【解決手段】リポソームの外側表面に配置した光架橋性修飾核酸を光架橋して、核酸凝集体を形成することによって、リポソーム内部へ核酸凝集体を輸送して、核酸凝集体を内包したリポソームを製造する方法。
リポソームの外側表面に配置した光架橋性修飾核酸を光架橋して、核酸凝集体を形成することによって、リポソーム内部へ核酸凝集体を輸送して、核酸凝集体を内包したリポソームを製造する方法。
核酸凝集体が、光架橋性修飾核酸によって形成された二重鎖を含む凝集体であり、該二重鎖は二重鎖内の鎖間に光架橋が形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
光架橋性修飾核酸1と光架橋性修飾核酸2は、脂質二重膜の脂質層に親和性ある部分を有する脂質親和性化合物を結合されており、該脂質親和性化合物の脂質親和性部分によってリポソームの外側表面に配置可能であり、
光架橋性修飾核酸1と光架橋性修飾核酸2は、少なくともいずれかが、リポソーム内部へ輸送される薬剤を結合されている、請求項9に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リポソームはその構造そのものが最安定な構造をしており、様々な脂質を用いてリポソームを作成することによって、リポソームの安定性、血中滞留性、標的集積性などを精密に制御することができる。しかし、そのような安定な構造であるために、いったん形成されたリポソームでは、脂質二重膜の表面が親水性、内部は疎水性となり、膜の内外で物質交換がされにくい構造となっている。大きな濃度勾配によって、リポソームの外部から薬剤を導入する手法はあるが、精密に制御されたリポソームに対して過酷な条件であり、またリポソーム内に導入されない薬剤の損失割合も多いため、大きな濃度勾配によらずに、リポソーム内へ薬剤を導入して薬剤内包リポソームを調整する新規な手段が求められていた。
【0009】
したがって、本発明の目的は、リポソームの外部から内部へ、物質を輸送して内包させるための新規な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、リポソームの脂質二重膜を通過して、外部から内部へ物質を輸送して内包させるための手段を鋭意研究してきたところ、所定条件の下で、リポソーム外部の表面において光反応性架橋剤によって核酸を連結させると、リポソーム内部へこれらの外部物質が取り込まれることを発見して、本発明に到達した。
【0011】
したがって、本発明は次の(1)以下を含む。
(1)
リポソームの外側表面に配置した光架橋性修飾核酸を光架橋して、核酸凝集体を形成することによって、リポソーム内部へ核酸凝集体を輸送して、核酸凝集体を内包したリポソームを製造する方法。
(2)
光架橋性修飾核酸が、
脂質二重膜の脂質層に親和性ある部分を有する脂質親和性化合物を結合されており、
該脂質親和性化合物の脂質親和性部分によってリポソームの外側表面に配置されている、(1)に記載の製造方法。
(3)
脂質親和性化合物が結合した光架橋性修飾核酸を、リポソームに添加することによって、リポソームの外側表面に配置する、(2)に記載の製造方法。
(4)
光架橋性修飾核酸が、リポソーム内部へ輸送される薬剤を結合されており、
核酸凝集体を内包したリポソームが、薬剤を内包したリポソームである、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)
光架橋性修飾核酸が、
光架橋性ヌクレオシドアナログを、天然の核酸塩基のヌクレオシドに置換されて塩基配列中に備えている、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)
光架橋性ヌクレオシドアナログが、ヌクレオシドアナログの塩基部分として、次の式Iで表される基を有する光架橋性人工塩基を備えている、(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法:
(I)
(ただし、式I中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子である)。
(7)
核酸凝集体が、光架橋性修飾核酸によって形成された二重鎖を含む凝集体であり、該二重鎖は二重鎖内の鎖間に光架橋が形成されている、(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)
核酸凝集体の形成によって、負電荷の集中する領域が形成される、(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)
光架橋性修飾核酸として、光架橋性修飾核酸1と、光架橋性修飾核酸2を有し、
光架橋性修飾核酸1は、二重鎖部分と一重鎖のループ部分を備えたヘアピン構造を形成可能な塩基配列を有しており、ヘアピン構造の二重鎖部分の3’末端側にはさらに一重鎖部分を備えており、ヘアピン構造の二重鎖部分の5’末端側には一重鎖部分を備えておらず、
光架橋性修飾核酸1の5’末端側から始まる二重鎖部分の塩基配列とループ部分の塩基配列を、あわせてBL配列とし、
光架橋性修飾核酸1の3’末端側に位置する二重鎖部分の塩基配列と3’末端までさらに続く一重鎖部分を、あわせてOR配列とし、
光架橋性修飾核酸2は、二重鎖部分と一重鎖のループ部分を備えたヘアピン構造を形成可能な塩基配列を有しており、ヘアピン構造の二重鎖部分の3’末端側には一重鎖部分を備えておらず、ヘアピン構造の二重鎖部分の5’末端側にはさらに一重鎖部分を備えており、
光架橋性修飾核酸2の5’末端側から始まる一重鎖部分の塩基配列とそれに続く二重鎖部分の塩基配列を、あわせてBL配列とし、
光架橋性修飾核酸2のループ部分の塩基配列と3’末端側に位置する二重鎖部分の塩基配列を、あわせてOR配列とし、
BL配列は、BL配列とBL配列とが二重鎖を形成可能な配列であり、
BL配列は、光架橋性ヌクレオシドアナログが、天然の核酸塩基のヌクレオシドに置換されて塩基配列中に備えており、該光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な位置に光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な塩基を有しており、
OR配列は、OR配列とOR配列とが二重鎖を形成可能な配列であり、
OR配列は、光架橋性ヌクレオシドアナログが、天然の核酸塩基のヌクレオシドに置換されて塩基配列中に備えており、該光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な位置に光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な塩基を有しており、
トリガー核酸は、その塩基配列がOR配列又はBL配列である核酸であり、
光架橋性修飾核酸1と、光架橋性修飾核酸2とが、トリガー核酸を添加することによって、ハイブリダイゼーションチェインリアクション(HCR)にしたがって二重鎖の形成と伸長が進行して、核酸凝集体が形成される、(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)
光架橋性修飾核酸1と光架橋性修飾核酸2は、脂質二重膜の脂質層に親和性ある部分を有する脂質親和性化合物を結合されており、該脂質親和性化合物の脂質親和性部分によってリポソームの外側表面に配置可能であり、
光架橋性修飾核酸1と光架橋性修飾核酸2は、少なくともいずれかが、リポソーム内部へ輸送される薬剤を結合されている、(9)に記載の製造方法。
(11)
二重鎖の形成と伸長の進行の間に、光照射を行って光架橋を形成する、(9)〜(10)のいずれかに記載の製造方法。
(12)
光架橋性修飾核酸として、光架橋性修飾核酸1と、光架橋性修飾核酸2を有する、薬剤内包リポソーム製造用キットであって、
光架橋性修飾核酸1と光架橋性修飾核酸2は、脂質二重膜の脂質層に親和性ある部分を有する脂質親和性化合物を結合されており、該脂質親和性化合物の脂質親和性部分によってリポソームの外側表面に配置可能であり、
光架橋性修飾核酸1と光架橋性修飾核酸2は、少なくともいずれかが、リポソーム内部へ輸送される薬剤を結合されており、
光架橋性修飾核酸1は、二重鎖部分と一重鎖のループ部分を備えたヘアピン構造を形成可能な塩基配列を有しており、ヘアピン構造の二重鎖部分の3’末端側にはさらに一重鎖部分を備えており、ヘアピン構造の二重鎖部分の5’末端側には一重鎖部分を備えておらず、
光架橋性修飾核酸1の5’末端側から始まる二重鎖部分の塩基配列とループ部分の塩基配列を、あわせてBL配列とし、
光架橋性修飾核酸1の3’末端側に位置する二重鎖部分の塩基配列と3’末端までさらに続く一重鎖部分を、あわせてOR配列とし、
光架橋性修飾核酸2は、二重鎖部分と一重鎖のループ部分を備えたヘアピン構造を形成可能な塩基配列を有しており、ヘアピン構造の二重鎖部分の3’末端側には一重鎖部分を備えておらず、ヘアピン構造の二重鎖部分の5’末端側にはさらに一重鎖部分を備えており、
光架橋性修飾核酸2の5’末端側から始まる一重鎖部分の塩基配列とそれに続く二重鎖部分の塩基配列を、あわせてBL配列とし、
光架橋性修飾核酸2のループ部分の塩基配列と3’末端側に位置する二重鎖部分の塩基配列を、あわせてOR配列とし、
BL配列は、BL配列とBL配列とが二重鎖を形成可能な配列であり、
BL配列は、光架橋性ヌクレオシドアナログが、天然の核酸塩基のヌクレオシドに置換されて塩基配列中に備えており、該光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な位置に光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な塩基を有しており、
OR配列は、OR配列とOR配列とが二重鎖を形成可能な配列であり、
OR配列は、光架橋性ヌクレオシドアナログが、天然の核酸塩基のヌクレオシドに置換されて塩基配列中に備えており、該光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な位置に光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な塩基を有しており、
光架橋性修飾核酸1と、光架橋性修飾核酸2とが、トリガー核酸を添加することによって、ハイブリダイゼーションチェインリアクション(HCR)にしたがって二重鎖の形成と伸長が進行して、核酸凝集体を形成可能であり、
二重鎖の形成と伸長の進行の間に、光照射を行って光架橋を形成可能である、キット。
(13)
光架橋性修飾核酸1と、光架橋性修飾核酸2とが、リポソームの外側表面に配置された形態である、(12)に記載のキット。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リポソームの外部から内部へ、物質(薬剤)を輸送して内包させることができる。本発明によれば、大きな濃度勾配によらずに、リポソーム内へ薬剤を導入して薬剤内包リポソームを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
具体的な実施の形態をあげて、以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、以下にあげる具体的な実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
[リポソーム内部への物質輸送]
本発明によれば、リポソームの外側表面に配置した光架橋性修飾核酸を光架橋して、核酸凝集体を形成することによって、リポソーム内部へ核酸凝集体を輸送して、核酸凝集体を内包したリポソームを製造することができる。この光架橋性修飾核酸には、薬剤を結合するものとできるから、核酸凝集体を内包したリポソームの製造は、すなわち、薬剤を内包したリポソームの製造となる。
【0016】
[光架橋性修飾核酸]
光架橋性修飾核酸は、光架橋性ヌクレオシドアナログを、天然の核酸塩基のヌクレオシドに置換されて、リン酸ジエステル結合によって結合して、塩基配列中に備えている。
【0017】
[光架橋性ヌクレオシドアナログ]
光架橋性ヌクレオシドアナログとして、公知の光架橋性ヌクレオシドアナログを使用することができる。例えば、特許文献1、2に開示された5−シアノビニルデオキシウリジン構造を有する光架橋性ヌクレオシドアナログを使用することができ、特許文献3、4に開示された3−ビニルカルバゾール構造を有する光架橋性ヌクレオシドアナログを使用することができる。
【0018】
好適な実施の態様において、光架橋性ヌクレオシドアナログが、ヌクレオシドアナログの塩基部分として、次の式Iで表される基を有する光架橋性人工塩基を備えている:
(I)
【0019】
式I中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子である。
【0020】
式I中、R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子である。
【0021】
アルコキシカルボニル基としては、例えばC2〜C7、好ましくはC2〜C6、C2〜C5、C2〜C4、さらに好ましくはC2〜C3、特に好ましくはC2のものを使用できる。
【0022】
好適な実施の態様において、R11を、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はC2〜C7のアルコキシカルボニル基とすることができ、R12及びR13を水素原子とすることができる。
【0023】
上記の光架橋性ヌクレオシドアナログが導入された一重鎖の光架橋性修飾核酸は、通常の核酸と同様に、二重鎖を形成することができる。二重鎖の形成にあたり、光架橋性人工塩基と相補的な位置に位置する天然の核酸塩基としては、特に制約はない。このように二重鎖が形成された後に、光照射すると、光架橋性人工塩基は、光架橋可能な位置に配置されたピリミジン塩基との間に光架橋を形成する。照射する光は、例えば340nm〜390nmの範囲の波長を含む光とすることができる。ピリミジン塩基としては、例えば、チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U)、5−メチルシトシン、5−ヒドロキシメチルシトシンをあげることができ、好ましくはチミン(T)、シトシン(C)をあげることができる。光架橋可能な位置とは、二重鎖を形成した相補的な塩基配列中において、光架橋性人工塩基と相補的な位置にある塩基から1塩基だけ5’末端側の位置である。
【0024】
好適な実施の態様において、次の式II又は式IIIで表される光架橋性ヌクレオシドアナログを使用することができる:
(II)
【0025】
式IIにおいて、R11、R12及びR13は、それぞれ式Iにおいて記載した基である。R21は、水素原子又は水酸基である。
【0027】
式IIIにおいて、R11、R12及びR13は、それぞれ式Iにおいて記載した基である。R31は、水素原子又はC1〜C3のアルキル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0028】
[脂質親和性化合物]
光架橋性修飾核酸は、脂質二重膜の脂質層に親和性ある部分を有する脂質親和性化合物を結合されており、この脂質親和性化合物の脂質親和性部分によってリポソームの外側表面に配置されている。このような脂質親和性化合物として、脂質二重膜の脂質層に親和性ある部分を有する公知の化合物を使用することができ、例えば、脂質をあげることができる。脂質としては、例えば、アシルグリセロール、セラミド、リン脂質(例えばスフィンゴリン脂質、グリセロリン脂質)、糖脂質(例えばスフィンゴ糖脂質、グリセロ糖脂質)、リポタンパク質、スルホ脂質、あるいは誘導脂質(例えば脂肪酸、テルペノイド、ステロイド、カロテノイド)をあげることができる。好ましくは、脂質として、例えばステロイド、好ましくはステロール、特に好ましくはコレステロールをあげることができる。この脂質親和性化合物は、光架橋性修飾核酸を、脂質二重膜に配置するための、いわばアンカーのように作用するものであるので、適度なアンカーの作用を考慮して、当業者は適宜選択することができる。好適な実施の態様において、リポソームの調整に用いた脂質と同じ脂質を、脂質親和性化合物として使用することができる。
【0029】
[リポソーム内部へ輸送される薬剤]
光架橋性修飾核酸は、リポソーム内部へ輸送される薬剤を、結合している。このような薬剤としては、特に制限はなく、本発明によるリポソーム内部への輸送を妨げないものであれば使用できる。
【0030】
リポソーム内部へ輸送される薬剤として、他の薬剤を結合可能である化合物を使用することもできる。すなわち、リポソーム内部へ輸送される薬剤として、他の薬剤を結合可能である化合物を使用して、いったん光架橋性修飾核酸を調整して、リポソームの外側表面上に配置しておいた後に、さらに所望の薬剤を結合させて、リポソーム内部への輸送を行うことができる。
【0031】
[リポソーム]
本発明のリポソームは、脂質二重膜を備えたリポソームであり、公知の手段によって調整することができる。そして、脂質親和性化合物が結合した光架橋性修飾核酸を、そのリポソーム外部表面に配置する。好適な実施の態様において、この配置は、例えば、脂質親和性化合物が結合した光架橋性修飾核酸を、リポソームに添加するという簡便な手段により、実現することができる。
【0032】
リポソームの調整の公知の手段として、例えば、静置水和法、界面通過法、Electro−formation法、油中水滴エマルション遠心沈降法、Microfluidics法をあげることができる。静置水和法では、例えば、アルコールを含む有機溶媒相へ脂質を溶解した後に、乾燥して、乾燥した脂質膜を形成し、その後に、水を添加して水和させて、リポソームを形成する。
【0033】
リポソームは、脂質二重膜を形成可能な脂質を用いて、調整することができる。脂質として、例えば、アシルグリセロール、セラミド、リン脂質(例えばスフィンゴリン脂質、グリセロリン脂質)、糖脂質(例えばスフィンゴ糖脂質、グリセロ糖脂質)、リポタンパク質、スルホ脂質、あるいは誘導脂質(例えば脂肪酸、テルペノイド、ステロイド、カロテノイド)をあげることができる。好ましくは、脂質として、例えばステロイド、好ましくはステロール、特に好ましくはコレステロールをあげることができる。
【0034】
[リポソーム内部への核酸凝集体の輸送]
核酸凝集体が形成されると、核酸による負電荷が集中した領域が生じる。本発明による核酸凝集体のリポソーム内部への輸送は、この負電荷の集中によって生じているのではないかと、本発明者は考えている。核酸凝集体が、このように輸送されるために、この核酸凝集体を構成している光架橋性修飾核酸と、そこに結合した薬剤は、当然にリポソーム内部へと輸送される。この輸送は、おそらくは小さなリポソーム、すなわち、リポソームの外部の脂質二重膜の一部が、あたかもエンドサイトーシスによって、ちぎれて内部へ陥入して小胞を形成するかのように、小さなリポソームを形成して生じているのではないかと、本発明者は考えている。したがって、リポソームの二重膜を物理的に破壊して導入したかのような内包とは、異なった内包状態となっている。
【0035】
[ハイブリダイゼーションチェインリアクション(HCR)による核酸凝集体の形成]
好適な実施の態様において、ハイブリダイゼーションチェインリアクション(HCR)によって核酸凝集体を形成して、リポソーム内部へ核酸凝集体を輸送することができる。
【0036】
この態様において、光架橋性修飾核酸として、光架橋性修飾核酸1と、光架橋性修飾核酸2を用いる。さらにHCRの開始のために、トリガー核酸を用いる。
【0037】
光架橋性修飾核酸1は、二重鎖部分と一重鎖のループ部分を備えたヘアピン構造を形成可能な塩基配列を有している。そして、ヘアピン構造の二重鎖部分の3’末端側にはさらに一重鎖部分を備えている。しかし、ヘアピン構造の二重鎖部分の5’末端側には一重鎖部分を備えていない。
【0038】
光架橋性修飾核酸1の5’末端側から始まる二重鎖部分の塩基配列とループ部分の塩基配列を、あわせてBL配列とする。光架橋性修飾核酸1の3’末端側に位置する二重鎖部分の塩基配列と3’末端までさらに続く一重鎖部分を、あわせてOR配列とする。
【0039】
光架橋性修飾核酸2は、二重鎖部分と一重鎖のループ部分を備えたヘアピン構造を形成可能な塩基配列を有している。そして、ヘアピン構造の二重鎖部分の3’末端側には一重鎖部分を備えていない。しかし、ヘアピン構造の二重鎖部分の5’末端側にはさらに一重鎖部分を備えている。
【0040】
光架橋性修飾核酸2の5’末端側から始まる一重鎖部分の塩基配列とそれに続く二重鎖部分の塩基配列を、あわせてBL配列とする。光架橋性修飾核酸2のループ部分の塩基配列と3’末端側に位置する二重鎖部分の塩基配列を、あわせてOR配列とする。
【0041】
BL配列は、BL配列とBL配列とが二重鎖を形成可能な配列である。BL配列は、光架橋性ヌクレオシドアナログが、天然の核酸塩基のヌクレオシドに置換されて塩基配列中に備えており、該光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な位置に光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な塩基を有している。
【0042】
OR配列は、OR配列とOR配列とが二重鎖を形成可能な配列である。OR配列は、光架橋性ヌクレオシドアナログが、天然の核酸塩基のヌクレオシドに置換されて塩基配列中に備えており、該光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な位置に光架橋性ヌクレオシドアナログが光架橋可能な塩基を有している。
【0043】
トリガー核酸は、その塩基配列がOR配列又はBL配列である核酸である。
【0044】
光架橋性修飾核酸1と、光架橋性修飾核酸2とは、トリガー核酸を添加することによって、ハイブリダイゼーションチェインリアクション(HCR)にしたがって、ヘアピン構造を交互に開裂しながら、二重鎖の形成と伸長が進行する。このハイブリダイゼーションチェインリアクション(HCR)の進行原理は、後述する実施例において、説明図を用いてさらに詳細に説明する。
【0045】
[HCRにおける光架橋の貢献]
本来は、核酸による二重鎖の形成と開裂は可逆的な反応であって熱力学的な安定性にしたがってある程度の速度によってしか進行しないはずである。そして、そのような条件下で、ハイブリダイゼーションチェインリアクション(HCR)を進行させたとしても、核酸凝集体の形成は、おそらくはその形成速度のために不十分なものとなり、リポソーム内部への核酸凝集体の輸送は生じない。しかし、ハイブリダイゼーションチェインリアクション(HCR)の進行において、光架橋性修飾核酸1、2による光架橋が生じると、二重鎖の形成は光架橋によって不可逆なものとなり、二重鎖の伸長は極めて迅速に進行する。おそらくはこの速度のために、核酸凝集体の形成は、リポソーム内部への核酸凝集体の輸送が生じるために、十分な状態に達する。
【0046】
[光架橋のための光照射]
光架橋のための光照射は、HCRの進行に寄与するために、HCRの進行中に連続して、又は断続的に行うことができる。照射時間は、HCRの進行に応じて、適宜変更することができるが、光架橋による寄与が非常に大きいために、好適な実施の態様において、例えば30秒〜120秒程度の照射で、十分にHCRを進行させることができる。
【0047】
照射の際の温度は、本来であればHCRの進行のために温度の最適化が必要なところ、光架橋による寄与が非常に大きいために、好適な実施の態様において、例えば1℃〜30℃、好ましくは1℃〜25℃、さらに好ましくは1℃〜20℃、さらに好ましくは1℃〜15℃で行うことができる。温度が低いほど、リポソーム内部への核酸凝集体の輸送が、促進される。
【0048】
[光架橋性修飾核酸の鎖長]
光架橋性修飾核酸の鎖長は、長いほど、リポソーム内部への核酸凝集体の輸送が、促進される。例えば、塩基配列の長さとして、10塩基以上、12塩基以上、14塩基以上、16塩基以上、18塩基以上、20塩基以上、22塩基以上とすることができる。リポソーム内部への核酸凝集体の輸送が妨げられない限り、特に鎖長の上限はないが、例えば100000塩基以下、5000塩基以下、1000塩基以下、500塩基以下、100塩基以下とすることができる。本来であればHCRの進行のために鎖長を制限しなければならないところ、光架橋による寄与が非常に大きいために、上記のような傾向となっていると考えられる。
【0049】
[トリガー核酸の配列特異性と光架橋性修飾核酸のセットの複数使用]
トリガー核酸は、これがHCRで反応開始のトリガーとなるために、高い配列特異性を必要とする。つまり、異なる配列の核酸が存在しても、トリガーにはならない。そのために、光架橋性修飾核酸として、光架橋性修飾核酸1と光架橋性修飾核酸2のセットの他に、例えば、光架橋性修飾核酸3と光架橋性核酸4のセットが、同時にリポソームの外部表面上に存在していたとしても、それぞれのセットに対応した正しい配列のトリガー核酸を使用しなければ、リポソーム内部への核酸凝集体の輸送は生じない。したがって、光架橋性修飾核酸のセットを、異なる物質輸送のために、リポソームの外部表面に同時に存在させたとしても、それぞれのセットに対応した正しい配列のトリガー核酸を使用することで、独立して、リポソーム内部への輸送を制御することができる。このような、光架橋性修飾核酸の複数のセットを、同時に使用する態様も、本発明の範囲内にある。
【0050】
[複数の薬剤の使用]
光架橋性修飾核酸1と、光架橋性修飾核酸2は、これらに同じ薬剤を結合して、リポソーム内部に輸送してもよいが、これらに異なる薬剤を結合してもよい。また、光架橋性修飾核酸1及び2の分子集団において、異なる複数の薬剤を結合させてもよく、さらに、その薬剤の結合の比率を変えることで、リポソーム内部に輸送される薬剤の種類や比率を制御してもよい。このような複数の薬剤を使用する態様も、本発明の範囲内にある。このように、従来の技術では困難であった、内包される薬剤の種類や比率の精密な制御を、本発明によれば実現できる。
【0051】
[遊離の核酸のトリガーとしての使用]
トリガー核酸は、上述の通り、高い配列特異性を求められ、そのような配列を準備して添加する。しかし、準備した核酸を添加するのではなく、その配列の遊離の核酸が存在していることを検出して、それをトリガーとして、リポソーム内部への輸送を開始することもできる。このように、遊離の核酸をトリガーとして使用する態様も、本発明の範囲内にある。
【0052】
[薬剤内包リポソーム製造用キット]
本発明は、上述のように、核酸凝集体を内包したリポソームの製造方法にもあり、薬剤を内包したリポソームの製造方法にもある。そして、これらを実現するキットにもあり、すなわち、例えば上記した光架橋性修飾核酸1と光架橋性修飾核酸2を有するキットにもあり、光架橋性修飾核酸1と光架橋性修飾核酸2とトリガー核酸を有するキットにもある。
【実施例】
【0053】
以下に実施例をあげて、本発明を詳細に説明する。本発明は、以下に例示する実施例に限定されるものではない。
【0054】
[リポソームの作成]
実験で用いたリポソームは静置水和法により作成した。試験管内に20μLの2mM DOPC(クロロホルム溶液)と12μLの10mMグルコース(メタノール溶液)、2mMコレステロール(メタノール溶液)を加え、窒素を吹きかけ乾燥させた。その後、真空ポンプを用いて一晩乾燥させた。翌日200μLの水を加え、37℃で2時間以上水和させ、リポソームを作成した。
【0055】
[実験で使用したDNA鎖]
実験で使用したDNA鎖はリポソーム表面を修飾するため、5’末端にコレステロール(Ch)を付与した。また、共焦点顕微鏡で観察するために3’末端に蛍光色素であるCy3を付与したDNA鎖を合成した。
【0056】
[光機能化リポソームの作成]
リポソーム水溶液10μLに対してDNAを終濃度1μMになるように加え、室温で30分以上静置した。その後、リポソームの観察を行い、リポソーム表面にDNA由来のCy3蛍光を確認した。光照射は温度を制御した条件下で366nmの光を2時間照射した。
【0057】
[実験例1]
実験で用いた配列を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
核酸配列中の
cnvKの位置には、天然のヌクレオシドに代えて、
cnvKで示される光架橋性人工ヌクレオシド(ヌクレオシドアナログ)が導入されている。この
cnvKで示される人工ヌクレオシドの構造を次式に示す:
【0060】
Chで示される位置には、コレステロールが付与されている。コレステロール(DNA合成用の5’−Cholesterol−TEG−phosphoramidite)の構造を次式に示す:
【0061】
DNA鎖中でのCholesterolの構造を次式に示す:
【0062】
[リポソーム内部へのDNAの取り込み]
上記のDNAをリポソームに添加した後、4℃で2時間光照射を行い、共焦点顕微鏡により観察した。
【0063】
光照射前には、リポソーム内部に蛍光は確認できないが、光照射後にはリポソーム内部にDNA由来のCy3蛍光が確認できた。光刺激によりリポソーム表面にDNAが凝集し、負電荷が集まったため、リポソーム表面の一部がリポソーム内部に取り込まれて、小さなリポソームができたと考えられる。このように、リポソーム表面のDNAを内部に取り込むことに成功した。
【0064】
この光照射によるリポソーム内部へのDNAの取り込みの流れを示す説明図を
図1a、
図1bに示す。光照射前と光照射後の顕微鏡写真を
図1cに示す。
図1cにおいて、視野中のリポソームは直径約3μmである。
【0065】
共焦点顕微鏡での観察は、次のような手順で行った。スライドガラス上にプラスチック製の薄いシートを貼り付けた。プラスチック製のシートの中央部には穴があいており、そこにリポソーム溶液をキャストし、上からもカバーガラスで挟み込み固定した。これを共焦点顕微鏡で測定した。視野は最初200μm×200μm四方で測定し、リポソームを探し、その後、リポソームを測定するために拡大した。
【0066】
[DNA取り込みの温度依存性]
このリポソーム内部への取り込みがDNAナノ構造体の構築により誘起されているかどうかを確認するため、光照射時の温度を変化させた際の変化を共焦点顕微鏡により観察した。光照射時の温度を4℃、25℃、37℃と変化させた。この結果を
図2にまとめて示す。
【0067】
この結果、光照射時の温度が低いほど、リポソーム内部への取り込みが起こりやすいことが明らかとなった。
【0068】
[DNA取り込みの鎖長依存性]
次に鎖長の異なるオリゴDNAを用いた場合の検証を行った。実験で使用した配列を次の表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
これらは、それぞれ二本鎖を形成する鎖長が異なる。これらを用い、4℃で2時間光照射を行った。この結果を
図3にまとめて示す。
【0071】
この結果、DNA鎖長が長いほど、リポソーム内部への取り込みが起こりやすいことが明らかとなった。光照射温度が低ければ低いほど、DNA鎖が長ければ長いほど、DNAナノ構造体を構築しやすく、その結果、リポソーム内部への取り込みが起こりやすいと考えられる。
【0072】
[実験例2]
上記の実験例1では、リポソーム内部へのDNAの取り込みが明らかになった。この取り込みの現象を利用して、DNAをリポソーム内部へ輸送する系をさらに洗練して構築するための実験を行った。そのシステムとして、HCRと呼ばれる増幅系を用い、シグナルDNAをトリガーとしてリポソーム表面にDNAナノ構造体を構築した。ヘアピン型のDNAを用い、リポソームを光機能化した後、トリガーDNAの添加と光照射をトリガーとしてDNAナノ構造が構築された。このシステムの説明のために、リポソーム表面でのHCR反応のイメージの説明図を示す。
図4aはHCRの原理の説明図である。
図4bは、トリガーDNAに依存して光重合が生じて、DNAナノ構造体が構築されたことを示す電気泳動ゲルの写真である。
図4cは、DNAをトリガーとしてリポソームの構造変化が誘起される様子を示す説明図である。実験に使用した配列を表3に示す。
【0073】
図4aには大きな右向きの矢印が3個記載されていて、左端から矢印1、矢印2、矢印3とする。矢印1の左側には、2種類のビーコンプローブA及びBがある。ビーコンプローブはいずれもヘアピン構造を備えており、配列の向きを矢印で示している。プローブの矢印はDNAの向き(5’→3’)を表す。プローブAの配列のうち、矢印の根元からヘアピンの二重鎖部分を経て、ヘアピンのループ部分の終わりまでを青色配列(BL配列)と称し、それに続く二重鎖部分とそこから矢印の先端までの一重鎖部分の配列をオレンジ配列(OR配列)と称する。プローブBの配列のうち、矢印の根元の一重鎖部分とヘアピンの二重鎖部分の配列が青色配列であり、それに続くヘアピンのループ部分とそこから矢印の先端までの相補部分の配列が、オレンジ配列である。青色配列とオレンジ配列は、それぞれが相補鎖を形成するように設計されている。すなわち、青色配列と青色配列で二重鎖を形成し、オレンジ配列とオレンジ配列で二重鎖を形成する。トリガーDNAはその全体がオレンジ配列である。このプローブAとBに、トリガーDNA(矢印1の上側)を投入すると、プローブAの矢印の先端のオレンジ配列の一重鎖部分に対して、オレンジ配列であるトリガーDNAが相補鎖を形成する(矢印1の下側)。相補鎖の形成が進むことによってプローブAのヘアピン構造の二重鎖部分が開裂して、プローブAの矢印先端側のオレンジ配列とトリガーDNAのオレンジ配列が二重鎖を形成し、プローブAの矢印根元側の青色配列が一重鎖となった状態の構造が生じる(矢印1の左側)。このようにトリガーDNAとの二重鎖を形成して開裂した状態の構造のプローブAに、ヘアピン構造のプローブBが加わると(矢印2の上側)、開裂したプローブAの一重鎖となった青色配列に対して、ヘアピン構造のプローブBの一重鎖部分である青色配列が、相補鎖を形成する(矢印2の下側)。相補鎖の形成が進むことによってプローブBのヘアピン構造の二重鎖部分が開裂して、上記のプローブAの矢印根元側の青色配列とプローブBの矢印根元側の青色配列が二重鎖を形成して、プローブBの矢印先端側のオレンジ配列が一重鎖となった状態の構造が生じる(矢印2の左側)。このようにプローブAとの二重鎖を形成して開裂した状態のプローブBに、ヘアピン構造のプローブBが加わると(矢印3の上側)、開裂したプローブBの一重鎖となったオレンジ配列に対して、ヘアピン構造のプローブAの一重鎖部分であるオレンジ配列が、相補鎖を形成する。このように、プローブAとプローブBとが、交互に開裂して、結果として二重鎖構造が伸長してゆく(矢印3の左側)。
【0074】
この二重鎖構造の伸長は、相補鎖の形成によるものであるが、プローブに光架橋性ヌクレオシドアナログを導入しておくことにより、光架橋を形成させると、相補鎖の形成は不可逆的なものにすることができるから、効率的な二重鎖構造の伸長が可能になる。
【0075】
【表3】
【0076】
表3に示すビーコン1において、5’末端にはCh(コレステロール)が付加されており、Chが付加されているTから・・・
cnvKCTまでが上述の青色配列に対応しており、この次のAから3’末端のAまでが上述のオレンジ配列に対応する。ビーコン1の3’末端にはCy3が付加されている。ビーコン2において、5’末端にはCh(コレステロール)が付加されており、Chが付加されているAから・・・CCAGAまでが上述の青色配列に対応しており、この次のTから3’末端のTまでが上述のオレンジ配列に対応する。ビーコン2の3’末端にはCy3が付加されている。ODN1はその全体が上述のオレンジ配列になっている。
【0077】
図4dに、表3に示すODN1とビーコンプローブ1、2から形成される二重鎖の様子の説明図を示す。
図4dにおいて、
cnvKは相補鎖の対応する塩基とそれぞれ光架橋している。ChとCy3は、それぞれ相補鎖の外にあって、ビーコンプローブとの結合を維持している。
図4eにこの二重鎖が形成される流れの説明図を示す。
【0078】
実験例1と同様に作成したリポソームにBeacon1とBeacon2を終濃度1μMになるように添加した。その後トリガーとなるODN1を終濃度10mMになるように添加し、光照射を4℃で5時間行った。
【0079】
光機能化リポソームを作成後、外部からDNAを導入し、リポソーム内部へのDNA輸送を確認したところ、ODN1のトリガーとして正しい配列を用いた場合にのみ、リポソーム内部へDNAが輸送されていることが明らかとなった。
【0080】
外部DNAによるリポソーム内部へのDNA輸送の説明図を、
図5aに示す。
図5bは、このようなDNA輸送が、マッチするODN1を用いた場合の光照射では起こり、マッチしないODN2を用いた場合の光照射では起こらないことを示す顕微鏡写真である。
【0081】
このように、トリガーDNAに様々な修飾を施すことにより、リポソーム内部への輸送が可能となり、リポソームを用いたドラックデリバリーにおける薬剤内包技術として利用可能であることがわかった。
【0082】
[実験例3]
光架橋素子(光架橋性ヌクレオシドアナログ)として上記の実験で使用した
CNVKの他に、
CNVD、psoralenを用いた場合を比較した。
CNVDで表される光架橋性ヌクレオシドアナログの構造を次に示す:
【0083】
[リポソームの作成]
実験で用いたリポソームは静置水和法により作成した。試験管内に20μLの2mMDOPC(クロロホルム溶液)と12μLの10mMグルコース(メタノール溶液)、2mMコレステロール(メタノール溶液)を加え、窒素を吹きかけ乾燥させた。その後、真空ポンプを用いて一晩乾燥させた。翌日200μLの水を加え、37℃で2時間以上水和させ、リポソームを作成した。
【0084】
[実験で使用したDNA鎖]
実験で使用したDNA鎖はリポソーム表面を修飾するため、5’末端にコレステロールを付与した。また、共焦点顕微鏡で観察するために3’末端に蛍光色素であるCy3を付与したDNA鎖を合成した。実験で使用した配列を次の表4にまとめて示す。
【0085】
【表4】
Ch : コレステロール, Cy3 : 蛍光色素
X =
CNVK、
CNVD、psoralen
【0086】
上記のDNAをリポソームに添加した後、4℃で光照射を行い、共焦点顕微鏡により観察した。また、変性PAGEにより重合度の変化を確認した。この実験の結果を
図6にまとめて示す。
【0087】
共焦点顕微鏡による観察の結果、
CNVK、
CNVDを含むオリゴDNAを用いた場合には光照射によるリポソームの構造変化が確認できた。一方、psoralenを用いた場合にはリポソームの構造変化は確認できなかった。また、変性PAGEの結果からも、psoralenは
CNVK、
CNVDと比較して重合度が少ないことから、光架橋の速度が非常に重要であることがわかった。