【解決手段】圧力スイッチは、軸方向に貫通するホール(H)を有し、かつ、軸方向の一方側にホール(H)に繋がる凹状載置部(105)を有する導電性ケース(10)と、軸方向の他方側に開口した凹状収容部(201)を備え、導電性ケース(10)の軸方向の一方側に固定される絶縁性ケース(20)と、載置部(105)に配置される第1の導電性端子(30)と、収容部(201)に配置され、かつ、軸方向に伸縮可能な導電性付勢部材(40)と、絶縁性ケース(10)の軸方向の一方側に固定され、かつ、導電性付勢部材(40)に接触する第2の導電性端子(50)と、絶縁性ケース(20)の軸方向の他端側に配置され、導電性付勢部材(40)と第1の導電性端子(30)とに接触可能、かつ、軸方向に変形可能なメタルプレート(60)と、を備える。
前記第1の導電性端子は、前記ホールを露出させる開口部と、前記開口部の周囲に前記第1のメタルプレートに向かって突出する複数の突出部と、を備える第2のメタルプレートである、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の圧力スイッチ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
なお、実施形態では、その説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造については、簡略化して説明する。また、図面において、各要素の寸法、形状、数などについても、一例であり、これに限定されるという主旨ではない。
【0016】
また、以下の説明において、軸方向とは、中心軸が延びる方向を意味し、径方向とは、中心軸に直交する方向を意味する。また、軸方向とは、中心軸に平行な方向、即ち、中心軸に対して0°の方向を示すと共に、中心軸に対して、0°よりも大きく、かつ、45°よりも小さい範囲の斜め方向も含むものとする。同様に、径方向とは、中心軸に直交する方向を示すと共に、中心軸に直交する方向に対して、0°よりも大きく、かつ、45°よりも小さい範囲の斜め方向も含むものとする。
【0017】
<圧力スイッチ>
図1は、圧力スイッチの外形の例を示す。
図2は、
図1の圧力スイッチを複数の要素に分解した図である。
図3は、導電性ケース及び導電性端子の例を示す。
図4は、絶縁性ケースの例を示す。
【0018】
本例の圧力スイッチは、入力圧力、例えば、液体の圧力、気体の圧力など、が所定圧力未満の場合にオン状態となり、入力圧力が所定圧力以上の場合にオフ状態となる、いわゆるノーマルクローズ型の圧力スイッチである。
【0019】
導電性ケース10は、軸方向の一方側が開口した有底筒形状であり、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などからなる。導電性ケース10の軸方向の一方側の外周面は、例えば、中心軸100を中心とする多角形状ネジ頭の外形101を有し、軸方向の一方側の内面側は後述する絶縁性ケース20の軸方向の他方側を受け入れる凹状の載置部105を備える。また、導電性ケース10の軸方向の他方側は、中心軸100を中心とするネジ山及びネジ溝から成るネジ部を端部に備える円筒固定部外形102を有する。この場合、圧力スイッチは、例えば、圧力制御の対象となる空間を取り囲む部材(パイプ、ハウジングなど)にネジ部を用いて容易に結合可能となる。
【0020】
導電性ケース10は、軸方向に直交する水平方向の中央に中心軸100が延びる軸方向に貫通するホール104を有し、かつ、軸方向の一方側にホール104に繋がる凹状載置部105を有する。導電性端子30及びシール部材70は、詳細は後述するが、載置部105の軸方向の一方側に配置される。また、入力圧力は、外部からホール104を経由して載置部105に印加される。
【0021】
導電性端子30は、例えば、アルミニウム合金、ニッケル合金など、を備える金属からなる円板であり、載置部105の中央部に配置される。載置部105の中央部は、軸方向の他方側に窪んでおり、導電性端子30は、その窪みたる端子配置部105−1内に配置される。また、導電性端子30は、固定部103により載置部105の中央部の窪み状端子配置部105−1に固定される。固定部103は、例えば、窪み状端子配置部105−1内において、径方向の内側に突出する複数の凸部である。
【0022】
導電性端子30は、全体が円盤状であり、中央にホール104を露出させる開口部304と、開口部304の周囲において、軸方向の一方側に向かって突出する複数の突出部301,302,303と、を備える。開口部304は、入力圧力をホール104から載置部105に導く役割を有し、複数の突出部301,302,303は、圧力スイッチのスイッチ接点として機能する。
【0023】
複数の突出部301,302,303は、スイッチ接点として機能すればよく、その数及び形状は、
図2及び
図3に示されるものに限定されない。例えば、複数の突出部301,302,303の形状は、
図2及び
図3に示すように、メタルプレートにテーパ状の切り込みを入れた後にその部分を折り曲げる形状や、
図5に示すように、メタルプレートに凸部を押し付けてその部分を突出させる形状などを採用できる。
【0024】
また、複数の突出部301,302,303の数は、3つに限定されない。導電性端子30は、複数の突出部301,302,303に代えて、1つの突出部を備えていてもよい。また、複数の突出部301,302,303の数は、2つ、又は、4つ以上でもよい。
【0025】
尚、導電性端子30が金属からなる円板であれば、圧力スイッチの低コスト化に貢献できる。なぜなら、金属からなる円板は、低価格であると共に、プレス加工などにより、容易に、ホール104を露出させる開口部304、及び、スイッチ接点としての複数の突出部301,302,303を形成できるからである。
【0026】
シール部材70は、載置部105において、導電性端子30を取り囲むように軸方向の一方側を向いた底面の周縁部分に配置され、例えば、ゴム製のOリングからなる。
【0027】
導電性ケース10の載置部105に配置されたシール部材70の軸方向の一方側にはメタルプレート60が密着して配置され、軸方向の他方側において端子配置部105−1に配置された導電性端子30と接触する。
【0028】
他方、絶縁性ケース20は、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、PTFEなどの樹脂成型品であり、軸方向の他方側に開口した凹状収容部201を備える。導電性付勢部材40は、収容部201内に配置され、導電性ケースの載置部105に絶縁性ケース20を組み付けた際に、メタルプレート60の軸方向の一方側の面に接触し、メタルプレート60をシール部材70と導電性端子30とに押圧する。
【0029】
導電性付勢部材40は、軸方向に伸縮可能である。即ち、導電性付勢部材40は、メタルプレート60を軸方向の他方側に付勢する。その結果、入力圧力が初期圧力、例えば、所定圧力未満の場合に、メタルプレート60は、導電性端子30の複数の突出部301,302,303に接触する。これは、圧力スイッチがノーマルクローズ型であることを意味する。
【0030】
導電性付勢部材40は、例えば、スプリングである。スプリングは、低価格であり、かつ、絶縁性ケース20の収容部201への取り付けが容易である。しかも、スプリングは、導電性であるため、スイッチ接点としてのメタルプレート60を外部端子としての導電性端子50に簡易に電気的に接続できる。
【0031】
メタルプレート60は、導電性付勢部材40と導電性端子30とに接触可能であり、かつ、軸方向に変形可能である。メタルプレート60は、例えば、アルミニウム合金、ニッケル合金などからなる。メタルプレート60は、例えば、
図2及び
図6に示すように、軸方向の他方側、即ち、導電性端子30に向かって突出するドーム状の突出部601を備える。この場合、圧力スイッチの初期状態において、導電性端子30とメタルプレート60との接触、即ち、2つのスイッチ接点の電気的接続を確実にとることができる。即ち、この突出部601は、ノーマルクローズ型圧力スイッチを簡易に実現する効果を有する。
【0032】
メタルプレート60は、例えば、所定圧力を閾値としてオン状態及びオフ状態のうちの1つをとり得るスナップアクションディスクである。オン状態は、メタルプレート60が導電性端子30に接触する状態であり、オフ状態は、メタルプレート60が導電性端子30から離れる状態である。
【0033】
このように、スナップアクションディスクは、所定圧力を閾値として、オン状態及びオフ状態のうちの1つをとる性質を有する。即ち、スナップアクションディスクは、入力圧力の振動、例えば、入力圧力が油圧の場合には油振に影響されることがない。
【0034】
従って、圧力スイッチは、入力圧力が所定圧力(閾値)未満のときにオン状態となり、入力圧力が所定圧力以上のときにオフ状態となる、という完全なオン/オフ動作が可能である。これは、チャタリングが完全に抑制されることを意味する。従って、圧力スイッチが適用される圧力システムの信頼性が向上する。
【0035】
メタルプレート60は、載置部105及び収容部201を空間的に分離するダイアフラムとして機能する。メタルプレート60がダイアフラムとしての機能を有することにより、載置部105及び収容部201は、互いに空間的に分離される。従って、入力圧力は、軸方向の他方側から一方側にメタルプレート60に作用する。また、導電性付勢部材40の付勢力は、軸方向の一方側から他方側にメタルプレート60に作用する。これは、入力圧力と導電性付勢部材40の付勢力の大小関係により、メタルプレート(ダイアフラム)60のセンターポイントが変位することを意味する。
【0036】
圧力スイッチは、このメタルプレート60の変位に基づき、オン/オフ動作する。
【0037】
導電性端子50は、絶縁性ケース20の軸方向の一方側に固定され、かつ、導電性付勢部材40に接触する。導電性端子50は、例えば、アルミニウム合金、ニッケル合金などからなる。導電性端子50は、例えば、中心軸100を中心とする窪み部を備え、窪み部の内面は、ネジ山及びネジ溝の形状511を有する。
【0038】
このように、導電性端子50が雌ネジを有する場合、例えば、圧力スイッチに接続されるケーブル又はワイヤの端子が雄ネジの外形を有することにより、圧力スイッチと、ケーブル又はワイヤとの接続が容易化される。
【0039】
導電性端子50は、例えば、C形状のCリング等の固定プレート80を導電性端子50端部の溝に嵌めることにより、絶縁性ケース20に固定される。固定プレート80は、導電体でもよいし、又は、絶縁体でもよい。
【0040】
また、固定プレート80は、例えば、インサート成型により、絶縁性ケース20の軸方向の一方側において絶縁性ケース20と一体化される。この場合、導電性端子50は、例えば、カシメにより、容易に、固定プレート80に固定される。これは、圧力スイッチの外部端子としての導電性端子50が、複雑な工程無しに、絶縁ケース20に取付可能であることを意味する。
【0041】
以上、説明したように、圧力スイッチのスイッチングは、導電性端子(スイッチ接点)30とメタルプレート(スイッチ接点)60との接触又は非接触により行われる。初期状態、例えば、入力圧力が所定圧力未満の場合、導電性付勢部材40の付勢力は、入力圧力よりも大きい。従って、メタルプレート60は、導電性端子30に接触する。一方、入力圧力が所定圧力以上の場合、入力圧力は、導電性付勢部材40の付勢力よりも大きい。従って、メタルプレート60は、導電性端子30から離れる。即ち、圧力スイッチは、ノーマルクローズ型として機能する。
【0042】
ノーマルクローズ型は、初期状態において圧力スイッチがオン状態であるため、例えば、初期状態における圧力不良を検出する圧力システムに有効である。例えば、自動車に使用される油圧システムでは、エンジンが始動されてから一定期間が経過した後、所定の油圧が生成される。従って、所定の油圧が得られるまで、圧力スイッチがオン状態であれば、油圧システムは、所定の油圧が得られたか否かを認識できるし、これを油圧警告灯などにより容易に運転者に伝えることができる。
【0043】
また、ノーマルクローズ型は、ノーマルオープン型に比べて、スイッチング機構が複雑になり易い。これは、ノーマルオープン型の初期状態がスイッチ接点の非接触状態であるのに対し、ノーマルクローズ型の初期状態がスイッチ接点の接触状態であることに起因する。そこで、本例では、導電性端子30は、ダイアフラムとしてのメタルプレート60を基準に、入力圧力がメタルプレート60に作用する側と同じ側に設けられる。この場合、圧力スイッチのスイッチング機構が簡略化される効果がある。即ち、圧力スイッチの低コスト化が実現される。
【0044】
また、メタルプレート60は、ゴム製ダイアフラムに比べて、高耐久性及び低コスト化を実現できる。さらに、メタルプレート60は、ゴム製ダイアフラムに比べて、チャタリングの発生を大幅に抑制できる。従って、メタルプレート60は、圧力スイッチが適用される圧力システムの信頼性を向上させる。
【0045】
また、メタルプレート60は、導電性である。従って、メタルプレート60が、ダイアフラムとして、かつ、スイッチ接点として使用されることにより、圧力スイッチのスイッチ接点の構造が簡略化される。即ち、ゴム製ダイアフラムが使用される場合、スイッチ接点は、カシメ、インサート成型などにより、ゴム製ダイアフラムに一体化させる必要がある。メタルプレートは、このような処理が不要である。
【0046】
このように、本例によれば、圧力スイッチの高耐久性及び低コスト化を実現できる。
【0047】
<断面構造の第1の例>
図7は、
図1の圧力スイッチの断面の第1の例を示す。
同図において、
図1乃至
図6で説明した要素と同じ要素には同じ符号を付すことによりその詳細な説明を省略する。
【0048】
載置部105は、導電性端子30が配置される端子配置部105−1と、シール部材70が配置されるシール配置部105−2と、を有する。端子配置部105−1は、導電性ケース10の中央部において軸方向の他方側に窪んだ窪み部である。また、シール配置部105−2は、端子配置部105−1の周辺部において、端子配置部105−1を取り囲む窪み部である。端子配置部105−1とシール配置部105−2は、両者の間に設けられる凸部107により互いに仕切られる。
【0049】
シール部材70は、導電性ケース10及びメタルプレート60間に挟まれることにより、導電性ケース10及びメタルプレート60間をシールする。圧力スイッチの組み立てにおいて、一般的に、導電性ケース10は、下側、絶縁性ケース20は、上側となる。この場合、シール部材70がシール配置部105−2に配置された後、絶縁性ケース20が導電性ケース10の上方から導電性ケース10に組み合わされる。この時、シール部材70は、下側の導電性ケース10のシール配置部105−2に配置されているため、シール部材70の脱落などがなく、シール部材70のセッティングが容易化される。
【0050】
収容部201は、絶縁性ケース20の中央部において軸方向の一方側に窪んだ窪み部である。収容部201には、導電性付勢部材40が配置される。絶縁性ケース20の軸方向の一方側の端面には、メタルプレート60が接触するプレート接触部202が配置される。
【0051】
尚、プレート接触部202の位置は、収容部201の径方向の外側である。これは、メタルプレート60の径方向のサイズが導電性付勢部材40の径方向のサイズよりも大きいからであり、プレート接触部202とシール部材70とがメタルプレート60を軸方向の両側から挟んで支持する。
【0052】
導電性ケース10と絶縁性ケース20の結合部106は、導電性ケース10の凸部と、絶縁性ケース20の凹部と、を備える。この場合、導電性ケース10の凸部が絶縁性ケース20の凹部に篏合されることにより、導電性ケース10と絶縁性ケース20の結合が容易化される。尚、導電性ケース10及び絶縁性ケース20の結合は、凹部と凸部の篏合に限定されることはない。例えば、両者の結合は、カシメ、接着剤、スナップフィットなど、を使用してもよい。
【0053】
図8A及び
図8Bは、
図7のメタルプレート60の変位の例を示す。
図8Aは、
図7の圧力スイッチにおいて、入力圧力が低い場合の圧力スイッチの状態を示す。
図8Bは、
図7の圧力スイッチにおいて、入力圧力が高い場合の圧力スイッチの状態を示す。
【0054】
これらの図から明らかなように、入力圧力(第1の圧力)が所定圧力未満の場合、メタルプレート60は、導電性端子30に接触する。即ち、圧力スイッチは、オン状態である(
図8A)。これに対し、入力圧力(第2の圧力)が所定圧力以上の場合、メタルプレート60は、導電性端子30から離れる。即ち、圧力スイッチは、オフ状態である(
図8B)。
【0055】
図9A及び
図9Bは、比較例としての圧力スイッチの状態を示す。
この比較例は、メタルプレート(スナップアクションディスク)に代わり、ゴム製(例えば、ポリウレタン製)ダイアフラムが使用される例である。
【0056】
これらの図において、
図7と同じ要素には同じ符号を付すことによりその詳細な説明を省略する。また、
図9Aは、
図8Aに対応し、
図9Bは、
図8Bに対応する。
導電性端子(スイッチ接点)91は、導電性ケース10内に設けられる。ゴム製ダイアフラム92は、導電性端子(スイッチ接点)93を有する。
【0057】
そして、入力圧力(第1の圧力)が所定圧力未満の場合、ゴム製ダイアフラム92は、変位しない。即ち、導電性端子91は、導電性端子93に接触する。即ち、圧力スイッチは、オン状態である(
図9A)。これに対し、入力圧力(第2の圧力)が所定圧力以上の場合、ゴム製ダイアフラム92は、上方へ変位する。即ち、導電性端子91は、導電性端子93から離れる。即ち、圧力スイッチは、オフ状態である(
図9B)。
【0058】
図10は、入力圧力とメタルプレートの変位との関係を示す。
実施例は、
図8A及び
図8Bの圧力スイッチの動作に関する。比較例は、
図9A及び
図9Bの圧力スイッチの動作に関する。
【0059】
横軸は、入力圧力、即ち、圧力スイッチの外部から圧力スイッチのホールに入力される液体又は気体の圧力を示す。縦軸は、ダイアフラムのセンターポイントの変位を示す。実施例では、ダイアフラムは、メタルプレート(スナップアクションディスク)である。比較例では、ダイアフラムは、ゴム製ダイアフラムである。
【0060】
また、d_onは、圧力スイッチがオン状態、即ち、2つのスイッチ接点が接触しているときのダイアフラムのセンターポイントの位置を示す。d_offは、圧力スイッチがオフ状態、即ち、2つのスイッチ接点が離れているときのダイアフラムのセンターポイントの位置を示す。
【0061】
同図から明らかなように、入力圧力が初期圧力である場合、実施例及び比較例共に、ダイアフラムのセンターポイントの位置は、d_onである。
【0062】
しかし、比較例では、入力圧力が次第に上昇すると、入力圧力の上昇に比例して、ダイアフラムのセンターポイントの位置は、変化する、即ち、d_onからd_offに向かって少しずつ変化する。これは、ダイアフラムのセンターポイントの位置が入力圧力の変動、例えば、油振に敏感に反応することを意味する。この場合、チャタリングが発生し、圧力スイッチのオン状態又はオフ状態は、安定しない。従って、圧力スイッチが適用される圧力システムの誤動作が誘発される。
【0063】
これに対し、実施例では、入力圧力が次第に上昇しても、入力圧力が所定圧力以上になるまでは、ダイアフラムのセンターポイントの位置は、変化しない、即ち、d_onを維持する。これは、入力圧力が変動しても、入力圧力が所定圧力以上にならない限り、ダイアフラムのセンターポイントの位置が変化しないことを意味する。言い換えれば、実施例では、入力圧力が所定圧力以上になったときのみ、ダイアフラムのセンターポイントの位置は、d_onからd_offに変化する。従って、実施例では、圧力スイッチのオン状態又はオフ状態が安定し、圧力スイッチが適用される圧力システムの動作も安定する。
【0064】
尚、初期圧力とは、圧力スイッチが適用される圧力システムが動作を開始した直後の入力圧力、即ち、圧力制御の対象となる液体又は気体の圧力を意味する。また、所定圧力とは、圧力制御の対象となる液体又は気体が到達すべき目標圧力のことである。
【0065】
<断面構造の第2の例>
図11は、
図1の圧力スイッチの断面の第2の例を示す。
同図において、
図1乃至
図6で説明した要素と同じ要素には同じ符号を付すことによりその詳細な説明を省略する。
【0066】
第2の例は、第1の例(
図7)の変形例である。
第2の例が第1の例と異なる点は、導電性ケース10と絶縁性ケース20との結合部106において、導電性ケース10の凸部が四角形であることにある。即ち、導電性ケース10の凸部の形状は、第1の例(
図7)のように三角形でもよいし、第2の例(
図11)に示すように四角形でもよい。
【0067】
<断面構造の第3の例>
図12は、
図1の圧力スイッチの断面の第3の例を示す。
同図において、
図1乃至
図6で説明した要素と同じ要素には同じ符号を付すことによりその詳細な説明を省略する。
【0068】
第3の例は、第1の例(
図7)の変形例である。
第3の例が第1の例と異なる点は、第一に、導電性ケース10の載置部105において、導電性端子30が配置される端子配置部105−1と、シール部材70が配置されるシール配置部105−2との間に、両者を仕切る凸部が存在しないことにある。但し、シール配置部105−2は、端子配置部105−1に対して、段差を有する。従って、シール部材70は、この段差を利用することにより、容易に、シール配置部105−2にセッティングできる。
【0069】
第二に、絶縁性ケース20の下面に段状の凹み部203を設け、そこにメタルプレート60を配置したことにある。
【0070】
<断面構造の第4の例>
図13は、
図1の圧力スイッチの断面の第4の例を示す。
同図において、
図1乃至
図6で説明した要素と同じ要素には同じ符号を付すことによりその詳細な説明を省略する。
【0071】
第4の例は、第3の例(
図12)の変形例である。
第4の例が第3の例と異なる点は、シール部材70が絶縁性ケース20の段状の凹み部203内に配置されることにある。即ち、シール部材70は、メタルプレート60と共に、段状の凹み部203に配置される。
【0072】
但し、シール部材70は、導電性ケース10とメタルプレート60との間に挟まれるように、段状の凹み部203に配置される。この場合、シール部材70とメタルプレート60とがまとめて段状の凹み部203に配置されるため、圧力スイッチの組み立てが容易化される。
【0073】
<断面構造の第5の例>
図14は、
図1の圧力スイッチの断面の第5の例を示す。
同図において、
図1乃至
図6で説明した要素と同じ要素には同じ符号を付すことによりその詳細な説明を省略する。
【0074】
第5の例は、第4の例(
図13)の変形例である。
第5の例が第4の例と異なる点は、導電性ケース10と絶縁性ケース20との結合部106において、導電性ケース10が径方向の外側の周面に水平方向の凹部を有し、絶縁性ケース20が軸方向の他方側の端部に径方向の内側に折り曲げられた凸部を有することにある。この場合、絶縁性ケース20の凸部が導電性ケース10の凹部に篏合されることにより、両者が結合される。
【0075】
この場合、導電性ケース10と絶縁性ケースとは、スナップフィット構造により結合されてもよい。例えば、絶縁性ケース20の凸部がスナップフィット構造のフック部を備え、導電性ケース10の凹部がフック部を固定するキャッチ部を備えれば、導電性ケース10と絶縁性ケースの結合は、さらに強固となる。
【0076】
尚、上述の第1乃至第5の例は、相互に、組み合わせることが可能である。
【0077】
<メタルプレートの変形例>
図15A及び
図15Bは、メタルプレートの変形例を示す。
メタルプレート60は、例えば、スナップアクションディスクとして機能していれば、どのような形を有していても構わない。
【0078】
例えば、
図6のメタルプレート60は、ドーム状の突出部601及びその周辺のフランジ部を備える。突出部601は、例えば、初期状態において、
図7の導電性端子30との接触を確保し、かつ、フランジ部は、
図7のプレート接触部202へのセッティングを容易化する。
【0079】
但し、例えば、
図12乃至
図14の圧力スイッチでは、フランジ部は、必ずしも必要ない。そこで、
図15A及び
図15Bに示すように、メタルプレート60は、ドーム状の突出部601のみを備えていてもよい。尚、
図15Aは、圧力スイッチが初期状態(オン状態)でのメタルプレート60の状態を示す。また、
図15Bは、圧力スイッチがオフ状態でのメタルプレート60の状態を示す。
【0080】
<適用例>
上述の圧力スイッチは、液体又は気体が所定圧力に到達したか否かを検出する圧力システムに適用可能である。例えば、入力圧力が油圧である場合、圧力スイッチは、油圧を取り扱う装置、例えば、自動車の油圧制御システムなどに適用可能である。
【0081】
自動車の分野では、自動変速機(AT、CVTなど)を駆動するために、油圧が必要である。また、エンジン及びトランスミッションなどの駆動部の潤滑及び冷却のためにも、油圧の発生が必要である。これらの油圧は、自動変速、潤滑、冷却といった目的を達成するために、所定圧力以上に維持されていることが重要である。即ち、これらの油圧が所定圧力未満である場合には、その旨を油圧警告灯などにより運転者に知らせなければならない。
【0082】
そのために、ノーマルクローズ型の圧力スイッチは有効である。即ち、これらの油圧が所定圧力未満である場合には、圧力スイッチがオン状態であるため、油圧警告灯を容易にオン状態にできるからである。また、油圧が所定圧力以上になった場合には、圧力スイッチがオフ状態となるため、油圧警告灯を容易にオフ状態できる。
【0083】
以下、上述の圧力スイッチが適用可能な圧力システムの具体例のいくつかを説明する。
【0084】
<圧力システムの第1の例>
図16は、圧力システムの第1の例を示す。
圧力システムは、圧力経路400と、圧力発生機401と、圧力スイッチ402と、制御回路403と、ケーブル404と、を備える。
【0085】
圧力経路400は、例えば、パイプ、油圧制御システムの場合は油路など、である。圧力経路400は、例えば、メタルなどの導電体からなる。圧力経路400は、固定電位、例えば、接地電位に設定される。
【0086】
圧力発生機401は、例えば、圧力経路400に流れる液体又は気体を初期圧力から所定圧力に上昇させる。圧力スイッチ402は、圧力経路400に連結され、圧力経路400内の液体又は気体の現在の圧力を入力圧力として入力する。圧力スイッチ402は、例えば、
図7の圧力スイッチである。
【0087】
制御回路403は、圧力スイッチ402のオン状態又はオフ状態に基づき、圧力発生機401を制御する。即ち、圧力スイッチ402がオン状態のとき、制御回路403は、圧力発生機401により、圧力経路400内の液体又は気体の圧力を上昇させる。また、圧力スイッチ402がオフ状態になると、制御回路403は、圧力発生機401により、圧力経路400内の液体又は気体の圧力を維持する。
【0088】
ケーブル404は、圧力スイッチ402と制御回路403とを接続する。
尚、圧力スイッチ402において、
図7と同じ要素には同じ符号を付すことによりその詳細な説明を省略する。
【0089】
このような圧力システムにおいて、導電性付勢部材40は、メタルプレート60を軸方向の他方側に付勢する。一方、入力圧力は、圧力スイッチ402のホール104に入力される。また、ケーブル404は、導電端子50に接続される。そして、入力圧力が所定圧力未満の場合、メタルプレート60は、導電性端子30に接触し、圧力スイッチ402は、オン状態である。また、入力圧力が所定圧力以上の場合、メタルプレート60は、導電性端子30から離れ、圧力スイッチ402は、オフ状態である。
【0090】
従って、制御回路403は、圧力スイッチ402のオン状態又はオフ状態に基づき、圧力経路400に流れる液体又は気体の圧力を簡易に制御できる。
【0091】
また、ノーマルクローズ型の圧力スイッチ402は、現在の圧力を所定圧力に維持する圧力システムに有効である。例えば、現在の圧力が所定圧力に到達したときに圧力発生機401を停止させる場合、現在の圧力が所定圧力未満のときに圧力スイッチ402がオン状態となり、現在の圧力が所定圧力以上のときに圧力スイッチ402がオフ状態となるため、制御回路403による圧力発生機401の制御が容易化される。
【0092】
<圧力システムの第2の例>
図17は、圧力システムの第2の例を示す。
図18は、
図17のコントロールバルブの例を示す。
圧力システムは、変速機ユニット500と、オイルポンプ503と、オイルパン504と、制御装置505と、ディスプレイ506と、を備える。
【0093】
変速機ユニット500は、変速機501と、変速機501に油圧を出力するコントロールバルブ502と、を備える。変速機501は、コントロールバルブ502からの油圧により制御されるアクチュエータを有する。コントロールバルブ502は、油圧を発生する変速制御バルブ507と、油圧が所定圧力に到達しているか否かを検出する圧力スイッチ508と、圧力スイッチ508のオン状態又はオフ状態に基づき、変速制御バルブ507を制御する制御回路509と、を備える。
【0094】
オイルは、オイルパン504から油路Aを経由してオイルポンプ503に供給される。オイルポンプ503は、エンジンが動いているときに動作する機械式オイルポンプでもよいし、又は、エンジンが停止しているときにも動作可能な電動オイルポンプでもよい。オイルポンプ503は、一定圧力のオイルを出力する。オイルポンプ503からのオイルは、油路Bを経由してコントロールバルブ502に供給される。
【0095】
変速制御バルブ507は、オイルポンプ503からのオイルに基づき、油圧を発生する。変速制御バルブ507内で生成された油圧は、油路C1を経由して、変速機501に供給される。また、変速制御バルブ507内の余分なオイルは、油路C2を経由して、オイルパン504に戻される。同様に、変速機501内の余分なオイルは、油路Dを経由して、オイルパン504に戻される。
【0096】
圧力スイッチ508は、変速制御バルブ507により生成される油圧が所定圧力未満の場合、オン状態である。また、圧力スイッチ508は、変速制御バルブ507により生成される油圧が所定圧力以上の場合、オフ状態である。制御回路509は、圧力スイッチ508がオン状態の場合、例えば、油圧を上げる指示を変速制御バルブ507に出力する。また、制御回路509は、圧力スイッチ508がオフ状態の場合、例えば、現在の油圧を維持する指示を変速制御バルブ507に出力する。
【0097】
制御回路509は、圧力スイッチ508がオン状態の場合、変速制御バルブ507により生成される油圧が所定圧力に到達していないことを示す信号φ1を制御装置505に出力する。制御装置505は、油圧が所定圧力に到達していないことを示す信号φ1を受けると、ディスプレイ506に油圧警告表示を行う旨の信号φ2を出力する。
【0098】
このような圧力システムによれば、圧力スイッチ508がオン状態の場合、制御回路509は、油圧が所定圧力に到達していないことを確認できる。また、圧力スイッチ508がオフ状態の場合、制御回路509は、油圧が所定圧力に到達したことを確認できる。従って、コントロールバルブ502は、圧力スイッチ508のオン状態又はオフ状態に基づき、変速機501を制御する油圧を高速に生成できる。
【0099】
<圧力システムの第3の例>
図19は、圧力システムの第3の例を示す。
圧力システムは、圧力経路400と、オイルポンプ404と、圧力スイッチ402と、油圧警告回路405と、ケーブル404と、を備える。圧力スイッチ402は、例えば、
図7の圧力スイッチである。
尚、圧力スイッチ402において、
図7と同じ要素には同じ符号を付すことによりその詳細な説明を省略する。
【0100】
オイルポンプ404は、圧力経路400に流れるオイルを初期圧力から所定圧力に上昇させる。圧力スイッチ402は、圧力経路400に連結され、オイルの油圧を入力圧力として入力する。油圧警告回路405は、圧力スイッチ402がオン状態の場合、オイルが所定圧力に到達していないことを示す警告灯LPを点灯し、圧力スイッチ402がオフ状態の場合、警告灯LPを消灯する。
【0101】
ここで、油圧警告回路405において、Vは、例えば、アクセサリ電源であり、SW_keyは、キースイッチである。また、ケーブル404は、圧力スイッチ402と油圧警告回路405とを接続する。
【0102】
このような圧力システムにおいて、圧力スイッチ402がオン状態の場合、油圧警告回路405は、圧力経路400に流れるオイルの油圧が所定圧力に到達していないことを示す警告灯LPを点灯し、圧力スイッチ402がオフ状態の場合、油圧警告回路405は、警告灯LPを消灯する。従って、油圧警告回路405は、圧力スイッチ402のオン状態又はオフ状態に基づき、オイルの油圧が所定圧力に到達したか否かを警告灯LPにより運転者に伝えることができる。
【0103】
また、本例では、圧力経路400は、固定電位、例えば、接地電位に設定される。この場合、圧力スイッチ402がオン状態であると、油圧警告回路405は、圧力経路400に短絡され、圧力スイッチ402がオフ状態であると、油圧警告回路405は、圧力経路400から切断される。
【0104】
この場合、油圧警告回路405は、圧力スイッチ402のオン状態又はオフ状態を認識し易い。
【0105】
図20は、圧力スイッチのオン/オフと油圧警告表示のオン/オフとの関係を示す。
例えば、自動車システムでは、キースイッチによりアクセサリ電源ACCがオンになると、
図19の油圧警告回路405が動作する。この時、圧力スイッチ402は、オン状態であるため、油圧警告回路405は、油圧警告表示をオン、即ち、油圧警告灯LPを点灯する。
【0106】
この後、自動車のエンジンがキースイッチにより起動されると、
図19のオイルポンプ(例えば、機械式オイルポンプ)301が作動する。また、
図19の圧力経路400内のオイルの油圧は、オイルポンプ404により次第に上昇する。
【0107】
そして、オイルが所定圧力に到達すると、圧力スイッチ402は、オン状態からオフ状態に変化する。従って、油圧警告回路405は、油圧警告表示をオフ、即ち、油圧警告灯LPを消灯する。
【0108】
このように、本発明に係わるノーマルクローズ型の圧力スイッチのオン/オフは、油圧警告表示のオン/オフに連動する。従って、本発明に係わるノーマルクローズ型の圧力スイッチは、自動車システムに適用されると、さらに効果的である。
【0109】
(むすび)
以上、説明したように、本発明の実施形態によれば、圧力スイッチの高耐久性及び低コスト化を実現できる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。これら実施形態は、上述以外の様々な形態で実施することが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更など、を行える。これら実施形態及びその変形は、本発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物についても、本発明の範囲及び要旨に含まれる。