【解決手段】ソレノイド装置は、ケース(16A,16B)と、ケース(16A,16B)内に支持され、軸方向に沿った第1の中心軸穴を備えた第1の円筒部を有するボビン(10)と、第1の円筒部に巻回されるコイル(11)と、第1の中心軸穴内に配置され、軸方向に沿った第2の中心軸穴を備えた第2の円筒部を有するコア(12A,12B)と、磁性体からなり、第2の円筒部の内側の空間内に配置され、軸方向に延びるシャフトホールを有し、かつ、第2の円筒部に対して軸方向に移動可能なプランジャ(13)と、シャフトホールに挿入され、軸方向の一方側がケース(16A,16B)から露出し、軸方向の他方側がケース(16A,16B)により覆われるシャフトピン(14)と、シャフトピン(14)に固定される非磁性体(19)と、を備える。
軸方向の一方側において前記シャフトピンが前記プランジャから突出する第1の突出部は、軸方向の他方側において前記シャフトピンが前記プランジャから突出する第2の突出部よりも長い、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のソレノイド装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
なお、実施形態では、その説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造については、簡略化して説明する。また、図面において、各要素の寸法、形状、数などについても、一例であり、これに限定されるという主旨ではない。
【0015】
また、以下の説明において、軸方向とは、中心軸が延びる方向を意味し、径方向とは、中心軸に直交する方向を意味する。また、軸方向とは、中心軸に平行な方向、即ち、中心軸に対して0°の方向を示すと共に、中心軸に対して、0°よりも大きく、かつ、45°よりも小さい範囲の斜め方向も含むものとする。同様に、径方向とは、中心軸に直交する方向を示すと共に、中心軸に直交する方向に対して、0°よりも大きく、かつ、45°よりも小さい範囲の斜め方向も含むものとする。
【0016】
さらに、地側とは、地面側を意味し、天側とは、空側を意味する。例えば、地球の重力の方向を基準とした場合、地側は、地球の重力の方向に対して−45°〜+45°の範囲の方向にあるのが望ましく、天側は、地球の重力の方向と反対の方向に対して−45°〜+45°の範囲の方向にあるのが望ましい。
【0017】
<ソレノイド装置の第1の例>
図1乃至
図4は、ソレノイド装置の第1の例を示す。
図1は、プランジャが軸方向の他方側に最も移動したときの状態である。
図2は、プランジャが軸方向の一方側に最も移動したときの状態である。
図3は、軸方向の一方側からソレノイド装置を見た図である。
図4は、軸方向の一方側からコアを見た図である。
【0018】
ボビン10は、例えば、中心軸100を取り囲む円筒状を有する。ボビン10は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、PTFE(polytetrafluoroethylene)などの樹脂成型品である。ボビン10は、軸方向に沿った第1の中心軸穴を備えた第1の円筒部を有する。コイル(例えば、ソレノイドコイル)11は、ボビン10の第1の円筒部に巻回される。コイル11は、例えば、銅線を樹脂で覆った、エナメル線、ポリウレタン線、ポリエステル線などである。
【0019】
第1のコア部12A及び第2のコア部12Bは、それぞれ全体として円筒状を成し、ボビン10の第1の中心軸穴内に配置される。第1及び第2のコア部12A,12Bは、第2の円筒部として、軸方向に沿った第2の中心軸穴を備える。また、第1のコア部12Aは、軸方向の一方側において第2の中心軸穴を覆うコア底部12Cを有する。プランジャ13は、第1及び第2のコア部12A,12Bの第2の中心軸穴によって構成されるプランジャ室132内に配置される。また、プランジャ13は、軸方向に貫通する第1のホール131を有し、かつ、プランジャ室132において軸方向に移動可能である。
【0020】
第1のコア部12A、第2のコア部12B、コア底部12C、及び、プランジャ13は、鉄などの磁性体からなる。電流がコイル11に流れることにより、コイル11は、磁界を発生する。第1のコア部12A、第2のコア部12B、コア底部12C、及び、プランジャ13は、コイル11が発生する磁界により磁化される。
【0021】
ここで、第1及び第2のコア部12A,12Bは、例えば、間隙をもって配置され、かつ、樹脂製のカラー12Dにより互いに結合される。即ち、カラー12Dは、全体として円筒状を有し、第1のコア部12A及び第2のコア部を位置決めした状態で結合する。また、第1及び第2のコア部12A,12Bは、ケース16A,16Bに固定される。
【0022】
しかし、ケース16A,16Bは、第1及び第2のコア部12A,12Bと同様に、鉄などの磁性体である。これは、ケース16A,16Bを、コイル11が発生する磁界の通り道として機能させるためである。この場合、プランジャ13及びケース16Bの残留磁気により、プランジャ13を動かし始めるとき、プランジャ13がケース16Bに磁気吸着される、という問題が発生する。
【0023】
そこで、プランジャ13は、軸方向の他方側を向く表面において、シャフトピン14を取り囲む窪み部133を有する。また、非磁性体19は、例えば、樹脂製の環状であり、窪み部133に配置される。窪み部133及び非磁性体19は、プランジャ13が軸方向の最も他方側に移動した場合(
図1参照)でも、プランジャ13の軸方向の端面がケース16Bに近接する面積を減らすという作用を有する。従って、コイルに電流を流して磁界を発生させたときに、プランジャ13がケース16Bに磁気吸着されることもない。
【0024】
また、窪み部133は、プランジャ13の軸方向の他方側を向く表面において、中心軸100寄り、即ち、プランジャ13の中央部に設けられる。従って、窪み部133は、プランジャ13の軸方向の端面の径方向の外側の周縁部134には設けられない。つまり、プランジャ13の軸方向の端面がケース16Bに近接する部分は、窪み部133を取り囲む環状の周縁部134に限定される。
【0025】
この場合、プランジャ13の側面(径方向の表面)の面積は、窪み部133により影響を受けないため、磁界の通り道となる第1及び第2のコア部12A,12Bからプランジャ13の側面への磁界の受け渡し面積は、十分に確保される。
【0026】
従って、磁気吸着と磁界の受け渡しという2つの観点からみて、本例のソレノイド装置は、応答性が向上する。しかも、プランジャ13の周面長さは、短くならないため、中心軸100に対するプランジャ13の傾きもなく、コイル11に電流を流してからの時間とプランジャの位置との関係に発生するヒステリシスも、十分に小さくなる。これについては、後述する(
図13A参照)。
【0027】
また、非磁性体19の軸方向の他方側の端面の位置は、シャフトピン14の軸方向の他方側の端面の位置よりも軸方向の他方側にある。これは、プランジャ13が軸方向の最も他方側に移動したときに、環状の周縁部134又は後述するシャフトピン14がケース16Bに接触しないようにするためである。
【0028】
即ち、プランジャ13の環状の周縁部134又は後述するシャフトピン14と、ケース16Bとの接触は、金属同士の接触であり、金属塵などの発生の原因となる。非磁性体19は、例えば、金属よりも柔らかい樹脂製であるので、非磁性体19がケース16Bに接触するようにすれば、プランジャ13の移動に伴う金属塵などの発生を抑えることができる。
【0029】
尚、ケース16A,16Bは、フランジ部161を備える。フランジ部161は、例えば、ソレノイド装置をシステムに組み込むときに、組み立ての容易化に貢献する。また、シール部材101は、例えば、Oリングである。シール部材101は、ボビン10とケース16A,16Bとの間をシールする。
【0030】
コア底部12Cは、軸方向の他方側に凹部121を備える。また、コア底部12Cは、径方向の地側において、外部から凹部121まで、軸方向に貫通する第2のホール120を有する。スペーサ15は、円環状の凹部121を円環状の空隙として、コア底部12Cの軸方向の他方側の面に密着固定される。スペーサ15は、凹部121をソレノイド装置の内側から覆う。
【0031】
スペーサ15は、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、PTFEなどの非磁性体である。スペーサ15が非磁性体であれば、スペーサ15は、コイル11からの磁界により磁化されることがない。従って、プランジャ13の移動は、スペーサ15により制限されない。
【0032】
スペーサ15は、中心軸100に対して第2のホール120と反対側、即ち、径方向の天側に、凹部121及びプランジャ室132を接続する接続部151を有する。例えば、
図5に示すように、スペーサ15の接続部151は、例えば、接続穴である。接続部151が接続穴であれば、第2のホール120との対称性が確保される。この対称性は、ソレノイド装置の呼吸をスムーズにする効果がある。
【0033】
但し、接続部151は、凹部121及びプランジャ室132を接続していれば、接続穴に限定されることはない。
【0034】
スペーサ15は、例えば、リング形状を有する。スペーサ15は、地側から天側に向かう呼吸経路を確保するため、凹部121の開口部分を覆う同様の形状を有するのが望ましい。スペーサ15は、例えば、第1のコア部12Aの内面に設けられた環状篏合部152に篏合される。環状篏合部152は、例えば、第1のコア部12Aの内側の面に設けられた段差又は溝である。
【0035】
スペーサ15は、例えば、
図6に示すように、軸方向に直交する径方向の外側にフラット部153を有する。フラット部153は、スペーサ15が第1のコア部12Aに篏合されるときのアライメントを正確に行うための要素である。例えば、このフラット部153は、第2のホール120を地側、接続部151を天側に正確にアライメント可能である。この場合、第2のホール120と接続部151とが、中心軸100に対して180°となる位置関係にあれば、コンタミのプランジャ室132内への侵入が最大限に防止される。
【0036】
また、フラット部153は、スペーサ15が環状篏合部152に篏合された後、スペーサ15を第1のコア部12Aに固定する効果を有する。即ち、スペーサ15は、中心軸100を中心に回転することがない。従って、例えば、第2のホール120が地側、接続部151が天側という位置関係が、スペーサ15のセッティング後においても、常に維持される。
【0037】
第1のホール131、第2のホール120、及び、凹部121は、ソレノイド装置の呼吸のために設けられる。即ち、第1のホール131、第2のホール120、及び、凹部121は、ソレノイド装置の応答性を向上させる。
【0038】
凹部121は、中心軸100のまわりに配置される。凹部121は、例えば、リング形状を有する。この場合、呼吸経路は、第2のホール120から凹部121の左側を通って接続部151に到達する経路と、第2のホール120から凹部121の右側を通って接続部151に到達する経路と、の2つとなる。従って、ソレノイド装置の呼吸がさらに容易化され、応答性がさらに向上する。
【0039】
第1のホール131は、中心軸100に対して第2のホール120と同じ側に配置されるのが望ましい。この場合、例えば、第2のホール120が地側に配置され、接続部151が天側に配置され、さらに、第1のホール131が地側に配置される。これは、ソレノイド装置の呼吸経路としてのクランクの数が増えることを意味する。従って、仮に、コンタミがプランジャ室132内に侵入しても、コンタミは、プランジャ室132の全体に拡散され難くなる。即ち、ソレノイド装置の信頼性がさらに向上する。
【0040】
また、中心軸100に対して第2のホール120と同じ側、即ち、地側において、コア底部12Cとスペーサ15との間隙、例えば、凹部121の径方向の外側の端部は、第2のホール120よりも径方向の外側に位置する。この場合、呼吸経路としての間隙、例えば、凹部121内に、いわゆるコンタミポケット122が設けられる。コンタミポケット122は、第2のホール120からソレノイド装置内に侵入したコンタミを溜めておく効果を有する。
【0041】
例えば、第2のホール120から凹部121内に侵入したコンタミは、天側にある接続部151まで移動せずに、重力により、地側の端部、即ち、凹部121の径方向の外側の端部に堆積する。この時、コンタミポケット122が存在しないと、第2のホール120から凹部121への気体(例えば、空気)又は液体(例えば、オイル)の流れにより、堆積したコンタミが、再び、天側に移動する。場合によっては、多量のコンタミが凹部121内で拡散し、その一部が接続部151を経由してプランジャ室132内に侵入する。
【0042】
これに対し、コンタミポケット122は、凹部121内での気体又は液体の流れとは離れた位置に、コンタミを溜める機能を有する。従って、コンタミポケット122内に堆積したコンタミが凹部121内で拡散され、再び、天側に移動するといった事態が発生することはない。即ち、コンタミポケット122は、コンタミの侵入量にかかわらず、コンタミがプランジャ室132内に侵入することを有効に防止する。
【0043】
シャフトピン14は、プランジャ13の移動に追従して軸方向に移動可能である。シャフトピン14がプランジャ13の移動に追従して軸方向に移動可能であれば、ソレノイド装置の出力をシャフトピン14の移動量として容易に取り出すことができる。この場合、ソレノイド装置をバルブシステムなどのシステムに組み込むことが容易化される。
【0044】
シャフトピン14は、例えば、ステンレス鋼などの非磁性体である。シャフトピン14は、例えば、軸方向においてプランジャ13内に挿入され、かつ、プランジャ13に固定される。プランジャ13とシャフトピン14とが一体化されれば、プランジャ13の動きとシャフトピン14の動きとを完全に一致させることができる。
【0045】
尚、シャフトピン14の軸方向の一方側は、ケース16A,16Bから露出する。また、シャフトピン14の軸方向の一方側は、ケース16A,16Bから突出可能であってもよい。例えば、プランジャ13が軸方向の他方側に最も移動したとき、例えば、
図1に示すように、シャフトピンの14は、ケース16A,16Bの内部に収まる。また、プランジャ13が軸方向の一方側に最も移動したとき、例えば、
図2に示すように、シャフトピンの14は、ケース16A,16Bから突出する。
【0046】
以上、説明したように、ソレノイド装置の第1例によれば、スペーサ15は、コア底部12Cの軸方向の他方側において凹所のスペースを確保してコア底部の軸方向の他方側を覆って配置される。即ち、スペーサ15とコア底部12Cとの間に呼吸経路が設けられる。この呼吸経路は、例えば、凹部121の開口側がスペーサ15により塞がれた構造である。しかも、コア底部12Cは、径方向の地側において、外部から呼吸経路まで貫通する第2のホール120を有する。また、スペーサ15は、径方向の天側において、接続部151を有する。
【0047】
従って、ソレノイド装置の外部とプランジャ室132とは、第2のホール120、凹部121、及び、接続部151からなる呼吸経路により、互いに空間的に接続される。また、この呼吸経路は、クランク状となる。この場合、例えば、ソレノイド装置の呼吸が確保され、応答性が向上すると共に、外部からのコンタミの侵入も防止できる。なぜなら、第2のホール120から接続部151に向かう方向は、重力に逆らう方向、即ち、地側から天側に向かう方向だからである。この場合、仮に、コンタミが第2のホール120から凹部121に侵入したとしても、そのコンタミは、自重により、接続部151まで到達し難く、さらに、プランジャ室132内に侵入することもない。
【0048】
このように、ソレノイド装置の第1の例によれば、ソレノイド装置の外部からのコンタミの侵入を防ぎつつ、ソレノイド装置の応答性を向上できる。
【0049】
また、ソレノイド装置の第1の例では、コンタミの侵入防止及び応答性という観点から、上述の効果が得られると共に、さらに、その構造上、以下の効果が得られる。
【0050】
ソレノイド装置の呼吸経路となる凹部121は、ソレノイド装置の内側、即ち、プランジャ室132側を向いている。これは、ソレノイド装置の外側にスペーサ15が露出しないことを意味する。スペーサ15は、一般的に、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、PTFEなどの非磁性材料からなる。これらの非磁性材料は、薄く、かつ、衝撃に弱い。従って、スペーサ15がソレノイド装置の内側に設けられることは、スペーサ15を衝撃から保護し、ソレノイド装置の信頼性を向上させるために非常に有効である。
【0051】
さらに、ソレノイド装置の第1例によれば、プランジャ13は、軸方向の他方側を向く表面において、シャフトピン14を取り囲む窪み部133及び窪み部133内に配置される非磁性体19を有する。窪み部133は、プランジャ13が軸方向の最も他方側に移動した場合でも、プランジャ13の軸方向の端面がケース16Bに近接する面積を減らすという作用を有する。従って、コイルに電流を流して磁界を発生させたときに、プランジャ13がケース16Bに磁気吸着されることもない。
【0052】
また、窪み部133は、プランジャ13の軸方向の他方側を向く表面において、中心軸100寄り、即ち、プランジャ13の中央部に設けられる。即ち、プランジャ13の側面(径方向の表面)の面積は、窪み部133により影響を受けないため、磁界の通り道となる第1及び第2のコア部12A,12Bからプランジャ13の側面への磁界の受け渡し面積は、十分に確保される。
【0053】
従って、磁気吸着と磁界の受け渡しという2つの観点からみて、本例のソレノイド装置は、応答性が向上する。しかも、プランジャ13の周面長さは、短くならないため、中心軸100に対するプランジャ13の傾きもなく、コイル11に電流を流してからの時間とプランジャの位置との関係に発生するヒステリシスも、十分に小さくなる。
【0054】
また、非磁性体19の軸方向の他方側の端面の位置は、シャフトピン14の軸方向の他方側の端面の位置よりも軸方向の他方側にある。これは、プランジャ13が軸方向の最も他方側に移動したときに、非磁性体19がケース16Bに接触し、環状の周縁部134又はシャフトピン14がケース16Bに接触しないことを意味する。従って、プランジャ13の移動に伴う金属塵などの発生を抑えることができる。
【0055】
<ソレノイド装置の第2の例>
図7は、ソレノイド装置の第2の例を示す。
図7は、プランジャが軸方向の他方側に最も移動したときの状態である。
第2の例は、第1の例(
図1乃至
図6)の変形例である。
従って、第2の例において、第1の例と同じ要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0056】
第2の例は、第1の例と比べると、スペーサ15及び接続部151の構造に特徴を有する。例えば、
図8に示すように、スペーサ15は、径方向の天側において、切り欠き部を有する。この切り欠き部は、スペーサ15が第1のコア部12Aに結合された後、接続部151として機能する。この場合、接続部151は、第1のコア部12A及びスペーサ15間のギャップとなる。
【0057】
接続部151が第1のコア部12A及びスペーサ15間のギャップであれば、接続部151は、凹部121内において、最も天側に配置することが可能である。この場合、第2のホール120から接続部151までの距離が最大となるため、コンタミがプランジャ室132内にさらに侵入し難くなる。
【0058】
尚、スペーサ15は、例えば、
図9に示すように、軸方向に直交する径方向の外側にフラット部153を有してもよい。フラット部153は、第1の例で説明したように、スペーサ15のアライメントを正確に行うための要素である。従って、第2の例においても、第2のホール120が地側、接続部151が天側という位置関係が常に維持される。
【0059】
以上、第2の例においても、ソレノイド装置の応答性及び信頼性を向上できる。
【0060】
<ソレノイド装置の第3の例>
図10は、ソレノイド装置の第3の例を示す。
図10は、プランジャが軸方向の他方側に最も移動したときの状態である。
第3の例も、第1の例(
図1乃至
図6)の変形例である。
従って、第3の例において、第1の例と同じ要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0061】
第3の例は、第1の例と比べると、第1のコア部12Aとスペーサ15との結合部の構造に特徴を有する。例えば、第1のコア部12Aは、スペーサ15が篏合される環状篏合部152を有する。但し、この環状篏合部152は、第1の例とは異なり、第1のコア部12Aの内側の面に設けられた円環状の溝である。
【0062】
この場合、スペーサ15が環状篏合部152に篏合されることにより、スペーサ15は、第1のコア部12Aに固定される。また、例えば、
図6に示すように、スペーサ15がフラット部153を有していれば、スペーサ15は、中心軸100を中心に回転することがない。従って、例えば、第2のホール120が地側、接続部151が天側という位置関係は、スペーサ15がセッティングされた後であっても、常に維持される。
【0063】
以上、第3の例においても、ソレノイド装置の応答性及び信頼性を向上できる。
【0064】
<ソレノイド装置の第4の例>
図11は、ソレノイド装置の第4の例を示す。
図11は、プランジャが軸方向の他方側に最も移動したときの状態である。
第4の例は、第3の例(
図10)の変形例である。
従って、第4の例において、第3の例と同じ要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0065】
第4の例は、第3の例と比べると、第1のコア部12Aとスペーサ15とがいわゆるスナップフィット構造により結合される点に特徴を有する。例えば、スペーサ15は、フック部を有する。また、環状篏合部152は、第1のコア部12Aに設けられた窪みであり、かつ、フック部が固定されるキャッチ部を有する。
【0066】
この場合、スペーサ15が環状篏合部152に篏合されることにより、スペーサ15は、第1のコア部12Aに完全に固定される。即ち、スペーサ15は、中心軸100を中心に回転することがない。従って、例えば、第2のホール120が地側、接続部151が天側という位置関係は、スペーサ15がセッティングされた後であっても、常に維持される。
【0067】
以上、第4の例においても、ソレノイド装置の応答性及び信頼性を向上できる。
【0068】
<プランジャとシャフトピンとの関係>
ソレノイド装置の第1乃至第4の例(
図1乃至
図11)では、プランジャ13とシャフトピン14とが一体化される。この場合、プランジャ13の動きとシャフトピン14の動きとを完全に一致させ、ソレノイド装置の応答性をさらに向上できる。
【0069】
図12Aは、プランジャとシャフトピンとの結合の例を示す。
プランジャ13とシャフトピン14とが一体である場合、プランジャ13とシャフトピン14とは、例えば、カシメにより互いに結合するのが望ましい。なぜなら、カシメは、簡単かつ低コストで、両者を結合できるからである。
【0070】
この場合、プランジャ13は、軸方向に貫通するシャフトホール141を有する。シャフトホール141は、例えば、プランジャ13の中心に設ける、即ち、中心軸100を中心として配置するのが望ましい。
【0071】
また、シャフトピン14は、シャフトピン14を取り囲む周方向に凹部を備える。シャフトピン14の凹部は、例えば、周方向の全体、即ち、一周360°の全体に設けられるのが望ましい。そして、プランジャ13の一部は、シャフトピン14の凹部(被カシメ部)にカシメられる。
【0072】
カシメ部1331は、例えば、ポンチ17により形成可能である。ポンチ17は、テーパ状の先端を有する。テーパ状の先端は、プランジャ13の一部を変形させ、プランジャ13をシャフトピン14に固定するために使用される。例えば、同図に示すように、シャフトピン14は、プランジャ13のシャフトホール141内に挿入される。この状態において、プランジャ13の角部がシャフトピン14の凹部に対応するように位置決めし、かつ、両者が一時的に仮固定される。この後、ポンチを軸方向にスライドさせることにより、ポンチ17のテーパ状の先端は、プランジャ13の角部に衝突する。
【0073】
その結果、プランジャ13の角部は、シャフトピン14の凹部内に嵌め込まれ、カシメ部1331が形成される。
【0074】
図12Bは、非磁性体とシャフトピンとの結合の例を示す。
非磁性体19は、上述したように、プランジャ13の移動時に、非磁性体19がケース16Bに接触するように、軸方向の他方側の端面の位置がシャフトピン14の軸方向の他方側の端面の位置よりも軸方向の他方側に配置される。
【0075】
この場合、プランジャ13の移動時において、非磁性体19には、ケース16Bとの衝突による衝突応力が印加される。従って、非磁性体19が、単に、プランジャ13の窪み部133内に配置されているだけでは、非磁性体19の位置がずれたり、又は、非磁性体19が窪み部133から外れたりするおそれがある。
【0076】
そこで、非磁性体19は、シャフトピン14に固定される。例えば、シャフトピン14は、シャフトピン14を取り囲む周方向に凹部を備える。シャフトピン14の凹部は、例えば、周方向の全体、即ち、一周360°の全体に設けられるのが望ましい。一方、非磁性体19は、径方向の内側に突出する凸部を備える。そして、非磁性体19の凸部は、シャフトピン14の凹部に篏合される。
【0077】
尚、非磁性体19とシャフトピン14とは、スナップフィット構造により固定されてもよい。即ち、非磁性体19の凸部がフック部を有し、シャフトピン14の凹部がキャッチ部を有すれば、フック部がキャッチ部に固定されることにより、非磁性体19とシャフトピン14との結合は、強固となる。
【0078】
<ヒステリシスの改善>
図13Aは、実施例において、磁界の印加時間とプランジャの位置(ストローク)との関係を示す。
図13Bは、比較例において、磁界の印加時間とプランジャの位置(ストローク)との関係を示す。
【0079】
ここで、実施例とは、第1乃至第4の例(
図1乃至
図11)で説明したソレノイド装置のことである。また、比較例とは、第1乃至第4の例(
図1乃至
図11)の窪み部133及び非磁性体19を有しないソレノイド装置のことである。また、L0は、プランジャ室内において、プランジャ13が軸方向の最も他方側に移動したときの位置である。L1は、プランジャ室内において、プランジャ13が軸方向の最も一方側に移動したときの位置である。
【0080】
実施例及び比較例共に、コイル11が磁界を発生してから一定期間tdelay,tdelay’は、プランジャ13の位置が変化しない。しかし、実施例でのtdelayは、比較例でのtdelay’よりも短い。これは、上述したように、実施例では、比較例に比べて、プランジャ13がケース16Bから受ける磁気吸引力が小さいからである。
【0081】
従って、実施例において、プランジャ13が軸方向の他方側L0から軸方向の一方側L1まで移動するトータルの時間t01は、比較例において、プランジャ13が軸方向の他方側L0から軸方向の一方側L1まで移動するトータルの時間t01’よりも短い。これは、実施例に係わるソレノイド装置の応答性が比較例に係わるソレノイド装置の応答性よりも優れていることを意味する。
【0082】
尚、実施例において、プランジャ13が軸方向の一方側L1から軸方向の他方側L0まで移動する時間t10は、比較例において、プランジャ13が軸方向の一方側L1から軸方向の他方側L0まで移動する時間t10’と同じである。これは、軸方向の一方側L1から軸方向の他方側L0までの移動については、プランジャ13とケース16Bとの間の磁気吸着力が問題とならないからである。
【0083】
結果として、実施例におけるヒステリシス、即ち、磁界の印加時間とプランジャの位置との関係(
図13A)は、比較例におけるヒステリシス、即ち、磁界の印加時間とプランジャの位置との関係(
図13B)に比べて、改善される。
【0084】
<適用例>
上述のソレノイド装置は、圧力制御システムなど、様々なシステムに適用可能である。例えば、自動車の分野では、自動変速機(AT、CVTなど)を駆動するために、油圧が必要である。また、エンジン及びトランスミッションなどの駆動部の潤滑及び冷却のためにも、油圧の発生が必要である。これらの油圧は、ソレノイドバルブにより生成され、ソレノイド装置は、ソレノイドバルブの一部として使用される。
【0085】
以下、上述のソレノイド装置が適用可能なバルブシステムの例のいくつかを説明する。
【0086】
<バルブシステムの第1の例>
図14は、バルブシステムの第1の例を示す。
第1の例は、VFSなどのソレノイドバルブに関する。
【0087】
バルブシステムは、ソレノイド装置20と、バルブ装置30と、を備える。ソレノイド装置20は、例えば、
図1乃至
図11で説明したソレノイド装置である。バルブ装置30は、ソレノイド装置20に結合され、軸方向に移動可能なスプール31を備え、かつ、スプール31の移動量によりバルブ32A,32B,32C,32D,32Eの開閉を制御する。
【0088】
バルブ32A,32B,32C,32D,32Eは、入力圧力(油圧)が入力される入力ポート32Aと、出力圧力(油圧)が出力される出力ポート32Bと、フィードバック圧力が入力されるフィードバックポート32Cと、バルブ装置30内の余分なオイルを排出するドレインポート32Dと、ソレノイド装置20内に潤滑のためのオイルを供給するオイル供給ポート32Eと、を備える。
【0089】
入力圧力と出力圧力との関係は、スプール31の位置により変化する。即ち、入力圧力が一定圧力の場合、例えば、オイルポンプから供給される油圧である場合、出力圧力は、入力圧力を基準に、それよりも低い圧力又は高い圧力をスプール31の位置に応じて任意に生成可能である。
【0090】
フィードバック圧力は、例えば、出力圧力をフィードバックしたもので、出力圧力に等価である。フィードバック圧力がフィードバックポート32Cに入力される理由は、出力圧力のゆらぎ、即ち、油振を防止するためである。
【0091】
バルブ装置30は、さらに、スプール31を軸方向の他方側に付勢する付勢部材(例えば、バネ)33を備える。
【0092】
例えば、ソレノイド装置20が初期状態(非動作状態)にある、即ち、ソレノイドコイルに電流が流れていない場合、付勢部材33の付勢力は、スプール31及びシャフトピン14を軸方向の他方側に付勢する。
【0093】
この状態は、同図の上半分に示される。同図の上半分から明らかなように、ソレノイド装置20が初期状態にある場合、入力ポート32Aと出力ポート32Bとは、スプール31の壁により、互いに分断される。また、バルブ装置30内の余分なオイルは、ドレインポート32Dから排出される。
【0094】
これに対し、例えば、ソレノイド装置20が動作状態にある、即ち、ソレノイドコイルに電流が流れている場合、ソレノイドコイルが発生する磁界は、プランジャ、即ち、シャフトピン14を軸方向の一方側に移動させる移動力を発生させる。従って、この移動力が付勢部材33の付勢力よりも大きければ、シャフトピン14は、軸方向の一方側に移動する。また、スプール31も、シャフトピン14の移動に追従して、軸方向の一方側に移動する。
【0095】
この状態は、同図の下半分に示される。同図の下半分から明らかなように、ソレノイド装置20が動作状態にある場合、入力ポート32Aと出力ポート32Bとは、スプール31の溝を経由して、互いに接続される。また、オイルは、オイル供給ポート32Eを介して、ソレノイド装置20に供給される。
【0096】
ここで、ソレノイド装置20は、既に述べたように、第2のホール120が中心軸100に対して地側に配置され、かつ、接続部151が中心軸100に対して天側に配置される状態で、バルブ装置30に結合される。従って、このようなバルブシステムにおいて、オイル供給ポート32Eからソレノイド装置20内に供給されるオイルにコンタミが含まれていたとしても、コンタミは、ソレノイド装置20のプランジャ室内まで侵入することがない。
【0097】
以上、バルブシステムの第1の例によれば、バルブ開閉の応答性が良好になると共に、コンタミがバルブ装置からソレノイド装置に侵入することを有効に防止できる。
【0098】
<バルブシステムの第2の例>
図15は、バルブシステムの第2の例を示す。
第2の例は、変速機を制御するコントロールバルブに関する。
【0099】
バルブシステムは、変速機40と、変速機40を制御する油圧を発生するコントロールバルブ本体41と、所定の油圧のオイルをコントロールバルブ本体41に供給するオイルポンプ42と、オイルを溜めておくオイルパン43と、を備える。
【0100】
ソレノイドバルブは、コントロールバルブ本体41に取り付けられる。ソレノイドバルブは、オイルポンプ42からの油圧に基づき、変速機40を制御する油圧を生成する。ソレノイドバルブは、例えば、
図14のソレノイドバルブであり、ソレノイド装置20と、バルブ装置30と、を備える。
【0101】
このようなバルブシステムにおいては、複数の油圧が正確に制御されなければならないと同時に、バルブシステムがオイル内に含まれるコンタミ(金属粉,酸化変質物,塵など)から十分に保護されなければならない。
【0102】
本例では、ソレノイド装置20は、既に述べたように、コンタミがプランジャ室内に侵入し難い構造を有する(
図14参照)。従って、本例のバルブシステムによれば、オイル内のコンタミがプランジャ室内に侵入することを防ぎつつ、複数の油圧の制御が正確に行える。即ち、ソレノイド装置の呼吸が十分に行えるため、バルブシステムでのバルブ開閉の応答性が向上する。これは、複数の油圧が正確かつ高速に生成されることを意味する。
【0103】
以上、バルブシステムの第2の例によれば、バルブ開閉の応答性が良好になると共に、コンタミがバルブ装置からソレノイド装置に侵入することを有効に防止できる。
【0104】
<バルブシステムの第3の例>
図16は、バルブシステムの第3の例を示す。
第3の例は、ソレノイド装置が液体又は気体の圧力、例えば、油圧を制御するバルブボディに取り付け可能なバルブシステムに関する。
【0105】
バルブシステムは、ソレノイド装置20と、バルブボディ50と、を備える。ソレノイド装置20は、例えば、
図1乃至
図11で説明したソレノイド装置である。ソレノイド装置20は、例えば、ネジ162により、バルブボディ50に固定される。ネジ162は、例えば、ソレノイド装置20のフランジ部161に取り付けられる。
【0106】
バルブボディ50は、軸方向に移動可能なスプール51を備え、かつ、スプール51の移動量によりバルブ52A,52B,52C,52D,52Eの開閉を制御する。
【0107】
バルブ52A,52B,52C,52D,52Eは、入力圧力(油圧)が入力される入力ポート52Aと、出力圧力(油圧)が出力される出力ポート52Bと、フィードバック圧力が入力されるフィードバックポート52Cと、バルブボディ50内の余分なオイルを排出するドレインポート52Dと、ソレノイド装置20内に潤滑のためのオイルを供給するオイル供給ポート52Eと、を備える。
【0108】
入力圧力と出力圧力との関係は、スプール51の位置により変化する。即ち、入力圧力が一定圧力の場合、例えば、オイルポンプから供給される油圧である場合、出力圧力は、入力圧力を基準に、それよりも低い圧力又は高い圧力をスプール51の位置に応じて任意に生成可能である。
【0109】
フィードバック圧力は、例えば、出力圧力をフィードバックしたもので、出力圧力に等価である。フィードバック圧力がフィードバックポート52Cに入力される理由は、出力圧力のゆらぎ、即ち、油振を防止するためである。
【0110】
バルブボディ50は、さらに、スプール51を軸方向の他方側に付勢する付勢部材(例えば、バネ)53を備える。
【0111】
例えば、ソレノイド装置20が初期状態(非動作状態)にある、即ち、ソレノイドコイルに電流が流れていない場合、付勢部材53の付勢力は、スプール51及びシャフトピン14を軸方向の他方側に付勢する。
【0112】
この状態は、同図の上半分に示される。同図の上半分から明らかなように、ソレノイド装置20が初期状態にある場合、入力ポート52Aと出力ポート52Bとは、スプール51の壁により、互いに分断される。また、バルブボディ50内の余分なオイルは、ドレインポート52Dから排出される。
【0113】
これに対し、例えば、ソレノイド装置20が動作状態にある、即ち、ソレノイドコイルに電流が流れている場合、ソレノイドコイルが発生する磁界は、プランジャ、即ち、シャフトピン14を軸方向の一方側に移動させる移動力を発生させる。従って、この移動力が付勢部材53の付勢力よりも大きければ、シャフトピン14は、軸方向の一方側に移動する。また、スプール51も、シャフトピン14の移動に追従して、軸方向の一方側に移動する。
【0114】
この状態は、同図の下半分に示される。同図の下半分から明らかなように、ソレノイド装置20が動作状態にある場合、入力ポート52Aと出力ポート52Bとは、スプール51の溝を経由して、互いに接続される。また、オイルは、オイル供給ポート52Eを介して、ソレノイド装置20に供給される。
【0115】
ここで、ソレノイド装置20は、既に述べたように、第2のホール120が中心軸100に対して地側に配置され、かつ、接続部151が中心軸100に対して天側に配置される状態で、バルブボディ50に結合される。従って、このようなバルブシステムにおいて、オイル供給ポート52Eからソレノイド装置20内に供給されるオイルにコンタミが含まれていたとしても、コンタミは、ソレノイド装置20のプランジャ室内まで侵入することがない。
【0116】
以上、バルブシステムの第3の例によれば、バルブ開閉の応答性が良好になると共に、コンタミがバルブ装置からソレノイド装置に侵入することを有効に防止できる。
【0117】
<むすび>
以上、説明したように、本発明の実施形態によれば、プランジャの周面長さを短くすることなく、プランジャとケースとの磁気吸着を抑えることができる。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。これら実施形態は、上述以外の様々な形態で実施することが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更など、を行える。これら実施形態及びその変形は、本発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物についても、本発明の範囲及び要旨に含まれる。