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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-28041(P2019-28041A)
(43)【公開日】2019年2月21日
(54)【発明の名称】回転試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20190125BHJP
   G01M 15/02 20060101ALI20190125BHJP
【FI】
   G01M17/007 A
   G01M15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-151182(P2017-151182)
(22)【出願日】2017年8月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(74)【代理人】
【識別番号】100115934
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 雅也
(72)【発明者】
【氏名】宗行 正
【テーマコード(参考)】
2G087
【Fターム(参考)】
2G087AA27
2G087BB30
2G087CC06
2G087CC21
2G087DD06
2G087DD17
(57)【要約】
【課題】回転体と供試体とを回転可能に連結する中間軸が軸受によって回転可能に支持された回転試験装置において、前記軸受に生じる損失が潤滑油の温度変化によって受ける影響を低減することにより、前記供試体が発生するトルクの検出精度の低下を抑制可能な構成を得る。
【解決手段】車両用試験装置1は、ダイナモ11と、供試モータ2とダイナモ11とを回転可能に連結する中間軸31と、中間軸31を回転可能に支持する中間軸受部32,33と、供試モータ2とダイナモ11との間に生じるトルクを検出するトルク検出部41と、中間軸受部32,33の軸受32a,33aに対して潤滑油をそれぞれ供給する潤滑油供給装置20と、供試モータ2側に位置する中間軸受部32に設けられ、中間軸受部32の軸受32aに対して潤滑油供給装置20から供給される潤滑油を加熱する潤滑油加熱部35と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体を回転させる回転体と、
前記供試体と前記回転体との間に設けられ、前記供試体と前記回転体とを回転可能に連結する中間軸と、
前記中間軸を回転可能に支持する軸受を有し、前記中間軸の軸方向に並んで配置された少なくとも2つの中間軸受部と、
前記供試体と前記回転体との間に生じるトルクを検出してトルク信号として出力するトルク検出部と、
前記少なくとも2つの中間軸受部の軸受に対して潤滑油をそれぞれ供給する潤滑油供給部と、
前記少なくとも2つの中間軸受部のうち前記供試体側に位置する中間軸受部に設けられ、該中間軸受部の軸受に対して前記潤滑油供給部から供給される潤滑油を加熱する潤滑油加熱部と、
を備える、回転試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転試験装置において、
前記中間軸及び前記少なくとも2つの中間軸受部は、前記中間軸の前記軸方向において、前記少なくとも2つの中間軸受部の軸受に対して前記潤滑油供給部から供給される潤滑油が中央側に移動するように構成されている、回転試験装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転試験装置において、
前記回転体と前記中間軸との連結部及び前記トルク検出部を覆うカバーをさらに備え、
前記潤滑油加熱部は、前記2つの中間軸受部のうち前記中間軸の軸方向において前記カバーとは反対側に位置する中間軸受部に設けられ、該中間軸受部の軸受に対して前記潤滑油供給部から供給される潤滑油を加熱する、回転試験装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の回転試験装置において、
前記少なくとも2つの中間軸受部のうち前記潤滑油加熱部によって潤滑油が加熱される中間軸受部における前記潤滑油の温度を検出する潤滑油温度検出部と、
前記回転体の回転速度を検出する回転速度検出部と、
前記潤滑油温度検出部によって検出された前記潤滑油の温度と、前記回転速度検出部によって検出された前記回転体の回転速度とを用いて、前記潤滑油加熱部による潤滑油の加熱を制御する加熱制御部と、
をさらに備える、回転試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回転試験装置において、
前記加熱制御部は、前記潤滑油温度検出部によって検出された前記潤滑油の温度と前記潤滑油の目標温度との差を減らすような加熱量を、前記回転体の回転速度に応じて補正し、補正された加熱量に基づいて、前記潤滑油加熱部による潤滑油の加熱を制御する、回転試験装置。
【請求項6】
請求項4に記載の回転試験装置において、
前記加熱制御部は、前記少なくとも2つの中間軸受部のうち前記回転体側に位置する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油の温度と、前記潤滑油温度検出部によって検出された前記潤滑油の温度との差が小さくなるような加熱量を、前記回転体の回転速度に応じて補正し、補正された加熱量に基づいて、前記潤滑油加熱部による潤滑油の加熱を制御する、回転試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の供試体を回転させる回転試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の供試体を回転させる回転試験装置が知られている。このような回転試験装置として、例えば特許文献1に開示されるように、供試体に回転可能に連結されることにより、前記供試体を回転させる動力系の試験装置が知られている。この試験装置では、回転体と供試体とが中間軸を介して回転可能に連結されている。
【0003】
ところで、上述のように中間軸を介して回転体と供試体とが回転可能に連結されている軸系では、一般的に、前記中間軸が軸受によって回転可能に支持されている。また、前記軸受には、外部から潤滑油が供給されている。
【0004】
上述のように、回転する軸を回転可能に支持する軸受に対して潤滑油が供給される構成において、例えば特許文献2に開示されるように、前記潤滑油の温度を調整することにより、前記軸受の摺動損失を低減可能であることが知られている。この特許文献2に開示されている構成では、給油装置によって軸受に供給される潤滑油が貯留されたヘッドタンクの側面に、該ヘッドタンクの内部に貯留される潤滑油の温度を制御するオイルヒータが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−142317号公報
【特許文献2】特開2011−122557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に開示される構成のように、回転体と供試体とが中間軸を介して回転可能に連結されている構成では、前記中間軸を安定して回転可能に支持するために、一般的に、前記中間軸を少なくとも2つの軸受によって回転可能に支持する必要がある。すなわち、前記中間軸の軸方向において、前記中間軸を回転体側の軸受と供試体側の軸受とで回転可能に支持することにより、前記中間軸を安定して回転可能に支持することができる。
【0007】
ところで、回転試験装置を用いて供試体を一定速度で回転させた状態で該供試体を駆動させることによって、該供試体が発生するトルクを検出する場合、回転試験装置の回転体及び中間軸に生じる損失は一定であることが望まれる。回転試験装置で発生する損失が変動すると、前記供試体が発生するトルクを精度良く検出できないからである。
【0008】
上述のように、中間軸を少なくとも2つの軸受によって回転可能に支持する構成の場合、前記中間軸の回転速度が一定であっても、前記軸受に供給される潤滑油の温度によっては、前記軸受で生じる損失にばらつきが生じる可能性がある。このように前記軸受で生じる損失にばらつきが生じた場合、前記供試体が発生するトルクを精度良く検出できない。
【0009】
また、上述のように、少なくとも2つの軸受によって前記中間軸を回転体側及び供試体側で回転可能に支持する場合、一般的に、回転体側の軸受における潤滑油の温度と、供試体側の軸受における潤滑油の温度とは異なる。すなわち、回転体が回転した際に前記中間軸の軸方向内方に流れる空気の温度は、回転体側よりも供試体側の方が低い。そのため、供試体側の軸受における潤滑油は冷却されやすい。よって、供試体側の軸受及び回転体側の軸受に対して、前記特許文献2のように温度調整された潤滑油を供給した場合であっても、供試体側の軸受における潤滑油の温度は、回転体側の軸受における潤滑油の温度よりも低い。
【0010】
このように、供試体側の軸受と回転体側の軸受とで潤滑油の温度が異なると、各軸受における潤滑油の粘性が異なるため、各軸受で生じる損失に差異が生じる。そうすると、回転試験装置の回転数を変更した場合等に、中間軸で発生する損失が変動して安定しない可能性があり、供試体が発生するトルクを精度良く検出できない。
【0011】
本発明では、回転体と供試体とを回転可能に連結する中間軸が軸受によって回転可能に支持された回転試験装置において、前記軸受に生じる損失が潤滑油の温度変化によって受ける影響を低減することにより、前記供試体が発生するトルクの検出精度の低下を抑制可能な構成を得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る回転試験装置は、供試体を回転させる回転体と、前記供試体と前記回転体との間に設けられ、前記供試体と前記回転体とを回転可能に連結する中間軸と、前記中間軸を回転可能に支持する軸受を有し、前記中間軸の軸方向に並んで配置された少なくとも2つの中間軸受部と、前記供試体と前記回転体との間に生じるトルクを検出してトルク信号として出力するトルク検出部と、前記少なくとも2つの中間軸受部の軸受に対して潤滑油をそれぞれ供給する潤滑油供給部と、前記少なくとも2つの中間軸受部のうち前記供試体側に位置する中間軸受部に設けられ、該中間軸受部の軸受に対して前記潤滑油供給部から供給される潤滑油を加熱する潤滑油加熱部と、を備える(第1の構成)。
【0013】
軸受に供給される潤滑油は、温度に応じて粘性が変化する。そのため、軸受で生じる損失は、潤滑油の温度に応じて変化する。具体的には、潤滑油の温度が高い場合には、潤滑油の温度が低い場合に比べて、潤滑油の粘性が低下するため、軸受で生じる損失が小さい。一方、潤滑油の温度が低い場合には、潤滑油の温度が高い場合に比べて、潤滑油の粘性が高くなるため、軸受で生じる損失が大きい。
【0014】
本発明者は、上述のような潤滑油の温度と軸受で生じる損失との関係について鋭意検討した結果、軸受に供給される潤滑油の温度と、潤滑油の温度変化に対して軸受で生じる損失の変化量との関係を見出した。
【0015】
図5に、潤滑油の各温度における前記変化量を示す。図5に示すように、潤滑油の温度が低い場合には、潤滑油の温度変化に対して軸受で生じる損失の変化量が大きい一方、潤滑油の温度が高い場合には、潤滑油の温度変化に対して軸受で生じる損失の変化量が小さい。よって、潤滑油の温度が高いと、潤滑油の温度が変化しても、軸受で生じる損失はあまり変化しない。図5の例では、例えば、潤滑油の温度を70度以上にすることにより、潤滑油の温度が低温の場合に比べて、軸受で生じる損失の変化を小さくすることができる。したがって、潤滑油の温度変化によって軸受で生じる損失のばらつきを抑制する観点から、潤滑油の温度を70度以上の高温にすることが好ましい。
【0016】
また、既述のように、供試体側に位置する中間軸受部の軸受は、回転体側に位置する中間軸受部の軸受に比べて、潤滑油の温度が低下しやすい。
【0017】
以上の点を踏まえ、上述の構成では、回転体と供試体とを回転可能に連結する中間軸を回転可能に支持する少なくとも2つの中間軸受部に供給する潤滑油の温度を70度以上にするとともに、供試体側に位置する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油を、潤滑油加熱部によって加熱する。このように、供試体側に位置する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油を潤滑油加熱部によって加熱することにより、供試体側に位置する中間軸受部で生じる前記潤滑油の温度低下を防止できる。
【0018】
これにより、供試体側に位置する中間軸受部の軸受で生じる損失が、該軸受に供給される潤滑油の温度変化によって、大きく変化することを防止できる。したがって、供試体が発生するトルクを精度良く検出することができる。
【0019】
なお、前記中間軸受部は、軸受と、該軸受を支持する部材の少なくとも一部とを含む。
【0020】
前記第1の構成において、前記中間軸及び前記少なくとも2つの中間軸受部は、前記中間軸の前記軸方向において、前記少なくとも2つの中間軸受部の軸受に対して前記潤滑油供給部から供給される潤滑油が中央側に移動するように構成されている(第2の構成)。
【0021】
中間軸の回転に伴い外気が該中間軸と中間軸受部との間に流入することにより、中間軸を回転可能に支持する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油は、外に流れ出ることなく、中間軸の軸方向の中央側に移動する。潤滑油がこのように流れる場合、潤滑油とともに外気も前記軸方向の中央側に移動するため、潤滑油の温度は低下しやすい。よって、中間軸受部の軸受で生じる損失は、該軸受に供給される潤滑油の温度変化によって、変動しやすい。しかも、供試体側から前記中間軸と前記中間軸受部との間に流入する外気の温度は回転体側から前記中間軸と前記中間軸受部との間に流入する外気の温度に比べて低い。そのため、供試体側に位置する中間軸受部の潤滑油の温度は、回転体側に位置する中間軸受部の潤滑油に比べて、低下しやすい。
【0022】
これに対し、上述の第1の構成を適用することにより、供試体側に位置する中間軸受部の軸受で生じる損失が、該軸受に供給される潤滑油の温度変化によって、大きく変化することを防止できる。したがって、供試体が発生するトルクを精度良く検出することができる。
【0023】
前記第1または第2の構成において、回転試験装置は、前記回転体と前記中間軸との連結部及び前記トルク検出部を覆うカバーをさらに備える。前記潤滑油加熱部は、前記2つの中間軸受部のうち前記中間軸の軸方向において前記カバーとは反対側に位置する中間軸受部に設けられ、該中間軸受部の軸受に対して前記潤滑油供給部から供給される潤滑油を加熱する(第3の構成)。
【0024】
このように、回転体と中間軸との連結部及びトルク検出部がカバーによって覆われている場合、前記中間軸を回転可能に支持する少なくとも2つの中間軸受部のうち前記回転体側に位置する中間軸受部は、近傍に前記カバーが位置する。そのため、前記中間軸受部の軸受に対して潤滑油供給部から供給される潤滑油の温度は、低下しにくい。一方、前記供試体はカバーによって覆われていないため、前記カバーとは反対側に位置する中間軸受部、すなわち、供試体側に位置する中間軸受部の軸受に対して潤滑油供給部から供給される潤滑油は、外気に触れやすい。よって、前記潤滑油の温度は、前記回転体側に位置する中間軸受部の軸受に対して供給される潤滑油に比べて低下しやすい。
【0025】
これに対し、上述の構成のように、前記カバーとは反対側に位置する中間軸受部、すなわち、供試体側に位置する中間軸受部の軸受に対して供給される潤滑油を、潤滑油加熱部によって加熱することにより、前記供試体側に位置する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油の温度低下を抑制できる。
【0026】
これにより、供試体側に位置する中間軸受部の軸受で生じる損失が、該軸受に供給される潤滑油の温度変化によって、大きく変化することを防止できる。したがって、供試体が発生するトルクを精度良く検出することができる。
【0027】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、回転試験装置は、前記少なくとも2つの中間軸受部のうち前記潤滑油加熱部によって潤滑油が加熱される中間軸受部における前記潤滑油の温度を検出する潤滑油温度検出部と、前記回転体の回転速度を検出する回転速度検出部と、前記潤滑油温度検出部によって検出された前記潤滑油の温度と、前記回転体検出部によって検出された前記回転体の回転速度とを用いて、前記潤滑油加熱部による潤滑油の加熱を制御する加熱制御部と、をさらに備える(第4の構成)。
【0028】
これにより、供試体側に位置する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油の温度を、潤滑油温度検出部によって検出された潤滑油の温度と、回転体の回転速度とに応じて、迅速に調整することができる。
【0029】
ここで、軸受の潤滑油の温度は、中間軸の回転速度が高くなるほど、上昇する。前記潤滑油の温度が高くなりすぎると、前記潤滑油の粘性が大きく低下して軸受の特性や耐久性等に影響を与える。そのため、前記潤滑油の温度は、高くなりすぎないことが望まれる。
【0030】
よって、上述のように、潤滑油の温度を、潤滑油温度検出部によって検出された潤滑油の温度と、回転体の回転速度とに応じて、調整することにより、軸受で生じる損失の変動を抑制可能な適正な温度範囲に迅速に調整することができる。
【0031】
前記第4の構成において、前記加熱制御部は、前記潤滑油温度検出部によって検出された前記潤滑油の温度と前記潤滑油の目標温度との差を減らすような加熱量を、前記回転体の回転速度に応じて補正し、補正された加熱量に基づいて、前記潤滑油加熱部による潤滑油の加熱を制御する(第5の構成)。
【0032】
これにより、供試体側に位置する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油の温度を、潤滑油の目標温度に迅速に調整することができる。
【0033】
前記第4の構成において、前記加熱制御部は、前記少なくとも2つの中間軸受部のうち前記回転体側に位置する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油の温度と、前記潤滑油温度検出部によって検出された前記潤滑油の温度との差が小さくなるような加熱量を、前記回転体の回転速度に応じて補正し、補正された加熱量に基づいて、前記潤滑油加熱部による潤滑油の加熱を制御する(第6の構成)。
【0034】
これにより、供試体側に位置する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油の温度を、回転体側に位置する中間軸受部の軸受に供給される潤滑油の温度に近づけることができる。よって、中間軸の回転速度が変化した場合でも、前記中間軸を回転可能に支持する軸受で生じる損失の変動が、供試体側の中間軸受部と回転体側の中間軸受部とで大きく異なることを防止できる。よって、供試体が発生するトルクを精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一実施形態に係る回転試験装置によれば、供試体と回転体とを回転可能に連結する中間軸を回転可能に支持する少なくとも2つの中間軸受部のうち、前記供試体側に位置する中間軸受部に、該中間軸受部の軸受に対して供給される潤滑油を加熱する潤滑油加熱部が設けられている。これにより、前記供試体側に位置する中間軸受部の軸受で生じる損失が、該軸受に供給される潤滑油の温度変化によって、大きく変化することを防止できる。したがって、供試体が発生するトルクを精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施形態1に係る車両用試験装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、軸受支持部の構成及び中間軸受部の軸受に対して潤滑油を供給する様子を模式的に示す図である。
図3図3は、軸受支持部を供試モータ側から見た図である。
図4図4は、加熱制御装置の制御ブロック図である。
図5図5は、潤滑油温度と、潤滑油温度の変化に対して軸受で生じる損失の変化との関係を示す図である。
図6図6は、実施形態2に係る車両試験装置の図2相当図である。
図7図7は、実施形態2に係る車両試験装置の図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0038】
<実施形態1>
(全体構成)
図1は、実施形態1に係る車両用試験装置1(回転試験装置)の概略構成を示すブロック図である。車両用試験装置1は、供試体である供試モータ2を回転させた状態で該供試モータ2の各種測定データを得るための試験装置である。
【0039】
車両用試験装置1は、供試モータ2に駆動連結されるダイナモ11(回転体)と、供試モータ2とダイナモ11とを回転可能に連結する中間軸31と、供試モータ2に発生するトルクを検出するトルク計41(トルク検出部)とを備える。図1における符号3は、供試モータ2の駆動を制御するモータ制御装置である。
【0040】
モータ制御装置3は、入力されるトルク指令に応じて供試モータ2に電力を供給することにより、供試モータ2のトルクを制御する。モータ制御装置3の構成は、従来のインバータなどの制御装置と同様の構成を有するため、詳しい説明を省略する。
【0041】
なお、本実施形態では、回転試験装置として、車両用試験装置1の例を挙げているが、他の用途の試験装置であってもよい。
【0042】
ダイナモ11は、電動モータであり、回転速度が制御される。ダイナモ11の構成は、一般的な電動モータと同様であるため、詳しい説明を省略する。ダイナモ11には、図示しない回転子の回転速度を検出するための回転速度センサ12(回転速度検出部)が設けられている。
【0043】
ダイナモ11の回転子は、中間軸31を介して供試モータ2の回転軸(図示省略)に接続されている。なお、特に図示しないが、ダイナモ11の回転子と中間軸31とは、両者にそれぞれ設けられたカップリング同士がボルトによって締結されることにより、駆動連結されている。また、中間軸31と供試モータ2の回転軸も、同様に、カップリング同士がボルトによって締結されることにより、駆動連結されている。
【0044】
中間軸31には、ダイナモ11と供試モータ2との間に生じるトルクを検出するためのトルク計41が設けられている。このトルク計41は、中間軸31に生じるねじれ角の差を検出する。トルク計41では、検出したねじれ角の差から中間軸31に生じるトルクを求め、トルク信号として出力する。なお、トルク計41からねじれ角の差に対応する信号を出力して、制御装置等によってトルク値を算出してもよい。
【0045】
中間軸31は、軸方向の2箇所で、中間軸受部32,33によって回転可能に支持されている。中間軸受部32,33は、中間軸31において、トルク計41と供試モータ2との間の部分を回転可能に支持する。すなわち、中間軸受部32,33は、中間軸31における供試モータ2側を回転可能に支持する。トルク計41は、ダイナモ11と中間軸受部31,32との間に配置されている。
【0046】
中間軸受部32は、中間軸31の軸方向における供試モータ2側を回転可能に支持する。中間軸受部33は、中間軸31の軸方向において、中間軸受部32よりもダイナモ11側に位置する。
【0047】
図2に示すように、中間軸受部32は、軸受32aを有する。中間軸受部33は、軸受33aを有する。
【0048】
軸受32a,33aは、軸受支持部34によって支持されている。軸受支持部34は、筒軸方向に中間軸31が貫通するとともに、軸受32a,33aを支持する円筒状の部材を有する。軸受支持部34の円筒状の部材のうち、軸受32a,33aを支持する部分が、中間軸受部32,33の一部を構成する。すなわち、中間軸受部32は、軸受32aと、軸受支持部34のうち軸受32aを支持する部分とを含む。中間軸受部33は、軸受33aと、軸受支持部34のうち軸受33aを支持する部分とを含む。なお、軸受支持部34は、後述のベース1aによって支持されている。
【0049】
また、図1に示すように、中間軸31において、軸受支持部34とダイナモ11との間の部分は、カバー36によって覆われている。すなわち、ダイナモ11の回転子と中間軸31との連結部及びトルク計41は、カバー36によって覆われている。軸受支持部34は、そのダイナモ11側がカバー36と隣接している。
【0050】
車両用試験装置1において、ダイナモ11、トルク計41及び中間軸受部32,33は、ベース1aによって支持されている。また、供試モータ2は、ベース1a上に設けられたモータ固定部1bに固定されている。
【0051】
図2に示すように、中間軸受部32,33の軸受32a,33aには潤滑油供給装置20によって、潤滑油が供給される。すなわち、軸受支持部34には、軸受32a,33aに対して潤滑油を供給するための潤滑油供給路(図示省略)が設けられている。図1から図3に、潤滑油供給装置20から軸受32a,33aへの潤滑油の流れを、一点鎖線で模式的に示す。なお、図2では、軸受32a,33aから潤滑油供給装置20への潤滑油の流れの記載を省略している。また、図3では、潤滑油供給装置20の記載を省略し、軸受32aの周辺における潤滑油の流れのみを図示している。
【0052】
図2に示すように、中間軸受部32,33は、軸受32a,33aに対して、中間軸31の軸方向の外方から内方に向かって潤滑油が供給されるように構成されている。また、中間軸31は、軸方向において、中間軸受部32,33の外方に位置する部分の外径よりも内方に位置する部分の外径が大きい。これにより、中間軸31の回転中において、軸受32a,33aに供給された潤滑油は、軸受32a,33aに対して中間軸31の軸方向内方に流れる。
【0053】
図1に示すように、車両用試験装置1は、中間軸受部32,33の軸受32a,33aに対して潤滑油をそれぞれ供給する潤滑油供給装置20を備える。潤滑油供給装置20は、潤滑油を吐出するポンプ21と、前記潤滑油の温度を調整する温度調整部22と、ポンプ21及び温度調整部22の駆動を制御する潤滑油制御部24とを備える。
【0054】
温度調整部22は、特に図示しないが、潤滑油の温度を調整可能なように、加熱器及び冷却器の少なくとも一方を有する。すなわち、温度調整部22は、潤滑油を加熱する加熱器のみを有していてもよいし、潤滑油を冷却する冷却器のみを有していてもよいし、加熱器及び冷却器の両方を有していてもよい。詳しい説明は省略するが、温度調整部22は、タンク内に高温で貯留された潤滑油を、冷却器を用いて冷却することにより、前記潤滑油の温度を所望の温度にしてもよい。
【0055】
潤滑油制御部24は、ポンプ21の駆動を制御することにより、軸受32a,33aに供給される潤滑油の油量を調整するとともに、後述する潤滑油温度検出部38で検出された潤滑油の温度Tbに応じて温度調整部22の駆動を制御することにより、潤滑油の温度を調整する。
【0056】
詳しくは、潤滑油制御部24は、予め設定された油量の潤滑油が軸受32a,33aに供給されるようにポンプ21を駆動させるとともに、入力される潤滑油温度指令及びダイナモ11の回転速度Nに応じて、潤滑油の温度を調整する。
【0057】
上述の構成を有する潤滑油制御部24によって温度調整部22の駆動を制御することにより、潤滑油供給装置20から吐出される潤滑油は、所望の温度に調整される。所望の温度に調整された潤滑油は、軸受32a,33aに対して供給される。
【0058】
中間軸受部32には、軸受32aに供給される潤滑油を加熱するための潤滑油加熱部35が設けられている。図2及び図3に示すように、潤滑油加熱部35は、軸受支持部34の内部に、軸受32aを囲むように周方向に並んで配置された複数(本実施形態では8個)のヒータ35aを有する。各ヒータ35aは、棒状であり、中間軸31の軸方向に延びるように軸受支持部34内に配置されている。各ヒータ35aは、加熱制御装置50(加熱制御部)によって加熱制御される。
【0059】
なお、ヒータ35aの形状は、軸受32aに供給される潤滑油を加熱可能な形状であれば、棒状以外の形状であってもよい。また、潤滑油加熱部35は、軸受32aに供給される潤滑油を加熱可能な構成であれば、ヒータ以外の加熱装置を有していてもよい。
【0060】
図2に示すように、中間軸受部32には、軸受32aの潤滑油の温度Tbsを検出する潤滑油温度検出部37が設けられている。また、中間軸受部33には、軸受33aの潤滑油の温度Tbを検出する潤滑油温度検出部38が設けられている。
【0061】
加熱制御装置50は、潤滑油温度指令Tbref(目標温度)及び中間軸31の回転速度に基づいて、軸受32aに供給される潤滑油を加熱する。加熱制御装置50は、潤滑油温度検出部37によって検出された潤滑油の温度Tbsを潤滑油温度指令Tbrefに近づけるとともに、中間軸31の回転速度、すなわち回転速度センサ12から出力された回転速度Nも考慮して、加熱制御を行う。
【0062】
具体的には、加熱制御装置50は、温度差算出部51と、温度補正部52と、加熱量演算部53とを有する。温度差算出部51は、潤滑油温度検出部37によって検出された潤滑油の温度Tbsと潤滑油温度指令Tbrefとの差を算出する。すなわち、温度差算出部51は、軸受32aの潤滑油の温度Tbsを潤滑油温度指令Tbrefに合わせるために必要な温度上昇分を算出する。
【0063】
温度補正部52は、回転速度センサ12から出力された回転速度Nに対応した潤滑油の温度の補正テーブルを有し、前記温度差算出部51によって算出された温度差を、前記補正テーブルを用いて補正する。
【0064】
ここで、軸受32aに供給された潤滑油の温度は、中間軸31の回転速度Nに応じて変化する。すなわち、軸受32aに供給された潤滑油の温度は、中間軸31の回転速度が大きい場合、中間軸31の回転速度が小さい場合に比べて高くなる。よって、軸受32aに供給される潤滑油の温度を所望の温度にするためにヒータ35aで必要な加熱量は、中間軸31の回転速度Nに応じて変わる。
【0065】
温度補正部52では、上述のように中間軸31の回転速度に応じて変化するヒータ35aで必要な加熱量を求めるために、温度差算出部51で算出された温度差に、前記回転速度に応じた補正量を加算する。
【0066】
加熱量演算部53は、温度補正部52によって得られた温度差の補正値から、ヒータ35aの加熱量(加熱制御量)を算出し、該加熱量に応じた制御信号を生成する。加熱量演算部53で生成された制御信号に応じて、ヒータ35aは加熱制御される。
【0067】
加熱制御装置50の具体的な制御ブロック図を図4に示す。図4に示すように、温度差算出部51は、潤滑油温度検出部37によって検出された潤滑油の温度Tbsと潤滑油温度指令Tbrefとの温度差を算出する減算器51aと、減算器51aによって算出された温度差を用いてPID演算を行う演算器51bとを有する。すなわち、温度差算出部51は、ヒータ35aの加熱制御において、中間軸受部32の軸受32aにおける潤滑油の温度Tbsと潤滑油温度指令Tbrefとの温度差をフィードバックする。
【0068】
温度補正部52は、回転速度センサ12から出力された回転速度Nに基づいてテーブルから温度補正量を算出する補正量演算部52aと、補正量演算部52aで算出された温度補正量を、温度差算出部51の演算器51bで算出された結果に加算する加算器52bとを有する。すなわち、温度補正部52は、ヒータ35aの加熱制御において、回転速度Nに応じた温度補正量を用いて、温度差算出部51で算出されたフィードバック量を補正する。
【0069】
これにより、加熱制御装置50は、中間軸31の回転速度Nを考慮しつつ、中間軸受32の軸受32aにおける潤滑油の温度Tbsを潤滑油温度指令Tbrefに近づけるように、ヒータ35aの加熱制御を行うことができる。
【0070】
ここで、中間軸31の回転速度が一定の場合、軸受32a,33aにおける潤滑油の温度が変化すると、該潤滑油の粘性が変化する。そのため、前記潤滑油の温度が変化すると、軸受32a,33aで生じる損失が変化する。よって、前記潤滑油の温度が変化すると、車両用試験装置1によって、供試モータ2の出力トルクを精度良く検出できないため、供試モータ2の効率を精度良く計測できない。
【0071】
本発明者は、潤滑油の温度と軸受に生じる損失との関係について鋭意検討した結果、潤滑油の温度変化に対して軸受に生じる損失の変化が、図5に一例を示すように、潤滑油の温度によって変化する点を見出した。すなわち、本発明者は、潤滑油の温度が比較的高温の場合には、潤滑油の温度変化に対して軸受に生じる損失の変化DT(=軸受に生じる損失の変化/潤滑油の温度変化)が小さくなることを見出した。具体的には、図5に示すように、潤滑油の温度が70度以上の場合には、それよりも温度が低い場合に比べて、潤滑油の温度変化に対して軸受に生じる損失の変化量は小さくなる。したがって、中間軸受32,33の軸受32a,33aにおける潤滑油の温度は、70度以上が好ましい。なお、軸受における潤滑油の温度は、潤滑油の劣化や軸受の耐久性等を考慮すると、95度以下が好ましい。
【0072】
そのため、本実施形態の車両試験装置1では、潤滑油温度指令は、軸受32a,33aに供給される潤滑油の温度が70度以上になるような温度指令である。
【0073】
ところで、車両試験装置1の中間軸受部32,33では、中間軸31が回転した状態において、図2に示すように、軸受32a,33aに供給された潤滑油は、外気とともに中間軸31の軸方向の内方に移動する。これにより、前記潤滑油は外気によって冷却されるため、前記潤滑油の温度が低下しやすい。
【0074】
特に、中間軸受部32,33のうち供試モータ2側に位置する中間軸受部32は、ダイナモ11側にカバー36が配置されている中間軸受部33に比べて、潤滑油が外気と触れやすく、該潤滑油の温度が低下しやすい。よって、供試モータ2側に位置する中間軸受部32に供給された潤滑油の温度は、ダイナモ11側に位置する中間軸受部33に供給された潤滑油の温度よりも低下しやすい。
【0075】
これに対し、本実施形態のように、供試モータ2側に位置する中間軸受部32の軸受32aに供給される潤滑油を、潤滑油加熱部35のヒータ35aによって加熱することにより、中間軸受部32,33の軸受32a,33aにおける潤滑油の温度差を低減できる。しかも、前記潤滑油の温度を、中間軸受32,33の軸受32a,33aで生じる損失が潤滑油の温度の影響を受けにくいような比較的高温にすることができる。
【0076】
これにより、車両試験装置1の回転数が急激に変化した場合や車両試験装置1の始動時でも、潤滑油の温度変化の影響によって中間軸受32,33の軸受32a,33aに生じる損失が大きく変化することを抑制できる。したがって、車両試験装置1によって、供試モータ2の効率を迅速且つ精度良く測定することができる。
【0077】
<実施形態2>
図6に、実施形態2に係る車両試験装置の軸受支持部の拡大図を示す。図6に示すように、実施形態2の構成は、加熱制御装置150に、潤滑油温度検出部37,38の出力、すなわち、中間軸受32,33の軸受32a,33aにおける潤滑油の温度Tbs,Tbが入力される点で、実施形態1の構成と異なる。以下では、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0078】
図7に、加熱制御装置150の制御ブロック図を示す。図6及び図7に示すように、加熱制御装置150の温度差算出部151には、中間軸受部32,33の軸受32a,33aにおける潤滑油の温度Tbs,Tbが入力される。潤滑油の温度Tbs,Tbは、潤滑油温度検出部37,38によって検出される。温度差算出部151では、中間軸受部32の軸受32aにおける潤滑油の温度Tbsと中間軸受部33の軸受33aにおける潤滑油の温度Tbとの温度差を、減算器151aによって求めた後、実施形態1と同様、演算器51bによって、前記温度差をPID演算する。
【0079】
温度差算出部151で算出された結果は、実施形態1と同様、温度補正部52によって、中間軸31の回転速度に応じた補正値により補正される。その後、加熱量演算部53は、温度補正部52によって補正された値に基づいて加熱量を演算して、ヒータ35aを加熱制御するための制御信号を生成する。ヒータ35aは、加熱量演算部53で生成された制御信号に応じて加熱制御される。
【0080】
本実施形態では、加熱制御装置150は、潤滑油温度検出部37,38によって検出された潤滑油の温度Tbs,Tbの温度差を用いて、ヒータ35aの制御信号を生成する。これにより、供試モータ2側の中間軸受部32の軸受32aにおける潤滑油の温度が、ダイナモ11側の中間軸受部33の軸受33aにおける潤滑油の温度に近づくように、ヒータ35aの駆動が制御される。
【0081】
よって、供試モータ2側の中間軸受部32の軸受32aにおける潤滑油の温度と、ダイナモ11側の中間軸受部33の軸受33aにおける潤滑油の温度とを、軸受で生じる損失の変化が比較的小さい温度に合わせることが可能になる。よって、車両用試験装置の回転数が変わった場合等でも、軸受32a,33aで生じる損失の変化を抑制することができ、供試モータ2の効率を迅速に且つ精度良く測定することができる。
【0082】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0083】
前記各実施形態では、モータ制御装置3は、入力されるトルク指令に応じて供試モータ2に電力を供給することにより、供試モータ2のトルクを制御する。また、ダイナモ11の回転速度が制御される。しかしながら、供試モータの回転数が制御され、ダイナモのトルクが制御されてもよい。
【0084】
前記各実施形態では、中間軸受部32,33のうち、供試体側に位置する中間軸受部32に、軸受32aに供給される潤滑油を加熱するための潤滑油加熱部35が設けられている。しかしながら、複数の中間軸受部のうち、軸受の潤滑油の温度が低下しやすい中間軸受部に、潤滑油加熱部を設けてもよい。
【0085】
前記各実施形態では、中間軸31は、中間軸受部32,33によって回転可能に支持されている。しかしながら、中間軸31は、3つ以上の中間軸受部によって回転可能に支持されてもよい。この場合には、複数の中間軸受部のうち、軸受の潤滑油の温度が低下しやすい中間軸受部に、潤滑油加熱部を設けることが好ましい。
【0086】
前記各実施形態では、中間軸受部32,33は、それぞれ、軸受32a,33aを有する。しかしながら、中間軸受部は、それぞれ2つ以上の軸受を有していてもよい。
【0087】
前記各実施形態では、中間軸受部32には、8つのヒータ35aが設けられている。しかしながら、中間軸受部32に設けられるヒータの数は、軸受32aに供給される潤滑油を加熱可能な数であれば、8つ以外でもよい。
【0088】
前記各実施形態では、中間軸31の一部は、カバー36によって覆われている。しかしながら、中間軸31をカバー36によって覆わなくてもよい。
【0089】
前記各実施形態では、中間軸受部32,33の軸受32a,33aでは、供給された潤滑油が、中間軸31の軸方向の内方に向かって流れる。しかしながら、軸受に流れる潤滑油は、中間軸31の軸方向の外方に向かって流れてもよいし、前記軸方向に流れることなくそのまま下方に流れてもよい。
【0090】
前記各実施形態では、加熱制御装置50,150は、中間軸31の回転速度Nを考慮して、ヒータ35aの加熱量を求めている。しかしながら、加熱制御装置は、ヒータ35aの加熱量を求める際に、中間軸31の回転速度Nを考慮しなくてもよい。また、加熱制御装置は、ヒータ35aの加熱量を求める際に、中間軸31の回転速度N以外のパラメータ(外気温度など)を考慮してもよい。さらに、加熱制御装置50,150は、中間軸受部32の軸受32aにおける潤滑油の温度が予め設定された温度になるように、ヒータ35aを加熱制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明による回転試験装置は、ダイナモと供試体とが中間軸によって回転可能に連結されるとともに、前記中間軸が軸受によって回転可能に支持される構成に利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 車両用試験装置(回転試験装置)
2 供試モータ(供試体)
11 ダイナモ(回転体)
12 回転速度センサ(回転速度検出部)
20 潤滑油供給装置(潤滑油供給部)
21 ポンプ
22 温度調整部
24 潤滑油制御部
31 中間軸
32、33 中間軸受部
32a、33a 軸受
34 軸受支持部
35 潤滑油加熱部
35a ヒータ
36 カバー
37、38 潤滑油温度検出部
41 トルク検出部
50、150 加熱制御装置(加熱制御部)
51、151 温度差算出部
52 温度補正部
53 加熱量演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7