【解決手段】引出5が閉鎖された状態で、係止部材10を下方に移動させると、ロッド10cの先端が係合穴11cに挿通され、ロッド10cと係合穴11cとが係合し、引出5は閉鎖状態に維持される。かかる状態でシャッタ6を閉じると、シャッタ6の緩衝部材6bがシャッタ受7と当接して、開口部2aをシャッタ6によって閉鎖できる。シャッタ6が閉鎖されると、加工ヘッド3からレーザ光Lが照射可能となるが、かかる状態ではロッド10cと係合穴11cとが係合しているので、引出5は閉鎖状態に維持され、引出5を引き出すことはできない。よって、引出5からレーザ光Lが放出されることを防止して、作業者の安全性を確保することができる。
開口部を有する筐体と、その筐体内に設けられ、ワークに向けてレーザ光を照射する加工ヘッドと、その加工ヘッドを前記筐体内に内包した状態で前記開口部を開閉可能に覆う扉体と、その扉体が開放されている場合に前記加工ヘッドによるワークへのレーザ光の照射を禁止するインターロック装置と、前記加工ヘッドの下方に配設されると共に前記扉体による前記開口部の開閉状態に関わらず引き出し操作可能に構成され前記加工ヘッドによるワークへのレーザ光の照射で発生する屑を収集する引出と、を備えたレーザ加工機において、
前記扉体による前記開口部の閉鎖状態では前記引出を引き出し不能な閉鎖状態にする一方、前記引出が引き出し可能な状態では前記扉体による前記開口部の閉鎖を妨げる引出安全具を備えていることを特徴とするレーザ加工機。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工機には、レーザ光の外部への放出を防ぐために、ワークを出し入れするための開口部にシャッタが設けられている。シャッタにはインターロック装置が設けられ、シャッタが開放されている場合は、レーザ加工機からのレーザ光の照射が禁止される。一方、シャッタが閉鎖され、レーザ加工機からレーザ光が照射されている場合は、インターロック装置によってシャッタが閉鎖状態に維持され、シャッタを開放することができない。
【0003】
このレーザ加工機には、レーザ加工時の切断屑を収集する引出を有するものがある。一般に引出には、装置コストの増加を避けるために、インターロック装置は装着されない。また引出はシャッタの外(シャッタとは異なる位置)に設けられ、シャッタの開閉状態に関わらず引き出し操作可能に構成される。よって、引出が引き出された状態でレーザ光が照射されたり、レーザ光が照射されている場合に引出が引き出されると、レーザ光が引出から外部へ放出され、周囲の作業者や環境に悪影響を及ぼす。
【0004】
さて、特許文献1には、前扉6および天井シャッタ8が閉鎖されている場合に限り旋盤加工を可能としたNC旋盤1が開示されている。このNC旋盤1のカバー5は、前方と上方とが開放されており、前方を前扉6によって、上方を天井シャッタ8によって、それぞれ閉鎖する。天井シャッタ8を閉鎖すると、ロック部材11がアンロック位置Cに移動し、前扉6の閉鎖が可能となる。前扉6を閉鎖することにより、閉検出スイッチが前扉6の閉鎖を検出してNC旋盤1による加工が可能となる。一方、天井シャッタ8が開放されている場合は、ロック部材11はロック位置Bに位置し前扉6と中央境界部5bとの間に挟みこまれるので、前扉6を閉鎖できない。前扉6が閉鎖できないと、閉検出スイッチが前扉6の閉鎖を検出できず、NC旋盤1による加工を開始できない。
【0005】
このように特許文献1のNC旋盤1によれば、前扉6の閉鎖は天井シャッタ8が閉鎖されている場合に限って可能となるので、閉検出スイッチを天井シャッタ8に設けずとも前扉6に設けるだけで、閉検出スイッチにより前扉6および天井シャッタ8の閉鎖を検出して、かかる閉鎖状態に限って旋盤加工を可能とすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のNC旋盤1では、天井シャッタ8は、前扉6によって閉鎖されるカバー5の内側に配設されるので、前扉6を閉鎖した状態では操作不能に構成される。よって、上記レーザ加工機に、即ち引出がシャッタの外(シャッタとは異なる位置)に設けられ、引出の引き出し操作がシャッタの開閉状態に関わらず可能に構成されたレーザ加工機に、特許文献1の技術を適用することはできないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、引出にインターロック装置を設けずとも、また引出が扉体による開口部の開閉状態に関わらず引き出し操作可能に構成されていても、引出が引き出された状態でレーザ光を照射したり、レーザ光の照射中に引出が引き出されることを防止できる引出安全具を備えたレーザ加工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明のレーザ加工機は、開口部を有する筐体と、その筐体内に設けられ、ワークに向けてレーザ光を照射する加工ヘッドと、その加工ヘッドを前記筐体内に内包した状態で前記開口部を開閉可能に覆う扉体と、その扉体が開放されている場合に前記加工ヘッドによるワークへのレーザ光の照射を禁止するインターロック装置と、前記加工ヘッドの下方に配設されると共に前記扉体による前記開口部の開閉状態に関わらず引き出し操作可能に構成され前記加工ヘッドによるワークへのレーザ光の照射で発生する屑を収集する引出と、を備え、前記扉体による前記開口部の閉鎖状態では前記引出を引き出し不能な閉鎖状態にする一方、前記引出が引き出し可能な状態では前記扉体による前記開口部の閉鎖を妨げる引出安全具を備えている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のレーザ加工機によれば、レーザ光がレーザ加工機の外部へ放出されるのを防ぐために、扉体が開放されている場合には、インターロック装置によって加工ヘッドによるワークへのレーザ光の照射は禁止される。レーザ加工機は、加工ヘッドによるワークへのレーザ光の照射で発生する屑を収集する引出を有している。引出が引き出された状態でレーザ光が照射されたり、レーザ光が照射されている場合に引出が引き出されると、レーザ光が引出から外部へ放出され、周囲の作業者や環境に悪影響を及ぼす。しかし、扉体による開口部の閉鎖状態では引出を引き出し不能な閉鎖状態にする一方、引出が引き出し可能な状態では扉体による開口部の閉鎖を妨げる引出安全具を備えているので、引出にインターロック装置を設けずとも、また引出が扉体による開口部の開閉状態に関わらず引き出し操作可能に構成されていても、引出が引き出された状態でレーザ光を照射したり、レーザ光の照射中に引出が引き出されることを防止できるという効果がある。
【0011】
請求項2記載のレーザ加工機によれば、請求項1の奏する効果に加え、引出安全具は、ロッドと把手とがT字型に接合された係止部材と、引出に配設され、係止部材のロッドと係合することで引出を引き出し不能な閉鎖状態にする係合部材とを有して構成される。よって、引出安全具を簡易な構成で実現できるという効果がある。また係止部材はロッドと把手とがT字型に接合されて構成されるので、係止部材を回転させるという簡単な操作で、係止部材の把手を扉体の閉鎖位置に配置して、係止部材のロッドと係合部材との係合を解除して引出を引き出し可能な状態にできると共に、扉体による開口部の閉鎖を妨げることができるという効果がある。
【0012】
請求項3記載のレーザ加工機によれば、請求項2の奏する効果に加え、次の効果を奏する。係合部材は上面板と側面板とがL字型に接合され、上面板は引出の高さに配設されている。よって、ロッドが係合部材の上面板の上面に当接すると、上面板の高さ分ロッドが上方に突出し、即ち係止部材が上方に突出する。従って、係止部材と係合部材との係合状態を、係止部材の位置によって認識できるという効果がある。
【0013】
請求項4記載のレーザ加工機によれば、請求項2又は3の奏する効果に加え、次の効果を奏する。係合部材は上面板と側面板とがL字型に接合され、上面板の奥行は引出の奥行の長さ以下に構成されている。よって、引出を一旦引き出した状態で係止部材の把手を扉体の閉鎖位置から解除し、再び引出を戻すと、係止部材のロッドと係合部材の側面板とが当接して引出を完全には閉鎖できない。従って、係止部材が不適切な位置にある場合には、それを引出が完全に閉鎖できないことによって認識できるという効果がある。なお「引出を引き出した状態」とは、必ずしも引出を全て引き出した状態でなくとも、側面板付近の屑を回収できる程度に引出を引き出した状態や、引出の最奥部の屑を回収するために、引出を最大限に引き出した状態も含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、レーザ加工機1の概要について説明する。
図1(a)はレーザ加工機1の斜視図であり、
図1(b)はレーザ光Lが照射可能である場合のIb−Ib断面線におけるレーザ加工機1の断面図であり、
図1(c)はレーザ光Lが照射禁止である場合のIb−Ib断面線におけるレーザ加工機1の断面図である。
【0016】
レーザ加工機1は、ワークWに対してレーザ光Lを照射し、ワークWの切断や、ワークWに対して微細な貫通孔を形成するための装置である。レーザ加工機1は、筐体2を有し、筐体2には、ワークWを出し入れするための開口部2aと、加工ヘッド3と、レーザ加工機1によってレーザ加工されるワークWを載置するためのステージ4と、引出5と、シャッタ6と、シャッタ受7と、インターロック装置8と、引出安全具9と、作業者からのレーザ出力指示等の入力およびレーザ加工機1の状態等の表示を行うための入出力装置20と、レーザ加工機1の各部を制御するための制御装置Cとが設けられる。
【0017】
加工ヘッド3は、筐体2の内部に配設され、ワークWに対してレーザ光Lを照射することで切断や微細な貫通孔の形成等のレーザ加工を施すものである。引出(ダストパン)5は、ステージ4の下方に配設され、ワークWへのレーザ加工の際に発生する切断屑等の廃物を収集して排出するためのものであり、シャッタ6の開閉状態に関わらず、独自に引き出し操作が可能に構成されている。
【0018】
シャッタ6は、開口部2aを開閉可能に覆うための扉体であり、複数枚の板状の部材で構成されたスラット6aを有している。スラット6aの一端にはゴム製の緩衝部材6bが設けられる。緩衝部材6bは、シャッタ6により開口部2aを閉鎖した場合に、後述のシャッタ受7と当接して開口部2aを塞ぐ。緩衝部材6b側のスラット6aにはハンドル6cが配設される。作業者がハンドル6cを開口部2aの上下方向に操作することで、シャッタ6により開口部2aが開閉される。緩衝部材6b及びハンドル6cの反対側であってスラット6aの後端には、ピン状の端子6dが配設される。シャッタ6が閉鎖されると、端子6dが後述のインターロック装置8に挿入され、加工ヘッド3によるレーザ光Lの照射が許可される。
【0019】
シャッタ受7は、筐体2におけるシャッタ6の下方であって、シャッタ6が閉鎖された場合に、緩衝部材6bと当接する位置に配設されたゴム製の部材である。即ち緩衝部材6bとシャッタ受7とが当接した場合に、シャッタ6は閉鎖状態となる。緩衝部材6bとシャッタ受7とは共にゴム製の部材で形成されるので、シャッタ6を閉鎖した時の衝撃を吸収でき、筐体2やシャッタ6の破損を防ぐことができる。なお、緩衝部材6b及びシャッタ受7の材質は、必ずしもゴム製に限られるものではなく、レーザ光Lを遮断し且つ衝撃を吸収できる部材であれば、ウレタンやスポンジ等を適宜代替できる。
【0020】
インターロック装置8は、筐体2の上部におけるシャッタ6と隣接する位置に配設され、シャッタ6の開閉状態を検知し、加工ヘッド3によるレーザ光Lの照射中は、シャッタ6の開放を禁止するための装置である。
図1(b)に示す通り、インターロック装置8は、シャッタ6が閉鎖され、端子6dがインターロック装置8に挿入されている場合に、シャッタ6の閉鎖状態である「端子ON信号」を制御装置Cに送信する。制御装置Cは、インターロック装置8から端子ON信号が入力され、入出力装置20から「レーザ出力指示」が入力された場合に、加工ヘッド3からレーザ光Lを照射させる。また、レーザ光Lが照射されている場合は、インターロック装置8内に設けられる電磁ロック(図示しない)により端子6dが固定されるので、シャッタ6を開放することはできない。
【0021】
一方、
図1(c)に示す通り、インターロック装置8は、シャッタ6が開放され、端子6dがインターロック装置8から離脱されている場合に、シャッタ6の開放状態である「端子OFF」を制御装置Cに送信する。制御装置Cは、インターロック装置8から端子OFF信号が入力された場合は、入出力装置20からレーザ出力指示が入力されても、加工ヘッド3からはレーザ光Lを照射させない。
【0022】
即ちインターロック装置8によって、シャッタ6が閉鎖されている場合のみ、レーザ光LがワークWに照射され、また、レーザ光Lが照射されている場合は、シャッタ6は開放できないので、シャッタ6が開放中にレーザ光Lが照射されることはない。よって、レーザ光Lが開口部2aからレーザ加工機1の外部に放出されることはないので、レーザ加工中における作業者の安全性が確保される。
【0023】
引出安全具9は、引出5の閉鎖状態の維持と、引出5が開放可能(引き出し可能)である場合はシャッタ6の閉鎖を妨げるものであり、係止部材10と、係合部材11とを有する。
図2を参照して、引出安全具9について説明する。
図2は、引出安全具9の拡大図であり、
図2(a1)は、引出5が閉鎖状態にされている場合の引出安全具9の側面図であり、
図2(a2)は、そのIIa2−IIa2断面線における断面図である。
図2(b1)は、シャッタ6を開放し、係止部材10の把手10aをシャッタ受7に係止した場合の引出安全具9の側面図であり、
図2(b2)は、そのIIb2−IIb2断面線における断面図である。
図2(c1)は、係止部材10の把手10aをシャッタ受7に係止した状態でシャッタ6の閉鎖を試みた場合の引出安全具9の側面図であり、
図2(c2)は、そのIIc2−IIc2断面線における断面図である。
【0024】
引出安全具9の係止部材10は、シャッタ受7と引出5との間に設けられ、後述の係合部材11と共に引出5を閉鎖状態に維持するための部材である。係止部材10は、作業者が把持するための把手10aと、後述の係合部材11の係合穴11cに挿通して係合するためのロッド10cとを、接続部材10bによってT字型に接合されたものである。作業者は、把手10aを把持しながら、係止部材10を上下方向へ移動したり、ロッド10cを中心に回転することによって、係止部材10を操作する。また、係止部材10はシャッタ受7と引出5との間に設けられた第1支持部材12によって支持される。具体的には、接続部材10bの下端(下面)と、第1支持部材12の上端(上面)とが当接することで、係止部材10の下方への移動が抑止され、係止部材10が支持される。
【0025】
把手10aの長さは、係止部材10を持ち上げて回転し、把手10aとシャッタ受7とを垂直に交差させた場合に、把手10aがシャッタ受7に係止できる長さとされる。また、接続部材10bとロッド10cとの長さは、把手10aをシャッタ受7に係止した状態ではロッド10cが係合穴11cに挿通されない長さとされ、一方で把手10aをシャッタ受7に係止させず、接続部材10bが第1支持部材12と当接した状態ではロッド10cが係合穴11cに挿通され、かつロッド10cの先端が引出5の底面に接触しない長さとされる。
【0026】
即ち係止部材10を下方に移動させると、接続部材10bが第1支持部材12の上部に当接される。このとき、ロッド10cは係合穴11cに挿通されつつも、ロッド10cの先端が引出5の底面に接触しない位置で、その移動が停止される。これにより、係止部材10が係合部材11と係合した場合に、ロッド10cによって引出5の底面を損傷させることはない。
【0027】
加えて、係止部材10のロッド10cの下部には、把手10aと同方向に突出したピン10dが配設される。第1支持部材12の下方には、第1支持部材12と共に係止部材10を支持するための第2支持部材13が配設される。第2支持部材13には、ピン10dを挿通するためのU字型のスリット13aが設けられる。スリット13aの底部の位置は、係止部材10を下方に移動させて、接続部材10bの下端が第1支持部材12の上端に当接した場合に、ピン10dとスリット13aの底部とが当接する位置とされる。また、ピン10dの長さは、第1支持部材12の幅よりも大きく形成される。
【0028】
係止部材10を下方に移動させた場合は、ピン10dはスリット13a間を移動するので、係止部材10の移動時のブレが抑えられ、係止部材10をスムーズに移動させることができる。また、係止部材10を下方に移動すると、ピン10dがスリット13aの底部に当接するので、上述した接続部材10bと第1支持部材12との関係と相まって、係止部材10を係合部材11に係合させる場合に、ロッド10cの先端が引出5の底面と接触することを防止して、引出5の底面の損傷を防止できる。
【0029】
引出安全具9の係合部材11は、引出5に設けられ、係止部材10と共に、引出5を閉鎖状態に維持するための部材である。係合部材11は、引出5の手前側(即ち引出5の把手側)に、引出5と略同一の高さの位置に設けられ、係止部材10のロッド10cが挿通される係合穴11cを有する上面板11aと、上面板11aとL字型に接合された側面板11bとを有している。上面板11aの、引出5の奥行方向の長さは、引出5の奥行の長さ以下とされる。
【0030】
係合穴11cは、引出5を完全に閉鎖した状態で、係止部材10を下方に移動させた場合に、ロッド10cが係合穴11cに挿通される位置に設けられる。即ち引出5を閉鎖した状態で、係止部材10を下方に移動させると、ロッド10cが係合穴11cに挿通されて、ロッド10cと係合穴11cとが係合される。これにより、引出5を閉鎖状態に維持することができ、引出5の開放(引き出し)を不能にすることができる。
【0031】
ここで、引出5と、シャッタ6と、引出安全具9との関係について、
図2を参照して説明する。まず、
図2(a1),(a2)において、引出5が閉鎖された状態で、係止部材10を下方に移動させると、ロッド10cの先端が係合穴11cに挿通され、ロッド10cと係合穴11cとが係合することで、引出5は閉鎖状態に維持される。かかる状態でシャッタ6を閉じると、シャッタ6の緩衝部材6bがシャッタ受7と当接して、開口部2aをシャッタ6によって閉鎖できる。シャッタ6が閉鎖されると、加工ヘッド3からレーザ光Lが照射可能となるが、かかる状態ではロッド10cと係合穴11cとが係合しているので、引出5は閉鎖状態に維持され、引出5を引き出すことはできない。よって、引出5からレーザ光Lが放出されることを防止して、作業者の安全性を確保することができる。
【0032】
さらに、係合穴11cの口径と、ロッド10cの先端の直径との差を小さく形成することにより、引出安全具9によって引出5を閉鎖状態に維持している場合に、引出5を引き出そうとしても、引出5の引き出し量(移動量)を最小限に抑えて、筐体2と引出5との隙間を最小限に抑えることができる。これにより、加工ヘッド3からレーザ光Lが照射されている状態で、誤って引出5を引き出そうとしても、筐体2と引出5との隙間から放出されるレーザ光Lを最小限に抑えることができる。
【0033】
図2(b1),(b2)は、シャッタ6を開放し、係止部材10の把手10aをシャッタ受7に係止した状態を図示している。係止部材10は、把手10aとロッド10cとが接続部材10bによってT字型に接合されているので、係止部材10を持ち上げ、把手10aを略90°回転させるという簡単な操作で、把手10aをシャッタ受7に係止することができる。かかる状態では、ロッド10cの先端は係合穴11cに挿通されず、ロッド10cと係合穴11cとは係合状態にないので、引出5を引き出すことができる。
【0034】
また、係止部材10の把手10aをシャッタ受7に係止しようして係止部材10を持ち上げた場合、ピン10dの長さは第1支持部材12の幅よりも大きく形成されるので、ピン10dと第1支持部材12の下端(下面)とが当接する。よって、係止部材10が第1支持部材12から抜けることを防ぐことができる。
【0035】
図2(c1),(c2)は、係止部材10の把手10aをシャッタ受7に係止した状態でシャッタ6の閉鎖を試みた場合の引出安全具9を示す。係止部材10の把手10aをシャッタ受7に係止し、シャッタ6を閉鎖した場合は、シャッタ6とシャッタ受7との間に把手10aが挟持される。従って、シャッタ6を完全に閉鎖することはできず、開放状態のままとなるので、インターロック装置8から制御装置Cへは端子OFF信号が入力される。よって、この状態で入出力装置20からレーザ出力指示が入力されても、加工ヘッド3からレーザ光Lが照射されることはない(
図1(c)参照)。これにより、把手10aがシャッタ受7に係止され、引出5が開放可能とされる場合は、レーザ光Lの照射が禁止されるので、引出5からレーザ光Lが放出されることがなく、作業者の安全性を確保することができる。
【0036】
図2では、ロッド10cが係合穴11cに挿通可能な位置に引出5がある場合について説明したが、それ以外の場合の引出5の位置と引出安全具9との関係について、
図3を参照して説明する。
図3(a)は、係止部材10のロッド10cが係合部材11の側面板11bに当接した場合の引出安全具9の側面図であり、
図3(b)は、係止部材10のロッド10cが係合部材11の上面板11aに当接した場合の引出安全具9の側面図である。
【0037】
作業者が引出5を引き出した状態で、把手10aとシャッタ受7との係止を解除し、再び引出5を戻した場合は、
図3(a)に示す通り、ロッド10cが側面板11bと当接する。かかる場合、ロッド10cが側面板11bと当接した位置より奥に引出5を押し込むことができず、引出5を閉鎖できない。よって、作業者は、引出5が閉鎖できないことによって、係止部材10がシャッタ受7に係止されず、係止部材10が不適切な位置にあることを認識することができる。なお「引出5を引き出した状態」とは、必ずしも引出5を全て引き出した状態でなくとも、側面板11b付近の切断屑等の廃物を回収できる程度に、引出5を引き出した状態や、引出5の最奥部の廃物を回収するために、引出5を最大限に引き出した状態も含むものである。
【0038】
また、
図3(b)に示すように、引出5を完全に閉鎖していない場合は、ロッド10cは係合穴11cに挿通されない。かかる状態で、係止部材10を下方へ移動させても、ロッド10cの先端は上面板11aと当接するので、係止部材10は上面板11aより下方に移動することができない。また、上面板11aは、引出5と略同一の高さに設けられるので、把手10aは、ロッド10cが係合穴11cに挿通されていない場合には、挿通されている場合よりも高い位置にある。よって、作業者は、引出5が完全に閉鎖され、ロッド10cが係合穴11cに挿通されて係合されているか否かを、即ち引出5が閉鎖状態に維持されているか否かを、係止部材10の把手10aの上下方向の位置によって認識することができる。
【0039】
以上説明した通り、本実施形態におけるレーザ加工機1の引出安全具9は、ロッド10cを係合穴11cに挿通することにより、係合穴11cとロッド10cとが係合し、引出5の閉鎖状態が維持される。即ち、かかる場合には、引出5を引き出すことができない。従って、ロッド10cを係合穴11cに挿通させるという簡単な操作で、引出5を閉鎖状態に維持できる。また、把手10aをシャッタ受7に係止すると、引出5の閉鎖状態が解除され、引出5は引き出し可能となるが、この状態では、シャッタ6とシャッタ受7との間に把手10aが挟持されるので、シャッタ6を閉鎖しようとしても、その閉鎖が妨げられ、シャッタ6を閉鎖できない。即ち、シャッタ6は開放状態のままとなる。
【0040】
インターロック装置8は、シャッタ6が開放されている場合、加工ヘッド3からワークWへのレーザ光Lの照射を禁止する。即ち引出5が引き出し可能である場合には、シャッタ6は開放状態のままとなるので、インターロック装置8によってレーザ光Lの照射が禁止される。このように、引出安全具9によって、引出5の閉鎖状態の維持と、引出5の引き出し可能状態におけるレーザ光Lの照射の禁止とを実現できる。さらに、引出5とシャッタ6とが離れて配設されている場合であっても、係止部材10の把手10aをシャッタ受7に係止でき、ロッド10cを係合穴11cに挿通できるように構成すればよいので、引出安全具9を簡易に実現できる。
【0041】
次に
図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第2支持部材13のスリット13aに代えて、バネ200を第2支持部材130とピン10dとの間に設け、また係合穴11cに代えて、係合部材11に対して係合板11dを設け、ロッド10cが係合板11dと係合することで、引出5の閉鎖状態を維持する。
【0042】
図4は第2実施形態における、レーザ加工機の引出安全具90の拡大図であり、
図4(a1)は、引出5が閉鎖状態に維持されている場合の引出安全具90の側面図であり、
図4(a2)は、そのIVa2−IVa2断面線における断面図である。
図4(b1)は、引出5が引き出し可能な状態でシャッタ6の閉鎖を試みた場合の引出安全具90の側面図であり、(b2)は、そのIVb2−IVb2断面線における断面図である。なお、上述した第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0043】
第2実施形態におけるレーザ加工機には、
図4(b1),(b2)に示す通り、係合部材11の係合穴11cに代えて係合板11dが設けられる。係合板11dは上面板11aと接合される。係合板11dの配設位置は、引出5を完全に閉鎖した状態で、係止部材10を下方に移動させた場合に、ロッド10cの側面に係合板11dが当接する位置とされる。よって、引出5を完全に閉鎖した状態で、係止部材10を下方に移動させ、ロッド10cが係合板11dと当接した場合は、引出5を引き出そうとしても、ロッド10cの側面と係合板11dとが係合するので、引出5は閉鎖状態に維持される。従って、かかる場合に、引出5を引き出すことはできない。
【0044】
また、レーザ加工機には、スリット13aに代えて、バネ200が配設される。バネ200は、ロッド10cに挿通され、バネ200の上端は、第2支持部材130と当接し、下端はピン10dと当接する。係止部材10を上方に持ち上げることで、
図4(b1),(b2)に示す通り、バネ200は縮み、係止部材10(即ちピン10d)には下方向への反発力がかかる。かかる状態で係止部材10を離した場合は、バネ200による反発力によって、係止部材10は下方に移動し、接続部材10bと第1支持部材12とが当接した位置で移動が止まる。よって、バネ200により係止部材10の下方への移動が促されるので、作業者は引出5の閉鎖状態の維持のために、係止部材10を下方に押し込む必要がなく、係止部材10の使い勝手が向上する。
【0045】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0046】
本実施形態において、引出安全具9,90が設けられるものとして、レーザ加工機1が例示された。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、マシニングセンタやNC旋盤等の、他の工作機械に対して、引出安全具9,90を設けるようにしても良い。
【0047】
本実施形態において、シャッタ6は、開口部2aの上下方向に対して開閉されるものとして構成された。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、開口部2aの左右方向に対して開閉されるものとしても良い。その際、シャッタ受7は開口部2aの左または右側に配設され、引出安全具9,90もシャッタ受7の配設位置に合わせて配設される。
【0048】
また、シャッタ6を上下または左右両開きのシャッタとして構成しても良い。その際は、上下または左右両側のシャッタ6における、いずれか一方の緩衝部材6bがシャッタ受7とされる。即ち係止部材10の把手10aが、一方の緩衝部材6bと他方の緩衝部材6b(即ちシャッタ受7)との間に挟まれることで、シャッタ6の閉鎖が妨げられる。
【0049】
本実施形態において、係止部材10は、把手10aとロッド10cとを、接続部材10bによってT字型に接合される構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、把手10aとロッド10cとをL字型に接合して構成しても良いし、十字型に接合して構成しても良い。また、把手10aとロッド10cとが一体型に形成されても良い。