【課題】高電流使用時の発熱を抑制し、皮膚から剥離する際の皮膚損傷の発生を防止することができ、さらに、使用中に薬液等が浸入して密着力が弱まることがない電極パッドを提供することを目的とする。
【解決手段】電気メスの対極として生体に貼着される電極パッドであって、生体に貼着される側に粘着剤層を有し、リード線に接続可能な舌片部が端部に設けられた表面材と、前記表面材上の周縁部を除く領域に積層された導電層と、前記導電層上に積層された粘着性ゲル層と、を含み、前記粘着性ゲル層の面積をS1、前記表面材の面積をS2としたときに、50%≦100×S1/S2≦95%であり、さらに、前記表面材上の周縁部の幅bが4mm以上15mm以下であり、前記粘着剤層の粘着力Bが3N/20mm以上9N/20mm以下であり、B×bの値が20N・mm/20mm以上80N・mm/20mm以下であることを特徴とする。
前記粘着性ゲル層が、重合性単量体及び架橋性単量体の共重合体からなる高分子マトリックス、水、多価アルコール及び電解質を含むハイドロゲルである請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極パッド。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に基づき本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電極パッドの一実施形態の平面図である。
図2は、
図1のA−A’断面図である。この電極パッド1は、図示しない電気メス装置において電気メスの対極として使用されるものである。電気メス装置は、高周波発生回路を有する装置本体と、この装置本体にリード線によって電気的に接続される電気メスと、装置本体に同じくリード線Lによって電気的に接続される電極パッド1とから構成される。電気メス装置を用いる場合は、電極パッド1を患者等の生体に貼着し、装置本体から電極パッド1と電気メスとの間に高周波電流を与え、電気メスの先端部分にて切開、凝固を行う。電気メス、装置本体の構成は従来と同様であるので、説明を省略する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る電極パッド1は、生体に貼着される側に粘着剤層11を有し、リード線Lに接続可能な舌片部101が端部に設けられた表面材10と、表面材10上の周縁部を除く領域に積層された導電層20と、導電層20上に積層された粘着性ゲル層30とから概略構成されている。また、表面材10の周縁部に露出している粘着剤層11、及び粘着性ゲル層30に対しては、透明なカバーフィルム40が剥離自在に貼着されており、粘着性ゲル層30を被覆することで粘着性ゲル層30を保護し、乾燥を防止している。さらに、本実施形態では、表面材10の角部に剥離用凸片102が形成されている。この剥離用凸片102においては、表面材10上に粘着剤層11が存在せず、カバーフィルム40が表面材10に貼着されていないため、電極パッド1を使用する際に、剥離用凸片102を摘まむことでカバーフィルム40の全体を容易に剥離することができる。
【0015】
表面材10は、定形性及び柔軟性を有する樹脂フィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等の非導電性フィルムや、紙や不織布、発泡体シート等、あるいはそれらをラミネートした複合シート等を挙げることができる。電極パッドとしての外観を向上させるために、化粧印刷を施しても良い。表面材10の厚さは、取扱い性の観点から10μm〜200μm程度とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0016】
粘着剤層11としては、皮膚貼着性が良好で、皮膚に対する刺激が少ないものであれば適用可能である。具体的には、例えばゴム系粘着剤、酢酸ビニル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルアセタール系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ポリエチレン系粘着剤、セルロース系粘着剤等を挙げることができる。また、本実施形態において、粘着剤層11の粘着力(粘着力Bという)は、3N/20mm以上9N/20mm以下とする。この範囲であれば、後述の表面材10上の周縁部の適正な幅bによる効果と相まって、生体に対する十分な密着力を発揮し、電極パッド1の使用中に電極パッド1の外縁から薬液等が内部に浸透することがなく(浸透したとしても外縁からわずかな領域に留まり)、電極パッド1の粘着力の低下が防止されるとともに、電極パッド1を皮膚から剥離する際の皮膚損傷の発生を抑制することができる。なお、上記の粘着剤層11の粘着力は、JIS Z 0237:2009の粘着テープ試験法に従い、90°引き剥がし時の粘着力を指す。ただし、被着体は、厚みは2mm、長さは125mmのベークライト板を使用し、粘着枠幅は、20mmとした。
【0017】
導電層20は、表面材10上の周縁部を除いた領域に積層一体化しており、表面材10の舌片部101に形成された接続部201において、リード線Lに接続可能とされている。リード線Lと導電層20との接続方法は、特に限定されるものではない。例えば、リード線Lの一端部を導電層20にかしめる方法や、特開2007−175159号に開示されるような、導電層20とリード線Lとを重ねた状態で接続させるための接続具を別途用いて、導電層20及びリード線Lを挟持した状態で保持する方法等を適宜採用することができる。また、必要に応じて、リード線Lの一端部や導電層20が生体に触れて感電しないように、リード線Lと導電層20との接続部分は絶縁テープを用いて巻回す等して絶縁処理を施すことができる。
【0018】
本実施形態において、導電層20は、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルム20aと電極20bとの積層体から構成されている。樹脂フィルム20aは、電極20bの補強材として用いられ、導電層20が生体の表面に沿って変形した場合であっても電極20bの機能を維持することができる。電極20bは、電気抵抗の小さいものであれば特に限定されず、例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔、ニッケル箔等の金属箔等が適用可能であり、あるいは、カーボン、銀、塩化銀等の導電性材料を合成樹脂等のバインダーとともに樹脂フィルム20a上に層状に塗布して形成することができる。導電性の観点から電極20bは金属箔により構成することが好ましく、軽さやコスト、安全性、加工性等の観点からアルミニウム箔を用いることがより好ましい。
【0019】
なお、樹脂フィルム20aは、
図2のように電極20bと粘着剤層11との間ではなく、電極20bと粘着性ゲル層30との間に設けても良い。電極20bと粘着性ゲル層30との間に樹脂フィルム20aを設けた場合であっても、樹脂フィルム20aは薄いため、粘着性ゲル層30から電極20bに電流を流すことができる。さらに、必要に応じて、樹脂フィルム20aを省略し、電極20bのみによって導電層20を構成しても良い。
【0020】
本実施形態において、導電層20の厚みtALは、導電層20が樹脂フィルム20aと電極20bとの積層体であるときは電極20bの厚みを指し、電極20bのみによって導電層20が構成される場合は電極20bの厚みを指すものとする。厚みtALは、厚過ぎると可撓性が低下して電極パッド1を生体に沿って変形させることができず、生体に対する電極パッド1の密着性が低下する場合があり、薄過ぎると機械的強度が低下する場合があるため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。好ましくは、3μm以上25μm以下、特に好ましくは9μm以上15μm以下である。
【0021】
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、導電層20(及びその上の粘着性ゲル層30)が絶縁状態で所定の面積に二分されており、それぞれの導電層20に対し舌片部101においてリード線Lが接続されている。導電層20が絶縁状態で二分され、それぞれの導電層にリード線Lが接続されるため、電極パッド1の使用中に万が一、一方のリード線Lが導電層20から離脱しても、他方のリード線Lによって導電層20との電気的接続が保持される。
【0022】
そして、
図2に示すように、導電層20上には、導電層20の平面形状に合わせて粘着性ゲル層30が設けられる。粘着性ゲル層30は、生体に対して粘着力を有するゲルであれば適用可能である。
【0023】
本実施形態に係る電極パッド1は、
図1に示すように、粘着性ゲル層30の面積をS1、表面材10の面積(表面材10上に、粘着剤層11、導電層20及び粘着性ゲル層30が積層された領域も含む全体の面積)をS2としたときに、50%≦100×S1/S2≦95%であることを特徴とする。好ましくは60%≦100×S1/S2≦80%である。この範囲に設定することにより、導電層20とその上に積層する粘着性ゲル層30の面積が十分に確保され、電気メスの対極として用いる場合の電流密度が高くならず、電極パッド1の発熱を抑制することができる。また、粘着剤層11が露出する表面材10周縁の粘着枠も適正な大きさとなり、生体に対して必要十分な粘着力が発揮される。
【0024】
ここで、粘着性ゲル層30の面積S1、及び表面材10の面積S2は、
図1における表面材10の表面のうち、表面材10の端部に形成された舌片部101、及び剥離用凸片102を除いた部分について算出するものとする。
【0025】
また、粘着剤層11が露出した、表面材10上の周縁部の幅bが4mm以上15mm以下であり、上述のように粘着剤層11の粘着力Bが3N/20mm以上9N/20mm以下であり、B×bの値が20N・mm/20mm以上80N・mm/20mm以下であることを要する。好ましくは、幅bが5mm以上12mm以下であり、B×bの値が20N・mm/20mm以上80N・mm/20mm以下である。ここで、
図1に示すように表面材10及び粘着性ゲル層30の平面形状が略矩形状である場合は、表面材10の各辺のうち、舌片部101が形成されている辺を除いた3辺においてそれぞれ形成される周縁部の幅の最小値b
1、b
2及びb
3を比較し、それらの最小値をもって、周縁部の幅bと定義する。例えば、
図1においてb
1=b
2<b
3である場合、b
1又はb
2が周縁部の幅bとなる。表面材10及び粘着性ゲル層30の平面形状が略矩形状以外である場合、例えば円形である場合は、周縁部の幅bとは、表面材10のうち、舌片部101が形成されている部位を除いた円周部分において形成される周縁部の幅の最小値をいう。
【0026】
表面材10上の周縁部の幅bが4mm以上15mm以下であり、粘着剤層11の粘着力Bが3N/20mm以上9N/20mm以下であり、B×bの値が20N・mm/20mm以上80N・mm/20mm以下の範囲に制御することにより、電極パッド1を皮膚から剥離する際の皮膚損傷の発生が確実に防止されるとともに、電極パッド1の使用中に薬液等が周囲から浸入して密着力が弱まる事態を防ぐことができる。
【0027】
粘着性ゲル層30は、導電層20が積層した表面材10上にゲル化前の配合液を塗布し、架橋させて形成させる他、カバーフィルム40上に塗膜として形成させた粘着性ゲル層30を、導電層20が積層した表面材10上に重ね合わせることで形成しても良い。
【0028】
上述のとおり、粘着性ゲル層30は、生体に対して粘着力を有するゲルであり、好ましくは粘着性のハイドロゲルから構成される。このハイドロゲルは、好ましくは、重合性単量体及び架橋性単量体の共重合体からなる高分子マトリックス、水、多価アルコール及び電解質を含む。
【0029】
重合性単量体は、分子内に重合性を有する炭素−炭素二重結合を1つ有するモノマーであれば特に制限されない。さらに、水溶性を有することが好ましい。水溶性を有するとは、100gの水に10g以上溶解することを意味する。また、具体的な重合性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の非電解質系アクリルアミド誘導体;ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸(TBAS)及び(又は)その塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAEAA)塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)塩酸塩等の電解質系アクリルアミド誘導体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スルホプロピルメタクリレート(SPM)及び(又は)その塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(QDM)等の電解質系アクリル誘導体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の非電解質系アクリル誘導体;ビニルピロリドン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等のビニルアミド誘導体;アリルアルコール等が挙げられる。これらの重合性単量体は、単独又は複数使用することが可能である。
【0030】
これらの中で、アクリルアミド誘導体は、重合反応性が良好であり、粘着性ハイドロゲル中の他の成分との親和性も良好なことから、好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0031】
架橋性単量体としては、分子内に重合性を有する炭素−炭素二重結合を2つ以上有するモノマーであれば特に限定されない。具体的には、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリセリントリ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチリロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能(メタ)アクリルアミド、多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら架橋性単量体は、単独又は複数使用することが可能である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味し、また(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを、(ポリ)エチレンはエチレン又はポリエチレンを意味する。
【0032】
上記重合性単量体と架橋性単量体とが重合・架橋することで高分子マトリックスが形成される。この高分子マトリックスの粘着性ハイドロゲル全体に占める割合は、10〜40重量%であることが好ましく、15〜35重量%であることがより好ましい。
【0033】
さらに、高分子マトリックスを製造する際の架橋性単量体の割合は、使用する重合性単量体種や架橋性単量体種によっても異なるが、一般的に重合性単量体100重量部に対して0.01〜0.5重量部であることが好ましく、0.05〜0.25重量部であることがより好ましい。形状安定性を持たせるために、架橋性単量体は0.01重量部以上が好ましく、また粘着力を維持できる程度の柔軟性を与えるために0.5重量部以下が好ましい。
【0034】
粘着性ハイドロゲルに含まれる水の含有量は、ゲルが周りの環境により吸湿したり、乾燥したりすることで経時的に物性の変化、特に膨潤や収縮を防ぐために、重合性単量体100重量部に対して50〜300重量部とすることが好ましい。さらに、水分の滲出や乾燥による変化を抑制するために、75〜150重量部とすることがより好ましい。
【0035】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールの他、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変成体等が使用可能である。これら多価アルコールは、単独又は複数使用することが可能である。
【0036】
これら多価アルコールの中でも、ハイドロゲルを実際に使用する温度領域(例えば室内で使用する場合は20℃前後)で液状の多価アルコールを使用することが好ましい。このような好ましい多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、グリセリン等が挙げられる。
【0037】
多価アルコールの含有量は、重合性単量体100重量部に対して150〜350重量部であることが好ましく、200〜300重量部であることがより好ましい。多価アルコールの添加量が150〜350重量部の場合は、得られたゲル体の乾燥による物性変化が小さく、高い粘着力が得られるため好ましい。
【0038】
ハイドロゲルの導電性を高めるために添加する電解質としては、特に限定されず、例えば、塩が挙げられる。前記塩としては、例えば、ハロゲン化ナトリウム(例えば塩化ナトリウム)、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属;ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ土類金属;その他の金属ハロゲン化物;各種金属の、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、燐酸塩;アンモニウム塩、各種錯塩等の無機塩類;酢酸、安息香酸、乳酸等の一価有機カルボン酸の塩;酒石酸、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸等の多価カルボン酸の一価又は二価以上の塩;スルホン酸、アミノ酸等の有機酸の金属塩;有機アンモニウム塩;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の高分子電解質の塩等が挙げられる。
【0039】
電解質の含有量は、低インピーダンス化するためには、水、多価アルコール及び高分子マトリックスの合計量100重量部に対して0.05重量部以上とすることが好ましい。また、添加する電解液を均一に配合液中に溶解させるには10重量部以下であることが好ましい。より好ましい含有量は、2〜8重量部である。
【0040】
粘着性ハイドロゲルは、必要に応じて他の添加剤を含んでいても良い。例として、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤、薬効成分(例えば、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等)が挙げられる。
【0041】
ゲル化前配合液は、通常、重合開始剤を含み、重合・架橋を行ってハイドロゲルを得る。重合開始剤としては、特に限定されず、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられる。あるいは、電子線やガンマ線等の放射線を照射することによる重合・架橋も可能である。
【0042】
上記熱重合開始剤としては、熱により開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスアミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの熱重合開始剤は、いずれかを単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。また、必要に応じて、硫酸第1鉄やピロ亜硫酸塩等の還元剤と過酸化水素、チオ硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸塩等の過酸化物とからなるレドックス開始剤を熱重合開始剤と併用しても良い。
【0043】
光重合開始剤としては、紫外線又は可視光線で開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、α−ヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が挙げられる。より具体的には、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:ダロキュア1173,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:イルガキュア184,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:イルガキュア907,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:イルガキュア369,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア127,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。これらは、単独又は複数を組み合わせて使用することが可能である。
【0044】
重合開始剤の濃度は、重合反応を十分に行い、残存モノマー量を低減するために重合性単量体100重量部に対して0.01重量部以上であることが好ましく、反応後の残開始剤による変色(黄変)や、臭気を防ぐためには1重量部以下であることが好ましい。
【0045】
ゲル化前配合液には、必要に応じてpH調整剤を添加することができる。pHが酸性側に傾き過ぎると電極パッドとした場合に導電層20を腐食させる虞があるためである。pH調整剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、乳酸、リン酸等を挙げることができる。
【0046】
粘着性ゲル層30は、以上の各成分を撹拌混合して配合液を調製した後、重合架橋反応と同時に任意の形状に成型することによって得ることができる。
【0047】
例えば、重合性単量体、架橋性単量体、水、多価アルコール、電解質及び重合開始剤を混合して、配合液を調製する工程と、該配合液中のモノマー成分を重合架橋反応させる工程とを経て、粘着性ゲル層30を形成することができる。
【0048】
調製した配合液は、型枠に注入する等した後、モノマー成分を重合架橋反応させることで重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックスを形成し、所望形状の粘着性ゲル層30を形成することができる。また、粘着剤層11を有する表面材10及び導電層20の積層体と、カバーフィルム40との間に配合液を流し込み、一定の厚みに保持した状態で重合架橋反応させ、シート状の粘着性ゲル層30を形成することもできる。あるいは、導電層20やカバーフィルム40上に配合液を薄層コーティングし、重合架橋反応させることでフィルム状の粘着性ゲル層30を形成しても良い。
【0049】
紫外線を照射させて重合・架橋する場合、配合液に照射される積算の照射量は、配合液の組成によって異なり特に限定されるものではない。一般的には、重合反応を十分に促進するためには積算照射量が1000mJ/cm
2以上であれば良く、積算照射量2000mJ/cm
2以上とするとハイドロゲル中の残存モノマー量を皮膚刺激が起こらない安全な領域まで低減することができるため、より好ましい。また、積算照射量の上限は限定されないが、過剰な照射は装置の大型化や余分なエネルギー使用を招いたり、また発生する熱を除去する必要があったりする等の問題を生ずる可能性があるため、必要最小限の照射量にすることが望ましい。
【0050】
こうして得られた粘着性ゲル層30は、皮膚への安全性と粘着性を保持している。具体的には、粘着性ゲル層の粘着力(粘着力Aという)が1N/20mm以上9N/20mm以下であることが好ましく、より好ましくは2N/20mm以上7N/20mm以下であり、特に好ましくは3N/20mm以上6N/20mm以下である。この範囲内であれば、生体に対する十分な密着力が確保されるとともに、粘着力が適度に小さいため電極パッド1を皮膚から剥離する際の皮膚損傷の発生を抑制することができる。なお、上記の粘着性ゲル層30の粘着力Aは、粘着剤層11の粘着力Bの場合と同様に、JIS Z 0237:2009の粘着テープ試験法に従い、90°引き剥がし時の粘着力を指す。ただし、被着体は、厚みは2mm、長さは125mmのベークライト板を使用し、粘着枠幅は、20mmとした。
【0051】
粘着性ゲル層30の厚みは、特に限定されるものではないが、0.3mm〜1.2mmとすることが好ましい。粘着性ゲル層30が薄過ぎると、電気メスによる高周波電流により高温になる可能性があり、また、粘着性ゲル層30が厚過ぎても電極パッド1としての効果に差違が生じないためである。
【0052】
こうして得られた電極パッド1は比抵抗が小さく、1.0kΩ・cm〜15.0kΩ・cmとすることができ、好ましくは10kΩ・cm以下とすることができる。比抵抗が小さいために電気メスの対極板として利用することができ、大電流が流れても温度が必要以上に上がることがなく、低温やけど等を起こさない安全な対極板として利用することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
撹拌・混合容器を使用して、まず、重合性単量体としてアクリルアミドを20重量部、架橋性単量体としてメチレンビスアクリルアミドを0.036重量部、イオン交換水18.0重量部を混合し、撹拌して均一に溶解させた後に、保湿剤として多価アルコールであるグリセリンを60.0重量部添加し、前記と同様に均一になるまで撹拌した。次に、電解質として塩化ナトリウムを0.5重量部、その他添加剤としてクエン酸、安息香酸Na、光開始剤を合わせて1.5重量部添加し、完全溶解するまで撹拌した。その後、数分間撹拌し、透明な配合液を得た。
【0055】
次に、得られたモノマー配合液を、シリコーンコーティングされたPETフィルム上に所定の厚みとなるように広げ、モノマー配合液に対して、メタルハライドランプを使用してエネルギー量3000mJ/cm
2の紫外線を照射することにより、上記配合液を重合させて、厚み0.5mmのシート状の粘着性ゲル層を形成した。
【0056】
〔実施例1〕
作製された粘着性ゲル層を、面積S1=100cm
2となるように切り出し、その切り出した粘着性ゲル層に、同寸法・形状の導電層(アルミ箔9μmと補強材としてPETフィルム50μmとをラミネートしたもの)を貼り合わせた。さらにその上から、粘着剤層付きの表面材(ポリプロピレン不織布にPEフィルムをラミネートしたもので、粘着剤はアクリル系粘着剤、粘着剤塗布量を50g/m
2とし、周縁部の幅bを9mmとする)をS2=118cm
2の寸法で貼り合わせ、所定の形状に打ち抜き加工し、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0057】
〔実施例2〕
周縁部の幅bを10mmにすると同時に表面材の面積S2を121cm
2に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0058】
〔実施例3〕
粘着剤層の粘着剤塗布量を40g/m
2とし、粘着剤層の粘着力Bを変えたこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0059】
〔実施例4〕
粘着剤層の粘着剤塗布量を70g/m
2とし、粘着剤層の粘着力Bを変えたこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0060】
〔実施例5〕
周縁部の幅bを9mmとするとともに、粘着性ゲル層において、架橋剤量を0.05重量部とし、粘着性ゲル層の粘着力Aを変えたこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0061】
〔実施例6〕
粘着性ゲル層において、架橋剤量を0.02重量部とし、粘着性ゲル層の粘着力Aを変更し、さらに周縁部の幅bを9mmに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0062】
〔実施例7〕
周縁部の幅bを15mmにするとともに表面材の面積S2を170cm
2に変更し、さらに粘着剤層の粘着剤塗布量を40g/m
2とし、粘着剤層の粘着力Bを変更したこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0063】
〔実施例8〕
周縁部の幅bを5mmにするとともに表面材の面積S2を110cm
2に変えたこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0064】
〔比較例1〕
周縁部の幅bを9mmとし、粘着剤層の粘着剤塗布量を90g/m
2として粘着剤層の粘着力Bを変更したこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0065】
〔比較例2〕
周縁部の幅bを25mmとし、さらに表面材の面積S2を225cm
2に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0066】
〔比較例3〕
周縁部の幅bを2mmにするとともに表面材の面積S2を104cm
2に変更し、さらに粘着剤層の粘着剤塗布量を40g/m
2とし、粘着剤層の粘着力Bを変更したこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0067】
〔比較例4〕
周縁部の幅bを10mmにするとともに表面材の面積S2を121cm
2に変更し、さらに粘着剤層の粘着剤塗布量を30g/m
2とし、粘着剤層の粘着力Bを変えたこと以外は、実施例2と同様にして、所定サイズ及び形状の電極パッドを得た。
【0068】
実施例1〜8及び比較例1〜4の電極パッドにおける、粘着性ゲル層の粘着力A、粘着剤層の粘着力B、周縁部の幅b、B×bの値、粘着性ゲル層の面積S1、表面材の面積S2、100×S1/S2の値、及び導電層の厚さtALの値を表1にまとめて示す。
【0069】
(1)液浸入性評価
得られた各電極パッドを、垂直に立てた電極パッドよりも大きなステンレス板に貼付した後、着色した水を電極パッドの直上から垂らし、表面材の周縁部への液の浸入を目視にて確認した。その結果を表1に示す。表1中、液の浸入がみられなかったものを〇、液が周縁部の途中まで浸入したもの及び、粘着性ゲル層の領域まで浸入したものを×で表している。
【0070】
(2)皮膚に対する刺激性評価
得られた各電極パッドを、3名の被験者の皮膚に貼り付け、60分静置後に剥離した。その際、痛みを感じた場合を1点、やや痛みを感じた場合を3点、痛みをほとんど感じない場合を5点とし、3名の合計点数が、5点未満を×、5〜9点を△、10点超を〇とした。評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、粘着剤層の粘着力B、周縁部の幅b、B×b、及びS1/S2の値がいずれも適正範囲である実施例1〜8の電極パッドは、液の浸入が観察されず、評価結果はいずれも良好であった。それに対し、比較例3及び4では、周縁部の幅b及びB×bの値、又はBの値が小さいために、粘着剤層による粘着が不十分となり、液が容易に浸入した。
【0073】
また、表1から明らかなように、実施例1〜8の電極パッドは、いずれも皮膚への刺激が小さく、痛みは感じられなかった。一方、比較例1及び2の電極パッドは、粘着剤層の粘着力B、及びB×bの値が大きいため、皮膚への刺激が大きく、不適であった。
【0074】
なお、実施例5については、液浸入性評価及び皮膚に対する刺激性は問題ないが、粘着性ゲル層の粘着力Aが小さいため、生体に対する十分な密着力の確保に不安が感じられる。