特開2019-34148(P2019-34148A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ CYBERDYNE株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-34148(P2019-34148A)
(43)【公開日】2019年3月7日
(54)【発明の名称】電動車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20190208BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20190208BHJP
【FI】
   A61G5/04 708
   A61G5/04 710
   A61G5/10 704
   A61G5/10 707
   A61G5/04 702
   A61G5/04 703
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-152703(P2018-152703)
(22)【出願日】2018年8月14日
(31)【優先権主張番号】特願2017-157993(P2017-157993)
(32)【優先日】2017年8月18日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506310865
【氏名又は名称】CYBERDYNE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高間 正博
(57)【要約】
【課題】トイレ使用時に正確な操作を必要とすることなく容易に便器に位置決めすることができると共に、トイレ内を必要最小限の移動範囲で旋回することができる。
【解決手段】座面中央に開口部または切欠き部が形成された着座部と、回転軸上に着座部の右側重心がかかる第1駆動輪と、第1駆動輪を回転駆動する第1モータと、第1モータを覆うとともに第1駆動輪を軸支する第1フレームとを含む第1駆動ユニットと、回転軸上に着座部の左側重心がかかる第2駆動輪と、第2駆動輪を回転駆動する第2モータと、第2モータを覆うとともに第2駆動輪を軸支する第2フレームとを含む第2駆動ユニットと、第1モータおよび第2モータを制御する制御部と、を備え、着座部、第1駆動ユニットおよび第2駆動ユニットは、開口部または切欠き部の下側に便器が位置するまで移動できる空間を形成し、制御部は、第1駆動輪および第2駆動輪のいずれか一方または両方が旋回中心となるように第1モータおよび第2モータを制御するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面中央に開口部または切欠き部が形成された着座部と、
回転軸上に前記着座部の右側重心がかかる第1駆動輪と、前記第1駆動輪を回転駆動する第1モータと、前記第1モータを覆うとともに前記第1駆動輪を軸支する第1フレームとを含む第1駆動ユニットと、
回転軸上に前記着座部の左側重心がかかる第2駆動輪と、前記第2駆動輪を回転駆動する第2モータと、前記第2モータを覆うとともに前記第2駆動輪を軸支する第2フレームとを含む第2駆動ユニットと、
前記第1モータおよび前記第2モータを制御する制御部と、を備え、
前記着座部、前記第1駆動ユニットおよび前記第2駆動ユニットは、前記開口部または前記切欠き部の下側に便器が位置するまで移動できる空間を形成し、
前記制御部は、前記第1駆動輪および前記第2駆動輪のいずれか一方または両方が旋回中心となるように前記第1モータおよび前記第2モータを制御する
ことを特徴とする電動車椅子。
【請求項2】
前記第1フレームおよび前記第2フレームに取り付けられ、前記第1駆動ユニットおよび前記第2駆動ユニットを部分的に支持するとともに、一対の前輪を回転自在に軸支する足置き部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電動車椅子。
【請求項3】
前記一対の前輪は、車軸と垂直な方向に対して回転自在なオムニホイールからなる
ことを特徴とする請求項2に記載の電動車椅子。
【請求項4】
前記第1フレームおよび前記第2フレームに取り付けられ、前記第1駆動輪および前記第2駆動輪の接地面から所定高さ位置を保って回転自在に保持される一対の補助輪をさらに備え、
後方傾斜時に前記一対の補助輪が前記接地面に当接することにより、前記第1駆動ユニットおよび前記第2駆動ユニットを部分的に支持する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動車椅子。
【請求項5】
前記第1モータおよび前記第2モータに駆動電力を供給する駆動源をさらに備え、
前記第1モータおよび前記第2モータの各々は、ダイレクトモータであり、
前記制御部および前記駆動源は、前記第1フレームの上部空間および前記第2フレームの上部空間のいずれか一方または両方に内蔵される
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電動車椅子。
【請求項6】
前記第1フレームは、前記第1駆動輪の部分形状に合わせた膨らみが形成され、当該膨らみの内壁面に前記第1駆動輪の回転軸を基準に放射状に伸びる複数のリブを有し、
前記第2フレームは、前記第2駆動輪の部分形状に合わせた膨らみが形成され、当該膨らみの内壁面に前記第2駆動輪の回転軸を基準に放射状に伸びる複数のリブを有する
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電動車椅子。
【請求項7】
前記ダイレクトモータは、内側に固定側のコイル、外側に回転側のマグネットを備えるアウタロータ型のモータであり、
前記ダイレクトモータの回転を制御するモータドライバが前記マグネットの内側に設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の電動車椅子。
【請求項8】
走行時の走行環境を検知する環境検知部を備え、
前記制御部は、前記環境検知部の検知結果に基づいて前記開口部または前記切欠き部が前記便器上に位置するための停止位置を検出し、検出した停止位置に移動するように前記第1駆動ユニットおよび前記第2駆動ユニットを制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の電動車椅子。
【請求項9】
前記着座部の前記開口部または前記切欠き部を閉じると共に、前記着座部の座面と同じ高さに位置して平坦面を形成する可動着座部と、
前記可動着座部を可動可能な可動機構と、を備え、
前記可動機構は、前記可動着座部を可動し、前記開口部または前記切欠き部を開く、
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の電動車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動車椅子に関し、例えばトイレ使用時に便器に正確に位置決め可能な電動車椅子に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子の利用者は、手すりが設置されているトイレでは、便器に対して直角の方向から車椅子を近付けることで、便器前で手すりを握って、立ち座り動作、乗り移り動作を行うことができるので、安全に移乗できる。しかしながら、手すりが設置されていないトイレでは、車椅子の利用者は、車椅子から便座への移乗は、著しく困難な作業となっている。
【0003】
この点、車椅子の座席の直下に便器を設置し、座席を便器の蓋として併用する車椅子が開示されている(特許文献1参照)。この車椅子では、利用者が身体的苦痛を伴わずに容易に排便排尿することができる。
【0004】
近年、便器に誘導して位置補正しながら連結でき、車椅子操作が困難な重度障害者でも利用者が排便排尿することができる電動車椅子が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−111155号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0008191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、車椅子に便器が載置されることに利用者が抵抗感をもったり、排便排尿する際には車椅子が進入可能なトイレ(車椅子用のトイレ)を探して移動したりしなければならない問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の電動車椅子では、車椅子の座席の下部にバッテリやモータがそのまま付いているため、通常の車椅子よりもサイズが大きく、車椅子用のトイレと比べて走行幅の狭い一般のトイレに進入できなかったり、旋回して進入しなければならないトイレを利用できなかったりする問題がある。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、トイレ使用時に正確な操作を必要とすることなく容易に便器に位置決めすることができると共に、トイレ内を必要最小限の移動範囲で旋回可能な電動車椅子を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、座面中央に開口部または切欠き部が形成された着座部と、回転軸上に前記着座部の右側重心がかかる第1駆動輪と、前記第1駆動輪を回転駆動する第1モータと、前記第1モータを覆うとともに前記第1駆動輪を軸支する第1フレームとを含む第1駆動ユニットと、回転軸上に前記着座部の左側重心がかかる第2駆動輪と、前記第2駆動輪を回転駆動する第2モータと、前記第2モータを覆うとともに前記第2駆動輪を軸支する第2フレームとを含む第2駆動ユニットと、前記第1モータおよび前記第2モータを制御する制御部と、を備え、前記着座部、前記第1駆動ユニットおよび前記第2駆動ユニットは、前記開口部または前記切欠き部の下側に便器が位置するまで移動できる空間を形成し、前記制御部は、前記第1駆動輪および前記第2駆動輪のいずれか一方または両方が旋回中心となるように前記第1モータおよび前記第2モータを制御するようにした。
【0010】
この結果、電動車椅子は、例えば、利用者の着座時の重心がかかる第1駆動輪および第2駆動輪のいずれか一方または両方を基準としてトイレ内を必要最小限の移動範囲で旋回したり、便器を跨ぐように移動したりして開口部または切欠き部の下側に当該便器を位置させることができる。
【0011】
また本発明においては、第1フレームおよび第2フレームに取り付けられ、第1駆動ユニットおよび第2駆動ユニットを部分的に支持するとともに、一対の前輪を回転自在に軸支する足置き部をさらに備えるようにした。
【0012】
この結果、電動車椅子は、第1駆動輪および第2駆動輪のみならず、足置きである一対の前輪も含めた4点で接地面から支持され、第1駆動輪および第2駆動輪から対応する前輪までの距離に応じて旋回半径が確定することから、着座姿勢を基準にトイレ内の移動範囲を必要最小限まで設定することができる。
【0013】
さらに本発明においては、一対の前輪は、車軸と垂直な方向に対して回転自在なオムニホイールからなるようにした。この結果、電動車椅子は、旋回時に一対のオムニホイールがそれぞれ第1駆動輪および第2駆動輪の回転方向と垂直方向にスライド移動されることから、前輪がキャスターにした場合と異なり、方向転換のために前後左右にずらす無駄な移動が不要となり、効率良く最小限の移動範囲内で旋回させることができる。
【0014】
さらに本発明においては、第1フレームおよび第2フレームに取り付けられ、第1駆動輪および第2駆動輪の接地面から所定高さ位置を保って回転自在に保持される一対の補助輪をさらに備え、後方傾斜時に一対の補助輪が接地面に当接することにより、第1駆動ユニットおよび第2駆動ユニットを部分的に支持するようにした。この結果、電気車椅子は、登り坂の走行時などで後方に傾斜した場合、一対の補助輪が接地することから、利用者の転倒を未然に防ぐことが可能となる。
【0015】
さらに本発明においては、第1モータおよび第2モータに駆動電力を供給する駆動源をさらに備え、第1モータおよび第2モータの各々は、ダイレクトモータであり、制御部および駆動源は、第1フレームの上部空間および第2フレームの上部空間のいずれか一方または両方に内蔵されるようにした。
【0016】
この結果、電動車椅子では、第1駆動ユニットおよび第2駆動ユニットについて、ダイレクトモータの上部に制御部または駆動源を配置してそれぞれ第1フレームおよび第2フレーム内に収容させた分、第1駆動輪および第2駆動輪の車軸長さにほぼ等しい幅まで薄型化させることができる。特に、座面高さを基準として制御部および駆動源が収容可能な範囲まで第1駆動輪および第2駆動輪の車輪径を最大化させることが可能となり、その分ダイレクトモータの出力向上を図ることができる。
【0017】
さらに本発明においては、第1フレームは、第1駆動輪の部分形状に合わせた膨らみが形成され、当該膨らみの内壁面に第1駆動輪の回転軸を基準に放射状に伸びる複数のリブを有し、第2フレームは、第2駆動輪の部分形状に合わせた膨らみが形成され、当該膨らみの内壁面に第2駆動輪の回転軸を基準に放射状に伸びる複数のリブを有するようにした。
【0018】
このように電動車椅子の第1駆動ユニットおよび第2駆動ユニットでは、第1フレームおよび第2フレームについて、外側フレームが膨らみを帯びた分だけ平板よりも撓み方向の剛性を高めるとともに、内側フレームが放射状のリブに応力集中させて効率のよい応力分布をもたせて全体の剛性を保つことができる。この結果、第1駆動ユニットおよび第2駆動ユニットについて全体的に薄型(狭い走行幅)を維持しながら実用上十分な外圧補強をすることができる。
【0019】
さらに本発明においては、走行時の走行環境を検知する走行環境検知部を備え、制御部は、走行環境検知部の検知結果に基づいて開口部または切欠き部が便器上に位置するための停止位置を検出し、検出した停止位置に移動するように第1駆動ユニットおよび第2駆動ユニットを制御するようにした。
【0020】
この結果、利用者は電動車椅子を十分操作することが困難な場合でも、トイレ内に入る際に壁やドアなどの障害物に衝突することなく便器まで誘導させて無事に移動することが可能となる。
【0021】
さらに本発明においては、着座部の開口部または切欠き部を閉じると共に、着座部の座面と同じ高さに位置して平坦面を形成する可動着座部と、可動着座部を可動可能な可動機構と、を備え、可動機構は、可動着座部を可動し、開口部または切欠き部を開くようにした。
【0022】
この結果、電動車椅子の使い勝手を更に向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トイレ使用時に正確な操作を必要とすることなく容易に便器に位置決めすることができると共に、トイレ内を必要最小限の移動範囲で旋回することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施の形態による電動車椅子の構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施の形態による電動車椅子の一部を分解したときの構成の一例を示す図である。
図3】第1の実施の形態による右側のメインフレームを内側から見たときの構成の一例を示す図である。
図4】第1の実施の形態による左側のメインフレームを内側から見たときの構成の一例を示す図である。
図5】第1の実施の形態による外側フレームに力が加わったときの応力分布を示す図である。
図6】第1の実施の形態による駆動ユニットの主な構成の一例を示す図である。
図7】第1の実施の形態による右側の駆動ユニットの詳細な構成の一例を示す図である。
図8】第1の実施の形態による左側の駆動ユニットの詳細な構成の一例を示す図である。
図9A】第1の実施の形態による電動車椅子の右側面図である。
図9B】第1の実施の形態による電動車椅子の正面図である。
図9C】第1の実施の形態による電動車椅子の平面図である。
図10A】第1の実施の形態によるトイレの平面図である。
図10B】第1の実施の形態によるトイレの断面図である。
図11A】第1の実施の形態によるトイレ使用時の電動車椅子の移動態様の一例を示す平面図である。
図11B】第1の実施の形態によるトイレ使用時の電動車椅子の移動態様の一例を示す底面図である。
図12A】第2の実施の形態による開口部が閉じているときの電動車椅子に係る構成の一例を示す図である。
図12B】第2の実施の形態による開口部が閉じているときの着座ユニットに係る構成の一例を示す図である。
図12C】第2の実施の形態による開口部が閉じているときの可動着座部に係る構成の一例を示す図である。
図13A】第2の実施の形態による開口部が開いているときの電動車椅子に係る構成の一例を示す図である。
図13B】第2の実施の形態による開口部が開いているときの着座ユニットに係る構成の一例を示す図である。
図13C】第2の実施の形態による開口部が開いているときの可動着座部に係る構成の一例を示す図である。
図14】第2の実施の形態によるトイレ使用時の着座ユニットの動作態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。なお、以下では、左右(L,R)とは、本発明に係る電動車椅子の車幅方向であって、前進する方向に対する向きをいう。
【0026】
(1)第1の実施の形態
図1において、1は全体として第1の実施の形態による電動車椅子を示す。この電動車椅子1は、使用者(利用者)が着座する着座部11と、着座部11に着座する使用者の背部を支持する背もたれ部12と、使用者の足部を支持する足置き部13R,13Lと、を複数のフレームが支持することによって構成される本体を備える。
【0027】
着座部11は、使用者が排便排尿(トイレ使用)するための開口部14を座面中央に有し、電動車椅子1は、開口部14に対して着脱可能に嵌合する蓋体15を備える。かかる蓋体15は、トイレ使用時には、開口部14から取り外され、トイレ未使用時には、開口部14に装着される。なお、トイレ使用時には、開口部14がトイレの便器の便座の上に位置(電動車椅子1と便器とが位置決め)するように、当該位置(停止位置)まで電動車椅子1が移動される。
【0028】
付言するならば、開口部14および蓋体15の形状、位置、大きさ、および範囲については、図1に示すものに限られるものではなく、例えば、開口部14は、切欠き部であってもよいし、適宜のものを採用することができる。
【0029】
また、着座部11の下部の両側には、駆動輪21R,21Lの一部または全部を覆うようにメインフレーム16R,16Lが設けられている。より具体的には、着座部11の右下側には、駆動輪21Rの大半を覆うようにメインフレーム16Rが設けられ、着座部11の左下側には、駆動輪21Lの大半を覆うようにメインフレーム16Lが設けられている。
【0030】
メインフレーム16R,16Lの上側には、前後方向に所定間隔、離間して車幅方向に横フレーム71、72が横架され(図2参照。)、後方の横フレーム71を介して背もたれ部12の左右端部を支持するバックフレーム17が設けられている。バックフレーム17の左右の中央付近には、着座部11に着座する使用者の肘部を支持する肘掛部18R,18Lが可動可能に設けられている。肘掛部18R,18Lの前方には、電動車椅子1を操作するための操作子19R,19Lが配置されている。ここで、使用者は、操作子19R,19Lを操作することで、電動車椅子1を自由に走行させることができる。
【0031】
メインフレーム16R,16Lの中央の下側には、駆動輪21R、21Lが軸支されている。
【0032】
より具体的には、回転軸上に着座部11の右側重心がかかる駆動輪21Rの内側には、駆動輪21Rを駆動(回転駆動)する電動モータ部22Rが配置され、駆動輪21Rの外側には、駆動輪21Rを軸支するためのベアリング23Rが配置されている(なお、電動モータ部22Rおよびベアリング23Rについては図3参照。)。また、メインフレーム16Rの中央の上側に電動モータ部22R,22Lに給電するためのバッテリ29(駆動電力を供給する駆動源の一例)が配置される。かかるメインフレーム16R、駆動輪21R、電動モータ部22R、ベアリング23R、およびバッテリ29を含んで駆動ユニット20Rが構成されている。
【0033】
回転軸上に着座部11の左側重心がかかる駆動輪21Lの内側には、駆動輪21Lを駆動(回転駆動)する電動モータ部22Lが配置され、駆動輪21Lの外側には、駆動輪21Lを軸支するためのベアリング23Lが配置されている。また、メインフレーム16Lの中央の上側に電動モータ部22R,22L等を制御するコントロールボード24(各種の制御を行う制御部の一例)が配置されている。コントロールボード24は、例えば、駆動輪21Rおよび駆動輪21Lのいずれか一方または両方が旋回中心となるように電動モータ部22Rおよび電動モータ部22Lを制御したり、操作子19R,19Lから入力された指示に基づいて、電動モータ部22R,22L等を駆動させるように制御したりする。これにより、例えば、使用者の着座時の重心がかかる駆動輪21R,21Lのいずれか一方または両方を基準としてトイレ内を必要最小限の移動範囲で旋回したり、便器を跨ぐように移動したりして開口部14の下側に当該便器を位置させることができる。かかるメインフレーム16L、駆動輪21L、電動モータ部22L、ベアリング23L、およびコントロールボード24を含んで駆動ユニット20Lが構成されている。
【0034】
なお、コントロールボード24と、操作子19R,19Lとは、有線により通信可能に接続されていてもよいし、無線により通信可能に接続されていてもよい。また、本実施の形態では、バッテリ29がメインフレーム16Rに内蔵され、コントロールボード24がメインフレーム16Lに内蔵される場合を示したが、これに限られるものではなく、バッテリ29およびコントロールボード24は、メインフレーム16Rの上部空間およびメインフレーム16Lの上部空間のいずれか一方または両方に内蔵されてもよい。
【0035】
メインフレーム16R,16Lの前端には、円筒状の前フレーム31R,31Lが結合している。前フレーム31R,31Lの先端の内側に足置き部13R,13Lが取り付けられ、前フレーム31R,31Lの先端の外側に前輪32R,32Lが回転可能に取り付けられている。ここで、足置き部13R,13Lは、駆動ユニット20Rおよび駆動ユニット20Lを部分的に支持するとともに、一対の前輪32R,32Lを回転自在に軸支するものである。つまり、電動車椅子1は、一対の駆動輪21R,21Lと一対の前輪32R,32Lとの4点により支持されている。
【0036】
前輪32R,32Lは、車軸と垂直な方向に対して回転自在なオムニホイールであり、前輪32R,32Lをオムニホイールにしたことにより、キャスターのような位置反転などの無駄な動きによる走行幅のはみ出しがなくなり、例えば、旋回半径を最小限化することができる。なお、前輪32R,32Lの直径としては、乗り越え段差の4倍の長さが用いられている(例えば、直径が150mmの場合、37.5mmの段差を乗り越えられる)。
【0037】
メインフレーム16Rの中央の内側には、板状の後フレーム33R,33Lが結合している。後フレーム33R,33Lの先端に転倒防止用の後輪34R,34L(補助輪)が回転可能に取り付けられている。ここで、後輪34R,34Lは、駆動輪21Rおよび駆動輪21Lの接地面から所定高さ位置を保って回転自在に保持され、後方傾斜時に一対の後輪34R,34Lが接地面に当接することにより、駆動ユニット20Rおよび駆動ユニット20Lを部分的に支持する。例えば、後輪34R,34Lを設けることにより、上り坂の坂道で後方への転倒を未然に防ぐことができる。なお、基本的には、トイレの便器は、便座部分以外は細身に形成されているので、後フレーム33R,33Lをメインフレーム16Rの内側に設けていても、トイレ使用時に支障をきたすことがないが、支障をきたす場合は、後フレーム33R,33Lをメインフレーム16Rの外側または後ろ側に設けてもよい。
【0038】
メインフレーム16R,16Lの前側には、センサ装置41R,41Lが取り付けられ、メインフレーム16R,16Lの後側には、センサ装置42R,42Lが取り付けられている。センサ装置41R,41L,42R,42Lは、対象物までの距離を検出する超音波センサと、対象物の画像を撮像する撮像カメラとを含んで構成される。
【0039】
例えば、コントロールボード24は、超音波センサおよび撮像カメラで検出したセンサ値(周囲の状況を把握可能な環境情報)に基づいて、操作子19R,19Lを障害物の方向に操作し難くすることで、使用者に障害物の存在を間接的に知らせることができ、安全な走行、かつ適切な走行(例えば、トイレ使用時に壁、ドアなどの障害物にぶつからない走行)を可能にしている。
【0040】
また、例えば、コントロールボード24は、トイレ使用時に、超音波センサおよび撮像カメラで検出した環境情報と、事前学習していた便器形状の情報とに基づいて、便器を識別し、便器に向かって走行していることを認識した場合、停止位置まで電動車椅子1を誘導する。
【0041】
図2は、電動車椅子1の一部を分解した(バックフレーム17を取り外した)ときの構成の一例を示す図である。なお、コントロールボード24と操作子19R,19Lとが有線により接続されている場合、例えば、バックフレーム17および横フレーム71の接続付近にコネクタが設けられて配線されている。
【0042】
図2に示すように、電動車椅子1において、横フレーム71からバックフレーム17を取り外すことができる。これにより、電動車椅子1が組み立てられた状態では格納することができなかった自動車のトランクなどの空間に収納できるようになる。
【0043】
また、バックフレーム17が含まれる上部と、横フレーム71が含まれる下部とを別々に持ち運ぶことができるようになる。
【0044】
図3は、メインフレーム16Rを内側から見たときの構成の一例を示す図である。図4は、メインフレーム16Lを外側から見たときの構成の一例を示す図である。
【0045】
メインフレーム16Rは、内側フレーム161Rと外側フレーム162Rとから構成され、駆動輪21Rの大半を覆うように形成されている。また、駆動ユニット20Rには、駆動輪21R、電動モータ部22Rなどが含まれるが、駆動輪21Rは、タイヤ55Rを取り付ける樹脂製ホイール54Rを含んで構成され、樹脂製ホイール54R内に電動モータ部22Rが収納されている。
【0046】
また、メインフレーム16Rの前後には、前輪32Rの荷重を分散させるためのモノコック部56R,57Rが設けられている。
【0047】
なお、メインフレーム16Lを内側から見たときの構成については、メインフレーム16Rの場合と基本的に同様であるので、図示およびその説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、メインフレーム16Lは、内側フレーム161Lと外側フレーム162Lとから構成され、駆動輪21Lの大半を覆うように形成されている。メインフレーム16Lは、駆動輪21Lの部分形状に合わせた膨らみが形成され、当該膨らみの内壁面に駆動輪21Lの回転軸を基準に放射状に伸びる複数のリブを有する。
【0049】
例えば、外側フレーム162Lにおいては、外側(外部)に向かって膨らみを形成(換言するならば、駆動輪21Lに近づくにつれて外側に膨らむように形成)することにより、平板であるときと比べて撓み方向の剛性を高めている。
【0050】
また、例えば、外側フレーム162Lの内側には、駆動輪21Rの回転軸(軸支)を基準に放射状に伸びる複数のリブを有する補強部61Lが設けられ、これによりメインフレーム16Lの剛性、ひいては電動車椅子1の全体の剛性が保たれている。また、外側フレーム162Lの膨らみを利用して補強部61Lを設けることで、駆動ユニット20Lの薄型化を実現している。
【0051】
ここで、補強部61Lの形状、およびリブの本数は、図4に示すものに限られるものではなく、耐荷重に応じて、任意の形状、適宜の本数を採用することができる。
【0052】
なお、メインフレーム16Rを内側から見たときの構成については、メインフレーム16Lの場合と基本的に同様であるので、図示およびその説明を省略する。
【0053】
本実施の形態では、メインフレーム16Rとメインフレーム16Lとの間の幅が狭くなってしまう事態を回避する構成として、外側フレーム162R,162Lにのみ補強部61R,61Lおよび膨らみを設けている。ただし、この構成に限られるものではなく、トイレの寸法、便器の形状、耐荷重などを加味して、例えば、内側フレーム161R,161Lについても同様に補強部61R,61Lおよび膨らみを設けてもよい。
【0054】
図5は、外側フレーム162Rに力62が加わったときの応力分布を示す図である。図5に示すように、応力が補強部61Rに集中していることから、補強部61Rが有効に機能していることがわかる。
【0055】
なお、上述の内容は、外側フレーム162Lについても同様であるので、図示およびその説明を省略する。
【0056】
図6は、駆動ユニット20R,20Lの主な構成の一例を示す図である。
【0057】
図6に示すように、電動モータ部22R,22Lは、ダイレクトモータ25R,25L、ダイレクトモータ25R,25Lにおける磁界を検出して磁界の大きさに比例したアナログ信号を出力するホールセンサ26R,26L、およびダイレクトモータ25R,25Lを駆動するモータドライバ27R,27Lを含んで構成される。
【0058】
ダイレクトモータ25R,25Lは、ダイレクトモータ25R,25Lの回転力を間接的機構(ギアボックスなど)を介さずに直接、駆動輪21R、21Lに伝達する機構を有する。つまり、ダイレクトモータ25R,25Lを用いることで、間接的機構が不要となるので、電動モータ部22R,22Lの小型化(駆動ユニット20R,20Lの薄型化)を可能にしている。
【0059】
図7は、駆動ユニット20Rの詳細な構成の一例を示す図である。図8、駆動ユニット20Lの詳細な構成の一例を示す図である。
【0060】
図7および図8に示すように、ダイレクトモータ25R,25Lは、アウタロータ型のモータであり、内側に固定側のコイル251R,251L、外側に回転側のマグネット252R,252Lを備える。駆動ユニット20Rは、コイル251R,251Lの内周縁にマグネット252R,252Lの回転軸部51R,51Lを回転自由に支持するベアリング23Rを備え、マグネット252R,252Lを回転させる。このマグネット252R,252Lの回転は、カーボン製ホイール53R,53Lおよび樹脂製ホイール54R,54Lを介してタイヤ55R,55Lに伝えられる。また、摺動材52R,52Lにより、メインフレーム16Rに対して樹脂製ホイール54R,54Lを滑らせながら動かすことができる。
【0061】
図9Aは、電動車椅子1の右側面図であり、図9Bは、電動車椅子1の正面図であり、図9Cは、電動車椅子1の平面図である。
【0062】
図9Aに示すように、電動車椅子1の全高は、H1であり、座高(床から着座部11の最も低い場所までの高さ(最低地上高)。例えば後座高。)は、H2であり、電動車椅子1のホイールベース(前軸と後軸との軸間距離)は、L1である。駆動輪21R、21Lの車径は、D1であり、前輪32R,32Lの車径は、D2である。
【0063】
図9Bに示すように、電動車椅子1の全幅は、W1であり、電動車椅子1のメインフレーム16R,16L間の距離(より具体的には、便座が位置する高さの距離)は、W2である。つまり、電動車椅子1に形成される下部空間に必要な高さはH2、幅はW2となる。
【0064】
図9Cに示すように、電動車椅子1では駆動輪21Rおよび駆動輪21Lのいずれか一方または両方が旋回中心となるので、電動車椅子1の最小回転半径は、R1である。
【0065】
図10Aは、トイレ81の平面図であり、図10Bは、トイレ81の断面図である。
【0066】
図10Aに示すように、トイレ81には、便器82が設置されている。トイレ81の室内寸法は、長手方向の長さがW3であり、短手方向の長さがW4である。トイレ81の入り口の幅(ドア幅)は、W5である。便器82の全幅(便座83の幅)は、W6である。
【0067】
図10Bに示すように、便器82には、便座83が載置されている。便座83の便座面の高さは、H3である。
【0068】
図11Aは、トイレ使用時の電動車椅子1の移動態様の一例を示す平面図である。図11Bは、トイレ使用時の電動車椅子1の移動態様の一例を示す底面図である。
【0069】
電動車椅子1の幅W2は、便器82の全幅W6よりも第1の長さ(便座83から離れすぎない程度、指等を挟まない程度など。例えば、数cm)だけ長く設計され、電動車椅子1の高さH2は、便座83の便座面の高さH3よりも第2の長さ(便座83から離れすぎない程度、指等を挟まない程度など。例えば、数cm)だけ高く設計されている。これにより、トイレ使用時には、図11Aおよび図11Bに示すように、電動車椅子1は、電動車椅子1の着座部11と便座83とが重なるまで移動可能になる。なお、電動車椅子1の各寸法は、トイレ使用時に電動車椅子1が移動する経路を示す移動軌跡84R,84Lを走行可能なように設計されている。付言するならば、第1の長さと第2の長さとは、同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0070】
(トイレ使用時の移動態様)
電動車椅子1の使用者は、トイレ使用時、まず、トイレ81に対して電動車椅子1を後ろ向きとし、後方への移動を行う(使用態様1A)。使用者は、所定の距離だけ後方に移動すると、左後ろに曲る(使用態様1B)。使用者は、曲がり終えると、再び後方への移動を行い、電動車椅子1とトイレ81とが位置決めする停止位置まで移動する(移動態様1C)。
【0071】
後方への移動が行われている際、電動車椅子1は、センサ装置41R,41Lにより検出された画像と事前学習していた便器形状の画像とに基づいて便器82を認識すると、センサ装置41R,41Lにより検出された画像および距離情報と、事前学習している移動軌跡84R,84Lの情報とに基づいて、移動軌跡84R,84L上を走行するように支援を行う。例えば、支援は、電動車椅子1がトイレ81の壁、ドアに接触しないように、使用者による操作子19R,19Lの操作を制限するものであってもよいし、電動車椅子1がトイレ81の壁、ドアに接触しそうになったときにその旨を報知するものであってもよいし、電動車椅子1が停止位置まで移動するものであってもよいし、その他の支援であってもよい。
【0072】
ここで、トイレ81の室内寸法が狭く、トイレ81のドアが便器82に対して正面にない場合(右側または左側にある場合)、小回りが必要となるので、第1に、狭面積での旋回が可能な構造が必要となる。また、便器82の全幅は、決まっていることから、単に電動車椅子1を小型化することはできないので、第2に、駆動ユニット20R,20Lの薄型化が必要となる。また、駆動輪21R、21Lを単に薄型化すると、荷重に耐えなくなってしまうので、第3に、荷重に耐え得る剛性が必要となる。
【0073】
第1の点については、例えば、電動車椅子1のホイールベースL1を短くしてもよい。また、例えば、電動車椅子1の後軸を着座部11の中心と一致させてもよい。一致されることにより、限りなく電動立ち乗り二輪車に近い態様で急旋回が可能となる。また、例えば、前輪32R,32Lをオムニホイールとしてもよい。また、例えば、これらを組み合わせてもよい。
【0074】
第2の点については、例えば、ダイレクトモータ25R,25Lを用いてもよい。ダイレクトモータ25R,25Lをアウタロータ型のモータとしてもよい。この場合、内側にスペースを作ることができるので、このスペースにモータドライバ27R,27Lを配置できるようになり、駆動ユニット20R,20Lの薄型化を更に図れる。また、例えば、駆動輪21R、21Lを軸支するフレームをパイプ状のフレームではなく、カバー状のメインフレーム16R,16Lとしてもよい。また、例えば、これらを組み合わせてもよい。
【0075】
第3の点については、例えば、メインフレーム16R,16Lに補強部61R,61Lを設けてもよい。この際、軸支を基準に放射状に伸びるようにリブを設けることで、メインフレーム16R,16Lにかかる応力を効率よく分散できるようになる。また、例えば、メインフレーム16R,16Lを外側に膨らませることにより、撓み方向の剛性を高めてもよい。また、例えば、これらを組み合わせてもよい。
【0076】
上述した構成によれば、荷重に耐え得る強度を確保しつつ、駆動ユニット20R,20Lの薄型化を実現することができる。
【0077】
本実施の形態によれば、トイレ使用時に正確な操作を必要とすることなく容易に便器に位置決めすることができると共に、トイレ内を必要最小限の移動範囲で旋回可能な電動車椅子を提供できる。
【0078】
(2)第2の実施の形態
第1の実施の形態では、トイレ使用時に開口部から蓋体が取り外され、トイレ未使用時に開口部に蓋体が装着される構成を例示した。このような構成では、例えば、狭いトイレに入れたとしても、取り外された蓋体を置く場所が必要となるという問題がある。この点、本実施の形態は、着座部(シート片)が自動で可動する構成を採用することで、上記のような問題を解決することができる。以下では、かかる構成について詳細に説明する。
【0079】
なお、第1の実施の形態の構成と同じ構成については、その説明を適宜省略する。付言するならば、本実施の形態に示す電動車椅子と第1の実施の形態に示した電動車椅子とは、着座部が主に異なり、着座部以外の構成(例えば、形状)については、第1の実施の形態に示した電動車椅子と同じ構成としてもよいし、異なる構成(本実施の形態に示す構成)としてもよい。
【0080】
図12A図12Cおよび図13A図13Cは、本実施の形態の電動車椅子101に係る構成の一例を示す。電動車椅子101には、使用者が着座するための非可動着座部111および可動着座部112R,112L、非可動着座部111に取り付けられる左右に延びた前後一対のレール部113F,113B、可動着座部112R,112Lを可動するための可動機構114などを備える着座ユニット115が取り付けられている。
【0081】
非可動着座部111は、固定シートであり、使用者がトイレ使用するための開口部116が座面中央に形成されている。非可動着座部111および開口部116の形状、位置、大きさ、および範囲については、図に示すものに限られるものではなく、例えば、開口部116は、切欠き部であってもよいし、適宜のものを採用することができる。
【0082】
可動着座部112R,112Lは、左右一対の可動可能なシート片であり、開口部116を開閉する。
【0083】
ここで、可動着座部112R,112Lは、左右一対の可動可能なシート片を示したが、これに限られるものではない。例えば、可動着座部112R,112Lは、前後一対の可動可能なシート片であってもよい。また、例えば、可動着座部112R,112Lは、可動可能な1つのシート片であってもよい。また、本実施の形態では、可動着座部112R,112Lは、開口部116の全部を塞ぐシート片を示したが、これに限られるものではなく、開口部116の一部を塞ぐシート片であってもよい。
【0084】
また、可動着座部112R,112Lの長手方向の両端には、可動機構114が設けられている。かかる可動機構114は、アクチュエータを含み、レール部113F,113Bに取り付けられ、コントロールボード24と通信可能に構成される。例えば、可動機構114は、コントロールボード24からの指示に応じて、可動着座部112R,112Lと共に、レール部113F,113B上を移動(水平方向に可動)する。また、例えば、可動機構114は、コントロールボード24からの指示に応じて可動着座部112R,112Lを上下方向に可動する。
【0085】
なお、非可動着座部111および可動着座部112R,112Lの材質は、特に限定されるものではなく、例えば、合成樹脂、金属、炭素繊維などである。なお、非可動着座部111および可動着座部112R,112Lの材質は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、図示は省略するが、非可動着座部111および可動着座部112R,112Lは、例えば、合成樹脂、金属、炭素繊維などのプレートの上にまたはプレートを覆うように、クッション材が設けられていてもよい。
【0086】
図14は、着座ユニット115の動作態様の一例を示す図である。(1)には、トイレ未使用時の態様の一例を示し、(2)には、トイレ使用時の態様の一例を示す。
【0087】
トイレ未使用時は、非可動着座部111の座面と可動着座部112R,112Lの座面とが同じ高さに位置し、全体として平坦面が形成されている。なお、開口部116は、可動着座部112R,112Lにより閉じられている。
【0088】
そして、トイレ使用時に開口部116がトイレの便器82の便座の上に位置(電動車椅子101と便器82とがドッキング)したとき、可動機構114の上下可動部117により可動着座部112R,112Lが下方に所定の距離だけ移動し、可動機構114の左右可動部118により可動着座部112R,112Lが外側に向かって(左右に分かれて)非可動着座部111の下側の既定の位置まで移動する。このように可動着座部112R,112Lが可動することで、開口部116が開かれ、排泄可能な状態になる。
【0089】
排泄、拭き取り等が終了し、使用者が手動(例えば、操作子19R,19Lを介して可動着座部112R,112Lを閉じる指示をしたタイミング)または自動(例えば、部屋に戻る等の移動を開始したタイミング)で、左右可動部118により可動着座部112R,112Lが中央にスライドして隣り合うように並列関係になった後(平行を保って並んだ後)、上下可動部117により可動着座部112R,112Lが上方に所定の距離だけ移動して高さを均一に合わせる(座面全体を平坦面にさせる)。なお、開口部116は、可動着座部112R,112Lにより閉じられる。
【0090】
本実施の形態では、電動車椅子101と便器82とがドッキングすることを契機に、可動着座部112R,112Lが開放される例を示したが、これに限られるものではない。着座ユニット115は、使用者が着座しているか否かを検知する感圧センサ、レーザセンサ等のセンサを備え、電動車椅子101と便器82とがドッキングしている際、使用者が座面からお尻を上げたことを検知したとき、可動着座部112R,112Lが開放される構成としてもよい。なお、着座ユニット115は、可動着座部112R,112Lの位置を認識しているので、排泄の前後に使用者がトイレで立ったり座ったりしても、電動車椅子101と便器82とがドッキングしている状態では、可動着座部112R,112Lの開閉動作は行なわれない(可動着座部112R,112Lは、開いたままの状態である)。
【0091】
このように、スライド式の着座部(例えば、可動着座部112R,112L)を採用し、開口部116を自動で開閉することで、例えば、蓋体が不要となる。また、スライド式の着座部とすることで、例えば、排泄専用の外観を払拭し、日常的に使用し易くなる。また、スライド式の着座部とすることで、例えば、蓋体がない電動車椅子と比べて座面の面積を増大させることができ、移動時の乗り心地を向上することができる。
【0092】
ここで、本実施の形態では、普段は、非可動着座部111の座面と可動着座部112R,112Lの座面とが同じ高さに位置し、全体として平坦面が形成されるが、平坦面を保持する構成については、限定されるものではない。例えば、アクチュエータにより保持されてもよい。また、例えば、保持機構(例えば、非可動着座部111の座面と可動着座部112R,112Lの座面とが同じ高さに位置したときに、可動機構114から突起部が突き出て非可動着座部111に引っ掛かる構成)により保持されてもよい。また、例えば、可動機構114は、ばね等の付勢部材を有し、トイレ未使用時(普段)は付勢部材により可動着座部112R,112Lが上方向に付勢され、トイレ使用時は、アクチュエータにより付勢部材よりも強い力を加えて可動着座部112R,112Lを下方向に可動させる構成としてもよい。
【0093】
本実施の形態によれば、更に使い勝手のよい電動車椅子を提供できる。
【0094】
(3)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、本発明を電動車椅子1に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の電動車椅子に広く適用することができる。
【0095】
また上述の実施の形態においては、駆動輪21R,21Lの大半を覆うようにメインフレーム16R,16Lが形成される場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、駆動輪21R,21Lの上側半分を覆うようにメインフレーム16R,16Lが形成されるようにしてもよい。
【0096】
また上述の実施の形態においては、便器82に対して左側にトイレ81のドアが設けられている状況で電動車椅子1が移動する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、便器82に対して正面にトイレ81のドアが設けられている状況で電動車椅子1が移動する場合にも適用できる。
【0097】
また上述の実施の形態においては、ホールセンサ26R,26Lを用いてダイレクトモータ25R,25Lを制御する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、角度センサを更に設け、角度センサおよびホールセンサ26R,26Lを用いてダイレクトモータ25R,25Lを制御するようにしてもよい。かかる構成によれば、より高精度にダイレクトモータ25R,25Lを制御できるようになり、例えば、より小回りができるようになる。
【0098】
さらに上述の実施の形態においては、走行環境検知部として超音波センサおよび撮像カメラからなるセンサ装置41R,41L,42R,42Lを適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これにGNSS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位システムを組み合わせてもよく、さらにはこれに代えてレーザレンジセンサ、RGB−Dセンサ、3D距離画像センサによるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を適用してもよく、電動車椅子の走行環境を走行時に把握することができれば、その他種々の手法やその組合せを適用してもよい。
【0099】
上述した構成については、本発明の要旨を変更しない範囲において、適宜に組み合わせたり、変更したりすることができる。
【符号の説明】
【0100】
1……電動車椅子、11……着座部、14……開口部、15……蓋体、16R,16L……メインフレーム、20R,20L……駆動ユニット、21R,21L……駆動輪、24……コントロールボード、25R,25L……ダイレクトモータ、41R,41L,42R,42L……センサ装置、61……補強部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14