【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記ユニットタイプのロータリエンコーダ110は、一般的に、高い検出精度を得るために、スケールと検出ヘッドの位置関係が極めて高精度に調整されている。したがって、ユニットタイプのロータリエンコーダ110は、一般的に高価なものとなっている。
【0012】
一方、セパレートタイプのロータリエンコーダ100は、事前調整が不要であるため比較的廉価ではあるが、ユーザサイドにおいて、スケール101を回転体に取り付ける取付精度や、スケール101と検出ヘッド102との位置合わせを高精度に調整する必要があり、このため調整作業に長時間を要するというデメリットがあった。
【0013】
また、セパレートタイプのロータリエンコーダ100は、ユニットタイプのものに比べて高い検出精度を実現し難く、したがって、検出される回転角度位置データを校正する必要があるが、この校正値を得るために、従来は、オートコリメータやポリゴンミラーを用いた測定を行う必要があり、この測定作業に長時間を要するという問題があった。また、校正のために長時間を掛けたとしても、測定できるポイント(角度位置)は数点しかないため、これら測定点の間の角度については補間処理によって校正値を生成する他は無く、このため、極めて粗い校正しか実現できず、この意味においても、高い検出精度を実現することができないものであった。
【0014】
したがって、廉価なセパレートタイプのロータリエンコーダを用い、このロータリエンコーダを使用可能な程度の精度で取り付け、位置算出器によって算出される回転角度位置データを高精度に校正できれば、廉価なロータリエンコーダを用いながらも高精度な回転角度位置データを得ることができて有益である。
【0015】
また、ユニットタイプのロータリエンコーダについても、スケール及び検出ヘッドの取付精度を比較的緩やかなものとした廉価なものを製造し、その検出角度位置データを高精度に校正するようにすれば、廉価なユニットタイプのロータリエンコーダを提供することができる。
【0016】
このような問題は、何もロータリエンコーダに限られるものではなく、リニアエンコーダにおいても同様であり、位置算出器によって算出される位置データを高精度に校正できれば、廉価な構成のリニアエンコーダを用いて、高精度な位置データを検出することが可能となる。
【0017】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、廉価な構成のエンコーダでありながら、高精度な位置データを検出することができるエンコーダ、並びに廉価で比較的低精度のエンコーダであっても、その検出位置データを高精度に校正可能な校正値の生成方法及び生成システムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明は、
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを用い、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する方法であって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させた状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データと、前記マスターエンコーダの位置算出器にから得られる位置データとをリアルタイムに比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成するようにした校正値生成方法に係る。
【0019】
そして、この校正値生成方法は、目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを備えて構成され、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する校正値生成システムであって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させた状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データと、前記マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとをリアルタイムに比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成する校正値生成装置を更に備えた校正値生成システムによって好適に実施される。
【0020】
この態様の校正値生成システムによれば、まず、校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させる。即ち、例えば、校正対象エンコーダの検出センサ及びマスターエンコーダの検出センサ、又は校正対象エンコーダのスケール及びマスターエンコーダのスケールをそれぞれ移動体に取り付けて当該移動体を移動させる。
【0021】
そして、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データと、前記マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとが、前記校正値生成装置により、リアルタイムに比較されてその差分値が算出され、ついで算出された差分値を基に、前記校正対象エンコーダから出力される位置データに対する校正値が生成される。
【0022】
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を備えている。したがって、校正対象エンコーダから出力される位置データと、マスターエンコーダから出力される位置データとをリアルタイムに比較することにより、校正対象エンコーダによって検出される位置データの正確な誤差を算出することができ、正確な校正値を算出することができる。
【0023】
更に、校正対象エンコーダから出力される位置データと、マスターエンコーダから出力される位置データとをリアルタイムに比較するようにしているので、校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及びマスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ相対的に移動させた状態で前記校正値を生成することができ、当該校正値を短時間の内に得ることができる。また、校正対象エンコーダの分解能に応じ、当該分解能に応じた点数の校正値を生成することができる。
【0024】
尚、本発明では、校正対象エンコーダから出力される位置データと、マスターエンコーダから出力される位置データとをリアルタイムに比較することが肝要であり、このようにリアルタイムに比較するためには、例えば、校正対象エンコーダから前記校正値生成装置に位置データを送信するタイミングと、マスターエンコーダから前記校正値生成装置に位置データを送信するタイミングとを一致させることで実現することができる。
【0025】
また、本発明は、
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを用い、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する方法であって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させた状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から所定位置間隔毎にタイミング信号を出力させ、このタイミング信号に応じた位置データと、該タイミング信号が出力されたときに前記マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成するようにした校正値生成方法に係る。
【0026】
そして、この態様の校正値生成方法は、
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを備えて構成され、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する校正値生成システムであって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダの位置算出器は、該校正対象エンコーダのスケールと検出センサとが相対的に移動しているときに、所定の位置間隔毎にタイミング信号を出力するように構成され、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとがそれぞれ同期して相対的に移動した状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から出力されるタイミング信号を受信し、受信したタイミング信号に応じた位置データと、該タイミング信号が出力されたときに該マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成する校正値生成部を更に備えた校正値生成システムによって好適に実施される。
【0027】
この態様の校正値生成システムによれば、上述した態様の校正値生成システムと同様に、まず、校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させる。
【0028】
そして、これらスケール及び検出センサが同期して相対的に移動している状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から前記マスターエンコーダの校正値生成部に対して所定の位置間隔毎にタイミング信号が出力され、校正値生成部は受信したタイミング信号に応じた位置データと、該タイミング信号が出力されたときに該マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較してその差分値を算出し、ついで算出した差分値を基に、前記校正対象エンコーダから出力される位置データに対する校正値を生成する。
【0029】
前記校正対象エンコーダから出力されるタイミング信号のデータ量は極めて小さく、したがってその送信時間は極めて短い時間(瞬時)であるので、このタイミング信号が出力された時点と、前記マスターエンコーダの位置算出器によって位置データが算出される時点とは、実質的に同じ時刻である、即ち、これら両時点はリアルタイムであると見做すことができる。
【0030】
斯くして、この態様の校正値生成システムにおいても、マスターエンコーダは校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を備えており、また、校正対象エンコーダから出力されたタイミング信号に応じた位置データと、このタイミング信号が出力されたときにマスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較、言い換えれば、校正対象エンコーダから得られる位置データと、マスターエンコーダから得られる位置データとをリアルタイムに比較することによって、校正対象エンコーダから出力される位置データに対する校正値を生成するようにしているので、校正対象エンコーダによって検出される位置データの正確な誤差を算出することができ、正確な校正値を算出することができる。
【0031】
また、校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及びマスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ相対的に移動させた状態で前記校正値を生成することができるので、当該校正値を短時間の内に得ることができ、また、校正対象エンコーダの分解能に応じ、当該分解能に応じた点数の校正値を生成することができる。
【0032】
尚、この態様の校正値生成システムでは、更に、前記校正値生成部によって生成された校正値を記憶する校正値記憶部を備えているのが好ましい。校正値が生成される度に、当該校正値を外部に出力するようにすると、校正値の生成に要する時間が校正値の出力に要する時間よりも短い場合には、適正に校正値を出力することができないという不都合を生じる。上記のように、順次生成される校正値を一旦校正値記憶部に格納し、全ての校正値が生成された後に、得られた校正値を一時に出力するようにすれば、全ての校正値を確実かつ適正に出力することができる。
【0033】
また、本発明における前記校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダには、光学式及び磁気式などの各種検出形式のものが含まれ、また、リニアエンコーダやロータリエンコーダなど検出用途に応じた各種構造のものが含まれ、更に、スケールと検出センサ及び位置算出器とが分離されたセパレートタイプのものや、スケールと検出センサ及び位置算出器とが予め組み付けられたユニットタイプのものが含まれる。
【0034】
そして、本発明において、前記校正対象エンコーダとマスターエンコーダとは、その機械的な構造が異なるものであっても良い。例えば、校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダの内、一方が光学式で他方が磁気式であっても良い。或いは、校正対象エンコーダがセパレートタイプで、マスターエンコーダがユニットタイプであっても良い。
【0035】
また、校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダが、それぞれロータリエンコーダである場合には、これら校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを同軸に配設するのが好ましい。
【0036】
また、本発明は、
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、
前記スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、
前記検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器と、
前記位置算出器から得られる位置データの校正値を記憶する校正値記憶部と、
前記位置算出器から得られた位置データを前記校正値記憶部に記憶された校正値により校正して出力するデータ校正部とを備えたエンコーダに係る。
【0037】
このエンコーダによれば、予め校正された位置データが出力されるので、エンコーダから出力される位置データを、事後的な処理を加えることなくそのまま使用することができ、後工程におけるデータ処理を軽減することができる。