(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-25667(P2019-25667A)
(43)【公開日】2019年2月21日
(54)【発明の名称】マーブリング模様の作成方法
(51)【国際特許分類】
B44C 1/175 20060101AFI20190125BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20190125BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20190125BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20190125BHJP
【FI】
B44C1/175 E
B41M5/00 100
B41M5/00 134
B41M3/06
B41J2/01 501
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-144132(P2017-144132)
(22)【出願日】2017年7月26日
(11)【特許番号】特許第6218986号(P6218986)
(45)【特許公報発行日】2017年10月25日
(71)【出願人】
【識別番号】517261958
【氏名又は名称】八木 秀教
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(74)【代理人】
【識別番号】100153246
【弁理士】
【氏名又は名称】伊吹 欽也
(74)【代理人】
【識別番号】100166349
【弁理士】
【氏名又は名称】帯包 浩司
(72)【発明者】
【氏名】八木 秀教
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
2H186
3B005
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056FC01
2H113AA01
2H113BA22
2H113BB02
2H113BB09
2H113BB22
2H113BC01
2H186AB09
2H186AB16
2H186AB17
2H186AB33
2H186AB37
2H186AB44
2H186AB45
2H186AB47
2H186AB53
2H186BA08
2H186DA08
2H186FB25
3B005EA01
3B005EB05
3B005FA00
3B005FB22
3B005FB33
3B005FB37
3B005FF01
3B005FF03
3B005FG01Z
3B005FG02Z
3B005FG05Z
3B005FG07Z
3B005FG08Z
3B005FG09Z
3B005FG11Z
3B005FG20Z
3B005GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より簡易な構成によってマーブリング模様を作成する。
【解決手段】媒体にマーブリング模様A2を描画するマーブリング模様の作成方法であって、所定の画像A1を、水性インクを用いて撥水性シート40に印刷する工程と、シート40に印刷された画像A2の上に、転写溶液を塗付する工程と、転写溶液が塗付された画像A2を、シート40から媒体に転写する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体にマーブリング模様を描画するマーブリング模様の作成方法であって、
所定の画像を、水性インクを用いて撥水性シートに印刷する工程と、
前記シートに印刷された画像の上に、転写溶液を塗付する工程と、
前記転写溶液が塗付された画像を、前記シートから前記媒体に転写する工程と、
を含むことを特徴とするマーブリング模様の作成方法。
【請求項2】
コンピュータのディスプレイに表示されたモアレ縞を含む画像を撮像する工程を含み、
前記所定の画像は、前記モアレ縞を含む画像であること、
を特徴とする請求項1記載のマーブリング模様の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーブリング模様の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マーブリングは、ゴム樹脂の水溶液に、水よりも比重が軽く水分に反発する描画材(墨汁や絵の具等)を落とし、水面上に描かれる複雑なマーブリング模様(いわゆる大理石に見られる表面模様)を、紙、皮革、陶器の素地、もしくは床材や壁材などの媒体に写し取る技法をいう。
【0003】
これに関する技術として、例えば特許文献1、2には、コンピュータを利用してマーブリング模様を作成するためのマーブリング模様作成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−293697号公報
【特許文献2】特開平10−283486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載される発明においては、マーブリング模様作成装置という設備が必要となり、画家や陶芸家などの芸術家、趣味で楽しむ個人又は小規模事業者等にとっての敷居は必ずしも低くない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたものであり、本発明の目的は、より簡易な構成によってマーブリング模様を作成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係るマーブリング模様の作成方法は、媒体にマーブリング模様を描画するマーブリング模様の作成方法であって、所定の画像を、水性インクを用いて撥水性シートに印刷する工程と、前記シートに印刷された画像の上に、転写溶液を塗付する工程と、前記転写溶液が塗付された画像を、前記シートから前記媒体に転写する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施の形態によれば、より簡易な構成によってマーブリング模様を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るマーブリング模様作成する全体工程を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るモアレ画像例1を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るモアレ画像例2を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る画像編集例1を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る画像編集例2を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る印刷画像例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る転写溶液塗布画像例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る画像転写媒体例1を示す図である。
【
図12】本実施形態に係る画像転写媒体例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係るマーブリング模様作成する全体工程を示す図である。以下、媒体にマーブリング模様を描画するためのマーブリング模様作成方法に関し、工程ごとに分けて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
<工程1>
図2は、本実施形態に係る工程1を示す図である。工程1においては、原画像のデジタル撮像に基づいて、第1のマーブリング模様を得る。
【0012】
PC(Personal Computer)10は、予め任意の画像Aを有している。画像Aは、マーブリング模様の元となる原画像のデジタルデータである。作成者は、スマートフォーンやデジタルカメラなどの撮像装置20を用いて、PC10のディスプレイ11上に表示されている画像Aを撮像することで、撮像装置20は画像A1を得る。
【0013】
図3は、本実施形態に係るモアレ画像例1を示す図である。また、
図4は、本実施形態に係るモアレ画像例2を示す図である。
図3、4に示されるように、撮像装置20を用いてPC10のディスプレイ11上に表示された画像Aを撮像することで、モアレ縞を有する画像A1(モアレ画像ともいう)が得られる。
【0014】
規則正しい編み目のような模様がある被写体を撮影すると、被写体本来の模様とは無関係な縞模様が現れることがあり、これはモアレ縞として知られている。また、規則正しい模様をデジタル写真画像にした場合も、画像の画素解像度と模様の周波数のずれが原因で同様の縞模様が発生する。モアレ縞は規則正しい模様を持った被写体とデジタルカメラ内に組み込まれた規則正しい構造のCCDとの二次元的なうなり現象である。なお、この現象はデジタルカメラ固有の現象であり、フィルムカメラでは発生しない。
【0015】
図5は、本実施形態に係る画像編集例1を示す図である。デジタル画像として得られた画像A1に対して、明度やコントラストなどのパラメータを調整(変更)する画像補正を実行することにより、画像A1のモアレ縞(一種のマーブリング模様)をより際立たせた画像A1−2を得ることが可能である。なお、画像編集により画像A1の画像それ自体が変更されるものではない。
【0016】
図6は、本実施形態に係る画像編集例2示す図である。更に画像A1−2において、モアレ縞が特に顕著に表れている画像領域(例えば、P1、P2)のみを切り出して、切り出された画像領域をつなぎ合わせた画像A1−3を作成することで、画像A1−2のモアレ縞(一種のマーブリング模様)を一層際立たせた画像A1−3得ることが可能である。
【0017】
なお、得られたモアレ縞を有する画像A1に対して、
図5の画像編集例1又は
図6の画像編集例2を実施するか否か、またその実施順序は、作成者の任意工程である。例えば、画像A1のモアレ縞(マーブリング模様)の程度などに応じて、何れか一方又は両方を実施してもよいし、何れも実施しなくともよい。
【0018】
<工程2>
図7は、本実施形態に係る工程2を示す図である。工程2においては、水性インクジェット印刷に基づいて、第2のマーブリング模様を得る。
【0019】
作成者は、水性インクジェット式の印刷装置(プリンター)30を用いて画像A1(ないし画像A1−2又は画像1−3)を、例えばOHPシートなど撥水性の高いシート40に印刷する。これによりシート40上において、画像A2が得られる。
【0020】
ここで、印刷装置30に用いられるインクは水性インクである。また、シート40の具体的な材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂等のプラスチック製のものや、セロファン等のものとを使用することができる。
【0021】
インクが定着するためにはインク受容層のあるシートが必要であり、撥水性の高いシート40には水性インクは定着しない。このため、印刷時に画像A1の画像を形成する水性インクがシート40上で弾かれる性質を利用して、画像A1よりも複雑な第2のマーブリング模様を有する画像A2がシート40上に得られる。
【0022】
図8は、本実施形態に係る印刷画像例を示す図である。
図8に示されるように、撥水性の高いシート40上に画像A1が水性インクジェットで印刷されることで、シート40上で水性インクが滲んで広がり、より複雑なマーブリング模様を有する画像A2がシート40上に得られる。
【0023】
<工程3>
図9は、本実施形態に係る工程3を示す図である。工程3においては、転写溶液の塗布に基づいて、第3のマーブリング模様を得る。
【0024】
具体的に、作成者は画像A2が印刷されたシート40上、粘着性のある例えばのり状の転写溶液(転写用液体)を画像A2に塗布する。転写溶液は、以下に後述する水溶液系や水分散系の接着剤である。水溶液系や水分散系の接着剤を転写溶液として用いると、シート40上で画像A2を形成している水性インクが当該接着剤に分散し又は溶け込んで、一層複雑なマーブリング模様を有する画像A3がシート40上に得られる。また、塗布方法は、転写溶液の点滴を垂らしたり、スプレー等で拭き付ける等がある。
【0025】
(水溶液系)
・でんぷん系接着剤:主成分は植物由来のデンプン
・膠:主成分は動物由来のゼラチン
・α-オレフィン系接着剤:主成分はイソブレチンと無水マレイン酸との共重合樹脂
・フェノール樹脂系接着剤:主成分はレゾール型フェノール樹脂
・ユリア樹脂系接着剤:主成分は尿素とホルムアルデヒドとの共重合樹脂
・レゾルシノール系接着剤:主成分はレゾルシノール樹脂またはフェノール・レゾルシノール樹
【0026】
(水分散系)
・天然ゴムラテックス接着剤:主成分は天然ラテックス
・アクリル樹脂エマルジョン:主成分はアクリル樹脂エマルジョン
・ウレタン樹脂エマルジョン接着剤:主成分はウレタン樹脂エマルジョン
・エチレン-酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤:主成分はエチレンビニルアルコールと酢酸ビニルを共重合させた樹脂のエマルジョン
・エポキシ樹脂エマルジョン接着剤:主成分はエポキシ樹脂エマルジョン
・水性高分子-イソシアネート系接着剤:主成分は各種親水性高分子の水溶液またはエマルジョン溶液と、架橋剤としてのイソシアネート化合物
・スチレン-ブタジエンゴム系ラテックス接着剤:主成分はラテックス状のスチレンとブタジエンとの共重合体
・ボリビニルアルコール系接着剤:主成分はポリビニルアルコール
【0027】
図10は、本実施形態に係る転写溶液塗布画像例を示す図である。
図10に示されるように、シート40上の画像A2に対して転写溶液が塗布されることで、画像A2を形成している水性インクが当該接着剤に分散し又は溶けため、一層より複雑なマーブリング模様を有する画像A3がシート40上に得られる。
【0028】
<工程4>
再び
図9を参照する。最後に、作成者はシート40のマーブリング模様(画像A3)を媒体50に転写する作業を実施する。即ち、作成者はシート40を画像転写先の媒体50に押し付けてからシート40を取り剥がすことで画像A3を媒体50に転写し、媒体50にマーブリング模様が描画される。なお、転写先の媒体側に転写溶液を先に塗布してからシート40を押し付けてもよい。
【0029】
図11は、本実施形態に係る画像転写媒体例1を示す図である。
図11に示されるように、陶器皿である媒体50上に画像A3のマーブリング模様が転写されたことが分かる。マーブリング模様のインクが乾燥した後は、レジンやコート剤などでコーティングを施すことができる。
【0030】
以上のように本実施形態によれば、簡易な構成によってマーブリング模様を作成することができる。また、作成者の熟練度が必ずしも高くなくとも、複雑なマーブリング模様を容易に作成することが可能となる。
【0031】
図12は、本実施形態に係る画像転写媒体例2を示す図である。
図12に示されるように、写真立枠である媒体50上に画像A3のマーブリング模様が転写された例が示されている。ここで転写作業に際し、写真立枠のように媒体50の形状に合わせて転写しやすいよう、シート40を適宜のサイズにカットすることも可能である。
【0032】
また例えば、媒体50がボトル状の口が小さい容器であって、容器内部にマーブリング模様を施す場合、シート40をカットし、容器口から容器内部にシート40を差し入れてから、容器内部にマーブリング模様を転写すればよい。また、シート40をカットしなくとも、シート40を折り曲げてから容器口から容器内部にシート40を差し入れて、折り曲げられたシート40を展開してから、容器内部にマーブリング模様転写することも可能である。
【0033】
このように本実施形態に係るシート40は、シートゆえその形状の変形が非常に容易なため、様々な媒体50に対して柔軟にマーブリング模様を転写できる。また、壁や建築物など移動できないような不動産に対しても、その場でシートを持参しマーブリング模様を転写できる。即ち、様々な媒体50にマーブリング模様を作成できるため、用途の汎用性も高い。
【0034】
なお、本発明の好適な実施の形態により、特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【0035】
例えば、上述の工程1は省略可能であり、工程2からでもマーブリング模様を作成することは可能である。この場合、工程2では、工程1における画像に代えて所定(任意)の画像をシート40に印刷しうる。
【符号の説明】
【0036】
10 PC
20 撮像装置
30 印刷装置
40 シート
50 媒体
【手続補正書】
【提出日】2017年9月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体にマーブリング模様を描画するマーブリング模様の作成方法であって、
コンピュータのディスプレイに表示されたモアレ縞を含む画像を撮像する工程と、
前記モアレ縞を含む画像を、水性インクを用いて撥水性シートに印刷する工程と、
前記シートに印刷された画像の上に、転写溶液を塗布する工程と、
前記転写溶液が塗布された画像を、前記シートから前記媒体に転写する工程と、
を含むことを特徴とするマーブリング模様の作成方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係るマーブリング模様の作成方法は、媒体にマーブリング模様を描画するマーブリング模様の作成方法であって、
コンピュータのディスプレイに表示されたモアレ縞を含む画像を撮像する工程と、前記モアレ縞を含む水性インクを用いて撥水性シートに印刷する工程と、前記シートに印刷された画像の上に、転写溶液を塗
布する工程と、前記転写溶液が塗
布された画像を、前記シートから前記媒体に転写する工程と、を含む。