【実施例】
【0024】
魚釣り用の釣竿1は種々あるが、その中での一つとして、疑似餌としてのルアーを用いてキャスティング等を行う形態の釣竿1を
図1に示している。
図1において、釣竿1は、ハンドル部2とその先端部に結合される竿体3で構成される。
ハンドル部2は、上面側に魚釣り用リール50を取り付けるリール取り付け部4を有し、下側面にハンドル部2を握る釣り人の手PHの指掛け用のトリガ5を有する。このためハンドル部2は、釣り人が一方の手で握る握り部2Aと、握り部2Aの先端側にリール取り付け部4を有するリールシート2Bを備えている。リールシート2Bは、合成樹脂や軽金属等によって前後方向に長い略円筒形状に形成される。
【0025】
本発明に好適な形態の魚釣り用リール50は、例えば、出願人の出願に係る特開2016−220689等に開示されるように、公知の両軸受け型リール50である。
図2に示すものは、特開2016−220689に開示されるものと同様に、両軸受け型リール50の一種であるレバードラグ式リールと称される形態であり、釣り人が回転操作する回転ハンドル51と、回転ハンドル51がハンドルアーム51Aを介して回転可能に取り付けられた本体部52と、本体部52の下側に前後方向に延出した取り付け脚部53を備える。本体部52は、連結部54Cで連結された左右一対の側板54A、54Bと、側板54A、54Bに亘って配置された支持軸に回転可能に支持され釣り糸70を巻き上げるスプール55と、右側板54Bに取り付けられた第1カバー56内に収容され回転ハンドル51の回転をスプール55へ伝達する歯車機構57と、釣り糸70の繰り出しに伴って回転するスプール55にドラグ力(制動力)を付与するためのドラグ機構58等を備えている。ドラグ機構58はドラグ力を手動調節するためのドラグレバー58Aが右側板54Bの上側に前後方向に回動可能に配置されている。
【0026】
リール取り付け部4は、リールシート2Bの上面側に前後方向に形成され、両軸受け型リール50の取り付け脚部53を載置するリール載置面41と、リール載置面41と対向して前後に分離してそれぞれ取り付け脚部53の前端部53Aと後端部53Bを係止する可動係止部42Aと固定係止部42Bとを備える。固定係止部42Bは、リール載置面41上に前方へ開いた挿入開口を有する。可動係止部42Aは、リールシート2Bのネジ部43に回転可能に設けたナット部材44と、ナット部材44の正回転・逆回転に伴って前進・後退する可動係止体45を備える。可動係止部42Aは可動係止体45の上端部に形成される。
【0027】
ナット部材44の逆回転に伴って可動係止体45を前進位置へ後退移動させた状態で、取り付け脚部53をリール載置面41に載置し、取り付け脚部53をリール載置面41に沿って後退させ、取り付け脚部53の後端部53Bを固定係止部42Bへ挿入開口から挿入する。その状態でナット部材44の正回転によって可動係止体45を後退させ、取り付け脚部53の前端部53Aを可動係止体45の可動係止部42Aが覆う状態で、可動係止体45によって取り付け脚部53の前端部53Aが係止される。これによって、取り付け脚部53の前端部53A及び後端部53Bがリール載置面41に載った状態において、両軸受け型リール50はリールシート2Bの上面側のリール取り付け部4に固定状態に取り付けられる。
【0028】
トリガ5は、握り部2Aまたはリールシート2Bのいずれに設けてもよいが、実施例では、リールシート2Bと一体成型によって形成している。
トリガ5は、釣り人がその手で握り部2Aをしっかり把持した状態で、その手の指をトリガ5に掛けて、キャスティング、リトリーブ、サミング等の操作が確実に行えるようにするものであり、トリガ5を、握り部2Aを握る方の手PHの人差し指と中指で挟んだ状態、または中指と薬指で挟んだ状態、または、薬指と小指で挟んだ状態で、握り部2Aを把持する。このため、トリガ5は、両軸受け型リール50の取り付け脚部53よりも後方位置となるハンドル部2の下側面に設けられる。
上記操作に適するように、リールシート2Bは下側面の形状及びトリガ5の形状に留意して良好な形状に定められ、トリガ5は若干前方へ向けて傾斜するように下方へ延出している。
【0029】
図示の両軸受け型リール50は右ハンドル式であるため、釣り人は左手PHで握り部2Aを把持し、その手の指でトリガ5を挟み、その手の親指で両軸受け型リール50の上面を抑えるかドラグレバー58Aを操作する。
両軸受け型リール50は左ハンドル式であっても同様であり、左ハンドル式の場合は、回転ハンドル51が本体部52の左側に配置され、釣り人が左手で回転ハンドル51を操作する。このため、釣り人は右手で握り部2Aを把持し、その手の指でトリガ5を挟み、その手の親指で両軸受け型リール50の上面を抑えるかドラグレバー58Aを操作する。
【0030】
ハンドル部2の先端部に結合される竿体3は、釣り糸70を挿通するためのガイドリング71が、竿体3の上面に先端に向かって間隔を存して配置されている。両軸受け型リール50のスプール55に巻回された釣り糸70は、ガイドリング71に挿通されて竿体3の前端部から延び、釣り糸70の先端部にルアーを含む仕掛けが取り付けられる。
【0031】
本発明は、キャスティング、リトリーブ等の操作中の釣竿1の落下防止のための釣竿用補助具20及びそれを備えた釣竿1を提供する。
このため、釣竿用補助具20は、ハンドル部2を握る釣り人の手PHの所定の指が通る指通し用係止リング10と、指通し用係止リング10と連結され指通し用係止リング10をハンドル部2に取り付ける取り付け部材11とを有する。
指通し用係止リング10は、ハンドル部2を握る釣り人の手PHのトリガ5の前側に位置する指の1本または2本が通る構成でもよいが、好ましくは、指通し用係止リング10は、ハンドル部2を握る釣り人の手PHのトリガ5の前側に掛かる1本の指が通る構成である。
【0032】
また、取り付け部材11は、トリガ5の近傍においてハンドル部2に取り付けられる。取り付け部材11が取り付けられる好ましい取り付け位置は、魚釣り用リール50の後方でトリガ5の近傍であり、具体的には、トリガ5と両軸受け型リール50との間のハンドル部2である。
取り付け部材11はハンドル部2に着脱自在に巻き付け保持されるベルト11Aで構成され、指通し用係止リング10はハンドル部2を握る釣り人の方の手の一本の指が通る大きさに柔軟性部材で構成される。指通し用係止リング10を構成する柔軟性部材は、耐水性に優れ、指との感触に優れたものがよい。その一つとして、シリコンゴム等のように耐水性に優れた弾力性部材で構成することができる。
【0033】
図4に示すように、取り付け部材11は、ハンドル部2に着脱自在に巻き付け保持されるベルト11Aで構成され、耐水性に優れた合成樹脂製で構成される。そして、ベルト11Aがハンドル部2に巻き付けられた状態で、相互対面する部分に押圧接合及び剥離可能な面ファスナー部12、12を有する。
面ファスナー部12、12のうち一方の面ファスナー部12は、合成樹脂製のベルト11A自体にまたは合成樹脂製のベルト11Aに接着された合成樹脂製布材に、多数のフック状起毛が形成された構成であり、同様に、他方の面ファスナー部12は、合成樹脂製のベルト11A自体にまたは合成樹脂製のベルト11Aに接着された合成樹脂製布材に、多数のループ状起毛が形成された構成である。この面ファスナー部12、12相互が重なり合った状態で、押圧によって前記フック状起毛と前記ループ状起毛が係合して、両面ファスナー部12、12相互が接合される。また、面ファスナー部12、12相互の接合部を引き剥がすことにより、この接合状態を解除できる。
【0034】
ハンドル部2への釣竿用補助具20の取付け形態は、指通し用係止リング10の外周面がハンドル部2の外面に対面する状態に配置され、この状態で両軸受け型リール50の後ろ側でトリガ5との間の範囲において取り付け部材11をハンドル部2に巻き付け取り付ける。
実施例では、指通し用係止リング10の外周面10Aの一部がハンドル部2のリールシート2Bの外面の一部に対面する状態に配置され、この状態で両軸受け型リール50の取り付け脚部53とトリガ5との間の範囲において、ベルト11Aをハンドル部2のリールシート2Bに巻きつけ、その状態で面ファスナー部12相互を押圧接合することによりハンドル部2への取り付けができる。
【0035】
その場合の好ましい一つの形態として、ハンドル部2への指通し用係止リング10の配置は、
図1及び
図3に示すように、ハンドル部2を握る釣り人の手PHのトリガ5の前側に掛かる1本の指が通るように、トリガ5の前側に指通し用係止リング10が配置される。その場合、トリガ5の前面とトリガ5の前面側のリールシート2Bの下側面とに指通し用係止リング10の外周面が対面する状態に配置される。この状態で両軸受け型リール50の直ぐ後ろ側でトリガ5との間の範囲において、ベルト11Aをハンドル部2のリールシート2Bに巻きつけ、その状態で面ファスナー部12相互を押圧接合することによりハンドル部2へ釣竿用補助具20が取り付けられる。
【0036】
この場合、指通し用係止リング10は、トリガ5の前側に配置されるが、指通し用係止リング10がリールシート2Bからはみ出さないようにするために、指通し用係止リング10の左右幅をリールシート2Bの左右厚さ(円筒形であれば直径)以下である方がよい。
【0037】
また、ハンドル部2を握る手PHの指を深く指通し用係止リング10に挿通する釣り人に対して適応するための好ましい他の形態として、
図5に示すように、トリガ5の前側位置において、指通し用係止リング10の外周面10Aがハンドル部2の側面、即ちリールシート2Bの側面に対面する状態に配置される状態とする。この状態を保つように、両軸受け型リール50の直ぐ後ろ側でトリガ5との間の範囲において、ベルト11Aをハンドル部2のリールシート2Bに巻きつけ、その状態で面ファスナー部12相互を押圧接合することによりハンドル部2へ釣竿用補助具20が取り付けられる。
これによって、ハンドル部2を握る釣り人の手PHのトリガ5の前側に掛かる1本の指は、指通し用係止リング10に挿通する指の第2関節とその指の付け根部分の間の部分が指通し用係止リング10に係止する。
【0038】
釣竿用補助具20のハンドル部2への取り付け状態の調節や取り外しを行う場合には、面ファスナー部12、12相互の接合部を引き剥がすことにより、それを達成できる。
【0039】
ベルト11Aは、リールシート2Bに複数回の巻きつけができる長さでもよいが、ハンドル部2への取り付けの容易さを考慮すれば、リールシート2Bに一巻きで取り付ける長さがよい。
【0040】
上記のように両軸受け型リール50及び釣竿用補助具20が釣竿1に取り付けられた状態において、釣り人は握り部2Aを把持する左手PHの親指を除く他の指、即ち人差し指、中指または薬指のいずれか一つを指通し用係止リング10に挿通し、その状態で握り部2Aを把持する。
図1及び
図3に示す実施形態では、握り部2Aを把持する左手PHの中指を指通し用係止リング10に挿通し、中指の第1関節F1と第2関節F2の間が指通し用係止リング10に係止する。また、親指が両軸受け型リール50の上面を抑えるかドラグレバー54を操作する状態とし、指通し用係止リング10に挿通した中指がトリガ5の前側で指通し用係止リング10を介してトリガ5に掛かり、トリガ5の後ろ側に薬指が位置する状態にて、人差し指と小指を含む左手によって握り部2Aを把持する。
【0041】
また、
図5に示す実施形態では、握り部2Aを把持する左手PHの中指を指通し用係止リング10に深く挿通し、中指の第2関節F2とその指の付け根部分の間の部分が指通し用係止リング10に係止する。そして、親指が両軸受け型リール50の上面を抑えるかドラグレバー54を操作する状態とし、指通し用係止リング10に挿通した中指の第1関節F1から第2関節F2の部分がトリガ5の前側でトリガ5に掛かり、トリガ5の後ろ側に薬指が位置する状態にて、人差し指と小指を含む左手によって握り部2Aを把持する。
【0042】
このように、指通し用係止リング10の外周面10Aがハンドル部2のリールシート2Bの外面に対面する状態に配置されるが、指通し用係止リング10自体の柔軟性や弾力性によって、指通し用係止リング10へ挿通した指が受ける感触が柔らかく、釣りを行う際に釣竿1を通して手PHに感じる微妙な感覚を保つことができると共に、トリガ5を利用した釣りの操作が阻害されることなく円滑に行えるものとなる。
【0043】
また、両軸受け型リール50の直ぐ後ろ側でトリガ5との間の範囲において取り付け部材11をハンドル部2(リールシート2B部分)に巻き付け取り付けることにより、釣竿用補助具20の取付け位置がハンドル部2上において大きく移動することがなく、トリガ5を利用した釣りの操作が安定する。
【0044】
上記のように、本発明の釣竿用補助具20は、トリガ5の近傍のハンドル部2に取り付ける取り付け部材11と、取り付け部材11に連結され釣り人の手のトリガ5の前側に位置する所定の指が通る指通し用係止リング10とを有する。
このため、ハンドル部2の上側面に魚釣り用リール50を取り付ける形態の釣竿1において、釣り人の手から釣竿1が外れたときの釣竿1の落下を防止できると共に、通常通りトリガ5を利用した釣りの操作が阻害されることなく行えるものとなる。
【0045】
具体的には、指通し用係止リング10の外周面10Aがハンドル部2のリールシート2Bの外面に対面する状態に配置され、握り部2Aを把持した状態において、キャスティング、リトリーブ等の操作中に釣竿1が万一釣り人の手PHから離れた場合、指通し用係止リング10に挿通した指によって指通し用係止リング10が保持され、ベルト11Aを介して釣竿1は落下途中に保持され、それ以上に釣竿1が釣り人の手PHから外れ落下することが免れる。
【0046】
万一大きな魚が掛かったときや根がかりによって、釣竿1を通して釣り人の手PHに強い力がかかったとき、釣り人の手を保護するためには、その釣り人の手PHから釣竿1が外れる状態にすることが好ましい。
その一つの構成として、指通し用係止リング10を弾力性部材で構成することによって、そのような強い力が作用したとき、指通し用係止リング10が伸長して挿通した指から指通し用係止リング10が外れるように構成することができる。
【0047】
また、ベルト11Aがハンドル部2に巻き付けられた状態でベルト11Aの相互対面する部分に結合及び剥離可能な面ファスナー部12を設けた構成とし、指通し用係止リング10を弾力性部材で構成することによって、大きな魚が掛かったときや根がかりによって、釣竿1を通して釣り人の手PHに強い力がかかり釣り人の手から釣竿1が外れたとき、面ファスナー部12の剥離によって釣竿用補助具20が釣竿1から外れるか、または指通し用係止リング10の弾力性によって指通し用係止リング10から指が外れることによって、釣り人の怪我を防止できるものとなる。
【0048】
また、大きな魚が掛かったときや根がかりによって、釣竿1を通して釣り人の手PHに強い力がかかったとき、その釣り人の手PHから釣竿1が外れるようにして、釣り人の手を保護するためには、ベルト11Aはリールシート2Bに一巻きで取り付ける長さとし、面ファスナー部12の相互接合部が剥離することにより、ベルト11Aがハンドル部2から外れるように構成することができる。
【0049】
指通し用係止リング10は、柔軟性部材で構成し、特に弾力性部材で構成することによって、トリガ5を指で挟んでキャスティング、リトリーブ、サミング等の操作を行う場合、その操作を円滑に行えるものとなる。
【0050】
トリガ5の前側に指通し用係止リング10が配置されることにより、指通し用係止リング10を介してトリガ5に指を引っ掛けてトリガ5を利用した操作を行う際に、指通し用係止リング10がハンドル部2の軸方向にずれることなく所定の操作を安定して行うことができる。
そして、万一、釣り人がハンドル部2から手を離しても、指通し用係止リング10に挿通した指によって釣竿1を落下の途中で保持できるものとなる。
【0051】
また、釣竿用補助具20の取り付け位置が、魚釣り用リール50の後方でトリガ5の近傍のハンドル部2であることによって、ハンドル部2を握る手の邪魔にならず、釣りを行う際に釣竿1を通して手に感じる微妙な感覚を保つことができる。
【0052】
また、指通し用係止リング10自体の柔軟性や弾力性によって、指通し用係止リング10へ挿通した指が受ける感触が柔らかく、釣りを行う際に釣竿1を通して手に感じる微妙な感覚を保つことができることとなる。
また、指通し用係止リング10に挿通する指が取り付け部材11に接触した時の感触を和らげるためには、取り付け部材11となるベルト11Aを耐水性のある柔軟性部材やシリコンゴムのような弾力性部材で形成することにより、達成できる。
【0053】
または、釣竿用補助具20を釣竿1に着脱可能とし、指通し用係止リング10の内径の異なるものを用意することによって、釣り人の指に適した大きさの指通し用係止リング10が選択可能となり、釣り人の好みに合わせることができる。
【0054】
本発明に係る両軸受け型リール50は、図示のものは、釣り人が右手で回転ハンドル51を操作する右ハンドル式であるが、釣り人が左手で回転ハンドル51を操作する左ハンドル式の両軸受け型リール50であってもよい。
【0055】
本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の実施形態に適用できるものである。このため、ハンドル部2の上側面に魚釣り用リールを取り付ける形態であれば、魚釣り用リールが両軸受け型リール50に限らず他の形態のリールであってもよく、また、釣竿1は、ワンピースロッドに限らず、継竿や振出竿等、各種の釣竿に適用できるものである。