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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-2517(P2019-2517A)
(43)【公開日】2019年1月10日
(54)【発明の名称】電磁ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/00 20060101AFI20181207BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20181207BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20181207BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20181207BHJP
【FI】
   F16D55/00 B
   F16D65/18
   F16D121:14
   F16D121:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-118733(P2017-118733)
(22)【出願日】2017年6月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】大山 法久
(72)【発明者】
【氏名】桑原 秀明
(72)【発明者】
【氏名】明道 政彦
(72)【発明者】
【氏名】藤川 達也
(72)【発明者】
【氏名】小山 恵里
(72)【発明者】
【氏名】山本 明
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA79
3J058AA83
3J058AA88
3J058BA67
3J058CC13
3J058CC72
3J058CC76
3J058FA34
(57)【要約】
【課題】強度低下を抑制しつつ、小型化を実現できる電磁ブレーキを提供する。
【解決手段】コイル4と、付勢部6と、ヨーク3と、付勢部6によりヨーク3から離れる方向に付勢され、コイル4の電磁力により付勢力に抗してヨーク3に接近する方向に移動するアーマチュア5と、被制動回転軸の回転を受けて回転可能でアーマチュア5からの押し付け力で回転が阻止される制動部7と、制動部7及びアーマチュア5を収容する外殻部2を備え、外殻部2は、周壁部21と、アーマチュア5からの押し付け力で制動部7を受けることにより制動部7との間に摩擦力を発生させるプレート部22と、制動部7及びアーマチュア5を挿入するための開口部23と、アーマチュア5が軸回りで回動することを防止する回動防止部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により電磁力を発生させるコイルと、付勢力を有する付勢部と、磁性体からなり、前記コイルが巻き付けられるヨークと、前記付勢力により前記ヨークから離れる方向に移動付勢され、前記電磁力により前記付勢力に抗して前記ヨークに接近する方向に移動するアーマチュアと、該アーマチュアの前記ヨークとは反対側に配置され、外部から接続される被制動回転軸の回転を受けて回転可能で前記付勢力により移動付勢される前記アーマチュアからの押し付け力を受けて回転が阻止される制動部と、少なくとも前記制動部及び前記アーマチュアを収容するための外殻部と、を備え、
前記外殻部は、前記制動部及び前記アーマチュアの外周に位置する周壁部と、該周壁部の前記制動部の回転軸方向両端部のうちの少なくとも一端部に設けられ、前記制動部及び前記アーマチュアを前記外殻部の内部に配置すべく、該制動部及び該アーマチュアを挿入するための開口部と、前記アーマチュアからの押し付け力で前記制動部を受けることにより該制動部との間に摩擦力を発生させるためのプレート部と、前記周壁部の内面側と前記配置されたアーマチュアとに亘って設けられ、該アーマチュアが前記被制動回転軸の軸回りで回動することを防止する回動防止部と、を備えていることを特徴とする電磁ブレーキ。
【請求項2】
前記回動防止部が、前記アーマチュアに設けられた係止部と、該係止部に係止する前記周壁部の内面側に設けられた被係止部とからなり、前記被係止部が、前記外殻部の内外に亘って形成された凹凸の一部であることを特徴とする請求項1に記載の電磁ブレーキ。
【請求項3】
前記ヨークにおいて少なくとも前記アーマチュアに対向した面に膜状の絶縁層を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁ブレーキ。
【請求項4】
前記絶縁層は、前記ヨークにおいて前記巻き付けられるコイルが重なる表面にも備えられ、
前記ヨークにおいて前記アーマチュアに対向した表面に備えられた前記絶縁層と、前記ヨークにおいて前記巻き付けられるコイルが重なる表面に備えられた前記絶縁層と、が一連の層を構成することを特徴とする請求項3に記載の電磁ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から接続される被制動回転軸の回転に制動を与えるための電磁ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、産業用や医療用のロボットに使用される電磁ブレーキとして、例えば直径が30mm未満の超小型のものが要望されている。このような超小型の電磁ブレーキでは、プレート部とヨーク部とが非常に小さな部品になるため、両者をねじ止めすることが困難である。そこで、ねじ止めを行わない構成のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたものがある。この電磁ブレーキは、コイルを備えた内側ヨーク部と、内側ヨーク部を覆う筒状の外側ヨーク部と、内側ヨーク部に間隔をおいて設けられ、外側ヨーク部に一体的に接続されたプレート部と、をそれぞれ基準軸線上に配置してなるヨークと、内側ヨーク部とプレート部との間において、ヨークの基準軸線回りに回動可能に設けられた制動部と、内側ヨーク部と制動部との間において、基準軸線回りに回動不能でかつ基準軸線方向に移動可能に配置されたアーマチュアと、アーマチュアを制動部に対して付勢する付勢部と、を備え、外側ヨーク部には、アーマチュア及び制動部を挿入可能な2つの長孔が周方向に所定間隔を置いて形成されている。
【0004】
特許文献1では、外側ヨーク部にプレート部を一体的に接続することによって、ねじによる連結が不要になり、小型化を図ることができるものの、アーマチュア及び制動部を挿入するための2つの長孔を外側ヨーク部の周方向に形成しなければならないため、外側ヨーク部の強度低下を招いてしまう。特に、超小型の電磁ブレーキでは、外側ヨーク部の厚みも非常に薄くなるため、2つの長孔を外側ヨーク部に形成する構成では、小型化にも限界があり、早期改善が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−149528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、強度低下を抑制しつつ、小型化を実現できる電磁ブレーキを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁ブレーキは、通電により電磁力を発生させるコイルと、付勢力を有する付勢部と、磁性体からなり、前記コイルが巻き付けられるヨークと、前記付勢力により前記ヨークから離れる方向に移動付勢され、前記電磁力により前記付勢力に抗して前記ヨークに接近する方向に移動するアーマチュアと、該アーマチュアの前記ヨークとは反対側に配置され、外部から接続される被制動回転軸の回転を受けて回転可能で前記付勢力により移動付勢される前記アーマチュアからの押し付け力を受けて回転が阻止される制動部と、少なくとも前記制動部及び前記アーマチュアを収容するための外殻部と、を備え、前記外殻部は、前記制動部及び前記アーマチュアの外周に位置する周壁部と、該周壁部の前記制動部の回転軸方向両端部のうちの少なくとも一端部に設けられ、前記制動部及び前記アーマチュアを前記外殻部の内部に配置すべく、該制動部及び該アーマチュアを挿入するための開口部と、前記アーマチュアからの押し付け力で前記制動部を受けることにより該制動部との間に摩擦力を発生させるためのプレート部と、前記周壁部の内面側と前記配置されたアーマチュアとに亘って設けられ、該アーマチュアが前記被制動回転軸の軸回りで回動することを防止する回動防止部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、外殻部における周壁部の制動部の回転軸方向両端部のうちの少なくとも一端部に設けられた開口部を通して制動部及びアーマチュアを外殻部の内部に挿入することによって、制動部及びアーマチュアを外殻部の内部に配置できる。この周壁部には、従来の長孔のような開口を形成する必要がない。よって、外殻部の強度が低下することがない。また、アーマチュアを外殻部の内部に配置するだけで、周壁部の内面側とアーマチュアとに亘って設けられた回動防止部によりアーマチュアの回動が阻止される。そして、外殻部にプレート部を備えることによって、周壁部とプレート部とをねじにより一体化することが不要になり、その分、小型化を図ることができる。
【0009】
また、本発明の電磁ブレーキは、前記回動防止部が、前記アーマチュアに設けられた係止部と、該係止部に係止する前記周壁部の内面側に設けられた被係止部とからなり、前記被係止部が、前記外殻部の内外に亘って形成された凹凸の一部であってもよい。
【0010】
上記のように、回動防止部を構成する周壁部の被係止部を、外殻部の内外に亘って形成された凹凸の一部とすることで、例えば直径が30mm未満の小さな外殻部にも回動防止部の被係止部を容易に備えることができる。
【0011】
また、本発明の電磁ブレーキは、前記ヨークにおいて少なくとも前記アーマチュアに対向した面に膜状の絶縁層を備えていてもよい。
【0012】
上記のように、絶縁層が、ヨークにおいて少なくともアーマチュアが対向した面に備えていれば、絶縁層の厚み分、ヨークの表面とアーマチュアの表面との間を空けることができ、ヨークとアーマチュアとが直接当接しないようにできる。このため、通電時(吸着時)に両者が衝突することで発生する騒音の問題や、電磁力が解消した時点での残留磁気によって、両者が離れるまでにタイムラグが生じることによる性能低下の問題を改善できる。
【0013】
そして、前記絶縁層は、前記ヨークにおいて前記巻き付けられるコイルが重なる表面にも備えられ、前記ヨークにおいて前記アーマチュアに対向した表面に備えられた前記絶縁層と、前記ヨークにおいて前記巻き付けられるコイルが重なる表面に備えられた前記絶縁層と、が一連の層を構成することができる。
【0014】
上記構成によれば、ヨークとコイルとの間にボビンが配置されたり、空間が確保されたりした構成に比べ、ヨークとコイルとの間を接近させることができる。ヨークとコイルとの間を接近させることができると、コイルの巻き数を減らすことなく外殻部の外形寸法を小型化できる。よって、電磁ブレーキを小型化できる。そして更に、2つの絶縁層を一連の層で構成することにより、ばらばらに絶縁層を構成することに比べ、製造途中でのマスキングの手間が軽減し、絶縁層を備えたヨークを製造しやすい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外殻部の内部に制動部及びアーマチュアを配置し、外殻部にプレート部を備えることによって、強度低下を抑制しつつ、小型化を実現できる電磁ブレーキを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁ブレーキを示し、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
図2】前記電磁ブレーキの分解斜視図である。
図3】前記電磁ブレーキを構成するアーマチュアを示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
図4】前記電磁ブレーキを構成する外殻部を示し、(a)は平面図、(b)は図4(a)におけるA−A線断面図、(c)は図4(a)におけるB−B線断面図である。a)において絶縁層の形成された部分を示した縦断面図である。
図5】電磁ブレーキにおいて絶縁層が形成された部分を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る電磁ブレーキの一実施形態を、図面に基づいて説明を行う。なお、以下における上下方向の説明は、図1(a)に示す位置関係に対応している。
【0018】
図1(a),(b)、図2に示すように、電磁ブレーキ1は、外観が円柱状の外殻部2、ヨーク3、コイル4、アーマチュア5、付勢部6、制動部7、入力連結部8と、を備える。
【0019】
外殻部2は、外部から接続される被制動回転軸(図示せず)の外周を取り巻く円筒状(角筒状でもよい)の周壁部21と、周壁部21の上端に連続して形成され、上端面のうちの径外領域を覆うプレート部22とを有する。プレート部22は、アーマチュア5からの押し付け力で制動部7を受ける。外殻部2の下端部は開放され、制動部7及びアーマチュア5を挿入するための開口部23とされている。外殻部2の一部は「外側ヨーク」として機能し、コイル4の発する磁束が通るため、外殻部2は磁性体により形成されている。
【0020】
ヨーク3は、コイル4が巻き付けられる部分であって、外殻部2の開口部23を覆う円板状の基部31と、基部31の中心から上方に延びる軸部32とを有する。軸部32は中空で上方及び下方が開放されており、軸部32の内部のうち上側に付勢部6が配置される。軸部32の内部には段差部33が形成されており、この段差部33で付勢部6の下端を不動に支持している。ヨーク3にはコイル4の発する磁束が通るため、ヨーク3は磁性体により形成されている。また、外殻部2とヨーク3とが嵌め合わせにより固定される。具体的には、ヨーク3の基部31を、外殻部2の開口部23に、圧力を加えながら押し込む(圧入する)。
【0021】
コイル4は、ヨーク3の基部31により支持されつつ、軸部32に電線が巻き付けられることにより構成されている(なお、電線自体は図示していない)。このため、コイル4は中心軸周りに巻回されている。電線は外殻部2の周壁部21を貫通してケーブルCとして外部に取り出されている。ケーブルCを介して電磁ブレーキ1に電力が供給されて、電線に通電させることによりコイル4に電磁力が発生する。この電磁力は外殻部2の一部とヨーク3とを介してアーマチュア5に及ぶ。具体的には通電時において、アーマチュア5には付勢部6の付勢力に抗して、ヨーク3に引き付けられる力が働く。
【0022】
コイル4を構成する電線は、例えば自己融着電線、具体的には温風接着型の自己融着電線を用いることが望ましい。自己融着電線を用いることで電線を巻きながら固めていくことができるため、電線の巻きが崩れず、整った形状のコイル4を得ることができる。これは、特に直径が30mm未満である超小型の電磁ブレーキ1を製作するため、細い電線を使用する際に有利である。
【0023】
アーマチュア5は板状であり、図3(a),(b)に示すように、中心部に被制動回転軸を通すための貫通孔52が形成され、円板を径方向で対向する2箇所において面取りすることにより対向辺51,51を有する略小判形状とされている。図4(a)〜(c)に示すように、外殻部2の内面形状は、アーマチュア5の外周形状に対して一回り大きい同一形状とされている。これにより、アーマチュア5が軸方向(上下方向)に往復移動することを許容しつつ、アーマチュア5の係止部である対向辺51,51が外殻部2(周壁部21)の内面に形成された被係止部である対向面211,211に係止することで、アーマチュア5が被制動回転軸の軸回りで回動することを防止する。これらアーマチュア5の対向辺51,51と外殻部2の内面の対向面211,211とで回動防止部Xを構成している。アーマチュア5は、ヨーク3の上端面に対向して配置され、通電時にコイル4の発する電磁力によりヨーク3に接近する方向に移動する。非通電時に電磁力が消失した状態において、アーマチュア5は付勢部6の付勢力によりヨーク3から離れる方向に移動する。
【0024】
回動防止部Xを構成する被係止部である対向面211,211は、外殻部2の内外に亘って形成された凹凸の一部である。この凹凸は、外殻部2をプレス加工(例えば絞り加工)することで形成される。また、この凹凸は、例えば外殻部2の内面に平面を有するように形成でき、その場合、該平面が対向面211,211となる。具体的には、外殻部2を形成する時に、一部を絞る(絞り加工する)ことにより、周壁部21の内面を径方向内側に突出させて対向面211,211が形成される。また、外殻部2を形成した後に外殻部2の一部を凹ませるコ―キング(かしめともいう)で、径方向内側に対向面211,211を突出形成してもよい。このように、外殻部2を変形させて回動防止部Xを構成する周壁部21の被係止部(ここでは、対向面211,211)を、外殻部2の内外に亘って形成された凹凸の一部とすることができる。よって、例えば直径が30mm未満の小さな外殻部2にも回動防止部Xの被係止部(ここでは、対向面211,211)を容易に備えることができる。
【0025】
付勢部6は軸方向(本実施形態では上下方向)に伸縮する圧縮コイルばねが用いられている。この付勢部6の付勢力により、アーマチュア5がヨーク3から離れる方向に移動付勢される。なお、通電時にアーマチュア5に働く電磁力は、付勢部6の付勢力よりも大きく設定されている。このため、通電時には電磁力が付勢部6の付勢力に打ち勝って、アーマチュア5がヨーク3に接近する方向に移動する。
【0026】
制動部7は、アーマチュア5のヨーク3とは反対側に配置され、外形が円形で板状に形成されている。この制動部7を収容するための一回り大きな円形の段部24が外殻部2に形成されている(図1及び図4(a)〜(c)参照)。この制動部7が段部24に収容された状態で被制動回転軸の軸周りに回転可能になっている。そして、外殻部2におけるプレート部22の下面221、及び、アーマチュア5の上面に対して当接した際には、各面に対する摩擦力により制動部7の回転が阻止される。この制動部7の中心に形成された貫通孔71(図2参照)には同軸で回転するように入力連結部8が嵌め込まれて固定されている。図示していないが、入力連結部8には制動対象物の被制動回転軸が連結される。
【0027】
以上のように構成された本実施形態の電磁ブレーキ1は、非通電時には付勢部6の付勢力によりアーマチュア5が押し上げられ、アーマチュア5と外殻部2のプレート部22との間で制動部7が挟まれることにより、入力連結部8の回転を停止させる。一方、通電時には、コイル4の電磁力によりアーマチュア5が下方に移動する。すると、制動部7が外殻部2のプレート部22及びアーマチュア5に対して離反する、または、摺動可能な状態となる。これにより、入力連結部8の回転が許容される。
【0028】
本実施形態の電磁ブレーキ1を組み立てる場合には、外殻部2の周壁部21の制動部7の回転軸方向一端部に設けられた開口部23を通して制動部7及びアーマチュア5を外殻部2の内部に挿入することによって、制動部7及びアーマチュア5を外殻部2の内部に配置できる。このとき、制動部7を外殻部2の段部24に収容し、アーマチュア5の対向辺51,51が外殻部2の内面の対向面211,211に係止するようにアーマチュア5を外殻部2に収容する。尚、図2では、外殻部2の下端の開口部23から制動部7及びアーマチュア5を挿入しているが、外殻部2を開口部23が上端になるように上下を逆にして外殻部2の上端に位置する開口部23から制動部7及びアーマチュア5を挿入してもよい。この外殻部2の周壁部21には、従来の長孔のような開口を形成する必要がない。よって、外殻部2の強度が低下することがない。また、アーマチュア5を外殻部2の内部に配置するだけで、周壁部21の内面側とアーマチュア5とに亘って設けられた回動防止部Xによりアーマチュア5の回動が阻止される。そして、周壁部21の制動部7の回転軸方向他端部にプレート部22を備えているので、周壁部21とプレート部22とをねじにより一体化することが不要になり、その分、小型化を図ることができる。制動部7及びアーマチュア5を外殻部2に入れた後は、コイル4と付勢部6とを備えるヨーク3を、外殻部2に圧力を加えながら押し込むことで電磁ブレーキ1の組み立てが終了する。
【0029】
また、本実施形態では、図5に示すように、ヨーク3において少なくともアーマチュア5に対向した面である上端面に膜状の絶縁層9(上部絶縁層9a)を備える。絶縁層9は樹脂成分を含む層であって、具体的には塗装による塗膜である。つまり、絶縁層9は非磁性体の塗膜からなる。絶縁層9の膜厚は、30μm〜70μm、望ましくは40μm〜60μmとされている。
【0030】
このように、ヨーク3の上端面に絶縁層9(上部絶縁層9a)を備えることによって、絶縁層の厚み分、ヨーク3の上端面とアーマチュア5の下面との間を空けることができ、ヨーク3とアーマチュア5とが直接当接しないようにできる。このため、通電時(吸着時)に両者が衝突することで発生する騒音の問題や、電磁力が解消した時点での残留磁気によって、両者が離れるまでにタイムラグが生じることによる性能低下の問題を改善できる。これらの問題を解消するために、例えば、ヨーク3とアーマチュア5との間に別部材である樹脂シート、コルクシート等の非磁性体からなるシートを配置することが考えられるが、電磁ブレーキの構成部品が増えてしまうという不都合がある。
【0031】
また、図5に示すように、ヨーク3において巻き付けられるコイル4が重なる面にも、絶縁層9(下部絶縁層9b)が備えられ、ヨーク3においてアーマチュア5に対向した表面に備えられた絶縁層9(上部絶縁層9a)と、ヨーク3において巻き付けられるコイル4が重なる表面に備えられた絶縁層9(下部絶縁層9b)と、が一連の層を構成している。この下部絶縁層9bにより、ヨーク3とコイル4との間が絶縁される。
【0032】
前記絶縁層9を塗膜とすることにより薄い膜を実現でき、ヨーク3とコイル4との間にボビンが配置されたり、空間が確保されたりした構成に比べ、ヨーク3とコイル4との間を接近させることができる。ヨーク3とコイル4との間を接近させることができると、コイル4の巻き数を減らすことなく外殻部2の外形寸法を小型化できる。よって、電磁ブレーキ1を小型化できる。そして更に、2つの絶縁層9(上部絶縁層9a),9(下部絶縁層9b)を一連の層で構成することにより、ばらばらに絶縁層を構成することに比べ、製造途中でのマスキングの手間が軽減し、絶縁層を備えたヨークを製造しやすい。
【0033】
絶縁層9である塗膜は、種々の塗装方法によって形成することができるが、電着塗装によることが好ましい。電着塗装による被膜は、膜厚を均一にできるため、コイル4を巻く際に電線の巻きに乱れが生じにくく、コイル4の発する電磁力を均一化できるからである。また、電線の巻きに乱れが生じにくいことから、コイル4の外周に生じる凹凸を少なくできるため、コイル4の外周を覆う絶縁テープを巻く必要がある場合であっても、絶縁テープを容易かつ美しく巻くことができる。更に、組立時にコイル4が周壁部21の内周面に接触することもなくなるため、前記絶縁テープを破ってしまうことや、コイル4の電線を傷付けることもないので、組み立て作業が容易にできる。
【0034】
電着塗装は公知の方法により実施できる。簡単に述べると、樹脂を含む電解液中にヨーク3を形成しようとするヨーク3を浸し、電解液に通電することでヨーク3の表面に塗膜を形成する。塗膜を形成しない部分にはあらかじめマスキング処理をしておく。また、あらかじめヨーク3の表面にめっきが施されている場合には、絶縁層9を形成しようとする部分につき、酸洗い等によりめっきを剥離しておく。本実施形態ではヨーク3の表面に部分的に塗膜を形成しているが、全体に塗膜を形成することも可能である。
【0035】
尚、本発明に係る電磁ブレーキは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0036】
前記実施形態では、外殻部2の開口部23に、ヨーク3の基部31が圧入されることによって、外殻部2とヨーク3とを固定したが、外殻部2の開口部23に、ヨーク3の基部31を容易に挿入可能となるように、外殻部2の開口部23とヨーク3の基部31との大きさ関係を設定し、外殻部2の開口部23の開口面又はヨーク3の基部31の外周面に接着剤を塗布してから、外殻部2の開口部23にヨーク3の基部31を挿入して両者を接着剤により固定してもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、外殻部2に、制動部7、アーマチュア5、コイル4及び付勢部6を備えたヨーク3を収容したが、外殻部2に、制動部7及びアーマチュア5を収容し、コイル4及び付勢部6を備えたヨーク3を外殻部2とは別の外側ケースに備え、外殻部2と外側ケースとを嵌め合わせによりヨーク3を外殻部2に外側ケースを介して間接的に固定してもよい。この場合の嵌め合わせは、圧入による固定や接着剤による固定を含む。
【0038】
また、前記実施形態では、回動防止部Xを構成する一方のアーマチュア5を小判形状に構成したが、矩形状、楕円形状、三角形状、多角形状など、どのような形状であってもよい。要するに、アーマチュア5の回転を阻止できるように、アーマチュア5の外形の形状及び周壁部21の内面の形状を考慮すればよい。
【0039】
また、前記実施形態では、プレート部22を周壁部21の制動部7の回転軸方向一端部に一体形成して外殻部2を構成したが、周壁部21を制動部7の回転軸方向両端部が開口された筒状に構成し、その筒状の周壁部21の両端部の開口のうちのいずれか一方の開口を通して制動部7及びアーマチュア5を周壁部21の内部に挿入し、挿入後において、プレート部22を周壁部21の制動部7の回転軸方向両端部のうちのいずれか一端部に接着剤を用いて接着固定することで外殻部2を構成してもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、絶縁層9である塗膜を電着塗装によって形成したが、例えば、静電塗装、レイデント処理(登録商標)、溶射によって形成することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…電磁ブレーキ、2…外殻部、3…ヨーク、4…コイル、5…アーマチュア、6…付勢部、7…制動部、8…入力連結部、9…絶縁層、9a…上部絶縁層、9b…下部絶縁層、21…周壁部、22…プレート部、23…開口部、31…基部、32…軸部、33…段差部、51…対向辺、52…貫通孔、71…貫通孔、211…対向面、221…下面、C…ケーブル、X…回動防止部
図1
図2
図3
図4
図5