【解決手段】被取付け部に固定され、火災感知器を取付け可能である板状のベース部材と、情報発信モジュールを内蔵しベース部材に固定されるケース部材とを備えた情報発信アダプタにおいて、ベース部材には、火災感知器に接続される配線が挿通可能な開口部が中央に形成され周縁部に前記開口部と外側空間とを連通する入口部が形成されかつ当該ベース部材を被取付け部に固定するためのネジを挿通可能な一対の長穴が開口部を挟んだ状態で形成されるとともに、ベース部材の表面から所定距離を置いた位置に火災感知器を取付けるためのネジ穴を有する一対の感知器固定部が設けられ、ケース部材は、配線が挿通可能な開口が中央に形成され周縁部に入口が形成されたケース本体と、開口に係合されてケースの外形を補完する蓋部とを備えた。
前記ケース部材には、前記ベース部材の前記入口部に対応する部位にスライド方向と直交する方向の押圧面と、該押圧面に連続し当該ケース部材の中央部に向かう方向に傾斜した誘導面とが形成され、該誘導面が前記入口の一部を構成していることを特徴とする請求項1に記載の情報発信アダプタ。
前記蓋部の前記ケース本体の前記スライド方向と平行な中心線上には、厚さ方向に貫通された貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の情報発信アダプタ。
前記ケース本体の前記ベース部材の表面と対向する面には、前記スライド方向に沿って複数のリブが設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の情報発信アダプタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の中継器のような技術を応用して、例えば情報発信モジュールを備えた情報発信機器をアダプタとして構成し、建物の天井等に設置される火災感知器と天井面等との間に取り付けることで、情報発信モジュール専用の設置箇所を別途設けることなく、複数の情報発信モジュールを建物の適切な位置に適当な間隔で配置することができる。
しかしながら、上記先願の中継器の場合、当該中継器を構成する構成部品(連結端子、接続端子、一般火災感知器の発報検出やアドレス付加などを行う回路が設けられた基板等)を交換する際には、感知器ベースから感知器本体を外して、感知器ベースと感知器本体との接続を解除する必要がある。
【0006】
また、感知器ベースと感知器本体との接続が解除されると、火災感知器の機能が停止した状態、すなわち火災感知器による火災監視が中断された状態になる。従って、上記特許文献1の中継器の場合、火災感知器による火災監視が中断された状態でなければ、構成部品の交換を行うことができない。
さらに、感知器ベースと感知器本体との間に中継器等を介在させることは、火災感知器の機能や性能に影響を与えるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明者らは、建物の天井等に取付けられた火災感知器と天井面との間に、火災感知器の機能や性能に影響を与えることなく設置でき、かつ、火災感知器による火災監視を中断することなく構成部品の交換を行うことができる情報発信アダプタについて検討した。具体的には、火災感知器は通常、感知器ベースが2本のネジで天井面に固定され、該感知器ベースに感知器本体がワンタッチ式で装着される構成を有しているので、感知器ベースの固定用のネジ穴を利用して、感知器ベースを取り付け可能な部位を有する取付けベースプレートを取り付け、該取付けベースプレートと感知器ベースとの間に情報発信アダプタを介在させる構成を考えた。
【0008】
その結果、取付けベースプレートに形成するネジ穴と感知器ベースを取り付ける部位とが重なると、取付けベースプレートを取り付けるネジを回すドライバが感知器ベースの取付け部位と干渉してしまうので、ネジ穴に対して感知器ベースの取付け部位の位置を所定角度だけずらす必要があることが分かった。ところが、一般的な火災感知器の場合、感知器本体のヘッド部分に作動状態を表示するスポット型のランプが中心からずれた位置にて下向きに設けられている。そのため、上記のようにて感知器ベースの取付け部位の位置を所定角度だけずらすと、ランプの見え方が変わってしまうという課題がある。
【0009】
また、既に取り付けられている火災感知器の感知器ベースと天井面との間に情報発信アダプタを介在させるには、感知器ベースを一旦天井面から外す必要があり、その際に、天井面に形成されている配線穴から引き出されて感知器ベースに接続されている配線が引き延ばされてしまい、情報発信アダプタの取付けの際に情報発信アダプタに設けた配線挿通部内に配線を収納させるのが困難となり、アダプタの取付けを面倒な手作業で行う必要があるという課題があることが明らかとなった。
【0010】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、既に取り付けられている火災感知器と天井等の被取付け部との間への設置を簡単に行うことができる情報発信アダプタを提供することにある。
本発明の他の目的は、感知器本体のヘッド部分に設けられている作動状態を表示するランプの見え方が変わってしまうことのない情報発信アダプタを提供することにある。
なお、本発明の他の課題は、以下に説明する実施形態の中で明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の情報発信アダプタは、
被取付け部に固定され、火災感知器を取付け可能である板状のベース部材と、
情報発信モジュールを内蔵し前記ベース部材に固定されるケース部材と、
を備え、
前記ベース部材には、前記火災感知器に接続される配線が挿通可能な開口部が中央に形成され周縁部に前記開口部と外側空間とを連通する入口部が形成され、かつ当該ベース部材を前記被取付け部に固定するためのネジの軸部を挿通可能な一対の穴が前記開口部を挟んだ状態で形成されるとともに、当該ベース部材の表面から所定距離を置いた位置に前記火災感知器を取付けるためのネジが螺合可能なネジ穴を有する一対の感知器固定部が設けられ、
前記ケース部材は、前記火災感知器に接続される配線が挿通可能な開口が中央に形成され周縁部に前記開口と外側空間とを連通する入口が形成されたケース本体と、前記開口に係合されてケースの外形を補完する蓋部と、を備え、
前記ケース部材は、前記ケース本体が前記感知器固定部に固定された前記火災感知器と前記ベース部材の表面との間に、スライド移動されることで着脱可能に構成したものである。
【0012】
上記した手段によれば、建物の天井等の被取付け部に設置される火災感知器と取付け面との間に情報発信アダプタを設置することができるため、取付けを簡単に行うことができる。また、感知器固定部を備えたベース部材がネジによって被取付け部に固定され、このベース部材に感知器固定部がネジによって固定される構成であるので、ベース部材が安定した被取付け部とみなすことができる部材となるため、火災感知器の機能や性能に影響を与えることなく情報発信アダプタを設置することができる。
【0013】
ここで、望ましくは、前記ケース部材には、前記ベース部材の前記入口部に対応する部位にスライド方向と直交する方向の押圧面と、該押圧面に連続し当該ケース部材の中央部に向かう方向に傾斜した誘導面とが形成され、該誘導面が前記入口の一部を構成しているようにする。
かかる構成によれば、ケース部材(アダプタケース)のケース本体を取付け用のベース部材の下面に沿ってスライドさせる作業を行うと、押圧面と誘導面の作用によって感知器の配線をベース部材の中央に移動させて自動的に開口部内に収納させることができる。そのため、ケース本体を差込む前に配線を整える必要がないとともに、差込時に配線がケース本体とベース部材との間に挟まったりすることがなく、情報発信アダプタの設置作業を短時間に完了することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記ベース部材の前記一対の穴は、各々長穴であって、前記ベース部材の中心から前記スライド方向と直交する方向へ所定距離ずれた位置に形成され、
前記一対の感知器固定部は、前記ベース部材の中心から等距離であって前記一対の長穴の前記ベース部材の中心からの距離と異なる距離の位置に形成されているようにする。
かかる構成によれば、火災感知器に設けられている作動状態を示すランプの位置を、情報発信アダプタを設置する前の角度位置と同じにすることができるため、情報発信アダプタの設置に伴って、ランプの見え方が大きく変わるのを回避する、つまりランプの角度位置が変わることで所定の方向から見えにくくなる(死角が生じる)のを回避することができる。
【0015】
また、望ましくは、前記ベース部材の表面には、前記スライド方向と平行な1本のレールを構成するガイド片が形成され、前記ケース本体の前記ベース部材の表面と対向する面には、前記ガイド片と係合可能な溝が形成されているようにする。
このように構成することにより、案内用のレールを1本にすることができ、ベース部材(金属プレート)に余計な肉抜き加工をする必要がなくなり、ベース部材の強度が低下するのを回避することができる。また、ケース部材(アダプタケース)のケース本体に、複数のレールと係合する複数の溝を形成する必要がなくなるため、溝を設けることに伴い内部空間が狭められるのを回避することができ、ケース部材の収容部の容積も広げられ、電池等より多くの構成部品を収納することができるようになる。
【0016】
さらに、望ましくは、前記ガイド片と係合可能な前記溝の入り口側の端部近傍には凹部が形成され、
前記蓋部には、前記凹部に係合可能な係止爪が設けられ、
前記係止爪が前記凹部に係合されることで前記蓋部と前記ケース本体とが結合されるように構成されているようにする。
これにより、ケース部材(アダプタケース)の蓋部に設けられている係止爪を、レールと係合する溝の入口の凹部に係合させることで、蓋部とケース本体とを簡単に結合して一体化させることができるとともに、レールと係合する溝はケース部材(アダプタケース)の裏側に位置するので、係止爪の係合状態が見えなくなり、見映えを良くすることができる。
【0017】
また、望ましくは、前記蓋部の前記ケース本体の前記スライド方向と平行な中心線上には、厚さ方向に貫通された貫通穴を形成する。
かかる構成によれば、貫通穴が水抜き穴として機能して内部に侵入した水を排出することができるとともに、感知器を着脱するための器具に似た構成の着脱器具を用いてケース本体をベース部材に着脱する際に、着脱器具の一部を貫通穴に係合させることで、器具のふらつきを押さえて着脱作業を容易に行えるようにするために利用することができる。
【0018】
また、望ましくは、前記ケース本体は、互いに嵌合可能な第1ケースと第2ケースとからなり、
前記第1ケースおよび第2ケースにはそれぞれ周壁が形成され、
前記第1ケースの周壁の一部に係止爪が形成され、前記第2ケースの周壁には前記第1ケースの前記係止爪が係合可能な突起が設けられ、
前記第2ケースには、前記第1ケースの前記係止爪の上方を塞ぐように閉塞部が形成され、少なくとも該閉塞部の回りの部位には薄肉の破壊許容部が設けられているようにする。
このように構成することにより、ケース本体を構成する第1ケースと第2ケースとの嵌合が嵌め殺しとなるため、防滴性を高めることができるとともに、廃棄や異常時以外は分解できないため、設置現場での電池の差込みや交換等の作業がなくなり、電池の差込み不良等の不具合が生じるのを回避することができる。また、一度分解したものは、薄肉の破壊許容部が破断されるため、誤って新品と混ざったとしても容易に発見することができる。
【0019】
また、望ましくは、前記ケース本体の前記ベース部材の表面と対向する面には、前記スライド方向に沿って複数のリブを設ける。
このようにスライド方向に沿ってリブを設けることにより、ケース部材(アダプタケース)の差込みのためにケース本体をベース部材に沿って移動させる際の摩擦力を減らして、ケース部材の着脱作業が容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の情報発信アダプタによれば、既に取り付けられている火災感知器と天井等の被取付け部との間への設置を簡単に行うことができる。また、感知器本体のヘッド部分に設けられている作動状態を表示するランプの見え方が変わってしまうことのない情報発信アダプタを実現することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る情報発信アダプタの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、天井面に取り付けられた際に天井側となる方を上側とし、床側となる方を下側とする。
図1(A),(B)は、本発明の実施形態に係る情報発信アダプタを天井等の取付け面と火災感知器の感知器ベースとの間に設置した状態を示す正面図およびそれを下方から見た図である。また、
図2は、火災感知器の感知器ベースの一例を示す図であって、下側から見た図である。
【0023】
本実施形態の情報発信アダプタ100は、
図1(A)に示すように、火災感知器200と、当該火災感知器200が取付けられる天井面などの被取付け部Pと、の間に設置可能に構成されている。ここで、被取付け部Pは、天井面の他、屋内配線等に用いられるボックス(アウトレットボックス、露出ボックス等)や感知器取付金具などであっても良い。
火災感知器200は、
図1(A)に示すように、略円盤状の感知器ベース210と、外形がドーム状をなし作動状態を表示するスポット型のランプL1が中心からずれた位置に設けられている感知器本体220と、を備えている。
【0024】
ここで、感知器ベース210は、火災感知器200の基部となる部材であり、通常、固定ネジN1によって被取付け部Pに取付けられているが、本実施形態の場合、固定ネジN1によって情報発信アダプタ100に取付けられ、感知器ベース210は、固定ネジN2によって情報発信アダプタ100に取付けられる。固定ネジN1が螺合されるネジ穴は、感知器の中心線上であって
図1(B)に一点鎖線Aで示す線を挟んで上下に等距離の位置に設けられ、固定ネジN2が螺合されるネジ穴は、情報発信アダプタ100の一点鎖線Bで示す線を挟んで上下に等距離の位置に設けられている。
【0025】
上記のようにネジ穴の位置をずらすことによって、固定ネジN1を回す際にドライバが、固定ネジN2が螺合されるネジ穴が形成されている部材と干渉しないように構成されている。これらネジ穴の位置関係については、後に詳しく説明する。
なお、火災感知器200は、情報発信アダプタ100を介在させたことによって、元の取付け位置から、
図1(B)において下方へΔLだけずれた位置に取り付けられることとなるが、ランプL1の位置はもとの角度位置と同じにすることができる。そのため、情報発信アダプタの設置に伴って、ランプL1の見え方が大きく変わるのを回避する、つまりランプL1の角度位置が変わることで所定の方向から見えにくくなる(死角が生じる)のを回避することができるという利点がある。
【0026】
感知器ベース210は、
図2に示すように、円筒状をなす難燃性樹脂からなる本体211と、本体211の下面側に装着された複数(本実施形態では3つ)の接続端子212と、を備えている。上記接続端子212は、天井面等の取付け面に形成された開口から引き出された感知器配線Q(電源線や伝送線など)を、感知器本体220に電気的に接続するためのものである。接続端子212は、箱型部分212aと、当該箱型部分212aから延出するブレード状部分212bと、を有している。箱型部分212aは、電線接続端子であり、当該箱型部分212aに設けられた差込穴212a1に感知器配線Qの先端が差込まれるようになっている。ブレード状部分212bは、連結端子であり、火災の感知を実際に行う感知器本体220に設けられた爪片(連結端子)と係合して当該感知器本体220を保持するようになっている。
【0027】
感知器ベース210の本体211には、一対の第一ネジ穴213と、一対の第二ネジ穴214と、が感知器ベース210の厚さ方向(上下方向)に貫通して設けられている。第一ネジ穴213及び第二ネジ穴214と第三ネジ穴216は、固定ネジN1用のネジ穴(固定ネジN1の軸部が挿通可能なネジ穴)として設けられたものであるが、本実施形態の場合、第一ネジ穴213を、固定ネジN2用のネジ穴(固定ネジN2の軸部が挿通可能なネジ穴)として使用する。したがって、固定ネジN1用のネジ穴として設けられた第一ネジ穴213を、固定ネジN2用のネジ穴として使用できるよう、固定ネジN2として、固定ネジN1と同一形状のネジ、あるいは固定ネジN1と軸部の長さのみが異なるネジを用いる。
【0028】
第一ネジ穴213は、略円盤状の感知器ベース210と同心の円周方向に沿って延びる円弧状に形成されている。そして、第一ネジ穴213が配置される円周の中心と、第二ネジ穴214が配置される円周の中心と、感知器ベース210の中心と、は同一である。感知器ベース210の中心から第一ネジ穴213までの距離は、感知器ベース210の中心から第二ネジ穴214までの距離より僅かに短い。
また、感知器ベース210の本体211の略中央部には、感知器配線Qの先端部を感知器ベース210の上面側から下面側へと引込むための引込穴215が、感知器ベース210の厚さ方向(上下方向)に貫通して設けられている。
【0029】
図3〜
図8は、本実施形態に係る情報発信アダプタ100の一例を示す図である。このうち
図3は情報発信アダプタ100の分解斜視図、
図4は情報発信アダプタ100の組み立て状態の斜視図、
図5は情報発信アダプタ100を構成するアダプタケース120の概略を示す図、
図6は情報発信アダプタ100を天井面等に取付けるための取付けベースプレート110の斜視図、
図7は取付けベースプレート110にこれと合体されるケース部材としてのアダプタケース120の蓋部120Bを取り付けた状態の斜視図である。また、
図8は、アダプタケース120のケース本体120Aを取付けベースプレート110に合体させる途中と合体後の状態を示す図である。
【0030】
本実施形態の情報発信アダプタ100は、
図3に示すように、略円板状をなす取付けベースプレート110と、円盤状をなす合成樹脂製のアダプタケース120とを有する。取付けベースプレート110は、もともと感知器ベース210を固定するために設けられているネジ穴を利用してネジによって天井面等に固定されるとともに、後述するように、感知器ベース210を固定するためのネジ穴が形成されたベース固定部111A,111Bが設けられ、該ベース固定部に感知器ベース210を固定した際に感知器ベース210の上面と取付けベースプレート110の下面との間に空間が生じるようにして、この空間に情報発信アダプタ100を介在させるという構成になっている。
上記のような構成を採用することで、情報発信アダプタ100は勿論のこと火災感知器を天井面等の取付け部に確実に固定することができる。
【0031】
また、上記取付けベースプレート110は、感知器ベース210の外径よりも大きな外径を有するように形成され、該取付けベースプレート110に、情報発信モジュールや電池を内蔵したアダプタケース120が接合される。
アダプタケース120は、円筒の外周の一部を切り欠いたような形状を有するケース本体120Aと、上記切欠き部分を補完するように係合される蓋部120Bとからなり、
図4に示すように、ケース本体120Aに蓋部120Bが係合されることで、全体として円盤状をなすように構成されている。そして、情報発信モジュールや電池などの発振器の構成部品は、ケース本体120Aの内部空間に収納される。
【0032】
また、ケース本体120Aは、
図3に示すように、本体の中央に、感知器配線を挿通可能にする開口123が形成されているとともに、本体外周の一部に、上記開口123と外側とを連通させる開口入口部124が形成されている。なお、情報発信アダプタ100の開口部123はアダプタの中央に設けられているが、取付けベースプレート110の開口部112の中心はアダプタケース120の開口123の中心と、
図1(B)のΔL分だけずれている。
また、感知器ベース210が、天井面等に、ネジN1により直接、一対の第二ネジ穴214や一対の第三ネジ穴216を使用して取り付けられていた場合には、ネジN2により、取付けベースプレート110の穴117A、117Bまたは穴118A、118Bを使用して、取付けベースプレート110を天井面に取り付けても良い。
また、新規に、天井面等被取付け部に取付けベースプレート110を取り付ける場合も、一対の長穴114A、114Bを使用せずに、穴117A、117Bまたは穴118A、118Bを使用して取り付けても良い。
【0033】
さらに、上記ケース本体120Aは、
図5に示すように、それぞれ周壁121aと122aを有し一方の面が各々開口した上ケース121と下ケース122とからなり、開口面同士を対向させて嵌合させることで、内部に収納空間を有する円盤状のケースとして構成される。下ケース122の周壁122aは、外径が上ケース121の周壁121aの外径よりも壁の厚さ分だけ小さくなるように形成されている。
なお、
図5では、上ケース121と下ケース122との嵌め合い構造を示すため、上ケース121と下ケース122の形状を単純化して表わしており、本来は
図5のように本体部と蓋部とからなるような形状に形成される。
【0034】
また、上ケース121と下ケース122とを結合するため、下ケース122の周壁122aの一部には係止爪122b(少なくとも2箇所)が形成され、上ケース121の周壁121a内面の対応する位置には、係止爪122bと係合する係止用突起121bが形成されている。また、外部から係止爪122bの横を通って内部に水が侵入するのを防止するため、下ケース122の周壁122aには、係止爪122bを囲むように凹部形成壁122cが設けられている。なお、係止爪122bの周辺の詳しい構造については、後に
図11を用いて説明する。
【0035】
取付けベースプレート110は、上記アダプタケース120の外径と略同一の外径を有する略円形状の板部材であり、1枚の金属プレートをプレス加工等により成型して形成されており、
図6に示すように、ほぼ中央部に、感知器配線を挿通させるため、情報発信アダプタ100に火災感知器200を取付けた状態において感知器ベース210の引込穴215(
図2参照)と対向するよう開口部112が設けられている。また、取付けベースプレート110には、周縁部からこの開口部112まで連続するように配線の挿入口113が形成されている。
【0036】
また、取付けベースプレート110には、開口部112の近傍に、前述した感知器ベース210を固定するための固定ネジN2(
図1参照)が螺合されるネジ穴111a,111bが形成されたベース固定部111A,111Bが設けられているとともに、該プレートを天井面等に固定するためのネジN1(
図1参照)が挿通される円弧状の長穴114A,114Bが形成されている。この長穴114A,114Bの端部には、ネジN1の頭部が通過可能な大径穴が設けられ、ネジN1を緩めるだけで取付けベースプレート110の着脱が可能になっている。
なお、天井面等の被取付け部Pに取付けられた取付けボックスの被取付け用の一対のネジ穴間隔が、感知器ベースの一対の第一ネジ穴の間隔と異なる場合には、一対の第二ネジ穴214や一対の第三ネジ穴216がこの間隔となっており、この場合、取付けベースプレート110の第二ネジ穴214に対応する穴117A、117Bまたは第三ネジ穴216に対応する穴118A、118Bを使用して、取付けベースプレート110を取付けボックスに取り付けることができる。
【0037】
上記ベース固定部111A,111Bは、取付けベースプレート110を構成する金属板の一部を90度折曲することで形成されており、取付けベースプレート110の中心を挟んで中心からほぼ等距離の位置に設けられている。長穴114A,114Bは、ベース固定部111A,111Bから数mm同一方向へずれた位置に形成されている。これにより、固定ネジN1を回す際にドライバが、ベース固定部111A,111Bと干渉しないようになっている。
【0038】
さらに、取付けベースプレート110には、配線の挿入口113の縁部に沿ってガイド片115Aが、また該ガイド片115Aの延長上にガイド片115Bが形成されている。ガイド片115Aとガイド片115Bとは直線をなすように形成されており、アダプタケース120のケース本体120Aを案内する1本のレールを構成するようになっている。また、特に限定されるものでないが、ベース固定部111Bを挟んで反対側の位置には、ガイド片115Bと平行をなす横ずれ防止片115Cが形成されている。
【0039】
なお、上記横ずれ防止片115Cの延長上にもガイド片を設けてレールを2本とすることも考えられるが、上述したようにレールを1本にすることで、金属プレートに余計な肉抜き加工をする必要がなくなり、取付けベースプレート110の強度が低下するのを回避することができる。また、アダプタケース120のケース本体120A側に、2本のレールと係合する2つの溝を形成する必要がなくなるため、溝を設けることに伴い内部空間が狭められるのを回避することができ、アダプタケース120の収容部の容積も広げられ、電池等より多くの構成部品を収納することができるようになるという利点がある。
【0040】
アダプタケース120のケース本体120Aの上面には、
図12に示すように、上記ガイド片115A,115Bと係合するスライド溝125Aが形成されており、ケース本体120Aは該ガイド片115A,115Bに沿ってスライド溝125Aが摺動し、ケース本体120Aの上面が取付けベースプレート110の下面に沿ってスライド移動することで、当該ケース本体120Aを取付けベースプレート110に着脱できるようになっている。また、ケース本体120Aの上面には、取付けベースプレート110の上記横ずれ防止片115Cと係合する係合溝125Bが形成されており、ケース本体120Aを取付けベースプレート110の上面に沿って奥までスライド移動させた際に、横ずれ防止片115Cに係合溝125Bが係合することで、挿入方向に対して左右の方向への移動が防止されるようになっている。
【0041】
さらに、ケース本体120Aの上面には、スライド方向と平行な方向に沿って所定の間隔をおいて複数のリブRが形成されている。これにより、ケース本体120Aを取付けベースプレート110に沿って移動させる際の摩擦力を減らして、アダプタケース120の着脱作業を容易に行えるようになる。
また、
図6に示すように、上記取付けベースプレート110には、該プレート上にアダプタケース120の蓋部120Bを固定するためのネジ116が螺合されるネジ穴110aが、ベース固定部111Bの近傍に形成されている。そして、取付けベースプレート110のベース固定部111Bの近傍にアダプタケース120の蓋部120Bが載置され、上記ネジ116がネジ穴110aに螺合されて締め付けられることで一体化される。
【0042】
また、蓋部120Bは、弓形をなす補完部126aとケース本体120Aの開口入口部124に嵌合可能な内側突出部126bとを備えており、内側突出部126bの上面側部には、ベース固定部111Bのネジ穴111bを有する水平な折曲片の側部と係合する段差部126cが形成されている。そして、ベース固定部111Bの起立壁をガイド部材として、内側突出部126bの側面と段差部126cを、ベース固定部111Bの起立壁と水平折曲片の側面に接触させながら、蓋部120Bを外側から内側(
図6では左から右側)へ移動させる。
【0043】
これにより、
図7に示すように、蓋部120Bを取付けベースプレート110上の所定位置に載置させることができるようになっている。そして、蓋部120Bを一体にした状態の取付けベースプレート110に対して、
図8に示すように、蓋部120Bと反対の側から、ケース本体120Aを前記ガイド片115A,115Bおよび取付けベースプレート110の上面に沿ってスライド移動させることで、蓋部120Bの内側突出部126bをケース本体120Aの開口入口部124に嵌合させることで、取付けベースプレート110にアダプタケース120を合体させることができるようになっている。
【0044】
そして、取付けベースプレート110とアダプタケース120とが合体した状態においては、取付けベースプレート110の中心とアダプタケース120の中心とが一致するようになる。
なお、蓋部120Bの弓形補完部126aの内側両端には、
図9に示すように、前記スライド溝125Aと係合溝125Bに対応して一対の係止爪127A,127Bが設けられているとともに、スライド溝125Aと係合溝125Bの端部には凹部125a,125bが設けられており、係止爪127A,127Bの先端が凹部125a,125bに係合することで、ケース本体120Aと蓋部120Bとの結合状態を保持できるようになっている。
【0045】
さらに、蓋部120Bには、
図8に示すように、弓形補完部126aの周縁部中央に、厚さ方向に貫通された貫通穴127が形成されている。この貫通穴127は、内部に侵入した水を排出させる水抜き穴として機能するとともに、ケース本体120Aの挿入方向と平行な中心線上に設けられているため、特開2005−352801号公報に記載されている感知器を着脱する器具に似た構成の着脱器具を用いてケース本体120Aを取付けベースプレート110に着脱する際に、着脱器具の一部を貫通穴127に係合させることで、器具のふらつきを押さえて着脱作業を容易に行えるようにするために利用することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の情報発信アダプタ100は、ケース本体120Aに設けられている感知器配線の挿通用の開口123と連通する開口入口部124の形状が工夫されている。
具体的には、
図10に示すように、開口入口部124の両側に、開口123と連続しケース本体120Aの挿入方向と平行をなす平行面124Aと、該平行面124Aと連続し外側に向かって広がるように傾斜する誘導面124Bと、該誘導面124Bと連続し挿入方向と直交する方向の押圧面124Cとが形成されている。また、取付けベースプレート110の開口部112の縁部であって配線の挿入口113と連続する部位に、ほぼ半径方向に沿った傾斜面112Aが形成されている。次に、上記平行面124Aと誘導面124Bと押圧面124Cおよび傾斜面112Aの作用について、
図10(A)〜(C)を用いて説明する。
【0047】
既設の感知器を天井面等から外して情報発信アダプタ100を設置する際には、先ず天井面等に取付けベースプレート110を固定ネジN1でネジ止めする必要がある。その際に、天井面等に形成された開口から引き出された感知器配線を一旦は纏めて取付けベースプレート110の開口部112内に収めるが、ネジ止めを配線から手を離すと配線がばらけて、感知器配線が挿入口113へ移動してしまうことがある。
しかし、本実施形態の情報発信アダプタ100によれば、アダプタケース120を取付けベースプレート110に装着するために、ケース本体120Aを取付けベースプレート110の下面に沿ってスライドさせると、先ず
図10(A)に示すように、押圧面124Cが感知器配線Qを開口部112側へ押し込むこととなるため、感知器配線Qが取付けベースプレート110の傾斜面112Aへ向かって移動する。
【0048】
続いて、ケース本体120Aをさらにスライドさせると、
図10(B)に示すように、押圧面124Cによって押された感知器配線Qが傾斜面112Aに沿って開口部112へ向かって移動する。すると、感知器配線Qが、
図10(C)に示すように、押圧面124Cから外れて誘導面124Bと接触するようになる。この状態で、ケース本体120Aをさらにスライドさせると、感知器配線Qは誘導面124Bに沿って矢印方向すなわち開口部112の中央へ移動されることとなる。
【0049】
上記のように、本実施形態の情報発信アダプタ100によれば、アダプタケース120を差込むために、ケース本体120Aを取付けベースプレート110の下面に沿ってスライドさせる作業を行うと、ばらけていた感知器配線Qを取付けベースプレート110の中央に移動させて自動的に開口部112内に収納させることができる。そのため、アダプタケース120の差込前に配線を整える必要がないとともに、差込時に配線がケース本体120Aと取付けベースプレート110との間に挟まったりすることがなく、情報発信アダプタ100の設置作業を短時間に完了することができるという利点がある。
【0050】
次に、
図11を用いて、上ケース121と下ケース122とを結合する係止爪122b(
図5参照)の周辺の詳しい構造について説明する。
本実施形態の情報発信アダプタ100においては、
図11(A)に示すように、下ケース122の周縁部に、上ケース121と下ケース122とを結合する係止爪122bが形成され、上ケース121の周壁121a内面の対応する位置には、係止爪122bと係合する係止用突起121bが形成されている。また、外部から係止爪122bの横を通って内部に水が侵入するのを防止するため、下ケース122の周壁122aには、係止爪122bを囲むように凹部形成壁122cが設けられている。
【0051】
さらに、本実施形態においては、
図11(A)に示すように、係止爪122bの上方に位置する上ケース121の周縁部に、係止爪122bの上方空間を囲むように、凹部形成壁121cが形成されている。この凹部形成壁121cは、下ケース122の周縁部に設けられた凹部形成壁122cよりも小さい寸法を有するように設定され、凹部形成壁121cの下部先端には、凹部形成壁121cの底面を塞ぐように、断面が台形状をなす突起128aと該突起128aを囲む薄肉部128bとからなる破壊許容部128が形成されている。
凹部形成壁121cの下端面は下ケース122の凹部形成壁122cの上端面と圧接されるように高さが設定されており、これによりケースの内部空間がケースの周壁によって外部とより気密に遮断される。
【0052】
破壊許容部128は、突起128aを上方から強く押し込むと薄肉部128bが破断されて、
図11(B)に示すように、係止爪122bの上方が開口されるようになっている。そして、このようにして係止爪122bの上方が開口されると、この開口部からドライバ等の工具を挿入して係止爪122bと係止用突起121bとの係合を外すことができるようになる。
上記のような構成を採用することで、上ケース121と下ケース122との嵌合が嵌め殺しとなるため、防滴性を高めることができるとともに、廃棄や異常時以外は分解できないため、設置現場での電池の差込みや交換等の作業がなくなり、電池の差込み不良等の不具合が生じるのを回避することができる。また、一度分解したものは、破壊許容部128が破断されるため、誤って新品と混ざったとしても容易に発見することができる。
【0053】
火災感知器200は、天井又は天井とみなせる固定器材(取付け具)に確実に取付けられる必要があるが、本実施形態の情報発信アダプタ100は、ネジを用いて取付けベースプレート110を天井等の被取付け部Pに固定する構成であるため、取付けベースプレート110は天井とみなせる固定器材であると言える。そして、その取付けベースプレート110に、ネジを用いて火災感知器200を取付けるため、火災感知器200を確実に取付けることができる。すなわち、情報発信アダプタ100は、火災感知器200を取付可能な被取付け部Pと同等の設置条件を満たし、火災感知器200を取付けることができる。よって、本実施形態の情報発信アダプタ100は、火災感知器200の機能や性能に影響を与えることなく、火災感知器200と被取付け部Pとの間に設置可能である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、情報発信アダプタ100として発信機能を有するモジュールを内蔵した例を示したが、発信機能の他、受信機能を有するモジュールを内蔵するようにしても良い。
また、火災感知器200は、感知器ベース210と感知器本体220とに分離可能なものに限定されず適宜変更可能であり、例えば、感知器ベース210を備えない火災感知器、すなわち、感知器ベースを介することなく、被取付け部Pに一体的な構成のまま取付けられる火災感知器であっても良い。