特開2019-34272(P2019-34272A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-34272流体導出装置、この流体導出装置を用いた排煙消火方法、及びこの流体導出装置を用いた可搬式排煙消火装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-34272(P2019-34272A)
(43)【公開日】2019年3月7日
(54)【発明の名称】流体導出装置、この流体導出装置を用いた排煙消火方法、及びこの流体導出装置を用いた可搬式排煙消火装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/26 20060101AFI20190208BHJP
   A62B 13/00 20060101ALI20190208BHJP
   A62C 31/07 20060101ALI20190208BHJP
   B05B 7/26 20060101ALI20190208BHJP
【FI】
   B05B1/26 A
   A62B13/00 C
   A62C31/07
   B05B7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-156825(P2017-156825)
(22)【出願日】2017年8月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】廖 赤虹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直久
(72)【発明者】
【氏名】松島 至俊
(72)【発明者】
【氏名】大室 健
【テーマコード(参考)】
2E185
2E189
4F033
【Fターム(参考)】
2E185AA09
2E185BA19
2E185CC61
2E189KA07
4F033AA12
4F033BA01
4F033BA02
4F033BA03
4F033BA04
4F033DA01
4F033EA01
4F033JA01
4F033KA01
4F033NA01
4F033QA10
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB13Y
4F033QB15X
4F033QB17
4F033QD02
4F033QD15
4F033QD16
4F033QE06
4F033QE25
4F033QF07Y
(57)【要約】
【課題】噴流口から噴出する流体を、流速の低下を押さえて所定範囲に拡げることができる流体導出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の流体導出装置1は、流体が流れる流路管10と、流路管10を流れる流体を噴出する噴流口11と、噴流口11に配置する拡散部材20とを備え、拡散部材20は、流体の流れ方向を変更する流れ方向変更部22を有し、拡散部材20の回転によって、噴流口11から噴出する流体を拡散させることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路管と、
前記流路管を流れる前記流体を噴出する噴流口と、
前記噴流口に配置する拡散部材と
を備え、
前記拡散部材は、前記流体の流れ方向を変更する流れ方向変更部を有し、
前記拡散部材の回転によって、前記噴流口から噴出する前記流体を拡散させる
ことを特徴とする流体導出装置。
【請求項2】
前記流体には、前記流れ方向変更部によって高密度領域が形成され、
前記流路管の管軸の延長線を仮想噴流軸としたとき、
前記高密度領域は、前記仮想噴流軸に直交する仮想噴流断面に対して、前記仮想噴流軸から半径方向に形成され、
前記高密度領域は、前記拡散部材の回転によって、前記仮想噴流軸を中心に一方向に旋回する
ことを特徴とする請求項1に記載の流体導出装置。
【請求項3】
前記流路管内に第1ノズルを設け、
前記第1ノズルを前記拡散部材の上流に配置し、
前記第1ノズルから噴出する前記流体を前記拡散部材に導く
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体導出装置。
【請求項4】
前記第1ノズル内に第2ノズルを設け、
前記第2ノズルからは気体を噴出し、
前記第1ノズルからは前記気体と液体とを混合して気液混相流とした前記流体を噴出する
ことを特徴とする請求項3に記載の流体導出装置。
【請求項5】
前記拡散部材の下流に、前記噴流口から噴出する前記流体の拡散を規制する導流部材を設けた
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流体導出装置。
【請求項6】
前記導流部材の上流側導流部材開口部と、前記導流部材の下流側導流部材開口部との断面形状を異ならせ、
前記上流側導流部材開口部より、前記下流側導流部材開口部を、開口面積を大きくした
ことを特徴とする請求項5に記載の流体導出装置。
【請求項7】
前記上流側導流部材開口部を前記噴流口に接続し、
前記下流側導流部材開口部を矩形形状とした
ことを特徴とする請求項6に記載の流体導出装置。
【請求項8】
前記導流部材を、少なくとも、対向する一対の導流板材で構成し、
一対の前記導流板材を前記噴流口に接続した
ことを特徴とする請求項5に記載の流体導出装置。
【請求項9】
前記導流板材の上流側端部より、前記導流板材の下流側端部を拡大し、
前記導流板材の幅を、前記上流側端部から前記下流側端部に向けて漸次大きくした
ことを特徴とする請求項8に記載の流体導出装置。
【請求項10】
前記拡散部材は、前記流路管を流れる前記流体によって回転する
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の流体導出装置。
【請求項11】
前記拡散部材は、前記噴流口の内部に配置される筒部本体を有し、
前記筒部本体の内周面に前記流れ方向変更部を形成した
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流体導出装置。
【請求項12】
前記拡散部材は、前記噴流口の内部に配置される筒部本体を有し、
前記筒部本体より下流に前記流れ方向変更部を形成した
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流体導出装置。
【請求項13】
前記筒部本体に、内周面から外周面に至る貫通孔を形成した
ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の流体導出装置。
【請求項14】
前記貫通孔の前記内周面における内周開口部よりも、前記貫通孔の前記外周面における外周開口部を大きくした
ことを特徴とする請求項13に記載の流体導出装置。
【請求項15】
前記筒部本体には、中空軸部を有し、
前記筒部本体の内周側で前記中空軸部の外周側に前記流れ方向変更部を配置し、
前記筒部本体内を流れる前記流体は、
前記中空軸部を流れる第1流体と、前記前記筒部本体と前記中空軸部との間を流れる第2流体となり、
前記第1流体の流れ方向は変更されず、
前記第2流体の流れ方向が変更される
ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の流体導出装置。
【請求項16】
前記筒部本体と前記中空軸部とを前記流れ方向変更部で接続した
ことを特徴とする請求項15に記載の流体導出装置。
【請求項17】
前記中空軸部の下流側中空軸開口部の外径を、前記中空軸部の上流側中空軸開口部の外径よりも大きくした
ことを特徴とする請求項15に記載の流体導出装置。
【請求項18】
前記流路管に空気孔を形成し、
前記第1ノズルから噴出する前記流体により発生する負圧で前記空気孔から前記流路管内に空気が吸い込まれる
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の流体導出装置。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の流体導出装置を用いた排煙消火方法であって、
前記流路管に、消防車に搭載される圧縮空気源及び水供給源から供給される前記流体を導入し、
前記噴流口から噴出する前記流体を、火災区画にある第1開口部から前記火災区画内に導入し、前記火災区画にある第2開口部から前記火災区画内の煙及び加熱空気を排出させる
ことを特徴とする排煙消火方法。
【請求項20】
請求項4に記載の流体導出装置を用いた排煙消火方法であって、
前記気体を、空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかとし、
前記気液混相流とした前記流体には、消火水又は消火薬剤を含む
ことを特徴とする排煙消火方法。
【請求項21】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の流体導出装置を用いた可搬式排煙消火装置であって、
前記流路管には、消防車に搭載される圧縮空気源又は水供給源から供給される前記流体を導入する消防ホースが接続され、
前記噴流口から噴出する前記流体を、火災区画にある第1開口部から前記火災区画内に導入し、前記火災区画にある第2開口部から前記火災区画内の煙及び加熱空気を排出させる
ことを特徴とする可搬式排煙消火装置。
【請求項22】
請求項4に記載の流体導出装置を用いた可搬式排煙消火装置であって、
前記気体を、空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかとし、
前記気液混相流とした前記流体には、消火水又は消火薬剤を含む
ことを特徴とする可搬式排煙消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の火災区画で発生する煙や熱気を火災区画外に強制的に排出して消火する排煙消火方法や可搬式排煙消火装置に特に適した流体導出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物火災、特に耐火建物火災において、火災区画の消火活動や人命救助活動等を妨げる最大の要因は、火災区画内の濃煙と熱気である。火災区画内の濃煙と熱気(加熱空気)は、消防(救命)隊員の火災区画内への侵入を妨げ、火点や要救助者の捜索を困難にすることに加え、隊員自身の安全にとっても脅威となる。
建物の中には、建築基準法で排煙設備を設置することが義務付けられているものもあり(建築基準法で定められている基準を満たす劇場、映画館、病院、学校、ホテル、百貨店等の特殊建築物)、そのような建物に固定的に設置される排煙設備については、多くの提案がなされている(例えば、特許文献1、2)。
一方、排煙設備が設置されていない居住用ビルやオフィスビル等の建物の区画内で火災が発生した場合、消防(救命)隊員が可搬式の排煙装置を火災区画の近くまで運び、排煙装置を作動させて、火災区画の入口等の開口部から火災区画内に空気を強制送風し、濃煙と加熱空気を火災区画の窓等の排気口から煙及び加熱空気とともに火災区画外に排出するという排煙方法が採られている。
上記のような排煙方法に用いられる流体導出装置としては、一般に可搬式のブロアー装置が用いられている。消防(救命)隊員が、可搬式のブロアー装置を火災区画の近くまで運んで消火・救助活動を行っている。また、送風・排煙用ファン(ブロアー装置)及びこれに接続された専用ダクトを多用途作業車に搭載したものもある(特許文献3)。
消火・救助活動で用いられている可搬式ブロアー装置は、一般に体積が大きく、重量も数十kgになるため、隊員一人で運ぶことが困難である。また、火災時はエレベータが使用できないため、排煙装置を中高層の階の火災区画まで運ぶことは、隊員にとって大きな負担になる。
【0003】
また、可搬式ブロアー装置は送風羽根の回転により送風気流を発生させるものであり、発生する送風気流の断面形状は送風羽根の回転軌跡と同じ円形になる。一方、居住室や事務室等の火災区画の入口(開口部)は、大抵、縦横比2:1の矩形状である。
図10にブロアー装置の火災区域での使用状態を示す。
図10(a)では、ブロアー装置aを、火災区域bの入口cに近づけて用いる場合を示している。
ブロアー装置aを入口cに近づけて用いることで、ブロアー装置aからの全ての送風気流を入口cから火災区画b内に供給することができる。
しかし、入口cにおける送風領域dは、入口cの一部しか覆わない。
従って、ブロアー装置aからの送風は、送風領域dで覆われていない入口cの部分から逆流し、火災区域b内の煙や加熱空気は、窓等の排気口eから排出されにくい。
図10(b)では、ブロアー装置aを、火災区域bの入口cから遠ざけて用いる場合を示している。
ブロアー装置aを入口cから遠ざけて用いることで、送風領域dが入口cの全域を覆うことができる。
しかし、入口cから外れた送風領域dの部分では、ブロアー装置aからの送風は、火災区画b内に入らない。
【0004】
図11は、送風領域dが入口cの全域を覆う状態でのパラメータを示している。
送風領域dの半径をR、入口cの幅をL、高さを2Lとすると、送風領域dの面積はπ×R、入口cの面積は2Lである。ここで、R=(5/4)Lであるので、送風領域dに対する入口cの面積比は、2L/π(5/4)L、すなわち51%となる。
すなわち、図11に示す条件では、送風効率が約50%低下する。また、ブロアー装置aを入口cから遠ざけて配置するので、火災区画b内に所定の風圧で強制送風するためには、より強力なブロアー装置aを使用する必要が生じる。
また、入口cの前方スペースが狭い場合(狭い廊下をもつ中高層建築等)、ブロアー装置aを図10(b)のように遠ざけて用いることができない。
このような問題点を解決するため、特許文献4は、CAFS車の圧縮空気を利用して、軽量小型で運び易く、かつ、火災区画内への送風効率が高い可搬式排煙装置を提示している。
特許文献4の可搬式排煙装置は、圧縮空気を噴射する複数の噴射ノズルで構成される噴射ノズル群と、噴射ノズル群が配置されたノズル配置部材とを主体として構成される。ノズル配置部材は、各噴射ノズルに圧縮空気を供給できるように管材で形成され、複数の横管部を設け、これらの横管部にそれぞれ複数の噴射ノズルが所定間隔で配置される。噴射ノズル群の外縁側に位置する複数の噴射ノズルの各中心を結ぶ輪郭線は、火災区画の開口部の形状に適合する矩形状をなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−19237号公報
【特許文献2】特表2002−536093号公報
【特許文献3】特開2003−81000号公報
【特許文献4】特許第5587234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4では、従来のブロアー式陽圧排煙装置と同様に、消火のための機能が備えられていない。そのため、火災区画bに対して、送風により排煙すると同時に、消防隊員が迅速に火災区画bに進入して消火する必要がある。しかし、火盛期の火災区画bへの進入は危険を伴う行動であり、隊員の安全確保の観点より、排煙と同時に消火が実現できる装置が理想的である。
また、特許文献4は、従来のブロアー式排煙装置に比べ、送風効率が高いが、送気口に対して均等な風圧を得るために、一定数量の噴射ノズルを設ける必要がある。しかし、それがコストの上昇につながる。
より低コストの可搬式排煙消火装置を実現するには、多数の噴射ノズルを設けることなく、噴流口から噴出する流体を、流速の低下を押さえて所定範囲に拡げることができる流体導出装置が望まれる。
【0007】
本発明は、噴流口から噴出する流体を、流速の低下を押さえて所定範囲に拡げることができる流体導出装置を提供することを目的とする。
また本発明は、所定範囲に拡げた流体を導入でき、煙及び加熱空気を第2開口部から排出させやすい排煙消火方法及び可搬式排煙消火装置を提供することを目的とする。
また本発明は、拡散効果を高めるとともに到達距離を伸ばすことができ、煙及び加熱空気を排出させやすい排煙消火方法及び可搬式排煙消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明の流体導出装置は、流体が流れる流路管と、前記流路管を流れる前記流体を噴出する噴流口と、前記噴流口に配置する拡散部材とを備え、前記拡散部材は、前記流体の流れ方向を変更する流れ方向変更部を有し、前記拡散部材の回転によって、前記噴流口から噴出する前記流体を拡散させることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の流体導出装置において、前記流体には、前記流れ方向変更部によって高密度領域が形成され、前記流路管の管軸の延長線を仮想噴流軸としたとき、前記高密度領域は、前記仮想噴流軸に直交する仮想噴流断面に対して、前記仮想噴流軸から半径方向に形成され、前記高密度領域は、前記拡散部材の回転によって、前記仮想噴流軸を中心に一方向に旋回することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の流体導出装置において、前記流路管内に第1ノズルを設け、前記第1ノズルを前記拡散部材の上流に配置し、前記第1ノズルから噴出する前記流体を前記拡散部材に導くことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の流体導出装置において、前記第1ノズル内に第2ノズルを設け、前記第2ノズルからは気体を噴出し、前記第1ノズルからは前記気体と液体とを混合して気液混相流とした前記流体を噴出することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流体導出装置において、前記拡散部材の下流に、前記噴流口から噴出する前記流体の拡散を規制する導流部材を設けたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の流体導出装置において、前記導流部材の上流側導流部材開口部と、前記導流部材の下流側導流部材開口部との断面形状を異ならせ、前記上流側導流部材開口部より、前記下流側導流部材開口部を、開口面積を大きくしたことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項6に記載の流体導出装置において、前記上流側導流部材開口部を前記噴流口に接続し、前記下流側導流部材開口部を矩形形状としたことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項5に記載の流体導出装置において、前記導流部材を、少なくとも、対向する一対の導流板材で構成し、一対の前記導流板材を前記噴流口に接続したことを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の流体導出装置において、前記導流板材の上流側端部より、前記導流板材の前記下流側端部を拡大し、前記導流板材の幅を、前記上流側端部から下流側端部に向けて漸次大きくしたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の流体導出装置において、前記拡散部材は、前記流路管を流れる前記流体によって回転することを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流体導出装置において、前記拡散部材は、前記噴流口の内部に配置される筒部本体を有し、前記筒部本体の内周面に前記流れ方向変更部を形成したことを特徴とする。
請求項12記載の本発明は、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流体導出装置において、前記拡散部材は、前記噴流口の内部に配置される筒部本体を有し、前記筒部本体より下流に前記流れ方向変更部を形成したことを特徴とする。
請求項13記載の本発明は、請求項11又は請求項12に記載の流体導出装置において、前記筒部本体に、内周面から外周面に至る貫通孔を形成したことを特徴とする。
請求項14記載の本発明は、請求項13に記載の流体導出装置において、前記貫通孔の前記内周面における内周開口部よりも、前記貫通孔の前記外周面における外周開口部を大きくしたことを特徴とする。
請求項15記載の本発明は、請求項11又は請求項12に記載の流体導出装置において、前記筒部本体には、中空軸部を有し、前記筒部本体の内周側で前記中空軸部の外周側に前記流れ方向変更部を配置し、前記筒部本体内を流れる前記流体は、前記中空軸部を流れる第1流体と、前記前記筒部本体と前記中空軸部との間を流れる第2流体となり、前記第1流体の流れ方向は変更されず、前記第2流体の流れ方向が変更されることを特徴とする。
請求項16記載の本発明は、請求項15に記載の流体導出装置において、前記筒部本体と前記中空軸部とを前記流れ方向変更部で接続したことを特徴とする。
請求項17記載の本発明は、請求項15に記載の流体導出装置において、前記中空軸部の下流側中空軸開口部の外径を、前記中空軸部の上流側中空軸開口部の外径よりも大きくしたことを特徴とする。
請求項18記載の本発明は、請求項3又は請求項4に記載の流体導出装置において、前記流路管に空気孔を形成し、前記第1ノズルから噴出する前記流体により発生する負圧で前記空気孔から前記流路管内に空気が吸い込まれることを特徴とする。
請求項19記載の本発明の排煙消火方法は、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の流体導出装置を用いた排煙消火方法であって、前記流路管に、消防車に搭載される圧縮空気源及び水供給源から供給される前記流体を導入し、前記噴流口から噴出する前記流体を、火災区画にある第1開口部から前記火災区画内に導入し、前記火災区画にある第2開口部から前記火災区画内の煙及び加熱空気を排出させることを特徴とする。
請求項20記載の本発明の排煙消火方法は、請求項4に記載の流体導出装置を用いた排煙消火方法であって、前記気体を、空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかとし、前記気液混相流とした前記流体には、消火水又は消火薬剤を含むことを特徴とする。
請求項21記載の本発明の可搬式排煙消火装置は、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の流体導出装置を用いた可搬式排煙消火装置であって、前記流路管には、消防車に搭載される圧縮空気源又は水供給源から供給される前記流体を導入する消防ホースが接続され、前記噴流口から噴出する前記流体を、火災区画にある第1開口部から前記火災区画内に導入し、前記火災区画にある第2開口部から前記火災区画内の煙及び加熱空気を排出させることを特徴とする。
請求項22記載の本発明の可搬式排煙消火装置は、請求項4に記載の流体導出装置を用いた可搬式排煙消火装置であって、前記気体を、空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかとし、前記気液混相流とした前記流体には、消火水又は消火薬剤を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流体導出装置によれば、噴流口から噴出する流体を、流速の低下を押さえて所定範囲に拡げることができる。
また本発明の排煙消火方法及び可搬式排煙消火装置によれば、所定範囲に拡げた流体を導入でき、煙及び加熱空気を第2開口部から排出させやすい。
また本発明の排煙消火方法及び可搬式排煙消火装置によれば、拡散効果を高めるとともに到達距離を伸ばすことができ、煙及び加熱空気を排出させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例による流体導出装置の構成を示す断面図
図2図1に示す拡散部材の斜視図
図3】同拡散部材による噴流を説明するイメージ図
図4図1に示す導流部材の平面図及び側面断面図
図5】本実施例による流体導出装置を用いた可搬式排煙消火装置の斜視図
図6】本実施例による流体導出装置を用いた排煙消火方法を示す説明図
図7】本発明の他の実施例による流体導出装置の構成を示す写真
図8図7に示す実施例による流体導出装置による動作確認実験を示す写真
図9】本発明の更に他の実施例による拡散部材の斜視図
図10】従来のブロアー装置の火災区域での使用状態を示す図
図11】従来の送風領域が入口の全域を覆う状態でのパラメータを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施の形態による流体導出装置は、拡散部材が、流体の流れ方向を変更する流れ方向変更部を有し、拡散部材の回転によって、噴流口から噴出する流体を拡散させるものである。本実施の形態によれば、噴流口から噴出する流体を、流速の低下を押さえて所定範囲に拡げることができる。
【0012】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による流体導出装置において、流体には、流れ方向変更部によって高密度領域が形成され、流路管の管軸の延長線を仮想噴流軸としたとき、高密度領域は、仮想噴流軸に直交する仮想噴流断面に対して、仮想噴流軸から半径方向に形成され、高密度領域は、拡散部材の回転によって、仮想噴流軸を中心に一方向に旋回するものである。本実施の形態によれば、高密度領域を旋回させることで、所定範囲に拡大させた流体の到達距離を伸ばすことができる。
【0013】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による流体導出装置において、流路管内に第1ノズルを設け、第1ノズルを拡散部材の上流に配置し、第1ノズルから噴出する流体を拡散部材に導くものである。本実施の形態によれば、拡散部材に導く流体の流速を高めることで、拡散効果を高めるとともに到達距離を伸ばすことができる。
【0014】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による流体導出装置において、第1ノズル内に第2ノズルを設け、第2ノズルからは気体を噴出し、第1ノズルからは気体と液体とを混合して気液混相流とした流体を噴出するものである。本実施の形態によれば、気液混相流とすることで、拡散効果を高めるとともに到達距離を伸ばすことができる。
【0015】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による流体導出装置において、拡散部材の下流に、噴流口から噴出する流体の拡散を規制する導流部材を設けたものである。本実施の形態によれば、導流部材によって流体の拡散を規制することで、対象空間又は対象物の形状に合わせることができ、無駄なく対象空間又は対象物の全域に流体を到達させることができる。
【0016】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による流体導出装置において、導流部材の上流側導流部材開口部と、導流部材の下流側導流部材開口部との断面形状を異ならせ、上流側導流部材開口部より、下流側導流部材開口部を、開口面積を大きくしたものである。本実施の形態によれば、拡散部材による拡散効果を阻害することなく、対象空間又は対象物の形状に合わせて流体の拡散を規制することができる。
【0017】
本発明の第7の実施の形態は、第6の実施の形態による流体導出装置において、上流側導流部材開口部を噴流口に接続し、下流側導流部材開口部を矩形形状としたものである。本実施の形態によれば、対象空間又は対象物の形状が矩形形状である場合に、対象空間又は対象物の形状に合わせることができ、無駄なく対象空間又は対象物の全域に流体を到達させることができる。
【0018】
本発明の第8の実施の形態は、第5の実施の形態による流体導出装置において、導流部材を、少なくとも、対向する一対の導流板材で構成し、一対の導流板材を噴流口に接続したものである。本実施の形態によれば、一対の導流板材によって、対象空間又は対象物の形状に合わせることができ、無駄なく対象空間又は対象物の全域に流体を到達させることができる。
【0019】
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態による流体導出装置において、導流板材の上流側端部より、導流板材の下流側端部を拡大し、導流板材の幅を、上流側端部から下流側端部に向けて漸次大きくしたものである。本実施の形態によれば、拡散部材による拡散効果を阻害することなく、対象空間又は対象物の形状に合わせて流体の拡散を規制することができる。
【0020】
本発明の第10の実施の形態は、第1から第9のいずれかの実施の形態による流体導出装置において、拡散部材は、流路管を流れる流体によって回転するものである。本実施の形態によれば、動力源を備えることなく拡散部材を回転させることができ、噴流口から噴出する流体を、流速の低下を押さえて所定範囲に拡げることができる。
【0021】
本発明の第11の実施の形態は、第1から第10のいずれかの実施の形態による流体導出装置において、拡散部材は、噴流口の内部に配置される筒部本体を有し、筒部本体の内周面に流れ方向変更部を形成したものである。本実施の形態によれば、筒部本体が噴流口内で回転でき、流れ方向変更部によって、噴流口から噴出する流体を拡散させることができる。
【0022】
本発明の第12の実施の形態は、第1から第10のいずれかの実施の形態による流体導出装置において、拡散部材は、噴流口の内部に配置される筒部本体を有し、筒部本体より下流に流れ方向変更部を形成したものである。本実施の形態によれば、筒部本体が噴流口内で回転でき、流れ方向変更部によって、噴流口から噴出する流体を拡散させることができる。
【0023】
本発明の第13の実施の形態は、第11又は第12の実施の形態による流体導出装置において、筒部本体に、内周面から外周面に至る貫通孔を形成したものである。本実施の形態によれば、筒部本体内の流体を貫通孔から筒部本体の外周面と噴流口の内周面との間に導き、筒部本体の回転摩擦を低減することができる。
【0024】
本発明の第14の実施の形態は、第13の実施の形態による流体導出装置において、貫通孔の内周面における内周開口部よりも、貫通孔の外周面における外周開口部を大きくしたものである。本実施の形態によれば、筒部本体内の流体を貫通孔から流出させやすい。
【0025】
本発明の第15の実施の形態は、第11又は第12の実施の形態による流体導出装置において、筒部本体には、中空軸部を有し、筒部本体の内周側で中空軸部の外周側に流れ方向変更部を配置し、筒部本体内を流れる流体は、中空軸部を流れる第1流体と、筒部本体と中空軸部との間を流れる第2流体となり、第1流体の流れ方向は変更されず、第2流体の流れ方向が変更されるものである。本実施の形態によれば、第1流体は仮想噴流軸に沿った流れを維持し、第2流体は仮想噴流軸に対して角度を持った流れとなり、仮想噴流軸方向については、第1流体が第2流体より流速が高く、第2流体が第1流体に引っ張られるため、第2流体によって拡散した流体の到達距離を伸ばすことができる。
【0026】
本発明の第16の実施の形態は、第15の実施の形態による流体導出装置において、筒部本体と中空軸部とを流れ方向変更部で接続したものである。本実施の形態によれば、中空軸部の配置に必要な接続部材を流れ方向変更部とすることで、無駄な抵抗を無くし、流れ方向変更部に対して流体の抵抗を与えることができる。
【0027】
本発明の第17の実施の形態は、第15の実施の形態による流体導出装置において、中空軸部の下流側中空軸開口部の外径を、中空軸部の上流側中空軸開口部の外径よりも大きくしたものである。本実施の形態によれば、拡散効果を高めることができる。
【0028】
本発明の第18の実施の形態は、第3又は第4の実施の形態による流体導出装置において、流路管に空気孔を形成し、第1ノズルから噴出する流体により発生する負圧で空気孔から流路管内に空気が吸い込まれるものである。本実施の形態によれば、流路管内に空気を吸い込むことで、噴流口から噴出する流体の流速を更に高めることができる。
【0029】
本発明の第19の実施の形態による排煙消火方法は、第1から第18のいずれかの実施の形態による流体導出装置を用い、流路管に、消防車に搭載される圧縮空気源及び水供給源から供給される流体を導入し、噴流口から噴出する流体を、火災区画にある第1開口部から火災区画内に導入し、火災区画にある第2開口部から火災区画内の煙及び加熱空気を排出させるものである。本実施の形態によれば、第1開口部に対して、所定範囲に拡げた流体を導入でき、煙及び加熱空気を第2開口部から排出させやすい。
【0030】
本発明の第20の実施の形態による排煙消火方法は、第4の実施の形態による流体導出装置を用い、気体を、空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかとし、気液混相流とした流体には、消火水又は消火薬剤を含むものである。本実施の形態によれば、煙及び加熱空気を排出させるとともに消火を行える。
【0031】
本発明の第21の実施の形態による可搬式排煙消火装置は、第1から第18のいずれかの実施の形態による流体導出装置を用い、流路管には、消防車に搭載される圧縮空気源又は水供給源から供給される流体を導入する消防ホースが接続され、噴流口から噴出する流体を、火災区画にある第1開口部から火災区画内に導入し、火災区画にある第2開口部から火災区画内の煙及び加熱空気を排出させるものである。本実施の形態によれば、第1開口部に対して、所定範囲に拡げた流体を導入でき、煙及び加熱空気を第2開口部から排出させやすい。
【0032】
本発明の第22の実施の形態による可搬式排煙消火装置は、第4の実施の形態による流体導出装置を用い、気体を、空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかとし、気液混相流とした流体には、消火水又は消火薬剤を含むものである。本実施の形態によれば、煙及び加熱空気を排出させるとともに消火を行える。
【実施例】
【0033】
以下本発明の一実施例による流体導出装置について説明する。
図1は本実施例による流体導出装置の構成を示す断面図である。
本実施例による流体導出装置1は、流体が流れる流路管10と、流路管10を流れる流体を噴出する噴流口11と、噴流口11に配置する拡散部材20と、拡散部材20の下流に配置する導流部材30とを備えている。
【0034】
流路管10内には第1ノズル41を設けている。第1ノズル41は拡散部材20の上流に配置している。
第1ノズル41内には第2ノズル42を設けている。
第1ノズル41は混相流発生部51の一端に形成している。混相流発生部51の他端側には液体供給管52の一端が接続されている。
液体供給管52の他端には液体接続媒体53を設けている。液体供給管52には、液体の供給を制御する液バルブ54を設けている。
第2ノズル42は気体供給管55の一端に形成している。気体供給管55の他端には気体接続媒体56を設けている。気体供給管55には、気体の供給を制御する気体バルブ57を設けている。
第2ノズル42からは気体を噴出し、第1ノズル41からは気体と液体とを混合して気液混相流とした流体を噴出する。このように、気液混相流とすることで、拡散効果を高めるとともに到達距離を伸ばすことができる。
拡散部材20には、第1ノズル41から噴出する流体を導く。第1ノズル41によって拡散部材20に導く流体の流速を高めることで、拡散効果を高めるとともに到達距離を伸ばすことができる。
【0035】
流路管10には空気孔12を形成している。流路管10内には、第1ノズル41から噴出する流体により発生する負圧で空気孔12から空気が吸い込まれる。このように、流路管10内に空気を吸い込むことで、噴流口11から噴出する流体の平均流速を更に高めることができる。
拡散部材20は、流路管10を流れる流体によって噴流口11内にて回転し、噴流口11から噴出する流体を拡散させる。このように、動力源を備えることなく拡散部材20を回転させることで、噴流口11から噴出する流体を、流速の低下を押さえて所定範囲に拡げることができる。
【0036】
本実施例による流体導出装置1を可搬式排煙消火装置2(図5参照)として用いる場合には、液体接続媒体53には、消防車60に搭載される水供給源61から供給される液体を導入する消防ホース62が接続され、気体接続媒体56には、消防車60に搭載される圧縮空気源63から供給される気体を導入する消防ホース64が接続される。
水供給源61から供給される液体は消火水又は消火薬剤であり、圧縮空気源63から供給される気体は空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかである。
【0037】
図2図1に示す拡散部材の斜視図である。
図2(a)は拡散部材の上流側から見た斜視図、図2(b)は拡散部材の下流側から見た斜視図である。
拡散部材20は、噴流口11の内部に配置される筒部本体21を有している。筒部本体21の内周面21sには、流体の流れ方向を変更する流れ方向変更部22を形成している。
筒部本体21が噴流口11内で回転することで、回転する流れ方向変更部22によって、噴流口11から噴出する流体を拡散させることができる。
筒部本体21には、内周面21sから外周面21tに至る貫通孔23を形成している。貫通孔23の内周面21sにおける内周開口部よりも、貫通孔23の外周面21tにおける外周開口部を大きくしている。
このように、筒部本体21に貫通孔23を形成することで、筒部本体21内の流体を貫通孔23から筒部本体21の外周面21tと噴流口11の内周面との間に導き、筒部本体21の回転摩擦を低減することができる。また貫通孔23の内周開口部よりも、貫通孔23の外周開口部を大きくすることで、筒部本体21内の流体を貫通孔23から流出させやすい。
【0038】
筒部本体21には中空軸部24を有し、筒部本体21と中空軸部24とを流れ方向変更部22で接続している。従って、流れ方向変更部22は、筒部本体21の内周側で中空軸部24の外周側に配置される。
中空軸部24は、下流側中空軸開口部24dの外径を、上流側中空軸開口部24uの外径よりも大きくしている。
このように、中空軸部24を有することで、筒部本体21内を流れる流体は、中空軸部24内を流れる第1流体と、筒部本体21と中空軸部24との間を流れる第2流体となり、第1流体の流れ方向は変更されず、第2流体の流れ方向は流れ方向変更部22によって変更される。従って、第1流体は仮想噴流軸Xに沿った流れを維持し、第2流体は仮想噴流軸Xに対して角度θを持った流れとなり、仮想噴流軸X方向については、第1流体が第2流体より流速が高く、第2流体が第1流体に引っ張られるため、第2流体によって拡散した流体の到達距離を伸ばすことができる。
また、中空軸部24の配置に必要な接続部材を流れ方向変更部22とすることで、無駄な抵抗を無くし、流れ方向変更部22に対して流体の抵抗を与えることができる。
また、上流側中空軸開口部24uの外径よりも下流側中空軸開口部24dの外径を大きくすることで、拡散効果を高めることができる。
【0039】
図3は同拡散部材による噴流を説明するイメージ図である。
図3(a)は噴流口から噴出した流体のイメージ図、図3(b)から図3(f)は時間周期Tにおける仮想噴流断面での高密度領域の変化のイメージ図である。なお、図2では6つの流れ方向変更部22を備えているが、図3では、流れ方向変更部22を1つとして説明する。
流路管10の管軸の延長線を仮想噴流軸Xとしたとき、噴流口11から一定の距離だけ離間し、仮想噴流軸Xに直交する1つの仮想噴流断面Hに対して、流速vの噴流により高密度領域Jが形成される。
高密度領域Jは、仮想噴流軸Xに直交する仮想噴流断面Hに対して、仮想噴流軸Xから半径方向に形成され、拡散部材20が回転することで、流れ方向変更部22によって、仮想噴流軸Xを中心に一方向に旋回する。
【0040】
仮想噴流軸Xを中心とした半径rの仮想円筒面Kに対して、高密度領域Jの仮想円筒面KにおけるポイントをA、B、C、Dとする。
高密度領域Jが仮想噴流断面HのポイントAに到達した時刻をt=0とすると、t=0における仮想噴流断面Hでは、ポイントAの流速は噴流の流速vとなり、ポイントB、C、Dの流速は0である。
図3(b)は、t=0における仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントAにあることを示している。
図3(c)は、t=1/4Tにおける仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントBにあることを示している。
図3(d)は、t=2/4Tにおける仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントCにあることを示している。
図3(e)は、t=3/4Tにおける仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントDにあることを示している。
図3(f)は、t=4/4Tにおける仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントAにあることを示している。
時間t=Tになると、ポイントAはポイントA’に、ポイントBはポイントB’に、ポイントCはポイントC’に、ポイントDはポイントD’に、それぞれ到達し、ポイントAからポイントA’までの移動距離はv・T、ポイントBからポイントB’ までの移動距離はv・3/4T、ポイントCからポイントC’ までの移動距離はv・2/4T、ポイントDからポイントD’ までの移動距離はv・1/4Tとなる。
例えば、ポイントAからポイントA’までの線上の風速は、t=0における流速がvであり、その後、ポイントAの随伴流の流速が次の高密度領域Jが来るまで徐々に低下する。時間周期Tが長い場合、随伴流が一旦消滅することもあり得るため、随伴流が消滅しない時間周期Tとする。
【0041】
仮想噴流断面Hにおける仮想噴流軸Xから仮想円筒面Kまでの半径方向に連続する高密度領域Jを1本の線と仮想すると、この仮想線の軌跡が仮想噴流軸Xを中心とするスクリュー状になる。噴流の旋回速度が十分速い場合、スクリューの螺線の間隔が短く、すなわち、高密度領域Jの通過により発生した随伴流が大きく減衰する前に次の高密度領域Jが来ることになり、全体でみれば流速はほぼ一定になる。
このように、高密度領域Jを旋回させることで、所定範囲に拡大させた流体の到達距離を伸ばすことができる。
【0042】
図4図1に示す導流部材の平面図及び側面断面図である。
図4(a)は導流部材の上流側平面図、図4(b)は拡散部材の側面断面図、図4(c)は導流部材の下流側平面図である。
導流部材30は、上流側導流部材開口部31uは円形形状とし、下流側導流部材開口部31dは矩形形状として、上流側導流部材開口部31uと、下流側導流部材開口部31dとの断面形状を異ならせている。また、上流側導流部材開口部31uより、下流側導流部材開口部31dを、開口面積を大きくしている。
上流側導流部材開口部31uと下流側導流部材開口部31dとの間は導流板材32で構成される。
導流部材30は、上流側導流部材開口部31uを噴流口11に接続し、噴流口11から噴出する流体の拡散を、導流板材32によって規制する。
このように、導流部材30によって流体の拡散を規制することで、対象空間又は対象物の形状に合わせることができ、無駄なく対象空間又は対象物の全域に流体を到達させることができる。
また、上流側導流部材開口部31uより、下流側導流部材開口部31dを、開口面積を大きくすることで、拡散部材20による拡散効果を阻害することなく、対象空間又は対象物の形状に合わせて流体の拡散を規制することができる。
また、対象空間又は対象物の形状が矩形形状である場合に、対象空間又は対象物の形状に合わせることができ、無駄なく対象空間又は対象物の全域に流体を到達させることができる。
【0043】
図5は、本実施例による流体導出装置を用いた可搬式排煙消火装置の斜視図である。
本実施例による可搬式排煙消火装置2は、放水銃3に流体導出装置1を取り付けている。
放水銃3は、放水銃3を自立させる脚部65と、液体供給管52に液体を供給する放水銃側液体接続媒体66とを備えている。
流体導出装置1は、流体が流れる流路管10と、流路管10を流れる流体を噴出する噴流口11と、噴流口11に配置する拡散部材20と、第1ノズル41を一端に形成する混相流発生部51と、混相流発生部51の他端側に接続される液体供給管52と、液体供給管52の他端に設けた液体接続媒体53と、液体の供給を制御する液バルブ54と、第2ノズル42を一端に形成する気体供給管55と、気体供給管55の他端に設けた気体接続媒体56と、気体の供給を制御する気体バルブ57とを備え、流路管10には空気孔12を形成している。なお、図1に示す導流部材30を備えていることが好ましい。
そして、図1に示すように、液体接続媒体53には、消防車60に搭載される水供給源61から供給される液体を導入する消防ホース62が放水銃側液体接続媒体66を介して接続され、気体接続媒体56には、消防車60に搭載される圧縮空気源63から供給される気体を導入する消防ホース64が接続される。
【0044】
図6は、本実施例による流体導出装置を用いた排煙消火方法を示す説明図である。
火災区画70の第1開口部71の手前附近の適切な位置に流体導出装置1を設置する。
消防車60に搭載されているCAFS車のエアーコンプレッサ(圧縮空気源)63と流体導出装置1とを消防ホース64で接続し、消防車60の水供給源61と流体導出装置1とを消防ホース62で接続する。
火災区画70の第1開口部71から火災区画70内に空気と水の混相流を強制的に送り、火災区画70の第2開口部72から煙及び加熱空気を排出させる。第1開口部71は、通常、居住室や事務室等の建物区画の出入口であり、所定の縦横比(大抵は縦横比2:1)の矩形状をなしている。第2開口部72は、建物区画の窓を用いることが多いが、その他の部位の開口部分を第2開口部72として用いても良い。あるいは、建物区画の壁の一部分を破壊して、第2開口部72とする場合もある。
【0045】
CAFS車に搭載されるコンプレッサは、空気流量が約3000L/min〜4500L/minで、送気圧力が約0.6MPa〜0.9MPaである。このようなコンプレッサを用いれば、毎分数百リットルの水を気流に追随できる微細水滴に分裂できる。このような多量の微細水滴を強い噴流によって火災区画70に導入することで高い消火効果をもたらす。それによって、消防隊員が危険な火災区画70に進入せずに外部から火災を鎮圧することが可能であり、消防隊員がより安全に消火することができる。
このように、本実施例による排煙消火方法は、流体導出装置1を用い、流路管10に、消防車60に搭載される圧縮空気源63及び水供給源61から供給される流体を導入し、噴流口11から噴出する流体を、火災区画70にある第1開口部71から火災区画70内に導入し、火災区画70にある第2開口部72から火災区画70内の煙及び加熱空気を排出させる。そして、第1開口部71に対して、所定範囲に拡げた流体を導入でき、煙及び加熱空気を第2開口部72から排出させやすい。
そして、気体を、空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかとし、気液混相流とした流体には、消火水又は消火薬剤を含むことで、煙及び加熱空気を排出させるとともに消火を行える。
【0046】
図7は本発明の他の実施例による流体導出装置の構成を示す写真である。なお、同一機能部材には同一符号を付し、上記実施例との相違点のみを以下に説明する。
本実施例では、拡散部材20を内部に配置した噴流口11を、流路管10の端部に取り付けている。本実施例のように、噴流口11を流路管10とは別部材として着脱可能とすることもできる。
本実施例では、導流部材30を、少なくとも、対向する一対の導流板材33で構成し、
一対の導流板材33を噴流口11に接続している。従って、一対の導流板材33によって、対象空間又は対象物の形状に合わせることができ、無駄なく対象空間又は対象物の全域に流体を到達させることができる。
導流板材33は、上流側端部33uより、下流側端部33dを拡大し、導流板材33の幅を、上流側端部33uから下流側端部33dに向けて漸次大きくしている。また、一対の導流板材33は、対向する上流側端部33u間の隙間より、対向する下流側端部33d間の隙間を広くしている。従って、拡散部材20による拡散効果を阻害することなく、対象空間又は対象物の形状に合わせて流体の拡散を規制することができる。
【0047】
図8図7に示す実施例による流体導出装置による動作確認実験を示す写真である。
図8に示すように、一対の導流板材33によって、対象空間又は対象物の形状に合わせることができる。
また、図8では、図3で説明した高密度領域Jが形成されていることが分かる。
【0048】
図9は本発明の更に他の実施例による拡散部材の斜視図である。
図9(a)は拡散部材の上流側から見た斜視図、図9(b)は拡散部材の下流側から見た斜視図である。なお、同一機能部材には同一符号を付し、上記実施例との相違点のみを以下に説明する。
本実施例による拡散部材20は、更に筒部本体21より下流に流れ方向変更部25を形成している。
本実施例による拡散部材20では、中空軸部24を下流に延出させて円錐台状突出部26を形成している。そして、円錐台状突出部26の中央には下流側中空軸開口部24dを、下流側中空軸開口部24dの周囲には複数の流れ方向変更部25を形成している。
流れ方向変更部25は、流れ方向変更部22と同様に、流れ方向変更部25を流れる流体が仮想噴流軸Xに対して角度θを持った流れとなるように、仮想噴流軸Xに対して角度θを持った貫通孔23で形成している。
このように、筒部本体21が噴流口11内で回転でき、流れ方向変更部22及び流れ方向変更部25によって、噴流口11から噴出する流体を拡散させることができる。
なお、本実施例では、流れ方向変更部22に加えて流れ方向変更部25を設けたが、流れ方向変更部22に代えて流れ方向変更部25を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による流体導出装置は、特に建物等の火災区画で発生する煙や加熱空気を火災区画外に強制的に排出して消火する可搬式排煙消火装置に適しているが、シャワーヘッドや送風機にも適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 流体導出装置
2 可搬式排煙消火装置
3 放水銃
10 流路管
11 噴流口
12 空気孔
20 拡散部材
21 筒部本体
21s 内周面
21t 外周面
22 流れ方向変更部
23 貫通孔
24 中空軸部
24d 下流側中空軸開口部
24u 上流側中空軸開口部
25 流れ方向変更部
26 円錐台状突出部
30 導流部材
31d 下流側導流部材開口部
31u 上流側導流部材開口部
32 導流板材
33 導流板材
41 第1ノズル
42 第2ノズル
51 混相流発生部
52 液体供給管
53 液体接続媒体
54 液バルブ
55 気体供給管
56 気体接続媒体
57 気体バルブ
60 消防車
61 水供給源
62 消防ホース
63 圧縮空気源(エアーコンプレッサ)
64 消防ホース
65 脚部
70 火災区画
71 第1開口部
72 第2開口部
A、B、C、D ポイント
A’ 、B’、C’、D’ ポイント
H 仮想噴流断面
J 高密度領域
K 仮想円筒面
T 時間周期
X 仮想噴流軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11