【実施例】
【0034】
以下に、実施例に代わる製造例、製剤例、試験例等を記載することにより、本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
製造例1:Leuco−MBの調製
<操作手順>
1.mQ水でMBを1mMに調整し、アスコルビン酸は、500mMに調整した。
2.上記で調整したMB水溶液10mLと、アスコルビン酸の水溶液10mLを反応させた。
3.水溶液が青色から無色に変化したことにより、MBが還元されて、Leuco−MBが得られたことが確認された。
【0036】
調製例2:MBのローション剤の調製
<操作手順>
MBの50mgをポリエチレングリコール400(PEG400)の50gに加え、70℃にて加温・撹拌し、均一に溶解した。
その結果、適度な粘度を有するローション剤が得られた。
【0037】
調製例3:MBの軟膏剤の調製
<操作手順>
1.MBの50mgを40gのPEG400に加えて、70℃にて加温・撹拌して溶解した。
2.得られた溶解液に、10gのPEG4000を加えて、70℃にて加温・撹拌して可溶化した。
その結果、適度な粘度を有する軟膏剤が得られた。
【0038】
調製例4:MBのゲル化(ゲル剤の調製)
<操作手順>
1.MB50mgをmQ水10gに加えて撹拌下に溶解した。
2.溶解液に、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)0.5gを加温・撹拌下に徐々に加えた。
その結果、MB含有のゲル状物(ゲル剤)が調製された。
【0039】
調製例5:Leuco−MBのゲル化(ゲル剤)の調製
<操作手順>
1.調製例1で得られたLeuco−MBの50mgを、調製例4と同様に操作した。
その結果、Leuco−MB含有のゲル状物(ゲル剤)が調製された。
【0040】
本発明においては、これらのMB体(以下、MBおよびLeuco−MBを含めて単にMB体と言う場合がある)は、SDT用の癌疾患治療剤等の舌下剤や軟膏剤等の外用剤として処方される。
癌疾患治療剤としての舌下剤は、適当なゲル化剤等を用いて調製することができ、また、癌疾患治療剤としての外用剤は、製剤学的に許容される各種成分を用いて、非水性軟膏剤、水性軟膏剤、ローション剤等の剤型で製剤化することができる。
【0041】
本発明においては、これらの製剤に含有させるMB等の配合量は、配合された有効成分であるMB誘導体が患部部位に到達し残留され、また経皮吸収されて疾患部位に蓄積され、超音波の照射により標的細胞を死滅させるのに十分な量が配合されればよい。
本発明者らの検討によれば、その配合量は、製剤重量をベースとして0.05〜20重量%であれば、十分な効果が得られることが判明した。
【0042】
配合量が0.05重量%未満であると目的とする治療効果を上げることができず、また20.0重量%以上配合させてもそれ以上の効果は得られなかった。
なお、配合量は含有させる有効成分の種類により一概に特定することはできず、また、含有させる有効成分の安定性は有効成分の濃度、用いる基剤に大きく影響されるため、上記の含有量の範囲内で、用途に合わせ種々変更させることが可能である。
【0043】
以上のようにして得られた本発明の製剤をSDTに使用する場合には、各種癌には舌下投与、または患部位に塗布或いは局部注射することにより、一方、日光角化症、炎症性角化症、表皮癌等には皮膚疾患部位に直接塗布することにより効果的にMB等が集積され、その後、その部位を超音波等の照射により、当該疾患を効果的に治療することができる。
【0044】
この軟膏剤、ローション剤等の外用剤の適用において、本発明が提供するMB等分子量が350以下であり、テープストリッピングを必要としないで皮膚患部への浸透性が良好なものであり、したがって、皮膚疾患治療におけるSDTにおいて、患者に負担を与えることがなく、治療自体を簡便に行える利点を有している。
なお、軟膏剤、ローション剤等の外用剤の塗布にあたっては、ODT効果(密封包帯効果:Occlusive Dressing Technique)を得るために、塗布部位を密閉状態に保つこともより効果的である。
【0045】
一方、酸化型のMB(青色)を用いてSDT治療を行った後に、アスコルビン酸等の還元剤を用いて無色化することで、有色を好まない患者の観点からも有用であると考えられる。
【0046】
本発明が提供するMB体を含有する製剤を塗布した後の疾患部位における超音波照射に際しては、種々の超音波を使用することができる。なかでも、医療用の超音波照射器等を用いることがより効果的である。
【0047】
かくして、本発明の舌下剤あるいは軟膏製剤、ゲル化剤、ローション製剤等を疾患部位に塗布しあるいは局部注射し、有効成分を患部に集積あるいは経皮吸収させた後、当該疾患部位を超音波照射することにより、当該癌疾患を効果的に治療することができる。なお、軟膏剤、ゲル化剤、ローション剤等の外用剤の塗布にあたっては、ODT効果(密封包帯効果:Occlusive Dressing Technique)を得るために、塗布部位を密閉状態に保つこともより効果的である。
【0048】
以下に本発明を、試験例等により詳細に説明するが、本発明はこれらのものに限定されるものではない。
試験例1:超音波活性試験(MB)
本発明のMBは、光感作は認められるが、超音波感作が望まれる。
そのため、超音波処理に対する感受性を検討した。
<実験操作>
Φ6シャーレに1×10
5cellsずつB16−F10細胞を播種し、5%CO
2インキュベーターで培養した。
MBを100μMになるようにDMSOで溶解し、終濃度1μMになるように培地で希釈した。
培地交換で化合物入り培地を添加し、5時間後に以下の条件で超音波照射を行った。
<照射条件>
・Probe L(有効照射面積:5cm
2)
・照射時間:4分間
・Duty cycle:20%
・周波数:1MHz
・照射量:0.4 W/cm
2
照射24時間後に、1×PBSで2回洗浄し、1×Trypsinを500μL加え、3分間インキュベート後、物理的に細胞をはがし、1mL培地を加えた。
細胞懸濁液30μLと0.4%トリパンブルー30μLを合わせ、血球計算盤を用いて生細胞数をカウントし、生存率を求めた。
<結果>
その結果、本MBは、
図1に示したように、B16−F10細胞を用いた超音波照射実験で細胞破壊効果があることが判明した。
【0049】
試験例2:超音波活性試験(Leuco−MB)
本発明のLeuco−MBは、光感作は認められないが、超音波感作が望まれる。
そのため、超音波処理に対する感受性を検討した。
<実験操作>
Φ6シャーレに、1×10
5cellsずつB16−F10細胞を播種した。
細胞定着後、化合物を、それぞれMB(最終濃度1μM)、アスコルビン酸(最終濃度5μMまたは10μM)になるように培地で調製し、培地交換で添加した。
添加5時間後、1×PBSで2回洗浄し、超音波照射を行った。
24時間後に、トリパンブルー染色法にて染色し、試験例1と同様に、細胞の生存率を算出した。
<結果>
その結果本Leuco−MBは、
図2に示したように、B16−F10細胞を用いた超音波照射実験で細胞破壊効果があることが判明した。
【0050】
試験例3:光増感(PDT)活性試験
本発明のMBは、光増感活性が認められている。そのため、光処理による感受性を検討した。
<実験操作>
(1)B16−F10細胞を96ウェルプレートに播種した。
(2)細胞定着後、培地にて1μMに調整したMBを培地交換で添加した。
(3)添加5時間後に、1×PBSで2回洗浄し、以下の条件下で光照射を行った。
・波長:660nm
・照射量:46.1 mW/cm
2
・照射時間:6分間
(4)48時間後にWST−1を添加し、呈色3.5時間で吸光度測定(吸収波長:450nm)を行った。
<結果>
その結果、本MBの光増感作用は、
図3に示したように、B16−F10細胞を用いた光照射実験で、低濃度では細胞破壊効果が無いことが判明した。
その100倍の濃度であれば光増感効果があることが分かっている。
一方、超音波照射では1/100の低濃度で効果があり、超音波照射(すなわちSDT)は、光照射(すなわちPDT)に比べて極めて有効であることが理解される。