【実施例】
【0033】
以下本発明の一実施例による流体導出装置について説明する。
図1は本実施例による流体導出装置の構成を示す断面図である。
本実施例による流体導出装置1は、流体が流れる流路管10と、流路管10を流れる流体を噴出する噴流口11と、噴流口11に配置する拡散部材20と、拡散部材20の下流に配置する導流部材30とを備えている。
【0034】
流路管10内には第1ノズル41を設けている。第1ノズル41は拡散部材20の上流に配置している。
第1ノズル41内には第2ノズル42を設けている。
第1ノズル41は混相流発生部51の一端に形成している。混相流発生部51の他端側には液体供給管52の一端が接続されている。
液体供給管52の他端には液体接続媒体53を設けている。液体供給管52には、液体の供給を制御する液バルブ54を設けている。
第2ノズル42は気体供給管55の一端に形成している。気体供給管55の他端には気体接続媒体56を設けている。気体供給管55には、気体の供給を制御する気体バルブ57を設けている。
第2ノズル42からは気体を噴出し、第1ノズル41からは気体と液体とを混合して気液混相流とした流体を噴出する。このように、気液混相流とすることで、拡散効果を高めるとともに到達距離を伸ばすことができる。
拡散部材20には、第1ノズル41から噴出する流体を導く。第1ノズル41によって拡散部材20に導く流体の流速を高めることで、拡散効果を高めるとともに到達距離を伸ばすことができる。
【0035】
流路管10には空気孔12を形成している。流路管10内には、第1ノズル41から噴出する流体により発生する負圧で空気孔12から空気が吸い込まれる。このように、流路管10内に空気を吸い込むことで、噴流口11から噴出する流体の平均流速を更に高めることができる。
拡散部材20は、流路管10を流れる流体によって噴流口11内にて回転し、噴流口11から噴出する流体を拡散させる。このように、動力源を備えることなく拡散部材20を回転させることで、噴流口11から噴出する流体を、流速の低下を押さえて所定範囲に拡げることができる。
【0036】
本実施例による流体導出装置1を可搬式排煙消火装置2(
図5参照)として用いる場合には、液体接続媒体53には、消防車60に搭載される水供給源61から供給される液体を導入する消防ホース62が接続され、気体接続媒体56には、消防車60に搭載される圧縮空気源63から供給される気体を導入する消防ホース64が接続される。
水供給源61から供給される液体は消火水又は消火薬剤であり、圧縮空気源63から供給される気体は空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかである。
【0037】
図2は
図1に示す拡散部材の斜視図である。
図2(a)は拡散部材の上流側から見た斜視図、
図2(b)は拡散部材の下流側から見た斜視図である。
拡散部材20は、噴流口11の内部に配置される筒部本体21を有している。筒部本体21の内周面21sには、流体の流れ方向を変更する流れ方向変更部22を形成している。
筒部本体21が噴流口11内で回転することで、回転する流れ方向変更部22によって、噴流口11から噴出する流体を拡散させることができる。
筒部本体21には、内周面21sから外周面21tに至る貫通孔23を形成している。貫通孔23の内周面21sにおける内周開口部よりも、貫通孔23の外周面21tにおける外周開口部を大きくしている。
このように、筒部本体21に貫通孔23を形成することで、筒部本体21内の流体を貫通孔23から筒部本体21の外周面21tと噴流口11の内周面との間に導き、筒部本体21の回転摩擦を低減することができる。また貫通孔23の内周開口部よりも、貫通孔23の外周開口部を大きくすることで、筒部本体21内の流体を貫通孔23から流出させやすい。
【0038】
筒部本体21には中空軸部24を有し、筒部本体21と中空軸部24とを流れ方向変更部22で接続している。従って、流れ方向変更部22は、筒部本体21の内周側で中空軸部24の外周側に配置される。
中空軸部24は、下流側中空軸開口部24dの外径を、上流側中空軸開口部24uの外径よりも大きくしている。
このように、中空軸部24を有することで、筒部本体21内を流れる流体は、中空軸部24内を流れる第1流体と、筒部本体21と中空軸部24との間を流れる第2流体となり、第1流体の流れ方向は変更されず、第2流体の流れ方向は流れ方向変更部22によって変更される。従って、第1流体は仮想噴流軸Xに沿った流れを維持し、第2流体は仮想噴流軸Xに対して角度θを持った流れとなり、仮想噴流軸X方向については、第1流体が第2流体より流速が高く、第2流体が第1流体に引っ張られるため、第2流体によって拡散した流体の到達距離を伸ばすことができる。
また、中空軸部24の配置に必要な接続部材を流れ方向変更部22とすることで、無駄な抵抗を無くし、流れ方向変更部22に対して流体の抵抗を与えることができる。
また、上流側中空軸開口部24uの外径よりも下流側中空軸開口部24dの外径を大きくすることで、拡散効果を高めることができる。
【0039】
図3は同拡散部材による噴流を説明するイメージ図である。
図3(a)は噴流口から噴出した流体のイメージ図、
図3(b)から
図3(f)は時間周期Tにおける仮想噴流断面での高密度領域の変化のイメージ図である。なお、
図2では6つの流れ方向変更部22を備えているが、
図3では、流れ方向変更部22を1つとして説明する。
流路管10の管軸の延長線を仮想噴流軸Xとしたとき、噴流口11から一定の距離だけ離間し、仮想噴流軸Xに直交する1つの仮想噴流断面Hに対して、流速vの噴流により高密度領域Jが形成される。
高密度領域Jは、仮想噴流軸Xに直交する仮想噴流断面Hに対して、仮想噴流軸Xから半径方向に形成され、拡散部材20が回転することで、流れ方向変更部22によって、仮想噴流軸Xを中心に一方向に旋回する。
【0040】
仮想噴流軸Xを中心とした半径rの仮想円筒面Kに対して、高密度領域Jの仮想円筒面KにおけるポイントをA、B、C、Dとする。
高密度領域Jが仮想噴流断面HのポイントAに到達した時刻をt=0とすると、t=0における仮想噴流断面Hでは、ポイントAの流速は噴流の流速vとなり、ポイントB、C、Dの流速は0である。
図3(b)は、t=0における仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントAにあることを示している。
図3(c)は、t=1/4Tにおける仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントBにあることを示している。
図3(d)は、t=2/4Tにおける仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントCにあることを示している。
図3(e)は、t=3/4Tにおける仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントDにあることを示している。
図3(f)は、t=4/4Tにおける仮想噴流断面Hでの高密度領域JがポイントAにあることを示している。
時間t=Tになると、ポイントAはポイントA’に、ポイントBはポイントB’に、ポイントCはポイントC’に、ポイントDはポイントD’に、それぞれ到達し、ポイントAからポイントA’までの移動距離はv・T、ポイントBからポイントB’ までの移動距離はv・3/4T、ポイントCからポイントC’ までの移動距離はv・2/4T、ポイントDからポイントD’ までの移動距離はv・1/4Tとなる。
例えば、ポイントAからポイントA’までの線上の風速は、t=0における流速がvであり、その後、ポイントAの随伴流の流速が次の高密度領域Jが来るまで徐々に低下する。時間周期Tが長い場合、随伴流が一旦消滅することもあり得るため、随伴流が消滅しない時間周期Tとする。
【0041】
仮想噴流断面Hにおける仮想噴流軸Xから仮想円筒面Kまでの半径方向に連続する高密度領域Jを1本の線と仮想すると、この仮想線の軌跡が仮想噴流軸Xを中心とするスクリュー状になる。噴流の旋回速度が十分速い場合、スクリューの螺線の間隔が短く、すなわち、高密度領域Jの通過により発生した随伴流が大きく減衰する前に次の高密度領域Jが来ることになり、全体でみれば流速はほぼ一定になる。
このように、高密度領域Jを旋回させることで、所定範囲に拡大させた流体の到達距離を伸ばすことができる。
【0042】
図4は
図1に示す導流部材の平面図及び側面断面図である。
図4(a)は導流部材の上流側平面図、
図4(b)は拡散部材の側面断面図、
図4(c)は導流部材の下流側平面図である。
導流部材30は、上流側導流部材開口部31uは円形形状とし、下流側導流部材開口部31dは矩形形状として、上流側導流部材開口部31uと、下流側導流部材開口部31dとの断面形状を異ならせている。また、上流側導流部材開口部31uより、下流側導流部材開口部31dを、開口面積を大きくしている。
上流側導流部材開口部31uと下流側導流部材開口部31dとの間は導流板材32で構成される。
導流部材30は、上流側導流部材開口部31uを噴流口11に接続し、噴流口11から噴出する流体の拡散を、導流板材32によって規制する。
このように、導流部材30によって流体の拡散を規制することで、対象空間又は対象物の形状に合わせることができ、無駄なく対象空間又は対象物の全域に流体を到達させることができる。
また、上流側導流部材開口部31uより、下流側導流部材開口部31dを、開口面積を大きくすることで、拡散部材20による拡散効果を阻害することなく、対象空間又は対象物の形状に合わせて流体の拡散を規制することができる。
また、対象空間又は対象物の形状が矩形形状である場合に、対象空間又は対象物の形状に合わせることができ、無駄なく対象空間又は対象物の全域に流体を到達させることができる。
【0043】
図5は、本実施例による流体導出装置を用いた可搬式排煙消火装置の斜視図である。
本実施例による可搬式排煙消火装置2は、放水銃3に流体導出装置1を取り付けている。
放水銃3は、放水銃3を自立させる脚部65と、液体供給管52に液体を供給する放水銃側液体接続媒体66とを備えている。
流体導出装置1は、流体が流れる流路管10と、流路管10を流れる流体を噴出する噴流口11と、噴流口11に配置する拡散部材20と、第1ノズル41を一端に形成する混相流発生部51と、混相流発生部51の他端側に接続される液体供給管52と、液体供給管52の他端に設けた液体接続媒体53と、液体の供給を制御する液バルブ54と、第2ノズル42を一端に形成する気体供給管55と、気体供給管55の他端に設けた気体接続媒体56と、気体の供給を制御する気体バルブ57とを備え、流路管10には空気孔12を形成している。なお、
図1に示す導流部材30を備えていることが好ましい。
そして、
図1に示すように、液体接続媒体53には、消防車60に搭載される水供給源61から供給される液体を導入する消防ホース62が放水銃側液体接続媒体66を介して接続され、気体接続媒体56には、消防車60に搭載される圧縮空気源63から供給される気体を導入する消防ホース64が接続される。
【0044】
図6は、本実施例による流体導出装置を用いた排煙消火方法を示す説明図である。
火災区画70の第1開口部71の手前附近の適切な位置に流体導出装置1を設置する。
消防車60に搭載されているCAFS車のエアーコンプレッサ(圧縮空気源)63と流体導出装置1とを消防ホース64で接続し、消防車60の水供給源61と流体導出装置1とを消防ホース62で接続する。
火災区画70の第1開口部71から火災区画70内に空気と水の混相流を強制的に送り、火災区画70の第2開口部72から煙及び加熱空気を排出させる。第1開口部71は、通常、居住室や事務室等の建物区画の出入口であり、所定の縦横比(大抵は縦横比2:1)の矩形状をなしている。第2開口部72は、建物区画の窓を用いることが多いが、その他の部位の開口部分を第2開口部72として用いても良い。あるいは、建物区画の壁の一部分を破壊して、第2開口部72とする場合もある。
【0045】
CAFS車に搭載されるコンプレッサは、空気流量が約3000L/min〜4500L/minで、送気圧力が約0.6MPa〜0.9MPaである。このようなコンプレッサを用いれば、毎分数百リットルの水を気流に追随できる微細水滴に分裂できる。このような多量の微細水滴を強い噴流によって火災区画70に導入することで高い消火効果をもたらす。それによって、消防隊員が危険な火災区画70に進入せずに外部から火災を鎮圧することが可能であり、消防隊員がより安全に消火することができる。
このように、本実施例による排煙消火方法は、流体導出装置1を用い、流路管10に、消防車60に搭載される圧縮空気源63及び水供給源61から供給される流体を導入し、噴流口11から噴出する流体を、火災区画70にある第1開口部71から火災区画70内に導入し、火災区画70にある第2開口部72から火災区画70内の煙及び加熱空気を排出させる。そして、第1開口部71に対して、所定範囲に拡げた流体を導入でき、煙及び加熱空気を第2開口部72から排出させやすい。
そして、気体を、空気、窒素、及び二酸化炭素のいずれかとし、気液混相流とした流体には、消火水又は消火薬剤を含むことで、煙及び加熱空気を排出させるとともに消火を行える。
【0046】
図7は本発明の他の実施例による流体導出装置の構成を示す写真である。なお、同一機能部材には同一符号を付し、上記実施例との相違点のみを以下に説明する。
本実施例では、拡散部材20を内部に配置した噴流口11を、流路管10の端部に取り付けている。本実施例のように、噴流口11を流路管10とは別部材として着脱可能とすることもできる。
本実施例では、導流部材30を、少なくとも、対向する一対の導流板材33で構成し、
一対の導流板材33を噴流口11に接続している。従って、一対の導流板材33によって、対象空間又は対象物の形状に合わせることができ、無駄なく対象空間又は対象物の全域に流体を到達させることができる。
導流板材33は、上流側端部33uより、下流側端部33dを拡大し、導流板材33の幅を、上流側端部33uから下流側端部33dに向けて漸次大きくしている。また、一対の導流板材33は、対向する上流側端部33u間の隙間より、対向する下流側端部33d間の隙間を広くしている。従って、拡散部材20による拡散効果を阻害することなく、対象空間又は対象物の形状に合わせて流体の拡散を規制することができる。
【0047】
図8は
図7に示す実施例による流体導出装置による動作確認実験を示す写真である。
図8に示すように、一対の導流板材33によって、対象空間又は対象物の形状に合わせることができる。
また、
図8では、
図3で説明した高密度領域Jが形成されていることが分かる。
【0048】
図9は本発明の更に他の実施例による拡散部材の斜視図である。
図9(a)は拡散部材の上流側から見た斜視図、
図9(b)は拡散部材の下流側から見た斜視図である。なお、同一機能部材には同一符号を付し、上記実施例との相違点のみを以下に説明する。
本実施例による拡散部材20は、更に筒部本体21より下流に流れ方向変更部25を形成している。
本実施例による拡散部材20では、中空軸部24を下流に延出させて円錐台状突出部26を形成している。そして、円錐台状突出部26の中央には下流側中空軸開口部24dを、下流側中空軸開口部24dの周囲には複数の流れ方向変更部25を形成している。
流れ方向変更部25は、流れ方向変更部22と同様に、流れ方向変更部25を流れる流体が仮想噴流軸Xに対して角度θを持った流れとなるように、仮想噴流軸Xに対して角度θを持った貫通孔23で形成している。
このように、筒部本体21が噴流口11内で回転でき、流れ方向変更部22及び流れ方向変更部25によって、噴流口11から噴出する流体を拡散させることができる。
なお、本実施例では、流れ方向変更部22に加えて流れ方向変更部25を設けたが、流れ方向変更部22に代えて流れ方向変更部25を設けてもよい。