【解決手段】コイル部品10の積層基板31には、複数のスルーホールHが配列されていて、パターン配線315は、中心孔314の周囲を取り巻くループ状部分315aと、そのループ状部分315aから延伸する一対の端部配線部315b1,315b2を備えていて、複数のスルーホールHのうち隣り合う2つのスルーホールHは、その開口の少なくとも一部が一対の端部配線部315b1,315b2に差し掛かって端部配線部315b1,315b2と電気的に接続された状態で積層基板31を貫通している。また、一対の端部配線部315b1,315b2のうち、一方の端部配線部31b1における一方のスルーホールHの開口は、一方の端部配線部315b1の交差方向における中心よりも、他方の端部配線部315b2に近接した位置に設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施の形態に係るコイル部品10について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じてXYZ直交座標系を用いて説明することとする。XYZ直交座標系においてX方向は、積層基板31〜39の基板平面においてスルーホール列312〜392,313〜393に平行な方向を指し、X1側は
図1において右下側を指し、X2側はそれとは逆の左上側を指す。また、Y方向は
図1において積層基板31〜39のスルーホール列312〜392,313〜393と直交する方向を指し、Y1側は
図1において右上側を指し、Y2側はそれとは逆の左下側を指す。また、Z方向は積層基板および一対のコア20A,20Bが重ねられる方向を指し、Z1側は
図1において紙面上側(コア20Aが位置する側)を指し、Z2側は
図1において紙面下側(コア20Bが位置する側)を指す。
【0017】
図1は、コイル部品10の構成を示す分解斜視図である。
図2は、コイル部品10を示す斜視図である。
図1に示すように、コイル部品10は、一対のコア20A,コア20Bと、複数の積層基板31〜39により構成される積層基板体30と、接続ピンとを備えている。
図1に示す構成では、積層基板31〜39は9枚存在しており、それらが位置合わせされた状態で積層されている。
【0018】
一対のコア20A,20Bは、たとえばERコアであり、底部21と、その底部21の長手方向のそれぞれの端部から立設している一対の周壁22と、底部21の長手方向の中央から立設している柱脚部23とを有している。コア20Aの周壁22と、コア20Bの周壁22とが突き合わされ、さらにコア20Aの柱脚部23とコア20Bの柱脚部23とが突き合わされることで、後述する積層基板31〜39に形成されているコイルパターンの中心と外周側とをループ状に取り囲む閉磁路が形成される。
【0019】
一対の周壁22は、後述する積層基板31〜39の位置決め凹部316〜396に嵌まり込む。また、柱脚部23は、
図1に示す構成では円柱状に設けられているが、角柱状等、その他の形状であっても良い。柱脚部23が、角柱状等のように円柱状以外の場合には、後述する積層基板31〜39の中心孔314〜394も、その柱脚部23を挿通可能な形状に形成される。
【0020】
なお、周壁22と柱脚部23とが底部21から突出している高さは、同程度に設けられている。柱脚部23は後述する積層基板体30(積層基板31〜39)の中心孔314〜394に入り込み、周壁22と柱脚部23との間の空間には積層基板体30が位置する。
【0021】
また、コア20は、その材質を磁性材としているが、磁性材としては、例えば、ニッケル系のフェライトまたはマンガン系のフェライト等の種々のフェライト、パーマロイ、センダスト等、各種の磁性材料および各種の磁性材料の混合物を用いることが可能である。
【0022】
次に、積層基板体30について説明する。
図1に示すように、積層基板体30は、複数の積層基板31〜39が積層されることにより構成されている。積層基板体30は、本実施の形態では9枚の積層基板31〜39によって構成されているが、積層基板体30を構成する積層基板の枚数は9枚に限られるものではなく、2枚以上であれば何枚設けられていても良い。
【0023】
本実施の形態では、複数の積層基板31〜39について、上側(Z1側)から下側(Z2側)に向かうにつれて、1層目の積層基板31、2層目の積層基板32、3層目の積層基板33、4層目の積層基板34、5層目の積層基板35、6層目の積層基板36、7層目の積層基板37、8層目の積層基板38、9層目の積層基板39が順次積層されている。1層目の積層基板31、3層目の積層基板33、5層目の積層基板35、7層目の積層基板37および9層目の積層基板39は、トランスを構成する2次側コイルに対応した積層基板である。また、2層目の積層基板32、4層目の積層基板34、6層目の積層基板36および8層目の積層基板38は、トランスを構成する1次側コイルに対応した積層基板である。
【0024】
なお、積層基板を積層する態様は、
図1のように、1次側の積層基板32,34,36,38と2次側の積層基板31,33,35,37,39とを交互に積層するものに限られるものではなく、たとえばいずれかの部位で1次側または二次側の積層基板が隣接して積層される等、どのような積層形態であっても良い。また、1次側の積層基板を連続的に積層させた後に、2次側の積層基板を連続して積層させても良い。
【0025】
図3は、1層目の積層基板31(2次側)の構成を示す平面図である。なお、1層目の積層基板31のうちスルーホールHを除く各部については、基本的に符号「31」と、その他の数字またはアルファベットを組み合わせたものを付して説明する。
【0026】
図3に示すように、積層基板31は、電気的に絶縁性であるガラスエポキシ等の樹脂や紙基材を材質とするプリント基板311を備えている。また、プリント基板311には、複数のスルーホールHから構成されるスルーホール列312,313が設けられている。スルーホール列312,313には、1次側トランスの電気的な構成要素となる1次側スルーホール列312と、2次側トランスの電気的な構成要素となる2次側スルーホール列313とが存在している。
【0027】
1次側スルーホール列312と2次側スルーホール列313とは、プリント基板311のうち、後述するパターン配線315を挟んで離れた部位に形成されている。本実施の形態では、1次側スルーホール列312は、プリント基板311のうちY2側の縁部分に近接して設けられている。また、2次側スルーホール列313は、プリント基板311のうちY1側の縁部分に近接して設けられている。
【0028】
また、本実施の形態では、1次側スルーホール列312は、合計7個のスルーホールHを備えている。また、2次側スルーホール列313は、合計6個の複数のスルーホールHを備えている。それぞれのスルーホールHは、プリント基板311を貫通するように設けられていて、プリント基板311の表面および裏面で開口している。また、スルーホールHの内壁には、電気的な導電性を備えるめっきが塗布されているが、後述する金属ピンの挿入等によって電気的な導電性が確保される場合には、めっきを塗布しない構成としても良い。
【0029】
以下の説明では、スルーホールHは、プリント基板311をZ方向に沿うように貫通しているものとし、スルーホールHの開口を含め、そのスルーホールHのXY平面における位置は、同じ位置にあるものとする。しかしながら、スルーホールHの開口に対して、スルーホールHの他の部位のXY平面における位置が若干ずれた構成であっても良い。
【0030】
なお、1次側スルーホール列312を構成する、合計7個のスルーホールHのうち、1次側スルーホール列312の両端に位置するスルーホールHは、本実施の形態では、他の積層基板32,34,36,38との導電接続用として用いられていない。したがって、両端の合計2つのスルーホールHは、たとえば取付固定用や位置決め用の孔部として用いることができる。しかしながら、1次側スルーホール列312の両端のスルーホールHを、導電接続用として用いても良い。
【0031】
また、以下の説明では、1次側のスルーホールHを、スルーホールHFと称呼し、2次側のスルーホールHを、スルーホールHSと称呼する。また、1層目に位置する積層基板31における7個のスルーホールHについて、両端のスルーホールHを除いた合計5つのスルーホールHFをそれぞれ区別して称呼するときは、X2側からX1側に向かい、スルーホールHF11、スルーホールHF12、スルーホールHF13、スルーホールHF14、スルーホールHF15と称呼する。同様に、1層目に位置する積層基板31における6個のスルーホールHSをそれぞれ区別して称呼するときは、X2側からX1側に向かい、スルーホールHS11、スルーホールHS12、スルーホールHS13、スルーホールHS14、スルーホールHS15、スルーホールHS16と称呼する。
【0032】
プリント基板311の中央には、該プリント基板311を貫通する中心孔314が設けられていて、この中心孔314に柱脚部23が差し込まれている。本実施の形態では、中心孔314は、円柱状の柱脚部23に対応して円形状に設けられているが、中心孔314は、円形状以外の形状であっても良い。
【0033】
また、プリント基板311の表面側(Z1側の面側)には、パターン配線315が設けられている。パターン配線315は、たとえば銅のような金属薄膜をエッチング等することで形成される所定幅の配線部分であり、電気的な導電性を備える。
図3に示すように、パターン配線315は、中心孔314の周囲を取り巻くようなループ状部分315aを有している。ループ状部分315aは、完全な円形状ではなく、円形の一部を切り欠いた形態に設けられていて、それによりループ状部分315aは両端を有する構成となっている。なお、ループ状部分315aは、中心孔314の円周方向において1周の少なくとも3/4以上設けられている。
【0034】
また、パターン配線315は、ループ状部分315aのそれぞれの端部から延伸する一対の端部配線部315b1,315b2を備えている。これらのうち、一方の端部配線部315b1は、スルーホールHS11の開口の周囲を取り囲むように設けられている。すなわち、スルーホールHS11は、一方の端部配線部315b1を貫通するように設けられている。同様に、他方の端部配線部315b2は、スルーホールHF12の開口の周囲を取り囲むように設けられている。すなわち、スルーホールHS12は、他方の端部配線部315b2を貫通するように設けられている。
【0035】
ここで、端部配線部315b1および端部配線部315b2における、スルーホールHS11およびスルーホールHS12の位置を、
図4に示す。
図4は、一対の端部配線部315b1,315b2を拡大して示す部分的な平面図である。
図4に示すように、端部配線部315b1の幅方向(X方向)において、スルーホールHS11は、端部配線部315b1の幅方向(X方向)の中央よりも、他方側(X1側)に片寄るように設けられている。また、端部配線部315b2の幅方向(X方向)において、スルーホールHS12は、端部配線部315b2の幅方向(X方向)の中央よりも、一方側(X2側)に片寄るように設けられている。
【0036】
すなわち、端部配線部315b1の幅方向(X方向)の中央と、端部配線部315b2の幅方向(X方向)の中央の間の間隔LP1よりも、スルーホールHS11の中央とスルーホールHS12の中央の間隔LC1の方が、小さくなるように設けられている。したがって、スルーホールHS11が端部配線部315b1の幅方向(X方向)の中央に位置し、かつスルーホールHS12が端部配線部315b2の幅方向(X方向)の中央に位置する場合と比較して、スルーホールHS11とスルーホールHS12の間のピッチを狭くすることが可能となっている。
【0037】
なお、積層基板31には、位置決め凹部316も設けられている。位置決め凹部316は、矩形状のプリント基板311の4辺のうち、1次側スルーホール列312および2次側スルーホール列313が設けられている2辺を除いた残りの2辺を、所定だけ中心孔314に向けて凹ませた形態に設けられている。この位置決め凹部316には、上述した周壁22が位置することで、積層基板体30に対するコア20の位置が規定される。
【0038】
ここで、スルーホールHS11は、外部の導電部分に接続されるが、スルーホールHS12は、3層目の2次側の積層基板33におけるスルーホールHS32と、金属ピン50を介して電気的に接続されている。以下、金属ピン50を介して1層目の積層基板31と電気的に接続される3層目の積層基板33について説明する。
【0039】
図5は、3層目の積層基板33(2次側)の構成を示す平面図である。また、
図6は、一対の端部配線部335b1,335b2を拡大して示す部分的な平面図である。以下の説明では、3層目の積層基板33のうち、1層目の積層基板31と共通の構成については、その説明を省略する。また、3層目の積層基板33のうちスルーホールHを除く積層基板33の各部については、基本的に1層目の符号「31」に代えて符号「33」を付し、その他の数字またはアルファベットを組み合わせたものをさらに付して説明する。
【0040】
図3と
図5の比較から明らかなように、スルーホールHS12とスルーホールHF32とは、X方向において同じ位置に位置するように設けられている。また、
図6に示すように、端部配線部335b1の幅方向(X方向)において、スルーホールHS32は、端部配線部335b1の幅方向(X方向)の中央よりも、他方側(X1側)に片寄るように設けられている。また、端部配線部315b2の幅方向(X方向)において、スルーホールHS33は、端部配線部315b2の幅方向(X方向)の中央よりも、一方側(X2側)に片寄るように設けられている。
【0041】
すなわち、端部配線部335b1の幅方向(X方向)の中央と、端部配線部335b2の幅方向(X方向)の中央の間の間隔LP3よりも、スルーホールHS32の中央とスルーホールHS33の中央の間隔LC3の方が、小さくなるように設けられている。この場合も、スルーホールHS32が端部配線部335b1の幅方向(X方向)の中央に位置し、かつスルーホールHS33が端部配線部335b2の幅方向(X方向)の中央に位置する場合と比較して、スルーホールHS32とスルーホールHS33の間のピッチを狭くすることが可能となっている。
【0042】
なお、スルーホールHS12とスルーホールHS32は、XY平面において同じ位置に位置している。ここで、
図4と
図6の比較から明らかなように、スルーホールHS12とスルーホールHS32を基準にとると、端部配線部315b2はスルーホールHS12に対して他方側(X1側)に片寄るように位置している。また、スルーホールHS12と同じXY平面において位置しているスルーホールHS32に対して、端部配線部335b1は一方側(X2側)に片寄るように位置している。
【0043】
以上のように、1層目の積層基板31においては、端部配線部315b1と端部配線部315b2の間の間隔LP1よりも、スルーホールHS11とスルーホールHS12の間の間隔LC1が狭く設けられている。また、3層目の積層基板33においては、端部配線部335b1と端部配線部335b2の間の間隔LP3よりも、スルーホールHS32とスルーホールHS33の間の間隔LC3が狭く設けられている。
【0044】
図7は、5層目の積層基板35(2次側)の構成を示す平面図である。以下の説明では、5層目の積層基板35のうち、1層目の積層基板31と共通の構成については、その説明を省略する。同様に、
図8および
図9にそれぞれ示す7層目および9層目のそれぞれの積層基板37,39のうち、1層目の積層基板31と共通の構成については、その説明を省略する。
【0045】
また、5層目の積層基板35のうちスルーホールHを除く積層基板35の各部については、基本的に1層目の符号「31」に代えて符号「33」を付し、その他の数字またはアルファベットを組み合わせたものをさらに付して説明する。同様に、
図8および
図9にそれぞれ示す7層目および9層目のそれぞれの積層基板37,39のうちスルーホールHを除く積層基板37,39の各部についても、基本的に1層目の符号「31」に代えて符号「37」、「39」を付し、その他の数字またはアルファベットを組み合わせたものをさらに付して説明する。
【0046】
図7から明らかなように、上記の1層目の積層基板31および3層目の積層基板33と同様に、5層目の積層基板35においても、端部配線部355b1と端部配線部355b2の間の間隔LP5よりも、スルーホールHS53とスルーホールHS54の間の間隔LC5が狭く設けられている。
【0047】
図8は、7層目の積層基板37(2次側)の構成を示す平面図である。この7層目の積層基板37においても、端部配線部375b1と端部配線部375b2の間の間隔LP7よりも、スルーホールHS74とスルーホールHS75の間の間隔LC7が狭く設けられている。
【0048】
図9は、9層目の積層基板39(2次側)の構成を示す平面図である。9層目の積層基板39においても、端部配線部395b1と端部配線部395b2の間の間隔LP9よりも、スルーホールHS95とスルーホールHS96の間の間隔LC9が狭く設けられている。
【0049】
以上が、2次側の積層基板31,33,35,37,39における間隔LP1,LP3,LP5,LP7,LP9と、間隔LC1,LC3,LC5,LC7,LC9の間の関係である。
【0050】
次に、1次側の積層基板32,34,36,38の構成について、
図10から
図13に示す。なお、
図1から明らかなように、1次側の積層基板32,34,36,38は合計4枚であり、合計5枚の2次側の積層基板31,33,35,37,39よりも枚数が1枚少なくなっている。以下の説明では、
図10から
図13にそれぞれ示す2層目、4層目、6層目および8層目のそれぞれの積層基板32,34,36,38のうち、1層目の積層基板31と共通の構成については、その説明を省略する。
【0051】
また、2層目、4層目、6層目および8層目のそれぞれの積層基板32,34,36,38のうちスルーホールHを除く積層基板32,34,36,38の各部については、基本的に1層目の符号「31」に代えて符号「32」、「34」、「36」、「38」を付し、その他の数字またはアルファベットを組み合わせたものをさらに付して説明する。
【0052】
図10は、2層目の積層基板32(1次側)の構成を示す平面図である。
図10に示すように、端部配線部325b1の幅方向(X方向)において、スルーホールHF21は、端部配線部325b1の幅方向(X方向)の中央に位置している。また、端部配線部325b2の幅方向(X方向)において、スルーホールHF22は、端部配線部325b2の幅方向(X方向)の中央に位置している。このため、1次側のスルーホールHF21とスルーホールHF22の間のピッチは、2次側のスルーホールHS11とスルーホールHS12の間のピッチよりも広くなっている。
【0053】
このように、1次側のスルーホールHF21とスルーホールHF22との間の間隔を、2次側のスルーホールHS11とスルーホールHS12の間のピッチよりも広くしたのは、次の理由による。すなわち、
図1に示す構成では、1次側の積層基板32,34,36,38は合計4枚であるのに対し、2次側の積層基板31,33,35,37,39は合計5枚である。このため、それぞれの1次側の積層基板32,34,36,38におけるスルーホールHの個数は、それぞれ5つずつである。一方、それぞれの2次側の積層基板31,33,35,37,39におけるスルーホールHの個数は、それぞれ6つずつである。このため、それぞれの1次側の積層基板32,34,36,38においては、それぞれの2次側の積層基板31,33,35,37,39よりも、スルーホールHの個数が1つ少なくなっている。
【0054】
このため、1次側のスルーホールHF21とスルーホールHF22の間のピッチ(間隔LP2)は、2次側のスルーホールHS11とスルーホールHS12の間のピッチ(間隔LC2)よりも広くすることが可能となっている。
【0055】
ただし、1次側のスルーホールHF21とスルーホールHF22の間のピッチは、2次側のスルーホールHS11とスルーホールHS12の間のピッチと同様の構成とすることも勿論可能である。すなわち、スルーホールHF21が端部配線部325b1の幅方向(X方向)の中央よりも、他方側(X1側)に片寄るように設ける構成とすることができる。また、端部配線部325b2の幅方向(X方向)において、スルーホールHF22は、端部配線部325b2の幅方向(X方向)の中央よりも、一方側(X2側)に片寄るように設ける構成とすることができる。それにより、端部配線部325b1の幅方向(X方向)の中央と、端部配線部325b2の幅方向(X方向)の中央の間の間隔LP2よりも、スルーホールHF21の中央とスルーホールHF22の中央の間隔LC2の方が、小さくなるように設けることができる。
【0056】
次に、4層目、6層目および8層目の積層基板34,36,38について説明する。
図11は、4層目の積層基板34(1次側)の構成を示す平面図である。
図12は、6層目の積層基板36(1次側)の構成を示す平面図である。
図13は、8層目の積層基板38(1次側)の構成を示す平面図である。
【0057】
これら4層目、6層目および8層目の積層基板34,36,38については、
図10の2層目の積層基板32に関して説明した事項が適用可能である。したがって、その詳細についての説明は省略する。
【0058】
以上のような構成のコイル部品10を製作する場合、まず、積層基板31〜39を、位置合わせした状態で積層して積層基板体30を形成する。その後に、それぞれのスルーホールHに、金属ピン50を挿入する。また、金属ピン50の挿入に前後して、積層基板体30に対してコア20A,20Bを位置合わせした状態で取り付ける。このとき、周壁22は、各積層基板31〜39に設けられている位置決め凹部316〜396に位置させると共に、柱脚部23も各積層基板31〜39に設けられている中心孔314〜394に位置させる。このようにして、コイル部品10が形成される。
【0059】
<効果>
以上のような構成のコイル部品10によると、積層基板31〜39には、複数のスルーホールHが配列されていて、そのパターン配線315は、積層基板を貫通する中心孔の周囲を取り巻くループ状部分315a〜395aと、該ループ状部分315a〜395aからスルーホールHの配列方向と交差する交差方向に延伸すると共に互いに所定の絶縁距離だけ隔てて対向する一対の端部配線部315b1〜395b1,315b2〜395b2を備えていて、複数のスルーホールHのうち隣り合う2つのスルーホールHは、その開口の少なくとも一部が一対の端部配線部315b1〜395b1,315b2〜395b2に差し掛かって端部配線部315b1〜395b1,315b2〜395b2と電気的に接続された状態で積層基板31〜39を貫通している。また、一対の端部配線部315b1〜395b1,315b2〜395b2のうち、一方の端部配線部315b1〜355b1における一方のスルーホールHの開口は、一方の端部配線部315b1〜355b1の交差方向における中心よりも、他方の端部配線部315b2〜395b2に近接した位置に設けられている。
【0060】
このような構成とすることにより、一方の端部配線部315b1〜355b1に位置するスルーホールHと、と他方の端部配線部315b2〜395b2に位置するスルーホールHとの間の間隔LP1〜LP5は、一方の端部配線部315b1〜355b1と他方の端部配線部315b2〜395b2の間の間隔LC1〜LC5よりも、狭くすることが可能となる。すなわち、スルーホールH間のピッチを、一対の端部配線部315b1〜355b1,315b2〜355b2間のピッチよりも狭くすることができる。
【0061】
このため、スルーホールH間のピッチを狭くすることができる分だけ、コイル部品10の小型化を図ることが可能となる。また、同じサイズのコイル部品10においては、現状のものよりもスルーホールHおよびそのスルーホールHに差し込まれる金属ピン50の数を多くすることができる。それにより、コイルパターンの巻数を多くすることが可能となり、コイル部品10の特性を向上させることが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態では、一対の端部配線部315b1〜355b1,315b2〜355b2のうち、他方の端部配線部315b2〜355b2における他方のスルーホールHの開口は、他方の端部配線部315b2〜355b2の交差方向(たとえばX方向)における中心よりも、一方の端部配線部315b1〜355b1に近接した位置に設けられている。
【0063】
このため、スルーホールH間のピッチを、一対の端部配線部315b1〜355b1,315b2〜355b2間のピッチよりも一層狭くすることができる。したがって、スルーホールH間のピッチを狭くすることができる分だけ、コイル部品10の小型化を一層図ることが可能となる。また、同じサイズのコイル部品10においては、現状のものよりもスルーホールHおよびそのスルーホールHに差し込まれる金属ピン50の数を多くすることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、スルーホールHは、その開口の全体が端部配線部315b1〜355b1,315b2〜355b2に差し掛かっていて、該開口の周囲が端部配線部315b1〜355b1,315b2〜355b2で囲まれている。
【0065】
このため、層の異なるパターン配線315間での電気的な接続の確実性を向上させることが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態では、パターン配線315〜395は、中心孔314〜394の円周方向において1周の少なくとも3/4以上設けられていることが好ましい。このように構成する場合には、パターン配線315〜395は中心孔314〜394の大部分を周状に囲む状態となる。それにより、各層のパターン配線315〜395を金属ピン50を介して電気的に接続することで、コイルとして良好に機能させることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、積層基板31〜39には、パターン配線365〜395がトランスの1次側コイルを構成する1次側の積層基板36〜39と、パターン配線315〜355がトランスの2次側コイルを構成する2次側の積層基板31〜35とが設けられていて、1次側の積層基板36〜39と2次側の積層基板31〜35とが交互に積層されている。
【0068】
このため、少なくとも2次側の積層基板31〜35において、スルーホールH間の間隔を狭くした狭ピッチ化を図ることにより、同じサイズのコイル部品10であれば、現状のコイル部品と比較して2次側の積層基板31〜35の積層可能な枚数を増やすことができる。それにより、2次側コイルの巻数を増やすことが可能となる。また、2次側の積層基板31〜35の積層枚数が、現状のコイル部品と比較して増加しないものとする場合には、コイル部品の小型化を図ることが可能となる。
【0069】
<変形例>
上述の実施の形態では、スルーホールHは、その開口の全体が端部配線部315b1〜355b1,315b2〜355b2に差し掛かっていて、該開口の周囲が端部配線部315b1〜355b1,315b2〜355b2で囲まれる構成としている。しかしながら、このような構成に代えて、
図13に示すような構成としても良い。
図14は、本発明の変形例に係るコイル部品の一対の端部配線部315b3,315b4を拡大して示す部分的な平面図である。
【0070】
図14に示す構成では、スルーホールHは、その開口の一部が端部配線部315b3,315b4に差し掛かり、該開口の周囲の一部が端部配線部315b3,315b4で囲まれている。また、スルーホールHの開口の残りの部分が端部配線部315b3,315b4から外れる構成となっている。
【0071】
この構成を採用する場合、スルーホールH間のピッチを、一対の端部配線部315b3,315b4間のピッチよりも一層狭くすることができる。したがって、スルーホールH間のピッチを狭くすることができる分だけ、コイル部品10の小型化を一層図ることが可能となる。また、同じサイズのコイル部品10においては、現状のものよりもスルーホールHおよびそのスルーホールHに差し込まれる金属ピン50の数を多くすることができる。
【0072】
また、上述の各実施の形態では、積層基板31〜39は、リジットのプリント基板311〜391を用いたものとしている。しかしながら、プリント基板は、リジットに限られるものではなく、フレキシブルプリント基板であっても良い。
【0073】
また、上述の各実施の形態では、コア20は、ERコアとしている。しかしながら、コアは、E型コアを2つ用いたものや、E型コアとI型コアを用いたものや、その他のもの等、種々変更可能である。
【0074】
また、上述の実施の形態では、一方の端部配線部315b1〜355b1においては、スルーホールHは、端部配線部315b1〜355b1の幅方向(X方向)の中央よりも、他方側(X1側)に片寄るように設けられている。また、端部配線部315b2の幅方向(X方向)において、スルーホールHは、端部配線部315b2〜315b2の幅方向(X方向)の中央よりも、一方側(X2側)に片寄るように設けられている。
【0075】
しかしながら、このような構成を採用せずに、一対の端部配線部315b1〜355b1,315b2〜355b2のうち、一方の端部配線部315b1〜355b1に位置するスルーホールHのみを、他方側(X1側)に片寄るようにすると共に、他方の端部配線部315b2〜355b2に位置するスルーホールHは、その端部配線部315b2〜355b2の幅方向の中央に位置する構成としても良い。また、一対の端部配線部315b1〜355b1,315b2〜355b2のうち、他方の端部配線部315b2〜355b2に位置するスルーホールHのみを、他方側(X1側)に片寄るようにすると共に、一方の端部配線部315b1〜355b1に位置するスルーホールHは、その端部配線部315b1〜355b1の幅方向の中央に位置する構成としても良い。また、1次側スルーホール列312の各スルーホールHについても、同様の構成を採用しても良い。
【0076】
また、上述の実施の形態では、2次側の積層基板31〜35の枚数が、1次側の積層基板36〜39の枚数よりも多くなっている。しかしながら、1次側の積層基板の枚数を2次側の積層基板の枚数よりも多くすることも可能であり、また1次側の積層基板の枚数と2次側の積層基板の枚数を同じ枚数とすることも可能である。これらの場合にも、1次側の積層基板および2次側の積層基板の内の少なくとも一方に対して、上述したようなスルーホールHの狭ピッチ化を図る構成とすることは勿論可能である。
【0077】
また、上述の実施の形態におけるコイル部品は、トランスに限られるものではなく、インダクタやチョークコイル等、その他のコイル部品に本発明を適用することが可能である。