw-Hill Book Company, New York; The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel, Editor, Armed Forces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.を参照)。当業者は、固定液の選択が、試料を組織学的に染色する目的又は別の分析目的によって決定されることを理解するであろう。当業者はまた、固定の長さは、組織試料のサイズ及び使用される固定液に依存することも理解するであろう。例として、中性緩衝ホルマリン、Bouin固定液又はパラホルムアルデヒドが試料を固定するために使用されうる。
【0170】
一般に、試料を最初に固定し、ついで、上昇アルコール系列で脱水し、組織試料が切断されうるようにパラフィン又は他の切片化媒体に浸潤させ、包埋する。あるいは、組織を切片化し、得られた切片を固定してもよい。例として、組織試料を一般的な方法によってパラフィンに包埋して処理してもよい(例えば、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。使用されうるパラフィンの例は、限定されないが、Paraplast、Broloid、及びTissuemayを含む。組織試料を包埋してから、該試料をミクロトーム等により切片化することができる(例えば、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。この手順の例として、切片は、約3ミクロンから約5ミクロンの範囲の厚みを有しうる。切片化してから、幾つかの標準的な方法により切片をスライドに付着させることができる。スライド接着剤の例は、限定されないが、シラン、ゼラチン、ポリ−L−リジン等を含む。例として、パラフィン包埋切片は、正電荷を帯びたスライド及び/又はポリ−L−リジンで被覆したスライドに付着させることができる。
【0171】
パラフィンが包埋材料として使用される場合、組織片は、一般に脱パラフィンして水に再水和させる。組織片は、幾つかの一般的な標準的方法によって脱パラフィンすることができる。例えば、キシレン及び段階的な下降アルコール系列が使用されうる(例えば上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。あるいは、Hemo−De7(CMS, Houston, Tex.)等の市販の脱パラフィン化非有機剤が使用されてもよい。
【0172】
幾つかの実施態様では、試料の調製後、IHCを使用して組織片を分析することができる。IHCは、形態学的染色及び/又は蛍光インサイツハイブリダイゼーション等の更なる技術と組合せて実施されてもよい。直接アッセイ及び間接アッセイの2種の一般的なIHC法が利用可能である。第1のアッセイによると、標的抗原に対する抗体の結合が直接決定される。この直接アッセイは、抗体を更に相互作用させることなく可視化することができる蛍光タグ又は酵素標識一次抗体等の標識化試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原に結合し、ついで、標識された二次抗体が一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、抗原の可視化をもたらすために発色性基質又は蛍光発生基質が加えられる。幾つかの二次抗体が一次抗体上の異なるエピトープと反応しうるため、シグナルの増幅が起こる。
【0173】
免疫組織化学に使用される一次及び/又は二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識される。多数の標識が利用可能であり、一般に次のカテゴリーに分類することができる:(a)放射性同位体、例えば、
35S、
14C、
125I、
3H、及び
131I。抗体は、例えば、Current Protocols in Immunology, Volumes 1 and 2, Coligen等編 Wiley-Interscience, New York, N.Y., Pubs. (1991)に記載される技術を使用して放射性同位体で標識することができ、放射性は、シンチレーション測定を使用して測定することができる。(b)コロイド金粒子。(c)限定されないが、希土類キレート(ユウロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン、フィコシアニン、又は市販の蛍光団、例えば、SPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7、並びに/又は上記のうちの何れか一又は複数の誘導体を含む、蛍光標識。蛍光標識は、例えば、上記のCurrent Protocols in Immunologyに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートさせることができる。蛍光は、蛍光光度計を使用して定量化することができる。(d)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4275149号は、これらのうちの幾つかに関する考察を提供する。酵素は、一般に、様々な技術を使用して測定することができる、発色性基質の化学的変化を触媒する。例えば、酵素は、基質における色の変化を触媒することができ、それは、分光測光法で測定することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変化させることができる。蛍光の変化を定量化するための技術は上に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電気的に励起され、ついで、(例えば、ケミルミノメーターを用いて)測定することができる光を放出しうるか、又は蛍光受容体にエネルギーを付与する。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)等のペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質酸化酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ等を含む。酵素を抗体にコンジュゲートさせる技術は、O'Sullivan等, Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (J. Langone及びH. Van Vunakis編), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0174】
酵素−基質の組合せの例は、例えば、(i)色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する水素ペルオキシダーゼを基質とする西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、(ii)パラ−ニトロフェニルリン酸を発色性基質とするアルカリホスファターゼ(AP)、及び(iii)発色性基質(例えば、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質(例えば、4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼ)を有するβ−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)を含む。
【0175】
多数の他の酵素−基質の組合せが当業者に利用可能である。これらの概説については、米国特許第4275149号及び同第4318980号を参照のこと。しばしば、標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされる。当業者は、これを達成するための様々な技術を認識するであろう。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、上述した4つの広義のカテゴリーの標識の何れもアビジンとコンジュゲートさせることができるか、又はその逆もしかりである。ビオチンはアビジンに選択的に結合し、よって、この間接的な様式で標識を抗体とコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識との間接的なコンジュゲーションを達成するために、抗体を小ハプテンとコンジュゲートさせ、上述の異なる種類の標識のうちの一つを抗ハプテン抗体とコンジュゲートさせる。このようにして、抗体と標識との間接的なコンジュゲーションを達成することができる。
【0176】
上で考察された試料調製手順とは別に、IHCの前、間、又は後の、更なる組織片の処理が望ましい場合がある。例えば、クエン酸緩衝液中で組織試料を加熱する等のエピトープ回収方法が実施されうる(例えば、Leong等 Appl. Immunohistochem. 4(3):201 (1996)を参照)。
【0177】
任意選択的なブロッキング工程の後、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原に結合するように、十分な時間及び好適な条件下で組織片を一次抗体に曝露する。これを達成するための適切な条件は、日常的実験により決定することができる。試料に対する抗体の結合の程度は、上で考察された検出可能な標識のうちの何れか一つを使用して決定される。幾つかの実施態様では、標識は、3,3'−ジアミノベンジジン発色体等の発色性基質の化学的変化を触媒する酵素標識(例えば、HRPO)である。一実施態様では、酵素標識は、一次抗体に特異的に結合する抗体にコンジュゲートされる(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)。
【0178】
このようにして調製された検体を、マウントしてカバースリップで覆うことができる。ついで、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当該技術分野で日常的に使用される染色強度基準を用いてもよい。
【0179】
幾つかの実施態様では、IHCが使用される場合、細胞又は細胞の集合におけるFGF2及び/又はVEGFのレベルを決定するために段階的染色システムが使用される。例えば、幾つかの実施態様では、無染色(0)、1+、2+、及び3+の4段階システムが使用され、1+、2+、及び3+は、それぞれ増加する染色レベルを示す。幾つかの実施態様では、VEGFと比較してより高レベルのFGF2は、FGF2染色がVEGF染色よりも高い層にあるときに見出される。幾つかの実施態様では、VEGFと比較してより高レベルのFGF2は、FGF2染色とVEGF染色は同じ層にあるが、組織学者が腫瘍のより大きい面積がVEGF染色よりもFGF2染色を有していると決定する場合に見出される。幾つかの実施態様では、VEGFと比較してより低いFGF2レベルは、FGF2染色がVEGF染色よりも低い層にあるときに見出される。幾つかの実施態様では、VEGFと比較してより低レベルのFGF2は、FGF2染色とVEGF染色は同じ層にあるが、組織学者が腫瘍のより大きい面積がFGF2染色よりもVEGF染色を有していると決定する場合に見出される。当業者は、特定のIHCアッセイ(特定の抗体を含む)、細胞型等に応じて、VEGFと比較してより高い又はより低いレベルのFGF2を示す染色レベルを決定することができる。
【0180】
mRNAレベルを決定する任意の好適な方法が使用されうる。細胞中のmRNAを評価するための方法は周知であり、例えば、相補的なDNAプローブ(例えば標的mRNAに特異的な標識リボプローブを使用するインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット法、及び関連する技術)を使用するハイブリダイゼーションアッセイ、並びに様々な核酸増幅アッセイ(例えば、FGF2及び/又はVEGFに特異的な相補的プライマーを使用するRT−PCR、及び他の増幅型検出法、例えば、分岐DNA、SISBA、TMA等)を含む。
【0181】
哺乳動物からの組織又は細胞試料は、ノーザン、ドットブロット法、又はPCR分析を使用して、mRNAについて簡便にアッセイされうる。例えば、定量PCRアッセイ等のRT−PCRアッセイが、当該技術分野で周知である。幾つかの実施態様では、mRNAの発現レベルは、リアルタイムqRT−PCRを使用して定量化されるレベルである。本発明の幾つかの実施態様では、生体試料中の標的mRNAを検出するための方法は、少なくとも一つのプライマーを用いて、逆転写により試料からcDNAを生成することと、標的ポリヌクレオチドをセンス及びアンチセンスプライマーとして使用して、そのように生成されたcDNAを増幅し、その中の標的cDNAを増幅することと、増幅された標的cDNAの存在を検出することとを含む。更に、そのような方法は、生体試料中の標的mRNAのレベルの決定を可能にする一又は複数の工程を含みうる(例えば、アクチンファミリーのメンバー等の「ハウスキーピング」遺伝子の比較コントロールmRNA配列のレベルを同時に調べることによる)。任意選択的に、増幅された標的cDNAの配列を決定することができる。
【0182】
本発明の任意選択的な方法は、マイクロアレイ技術によって組織又は細胞試料中の標的mRNA等のmRNAを検査又は検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験及びコントロール組織試料からの試験及びコントロールmRNA試料を逆転写し、標識してcDNAプローブを作製する。ついで、固体支持体に固定された核酸のアレイにプローブをハイブリダイズさせる。アレイは、アレイの各メンバーの配列及び位置が分かるように構成される。特定のアレイメンバーを有する標識プローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は貴重な情報を提供しうる。マイクロアレイ技術は、核酸ハイブリダイゼーション技術及びコンピューティング技術を用いて、単一の実験において数千個の遺伝子のmRNA発現プロファイルを評価する。(例えば、2001年10月11日に公開された国際公開第01/75166を参照;(アレイの製造に関する考察については、例えば、米国特許第5700637号、米国特許第5445934号及び米国特許第5807522号、Lockart, Nature Biotechnology, 14:1675-1680 (1996);Cheung, V. G.等, Nature Genetics 21(Suppl):15-19 (1999)を参照)。DNAマイクロアレイは、ガラスもしくは他の基体上に直接合成され又はスポットされた遺伝子断片を含む小型アレイである。通常、数千個の遺伝子が単一のアレイ内に提示される。典型的なマイクロアレイ実験は次の工程を含む:1)試料から単離されたRNA由来の蛍光標識標的の調製、2)標識標的のマイクロアレイへのハイブリダイゼーション、3)アレイの洗浄、染色、及び走査、4)走査画像の解析、並びに5)遺伝子発現プロファイルの作成。現在、オリゴヌクレオチド(通常、25塩基長〜70塩基長)アレイと、cDNAから調製されるPCR産物を含む遺伝子発現アレイの、2つの主な種類のDNAマイクロアレイが用いられている。アレイを形成する際には、オリゴヌクレオチドを事前に作製して表面にスポットするか、又は表面上で直接合成する(インサイツ)ことができる。幾つかの実施態様では、DNAマイクロアレイは、一塩基多型(SNP)マイクロアレイ、例えば、Affymetrix(登録商標)SNP Array6.0である。
【0183】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上のオリゴヌクレオチドの直接合成によって製造されるアレイを含む市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイ:オリゴヌクレオチド(通常、25塩基長)が、半導体ベースのフォトリソグラフィー及び固相化学合成技術の組合せによって、ガラスウエハ上に直接合成される。各アレイは、最高で400000個の異なるオリゴを含み、各オリゴは数百万個のコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブがアレイ上の既知の場所で合成されるので、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによって、ハイブリダイゼーションパターン及びシグナル強度を遺伝子同一性及び相対発現レベルの観点で解釈することができる。各遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによってアレイ上に提示される。各プローブ対は、完全にマッチしたオリゴヌクレオチド及びミスマッチしたオリゴヌクレオチドからなる。完全マッチプローブは、特定の遺伝子に正確に相補的な配列を有し、よって遺伝子の発現の尺度となる。ミスマッチプローブは、中心の塩基位置の単一の塩基置換によって完全マッチプローブとは異なり、標的遺伝子転写物の結合を妨げる。これは、バックグラウンド、及び完全マッチオリゴについて測定されるシグナルに寄与する非特異的なハイブリダイゼーションを決定するのに役立つ。Microarray Suiteソフトウェアは、ミスマッチプローブのハイブリダイゼーション強度を完全マッチプローブのそれらから差し引いて、各プローブセットの絶対的又は特異的強度値を決定する。プローブは、Genbank及び他のヌクレオチドリポジトリからの最新情報に基づいて選択される。配列は、遺伝子の3'末端の特有の領域を認識すると考えられる。GeneChip Hybridization Oven(「回転式」オーブン)は、一度に最高64個のアレイのハイブリダイゼーションを実施するために使用される。流体工学ステーションは、プローブアレイの洗浄及び染色を実施する。これは、完全に自動化されており、各モジュールが一つのプローブアレイを保持する4つのモジュールを含む。各モジュールは、プログラムされた流体工学プロトコルを使用して、Microarray Suiteソフトウェアによって独立して制御される。スキャナは、プローブアレイに結合した標識cRNAによって放射される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを備えたコンピュータワークステーションは、流体工学ステーション及びスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイに対して予めプログラムされたハイブリダイゼーション、洗浄、染色プロトコルを使用して、最高で8つの流体工学ステーションを制御することができる。このソフトウェアはまた、ハイブリダイゼーション強度データを獲得し、適切なアルゴリズムを使用してデータを各遺伝子の存在/非存在コールに変換する。最後に、該ソフトウェアは、比較分析によって実験間の遺伝子発現の変化を検出し、出力をテキストファイルにフォーマットし、これを更なるデータ分析のために他のソフトウェアプログラムと共に用いることができる。
【0184】
幾つかの実施態様では、例えば定量的RT−PCRが使用される場合、閾値サイクル数がFGF2とVEGFの間で比較され、より低い閾値がより高いレベルの各mRNAを示す。非限定的な例として、幾つかの実施態様では、FGF2 mRNA及びVEGF mRNAレベルが分析され、FGF2の閾値サイクル数(Ct)が28であり、VEGFのCtが30であるならば、FGF2がVEGFと比較して高いレベルにある。様々な実施態様では、同様の比較が、任意のタイプの定量的又は半定量的分析方法に対して実施されうる。
【0185】
幾つかの実施態様では、FGF2レベルとVEGFレベルは双方とも比較前に正規化される。幾つかの実施態様では、そのような正規化は、レベルが同時に、及び/又は同じアッセイ反応において決定されない場合にVEGFレベルとのFGF2レベルの比較を可能にしうる。当業者は、アッセイに応じて、適切な正規化mRNA、タンパク質、又は他の因子を選択することができる。
【実施例】
【0186】
以下に検討される実施例は、純粋に本発明の例示であることを意図するものであって、決して本発明を限定するものであると見なされるべきではない。実施例は、以下の実験が、実施された全ての又は唯一の実験であることを表すことを意図しているものではない。上に提供された一般的説明に鑑みて、様々な他の実施態様が実施されうることが理解される。使用される数値(例えば、量、温度等)に関して正確さを確保するための努力がなされているが、ある程度の実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。別途示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0187】
実施例1:がん細胞株中のFGF2及びVEGFレベル
ヒト肝細胞癌(HCC)及び腎細胞がん(RCC)細胞株中のFGF2及びVEGFの相対レベルを、Broad−Novartis Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE;www.broadinstitute.org/ccle/home)からのデータを使用して評価した。CCLEは1000以上のヒトがん細胞株のためのゲノム及びトランスクリプトームデータを提供する一般的に利用可能なデータベースである。遺伝子発現値は、Affymetrix U133プラス2.0マイクロアレイを実施することによって生成し、生のAffymetrix CELファイルを、Robust Multi−array Average(RMA)を使用して各プローブセットについて単一の値に変換し、値を分位正規化を使用して正規化した。FGF2では、調べられたがん細胞全てに対する平均発現値が6.0であり、5.4の中央値であった。腎がん細胞株は、8.47の中央値で8.36の平均FGF2発現値を示した。インビボで増殖することが知られているRCC細胞株を調べて、ACHN及びCaki−1を、それぞれ9.79及び10.67の値の「高」FGF2レベルを有しているとして選択した。RCC細胞株Caki−2及び786−0は8.26と7.20の値を有しており、よって「低い」FGF2レベルを表すと考えられた。A498は9.85のFGF2発現値を有しており、これはこの組織型の平均値を上回っているが、この株はまたVEGFの高い発現を示し、<1のFGF2/VEGF比を有していた(以下で検討)。肝がん細胞株については、FGF2の発現の平均値と中央値はそれぞれ6.53及び6.81である。
【0188】
HCC細胞株SK−Hep−1は9.45のFGF2値を有し、従って「高」FGF2レベルを有すると考えられた。
【0189】
VEGFの相対発現値を同様にCCLEを使用して評価した。調べたがん細胞全体の平均VEGF値は8.13で、8.06の中央値であった。腎がん細胞株は、9.38の中央値で9.24の平均VEGF値であった。RCC細胞株A498及び786−0は、9.77と9.39のVEGF値を有し、よって「高」VEGFレベルを有すると考えられた。RCC細胞株ACHN及びCaki−1は、7.19と7.53のVEGF値を有しており、従って「低い」VEGFレベルを有すると考えられる。
【0190】
HCC株は、8.17の中央値で8.40の平均VEGF値を示した。HCC細胞株SK−Hep−1細胞は7.03のVEGF値を有し、従って、「低」VEGFレベルを有すると考えられた。
【0191】
加えて、我々はこれらのRCC及びHCC細胞株におけるVEGFに対するFGF2の比を計算するためにCCLE発現値を利用した。>1のFGF2/VEGF比を有する細胞株はRCC株ACHN及びCaki−1及びHCC細胞株SK−Hep−1を含む一方、1の値又は1の値未満の比を有する細胞株はRCC細胞株A498、Caki−2、及び786−0を含んでいた。
【0192】
表2及び3は、がん細胞株の各々におけるFGF2及びVEGF mRNAレベルと、FGF2/VEGFレベルの比を示す。表2の細胞株はヒト腎細胞がんに由来し、表3の細胞株はヒト肝細胞がんに由来する。
【0193】
細胞株を、>1のFGF2/VEGF比を持つ細胞株(幾つかの実施態様では「高FGF2、低いVEGF」であると考えられる)と、<1のFGF2/VEGF比を持つ細胞株)(幾つかの実施態様では「低FGF2、高VEGF」と考えられる)の2つのグループに分けた。
【0194】
実施例2:ACHN異種移植モデルにおける単剤として及びパゾパニブとの組合わせでのFGFR1−ECD.339−Fcの投与
6週齢の雌CB17 SCIDマウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入し、研究開始前に1週間順化させた。ヒト腎明細胞がん(RCC)細胞株ACHNをATCCから購入した(Manassas, VA;カタログ番号CRL−1611)。細胞を、移植のために増やすために完全増殖培地中で3継代培養した。ACHN細胞を、イーグル最小必須培地(EMEM)中で培養した。培地に10%の熱失活ウシ胎仔血清(FBS)及び抗生物質−抗真菌溶液を補充した。細胞を5%CO
2を含む加湿雰囲気中で37℃で増殖させた。
【0195】
培養細胞が85〜90%のコンフルエンスに達したとき、細胞を回収し、1ミリリットル当たり5×10
7細胞で、50%マトリゲルを含む冷Ca
2+及びMg
2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。細胞を、5×10
6細胞/100μl/マウスでマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍増殖のために細胞を移植した後、マウスを週二回モニターした。ACHN腫瘍が、腫瘍サイズ(mm
3)=(幅(mm)×長さ(mm))
2/2の式に従って、100mm
3の平均サイズに達したときに、マウスを選別し、無作為化(n=10)し、処置を開始した。
【0196】
FGFR1−ECD.339−Fc(FP−1039)又はネガティブコントロールとしてのアルブミンを、1週間に2回腹腔内注射を介して15mg/kgで投与した。パゾパニブ(Votrient(登録商標))を経口胃管栄養法によって毎日100mg/kgで投与し、ビヒクルをネガティブコントロールとした。腫瘍が100mm
3に達したとき、FP−1039処置を開始した;その後、FP−1039処置した腫瘍群の半分に、腫瘍がおよそ450mm
3に達したときにパゾパニブ同時処置を開始した。治療開始の際、腫瘍サイズを各マウスにおいて週2回、測定した。各腫瘍の長さ及び幅は、ノギスを使用して測定し、上記の式に従って腫瘍サイズを計算した。皮下腫瘍体積が2000mm
3を超えたとき、又は腫瘍が過度に壊死性になったとき、マウスを安楽死させた。
【0197】
FP−1039及び/又はパゾパニブでの処置の結果の腫瘍体積の比較は、P<0.05ならば、統計的に有意であると判定された。P値を、計算された腫瘍体積の独立両側t検定解析を使用して計算した。
【0198】
図1はこの実験の結果を示している。ACHN異種移植モデル(高FGF2、低VEGF;FGF2/VEGF=1.36;表2を参照)は、単剤療法としてFGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)に反応した。63日目に始まるパゾパニブの投与は、腫瘍増殖の大きな阻害をもたらすようであった。
図1Aを参照のこと。
図1Bに示されるように、FGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)単独では63日目に51%の腫瘍増殖阻害(p<0.0001)の結果となった。パゾパニブとFGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039)の組合わせでは、FGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)単独の場合よりも大きな腫瘍増殖阻害をもたらすようであったが、その結果は統計的有意には達しなかった(p=0.0552)。
図1Cを参照のこと。この分析は、FGFR1−ECD.339−Fcは単独で、高FGF2と低VEGF(比=1.36、表2を参照)を伴うACHN異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を有意に減少させたことを証明している。
【0199】
実施例3:786−0異種移植モデルにおける単剤として及びパゾパニブとの組合わせでのFGFR1−ECD.339−Fcの投与
6週齢の雌CB17 SCIDマウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入し、研究開始前に1週間順化させた。ヒト腎明細胞がん(RCC)細胞株786−0をATCCから購入した(Manassas, VA;カタログ番号CRL−1932)。細胞を、移植のために増やすために完全増殖培地中で3継代培養した。786−0を、10%の熱失活ウシ胎仔血清(FBS)及び抗生物質−抗真菌溶液を補充したRPMI−1640培地中で培養した。細胞を5%CO
2を含む加湿雰囲気中で37℃で増殖させた。
【0200】
培養細胞が85〜90%のコンフルエンスに達したとき、細胞を回収し、1ミリリットル当たり5×10
7細胞で、50%マトリゲルを含む冷Ca
2+及びMg
2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。細胞を、5×10
6細胞/100μl/マウスでマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍増殖のために細胞を移植した後、マウスを週二回モニターした。786−0腫瘍が、腫瘍サイズ(mm
3)=(幅(mm)×長さ(mm))
2/2の式に従って、100mm
3の平均サイズに達したときに、マウスを選別し、無作為化(n=10)し、処置を開始した。
【0201】
FGFR1−ECD.339−Fc(FP−1039)又はネガティブコントロールとしてのアルブミンを、1週間に2回腹腔内注射を介して15mg/kgで投与した。パゾパニブ(Votrient(登録商標))を経口胃管栄養法によって毎日100mg/kgで投与し、ビヒクルをネガティブコントロールとした。FP−1039及びパゾパニブの投与は同時に開始した。治療開始の際、腫瘍サイズを各マウスにおいて週2回、測定した。各腫瘍の長さ及び幅は、ノギスを使用して測定し、上記の式に従って腫瘍サイズを計算した。皮下腫瘍体積が2000mm
3を超えたとき、又は腫瘍が過度に壊死性になったとき、マウスを安楽死させた。
【0202】
FP−1039及び/又はパゾパニブでの処置の結果の腫瘍体積の比較は、P<0.05ならば、統計的に有意であると判定された。P値は、計算された腫瘍体積の独立両側t検定解析を使用して計算した。
【0203】
図2はこの実験の結果を示している。786−0異種移植モデル(低FGF2、高VEGF;FGF2/VEGF=0.77;表2を参照)は、単剤療法としてFGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)に反応しなかった。
図2A及び
図2Bを参照のこと。対照的に、786−0異種移植モデルは単剤療法としてパゾパニブに反応した。
図2A−Cを参照のこと。驚いたことに、FGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)とパゾパニブの併用は、パゾパニブ単独よりも大きな効果を示した(86日目でp=0.0046及び97日目でp=0.0022)。同上参照。この分析は、FGFR1−ECD.339−Fcは単独で、低FGF2と高VEGF(比=0.77、表2を参照)を伴う786−0異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害しなかったが、パゾパニブはそのモデルにおいて効果的であったことを証明している。しかしながら、パゾパニブと併用したFGFR1−ECD.339−Fcは、786−0異種移植モデルにおいてパゾパニブ単独よりも更に大きな腫瘍増殖阻害を示した。
【0204】
実施例4:A498異種移植モデルにおける単剤として及びパゾパニブとの組合わせでのFGFR1−ECD.339−Fcの投与
6週齢の雌CB17 SCIDマウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入し、研究開始前に1週間順化させた。ヒト腎明細胞がん(RCC)細胞株A498をATCCから購入した(Manassas, VA;カタログ番号HTB−44)。細胞を、移植のために増やすために完全増殖培地中で3継代培養した。A498細胞を、10%の熱失活ウシ胎仔血清(FBS)及び抗生物質−抗真菌溶液を補充したイーグル最小必須培地(EMEM)中で培養した。細胞を5%CO
2を含む加湿雰囲気中で37℃で増殖させた。
【0205】
培養細胞が85〜90%のコンフルエンスに達したとき、細胞を回収し、1ミリリットル当たり5×10
7細胞で、50%マトリゲルを含む冷Ca
2+及びMg
2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。細胞を、5×10
6細胞/100μl/マウスでマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍増殖のために細胞を移植した後、マウスを週二回モニターした。A498腫瘍が、腫瘍サイズ(mm
3)=(幅(mm)×長さ(mm))
2/2の式に従って、100mm
3の平均サイズに達したときに、マウスを選別し、無作為化(n=10)し、処置を開始した。
【0206】
FGFR1−ECD.339−Fc(FP−1039)又はネガティブコントロールとしてのアルブミンを、1週間に2回腹腔内注射を介して15mg/kgで投与した。パゾパニブ(Votrient(登録商標))を経口胃管栄養法によって毎日100mg/kgで投与し、ビヒクルをネガティブコントロールとした。FP−1039及びパゾパニブの投与は同時に開始した。治療開始の際、腫瘍サイズを各マウスにおいて週2回、測定した。各腫瘍の長さ及び幅は、ノギスを使用して測定し、上記の式に従って腫瘍サイズを計算した。皮下腫瘍体積が2000mm
3を超えたとき、又は腫瘍が過度に壊死性になったとき、マウスを安楽死させた。89日目(腫瘍細胞接種後)に、パゾパニブ処置腫瘍群(410mm
3の平均腫瘍体積)を更なる処置と分析のために2つの群に分けた。一つの群は毎日パゾパニブ単独での処置を継続して受け、第2の群は、週2回のFGFR1−ECD.339−Fcの腹腔内注射に加えてパゾパニブ処置を毎日受けた。腫瘍は上記の方法に従って週2回、継続して測定した。
【0207】
FP−1039及び/又はパゾパニブでの処置の結果の腫瘍体積の比較は、P<0.05ならば、統計的に有意であると判定された。P値を、計算された腫瘍体積の独立両側t検定解析を使用して計算した。
【0208】
図3は該実験の第一相の結果を示している。A498異種移植モデル(低FGF2、高VEGF;FGF2/VEGF=1.01;表2を参照)は、単剤療法としてのFGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)に対して殆ど反応を示さなかった。
図3Aを参照のこと。対照的に、A498異種移植モデルは単剤療法としてのパゾパニブに反応した。
図3A−Cを参照のこと。驚いたことに、FGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)とパゾパニブの併用は、パゾパニブ単独よりも大きな効果を示した(53日目でp=0.0045及び81日目でp=0.0012)。同上参照。この分析は、FGFR1−ECD.339−Fcは単独で、低FGF2と高VEGF(比=1.01、表2を参照)を伴うA498異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害しなかったが、パゾパニブはそのモデルにおいて効果的であったことを証明している。しかしながら、パゾパニブと併用したFGFR1−ECD.339−Fcは、A498異種移植モデルにおいてパゾパニブ単独よりも更に大きな腫瘍増殖阻害を示した。
【0209】
図14は該実験の第2相の結果を示している。動物を再グループ分けした日(89日目)に対する腫瘍体積パーセントをグラフにすることにより、腫瘍サイズの変化が示されている。
図14Aを参照のこと。腫瘍体積パーセントは、腫瘍サイズ%=100×(体積(mm
3)/89日目の体積(mm
3))との式を使用して各個々の動物に対して計算した。FGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)及び/又はパゾパニブでの処置の結果としての腫瘍サイズパーセントの比較は、P<0.05ならば統計的に有意であると判定された。P値は、腫瘍が測定された最終日(110日目)に計算された腫瘍サイズパーセントの独立両側t検定解析を使用して計算した。
図14Bに示されるように、腫瘍がパゾパニブ処置に対して耐性になったマウスへのパゾパニブ+FGFR1−ECD.339−Fcの投与は、継続されたパゾパニブ単独処置に対して腫瘍サイズの有意な減少をもたらした。
【0210】
実施例5:Caki−2異種移植モデルにおける単剤として及びパゾパニブとの組合わせでのFGFR1−ECD.339−Fcの投与
6週齢の雌CB17 SCIDマウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入し、研究開始前に1週間順化させた。ヒト腎明細胞がん(RCC)細胞株Caki−2をATCCから購入した(Manassas, VA;カタログ番号HTB−47)。細胞を、移植のために増やすために完全増殖培地中で3継代培養した。Caki−2細胞を、10%の熱失活ウシ胎仔血清(FBS)及び抗生物質−抗真菌溶液を補充したマッコイ5a変性培地中で培養した。細胞を5%CO
2を含む加湿雰囲気中で37℃で増殖させた。
【0211】
培養細胞が85〜90%のコンフルエンスに達したとき、細胞を回収し、1ミリリットル当たり5×10
7細胞で、50%マトリゲルを含む冷Ca
2+及びMg
2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。細胞を、5×10
6細胞/100μl/マウスでマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍増殖のために細胞を移植した後、マウスを週二回モニターした。Caki−2腫瘍について、腫瘍サイズ(mm
3)=(幅(mm)×長さ(mm))
2/2の式に従って、腫瘍が200mm
3の平均サイズに達したときに処置を開始し、マウスを選別し、無作為化(n=10)し、処置を開始した。
【0212】
FGFR1−ECD.339−Fc(FP−1039)又はネガティブコントロールとしてのアルブミンを、1週間に2回腹腔内注射を介して15mg/kgで投与した。パゾパニブ(Votrient(登録商標))を経口胃管栄養法によって毎日100mg/kgで投与し、ビヒクルをネガティブコントロールとした。FP−1039及びパゾパニブの投与は同時に開始した。治療開始の際、腫瘍サイズを各マウスにおいて週2回、測定した。各腫瘍の長さ及び幅は、ノギスを使用して測定し、上記の式に従って腫瘍サイズを計算した。皮下腫瘍体積が2000mm
3を超えたとき、又は腫瘍が過度に壊死性になったとき、マウスを安楽死させた。
【0213】
FP−1039及び/又はパゾパニブでの処置の結果の腫瘍体積の比較は、P<0.05ならば、統計的に有意であると判定された。P値は、計算された腫瘍体積の独立両側t検定解析を使用して計算した。
【0214】
図4はこの実験の結果を示している。Caki−2異種移植モデル(低FGF2、高VEGF;FGF2/VEGF=0.96;表2を参照)は、単剤療法としてのFGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)に殆ど反応しなかった。
図4Aを参照のこと。対照的に、Caki−2異種移植モデルは単剤療法としてのパゾパニブに強い反応を示した。
図4A及び4Bを参照のこと。この実験において、FGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)とパゾパニブの併用は、単剤療法としてのパゾパニブと同様に効果的であった。同上参照。この分析は、FGFR1−ECD.339−Fcは単独で、低FGF2と高VEGF(比=0.96、表2を参照)を伴うCaki−2異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害しなかったが、パゾパニブはそのモデルにおいて効果的であったことを証明している。パゾパニブと併用したFGFR1−ECD.339−Fcは、パゾパニブ単独と同様の阻害を示したが、これはパゾパニブに対するこのモデルの特定の感受性の反映であろう。医薬品評価研究センターに2008年12月19日に提出されたパゾパニブに対する新薬承認申請のための薬理学/毒性学審査及び評価(NDA)第22−465号によれば、CB−17 SCIDマウスにおけるCaki−2腫瘍異種移植片は、10、30、及び100mg/kgパゾパニブでそれぞれ90%、77%、及び99%の腫瘍阻害を示している。
【0215】
実施例6:SK−Hep−1異種移植モデルにおける単剤として及びパゾパニブとの組合わせでのFGFR1−ECD.339−Fcの投与
6週齢の雌CB17 SCIDマウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入し、研究開始前に1週間順化させた。ヒト肝細胞がん(HCC)細胞株SK−Hep−1をATCCから購入した(カタログ番号HTB−52)。細胞を、移植のために増やすために完全増殖培地中で3継代培養した。SK−Hep−1細胞を、10%の熱失活ウシ胎仔血清(FBS)及び抗生物質−抗真菌溶液を補充したイーグル最小必須培地(EMEM)中で培養した。細胞を5%CO
2を含む加湿雰囲気中で37℃で増殖させた。
【0216】
培養細胞が85〜90%のコンフルエンスに達したとき、細胞を回収し、1ミリリットル当たり5×10
7細胞で、50%マトリゲルを含む冷Ca
2+及びMg
2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。細胞を、5×10
6細胞/100μl/マウスでマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍増殖のために細胞を移植した後、マウスを週二回モニターした。SK−Hep−1腫瘍が、腫瘍サイズ(mm
3)=(幅(mm)×長さ(mm))
2/2の式に従って、100mm
3の平均サイズに達したときに、マウスを選別し、無作為化(n=10)し、処置を開始した。
【0217】
FGFR1−ECD.339−Fc(FP−1039)又はネガティブコントロールとしてのアルブミンを、1週間に2回腹腔内注射を介して15mg/kgで投与した。パゾパニブ(Votrient(登録商標))を経口胃管栄養法によって毎日100mg/kgで投与し、ビヒクルをネガティブコントロールとした。腫瘍が100mm
3のときFP−1039処置を開始し;ついで、FP−1039処置腫瘍群の半分について、腫瘍がおよそ550mm
3に達したとき、パソパニブ併用処置を開始した。治療開始の際、腫瘍サイズを各マウスにおいて週2回、測定した。各腫瘍の長さ及び幅は、ノギスを使用して測定し、上記の式に従って腫瘍サイズを計算した。皮下腫瘍体積が2000mm
3を超えたとき、又は腫瘍が過度に壊死性になったとき、マウスを安楽死させた。
【0218】
FP−1039及び/又はパゾパニブでの処置の結果の腫瘍体積の比較は、P<0.05ならば、統計的に有意であると判定された。P値は、計算された腫瘍体積の独立両側t検定解析を使用して計算した。
【0219】
図5はこの実験の結果を示している。SK−Hep−1異種移植モデル(高FGF2、低VEGF;FGF2/VEGF=1.34;表3を参照)は、単剤療法としてのFGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)に反応した。
図5A及び5Bを参照のこと。パゾパニブの添加は該実験において腫瘍増殖阻害を有意には増加させなかった。
図5Cを参照のこと。この分析は、FGFR1−ECD.339−Fcは単独で、高FGF2と低VEGF(比=1.34、表3を参照)を伴うSK−Hep−1異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害したことを証明している。
【0220】
実施例7:HepG2、HuH7、及びHep3B異種移植モデルにおける単剤としてのFGFR1−ECD.339−Fcの投与
6週齢の雌CB17 SCIDマウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入し、研究開始前に1週間順化させた。ヒト肝細胞がん(HCC)細胞株HepG2及びHep3BをATCC(Manassas, VA)から購入し、Huh7をJCRB(Japanese Collection of Research Bioresources)から購入した。細胞を、移植のために増やすために完全増殖培地中で3継代培養した。HepG2及びHep3B細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)、2mMのL−グルタミン、及びペニシリン−ストレプトマイシン抗生物質溶液を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。Huh7細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)及びペニシリン−ストレプトマイシン抗生物質溶液を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。細胞を、5%CO
2を含む加湿雰囲気中で37℃で増殖させた。
【0221】
培養細胞が85〜90%のコンフルエンスに達したとき、細胞を回収し、50%マトリゲルを含む冷Ca
2+及びMg
2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。細胞を、HepG2及びHep3Bに対しては、5×10
6細胞/100μl/マウスで、Huh7に対しては1×10
6細胞/100μl/マウスで、マウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍増殖のために細胞を移植した後、マウスを週二回モニターした。
【0222】
FGFR1−ECD.339−Fc(FP−1039)又はネガティブコントロールとしてのアルブミンを、1週間に2回腹腔内注射を介して15mg/kgで投与した。Huh異種移植片に対しては、ビヒクルをネガティブコントロールとして使用した。HepG2及びHep3Bに対しては腫瘍細胞接種から1日後に投薬を開始した。Huh7腫瘍を90mm
3+/−20mm
3に達するようにさせ、その時点で群に層別化し、投薬を開始した。治療開始の際、腫瘍サイズを各マウスにおいて週2回、測定した。各腫瘍の長さ及び幅は、ノギスを使用して測定し、腫瘍サイズを、腫瘍サイズ(mm
3)=(幅(mm)×長さ(mm))
2/2の式に従って、計算した。皮下腫瘍体積がHepG2については500mm
3、Hep3Bについては600mm
3、又はHuhについては2000mm
3を超えたとき、マウスを安楽死させた。
【0223】
FP−1039での処置の結果の腫瘍体積の比較は、P<0.05ならば、統計的に有意であると判定された。P値は、計算された腫瘍体積の独立両側t検定解析を使用して計算した。
【0224】
図6はこの実験の結果を示している。それぞれ<1のFGF2/VEGF比であるHepG2細胞、Hep3B細胞、又はHuh7細胞においてFP−1039を使用する単剤効果はなかった。表3を参照のこと。
【0225】
実施例8:SK−Hep−1異種移植モデルにおける単剤として、及びソラフェニブとの組合わせでのFGFR1−ECD.339−Fcの投与
6週齢の雌CB17 SCIDマウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入し、研究開始前に1週間順化させた。ヒト肝細胞がん(HCC)細胞株SK−Hep−1をATCCから購入した(カタログ番号HTB−52)。細胞を、移植のために増やすために完全増殖培地中で3継代培養した。SK−Hep−1細胞を、10%の熱失活ウシ胎仔血清(FBS)及び抗生物質−抗真菌溶液を補充したイーグル最小必須培地(EMEM)中で培養した。細胞を5%CO
2を含む加湿雰囲気中で37℃で増殖させた。
【0226】
培養細胞が85〜90%のコンフルエンスに達したとき、細胞を回収し、1ミリリットル当たり5×10
7細胞で、50%マトリゲルを含む冷Ca
2+及びMg
2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。細胞を、5×10
6細胞/100μl/マウスでマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍増殖のために細胞を移植した後、マウスを週二回モニターした。SK−Hep−1腫瘍が、腫瘍サイズ(mm
3)=(幅(mm)×長さ(mm))
2/2の式に従って、100mm
3の平均サイズに達したときに、マウスを選別し、無作為化(n=10)し、処置を開始した。
【0227】
FGFR1−ECD.339−Fc(FP−1039)又はネガティブコントロールとしてのアルブミンを、1週間に2回腹腔内注射を介して15mg/kgで投与した。ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))を、週5回、経口胃管栄養法によって毎日20mg/kgで投与した。動物に、ソラフェニブ処置のコントロールとしてビヒクル(1%のDMSO/19%の1:1クレモホール/エタノール/80%水)を胃管栄養法によって毎日投与した。腫瘍が100mm
3に達したとき、FP−1039処置を開始した。治療開始の際、腫瘍サイズを各マウスにおいて週2回、測定した。各腫瘍の長さ及び幅は、ノギスを使用して測定し、上記の式に従って腫瘍サイズを計算した。皮下腫瘍体積が1000mm
3を超えたとき、腫瘍が過度に壊死性になったとき、又は動物の健康が損なわれたとき、マウスを安楽死させた。
【0228】
FP−1039及び/又はソラフェニブでの処置の結果の腫瘍体積の比較は、P<0.05ならば、統計的に有意であると判定された。P値を、腫瘍が測定された最終日の計算された腫瘍体積の独立両側t検定解析を使用して計算した。
【0229】
図7はこの実験の結果を示している。SK−Hep−1異種移植片モデル(高FGF2、低VEGF;FGF2/VEGF=1.34;表3を参照)は、単剤療法としてのFGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)(61日目でp=0.0036)に反応し、また単剤療法としてのソラフェニブ(61日目でp<0.0001)にも反応した。
図7A、B、及びCを参照のこと。FGFR1−ECD.339−Fcとソラフェニブの併用は、ソラフェニブ単独(61日目でp=0.0004)又はFGFR1−ECD.339−Fc単独(p=0.001)よりも腫瘍増殖阻害を有意に増大させた。同上参照。この分析は、FGFR1−ECD.339−Fcは単独で、高FGF2と低VEGFを伴うSK−Hep−1異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害し、FGFR1−ECD.339−Fcとソラフェニブの併用は、ソラフェニブ又はFGFR1−ECD.339−Fc単独よりも腫瘍増殖阻害を有意に増加させる相加効果を有していたことを証明している。
【0230】
単剤としての、またソラフェニブと組合わせてのFGFR1−ECD.339−FcをHepG2異種移植モデルにおいても試験した。HepG2細胞は0.54の低FGF2/VEGF比を有しており、FGFR1−ECD.339−Fcは単剤として効果的ではなかった。実施例7を参照のこと。単剤としてのソラフェニブはHepG2異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害するが、FGFR1−ECD.339−Fcとソラフェニブの組合せがソラフェニブ単独よりも効果的であることは見出せなかった。
【0231】
実施例9:FGFR1−ECD.339−Fcによる反応の予測因子
FGFリガンド、FGF受容体、FGF結合タンパク質、FGFシグナル伝達分子、及び一群の血管新生関連標的を含む遺伝子のパネルのRNA発現を、一組の35個の腫瘍細胞株及び異種移植片においてqRT−PCRを使用して決定した。RNAeasy(登録商標)ミニキット(Qiagen, Germany)を使用して、インビトロで増殖させた細胞株又はインビボで増殖させた腫瘍異種移植片からRNAを抽出した。QuantiTect Reverse Transcription Kit(Qiagen, Germany)を使用したランダム六量体プライミング及び逆転写酵素によりcDNAを作製する前に、抽出したRNAをDNAse Iで処理した。ヒト及びマウスRNAの発現は、ヒトGUSBコントロール参照QuantiTect Primer Assay(Qiagen, Germany)を用いるQuantiTect Primer Assays(Qiagen, Germany)を使用して決定した。QuantiTect SYBR Green PCR Kit(Qiagen, Germany)を、リアルタイムqRT−PCR及びABI Prism ViiA
TM 7 Real−Time PCR System(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いてmRNA発現レベルを定量化するために使用した。遺伝子発現の相対定量は、基準物質としてのヒトGUSB及び市販のRNAコントロール(Stratagene, La Jolla, CA)を使用して、比較Ct法に従って算出した。相対定量は、次の式に従って決定した:2
−(ΔCt sample−ΔCt calibrator)。
【0232】
この実験で使用された腫瘍細胞株及び異種移植片を表4に示す。また、マウス異種移植モデルにおけるFGFR1−ECD.339−Fcの投与計画、腫瘍増殖阻害率(TGI(%))、及び腫瘍増殖阻害の統計的有意性(P値)、並びに細胞株においてFGFR1遺伝子が増幅しているかどうかも表4に示す。
【0233】
例示的な異種移植片実験は次の通りである。Caki−1及びMSTO−211Hの場合、SCIDマウス(1群当たりN=10)の右側腹部に500万個の細胞を皮下移植した。FGFR1−ECD.339−Fc又はアルブミンを表4に示される用量で週2回腹腔内投与した。腎細胞がん(RCC)Caki−1モデルにおいて、10mg/kgのFGFR1−ECD.339−Fcを週2回、6週間投与した結果、81%(P<0.001)の腫瘍増殖阻害が生じた(TGI)。MSTO−211H中皮腫モデルでは、FGFR1−ECD.339−Fcの投与により腫瘍増殖が64%(P<0.0001)減少した。対応する腫瘍において、曲線下面積(AUC)分析によって評価したところ、FGFR1−ECD.339−Fcは腫瘍体積を有意に減少させた。調べたモデルの19/35(54%)に、25〜96%の範囲の阻害を伴う反応が観察された(表4を参照)。
【0234】
FGFリガンド、FGF受容体、FGF結合タンパク質及びFGFシグナル伝達分子を含む遺伝子のパネルのRNA発現を、表4の所定の異種移植モデルにおいてqRT−PCRを使用して調べた。ついで、遺伝子発現をFGFR1−ECD.339−Fc応答と相関させて、抗腫瘍活性と正の相関及び負の相関を持ったRNA発現サインを決定した。
【0235】
図8は、FGFR1−ECD.339−Fc応答者及び非応答者の異種移植片における、(A)FGF2 mRNA(GUSBに対して正規化)及び(B)FGF2タンパク質の発現を示す。FGF2の発現(P=0.03569)はFGFR1−ECD.339−Fc応答と正の関連を示した。FGF2はFGFR1−ECD.339−Fc応答者及び非応答者の異種移植片間で高い(247.7倍)mRNA遺伝子発現比を示した。FGF2タンパク質レベルもまたFGFR1−ECD.339−Fc応答と相関していることが確認された。
【0236】
図9は、FGFR1−ECD.339−Fc応答者及び非応答者の異種移植片における、(A)VEGFA mRNA(GUSBに対して正規化)及び(B)VEGFAタンパク質の発現を示す。VEGFAの発現(P=0.042)はFGFR1−ECD.339−Fc応答と負の関連を示した。VEGFAタンパク質レベルもまたFGFR1−ECD.339−Fc応答と負に相関していることが確認された(p=0.0303)。
【0237】
実施例10:中皮腫細胞株中のFGF2及びVEGFレベル
FGF2及びVEGF mRNA発現レベルのデータはCancer Cell Line Encyclopedia(CCLE;www.broadinstitute.org/ccle/home)から獲得し、12種の中皮腫細胞株に対してコンパイルした。CCLE mRNAデータは、Affymetrix U133+2アレイを使用して引き出した。生のAffymetrix CELファイルを、Robust Multi−array Average(RMA)を使用して各プローブセットについて単一の値に変換し、分位正規化を使用して正規化した。例えばIrizarry, R. A.等 Exploration, normalization, and summaries of high density oligonucleotide array probe level data. Biostatistics 4, 249-264, (2003);Bolstad, B. M., Irizarry, R. A., Astrand, M.及びSpeed, T. P. A comparison of normalization methods for high density oligonucleotide array data based on variance and bias. Bioinformatics 19, 185-193, (2003)を参照のこと。各遺伝子に対する特異的プローブセットIDは次の通りである:FGF2(2247_at);VEGF(7422_at)。CCLEでは、中皮腫細胞株は他のがん細胞株と比較して最も高いFGF2 mRNAレベルの一つを有している。(データは示さず)更に、表5に示されるように、FGF2 mRNAレベルは、分析された12種の中皮腫細胞株のうちの11種においてVEGFレベルよりも高い。
【0238】
実施例11:中皮腫異種移植モデルにおけるFGFR1−ECD.339−Fcの投与
7週齢の雌SCIDマウス(Taconic, Hudson, NY)にNCI−H226細胞(ATCC, Manassas, VA)を5×10
6細胞/マウスで皮下移植し、腫瘍を持ったマウスを、腫瘍が約176〜277mm
3のサイズに達したときに4群(n=8/群)に無作為化した。マウスを、3通りの異なった濃度(1.024、5.12又は25.6mg/kg)のFGFR1−ECD.339−Fcで29日間、1週間に3回(t.i.w.)処置した。腫瘍サイズと体重を週2回測定した。
【0239】
図10に示されるように、FGFR1−ECD.339−Fcで処置されたマウスにおいて、29日目に1.024mg/kg(16.2%TGI)、5.12mg/kg(56.8%TGI)及び25.6mg/kg(77.8%TGI)の腫瘍増殖阻害(TGI)が観察された。
【0240】
5から6週齢の雌SCIDマウスにMSTO−211H細胞(ATCC, Manassas, VA)を5×10
6細胞/マウスで皮下移植し、腫瘍を持ったマウスを、腫瘍が約150〜225mm
3のサイズに達したときに3群(n=10/群)に無作為化した。マウスを、2通りの異なった濃度(5.12又は25.6mg/kg)のFGFR1−ECD.339−Fcで29日間、1週間に3回(t.i.w.)処置した。腫瘍サイズと体重を週2回測定した。
【0241】
図11に示されるように、FGFR1−ECD.339−Fcで処置されたマウスにおいて、29日目に5.12mg/kg(20.3%TGI)及び25.6mg/kg(50.1%TGI)の腫瘍増殖阻害(TGI)が観察された。
【0242】
ラット抗マウス汎内皮細胞抗原抗体(MECA−32;BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)を使用する免疫組織化学(IHC)染色を、NCI−H226(中皮腫)異種移植研究の腫瘍について実施した。腫瘍を持ったマウスを、上に記載されたように、ビヒクル(0.9%の生理食塩水)か増大用量(1.024、5.12、又は25.6mg/kg)のFGFR1−ECD.339−Fcで29日間、1週間に3回(t.i.w.)処置した。腫瘍を30日目に収集した。MECA−32 IHC染色の定量化を、血管数/組織面積を測定することによって分析した。
【0243】
図12に示されるように、FGFR1−ECD.339−Fc処置での血管密度の用量依存性で統計的に有意な減少が、外側領域のデータ(A)及び外側+内側領域のデータセット(全腫瘍塊;C)を使用して観察された。この実験では内側領域のデータセット(B)では有意差は証明されなかった。
【0244】
IHCにより血管密度を測定する他の非限定的例示法は、CD31/PECAM−1を認識する抗体を使用する。
【0245】
実施例12:HLF腫瘍異種移植モデルにおけるFGFR1−ECD.339−Fcの投与
6週齢の雌CB17 SCIDマウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入し、研究開始前に1週間順化させた。ヒト肝細胞がん(HCC)細胞株HLFをJCRBから購入した(カタログ番号JCRB0405)。細胞を、移植のために増やすために完全増殖培地中で3継代培養した。HLF細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)及び抗生物質−抗真菌溶液を補充したダルベッコ変法イーグル培地(FBS)中で培養した。細胞を5%CO
2を含む加湿雰囲気中で37℃で増殖させた。
【0246】
培養細胞が85〜90%のコンフルエンスに達したとき、細胞を回収し、1ミリリットル当たり2.5×10
7細胞で、50%マトリゲルを含む冷Ca
2+及びMg
2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。細胞を、2.5×10
6細胞/100μl/マウスでマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍増殖のために細胞を移植した後、マウスを週二回モニターした。HLF腫瘍が、腫瘍サイズ(mm
3)=(幅(mm)×長さ(mm))
2/2の式に従って、100mm
3の平均サイズに達したときに、マウスを選別し、4処置群の一つに無作為化し、投薬を開始した。最初の腫瘍がおよそ2ヶ月でこの体積に達した。およそ100mm
3の体積に達したところで、腫瘍を持ったマウスがインビボ研究に継続して追加された(1群当たりn=8〜9)。
【0247】
FGFR1−ECD.339−Fc又はネガティブコントロールとしてのアルブミンを、1週間に2回腹腔内注射を介して15mg/kgで投与した。ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))を1週間に5回、経口胃管栄養法によって毎日20mg/kgで投与した。ソラフェニブ処置のコントロールとして、動物にビヒクル(1%のDMSO/19%の1:1クレモホール/エタノール/80%水)を胃管栄養法によって毎日投与した。治療開始の際、腫瘍サイズを各マウスにおいて週2回、測定した。各腫瘍の長さ及び幅は、ノギスを使用して測定し、上記の式に従って腫瘍サイズを計算した。皮下腫瘍体積が1500mm
3を超えたとき、腫瘍が過度に壊死性になったとき、又は動物の健康が損なわれたとき、マウスを安楽死させた。
【0248】
FGFR1−ECD.339−Fc及び/又はソラフェニブでの処置の結果の腫瘍体積の比較は、P<0.05ならば、統計的に有意であると判定された。P値は、処置開始後24日目の計算された腫瘍体積の独立両側t検定解析を使用して計算した。
【0249】
図13はこの実験の結果を示している。HLF異種移植モデル(高FGF2、低VEGF;FGF2/VEGF=1.23;表3を参照)は、単剤療法としてのFGFR1−ECD.339−Fc(「FP−1039」)に反応し(24日目でp=0.0175)、単剤療法としてのソラフェニブにも反応した(24日目でp=0.0020)。
図13A及びBを参照のこと。FGFR1−ECD.339−Fcとソラフェニブの併用は、ソラフェニブ単独よりも(p=0.0289)又はFGFR1−ECD.339−Fc単独よりも(p=0.0026)腫瘍増殖阻害を有意に増加させた。同上参照。この分析は、FGFR1−ECD.339−Fcは単独で、高FGF2と低VEGFを伴うHLF異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害し、FGFR1−ECD.339−Fcとソラフェニブの併用は、ソラフェニブ単独よりも又はFGFR1−ECD.339−Fc単独よりも腫瘍増殖を有意に増加させたことを証明している。
【0250】
配列表
次の表はここで検討された所定の配列を列挙するものである。FGFR1配列は、別の記載がない限り、シグナルペプチドなしで示される。