(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-35002(P2019-35002A)
(43)【公開日】2019年3月7日
(54)【発明の名称】繊維強化複合材料の製造装置及び繊維強化複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20190208BHJP
C08G 85/00 20060101ALI20190208BHJP
C08G 69/16 20060101ALI20190208BHJP
C08K 7/02 20060101ALN20190208BHJP
C08L 101/00 20060101ALN20190208BHJP
【FI】
C08J5/04CFG
C08G85/00
C08G69/16
C08K7/02
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-155807(P2017-155807)
(22)【出願日】2017年8月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・平成28年度卒業研究概要集 日本大学生産工学部 機械工学科(公開日 平成29年2月14日、発行日 平成29年2月24日)・平成28年度機械工学科 卒業研究発表会(開催日 平成29年2月24日)
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】平山 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】平林 明子
【テーマコード(参考)】
4F072
4J001
4J002
4J031
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD44
4F072AE01
4F072AH02
4F072AH23
4F072AH31
4F072AJ04
4F072AJ11
4F072AK05
4F072AK16
4F072AL02
4J001DA01
4J001DB01
4J001EA04
4J001EA05
4J001EA06
4J001EE57D
4J001EE66D
4J001FA03
4J001GA12
4J001GC05
4J001HA03
4J001JA04
4J001JA05
4J001JB25
4J001JC01
4J002AA011
4J002CL001
4J002CL011
4J002DA016
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4J002DH036
4J002DL006
4J002DM006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GN00
4J031CA06
4J031CA22
4J031CA34
4J031CA63
4J031CA74
4J031CA77
4J031CA81
4J031CB00
4J031CE05
(57)【要約】
【課題】安定して連続的な製造が可能な、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂モノマー及び重合触媒を混合して熱可塑性樹脂モノマー混合液とする混合器10と、前記熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料30に連続的に含浸させ、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟む積層装置20と、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟まれ、繊維シート材料30に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を加熱重合して、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料32を形成する加熱重合機40と、加熱重合機40から繊維強化複合材料32を連続的に引き抜く引抜装置50と、を備える繊維強化複合材料32の製造装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂モノマー及び重合触媒を混合して熱可塑性樹脂モノマー混合液とする混合器と、
前記熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料に連続的に含浸させ、第一保護シート及び第二保護シートで挟む積層装置と、
第一保護シート及び第二保護シートで挟まれ、繊維シート材料に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を加熱重合して、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料を形成する加熱重合機と、
前記加熱重合機から前記繊維強化複合材料を連続的に引き抜く引抜装置と、を備える繊維強化複合材料の製造装置。
【請求項2】
前記混合器及び前記積層装置が、不活性ガス雰囲気下又は真空中で運転できるように筐体で覆われている請求項1に記載の繊維強化複合材料の製造装置。
【請求項3】
前記繊維シート材料を前記積層装置に供給する繊維シート材料供給装置を備え、
前記繊維シート材料供給装置は、前記繊維シート材料をあらかじめ加熱する加熱装置を備える請求項1又は2に記載の繊維強化複合材料の製造装置。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂モノマーが、ラクタムモノマーであり、前記繊維強化複合材料がポリアミドを母材とするシート状の繊維強化複合材料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造装置。
【請求項5】
前記混合器が、ラクタムモノマー及び活性剤の混合液Aと、ラクタムモノマー及び重合触媒の混合液Bと、を混合する請求項4に記載の繊維強化複合材料の製造装置。
【請求項6】
熱可塑性樹脂モノマー及び重合触媒を混合して得られた熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料に連続的に含浸させ、第一保護シート及び第二保護シートで挟み、
第一保護シート及び第二保護シートで挟まれ、繊維シート材料に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を加熱重合して、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料を形成し、
前記繊維強化複合材料を連続的に引き抜く、繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項7】
不活性ガス雰囲気下又は真空中で、前記熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料に連続的に含浸させ、第一保護シート及び第二保護シートで挟む、請求項6に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項8】
繊維シート材料をあらかじめ加熱してから、前記熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料に連続的に含浸させる、請求項6又は7に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂モノマーが、ラクタムモノマーであり、前記繊維強化複合材料がポリアミドを母材とするシート状の繊維強化複合材料である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂モノマー混合液が、ラクタムモノマー及び活性剤の混合液Aと、ラクタムモノマー及び重合触媒の混合液Bと、が混合されたものである、請求項9に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料の製造装置及び繊維強化複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車業界をはじめ、軽量化を目的とした金属代替材に、比強度・比剛性に優れた繊維強化プラスチック(FRP)が幅広い分野で使用されている。
熱硬化性樹脂の繊維強化プラスチック(FRP)材の連続製造方法として、例えば、特許文献1に開示されているような引抜成形法が知られている。常温で液体状態であって粘度が高くない未硬化の熱硬化性樹脂を用いているので、繊維に含浸し易く、容易に連続成形することが可能である。
一方、熱可塑性樹脂の繊維強化プラスチック(FRP)材の連続製造方法として、特許文献2では、重合性ラクタム混合液を炭素繊維等からなる強化材料に含浸させ、除さい装置により過剰なマトリックス材料を掬い取った後、加熱装置を通過させることにより加熱して重合させる、繊維強化複合材料の引抜成形法が開示されている。また、特許文献3には、重合性ラクタム混合液を繊維材料に含浸させ、重合させて繊維強化複合材料を製造するに際して、重合性ラクタム混合液の収容タンクの底部に排出部及び排出制御部を設ける工夫がされた、熱可塑性樹脂の繊維強化複合材料の連続製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−74427号公報
【特許文献2】特表2005−513206号公報
【特許文献3】特表2017−007266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような熱硬化性樹脂のFRP材の連続引抜成形は実用化しているが、熱可塑性樹脂のFRP材の引抜成形は重合速度の制御が困難であり、連続成形が難しい。
特許文献2に開示された繊維強化複合材料の引抜成形法では、繊維との含浸も不十分となり易く、加熱装置で重合した樹脂が高粘性となって詰まり易く、安定した連続成形が難しかった。特許文献3では、余剰のマトリックス材料を排出する機構なので、マトリックス材料が無駄になってしまう。また、特許文献3では、重合加熱部と成形部が独立しており、繊維強化複合材料の表面が重合加熱部と直接接触するため摩擦が大きく、大きな引抜力が必要になるとともに、繊維強化複合材料の表面が粗く、凹凸が生じる結果となっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、安定的な連続製造が可能な繊維強化複合材料の製造装置及び繊維強化複合材料の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、繊維シート材料に含浸された重合性ラクタム混合液を、一対の保護シートで挟まれた状態で加熱重合させることにより、重合時に反応液の空気との接触を防止することができ、重合性ラクタム混合液が熱金型に直接接触することがないので、引抜力を小さくすることができ、繊維強化複合材料の表面を美麗にすることができ、熱可塑性樹脂であるナイロンを母材とする繊維強化複合材料を連続的に製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
(1)第1の態様にかかる繊維強化複合材料の製造装置は、熱可塑性樹脂モノマー及び重合触媒を混合して熱可塑性樹脂モノマー混合液とする混合器と、前記熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料に連続的に含浸させ、第一保護シート及び第二保護シートで挟む積層装置と、第一保護シート及び第二保護シートで挟まれ、繊維シート材料に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を加熱重合して、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料を形成する加熱重合機と、前記加熱重合機から前記繊維強化複合材料を連続的に引き抜く引抜装置と、を備える。
【0008】
(2)上記態様にかかる繊維強化複合材料の製造装置において、前記混合器及び前記積層装置が、不活性ガス雰囲気下又は真空中で運転できるように筐体で覆われていてもよい。
(3)上記態様にかかる繊維強化複合材料の製造装置において、前記繊維シート材料を前記積層装置に供給する繊維シート材料供給装置を備え、前記繊維シート材料供給装置は、前記繊維シート材料をあらかじめ加熱する加熱装置を備えていてもよい。
【0009】
(4)上記態様にかかる繊維強化複合材料の製造装置において、前記熱可塑性樹脂モノマーが、ラクタムモノマーであり、前記繊維強化複合材料がポリアミドを母材とするシート状の繊維強化複合材料であってもよい。
(5)上記態様にかかる繊維強化複合材料の製造装置において、前記混合器が、ラクタムモノマー及び活性剤の混合液Aと、ラクタムモノマー及び重合触媒の混合液Bと、を混合するものであってもよい。
【0010】
(6)第2の態様にかかる繊維強化複合材料の製造方法は、熱可塑性樹脂モノマー及び重合触媒を混合して得られた熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料に連続的に含浸させ、第一保護シート及び第二保護シートで挟み、第一保護シート及び第二保護シートで挟まれ、繊維シート材料に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を加熱重合して、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料を形成し、前記繊維強化複合材料を連続的に引き抜く。
【0011】
(7)上記態様にかかる繊維強化複合材料の製造方法において、不活性ガス雰囲気下又は真空中で、前記熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料に連続的に含浸させ、第一保護シート及び第二保護シートで挟んでもよい。
(8)上記態様にかかる繊維強化複合材料の製造方法において、繊維シート材料をあらかじめ加熱してから、前記熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料に連続的に含浸させてもよい。
【0012】
(9)上記態様にかかる繊維強化複合材料の製造方法において、前記熱可塑性樹脂モノマーが、ラクタムモノマーであり、前記繊維強化複合材料がポリアミドを母材とするシート状の繊維強化複合材料であってもよい。
(10)上記態様にかかる繊維強化複合材料の製造方法において、前記熱可塑性樹脂モノマー混合液が、ラクタムモノマー及び活性剤の混合液Aと、ラクタムモノマー及び重合触媒の混合液Bと、が混合されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、熱可塑性樹脂の繊維強化複合材料の安定的な連続製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の繊維強化複合材料の製造装置の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る繊維強化複合材料の製造装置及び繊維強化複合材料の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上実際の繊維強化複合材料の製造装置とは異ならせて示している場合がある。また、以下の説明において例示される材料、条件等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
本発明の一実施形態として、
図1に示す繊維強化複合材料の製造装置1は、熱可塑性樹脂モノマー及び重合触媒を混合して熱可塑性樹脂モノマー混合液とする混合器10と、混合器10で得られた熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料30に連続的に含浸させ、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟む積層装置20と、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟まれ、繊維シート材料30に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を加熱重合して、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料32を形成する加熱重合機40と、加熱重合機40から繊維強化複合材料32を連続的に引き抜く引抜装置50と、を備える。
【0017】
また、本発明に係る繊維強化複合材料の製造方法は、
図1に示す繊維強化複合材料の製造装置1により実現することができ、熱可塑性樹脂モノマー及び重合触媒を混合して得られた熱可塑性樹脂モノマー混合液を、繊維シート材料30に連続的に含浸させ、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟み、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟まれ、繊維シート材料30に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を加熱重合して、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料32を形成し、繊維強化複合材料32を連続的に引き抜く。
【0018】
加熱重合機40は、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟まれ、繊維シート材料30に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を加熱重合して、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料32を形成するものであればよく、加熱重合機40が、板状の上部金型及び板状の下部金型を有し、繊維シート材料30に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を挟む第一保護シート21及び第二保護シート22が、上部金型及び下部金型の間を滑るように、引抜装置50によって引き抜かれる構成となっていてもよい。
【0019】
図1に示す繊維強化複合材料の製造装置1のように、引抜装置50が加熱重合機40から、第一保護シート21及び第二保護シート22に挟まれた繊維強化複合材料32を連続的に引き抜くものであってもよく、引抜装置50が加熱重合機40から、第一保護シート21及び繊維強化複合材料32を連続的に引き抜くものであって、第二保護シート22は別途回収されるものであってもよく、引抜装置50が加熱重合機40から、繊維強化複合材料32のみを連続的に引き抜くものであって、第一保護シート21及び第二保護シート22は回収されるものであってもよい。
【0020】
積層装置20は、混合器10で得られた熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料30に連続的に含浸させ、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟む。熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料の板厚は、積層装置20のローラーにより調整可能である。積層装置20のローラーにより圧延するので、余剰な空気を排除しながら成形が可能になり、シート状の繊維強化複合材料の表面は滑らかな清浄になり、内部の空気が速やかに排除されるので微小な空洞を減らすことができる。
【0021】
繊維強化複合材料の製造装置1及び繊維強化複合材料の製造方法では、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟まれた状態で、繊維シート材料30に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液を加熱重合しているので、熱可塑性樹脂モノマー混合液が加熱重合機40に直接接触するおそれがなく、引抜力を小さくすることができ、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料の表面を美麗にすることができ、熱可塑性樹脂を母材とする繊維強化複合材料を連続的に製造できる。
【0022】
繊維強化複合材料の製造装置1及び繊維強化複合材料の製造方法では、混合器10及び積層装置20が、不活性ガス雰囲気下又は真空中で運転できるように筐体24で覆われていてもよく、これにより、不活性ガス雰囲気下又は真空中で、熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料30に連続的に含浸させ、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟むことができる。また、そのまま加熱重合機に繋がることで、熱可塑性樹脂モノマー混合液が空気と接触することを防止でき、重合時に、空気中の水分の影響を取り除くことができる。
【0023】
混合器10及び積層装置20が、不活性ガス雰囲気下で運転できるように筐体24で覆われていることがより好ましく、このとき、筐体24は、乾燥空気又は乾燥窒素ガスを送り込むことのできるガス吸入口及びガス排出口が設けられていてもよく、更に、筐体内はシリカゲル、塩化カルシウム等の乾燥剤・除湿剤を設けられていてもよい。筐体24内に乾燥空気又は乾燥窒素ガスを供給し、相対湿度20%以下に保つことが望ましい。
【0024】
繊維強化複合材料の製造装置1は、繊維シート材料30を積層装置20に供給する繊維シート材料供給装置34を備える。空気中の水分が重合阻害の原因となるため、重合させる前に、繊維シート材料30を成形前に十分に乾燥させることが好ましく、そのために、繊維シート材料供給装置34は、繊維シート材料30をあらかじめ加熱する加熱装置36を備えていてもよい。加熱装置36としては、一般的なプレートヒータや、遠赤外線ヒータを使用することができる。遠赤外線ヒータを使用することで、繊維シート材料30の内部まで十分に加熱・乾燥が可能となる。加熱装置36で繊維シート材料30を加熱してから、直後に、熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料30に連続的に含浸させることで、繊維シート材料30が吸湿した水分を、成形直前に蒸発させ、重合時の、空気中の水分の影響をより好適に取り除くことができるとともに、熱可塑性樹脂モノマー混合液の重合反応温度を確保することができる。
【0025】
繊維シート材料供給装置34には、いわゆる一般的なロービングラックあるいは織物材を保持および位置決め可能な支持棒を兼ね備えている。繊維シート材料30の直線性を確保するためにテンションバーなどを設置することも可能である。また炭素繊維を使用する場合は、サイジング剤に含まれるカルボン酸を除去するための洗浄あるいは中和処理を成形前に施すことが好ましい。
【0026】
前記熱可塑性樹脂モノマーが、例えば、ラクタムモノマーであってもよく、エポキシモノマーであってもよい。前記熱可塑性樹脂モノマーが、ラクタムモノマーであり、前記繊維強化複合材料がポリアミドを母材とするシート状の繊維強化複合材料であってもよい。
【0027】
ラクタムモノマーとしては、γ−ブチロラクタム(融点:25℃)、δ−バレロラクタム(融点:−13℃)、ε−カプロラクタム(融点:69℃)などが挙げられる。
【0028】
活性剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアネートとブロックトイソシアネート;イソフタロイルビスカプロラクタム、テトラフタロイルビス−カプロラクタム;ジメチルフタレート−ポリエチレングリコールのようなエステル;ビス酸塩化物と組合せたポリオール又はポリジエンのプレポリマー;ホスゲンをカプロラクタムと反応させて得たカルボニルビスカプロラクタムなどが挙げられる。
重合触媒としては、カプロラクタムのアルカリ金属アダクト、例えばナトリウムカプロラクタメート、カリウムカプロラクタメート及びリチウムカプロラクタメート;臭化マグネシウムを付加したアルミニウム又はマグネシウムカプロラクタム;アルコキシドなどが挙げられる。
【0029】
ここで、混合器10は、ラクタムモノマー及び活性剤の混合液Aと、ラクタムモノマー及び重合触媒の混合液Bと、を混合するものであってもよい。混合器10は、撹拌羽による撹拌混合であってもよく、スタティックミキサーに配置したミキシングヘッドで撹拌混合させるものであってもよい。
【0030】
また、繊維シート材料30としては、ガラス、炭素、金属、燐酸塩、セラミック又は重合体の繊維シート材料であってよく、そして熱可塑性樹脂モノマー混合液成分の繊維シート材料への結合を促進する糊又は塗料を含有してもよい。また、繊維シート材料の形態として、フィラメント、ファイバー、ストランドのロービングあるいは織物といった連続繊維や、編織マット、不織マット、その他の形態で使用することができる。
【0031】
混合器10は、ラクタムモノマー、活性剤及び重合触媒を直接混合するものであってもよいが、ラクタムモノマー及び活性剤の混合液Aと、ラクタムモノマー及び重合触媒の混合液Bと、を混合するものであってもよい。
【0032】
ラクタムモノマーが、常温で固体である場合、融点以上の温度に加熱溶融して混合する。ラクタムモノマー、活性剤及び重合触媒が溶融混合すると重合が始まってしまい、混合器10で過度に重合して粘度が高くなってしまうと、積層装置20に送液された後、繊維シート材料30に均質に満遍なく含浸させることが難しくなってしまう。ラクタムモノマー及び活性剤の混合液Aの活性剤濃度、ラクタムモノマー及び重合触媒の混合液Bの重合触媒濃度、混合器10の温度等の条件を適切に制御することにより、熱可塑性樹脂モノマー混合液を繊維シート材料30に均質に満遍なく含浸させることが可能となる。
【0033】
好適なラクタムモノマー及び活性剤の混合液Aの活性剤濃度は、0.1〜50質量%であり、より好ましくは、0.5〜30質量%である。
好適なラクタムモノマー及び重合触媒の混合液Bの重合触媒濃度は、0.1〜50質量%であり、より好ましくは、0.5〜30質量%である。
好適な混合器10の温度は、70〜120℃である。
【0034】
積層装置20中に混合器10で得られた熱可塑性樹脂モノマー混合液を、図示しない送液ポンプにより送液する。そして、積層装置20において、まず、第一保護シート21の上に繊維シート材料30が載せられ、第一保護シート21の上に載せられた繊維シート材料30に熱可塑性樹脂モノマー混合液が均等に含浸され、次いで、その上に第二保護シート22が積層された後、下側の第一保護シート21及び上側の第二保護シート22で挟まれ状態で、加熱重合機40に移送され、繊維シート材料30に含浸された熱可塑性樹脂モノマー混合液が、重合を開始する。
【0035】
第一保護シート21及び第二保護シート22としては、それぞれ独立して、離型紙やプラスティックフィルムなどが利用可能であり、プラスティックフィルムとしては、離型フィルム(PETフィルム)、耐熱フィルム(PTFEフィルム、ポリイミドフィルム)などが挙げられる。
【0036】
繊維強化複合材料の製造装置1及び繊維強化複合材料の製造方法により、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料を安定的に連続製造可能となる。繊維強化複合材料の製造装置1及び繊維強化複合材料の製造方法により、連続成形された、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料は、熱硬化性樹脂を母材とする繊維強化複合材料に比べて、二次成形の時間を短縮し、高い生産性が期待でき、リサイクル性が要求される自動車構造部材をはじめ、軽量化を目的とした金属代替材の中間材料として各種の部材に応用が可能となる。
【実施例】
【0037】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
図1に示す繊維強化複合材料の製造装置1を用いて、繊維強化ポリアミド複合材料の連続引抜製造を行った。
【0039】
繊維強化複合材料の製造装置1のうち、混合器10及び積層装置20は、透明なアクリルボックスからなる筐体24で覆われており、乾燥窒素ガス雰囲気下で除湿されている。
【0040】
図示しない混合タンク11にて、加熱溶融させたε−カプロラクタム及び活性剤ヘキサメチレンジイソシアネートを混合して活性剤濃度2質量%の混合液Aを調製し、110℃で溶融・保管し、図示しない混合タンク12にて、加熱溶融させたε−カプロラクタムモノマー及び重合触媒ε‐カプロラクタム・ナトリウム塩を混合して重合触媒濃度16質量%の混合液Bを調製し、110℃で溶融・保管した。混合タンク11及び混合タンク12並びに供給ラインの温度は110℃に維持して、ε‐カプロラクタムモノマーを溶融状態に保った。
【0041】
次いで、溶融した2種類の混合液A及び混合液Bを、送液ポンプにて、それぞれ、1〜5g/minにて混合器10であるスタティックミキサーに送液し、これらを撹拌混合して熱可塑性樹脂モノマー混合液を調製し、積層装置20に注がれる。ここで、混合器10の温度は融点以上、積層装置20の温度も融点以上であり、混合器10及び積層装置20にて重合が開始しているが、重合が進みすぎないように、温度管理、及び送液流速度管理が重要である。
【0042】
繊維シート材料30として、日東紡績株式会社製の平織ガラスクロスWF300 10N(目付け質量:272g/m
2、巾:100mm、縦糸密度:106本/100mm、横糸密度:22.5本/25mm、厚さ:0.25mm)を2ロール準備し、2層のガラスクロスを用いた。
【0043】
水分の重合阻害を防ぐため、重合させる前に、加熱装置36として、遠赤外線ヒータ(坂口電熱株式会社,PH50)を80℃に設定して用いて、繊維シート材料30を乾燥した。
【0044】
第一保護シート21及び第一保護シート22として、それぞれ、PETフィルム(幅150mm、厚さ0.05mm)を用いて、初めに、積層装置20の下部保護シート用ロール保持部において、加熱装置36で乾燥され、予備加熱された繊維シート材料30を第一保護シート21の上に積層し、この繊維シート材料30に、混合器10で混合撹拌された熱可塑性樹脂モノマー混合液を注ぎ、含浸させた。
【0045】
更に、積層装置20の上部保護シート用ロール保持部において、第二保護シート22を重ね、積層装置20のローラーにより圧延し、第一保護シート21及び第二保護シート22で挟まれ、熱可塑性樹脂モノマー混合液が含浸された繊維シート材料30が、加熱重合機40に導かれる。積層装置20において、上部保護シート用ロール保持部は、下部保護シート用ロール保持部から200mm後方にずらして設置されている。
【0046】
ε‐カプロラクタムモノマー、重合触媒ε‐カプロラクタム・ナトリウム塩及び活性剤ヘキサメチレンジイソシアネートからなる熱可塑性樹脂モノマー混合液は、加熱重合機40で、130℃以上の環境温度に加熱することにより、重合が起こり、ナイロン6となる。加熱重合機40では、熱可塑性樹脂モノマー混合液の重合に必要な加熱をするとともに、シート状の繊維強化複合材料として均―な板厚となるよう形状を整える。加熱重合機40は、板状の上部金型及び板状の下部金型を有し、第一保護シート21及び第一保護シート22の配置に合わせて、下部金型が長さ1300mm、幅150mm、厚さ0.6mm、上部金型が長さ1000mm、幅150mm、厚さ0.6mmである。下部金型及び上部金型の金型温度については、金型内部温度が150℃±5℃ となるよう加熱した。
【0047】
引抜装置50としては、キャタピラ式引取機(有限会社五十嵐機械製造,SD−150)を用いた。
【0048】
第一保護シート21、繊維シート材料30、および第二保護シート22はあらかじめ引抜装置50の上下クローラーに固定されており、成形時には一定の速度で成形された熱可塑性樹脂としてナイロン6を母材とするシート状の繊維強化複合材料32を引取っていく。5分間の重合時間を確保するよう、1000mmの金型を通過する時間を算出し、引取り速度は150mm/minとした。繊維体積含有率は、36.4%であった。
【0049】
本実施例により、0.67mmの板厚の、均一な板厚の、ナイロン6を母材とし平織ガラスクロスを繊維強化材とするシート状の繊維強化複合材料32が得られた。第二保護シート22を剥離し、繊維強化複合材料32の表面粗さ(Ra)を、レーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−250X)により測定したところ、4.9μmであった。
【0050】
[比較例1]
特許文献3(特表2017−007266号公報)の実施例1に沿って、ガラスロービングからなる繊維材料により繊維強化されたポリアミド複合材料の表面粗さ(Ra)を、レーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−250X)により測定したところ、24.4μmであった。
【0051】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法により、繊維強化複合材料の表面を美麗にすることができた。また、連続成形であるため生産性が高く、母材樹脂の改質も可能であり、製品としての汎用性も高い。連続成形によるモールディング材の成形が可能であることが示された。
【符号の説明】
【0052】
1 繊維強化複合材料の製造装置
10 混合器
20 積層装置
21 第一保護シート
22 第二保護シート
24 筐体
30 繊維シート材料
32 熱可塑性樹脂を母材とするシート状の繊維強化複合材料
34 繊維シート材料供給装置
36 加熱装置
40 加熱重合機
50 引抜装置