【解決手段】撮像用のズームレンズシステム10は、物体側から順番に配置された、負の屈折力の第1のレンズ群G1と、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群G2と、広角端から望遠端にズーミングする際に物体側に移動する、正の屈折力の第3のレンズ群G3と、広角端から望遠端にズーミングする際に像面側に移動する、合成の屈折力が負の第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5と、物体側に絞りStが配置され、屈折力が正の第6のレンズ群G6とから構成される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、撮像用の光学系を備えた撮像装置(カメラ、カメラ装置)の一例を示している。このカメラ1は、光学系(撮像光学系、結像光学系、レンズシステム)10と、光学系10の像面側(画像側、撮像側、結像側)12に配置された撮像素子(撮像デバイス、像面)5とを有する。光学系10は、撮像用のズームレンズシステム10であって、6群19枚構成のレンズシステムである。具体的にはレンズシステム10は、物体側11から順番に配置された、像面5に対して位置が固定された負の屈折力の第1のレンズ群G1と、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群G2と、広角端から望遠端にズーミングする際に物体側11に移動する、正の屈折力の第3のレンズ群G3と、広角端から望遠端にズーミングする際に像面側12に移動する、合成の屈折力が負の第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5と、像面5に対して位置が固定され、物体側11に絞りStが配置され、屈折力が正の第6のレンズ群G6とから構成されている。
【0021】
収差補正能力が高く高性能のズームレンズシステム10は一般的にレンズの構成枚数が多く、口径も大きいために重く、取り回しが大変で、安定した画像を取得することは容易ではない。特に、映画などの高画質の画像を撮影するためのレンズシステムは、レンズの構成枚数が10〜20枚近くと多く、ハンディーでの取り回しは難しい。さらに、ズーミングのためにレンズ群が移動すると重心も大きく移動する。また、ズーミングにより、絞りが動くことでF値も変動するため、ズーミングしながら、焦点を合わせたり、明るさの変動の少ない画像を取得するためには撮影者の技能と経験とを要する作業となっている。
【0022】
このズームレンズシステム10においては、パワーが負の第1のレンズ群G1と、焦点調整用でパワーの低い第2のレンズ群G2と、パワーが正の第3のレンズ群G3と、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5からなり合成焦点距離が負、すなわち、パワーが負のレンズ群Gyと、パワーが正の第6のレンズ群G6とから構成されている。このため、ズームレンズシステム10は、全体のパワー構成として、ネガティブリードの負−正−負−正を備え、2つのレトロフォーカスを組み合わせたタイプとなっている。したがって、レンズシステム10の全体として、広角(高画角)でありながら、最も物体側11のレンズ径をそれほど大きくせずに、比較的大きなズーム比を確保できる構成となっている。
【0023】
このズームレンズシステム10は、パワーが負の第1のレンズ群G1およびパワーが正の第3のレンズ群G3から構成される前側(物体側)11のレトロフォーカス構成の第1のレンズ群G1を像面5に対して固定し、前側のレトロフォーカス構成により得られる長いバックフォーカスの中に、パワーが負のレンズ群Gyとパワーが正の第6のレンズ群G6から構成される後側(像面側)12のレトロフォーカス構成を組み込み、最も像面側12の第6のレンズ群G6を絞りStを合わせて像面5に対して固定する構成を採用している。このため、ズームレンズシステムの全長LAを大きくせずに、後側のレトロフォーカス構成、すなわち、レンズ群Gyと第6のレンズ群G6に含まれるレンズ枚数を多くすることができ、レンズ枚数が多く、収差補正能力の高いレンズシステム10をコンパクトに実現できる。
【0024】
また、このレンズシステム10は、前方のレトロフォーカス群にフォーカシング用の第2のレンズ群G2を含めている。したがって、全体の構成としては、フォーカシングのレンズ群(レンズ群G1およびG2)と、バリエータおよびコンペンセータのレンズ群(レンズ群G3およびGy)と、最も像面側12のリレーレンズ群(レンズ群G6)とからなる構成であり、リレーレンズ群である最も像面側12のレンズ群G6を構成するレンズ枚数を増やすことが可能である。広角のズームレンズシステム10では、物体側11のレンズ径が大きくなりやすく、ズーミングの際に移動するレンズが多いと、物体側11、すなわち前側に近傍に重心があり、ズーミングによりその重心が大きく移動する傾向がある。これに対し、このレンズシステム10においては、レトロフォーカス構成とすることにより前側のレンズ径を縮小し、リレーレンズ群であるレンズ群G6に配置されるレンズ枚数を増やすことにより、レンズシステム10の重心を、サポートしにくい物体側11からサポートしやすい像面側12にシフトできる。
【0025】
このレンズシステム10においては、レンズシステム10の全長LA(最も物体側のレンズL11の物体側の面S1から、最も像面側のレンズL67の像面側の面S34までの長さ)に対し、最も物体側のレンズL11の物体側の面S1から重心までの広角端における距離Lgw(光軸13に沿った距離)が以下の条件(0−1)を満たしてもよい。また、最も物体側のレンズL11の物体側の面S1から広角端における距離Lgwと望遠端における距離Lgtとの差ΔLgとレンズシステム10の全長LAとが以下の条件(0−2)を満たしてもよい。
0.2<Lgw/LA<0.5・・・(0−1)
0.0001<ΔLg/LA<0.05・・・(0−2)
条件(0−1)の下限は0.3であってもよく、上限は0.4であってもよい。また、条件(0−2)の下限は0.0005であってもよく、上限は0.04であってもよい。
【0026】
レンズシステム10のバリエータおよびコンペンセータとして機能するレンズ群G3およびGyを、物体側11から正−負のパワー構成としている。正−負のパワー構成を採用することにより、広角端から望遠端にズームする際に、第3のレンズ群G3は物体側11へ移動し、レンズ群Gyは全体として像面側12に移動する。このため、ズーミングの際のレンズシステム10の重心の変動を抑制でき、取り扱い(取り回し)が容易なレンズシステム10を提供できる。
【0027】
このレンズシステム10は、最も物体側11の最も有効径が大きくなり、重くなりやすい第1のレンズ群G1を固定し、最も像面側12の最もレンズ枚数が大きく重くなりやすい第6のレンズ群G6も固定し、それらの間に、フォーカシング用の第2のレンズ群G2と、ズーミング用の第3〜第5のレンズ群G3〜G5を配置している。最も物体側11のレンズ群G1と最も像面側12のレンズ群G6とを固定できるので、これらのレンズ群を収納する鏡筒あるいはホルダ15のシール性を向上できゴミなどの侵入を防止できるとともに、構造が簡単で強度の高いレンズユニット16を提供できる。
【0028】
また、レンズシステム10においては、正のパワーのレンズ群G3を物体側11に配置し、広角端から望遠端にズーミングの際に正のパワーのレンズ群G3が物体側11に移動することにより、負のパワーのレンズ群G1との組み合わせでレンズシステム10の物体側11の負のパワーが大きくなりすぎるのを抑制でき、物体側11のレンズ径を小さくできる。さらに、広角端から望遠端にズーミングする際に、負のパワーのレンズ群Gyが像面側12に移動し、絞りStとの距離を縮めることで絞りStに入力される光束の広がりを一定に保つことが可能となり絞りStを固定できる。
【0029】
広角端から望遠端にズーミングする際に、像面側12に移動する全体として負のパワーのレンズ群Gyを、独立して移動する2つのレンズ群G4およびG5で構成し、パワーと移動量とを制御することにより広角端から望遠端にかけての収差補正能力を向上でき、特に、像面湾曲を小さくできるという効果が得られる。
【0030】
この例では、第4のレンズ群G4は負のパワーを備えているが、正のパワーであってもよく、レンズ群G5は負のパワーの絶対値に対して、物体側11のレンズ群G4のパワーの絶対値は小さく、レンズ群Gyの合成パワーとしては負のパワーとなっている。全体として負のパワーでズーミングの際に第3のレンズ群G3と反対側に動くレンズ群Gyを独立した2つの群G4およびG5により構成することにより、収差補正がさらに容易になる。上述したように、第4のレンズ群G4は正のパワーであってもよいが、負のパワーの第4のレンズ群G4は、倍率色収差、サジタル像面およびメリジオナル像面(タンジェンシャル像面)の差を全ズーム領域で小さくするのに適している。
【0031】
なお、第5のレンズ群G5の焦点距離fG5と、ズームレンズシステム10の広角端における焦点距離fwとは以下の条件(0−3)を満たしてもよい。諸収差の補正を容易にすることができる。下限は1.5であってもよく、上限は1.8であってもよい。収差補正をより容易に行うことができる。
1.4<|fG5|/fw<1.9 ・・・(0−3)
【0032】
このレンズシステム10において、第3のレンズ群G3および第4のレンズ群G4の組み合わせのレンズ群Gxの合成の屈折力は正で、上述したように、負のパワーのレンズ群G1との組み合わせで、物体側11の負のパワーが大きくなりすぎることを抑制でき、コンパクトなレンズシステム10を提供できる。このレンズシステム10においては、物体側11のレンズまたはレンズ群の径が最大になる広角端において、第3のレンズ群G3および第4のレンズ群G4が第1のレンズ群G1に最接近し、物体側11のレンズ径が増大することを抑制でき、コンパクトで軽量なレンズシステム10を提供することに寄与する。本例では、第3レンズ群G3が正のパワー、第4のレンズ群G4が第3のレンズ群G3に対し弱い負のパワーであるが、第4のレンズ群G4が正のパワーであってもよい。
【0033】
第3のレンズ群G3および第4のレンズ群G4からなるレンズ群Gxの広角端における合成焦点距離fGxwと、第1のレンズ群G1の焦点距離fG1とが以下の条件(1)を満たしてもよい。
0.75<|fGxw/fG1|<1.0 ・・・(1)
条件(1)の下限を下回ると、第1のレンズ群G1の負のパワーの比率が小さすぎてレンズシステム10の軽量化が難しくなり、上限を上回ると、第1のレンズ群G1の負のパワーの比率が大きすぎて収差補正、特に像面湾曲を良好に補正することが難しくなる。条件(1)の下限は0.8であってもよく、上限は0.9であってもよい。
【0034】
また、このレンズシステム10においては、固定されたリレーレンズ群であるレンズ群G6の物体側11に絞りStを設けることにより、ズーミングの際に絞りStを像面5に対して固定している。このため、ズーミングの際にF値(FNo.)が変わらないレンズシステム10を提供できる。したがって、ズーミングの際の焦点調整が容易で、画像の明るさの変動も小さく、取り扱いが容易で、収差補正能力の高いレンズシステム10を提供できる。
【0035】
このズームレンズシステム10は、第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4、第5のレンズ群G5および第6のレンズ群G6の合成の屈折力は正で、これらのレンズ群G3〜G6の広角端における合成焦点距離fGzwとズームレンズシステム10の焦点距離fwとは以下の条件(2)を満たしてもよい。
1.60≦fGzw/fw≦2.20 ・・・(2)
後方(像面側)12の正のパワーのレンズ群Gzに対して、第1のレンズ群G1のパワーは負で、全体としてレトロフォーカスタイプのズームレンズシステム10において、条件(2)の下限を下回ると、レンズ群Gzのパワーが大きすぎて変倍(ズーミングの際)における像面湾曲を補正することが難しく、逆に条件(2)の上限を上回るとレンズ群Gzのパワーが小さすぎてズーミングの際の球面収差の補正が難しくなる。下限は、1.70であってもよく、1.75であってもよい。上限は、2.10であってもよく、2.05であってもよい。
【0036】
このズームレンズシステム10の構成は、物体側11から順番に配置された、像面5に対して位置が固定された屈折力が負の、最も物体側のレンズ群(第1のレンズ群)G1と、フォーカシングの際に移動するフォーカスレンズ群(第2のレンズ群)G2と、ズーミングの際に反対方向に移動する屈折力が正および負のズームレンズ群(第3のレンズ群G3、第4および第5のレンズ群からなるレンズ群Gy)と、像面5に対して位置が固定され、物体側11に絞りが配置された、屈折力が正の、最も像面側のレンズ群(第6のレンズ群)G6とから構成されている。第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2とは物体側のレンズ群でフォーカス機能を含み、ズームレンズ群G3およびGyを挟んで像面側12に配置された第6のレンズ群G6は、収差補正を主に担当するリレーレンズ群としての機能を果たす。
【0037】
物体側11から、フォーカスの際に移動するレンズ群G2、ズーミングの際に移動するレンズ群G3およびGy、固定された絞りStという配置にすることにより、フォーカス調整の際に絞りStが動かずにF値が変動することを防止でき、さらに、コマ収差の補正に影響を与えることも防止でき、収差補正が良好なレンズシステム10を提供できる。
【0038】
フォーカスレンズ群である第2のレンズ群G2の屈折力は負であることが望ましく、フォーカス群G2を負のパワーとすることにより球面収差の補正を良好に行うことができる。さらに、フォーカスレンズ群である第2のレンズ群G2の合成焦点距離fG2と、ズームレンズシステム10の広角端における焦点距離fwとが以下の条件(3)を満たしてもよい。
5.0<|fG2/fw|<10.0・・・(3)
条件(3)の下限を下回ると、フォーカスレンズ群G2のパワーが強くなり、フォーカスした際の画角変動が大きくなりすぎる。条件(3)の上限を上回ると、フォーカスレンズ群G2のパワーが小さすぎてフォーカスの際の移動量が大きくなり、レンズシステム10が大型になる。条件(3)の下限は6.7であってもよい。
【0039】
このレンズシステム10においては、最も像面側12に配置され、像面5に対して固定された第6のレンズ群G6の全長LG6(絞りStから最も像面側12のレンズの像面側12の面までの距離)をレンズシステム10の全長LA(最も物体側11のレンズの物体側11の面から最も像面側12のレンズの像面側12の面までの距離)に対して十分に長く確保し、収差補正に必要な十分な枚数のレンズを配置できるようにしている。したがって、ズームレンズシステム10の全長LAと第6のレンズ群G6の長さ(全長)LG6とは以下の条件(4)を満たしてもよい。
0.3≦LG6/LA≦0.4・・・(4)
条件(4)の下限を下回ると、収差補正に十分な数のレンズ枚数を配置することが難しくなり、上限を上回ると、ズーミング、フォーカシングのためのレンズを配置し、また移動するスペースを確保することが難しくなる。
【0040】
レンズシステム10においては、収差補正を主体としたリレーレンズ群である最も像面側12の第6のレンズ群G6は、絞りStの像面側12に、互いに接近または接合するように配置された複数のレンズにより構成された前群GFと、前群GFから像面5に向かって離れて配置された結像用の後群GBとから構成できる。前群GFは、物体側11から順に、第1の両凸レンズL61と、第1の両凹レンズL62と、第2の両凸レンズL63と、第3の両凸レンズL64、第2の両凹レンズL65と、第4の両凸レンズL66との6枚のレンズにより構成されている。さらに、前群GFは、これら6枚のレンズL61〜L66(6枚組のレンズ)に含まれる少なくともいずれかのレンズにより構成された2組の接合レンズ(バルサムレンズ)B3およびB4を含む。本例においては、第1の両凹レンズL62と、第2の両凸レンズL63とにより接合レンズB3が構成され、第3の両凸レンズL64と第2の両凹レンズL65とにより接合レンズB4が構成されている。接合レンズは3枚のレンズが接合されたレンズ(3枚バルサム)であってもよい。
【0041】
前群GFの組み合わせは、軸外物点と光軸13とを含む面であるメリジオナル(タンジェンシャル)面における収差補正に重要である。最も像面側12の第6のレンズ群G6の前群GFおよび後群GBの合成屈折力は正で、前群GFの合成焦点距離fGFと、像面側のレンズ群である第6のレンズ群G6の合成焦点距離fG6とが以下の条件(5)を満たしてもよい。
0.8<fGF/fG6<1.0・・・(5)
条件(5)の下限を下回ると、前群GFのパワーが強すぎてメリジオナル(タンジェンシャル)の像面湾曲と倍率色収差の補正が難しくなり、上限を上回ると、前群GFのパワーが弱すぎて像面湾曲と球面収差の補正が難しくなる。
【0042】
第6のレンズ群G6の後群GBは結像用のレンズ群であり、正負2枚のレンズを含むことが望ましい。したがって、第6のレンズ群G6は、前群GFおよび後群GBを含めて少なくとも8枚のレンズを含むことが望ましく、条件(4)のスペースを確保することにより、それらの枚数のレンズを配置することができる。
【0043】
図1にレンズシステム10の幾つかの状態におけるレンズ配置を示している。
図1(a)は、フォーカス位置が無限遠の広角端のレンズ配置を示し、
図1(b)は、フォーカス位置が無限遠の広角端と望遠端との中間のレンズ配置を示し、
図1(c)は、フォーカス位置が無限遠の望遠端におけるレンズ配置を示している。さらに、
図1(d)は、フォーカス位置が中間(1740mm)の望遠端におけるレンズ配置を示し、
図1(e)は、フォーカス位置が最短(近距離、340mm)の望遠端におけるレンズ配置を示している。
【0044】
このレンズシステム10は6群構成であり、最も物体側11の合成屈折力(パワー)が負の第1のレンズ群G1、および最も像面側12の合成屈折力(パワー)が正の第6のレンズ群G6は、フォーカシングに際しても、ズーミングに際しても像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。第1のレンズ群G1の像面側12に近接して配置された、パワーが負の第2のレンズ群G2はズーミングの際は移動せず、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、物体側11に単調に移動する。
【0045】
第2のレンズ群G2および第6のレンズ群G6の間に配置された、パワーが正の第3のレンズ群G3、パワーが負の第4のレンズ群G4およびパワーが負の第5のレンズ群G5は、ズーミングの際に移動し、フォーカシングの際には移動しないズーミング用のレンズ群である。第3のレンズ群G3は、広角端から望遠端にズーミングする際に物体側11に移動し、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5は、広角端から望遠端にズーミングする際に像面側12に移動する。さらに、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5は互いに独立して移動する。したがって、第3、第4および第5のレンズ群G3〜G5はズーミングの際に移動するズームレンズ群を構成し、第3のレンズ群G3は、広角端から望遠端にズーミングする際に物体側に移動する、正の屈折力の第1のサブレンズ群であり、第4および第5のレンズ群G4およびG5は、広角端から望遠端にズーミングする際に像面側に移動する、合成の屈折力が負の第2のサブレンズ群および第3のサブレンズ群である。
【0046】
図2に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。曲率半径(Rdy)は物体側11から順に並んだ各レンズの各面の曲率半径(mm)、間隔Thiは各レンズ面の間の距離(mm)、有効径H*2は各レンズ面の有効径(直径、mm)、屈折率ndは各レンズの屈折率(d線)、アッベ数νdは各レンズのアッベ数(d線)を示している。なお、最終の間隔、本例においてはd35がレンズシステム10と撮像デバイス5との距離(バックフォーカス、BF)を示す。以下においても同様である。
【0047】
図3には、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示す。この例では、第1のレンズ群G1の最も像面側12のレンズL13の物体側11の面S5と、第6のレンズ群G6の後群GBに属する負のメニスカスレンズL67の像面側12の面S32が非球面となっている。固定され、フォーカシングおよびズーミングの際に動かないこれらのレンズ群G1およびG6のそれぞれに、少なくとも一方の面が非球面となったレンズを少なくとも1枚含めることにより、フォーカスの全域およびズーミング(変倍)の全域にわたり、安定して良好に収差補正をすることができる。
【0048】
非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、
図3に示した係数K、A、B、C、DおよびEを用いて次式(X)で表わされる。以降の実施形態においても同様である。なお、「en」は、「10のn乗」を意味する。
X=(1/R)Y
2/[1+{1−(1+K)(1/R)
2Y
2}
1/2]
+AY
4+BY
6+CY
8+DY
10+EY
12・・・(X)
【0049】
図4に、レンズシステム10の広角端、望遠端および中間におけるデータを示している。
図4(a)に、焦点距離が無限遠のときの広角端、中間および望遠端における可変間隔d0、d6、d9、d14、d17およびd19の値を示し、
図4(b)は、焦点距離が中間(1740mm)の各可変間隔の値を示し、
図4(c)は、焦点距離が最短(最近接、340mm)の各可変間隔の値を示している。また、
図4(d)は、広角端、中間および望遠端におけるレンズシステム10の焦点距離fと、FNo.とを示している。
【0050】
図5および
図6に、レンズシステム10の球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。球面収差は、波長435.835nm(破線)と、波長587.560nm(実線)と、波長656.270nm(一点鎖線)とを示している。非点収差はタンジェンシャル光線Tとサジタル光線Sとを示している。以下に示す収差図においても同様である。
図5は、焦点距離が無限遠の広角端(
図5(a))、中間(
図5(b))および望遠端(
図5(c))を示し、
図6は、焦点距離が最近接の広角端(
図6(a))、中間(
図6(b))および望遠端(
図6(c))を示している。
【0051】
これらの図に示したレンズシステム10では、最も物体側11に配置された第1のレンズ群G1は、物体側11から配置された、物体側11に凸の正のパワーのメニスカスレンズL11と、物体側11に凸の負のパワーのメニスカスレンズL12と、物体側の凸の負のパワーのメニスカスレンズL13との3枚構成である。メニスカスレンズL13の物体側11の面S5は曲率が小さく(曲率半径が大きく)、ほぼフラットな面で、非球面となっている。
【0052】
フォーカスレンズ群である第2のレンズ群G2は、物体側11から順に配置された、両凹の負レンズL21と、両凸の正レンズL22とから構成されており、これら2つのレンズL21により物体側11に凹のメニスカスタイプの接合レンズB1が構成されている。フォーカス用のレンズ群である第2のレンズ群G2に、正・負のパワーを備えた接合レンズB1を採用し、最も簡易な構成として接合レンズB1のみにより第2のレンズ群G2を構成することができる。接合レンズB1を採用することにより、フォーカス領域全域、すなわち、無限遠から近距離にわたり、倍率色収差を小さくできる。特に、物体側11から負−正の組み合わせにすることにより、球面収差および軸上色収差も良好に補正できる。
【0053】
また、この第2のレンズ群G2の接合レンズB1は、両凹の負の屈折力のレンズと、両凸の正の屈折力のレンズとの組み合わせであり、球面収差および軸上色収差を良好に補正できる。接合レンズB1を構成する負の屈折力のレンズL21および正の屈折力のレンズL22は、両方とも物体側11の凹のメニスカスレンズであってもよく、この構成でも球面収差および軸上色収差を良好に補正できるが球面収差の補正を考えると本例の組み合わせが優れている。
【0054】
ズーミング用のレンズ群である第3のレンズ群G3は、物体側11から、物体側11に凸の負のメニスカスレンズL31と、両凸の正レンズL32と、両凸の正レンズL33との3枚構成であり、負の屈折力のレンズL31および正の屈折力のレンズL32により接合レンズB2が構成されている。物体側11から負−正−正のパワー配置は、レトロフォーカスタイプであり、球面収差、像面湾曲を効果的に補正できる。さらに、負レンズL31を物体側11に凸の負メニスカスレンズまたはそれに近い両凹みのレンズとし、それに隣接して両凸レンズL32を配置することで球面収差をさらに良好に補正できる。
【0055】
それらを接合したバルサムレンズB2とすることにより軸上色収差および倍率色収差の補正にも効果的な構成となる。主にバリエータとして機能する第3のレンズ群G3に、接合レンズB2を含めることにより、広角端から望遠端のズーミングの全域にわたり、軸上色収差を良好に補正できる。
【0056】
第3のレンズ群G3の像面側12の正の屈折力のレンズL33の屈折率nL33は以下の条件(6−1)を満たし、アッベ数νdL33は以下の条件(6−2)を満たしてもよい。
1.65<nL33<1.90 ・・・(6−1)
40<νdL33<60 ・・・(6−2)
屈折率が条件(6−1)の下限を下回ると、球面収差の補正が難しくなり、アッベ数が条件(6−2)の下限を下回ると、軸上色収差の補正が難しくなる。条件(6−1)の上限は1.80であってもよく、条件(6−2)の下限は50であってもよい。
【0057】
第3のレンズ群G3に、高屈折率で球面収差および像面湾曲の補正に適しているが、アッベ数が低く色収差に適さない特性のレンズL33を、色収差の補正に適した接合レンズB2と組み合わせて使用することにより、広角端から望遠端の全域にわたり、色収差、球面収差および像面湾曲を含めた諸収差を良好に補正できる。
【0058】
第3のレンズ群G3の像面側12に位置し、広角端から望遠端へズーミングの際に、第3のレンズ群G3と反対側の像面側12へ移動する第4のレンズ群G4は、物体側から負の屈折力のレンズL41と、正の屈折力のレンズL42との2枚のレンズで構成され、第5のレンズ群G5は、負の屈折力のレンズL51の一枚で構成されている。第4のレンズ群G4は、第5のレンズ群G5のパワーより絶対値が弱い負のパワーを備えているが、弱い正のパワーを備えていてもよい。
【0059】
本例の第4のレンズ群G4の屈折力は負であり、両凹の負レンズL41と物体側11に凸の正のメニスカスレンズL42とにより接合レンズB5を構成している。両凹の負レンズL41はコマ収差を補正するのに適している。物体側11に凸のメニスカスレンズL42は像面湾曲を補正するのに適している。さらに、これらを接合レンズB5とすることにより、サジタル像面およびメリジオナル像面の差を全ズーム域(全ズーム位置)で良好に補正できる。
【0060】
負の屈折力のレンズL41および正の屈折力のレンズL42は、両方とも物体側11に凸のメニスカスレンズであってもよい。いずれの場合も、隣接するレンズL41およびL42の隣接する面S16およびS17は物体側11に凸の面であり、物体側11の面S16の曲率が面S17の曲率に対し大きく(曲率半径が小さく)または同じとし、両面のピッツバール和を小さくし、像面湾曲の補正に適した構成とすることができる。
【0061】
負の屈折力のレンズL41の像面側12の面S16の曲率半径RL41bと、正の屈折力のレンズL42の物体側11の面S17の曲率半径RL42fとは以下の条件(7)を満たしてもよい。
0.8≦RL41b/RL42f≦1.0 ・・・(7)
条件(7)の下限を下回ると、隣接する物体側11に凸の面S16およびS17の曲率の差が大きくなり望遠端側の像面湾曲の補正が難しくなる。条件(7)の上限を上回ると、面S16およびS17の曲率差が逆転してしまい広角端側の像面湾曲の補正が難しくなる。したがって、条件(7)を満たすことにより、ズーミングの全域で像面湾曲を良好に補正できる。条件(7)の下限は、0.9であってもよい。このケースは条件(7)の上限に相当する。
【0062】
第4のレンズ群G4の物体側11の負の屈折力のレンズL41の焦点距離fL41と、像面側12の正の屈折力のレンズL42の焦点距離fL42は、以下の条件(8)を満足してもよい。
0.8<|fL41|/fL42<1.0 ・・・(8)
条件(8)の下限を下回ると、負の屈折力のレンズL41のパワーが強すぎて非点収差と球面収差との補正が難しくなる。一方、条件(8)の上限を上回ると、正の屈折力のレンズL42のパワーが強すぎて倍率色収差と軸上色収差との補正が難しくなる。
【0063】
さらに、これらのレンズL41およびL42と、広角端におけるレンズシステム10の焦点距離fwとは以下の条件(9−1)および(9−2)を満たしてもよい。
1.0< |fL41|/fw <2.0 ・・・(9−1)
1.0< fL42/fw <2.0 ・・・(9−2)
条件(9)の下限を下回ると、それぞれのレンズL41およびL42のパワーが強すぎて倍率色収差、球面収差および軸上色収差の補正が難しくなる。上限を上回ると、それぞれのレンズL41およびL42のパワーが弱すぎて軸上色収差および非点収差の補正が難しくなる。
【0064】
本例のレンズシステム10において負のパワーの第5のレンズ群G5は、両凹の負レンズL51の一枚構成であり、最も簡易な構成で、バリエータとしての機能を果たす、負のパワーを確保している。
【0065】
第6のレンズ群G6は、上述したように、固定された絞りStの像面側12に、物体側11から順番に配置された両凸レンズL61と、両凹レンズL62と、両凸レンズL63と、両凸レンズL64、両凹レンズL65と、両凸レンズL66と、像面側12に凸の負のメニスカスレンズL67と、両凸レンズL68との8枚のレンズにより構成されている。レンズL62およびL63は接合されて接合レンズB3を構成し、レンズL64およびL65は接合されて接合レンズB4を構成している。また、レンズL61、接合レンズ3およびB4,レンズL66は、絞りStの近くにほぼ最小間隔で配置されており、前群GFを構成している。負のメニスカスレンズL67および両凸の正レンズL68は、前群GFから像面側12に離れて配置されて後群GBを構成しており、レンズL67およびL68はほぼ最小間隔を開けて配置されている。前群GFの合成焦点距離fGFと、第6のレンズ群G6の合成焦点距離fG6とが条件(5)を満たすことは上述した通りである。
【0066】
レンズL67の像面側12の面S32が非球面であり、像面湾曲を良好に補正できる。このレンズシステム10においては、絞りStを挟んで固定された第1のレンズ群G1と第6のレンズ群G6のそれぞれに少なくとも一面の非球面を配置している。それぞれの群の非球面は、例えば、第1のレンズ群G1に含まれる非球面は歪曲収差を補正するのに好適であり、第6のレンズ群G6に配置された非球面は像面湾曲を補正するのに好適である。さらに、絞りStを挟んで両側、すなわち、物体側11および像面側12に非球面を配置することにより絞りStの前後で発生するタンジェンシャルコマ収差も良好に補正できる。
【0067】
このレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
FNo.:2.6 (固定)
全長LA(mm): 225.0 (固定)
バックフォーカス(mm): 33.98 (固定)
重心までの長さ(広角端)Lgw(mm): 85.77
重心までの長さ(望遠端)Lgt(mm): 93.69
重心の移動量ΔLg(mm): 7.92
第6のレンズ群の全長LG6(mm): 79.46
レンズシステムの広角端における合成焦点距離fw(mm): 40.01
第3および第4のレンズ群の広角端の合成焦点距離fGxw(mm): 63.81
第3〜第6のレンズ群の広角端の合成焦点距離fGzw(mm): 72.73
第6のレンズ群の前群の合成焦点距離fGF(mm): 54.59
第4のレンズ群の負のレンズL41の焦点距離fL41(mm): −45.02
第4のレンズ群の正のレンズL42の焦点距離fL42(mm): 48.98
条件(0−1) (Lgw/LA): 0.381
条件(0−2) (ΔLg/LA): 0.0352
条件(0−3) (|fG5|/fw): 1.58
条件(1) (|fGxw/fG1|): 0.866
条件(2) (fGzw/fw): 1.818
条件(3) (|fG2/fw|): 7.49
条件(4) (LG6/LA): 0.353
条件(5) (fGF/fG6): 0.914
条件(6−1) (nL33): 1.73
条件(6−2) (νdL33): 54.7
条件(7) (RL41b/RL42f): 1.0
条件(8) (|fL41|/fL42): 0.919
条件(9−1) (|fL41|/fw): 1.125
条件(9−2) (fL42/fw): 1.224
【0068】
図1に示したレンズシステム10は、条件(0−1)〜(9−2)のすべてを満足しており、長さが固定されたコンパクトなズームレンズシステムであり、6群19枚構成のレンズシステムであるが、重心が比較的像面側のバランスの良い、手でも持ちやすい位置にあり、ズーミングの際の重心の移動が少なく、取り扱い(取り回し)が容易なレンズシステムである。さらに、このレンズシステム10においては、ズーミングの際にFNo.は固定され、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、
図5および
図6に示すように、ズーミングの全域およびフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。
【0069】
また、このレンズシステム10においては、フォーカシングはレンズシステム10の前方(物体側)11の第2のレンズ群G2に集中し、ズーミングはレンズシステム10の中央の第3、第4および第5のレンズ群G3〜G5に集中した構成となっている。このため、このレンズシステム10を含むレンズユニット16または撮像装置1においては、焦点距離の調整機能(機構)を前方に集中でき、変倍の調整機能(機構)を後方または中央に集中して配置することができる。したがって、これらの機構も簡易化でき、さらに軽量、高性能でコンパクトなレンズユニット16および撮像装置1を提供できる。
【0070】
図7に、撮像装置1の異なる例を示している。この撮像装置(カメラ)1も、光学系(撮像光学系、結像光学系、レンズシステム)10と、光学系10の像面側(画像側、撮像側、結像側)12に配置された撮像素子(撮像デバイス、像面)5とを有する。光学系10は、撮像用のズームレンズシステム10であって、6群19枚構成のレンズシステムである。レンズシステム10は、上記の実施例と同様に、ホルダー15に収納されたレンズユニット16として提供できる。
【0071】
図7は、
図1と同様にレンズシステム10の幾つかの状態におけるレンズ配置を示しており、
図7(a)は、フォーカス位置が無限遠の広角端のレンズ配置を示し、
図7(b)は、フォーカス位置が無限遠の広角端と望遠端との中間のレンズ配置を示し、
図7(c)は、フォーカス位置が無限遠の望遠端におけるレンズ配置を示している。さらに、
図7(d)は、フォーカス位置が中間(1740mm)の望遠端におけるレンズ配置を示し、
図7(e)は、フォーカス位置が最短(近距離、340mm)の望遠端におけるレンズ配置を示している。
【0072】
このレンズシステム10も6群構成であり、最も物体側11の合成屈折力(パワー)が負の第1のレンズ群G1、および最も像面側12の合成屈折力(パワー)が正の第6のレンズ群G6は、フォーカシングに際しても、ズーミングに際しても像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。第1のレンズ群G1の像面側12に近接して配置された、パワーが負の第2のレンズ群G2はズーミングの際は移動せず、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、物体側11に単調に移動する。
【0073】
第2のレンズ群G2および第6のレンズ群G6の間にズーミング用のレンズ群G3〜G5が配置されており、本例では、第3のレンズ群G3のパワーが正、第4のレンズ群G4のパワーが正、第5のレンズ群G5のパワーが負となっている。これらのレンズ群G3〜G5は、ズーミングの際に移動し、フォーカシングの際には移動しないズーミング用のレンズ群である。第3のレンズ群G3は、広角端から望遠端にズーミングする際に物体側11に移動し、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5は、広角端から望遠端にズーミングする際に像面側12に移動する。さらに、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5は互いに独立して移動する。
【0074】
図8に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図9に、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示している。この例では、第1のレンズ群G1の最も像面側12のレンズL13の物体側11の面S5と、第6のレンズ群G6の後群GBに属する負のメニスカスレンズL67の物体側11の面S32が非球面となっている。
図10に、レンズシステム10の広角端、望遠端および中間におけるデータを示している。
図10(a)に、焦点距離が無限遠のときの広角端、中間および望遠端における可変間隔d0、d6、d9、d14、d18およびd20の値を示し、
図10(b)は、焦点距離が中間(1740mm)の各可変間隔の値を示し、
図10(c)は、焦点距離が最短(最近接、340mm)の各可変間隔の値を示している。また、
図10(d)は、広角端、中間および望遠端におけるレンズシステム10の焦点距離fと、FNo.とを示している。
【0075】
図11および
図12に、レンズシステム10の球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。
図11は、焦点距離が無限遠の広角端(
図11(a))、中間(
図11(b))および望遠端(
図11(c))を示し、
図12は、焦点距離が最近接の広角端(
図12(a))、中間(
図12(b))および望遠端(
図12(c))を示している。
【0076】
このレンズシステム10の基本的な構成は
図1に示したレンズシステム10と共通する。第1のレンズ群G1は、最も物体側11に固定された(ズーミングおよびフォーカシングの際に移動しない)負のパワーのレンズ群であり、第2のレンズ群G2は、無限遠から最近接にフォーカシングする際に物体側11に移動する負のパワーのレンズ群であり、ズーミングの際は移動しないレンズ群である。本例の第2のレンズ群G2は、物体側11から順に配置された、物体側11に凹の負のメニスカスレンズL21と、物体側11に凹みの正のメニスカスレンズL22とからなる接合レンズB1により構成されている。
【0077】
第3のレンズ群G3は、広角端から望遠端にズーミングする際に物体側11に移動する正のパワーのレンズ群であり、フォーカシングの際は移動しないレンズ群である。本例の第3のレンズ群G3は、物体側11の面がほぼフラットに両凹の負レンズL31と、両凸の正レンズL32と、両凸の正レンズL33との3枚構成であり、負の屈折力のレンズL31および正の屈折力のレンズL32により接合レンズB2が構成されている。
【0078】
第4のレンズ群G4は、広角端から望遠端にズーミングする際に像面側12に移動する正のパワーのレンズ群であり、フォーカシングの際は移動しないレンズ群である。本例の第4のレンズ群G4は、負の屈折力のレンズL41および正の屈折力のレンズL42の2枚で構成され、両方とも物体側11に凸のメニスカスレンズである。
【0079】
第5のレンズ群G5は、広角端から望遠端にズーミングする際に像面側12に移動する負のパワーのレンズ群であり、フォーカシングの際は移動しないレンズ群である。本例の第5のレンズ群G5は、負の屈折力のレンズL51の一枚構成である。
【0080】
第6のレンズ群G6は、最も像面側12に配置され、ズーミングおよびフォーカシングの際に移動しない(固定された)正のパワーのレンズ群であり、物体側11から順番に配置された、固定された絞りStと、両凸レンズL61と、両凹レンズL62と、両凸レンズL63と、両凸レンズL64、両凹レンズL65と、両凸レンズL66と、像面側12に凸の負のメニスカスレンズL67と、両凸レンズL68との8枚のレンズにより構成されている。レンズL62およびL63は接合されて接合レンズB3を構成し、レンズL64およびL65は接合されて接合レンズB4を構成している。また、レンズL61、接合レンズ3およびB4,レンズL66は、絞りStの近くにほぼ最小間隔で配置されており、前群GFを構成している。負のメニスカスレンズL67および両凸の正レンズL68は、前群GFから像面側12に離れて配置されて後群GBを構成しており、レンズL67およびL68はほぼ最小間隔を開けて配置されている。レンズL67の物体側11の面S32が非球面である。
【0081】
このレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
FNo.: 2.6 (固定)
全長LA(mm): 225.0 (固定)
バックフォーカス(mm): 35.01 (固定)
重心までの長さ(広角端)Lgw(mm): 73.35
重心までの長さ(望遠端)Lgt(mm): 73.50
重心の移動量ΔLg(mm): 0.15
第6のレンズ群の全長LG6(mm): 74.82
レンズシステムの広角端における合成焦点距離fw(mm): 40.01
第3および第4のレンズ群の広角端の合成焦点距離fGxw(mm): 52.86
第3〜第6のレンズ群の広角端の合成焦点距離fGzw(mm): 78.82
第6のレンズ群の前群の合成焦点距離fGF(mm): 64.96
第4のレンズ群の負のレンズL41の焦点距離fL41(mm): −68.41
第4のレンズ群の正のレンズL42の焦点距離fL42(mm): 50.18
条件(0−1) (Lgw/LA): 0.326
条件(0−2) (ΔLg/LA): 0.0007
条件(0−3) (|fG5|/fw): 1.70
条件(1) (|fGxw/fG1|): 0.813
条件(2) (fGzw/fw): 1.97
条件(3) (|fG2/fw|): 7.55
条件(4) (LG6/LA): 0.333
条件(5) (fGF/fG6): 0.963
条件(6−1) (nL33): 1.59282
条件(6−2) (νdL33): 68.6
条件(7) (RL41b/RL42f): 0.953
条件(8) (|fL41|/fL42): 1.36
条件(9−1) (|fL41|/fw): 1.71
条件(9−2) (fL42/fw): 1.25
【0082】
図7に示したレンズシステム10は、条件(0−1)〜(5)、(7)および(9−1)、(9−2)を満足しており、長さが固定されたコンパクトなズームレンズシステムであり、6群19枚構成のレンズシステムであるが、重心が比較的像面側のバランスの良い、手でも持ちやすい位置にあり、ズーミングの際の重心の移動が少なく、取り扱い(取り回し)が容易なレンズシステムである。さらに、このレンズシステム10においては、ズーミングの際にFNo.は固定され、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、
図11および
図12に示すように、ズーミングの全域およびフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。
【0083】
また、フォーカシングの機構およびズーミングの機構を前および後ろにそれぞれ集中して配置することができる点も上述した実施例のレンズシステム10と共通し、軽量、高性能でコンパクトなレンズユニット16および撮像装置1を提供できる。