【解決手段】流量制御弁は、弁座20と、前記弁座に対して離間し、または当接することによって、前記弁座との間の間隙に流路が形成、または閉塞される弁体10とを備え、前記弁体の前記弁座に対する離間距離に応じて、前記流路を通過する流体の流量が変化するとともに、前記流路において前記流量を最も制限する最小絞りの位置が、前記流路における第1の位置Gaから第2の位置Gbに移動する。
第1の弁座面、前記第1の弁座面に連なる第2の弁座面、及び前記第2の弁座面に連なる第3の弁座面が延在するとともに、前記第1の弁座面と前記第2の弁座面との境界に第1の凸部が、前記第2の弁座面と前記第3の弁座面との境界に第2の凸部が、それぞれ形成されている弁座と、
第1のテーパ面と、前記第1のテーパ面に連なる第2のテーパ面と、前記第1のテーパ面と前記第2のテーパ面との境界の屈曲部とを有し、前記第1のテーパ面が前記弁座の前記第1の凸部に対して離間し、または当接することによって、前記弁座との間の間隙に、流体が通過する流路が形成、または閉塞される弁体とを備え、
前記弁体の中心軸と前記第1の弁座面とが互いになす第1の角度は、前記弁体の中心軸と前記第1のテーパ面とが互いになす第2の角度よりも大きく、
前記第2の角度は、前記弁体の中心軸と前記第2の弁座面とが互いになす第3の角度よりも大きく、
前記第3の角度は、前記弁体の中心軸と前記第2のテーパ面とが互いになす第4の角度よりも大きく、
前記第1のテーパ面が前記第1の凸部に対して当接することによって、前記流路が閉塞されるとき、前記屈曲部の屈曲位置は、前記弁体の中心軸に平行な方向及び前記弁体の中心軸に垂直な方向のいずれにおいても、前記第1の凸部の位置と、前記第2の凸部の位置との間に位置する流量制御弁。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の形態について、
図1から
図8を用いて説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態による流量制御弁1の構成の概略を示す図である。流量制御弁1は、弁座20を有し弁部材55と弁体10とを収容する弁本体90と、弁体10を軸方向に駆動する弁軸30と、弁軸30の傾きを抑制する弁軸ホルダ40と、弁軸30を弁軸30の延在方向(
図1の上下方向)に移動させるロータ70とを有する。
【0010】
弁部材55は、弁バネ50と、バネ受け51と、端部に弁体10が溶接された弁ガイド60とを有する。弁軸30の両端部の中間に位置する周面の少なくとも一部の領域には、オネジ31が形成されている。弁軸ホルダ40の、弁軸30の周面と対向する表面の少なくとも一部の領域にはメネジ41が形成されている。弁軸ホルダ40の内部には、弁ガイド60を収容する弁ガイド収容室45が形成されている。弁軸30のオネジ31と弁軸ホルダ40のメネジ41によりネジ送り機構35が形成されている。
【0011】
弁部材55、弁体10、弁軸30、弁軸ホルダ40、及びロータ70は、ケース80及び弁本体90に収容されている。弁ガイド60は、弁バネ50を介して弁軸30とともに弁軸ホルダ40の弁ガイド収容室45に案内される。弁ガイド収容室45は、弁体10が前述した弁軸30の延在方向に移動する際のガイドとして機能する。
【0012】
図1の流量制御弁1では、ロータ70と、ケース80の外側に設けられたステータ71とによって、ステッピングモータが構成されている。このステッピングモータが駆動されると、ロータ70の回転とともに弁軸30がその延在方向に移動し、この移動によって弁ガイド60とともに弁体10が弁軸30の延在方向に移動する。その弁体10の移動方向には、弁体10と弁座20との離間距離が増加する第1の移動方向(
図1の上方向)と、弁体10と弁座20との離間距離が減少する第2の移動方向(
図1の下方向)とが含まれる。
【0013】
弁体10が弁座20に対して当接した状態を弁閉状態という。弁閉状態においては、流路が閉塞され、弁本体90からは流体が流出しない。このとき、弁体10と弁座20との離間距離はゼロ又は略ゼロである。弁閉状態における弁体10が前述した第1の移動方向に移動することにより、弁体10が弁座20に対して離間した状態となる。この状態を弁開状態と呼び、第1の移動方向のことを弁開方向と呼ぶ。弁開状態になると、弁体10と弁座20との間に間隙が生じて流路が形成される。流路が形成されると、弁本体90から流体が流出する。弁本体90には、横継手2と下継手3とが接続されている。弁開状態において、流体は、横継手2及び下継手3のうちの一方の継手から流入して他方の継手へ流出する。
【0014】
弁開状態における弁体10が前述した第2の移動方向に移動することにより、弁体10と弁座20との離間距離が減少すると、流路が狭まる。やがて弁体10が弁座20に対し当接して弁閉状態になると、流路は閉塞され、弁本体90から流体が流出しなくなる。そこで、第2の移動方向のことを弁閉方向と呼ぶ。
【0015】
図2は、本実施の形態による流量制御弁1の弁閉状態において、弁体10が弁座20に対して当接する位置にある第1の凸部A及びその周辺の断面を拡大して示した図である。
図1に示した弁座20の弁座面21は、
図2に示すように、第1の弁座面211と、第1の弁座面211に連なる第2の弁座面212と、第2弁座面212に連なる第3の弁座面213とを含む。第1の弁座面211は、弁座面21上の第1の凸部Aから
図1に示す横継手2側に延在する。第2の弁座面212は、第1の弁座面211に連なり、第1の凸部Aから
図1に示す下継手3側であって、かつ弁座面21上の第2の凸部Bから
図1に示す横継手2側に延在する。第3の弁座面213は、第2の弁座面212に連なり、第2の凸部Bから
図1に示す下継手3側に延在する。すなわち、第1の弁座面211、第2の弁座面212及び第3の弁座面213のうち、第1の弁座面211は
図1に示す横継手2に最も近い位置に配置され、第3の弁座面213は
図1に示す下継手3に最も近い位置に配置されている。第1の凸部Aは第1の弁座面211と第2の弁座面212との境界に形成され、第2の凸部Bは第2の弁座面212と第3の弁座面213との境界に形成されている。第1の凸部Aは、第2の凸部Bよりも
図1に示す横継手2側に位置し、第2の凸部Bは、第1の凸部Aよりも
図1に示す下継手3側に位置する。
【0016】
第1の凸部Aにおいて弁座20に当接する弁体10が、弁開方向16に移動することにより弁座20に対して離間すると、前述した弁開状態となる。このとき、弁体10と弁座20との間に間隙が形成され、その間隙を、横継手2及び下継手3のうちの一方の継手側から流入する流体が通過して他方の継手側に流出する。弁体10と弁座20との間に形成される間隙である、弁座20の第1の凸部Aと弁体10との間の間隙、及び弁座20の第2の凸部Bと弁体10との間の間隙が、その間隙を通過する流体の流量を制限する第1の絞り及び第2の絞りとして、それぞれ作用する。流体が横継手2から流入し下継手3に流出する場合、流体は、第1の絞りの位置、第2の絞りの位置の順に通過する。流体が下継手3から流入し横継手2に流出する場合、流体は、第2の絞りの位置、第1の絞りの位置の順に通過する。
【0017】
なお、第1の弁座面211、第2の弁座面212及び第3の弁座面213の3つの弁座面の断面形状は、いずれも
図2に示すような直線状には限られず、少なくとも1つの弁座面の断面形状は、所定量の曲率を有していてもよい。
【0018】
図1の説明で前述した弁軸30の延在方向、すなわち弁体10の移動方向(弁開方向16及び弁閉方向)に平行な弁体10の中心軸15(以下、単に中心軸15と呼ぶ)を
図2に一点鎖線で示す。弁体10は、その外周面に、第1のテーパ面111と、第1のテーパ面111に連なる第2のテーパ面112とを有し、第1及び第2のテーパ面111及び112の境界は窪んだ屈曲部Cとされている。第1のテーパ面111は、弁体10の外周面のうち、中心軸15に対して傾斜し、かつ弁閉時に第1の凸部Aと当接する面である。第2のテーパ面112は、弁体10の外周面のうち、第1のテーパ面111に対して
図1に示す下継手3側に連なる周面である。第1のテーパ面111は、第2のテーパ面112よりも
図1に示す横継手2側に位置し、第2のテーパ面112は、第1のテーパ面111よりも
図1に示す下継手3側に位置する。なお、第1のテーパ面111及び第2のテーパ面112の2つのテーパ面の断面形状は、いずれも
図2に示すような直線状には限られず、少なくとも1つのテーパ面の断面形状は、所定量の曲率を有していてもよい。
【0019】
図2において、弁体10の中心軸15と第1の弁座面211とが互いになす第1の角度θ1は、90度よりも小さく、かつ中心軸15と第1のテーパ面111とが互いになす第2の角度θ2よりも大きい。その第2の角度θ2は、中心軸15と第2の弁座面212とが互いになす第3の角度θ3よりも大きい。その第3の角度θ3は、中心軸15と第2のテーパ面112とが互いになす第4の角度θ4よりも大きい。第4の角度θ4は0度よりも大きい。第3の弁座面213は、
図2においては中心軸15に対して平行な方向に延在しているが、必ずしもそれには限られず、中心軸15と第3の弁座面213とがなす角度が、0度よりも大きく、かつ第4の角度θ4以下の角度であってもよい。
【0020】
図3は、弁座20の第1の弁座面211、第2の弁座面212、第3の弁座面213、第1の凸部A、及び第2の凸部Bと、弁体10の第1のテーパ面111、第2のテーパ面112、及び屈曲部Cとの位置関係を示す図、ならびに弁体と弁座との間の間隙の大きさについての説明図である。
図3(a)は、流量制御弁1の弁閉状態を示す
図2を拡大した図であり、弁体10の第1のテーパ面111が弁座20の第1の凸部Aに対して当接することによって、
図1を用いて前述した弁体10と弁座20との間の流路が閉塞されている。したがって、第1のテーパ面111と第1の凸部Aとの間の間隙、すなわち第1の間隙の大きさGaはゼロである。弁体10の第2のテーパ面112と弁座20の第2の凸部Bとの間の間隙は閉じられておらず、ゼロではない第2の間隙の大きさGbが設けられている。
【0021】
例えば、流体が
図1に示す横継手2から流入する場合、第1のテーパ面111と第1の弁座面211との間の間隙に形成されている流路であって、第1の絞りの位置までの区間の流路における圧力は、高圧状態にある。また、流体が
図1に示す下継手3から流入する場合も同様に、第2のテーパ面112及び第1のテーパ面111と第3の弁座面213及び第2の弁座面212との間の間隙に形成されている流路であって、第1の絞りの位置までの区間の流路における圧力は、高圧状態にある。
【0022】
図3(a)において、弁体10の中心軸15に対して平行な方向をXY座標系のY方向、弁体10の中心軸15に対して垂直な方向をXY座標系のX方向とする。XY座標系のY方向において、弁体10の屈曲部Cの屈曲位置Ycは、弁座20の第1の凸部Aの位置Yaと第2の凸部Bの位置Ybとの間に位置する。位置Ya,Yb,Ycは、XY座標系のY座標である。また、XY座標系のX方向において、弁体10の屈曲部Cの屈曲位置Xcは、弁座20の第1の凸部Aの位置Xaと第2の凸部Bの位置Xbとの間に位置する。位置Xa,Xb,Xcは、XY座標系のX座標である。弁体10の弁開方向16は弁体10の中心軸15に平行な方向である。
【0023】
第1の凸部A、第2の凸部B、及び屈曲部Cの位置(X座標及びY座標)をこのように配することにより、弁座20に対する弁体10の弁開方向16の離間距離に応じて、後述するように弁体10と弁座20との間に形成される流路を通過する流体の流量が変化する。その流路において、弁体10と弁座20との間の間隙のうち、開口面積が最小となる間隙が、流体の流量を最も制限する最小絞りとなる。したがって、最小絞りは、その流路を通過することができる流体の流量を決定する。
【0024】
この最小絞りの位置は、弁体10の弁開方向16の離間距離に応じて次のように変遷する。すなわち、弁開時、最小絞りは、流路において、弁体10の第1のテーパ面111と弁座20の第1の凸部Aとの間で流路を通過する流体の流量を制限する第1の絞りの位置に形成される。弁体10の弁開方向16の離間距離が増加すると、流路において、第1の絞りの位置から、弁体10の第2のテーパ面112と弁座20第2の凸部Bとの間で流路を通過する流体の流量を制限する第2の絞りの位置に、最小絞りの位置が移動する。弁体10と弁座20との間に形成される流路を通過する流体の流量が変化する様子については、
図5を用いて後述する。
【0025】
弁開時における第1のテーパ面111と第1の凸部Aとの間の第1の間隙の大きさGa、及び第2のテーパ面112と第2の凸部Bとの間の第2の間隙の大きさGbについて、断面図の
図3(b)及び
図3(c)、ならびにそれらの間隙の大きさについての説明図である
図3(d)及び
図3(e)を用いて説明する。
【0026】
図3(b)に示す第1のテーパ面111と第1の凸部Aとの間の第1の間隙の大きさGa、及び
図3(c)に示す第2のテーパ面112と第2の凸部Bとの間の第2の間隙の大きさGbは、それぞれ
図3(d)及び
図3(e)を用いて以下に説明するように幾何学的に求められる。具体的には、断面図の
図3(b)において、第1の凸部Aから第1のテーパ面111に下ろした垂線haを
図2に示す中心軸15の周りに回転させることで、
図3(d)に示すように半径R1aの円形状の上面と半径R2a(>R1a)の円形状の下面とを有する円錐台Faの側面が形成される。半径R1aは、第1のテーパ面111に下ろした垂線haの足の位置と中心軸15との距離に等しい。半径R2aは、垂線haの始点である第1の凸部Aと中心軸15との距離に等しい。第1の間隙の大きさGaは、その円錐台Faの側面の面積Sa=π・ha・(R1a+R2a)と等しい。
【0027】
同様に、断面図の
図3(c)において、第2の凸部Bから第2のテーパ面112に下ろした垂線hbを
図2に示す中心軸15の周りに回転させることで、
図3(e)に示すように半径R1bの円形状の上面と半径R2b(>R1b)の円形状の下面とを有する円錐台Fbの側面が形成される。半径R1bは、第2のテーパ面112に下ろした垂線hbの足の位置と中心軸15との距離に等しい。半径R2bは、垂線hbの始点である第2の凸部Bと中心軸15との距離に等しい。第2の間隙の大きさGbは、その円錐台Fbの側面の面積Sb=π・hb・(R1b+R2b)と等しい。
【0028】
図4は、弁座の第1の弁座面、第2の弁座面、第3の弁座面、第1の凸部及び第2の凸部と、弁体の第1のテーパ面、第2のテーパ面及び屈曲部との位置関係を示す断面図である。弁開時に流路を通過する流量が最も制限される最小絞りの位置の移動について、
図4(a)及び
図4(b)を用いて説明する。
【0029】
図4(a)は、流量制御弁1の弁開直後の状態、すなわち弁座20に対する弁体10の弁開方向16の離間距離が小さい状態を示す図である。
図3(a)に示す弁閉状態と比べ、弁体10が弁座20に対して弁開方向16に少し移動したことによって、第1のテーパ面111が第1の凸部Aに対して離間し、第1のテーパ面111と第1の凸部Aとの間の第1の間隙の大きさGaがごく僅かに生成される。すると、その第1の間隙の大きさGaが生成された位置に第1の絞りを有する流路が、弁体10と弁座20との間に形成される。また、第2のテーパ面112と第2の凸部Bとの間の第2の間隙の大きさGbが生成された位置に第2の絞りが形成される。
【0030】
流路が形成された直後においては、流体が
図1に示す横継手2から流入して下継手3に流出する場合、第1のテーパ面111と第1の弁座面211との間の間隙に形成されている流路であって、第1の絞りの位置までの区間の流路における圧力は、依然として高圧状態にある。流体は、第1の絞りの位置を通過し、第1のテーパ面111及び第2のテーパ面112と第2の弁座面212との間の間隙に形成されている流路であって、第2の絞りの位置までの区間の流路に流れ込む。この区間の流路は第2の絞りの位置において先すぼまり状となっている。したがって、第1の絞りの位置から第2の絞りの位置までの区間の流路における圧力は、前述の高圧状態よりも低く、かつ後述の低圧状態より高い中圧状態となる。流体は第2の絞りの位置を通過し、その先の下継手3へ向かう区間の流路における圧力は低圧状態にある。
【0031】
流体が
図1に示す下継手3から流入して横継手2に流出する場合、第2のテーパ面112及び第1のテーパ面111と第3の弁座面213及び第2の弁座面212との間の間隙に形成されている、第1の絞りの位置までの区間の流路における圧力は、依然として高圧状態にある。流体は第1の絞りの位置を通過し、その先の横継手2へ向かう区間の流路における圧力は低圧状態にある。
【0032】
この段階においては、第1のテーパ面111と第1の凸部Aとの間の第1の間隙の大きさGaは、第2のテーパ面112と第2の凸部Bとの間の第2の間隙の大きさGbよりも小さい。したがって、流路を通過することができる流体の流量を決定する最小絞りが形成される位置は、第1の間隙の大きさGaが生成される第1の絞りの位置である。
【0033】
図4(b)は、流量制御弁1の弁開後、弁体10が弁座20に対して離間する弁開方向16にさらに移動した際の状態を示す図である。
図4(a)に比して第1のテーパ面111が第1の凸部Aに対しさらに離間したため、
図4(b)において、第1のテーパ面111と第1の凸部Aとの間の第1の間隙の大きさGaは、第2のテーパ面112と第2の凸部Bとの間の第2の間隙の大きさGbよりも大きくなる。したがって、流路を通過することができる流体の流量を決定する最小絞りの位置は、第2の間隙の大きさGbが生成される第2の絞りの位置である。すなわち、弁体10の弁座20からの弁開方向16に沿った離間距離に応じて、最小絞りの位置が、弁体10の第1のテーパ面111と弁座20の第1の凸部Aとの間に形成される第1の絞りの位置から弁体10の第2のテーパ面112と弁座20第2の凸部Bとの間に形成される第2の絞りの位置に移動する。
【0034】
この状態において、流体が
図1に示す横継手2から流入して下継手3に流出する場合、第2の弁座面212と第1のテーパ面111及び第2のテーパ面112との間の間隙が形成される位置から第2の絞りの位置までの区間の流路における圧力は、高圧状態にある。流体は第2の絞りの位置を通過し、その先の下継手3へ向かう区間の流路における圧力は低圧状態にある。
【0035】
流体が
図1に示す下継手3から流入して横継手2に流出する場合、第2のテーパ面112と第3の弁座面213との間の間隙が形成されている、第2の絞りの位置までの区間の流路における圧力は、高圧状態にある。流体は、第2の絞りの位置を通過し、第2のテーパ面112及び第1のテーパ面111と第2の弁座面212との間の間隙に形成されている流路であって、第1の絞りの位置までの区間の流路に流れ込む。この区間の流路は第1の絞りの位置において先すぼまり状となっている。したがって、第2の絞りの位置から第1の絞りの位置までの区間の流路における圧力は、前述の高圧状態よりも低く、かつ後述の低圧状態より高い中圧状態となる。流体は第1の絞りの位置を通過し、その先の横継手2へ向かう区間の流路における圧力は低圧状態にある。
【0036】
図5及び
図6は、弁体10が、その中心軸15と平行な弁開方向16に移動することによって弁座20に対して離間していく様子を段階IからVまでに分けて示した拡大断面図である。
図5(a)に示す段階Iでは、
図3(a)と同様の流量制御弁1の弁閉状態であり、弁座20の第1の凸部Aの位置において、弁体10と弁座20との間の間隙に形成されている流路が閉塞されている。前述したように、弁体10の第1のテーパ面111と弁座20の第1の凸部Aとの間の第1の間隙の大きさGaはゼロであり、弁体10の第2のテーパ面112と弁座20の第2の凸部Bとの間にゼロでない第2の間隙の大きさGbが設けられている。
【0037】
図5(b)に示す段階IIでは、
図4(a)と同様の流量制御弁1の弁開直後の状態であり、弁体10と弁座20との間の間隙に流路が形成されている。前述したように、第1の間隙の大きさGaは、第2の間隙の大きさGbよりも小さいため、最小絞りの位置は、弁体10の第1のテーパ面111と弁座20の第1の凸部Aとの間に形成される第1の絞りの位置である。
【0038】
図5(c)に示す段階IIIでは、弁座20に対する弁体10の弁開方向16の離間距離が増加して、流路の流量が増加する。このときの弁体10の離間距離を所定量Qとする。前述したように、弁体10の中心軸15は弁開方向16と平行であり、かつ、中心軸15と第1のテーパ面111とが互いになす第2の角度θ2は、中心軸15と第2のテーパ面112とが互いになす第4の角度θ4よりも大きいため、弁体10の離間距離の増加に対し、第1の間隙の大きさGaの増分の方が第2の間隙の大きさGbの増分よりも大きい。すなわち、
図5(c)は、段階IIにおいては第2の間隙の大きさGbよりも小さかった第1の間隙の大きさGaが、段階IIIにおいては第2の間隙の大きさGbと等しくなる様子を示している。
【0039】
図6(a)に示す段階IVでは、
図4(b)と同様の状態であり、すなわち弁座20に対する弁体10の弁開方向16の離間距離がさらに増加した状態である。弁体10の離間距離がさらに増加することにより流路の開口面積が増加し、流路の流量がますます増加する。前述したように、第1の間隙の大きさGaは、第2の間隙の大きさGbよりも大きくなったため、最小絞りの位置は、弁体10の第1のテーパ面111と弁座20の第1の凸部Aとの間に形成される第1の絞りの位置から、弁体10の第2のテーパ面112と弁座20の第2の凸部Bとの間に形成される第2の絞りの位置に移動している。すなわち、弁体10の弁座20に対する離間距離が前述した所定量Qよりも小さいとき、最小絞りの位置は第1の絞りの位置であるが、その離間距離がその所定量Qよりも大きいとき、最小絞りの位置は第2の絞りの位置である。
【0040】
図6(b)に示す段階Vでは、弁座20に対する弁体10の弁開方向16の離間距離が増加し続けた結果、弁体10の第1テーパ面111が弁座20の第1の凸部Aから大きく離れている。そのため、第1の凸部Aと第1テーパ面111との間において流路が拡大し、第1の絞りが形成されていたその位置での絞り効果は失われている。
【0041】
流体が
図1に示す横継手2から流入して下継手3に流出する場合、第1のテーパ面111及び第2のテーパ面112と第1の弁座面211第2の弁座面212との間の間隙に形成されている流路は、第1テーパ面111と第1の凸部Aとの間において十分な開口面積を有し、その位置に形成されていた第1の絞りによる絞り効果が失われる。そのため、その間隙に形成されている流路の、第2の絞りの位置までの区間は、高圧状態の区間となり、中圧状態の区間は存在しない。最小絞りの位置は、弁体10の第2のテーパ面112と弁座20第2の凸部Bとの間に形成される第2の絞りの位置である。流体は第2の絞りの位置を通過し、その先の下継手3へ向かう区間の流路における圧力は低圧状態にある。
【0042】
流体が
図1に示す下継手3から流入して横継手2に流出する場合、第2のテーパ面112と第3の弁座面213との間の間隙に形成されている、第2の絞りの位置までの区間の流路における圧力は、高圧状態にある。流体は第2の絞りの位置を通過し、その先の横継手2へ向かう区間の流路における圧力は低圧状態にある。
【0043】
図7は、流体が横継手2から流入し下継手3に流出する場合において、
図5及び
図6に示すように弁体10の弁座20に対する離間距離が増加するにつれて、下継手3に流出する流体の流量がどのように増加していくかという流量変化を示す概念図である。
図7の符号I〜Vは
図5及び
図6の符号I〜Vと同じ段階を示す。
図7に示す段階Iでは流量制御弁1が弁閉状態であることから、段階Iにおいて前述した弁体10と弁座20との間の間隙に形成されている流路を流れる流体の流量はゼロである。
【0044】
図7に示す段階IIは流量制御弁1の弁開直後の状態であり、流体の流量が増加し始める。なお、
図7は概念図のため、弁体10の弁座20に対する離間距離に応じた流体流量の増加傾向については直線により簡易的に示したが、必ずしも直線状に増加するとは限らない。
【0045】
図7において示す段階IIIでは、弁体10の弁座20に対する離間距離が所定量Qに達している。この段階IIIを挟んで段階IIから段階IVへ移行する際に、最小絞りの位置が、第1の絞りの位置から第2の絞りの位置に移動する。
【0046】
図7に示す段階IVは、弁体10の弁座20に対する離間距離がさらに増加した状態であり、段階IVにおいては流量増加が継続する。
【0047】
図7に示す段階Vにおいては、流路に中圧状態の区間は存在しなくなっており、流量はさらに増加傾向となる。
【0048】
なお、前述のとおり、
図7については、流体が横継手2から流入し下継手3に流出する場合における流量変化を示す概念図として説明したが、流体が下継手3から流入し横継手2に流出する場合における流量変化もまた、
図7と同様に示される。
【0049】
図8は、本実施の形態による流量制御弁1を膨張弁とする冷凍サイクルシステム500の冷媒回路を例示した図である。
図8に示す冷凍サイクルシステム500は、膨張弁である流量制御弁1と、蒸発器(室内熱交換器)4と、圧縮機5と、凝縮器(室外熱交換器)6とを有し、冷媒通路501、502、503及び504が、それらの装置を順に接続する。流量制御弁1から冷媒通路501へ流出した流体である冷媒は、蒸発器4により気化する。気化した冷媒は、蒸発器4から排出されると、冷媒通路502を流れ、圧縮機5によって圧縮される。圧縮された冷媒は、圧縮機5から排出されると、冷媒通路503を流れ、凝縮器6により液化する。液化した冷媒は、凝縮器6から冷媒通路504へ流出し、再び流量制御弁1に戻って流入する。すなわち、冷凍サイクルシステム500の冷媒回路は、流量制御弁1と、蒸発器4と、圧縮機5と、凝縮器6と、それらの装置をループ接続する冷媒通路501〜504とから構成される。
【0050】
この冷凍サイクルシステム500は、空気調和装置(冷房)や冷凍・冷蔵庫等で使用される。なお、この流量制御弁1が膨張弁として適用される冷凍サイクルシステムの構成は、
図8に示す基本的な冷凍サイクルシステム500の構成に限られない。四方弁の組み込みにより、冷媒回路における冷媒流れ方向を逆転できる冷房・暖房用の空気調和装置にも使用できる。
【0051】
上述した本発明の一実施の形態による流量制御弁1の作用効果について、以下に説明する。
【0052】
(1)流量制御弁1は、弁座20と、弁体10とを含む。弁座20には、第1の弁座面211、第1の弁座面211に連なる第2の弁座面212、及び第2の弁座面212に連なる第3の弁座面213が延在する。第1の弁座面211と第2の弁座面212との境界には第1の凸部Aが形成され、第2の弁座面212と第3の弁座面213との境界には第2の凸部Bが形成されている。弁体10は、第1のテーパ面111と、第1のテーパ面111に連なる第2のテーパ面112と、第1のテーパ面111と第2のテーパ面112との境界の屈曲部Cとを有する。弁体10は、第1のテーパ面111が弁座20の第1の凸部Aに対して離間し、または当接することによって、流路が形成、または閉塞される。弁体10の中心軸15と第1の弁座面211とが互いになす第1の角度θ1は、弁体10の中心軸15と第1のテーパ面111とが互いになす第2の角度θ2よりも大きい。第2の角度θ2は、弁体10の中心軸15と第2の弁座面212とが互いになす第3の角度θ3よりも大きい。第3の角度θ3は、弁体10の中心軸15と第2のテーパ面112とが互いになす第4の角度θ4よりも大きい。第1のテーパ面111が第1の凸部Aに対して当接することによって、流路が閉塞されるとき、屈曲部Cの屈曲位置は、弁体10の中心軸15に平行な方向及び中心軸15に垂直な方向のいずれにおいても、第1の凸部Aの位置と、第2の凸部Bの位置との間に位置する。
【0053】
流量制御弁1がこのように構成されていることにより、弁体10と弁座20との間の間隙に形成されている流路における最小絞りの位置が、弁体10の弁座20に対する離間距離が増加した際に移動する。近年の冷媒圧高圧化の傾向により、弁座面21において、流体が流路の最小絞りを通過した直後の領域に壊蝕の原因となるキャビテーションが発生しやすい。本実施の形態における流量制御弁1によれば、最小絞りの位置が移動するために、最小絞り周辺の位置における弁座20の急速な壊蝕の進行を抑制することができる。特に、第1の凸部Aの位置は弁閉時の流路閉塞位置でもあることから、その位置周辺の壊蝕による弁漏れの発生を抑制することができる。
【0054】
(2)第1の角度θ1は90度よりも小さい。すなわち、流路は直角に折れ曲がらず、なだらかに湾曲する。このため、弁体10の弁座20に対する離間距離が所定量Qより小さい場合、弁体10との間で最小絞りを形成する第1の凸部Aの位置の直ぐ下流の領域において、壊蝕の原因となるキャビテーションが発生するのを抑制することができる。
【0055】
(3)第3の弁座面213は、弁開方向16と平行に、すなわち弁体10の中心軸15に平行な方向に延在し、第4の角度θ4は0度よりも大きい。このため、弁体10のリフト量が所定量Qより大きい場合に、第2の凸部Bの位置と弁体10との間に形成される間隙の位置が最小絞りの位置となる。その間、第1の凸部Aの位置周辺における弁座20の壊蝕の進行を抑制することができ、したがって弁漏れの発生を抑制することができる。
【0056】
(4)流量制御弁1は、弁座20と、弁体10とを含む。弁体10は、弁座20に対して離間し、または当接することによって、弁座20との間の間隙に流路が形成、または閉塞される。弁体10の弁座20に対する離間距離に応じて、流路を通過する流体の流量が変化するとともに、流路において通過する流体の流量を最も制限する最小絞りの位置が、流路における第1の絞りの位置から第2の絞りの位置に移動する。そのため、最少絞り周辺の位置における弁座20の急速な壊蝕の進行を抑制することができる。特に、第1の凸部Aの位置は弁閉時の流路閉塞位置でもあることから、その位置周辺の壊蝕による弁漏れの発生を抑制することができる。
【0057】
(5)弁座20は第1の凸部Aと第2の凸部Bとを有する。弁体10は、弁閉時に第1の凸部Aと当接する第1のテーパ面111と、第1のテーパ面111に連なる第2のテーパ面112とを有する。第1の絞りは、第1のテーパ面111と第1の凸部Aとの間で流体の流量を制限する。第2の絞りは、第2のテーパ面112と第2の凸部Bとの間で流体の流量を制限する。流体は、横継手2及び下継手3のうちの一方の継手から流路に流入して他方の継手に流出する。第1の凸部Aの位置及び第1のテーパ面111の位置は、それぞれ第2の凸部Bの位置及び第2のテーパ面112の位置よりも横継手2側に位置する。第1の凸部Aと第1のテーパ面111とが当接することによって、流路が閉塞される。弁体10の弁座20に対する離間距離が所定量Qよりも小さいとき、最小絞りの位置は、第1の凸部Aと第1のテーパ面111との間に形成される第1の絞りの位置である。弁体10の弁座20に対する離間距離が所定量Qよりも大きいとき、最小絞りの位置は、第2の凸部Bと第2のテーパ面112との間に形成される第2の絞りの位置である。第2の凸部Bと第2のテーパ面112との間に流路の最小絞りが形成されている間、第1の凸部Aの位置周辺における弁座20の壊蝕の進行を抑制することができ、したがって弁漏れの発生を抑制することができる。
【0058】
(6)冷凍サイクルシステム500は、本実施の形態による流量制御弁1である膨張弁と、流体を気化させる蒸発器4と、気化した流体を圧縮する圧縮機5と、圧縮された流体を液化させる凝縮器6とを有する。この冷凍サイクルシステム500は、上述したように弁座の壊蝕による弁漏れの発生が抑制された流量制御弁1を膨張弁として用いるため、高い冷房・冷凍・冷蔵効果を長く維持することができる。
【0059】
上記では、本発明の一実施の形態を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。