【解決手段】毛髪用組成物は、スクワラン及び下記一般式(I)で表される液状エステル(I)が配合されたものであり、毛髪処理方法は、その毛髪用組成物を使用するものである。
前記液状エステル(I−1)として、イソパルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、及びイソステアリン酸2−オクチルドデシルから選ばれた一種又は二種以上が配合された請求項2に記載の毛髪用組成物。
前記液状エステル(I−2)として、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、及びステアリン酸2−ヘキシルデシルから選ばれた一種又は二種以上が配合された請求項4に記載の毛髪用組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献は、毛髪感触を変化させる組成物の評価を、官能で行ったことを開示するに留まり、実際の水分保持性を高める組成物を開示してはいない。また、毛髪における細胞膜複合体(CMC)は、水分保持性能に関与するといわれているが、そのCMCへの作用に関する記載は、上記特許文献には一切ない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、毛髪の水分保持性の向上、及び細胞膜複合体への作用の少なくとも一方を実現できる毛髪用組成物、並びに、その組成物を使用する毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、スクワランと特定のエステルとの併用が、毛髪の水分保持性の向上、及び、細胞膜複合体における脂質層(β層)の厚みの増加に適することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る毛髪用組成物は、下記成分(A)及び(B)が配合されたことを特徴とする。
(A)スクワラン
(B)下記一般式(I)で表される液状エステル(I)
R
1COO−R
2 (I)
[上記一般式(I)において、R
1COOは炭素数が12以上18以下である飽和脂肪酸残基を表し、R
2は炭素数が8以上20以下である飽和炭化水素基を表す。]
【0009】
本発明に係る毛髪用組成物は、例えば、前記(B)成分として下記一般式(I−1)で表される液状エステル(I−1)が配合されたものである。
R
3COO−R
4 (I−1)
[上記一般式(I−1)において、R
3COOは炭素数が12以上18以下である分岐状の飽和脂肪酸残基を表し、R
4は炭素数が8以上20以下である分岐状の飽和炭化水素基を表す。]
【0010】
本発明に係る毛髪用組成物に液状エステル(I−1)を配合する場合、その液状エステル(I−1)は、例えば、イソパルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、及びイソステアリン酸2−オクチルドデシルから選ばれた一種又は二種以上である。
【0011】
また、本発明に係る毛髪用組成物は、例えば、前記(B)成分として下記一般式(I−2)で表される液状エステル(I−2)が配合されたものである。
R
5COO−R
6 (I−2)
[上記一般式(I−2)において、R
5COOは炭素数が12以上18以下である直鎖状の飽和脂肪酸残基を表し、R
6は炭素数が8以上20以下である分岐状の飽和炭化水素基を表す。]
【0012】
本発明に係る毛髪用組成物に液状エステル(I−2)を配合する場合、その液状エステル(I−2)は、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、及びステアリン酸2−ヘキシルデシルから選ばれた一種又は二種以上である。
【0013】
本発明に係る毛髪用組成物は、例えば、洗い流すトリートメント、洗い流さないトリートメント、又は毛髪洗浄剤として用いられる。
【0014】
本発明に係る毛髪処理方法は、本発明に係る毛髪用組成物を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スクワラン及び特定の液状エステルが配合されているので、毛髪の水分保持性の向上、又は、細胞膜複合体における脂質層(β層)の厚みの増加を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る毛髪用組成物は、下記成分(A)及び(B)が配合されたものである。
(A)スクワラン
(B)後記液状エステル(I)
また、実使用上許容されるのであれば、公知の毛髪用組成物に配合されている原料を、更に配合しても良い。
【0018】
毛髪の水分保持性は、成分(A)及び(B)の双方を配合すれば、いずれか一方を配合するよりも向上する。また、成分(A)及び(B)の双方の配合により、毛髪の細胞膜複合体(CMC)における脂質層(β層)の厚みの増加が確認されている。前者の水分保持性能の向上と、後者のβ層の厚みの増加は、相関すると考えられる。すなわち、CMCはβ層と当該β層内のタンパク質層(δ層)とで構成されているところ、水分保持の観点からは、δ層よりも疎水性が高いβ層の厚みが、水分保持性に関与する水分蒸散抑制に寄与すると考えられる。
【0019】
本実施形態における成分(A)であるスクワランは、公知である。このスクワランとしては、例えば、イソプレンを重合して得られる合成スクワラン、オリーブ油、コメヌカ、ゴマ種子などの植物由来物から得られるスクワレンを水素添加して得られる植物性スクワラン、及び、サメの肝油から得られるスクワレンを水素添加して得られるスクワランが挙げられる。本実施形態の毛髪用組成物には、公知のスクワランから選ばれた一種又は二種以上が成分(A)として配合される。
【0020】
本実施形態の毛髪用組成物における成分(A)の配合量は、例えば、0.001質量%以上10質量%以下であり、0.002質量%以上5質量%以下が良く、0.004質量%以上3質量%以下が好ましく、0.008質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下が更に好ましい。0.001質量%以上であると、毛髪の水分保持性の向上、又は、細胞膜複合体における脂質層(β層)の厚みの増加がより優れる。10質量%以下であると、本実施形態の毛髪用組成物の低コスト化を図れる。
【0021】
本実施形態における成分(B)である液状エステル(I)は、下記一般式(I)で表されるものである。当該エステル(I)の「液状」とは、20℃以上30℃以下の温度範囲における状態が液状であることを意味する。
R
1COO−R
2 (I)
[上記一般式(I)において、R
1COOは炭素数が12以上18以下である飽和脂肪酸残基を表し、R
2は炭素数が8以上20以下である飽和炭化水素基を表す。]
【0022】
上記R
1COOとしては、例えば、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸残基が挙げられる。また、上記R
2としては、例えば、2−エチルヘキシル基、イソトリデシル基、2−ヘキシルデシル基、イソステアリル基、2−オクチルドデシル基が挙げられる。
【0023】
本実施形態の毛髪用組成物には、公知の液状エステル(I)から選ばれた一種又は二種以上が成分(A)として配合される。本実施形態の毛髪用組成物において、成分(B)である液状エステル(I)の配合量は、例えば、0.001質量%以上10質量%以下であり、0.002質量%以上5質量%以下が良く、0.004質量%以上3質量%以下が好ましく、0.008質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下が更に好ましい。0.001質量%以上であると、毛髪の水分保持性の向上、又は、細胞膜複合体における脂質層(β層)の厚みの増加がより優れる。10質量%以下であると、本実施形態の毛髪用組成物の低コスト化を図れる。
【0024】
本実施形態の毛髪用組成物に配合する成分(A)と(B)の質量比は、例えば、1:0.3以上2.5以下である。
【0025】
上記液状エステル(I)としては、例えば、下記一般式(I−1)で表される液状エステル(I−1)が挙げられる。
R
3COO−R
4 (I−1)
[上記一般式(I−1)において、R
3COOは炭素数が12以上18以下である分岐状の飽和脂肪酸残基を表し、R
4は炭素数が8以上20以下である分岐状の飽和炭化水素基を表す。]
【0026】
上記液状エステル(I−1)としては、例えば、イソパルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸2−オクチルドデシルが挙げられる。これらから選ばれた一種又は二種以上が、本実施形態の毛髪用組成物に配合される。
【0027】
本実施形態の毛髪用組成物において、液状エステル(I−1)の配合量は、例えば、0.001質量%以上10質量%以下であり、0.002質量%以上5質量%以下が良く、0.004質量%以上3質量%以下が好ましく、0.008質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下が更に好ましい。0.001質量%以上であると、毛髪の水分保持性の向上、又は、細胞膜複合体における脂質層(β層)の厚みの増加がより優れる。10質量%以下であると、本実施形態の毛髪用組成物の低コスト化を図れる。
【0028】
配合する成分(A)と液状エステル(I−1)の質量比は、例えば、1:0.3以上2.5以下である。
【0029】
また、上記液状エステル(I)としては、下記一般式(I−2)で表される液状エステル(I−2)が挙げられる。
R
5COO−R
6 (I−2)
[上記一般式(I−2)において、R
5COOは炭素数が12以上18以下である直鎖状の飽和脂肪酸残基を表し、R
6は炭素数が8以上20以下である分岐状の飽和炭化水素基を表す。]
【0030】
上記液状エステル(I−2)としては、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシルが挙げられる。これらから選ばれた一種又は二種以上が、本実施形態の毛髪用組成物に配合される。
【0031】
本実施形態の毛髪用組成物において、液状エステル(I−2)の配合量は、例えば、0.001質量%以上10質量%以下であり、0.002質量%以上5質量%以下が良く、0.004質量%以上3質量%以下が好ましく、0.008質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下が更に好ましい。0.001質量%以上であると、毛髪の水分保持性の向上、又は、細胞膜複合体における脂質層(β層)の厚みの増加がより優れる。10質量%以下であると、本実施形態の毛髪用組成物の低コスト化を図れる。
【0032】
配合する成分(A)と液状エステル(I−2)の質量比は、例えば、1:0.3以上2.5以下である。
【0033】
本実施形態の毛髪用組成物には、上記の通り、公知の毛髪用組成物に配合されている原料を更に配合しても良い。その原料としては、毛髪用組成物の用途に応じて適宜選定され、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、油脂、シリコーン、高分子化合物である。
【0034】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。毛髪用組成物にアニオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるアニオン界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0035】
カチオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩が挙げられる。毛髪用組成物にカチオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるカチオン界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0036】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。毛髪用組成物に両性界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における両性界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0037】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。毛髪用組成物にノニオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるノニオン界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0038】
高級アルコールとしては、例えば、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコールが挙げられる。毛髪用組成物に高級アルコールを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における高級アルコールの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば1質量%以上10質量%以下である。
【0039】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコールが挙げられる。毛髪用組成物に多価アルコールを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における多価アルコールの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0040】
油脂としては、例えばアボガド油、オリーブ油、シア脂油、月見草油、ツバキ油、ローズヒップ油が挙げられる。毛髪用組成物に油脂を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における油脂の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上5質量%以下である。
【0041】
シリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーンが挙げられる。毛髪用組成物にシリコーンを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるシリコーンの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上50質量%以下である。
【0042】
合成高分子化合物としては、例えば、ポリアクリル酸系高分子(カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)コポリマーが挙げられる。半合成高分子化合物としては、例えば、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロースなど)、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルデンプンリン酸など)、グアーガム誘導体(カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガムなど)が挙げられる。また、天然高分子としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。毛髪用組成物に高分子化合物(合成高分子化合物、半合成高分子化合物、天然高分子化合物)を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における高分子化合物の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上5質量%以下である。
【0043】
本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪に塗布して毛髪処理する方法で使用される。例えば、(1)濡れた毛髪に塗布後、毛髪を水洗して使用する洗い流すトリートメント、(2)濡れた毛髪又は乾燥した毛髪に塗布後、毛髪を水洗しないで使用する洗い流さないトリートメント、(3)毛髪表面を洗浄するために、濡れた毛髪に塗布後、毛髪を水洗して使用する毛髪洗浄剤として、本実施形態の毛髪用組成物が用いられる。
【0044】
上記毛髪用組成物が、洗い流すトリートメント、洗い流さないトリートメント、又は毛髪洗浄剤として用いられる場合、成分(A)及び(B)と共に配合される原料の組合せ例を挙げれば次の通りである。洗い流すトリートメントにおいて配合される原料の組合せとしては、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、油脂、シリコーン、合成高分子化合物、及び水である。洗い流さないトリートメントにおいて配合される原料の組合せとしては、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、多価アルコール、油脂、シリコーン、合成高分子化合物、天然高分子化合物、及び水である。毛髪洗浄剤において配合される原料の組合せとしては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、多価アルコール、半合成高分子化合物、及び水である。
【0045】
本実施形態の毛髪用組成物の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、ゲル状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。また、本実施形態の毛髪用組成物が油相と水相を有する場合、外相が水である水中油型の剤型、外相が油相である油中水型の剤型のいずれであっても良い。水中油型の剤型である場合、水の配合量は、例えば60質量%以上である。油中水型の剤型である場合、水の配合量は、例えば10質量%以下である。
【0046】
本実施形態の毛髪用組成物の25℃におけるpHは、適宜設定されるべきものであるが、例えば4.0以上7.0以下である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0048】
(毛髪用組成物)
スクワラン(オリーブ油由来のスクワレンを水素添加した植物性スクワラン)、イソステアリン酸イソステアリル、及び、デカメチルシクロペンタシロキサンを使用し、実施例1及び比較例1〜2の毛髪用組成物を調製した。これら組成物の配合量は、下記表1の通りとした。
【0049】
【表1】
【0050】
(水分保持性)
実施例1又は比較例1〜2の毛髪用組成物で処理した毛髪、及び未処理毛髪の水分蒸散率を算出して、毛髪の水分保持性の試験を行った。試験の詳細は、下記の通りとした。
【0051】
無作為に選定した日本人女性5名から採取した毛髪を「未処理毛髪」として、準備した。それぞれの未処理毛髪を実施例1の毛髪用組成物に10分間浸漬した後、水洗し、温風乾燥させて、毛髪処理を行った。同様の毛髪処理を、比較例1又は比較例2の毛髪用組成物を使用して行った。
【0052】
上記未処理の毛髪及び処理した毛髪を1mm程度に細断し、25℃、湿度50%の室内に6時間以上放置してから、細断後の毛髪各100mgを収集した。この収集した毛髪を、25℃、湿度85質量%の恒温恒湿槽内に6時間以上放置した。次いで、25℃、湿度50%の室内に移動させてから、35〜45秒の時間内に毛髪質量を測定し、この測定値を毛髪質量の初期(W
ini)とした。W
ini測定後、室内に毛髪を継続して放置し、放置時間30分後の毛髪質量(W
30)と、60分後の毛髪質量(W
60)を測定した。
【0053】
そして、放置時間30分後の水分蒸散率(T
30)と、60分後の水分蒸散率(T
60)とを下記式により算出した(下記式におけるW
30、W
60、W
iniは、上記参照。)。
T
30=100−W
30/W
ini×100
T
60=100−W
60/W
ini×100
【0054】
下記表2に、放置時間30分後の水分蒸散率に関する結果を示す。なお、下記表2における「毛髪質量」及び「水分蒸散率」は、上記採取した5名の毛髪に基づく平均値である。
【表2】
【0055】
上記表2に示す通り、成分(A)であるスクワラン又は成分(B)であるイソステアリン酸イソステアリルを配合した比較例1〜2は、未処理毛髪よりも水分蒸散率が低い値であった。成分(A)及び(B)の双方を配合した実施例1は、比較例1〜2よりも水分蒸散率が低く、水分保持性に優れるものであった。
【0056】
下記表3に、30分後の水分蒸散率に関する結果を示す。なお、上記表2と同様、下記表3における「毛髪質量」及び「水分蒸散率」は平均値である。
【表3】
【0057】
上記表3に示す通り、上記表2と同様、成分(A)及び(B)の双方を配合した実施例1は、水分蒸散率が最も低く、水分保持性に優れるものであった。
【0058】
(細胞膜複合体における脂質層及びタンパク質層の厚み)
ブリーチ処理および実施例1の毛髪用組成物で処理した毛髪、ブリーチ処理後の毛髪、未処理毛髪について、毛髪キューティクルの細胞膜複合体(CMC)における脂質層(β層)及びタンパク質層(δ層)の厚みを測定した。この測定までの詳細は、以下の通りとした。
【0059】
酸化染毛処理などの化学的処理の履歴がない20〜50代の日本人女性18名から採取した毛髪を「未処理毛髪」として準備した。それぞれの未処理毛髪を、ブリーチ剤(過酸化水素が3質量%であり、アンモニア水でpHを10.0に調整した水溶液)に20分間浸漬した後、水洗し、温風乾燥させて、ブリーチ処理を行った。また、ブリーチ処理後の毛髪を、実施例1の毛髪用組成物に10分間浸漬した後、水洗し、温風乾燥させて、毛髪処理を行った。
【0060】
上記の未処理毛髪、ブリーチ処理後の毛髪、実施例1の毛髪用組成物を使用した毛髪処理後の毛髪のキューティクルにおけるCMCのβ層、δ層について、大型放射光施設SPring−8のビームラインBL24XUを使用して測定した。この測定では、毛髪の軸に垂直にして、X線マイクロビームを毛髪のキューティクルに照射した。他の測定条件は、次の通りである。
ビームサイズ:5.6μm×4.8μm
カメラ長:1122mm
露光時間:30秒
【0061】
公知の報告(N.Ohta,et al.,J.Appl.Crystal.38,274-279(2005).)を参考に、SPring−8による測定結果である散乱プロファイルからβ層とδ層の厚みを算出した。算出した結果は、下表4〜5の「毛髪処理後」、「ブリーチ処理後」、「未処理」の値の通りである。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
上記表4〜5において、β層及びδ層の値が「ブリーチ処理」は「未処理」よりも小さく、化学的処理(ブリーチ処理)により、β層及びδ層の厚みが減少していた。しかし、β層については、成分(A)及び(B)を配合した実施例1の毛髪用組成物の処理により、大きく増加していた(表4〜5の『厚みの差(nm):「毛髪処理後」−「ブリーチ処理後」』参照)。