(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-38957(P2019-38957A)
(43)【公開日】2019年3月14日
(54)【発明の名称】ピリミドアクリドン顔料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09B 15/00 20060101AFI20190215BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20190215BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20190215BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20190215BHJP
C07D 471/04 20060101ALN20190215BHJP
【FI】
C09B15/00CSP
C09B67/20 F
C09D11/322
G02B5/20 101
C07D471/04 116
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-162978(P2017-162978)
(22)【出願日】2017年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079614
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】井口 和紀
【テーマコード(参考)】
2H148
4C065
4J039
【Fターム(参考)】
2H148BE06
2H148BE13
2H148BE15
2H148BH05
2H148BH21
4C065AA04
4C065AA19
4C065BB11
4C065CC09
4C065DD03
4C065HH01
4C065JJ04
4C065KK02
4C065LL04
4C065PP03
4C065QQ01
4C065QQ02
4J039BC50
4J039BC51
4J039BC69
4J039BC74
4J039BE01
4J039EA15
4J039EA39
4J039EA40
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】着色力、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、及び透明性に優れた、新規なピリミジン骨格を有するピリミドアクリドン顔料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)(R
1は、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し、R
2は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、又はニトロ基を示し、nは、0〜4の数を示す)で表されるピリミドアクリドン顔料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるピリミドアクリドン顔料。
(前記一般式(1)中、R
1は、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し、R
2は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、又はニトロ基を示し、nは、0〜4の数を示す)
【請求項2】
前記一般式(1)中、R1が置換基を有してもよいアリール基である請求項1に記載のピリミドアクリドン顔料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のピリミドアクリドン顔料の製造方法であって、
下記一般式(2−1)で表される化合物及び下記一般式(2−2)で表される化合物を、それぞれ、下記一般式(3)で表される化合物と縮合反応させる工程と、
酸化反応及び環化反応させて、ピリミドアクリドン構造を形成する工程と、
を有するピリミドアクリドン顔料の製造方法。
(前記一般式(2−1)中、R
1は、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよい複素環基を示す。前記一般式(2−2)中、R
2は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、又はニトロ基を示し、nは、0〜4の数を示す。前記一般式(3)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を示す)
【請求項4】
請求項1又は2に記載のピリミドアクリドン顔料を含有する顔料着色剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のピリミドアクリドン顔料を含有する着色層を備えるカラーフィルター。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のピリミドアクリドン顔料を含有するインクジェット用インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリミドアクリドン顔料及びその製造方法、並びにピリミドアクリドン顔料を用いた顔料着色剤、カラーフィルター、及びインクジェット用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
ピリミジン骨格を有するアゾ化合物、アゾメチン化合物、及びアントラピリミジン化合物などの化合物は、染料・顔料として有用なものが多く知られている(特許文献1及び2)。また、Pigment Yellow150及びPigment Yellow185などのバルビツール酸系色素もよく知られている。
【0003】
ところで、キナクリドン類は、青みの赤色を呈する有機顔料として様々な分野で幅広く使用されている。また、キナクリドン類は、非常に優れた顔料としての性質を有するため、多くの類縁体が検討されている。例えば、前述のピリミジン骨格を導入した、下記式(X)及び(Y)で表される化合物が知られている(非特許文献1及び2)。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−51098号公報
【特許文献2】特開平7−304985号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本化学会誌,1977,(3),p.382−386
【非特許文献2】日本化学会誌,1979,(3),p.398−402
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1及び2で開示された化合物は、耐候性に優れる橙色〜黄味赤色の顔料として有用であった。しかしながら、これらの化合物は耐酸性及び耐アルカリ性に劣るものであり、さらなる改良が必要とされている。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、着色力、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、及び透明性に優れた、新規なピリミジン骨格を有するピリミドアクリドン顔料を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記ピリミドアクリドン顔料の製造方法、並びにこのピリミドアクリドン顔料を用いた顔料着色剤、カラーフィルター、及びインクジェット用インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示すピリミドアクリドン顔料が提供される。
[1]下記一般式(1)で表されるピリミドアクリドン顔料。
【0010】
(前記一般式(1)中、R
1は、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し、R
2は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、又はニトロ基を示し、nは、0〜4の数を示す)
【0011】
[2]前記一般式(1)中、R
1が置換基を有してもよいアリール基である前記[1]に記載のピリミドアクリドン顔料。
【0012】
また、本発明によれば、以下に示すピリミドアクリドン顔料の製造方法が提供される。
[3]前記[1]又は[2]に記載のピリミドアクリドン顔料の製造方法であって、下記一般式(2−1)で表される化合物及び下記一般式(2−2)で表される化合物を、それぞれ、下記一般式(3)で表される化合物と縮合反応させる工程と、酸化反応及び環化反応させて、ピリミドアクリドン構造を形成する工程と、を有するピリミドアクリドン顔料の製造方法。
【0013】
(前記一般式(2−1)中、R
1は、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよい複素環基を示す。前記一般式(2−2)中、R
2は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、又はニトロ基を示し、nは、0〜4の数を示す。前記一般式(3)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を示す)
【0014】
さらに、本発明によれば、以下に示す顔料着色剤、カラーフィルター、及びインクジェット用インキが提供される。
[4]前記[1]又は[2]に記載のピリミドアクリドン顔料を含有する顔料着色剤。
[5]前記[1]又は[2]に記載のピリミドアクリドン顔料を含有する着色層を備えるカラーフィルター。
[6]前記[1]又は[2]に記載のピリミドアクリドン顔料を含有するインクジェット用インキ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、着色力、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、及び透明性に優れた、新規なピリミジン骨格を有するピリミドアクリドン顔料を提供することができる。また、本発明によれば、上記ピリミドアクリドン顔料の製造方法、並びにこのピリミドアクリドン顔料を用いた顔料着色剤、カラーフィルター、及びインクジェット用インキを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<ピリミドアクリドン顔料>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のピリミドアクリドン顔料は、下記一般式(1)で表される骨格(構造)を有する化合物である。以下、本発明のピリミドアクリドン顔料の詳細について説明する。
【0017】
(前記一般式(1)中、R
1は、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し、R
2は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、又はニトロ基を示し、nは、0〜4の数を示す)
【0018】
本発明のピリミドアクリドン顔料は、一般式(1)で表される構造を有する化合物であることを重要な特徴の一つとする。一般式(1)で表される構造を有する化合物は、他の縮合多環形顔料と同等以上の着色力を有する等の顔料特性に優れており、顔料として好適である。さらに、本発明のピリミドアクリドン顔料は、透明性、耐溶剤性、耐酸性、及び耐アルカリ性に優れた顔料である。なお、本発明のピリミドアクリドン顔料には、一般式(1)で表される化合物だけでなく、一般式(1)で表される化合物の互変異性体も含まれる。
【0019】
本発明のピリミドアクリドン顔料は、強固な分子間・分子内水素結合を形成しうるため、優れた顔料特性を示す。なお、一般式(1)で表される化合物には、以下に示すような互変異性体が含まれる。
【0021】
本発明のピリミドアクリドン顔料の具体例としては、下記式で表される化合物を挙げることができる。
【0023】
本発明のピリミドアクリドン顔料の特徴の一つとして、優れた耐酸性及び耐アルカリ性を挙げることができる。非特許文献1及び2で開示された下記式(X)及び(Y)で表される化合物は、二つの環で共有される窒素原子(N)をその分子構造中に有し、以下に示すような平衡が存在するものと推測される。このため、下記式(X)及び(Y)で表される化合物の耐酸性及び耐アルカリ性は低いと考えられる。
【0026】
これに対して、本発明のピリミドアクリドン顔料は、二つの環で共有される窒素原子(N)をその分子構造中に有しないため、上記のような平衡が存在せず、耐酸性及び耐アルカリ性に優れていると考えられる。
【0027】
<ピリミドアクリドン顔料の製造方法>
本発明のピリミドアクリドン顔料の製造方法は、以下の反応式で示すように、下記一般式(2−1)で表される化合物及び下記一般式(2−2)で表される化合物を、それぞれ、下記一般式(3)で表される化合物と縮合反応させる工程(縮合反応工程)と、酸化反応及び環化反応させて、ピリミドアクリドン構造を形成する工程(酸化・環化反応工程)とを有する。
【0029】
縮合反応工程では、一般式(2−1)で表される化合物及び一般式(2−2)で表される化合物を、それぞれ、一般式(3)で表される化合物と縮合反応させる。この縮合反応は、例えば、極性溶媒中で行うことができる。また、触媒として塩基を共存させて反応させると、収率が向上するために好ましい。塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基(無機系触媒);トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセンなどの有機塩基(有機系触媒)を挙げることができる。有機系触媒を用いると、反応系が均一系となるために好ましい。
【0030】
上記の反応式で示すように、例えば、一般式(2−1)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを縮合反応させることで、一般式(A)で表される化合物を得ることができる。得られた一般式(A)で表される化合物に、一般式(2−2)で表される化合物を縮合反応させることで、一般式(B’)で表される化合物を得ることができる。なお、一般式(3)で表される化合物には、一般式(2−1)で表される化合物を先に反応させてもよく、一般式(2−2)で表される化合物を先に反応させてもよい。いずれの化合物を先に反応させた場合であっても、一般式(B’)で表される化合物を得ることができる。
【0031】
一般式(2−1)で表される化合物の具体例としては、4−フルオロベンズアミジン、3,5−ジフルオロベンズアミジン、3−クロロベンズアミジン、4−クロロベンズアミジン、4−ブロモベンズアミジン、4−メチルベンズアミジン、4−メトキシベンズアミジン、4−ニトロベンズアミジン、2−ナフタレンカルボアミジン、1H−ピロール−3−カルボアミジン、フラン−2−カルボアミジン、フラン−3−カルボアミジン、チオフェン−2−カルボアミジン、チオフェン−3−カルボアミジンなどを挙げることができる。
【0032】
一般式(2−2)で表される化合物の具体例としては、アニリン、トルイジン(o−,m−,p−)、キシリジン(2,3−;2,6−;3,4−等)、アニシジン(o−,m−,p−)、フェネチジン(o−,m−,p−)、ハロゲン置換アニリンなどを挙げることができる。
【0033】
一般式(3)中、R
3及びR
4がいずれもアルコキシ基である化合物は、安価なスクシニロコハク酸アルキルエステルである。このため、一般式(3)中のR
3及びR
4がいずれもアルコキシ基である化合物を用いると、工業的に有利である。
【0034】
酸化・環化反応工程では、まず、上記の縮合反応工程で得た一般式(B’)で表される化合物を酸化して、一般式(B”)で表される化合物を得る。次いで、得られた一般式(B”)で表される化合物を環化することで、目的とする一般式(1)で表される化合物(ピリミドアクリドン顔料)を得ることができる。なお、この酸化・環化反応は、アクリドン系の化合物を合成する従来の方法を参照して実施することができる。
【0035】
<顔料着色剤>
本発明の顔料着色剤は、上記のピリミドアクリドン顔料を含有する。本発明の顔料着色剤は、画像表示用、画像記録用、印刷インキ用、筆記用インキ用、プラスチック用、顔料捺染用、及び塗料用の着色剤等として、広範な分野で用いることができる。特に、本発明の顔料着色剤は、着色画素(着色層)の透明性の向上が課題とされる画像表示材料として、なかでもカラーフィルター用の着色剤として好適である。また、本発明の顔料着色剤は、インクジェット用インキ、電着記録液、電子写真方式用の現像剤などの画像記録剤用の材料としても有用である。これらの画像記録剤用の材料は、インクジェット記録方法、電着記録方式、電子写真方式などの画像記録方法にそれぞれ使用される。本発明の顔料着色剤を用いれば、いずれの画像記録方法であっても高品位な画像を提供しうる画像記録剤用の材料を調製することができる。
【0036】
本発明の顔料着色剤には、例えば、皮膜形成材料をさらに含有させることができる。顔料着色剤中のピリミドアクリドン顔料の量は、皮膜形成材料100質量部に対して、5〜500質量部であることが好ましく、50〜250質量部であることがさらに好ましい。本発明の顔料着色剤は、例えば、微細化したピリミドアクリドン顔料と、樹脂((共)重合体)、オリゴマー、又はモノマーなどの皮膜形成材料とを混合することで調製することができる。
【0037】
また、本発明の顔料着色剤は、微細化したピリミドアクリドン顔料と、上記の皮膜形成材料を含有する液とを混合することでも調製することができる。皮膜形成材料を含有する液としては、感光性の皮膜形成材料を含有する液や、非感光性の皮膜形成材料を含有する液などを用いることができる。感光性の皮膜形成材料を含有する液の具体例としては、紫外線硬化性インキ、電子線硬化インキなどに用いられる感光性の皮膜形成材料を含有する液などを挙げることができる。また、非感光性の皮膜形成材料を含有する液の具体例としては、凸版インキ、平版インキ、グラビアインキ、スクリーンインキなどの印刷インキに使用するワニス;常温乾燥又は焼き付け塗料に使用するワニス;電着塗装に使用するワニス;熱転写リボンに使用するワニスなどを挙げることができる。
【0038】
感光性の皮膜形成材料の具体例としては、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などの感光性樹脂を挙げることができる。これらの感光性樹脂を含有する液には、反応性希釈剤として各種のモノマーを添加してもよい。
【0039】
感光性樹脂を皮膜形成材料として含有する顔料着色剤に、ベンゾインエーテル、ベンゾフェノンなどの光重合開始剤を添加し、従来公知の方法により練肉すれば、光硬化性の感光性顔料分散液とすることができる。また、上記の光重合開始剤に代えて熱重合開始剤を用いれば、熱硬化性顔料分散液とすることができる。
【0040】
非感光性の皮膜形成材料の具体例としては、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、これらの水溶性塩、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸系共重合体の水溶性塩などを挙げることができる。
【0041】
<カラーフィルター>
本発明のカラーフィルターは、上記のピリミドアクリドン顔料を含有する着色層を備える。例えば、皮膜形成材料を含有する上述の顔料着色剤を用いれば、着色力及び透明性に優れた着色層(着色画素)を備えた画像表示材料であるカラーフィルターを得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0043】
<中間体の製造>
(製造例1)
メタノール170部に、スクシニロコハク酸ジメチル11部、ベンズアミジン塩酸塩8部、及びトリエチルアミン5部を加え、加熱して2時間還流した。冷却後にろ過し、メタノール及び水で洗浄した。80℃で乾燥して、下記式(A−1)で表される中間体(A−1)11部を得た。
【0044】
【0045】
(製造例2)
ベンズアミジン塩酸塩8部に代えて、4−クロロベンズアミジン塩酸塩13部を使用したこと以外は、前述の製造例1と同様にして、下記式(A−2)で表される中間体(A−2)13部を得た。
【0046】
【0047】
(製造例3)
メタノール100部に、中間体(A−1)10部、アニリン3部、及び35%塩酸1部を加え、加熱して2時間還流した。冷却後、3−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム13部、水酸化ナトリウム9部、及び水45部を加え、加熱して5時間還流した。冷却後にろ過し、得られたろ液を中性として析出物をろ過した。ろ過した析出物をメタノール及び水で洗浄した後、80℃で乾燥して、下記式(B−1)で表される中間体(B−1)11部を得た。
【0048】
【0049】
(製造例4)
アニリン3部に代えて、4−メチルアニリン3部を使用したこと以外は、前述の製造例3と同様にして、下記式(B−2)で表される中間体(B−2)13部を得た。
【0050】
【0051】
(製造例5)
アニリン3部に代えて、4−クロロアニリン3部を使用したこと以外は、前述の製造例3と同様にして、下記式(B−3)で表される中間体(B−3)13部を得た。
【0052】
【0053】
(製造例4)
中間体(A−1)10部に代えて、中間体(A−2)10部を使用したこと以外は、前述の製造例3と同様にして、下記式(B−4)で表される中間体(B−4)13部を得た。
【0054】
【0055】
<顔料の製造>
(実施例1)
ポリリン酸100部に中間体(B−1)10部を加え、120〜130℃で2時間加熱した。反応物を氷水にあけ、析出物をろ過した。ろ液が中性になるまで析出物を水で洗浄した後、80℃で乾燥して、下記式(C−1)で表される顔料(C−1)9部を得た。
【0056】
【0057】
(実施例2)
中間体(B−1)10部に代えて、中間体(B−2)10部を使用したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、下記式(C−2)で表される顔料(C−2)9部を得た。
【0058】
【0059】
(実施例3)
中間体(B−1)10部に代えて、中間体(B−3)10部を使用したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、下記式(C−3)で表される顔料(C−3)9部を得た。
【0060】
【0061】
(実施例4)
中間体(B−1)10部に代えて、中間体(B−4)10部を使用したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、下記式(C−4)で表される顔料(C−4)9部を得た。
【0062】
【0063】
得られた各顔料について質量分析(MALDI)を行ったところ、以下の分子量に相当するピークが検出された。使用した原材料及び質量分析の結果から、目的とする構造の化合物(顔料)が得られたことを確認した。
・顔料(C−1) :分子量339
・顔料(C−2) :分子量353
・顔料(C−3) :分子量374
・顔料(C−4) :分子量374
【0064】
(比較例1及び2)
非特許文献1及び2の記載等を参考にして製造した下記式(X)で表される化合物を、比較例1の顔料(X)とした。また、非特許文献1及び2の記載等を参考にして製造した下記式(Y)で表される化合物を、比較例2の顔料(Y)とした。
【0065】
【0066】
<濃色塗料の調製>
実施例1〜4及び比較例1、2の顔料をそれぞれ使用し、ペイントコンディショナーを用いて、以下に示す配合で90分間分散させて濃色塗料を調製した。
・顔料:1.5部
・商品名「スーパーベッカミンJ−820」(*1):8.5部
・商品名「フタルキッド133〜60」(*2):17.0部
・キシレン/1−ブタノール(2/1質量比)混合溶剤:5.0部
(*1)ブチル化メラミン樹脂(大日本インキ化学工業社製)
(*2)椰子油の短油性アルキド樹脂(日立化成社製)
【0067】
<塗料試験>
(1)着色力
顔料:チタンホワイト=1:20(質量比)となるようにチタンホワイト(酸化チタン)を含む白色塗料で濃色塗料を希釈し、淡色塗料を調製した。アプリケーター(6ミル)を用いて淡色塗料を展色紙上に展色し、140℃で30分間焼き付けて塗膜を形成した。形成した塗膜を肉眼で観察し、以下に示す基準にしたがって着色力を評価した。結果を表1に示す。
○:着色力良好
△:着色力あり
×:着色力なし
【0068】
(2)耐溶剤性
顔料1部をメチルエチルケトン50部中に分散させた後、室温で1日放置した。ろ過して得たろ液の着色の程度を観察し、以下に示す基準にしたがって耐溶剤性を評価した。結果を表1に示す。
○:着色しなかった(耐溶剤性が良好であった)
×:著しく着色した(耐溶剤性が不良であった)
【0069】
(3)耐酸性
顔料1部を5%硫酸水溶液50部中に分散させた後、室温で1日放置した。色の変化を観察し、以下に示す基準にしたがって耐酸性を評価した。結果を表1に示す。
○:変色なし
×:変色あり
【0070】
(4)耐アルカリ性
顔料1部を5%水酸化ナトリウム水溶液50部中に分散させた後、室温で1日放置した。色の変化を観察し、以下に示す基準にしたがって耐アルカリ性を評価した。結果を表1に示す。
○:変色なし
×:変色あり
【0071】
(5)透明性
前述の濃色塗料を展色した展色紙上の黒帯部の状態を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって透明性を評価した。結果を表1に示す。
○:下地の黒帯が見える(透明性が良い)
×:下地の黒帯が隠れ、インキの色が強く見える(透明性が悪い)
【0072】
【0073】
(6)明度及び色相
前述の「(1)着色力」の評価において濃色塗料を展色した展色紙上の塗膜について、測色計(商品名「カラコムシステム」、大日精化工業社製)を使用してL
*、a
*、b
*を計測した。結果を表2に示す。
【0074】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のピリミドアクリドン顔料は、印刷インキ(オフセットインキ、グラビアインキなど)、各種塗料、プラスチック、顔料捺染剤、電子写真用乾式・湿式トナー、インクジェット用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキなどに使用される顔料として有用である。