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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-25629(P2019-25629A)
(43)【公開日】2019年2月21日
(54)【発明の名称】ワーク搬送用システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20190125BHJP
   B25J 9/04 20060101ALI20190125BHJP
【FI】
   B25J19/06
   B25J9/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-150522(P2017-150522)
(22)【出願日】2017年8月3日
(71)【出願人】
【識別番号】393011038
【氏名又は名称】リョーエイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛泰
(72)【発明者】
【氏名】森元 庸介
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS06
3C707CT04
3C707CT05
3C707CU03
3C707CY36
3C707HT02
3C707HT22
3C707KS20
3C707KS28
3C707KS31
3C707KS35
3C707KS37
3C707KV06
3C707KX03
3C707MS07
(57)【要約】
【課題】コンパクトに縮めることができる装置で、作業者のすぐ横までワークを搬送できるようにすること。
【解決手段】第一のランニングプレートと、第一のランニングプレートの上面及び下面に備えたラックと、第二のピニオンと、第二のピニオンと噛み合うラックを下面に備えた第二のランニングプレートと、第一のピニオンと第二のピニオンの連結に用いられるベルトが掛けられるプーリーを備え、直線移動用モーターから第一のピニオンに回転力を付与することにより、第一のランニングプレートをスライド移動させるとともに、第一のランニングプレートに対して第二のランニングプレートをスライド移動させるワーク搬送用装置1と、直線移動用モーターの負荷の大きさを計測する計測機91と、計測機によって計測された計測値を基に、ワーク搬送用装置を停止するか否かを判定する判定部81と、を備えた、ワーク搬送用システム10とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のランニングプレートと、第一のランニングプレートを直線移動させるために用いる直線移動用モーターと、第一のランニングプレートを旋回移動させるために用いる旋回用モーターと、第一のランニングプレートを昇降移動させるために用いる昇降用原動機と、直線移動用モーターから回転力が付与される第一のピニオンと、第一のランニングプレートの下面に備えたラックと、第一のランニングプレートの上面に備えたラックと、第一のランニングプレートの上面に備えたラックと噛み合う第二のピニオンと、第二のピニオンと噛み合うラックを下面に備えた第二のランニングプレートと、第一のピニオンと第二のピニオンの連結に用いられるベルトと、第一のピニオンと第二のピニオンの連結に用いられるベルトが掛けられるプーリーと、を備え、直線移動用モーターから第一のピニオンに回転力を付与することにより、第一のランニングプレートをスライド移動させるとともに、第一のランニングプレートに対して第二のランニングプレートをスライド移動させるワーク搬送用装置と、
直線移動用モーターの負荷の大きさを計測する計測機と、
計測機によって計測された計測値を基に、ワーク搬送用装置を停止するか否かを判定する判定部と、を備えた、ワーク搬送用システム。
【請求項2】
判定部は、計測機による計測から導かれる第一の判定値と、第一の判定値の変化の度合いとして導かれる第二の判定値の双方を取得し、いずれかが規定範囲を逸脱した場合、ワーク搬送用装置を停止すると判定する請求項1に記載のワーク搬送用システム。
【請求項3】
判定部は、計測機によって計測された旋回用モーターの負荷の大きさを基に、ワーク搬送用装置を停止するか否かを判定する請求項1又は2に記載のワーク搬送用システム。
【請求項4】
ワーク搬送用装置の所定部分の傾きを検知可能な傾き検知センサを備え、
判定部は、傾き検知センサの検知結果を基に、ワーク搬送用装置を停止するか否かを判定する請求項1乃至3の何れかに記載のワーク搬送用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮移動可能なワーク搬送用装置を備えたワーク搬送用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物づくりにおいて組み付け作業は必ず必要である。たとえば自動車については、エンジン、ミッション、車体において多くの部品を組み付ける必要がある。組み付けの作業者は、多くの車種に対応しながら、数点の部品を時間内に組み付けている。通常、図17に示すように、作業者の後ろには多くの種類の部品が棚100に並べられていて、これを取りに動き回る作業が繰り返される。
【0003】
少しでも、作業者の負担を低減するために様々なところで自動化が考えられている。例えば、レールやガイドが付いている搬送機を用いることも良く見られる。しかしながら、このような搬送機は、作業スペースの邪魔になるため、作業者のすぐ横にワークや工具を搬送してくるユニットとして用いるのは適切ではない。また、特許文献1に記載されているような、低推力の多関節ロボットが、一般的な産業ロボットの分野において広く用いられている。多関節ロボットは、入り抜きできる搬送手段であり、固定のレールやガイドなどが不要である。
【0004】
多関節タイプのロボットは、6軸ほどの回転軸を構成することで自由な向きに動作が可能である。また、高精度の位置制御が可能なため、対象製品の姿勢変換や部品の組付作業の自動化などによく活用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−205382号公報
【0006】
しかしながら、この多関節タイプのロボットは使いにくさが問題になっている。例えば、多関節タイプのロボットは、ロングストロークを取り回しできないという問題点がある。また、関節タイプのため、縮んだ時に自分の腕を折りたたむスペースが必要になる。また、回転動作させるためには、自分を中心に腕を振り回したり、全体を回転させたりするスペースが必要になる。
【0007】
更には、搬送目的でロングストロークを必要とする場合、多関節ロボットを利用しようとすると、どうしても大型タイプを選択するようになってしまう。大型になると重量も大きくなるため、各関節のモーターも大出力にならざるを得ず、全体的にパワーが大きくなってしまう。作業者のすぐ横にロボットを置くと、作業者が誤ってロボットに当たってしまったり干渉したりすることが生じ得るが、パワーの大きなロボットは、いくら低推力ロボットといえども作業者にとっては危険である。そのため、図18に示すように、搬送用に用いられるロボット101は、作業者の作業領域とは別に設けられた安全柵102で囲まれた場所でだけ動作するように使われているのが実態であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明の課題は、コンパクトに縮めることができる装置で、ライン作業で組み付け作業をおこなっている作業者のすぐ横までワークを搬送できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第一のランニングプレートと、第一のランニングプレートを直線移動させるために用いる直線移動用モーターと、第一のランニングプレートを旋回移動させるために用いる旋回用モーターと、第一のランニングプレートを昇降移動させるために用いる昇降用原動機と、直線移動用モーターから回転力が付与される第一のピニオンと、第一のランニングプレートの下面に備えたラックと、第一のランニングプレートの上面に備えたラックと、第一のランニングプレートの上面に備えたラックと噛み合う第二のピニオンと、第二のピニオンと噛み合うラックを下面に備えた第二のランニングプレートと、第一のピニオンと第二のピニオンの連結に用いられるベルトと、第一のピニオンと第二のピニオンの連結に用いられるベルトが掛けられるプーリーと、を備え、直線移動用モーターから第一のピニオンに回転力を付与することにより、第一のランニングプレートをスライド移動させるとともに、第一のランニングプレートに対して第二のランニングプレートをスライド移動させるワーク搬送用装置と、直線移動用モーターの負荷の大きさを計測する計測機と、計測機によって計測された計測値を基に、ワーク搬送用装置を停止するか否かを判定する判定部と、を備えた、ワーク搬送用システムとする。
【0010】
また、判定部が、計測機による計測から導かれる第一の判定値と、第一の判定値の変化の度合いとして導かれる第二の判定値の双方を取得し、いずれかが規定範囲を逸脱した場合、ワーク搬送用装置を停止すると判定するように構成することが好ましい。
【0011】
また、判定部が、計測機によって計測された旋回用モーターの負荷の大きさを基に、ワーク搬送用装置を停止するか否かを判定するように構成することが好ましい。
【0012】
また、ワーク搬送用装置の所定部分の傾きを検知可能な傾き検知センサを備え、判定部が、傾き検知センサの検知結果を基に、ワーク搬送用装置を停止するか否かを判定するように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、コンパクトに縮めることができる装置で、ライン作業で組み付け作業をおこなっている作業者のすぐ横までワークを搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のワーク搬送用システムを組み立てラインにセットした状態を表した図である。
図2】ワーク搬送用装置の伸縮ユニット周りを側面から表した概略図である。
図3図2のIII-III矢視図である。
図4】ガイドレールとガイドブロックを分離した状態を表した図である。
図5】ランニングプレートとピニオンとプーリーと平ベルトとの関係を表した内部構造の図である。
図6】三つのランニングプレートが連結された伸縮ユニットを縮ませた状態を表した図である。
図7】三つのランニングプレートが連結された伸縮ユニットを伸ばした状態を表した図である。
図8】直進移動用モーターの電流値から導き出したトルク波形を表した図である。
図9図8に示すトルク波形から導き出したトルク変化波形を表した図である。
図10】傾き検知センサとなるロードセルを設置した状態を表す図である。
図11】ロードセルから導き出したトルク波形を表した図である。なお、トルク波形に付された括弧付きの番号は、ワーク搬送用装置が、括弧付きの番号が付された図で表された状態であることを意味している。
図12図11に示すトルク波形から導き出したトルク変化波形を表した図である。なお、トルク波形に付された括弧付きの番号は、ワーク搬送用装置が、図11の下部に示された、括弧付きの番号が付された図で表された状態であることを意味している。
図13図2における下部周りの状態を表した図である。
図14図13に示された第一のランニングプレートと第二のピニオンが右方向に移動した状態を表した図である。
図15図13に示された第一のランニングプレートと第二のランニングプレートと第三のランニングプレートと第二のピニオンと第三のピニオンが右方向に移動した状態を表した図である。
図16】ワーク搬送用装置を用いてワークを搬送している状態を表した図である。
図17】作業者の背後に設置した棚に部品が収められている状態を表した図である。
図18】作業者の作業エリアとは別のエリアに多関節ロボットが設置されている状態を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明を実施するための形態を示す。図1乃至図5に示すことから理解されるように、実施形態のワーク搬送用システム10は、ワーク搬送用装置1と、直線移動用モーター3の負荷の大きさを計測する計測機91と、計測機91によって計測された計測値を基に、ワーク搬送用装置1を停止するか否かを判定する判定部81と、を備えている。ワーク搬送用装置1は、第一のランニングプレート41と、第一のランニングプレート41を直線移動させるために用いる直線移動用モーター3と、第一のランニングプレート41を旋回移動させるために用いる旋回用モーターと、第一のランニングプレート41を昇降移動させるために用いる昇降用原動機と、直線移動用モーター3から回転力が付与される第一のピニオン51と、第一のランニングプレート41の下面に備えたラック4aと、第一のランニングプレート41の上面に備えたラック4bと、第一のランニングプレート41の上面に備えたラック4bと噛み合う第二のピニオン52と、第二のピニオン52と噛み合うラック4cを下面に備えた第二のランニングプレート42と、第一のピニオン51と第二のピニオン52の連結に用いられるベルト12と、第一のピニオン51と第二のピニオン52の連結に用いられるベルト12が掛けられるプーリー13と、を備えている。また、ワーク搬送用装置1は、直線移動用モーター3から第一のピニオン51に回転力を付与することにより、第一のランニングプレート41をスライド移動させるとともに、第一のランニングプレート41に対して第二のランニングプレート42をスライド移動させることができる。このため、コンパクトに縮めることができる装置で、ライン作業で組み付け作業をおこなっている作業者のすぐ横までワークWを搬送することが可能となる。また、ランニングプレート4の直線移動は直線移動用モーター3が担い、旋回移動は旋回移動用モーターが担い、昇降移動は昇降移動用原動機が担うため、各々の原動機の能力を抑制することができる。このため、直線移動用モーター3の負荷の大きさの変化を計測しやすくなる。なお、ワーク搬送用装置1が伸縮式のためレールやガイドを移動空間に固定する必要がない。また、ランニングプレート4が連動してスライドすることで、限定された狭いスペースの中でも直接的に物を搬送することができる。
【0016】
実施形態のワーク搬送用装置1は、上下方向に三段重ねられたランニングプレート4により構成された伸縮ユニット11を備えたワーク搬送用装置1である。したがって、このワーク搬送用装置1は、第二のランニングプレート42の上面に備えたラック4dと、第二のランニングプレート42の上面に備えたラック4dと噛み合う第三のピニオン53と、第三のピニオン53と噛み合うラック4eを下面に備えた第三のランニングプレート43と、第二のピニオン52と第三のピニオン53の連結に用いられるベルト12と、第二のピニオン52と第三のピニオン53の連結に用いられるベルト12が掛けられるプーリー13と、を備えている。また、第三のランニングプレート43の端部に接続されたプーリー13と、第三のランニングプレート43の端部に接続されたプーリー13に架け渡されるベルト12と、を備えている。このような構成とすることで、図6に示すことから理解されるように、三枚のランニングプレート4が並列した状態と、図7に示すように、図6に示す位置から各ランニングプレート4の長手方向にスライド移動させた状態とを切り替えることができる。
【0017】
図3乃至図5に示すことから理解されるように、実施形態のランニングプレート4には、左右に抵抗なくスムーズに動かすためのガイドレール14が取付けられている。ランニングプレート4の両端には幅の広いプーリー13が取り付けてあり、ここに平ベルト12が巻きつく。平ベルト12の固定端は、ガイドレール14に対してスライドするガイドブロック15についている移動プレート16に固定されている。つまり、この移動プレート16はガイドレール14に対してガイドブロック15と組み合わさってスライド移動するようになっている。移動プレート16は、2個または4個が固定され、その中央にはピニオン5が固定されている。
【0018】
平ベルト12はランニングプレート4に取付けられたガイドレール14やラックを外側から、全て囲む構造としている。より具体的には、平ベルト12は、複数のランニングプレート4が現位置でもスライドした状態でも常に全体をカバーして内部の移動機構体を保護する。つまり、平ベルト12は、移動プレート16を左右に引っ張る力を伝える機能と各ランニングプレート4をカバーする構造を兼ね備えるようになっている。
【0019】
実施形態のワーク搬送用システム10は、直線移動用モーター3の負荷の大きさを計測する計測機91と、計測機91によって計測された計測値を基に、ワーク搬送用装置1を停止するか否かを判定する判定部81と、を備えているが、実施形態の計測機91では、直線移動用モーター3に流される電流の大きさを計測している。より具体的には、直線移動用モーター3への電流値からトルク波形をモニタリングしている。ランニングプレート4が水平方向に移動する場合、作業者が誤ってランニングプレート4に当たった際の反力の影響が、モーターの電流値の変化として表れやすい。なお、通常、作業者が駆動中のユニットに当たってしまうと、動いて行こうとしている駆動用モーターに抵抗がかかるが、この抵抗に逆らって目的ポジションに向かって動こうとモーターの電流値をアップさせようとする。電流値がアップすることで、通常の動作の電流波形と大きく違った波形となる。この変化をとらえて、作業者の干渉を検知して停止に至らせることができる。
【0020】
また、実施形態では、計測機により、旋回用モーターに流される電流の大きさを計測している。より具体的には、旋回用モーターへの電流値からモーターのトルク波形をモニタリングしている。旋回用モーターは、ランニングプレート4を水平方向に移動させるものであり、直線移動用モーター3の場合と同様、作業者が誤ってランニングプレート4に当たった際の反力の影響が、モーターの電流値の変化として表れやすい。
【0021】
ところで、測定された電流値から、トルクを導くことができる。また電流値の変化を追うことにより、トルク波形を導くことができる。トルク波形は、例えば、図8に示すように表される。例えば、ランニングプレート4がスライドしてワーク搬送用装置1がワークWを搬送する場合、トルク波形は、加速時に大きな山が発生した後に一定の小さな山谷が続く。また、トルクは、その後、停止に向けて、ゼロに下がっていく。ワーク搬送用装置1からワークWが取り除かれ、戻ろうとする場合、同様な波形が生じる。つまり、トルク波形は、ワークWの搬送の往・復、いずれも、同様な形状となる。これは、重力が直線移動用モーター3の電流値や旋回用モーターの電流値に与える影響が比較的小さいからである。なお、ワークWを載せて搬送した後、前進端で作業者がワークWを取り、ワークWが無い状態で元の位置に戻る動作をする場合は、ワークWの重さの影響により、トルク波形は行きと帰りで少し違うが、加速時と減速時で山が少し高くなる程度の変化であり、実質的には、あまり変化は無い。これは、基本的に水平の動きで伸縮や旋回が行われるからである。
【0022】
なお、次に作業者の干渉を検知する方法について記す。まず、通常の一連の動作を行った状態の波形の流れをテンプレートとして記憶しておく。次に、通常の波形の山谷の山の部分より少し上に、閾値を設定する。この際、山谷をある程度平らにならした波形を基に、直線の閾値を設定する。この閾値を通常の波形が示す値より、どのくらい大きな値に設定するのかは、実際に作業者が干渉した際のイメージにあわせればよい。例えば、加重にすると2〜7kg程度を衝撃力として捕らえて、そのときのトルク値のピークの位置が越えることができるように閾値を設定すれば良い。
【0023】
実際に外部の干渉が起きると、瞬間的にトルク値が上昇する。設定した閾値を用いて、これを検知させ、判定部81が「ワーク搬送用装置1を停止する」と判定した場合、制御装置を用いてワーク搬送用装置1を停止させる。
【0024】
トルク値や電流値のように、計測機91による計測から導かれる第一の判定値だけで、判定部81に判定させることも可能であるが、トルク値や電流値だけを基に、作業者との衝突を検知するのでは、不十分であると考える場合もある。この場合、第一の判定値の変化の度合いとして導かれる第二の判定値を更に取得し、第一の判定値と第二の判定値のいずれかが規定範囲を逸脱した場合、ワーク搬送用装置1を停止すると判定するようにしても良い。
【0025】
例えば、第二の判定値として、トルク波形の山谷の変化する傾きを別に求め、この値とトルク値の双方を基に、作業者との衝突を検知するようにすればよい。この変化する傾きを表す値は、変化するトルク値を表す式を微分することにより求めることができる。図9に示した波形は、トルク波形の瞬間毎の波形変化の度合いとして求められた値を波形として示したものである。以下、これをトルク変化波形と呼ぶ。このトルク変化波形に対する閾値の設定も、トルク波形に対する閾値の設定と同じ考え方を適用する。つまり、通常の一連の動作から得られたトルク変化波形に対して、波形の山谷の山の部分より少し上に、閾値を設定する。この際、閾値は、直線的な傾き、数値を考えて設定する。
【0026】
このトルク変化波形の変化は、トルク波形の変化より外部の力に対してダイナミックに発生するため、より検知しやすい。トルク波形とトルク変化波形の各々に対して個々に閾値を設定して、外部の力を検知するシステムのように、計測機による計測から導かれる第一の判定値と、第一の判定値の変化の度合いとして導かれる第二の判定値の双方を取得し、いずれかが規定範囲を逸脱した場合、ワーク搬送用装置1を停止すると判定するようにシステムを構築すれば、作業者との干渉に、すぐ反応できるシステムとなる。
【0027】
ところで、水平移動となる場合と異なり、ランニングプレート4を昇降移動させる場合、ランニングプレート4などの重量や、ハンドリングするワークW自体の重量がランニングプレート4を昇降させる昇降用原動機の負荷の大きさに影響する。例えば、昇降用原動機として電動モーターを用い、その電流値からトルクを求めても、上昇時と下降時、またワークWのセット時、空動作時によって元々のトルク波形が違ってくる。そのため、作業者が当たった時の変化をトルク波形だけで判断するのは難しい。
【0028】
そこで、ワーク搬送用装置1の所定部分の傾きを検知可能な傾き検知センサを備え、判定部81が、傾き検知センサの検知結果を基に、ワーク搬送用装置1を停止するか否かを判定するように構成することが考えられる。そのため、実施形態では複数のランニングプレート4を連結して設けた伸縮ユニット11の下部の部分、つまり旋回するテーブル17の上部に当たるところに、変化を物理的に読み取る傾き検知センサを取り付ける。より具体的には、荷重の変化をひずみの量で読み取ることができるロードセル92を傾き検知センサとして使用する。
【0029】
例えば、ランニングプレート4がスライドして伸縮ユニット11が伸びた時に、作業者が誤って当たる場合がある。このような場合、オーバーハングした状態で先端に加重が加わるので、伸縮ユニット11を旋回可能に支持した固定部に伝わる力は、単純に上下方向への力ではなく傾きのモーメントとして伝わってくる。したがって、このロードセル92は、伸縮ユニット11を固定する固定部周りの傾き具合を検知するようにセットするのが望ましい。
【0030】
例えば、図10に示すように、この固定部周りにおいて、片方側に薄い板93を傾き方向と直角に取り付け、もう片方側にロードセル92を取り付ける。この薄い板93は、傾きによって左右にたわむ。この際、ロードセル92には、上下方向のたわみとして表れてくる。
【0031】
ロードセル92を作業者との接触の検知に用いるには、先ず、伸縮ユニット11の伸縮や昇降の駆動によって生じるロードセル92の荷重の変化パターンを波形としてテンプレートに記録しておく。そして、その波形が示す値より、大きな値となるように閾値を設定しておく。この閾値は通常の波形を平均的に直線に置き換えた線より荷重が大きな所に設定する。これを図11に示す。この閾値は実際の動きで最終的に決定するが、通常のレベルより20〜50%程度大きい値とすることが望ましい。稼働中は、このロードセル92への荷重が、この閾値を超えた時に、何らかの干渉があったと判断して一時停止するように回路をプログラムしておく。作業者が誤って当たったとき、この裾元部分の荷重の傾き変化はトルク値より変化を捉えやすいため、より精確に作業者との干渉を検知して一時停止することができる。
【0032】
伸縮移動や旋回移動と同様に、トルク値だけを基に、作業者との衝突を検知するのでは、不十分であると考える場合、このトルク波形の山谷の変化する傾きを別に求め、この値とトルク値の双方を基に、作業者との衝突を検知するようにすればよい。この変化する傾きは、変化するトルク値を表す式を微分して求めた値である。図12に示した波形は、トルク波形の瞬間毎の波形変化の度合いとして求められた値を波形として示したトルク変化波形である。このトルク変化波形に対する閾値の設定も、トルク波形に対する閾値の設定と同じ考え方を適用する。つまり、通常の一連の動作から得られたトルク変化波形に対して、波形の山谷の山の部分より少し上に、閾値を設定する。この際、閾値は、直線的な傾き、数値を考えて設定する。
【0033】
次に、ワーク搬送用装置1の動作を説明する。図2に示すように、上下方向に三段重ねられたランニングプレート4により構成された伸縮ユニット11を備えたワーク搬送用装置1を例として説明する。直線移動用モーター3のギヤ31から第一のピニオン51に回転力が付与されると、第一のピニオン51と噛み合う第一のランニングプレート41の下面に設けられたラック4aに力が伝わる。これにより、ラック4aが右に10の距離だけ移動したとする。この時、第一のピニオン51に固定された平ベルト12が引っ張られて第二のピニオン52を右に20の距離だけ移動させる。なお、第二のピニオン52と第一のランニングプレート41の上面の設けられたラック4bがかみ合っている。
【0034】
図13及び図14に示すことから理解されるように、第一のランニングプレート41が右に10移動すれば、第二のピニオン52は第一のランニングプレート41に対して20-10=10の距離分だけ移動するために右に回転する。また、第二のピニオン52は、右に20ほどの距離を移動する際に、回転するが、この第二のピニオン52は第二のランニングプレート42の下面に設けられたラック4cにかみ合わされているため、第二のランニングプレート42は右に30の距離だけ移動する。
【0035】
図15に示すように、実施形態のワーク搬送用装置1は、第二のランニングプレート42の上面に設けられたラック4dと第三のランニングプレート43の下面に設けられたラック4eに噛み合うように第三のピニオン53が設けられているが、第三のピニオン53と第二のピニオン52を繋ぐ平ベルト12に引っ張られて、第三のピニオン53は右に40の距離だけ移動し、第三のランニングプレート43は右に50の距離だけ移動する。このように、積み重ねたランニングプレート4をスライド移動させることで、最上段に配置されたランニングプレート4を右に大きく移動させることができる。また、同じ原理で反対の左側にも移動させることができる。このような構成とすることで、直線移動用モーター3の回転移動だけで伸縮ユニット11の最上段に位置するランニングプレート4を大きく移動させることができる。また、直線移動用モーター3の回転方向を変えるだけで、ランニングプレート4のスライド方向を変えることができる。
【0036】
図16に示すことから理解されるように、本発明によれば、ライン作業で組み付け作業をおこなっている作業者が、製品や、工具など必要な物を遠くにある棚100まで毎回取りに行く必要がなくなる。また、ロングストロークのわりにシンプルな構造のため、作業者の動きに邪魔にならないようなラインレイアウトが可能である。また、作業者の手が当たってしまった程度の力であっても、その力をすぐに検知しやすい構造となっている。このため、作業者のすぐ横に設置することができ、作業者のサポートとして十分に機能させることができる。また、座ったまま作業が可能になるために、女性や高齢者など、一般的な男性より力が強くない人でも、こういった作業に加わることができる。また、作業者が誤って触れたり、ぶつかったりした時に、事故につながるような部分を除いた構造となっている。
【0037】
なお、多関節ロボットにおいて、作業者が当たった場合の電流値の変化をとらえようとしても、各関節ロボットは回転して動いているため、多関節ロボットの姿勢と作業者が当たった位置によっては、その際に発生した抵抗力を感知しにくい場合がある。この場合、作業者がかなりの衝撃を受けてはじめて干渉を見分けられる。すなわち、作業者に大きな力が加わって、はじめて多関節ロボットが停止する。
【0038】
一方、本システムのワーク搬送用装置1は、軸数も少なくシンプルな直線運動のため作業者が伸縮のランニングプレート4に当たるとすぐに感知できる構造となっている。また、実施形態では、直線移動用モーター1個で3つのランニングプレート4を動かす構造となっており、比較的長めの搬送が可能である。また、作業者が伸縮ユニット11に軽く当たった場合でも、その衝撃を駆動モーターの電流値から読み取りやすく、すぐに停止することができる。このため、作業者に大きなダメージを発生させない構造とすることができる。したがって、作業者の動く領域内にもこのワーク搬送用装置1を設置することができ、安全に作業者のサポートができる。また、ワーク搬送用装置1は、原位置となる中央を起点に左右に往復スライドするため、ワーク搬送用装置1の左右側に位置する設備に干渉することなく移動できる。しかも、原位置での折りたたまれた状態はコンパクトなため、左右設備間の距離を短くすることができ、小スペースで効率的なレイアウトが可能となる。
【0039】
以上、一つの実施形態を中心として説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、スライド移動可能なランニングプレートは三枚とする必要は無く、二枚や四枚以上とすることも可能である。いずれの場合でも、一つの直線移動用モーターから付与される力により全てのランニングプレートを直線移動させることができるように構成する。
【0040】
ランニングプレートを昇降させるために用いられる原動機を電動モーターとしているが、他の装置を用いても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 ワーク搬送用装置
3 直線移動用モーター
10 ワーク搬送用システム
12 ベルト
13 プーリー
41 第一のランニングプレート
42 第二のランニングプレート
51 第一のピニオン
52 第二のピニオン
81 判定部
91 計測機
4a ラック
4b ラック
4c ラック
図1
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