【解決手段】気体を供給する気体供給部11に一端側が接続された供給流路20と、供給流路20に配置された弁12と、供給流路20の他端側に設けられた吹出口32と、供給流路20において弁12から吹出口32の間に形成される基幹流路21に連通するとともに、基幹流路21内の気体の固有振動数と同じ固有振動数の気体を内部に有する空気室55と、を備えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に記載のパーツフィーダでは、弁を開閉することにより通気流路に圧力振動が生じ、この圧力振動の振動数が通気流路内の気体に固有の固有振動数と等しくなると、通気流路内の気体の圧力が共振により大きく振動する。気体が大きく振動すると通気流路に負圧が生じ、通気流路の吹出口にワークが引き寄せられる。
【0006】
この点、ワークの寸法が大きい場合には負圧の影響が小さく、吹出口がワークを引き寄せられない。しかしワークの微小化が進むと負圧の影響が大きくなり、ワークが吹出口に引き寄せられる問題が生じる。これにより、不適切な姿勢のワークを搬送路上から排除または搬送路上で反転させて姿勢矯正させることができない。
【0007】
そこで、この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、共振を防止することで負圧が生じるのを防ぎ、吹出口に搬送路上のワークが引き寄せられるのを防止できるエアノズル、及びこれを備えたパーツフィーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエアノズルは、気体を供給する気体供給部に一端側が接続された供給流路と、前記供給流路に配置された弁と、前記供給流路の他端側に設けられた吹出口と、前記供給流路において前記弁から前記吹出口の間に形成される基幹流路に連通するとともに、前記基幹流路内の気体の固有振動数と同じ固有振動数の気体を内部に有する空気室と、を備えた。
【0009】
上記構成により、弁を開閉することにより生じる基幹流路の圧力振動が、基幹流路内の気体の固有振動数と等しくなることによる共振を防止できる。これにより、共振に起因して基幹流路内で負圧が生じるのを防ぎ、吹出口に搬送路上のワークが引き寄せられるのを防止できる。
【0010】
本発明のエアノズルにおいて、前記基幹流路と前記空気室とは、前記空気室の断面より小さい断面の接続部で接続されたことが好ましい。これにより、共振および共振に起因する負圧の発生を防止するための空気室の体積を小さくすることができる。
【0011】
また、このとき、面同士が接合して配置された本体部材と補助部材を備え、前記基幹流路は、前記本体部材と前記補助部材の接合部に形成され、前記吹出口に接続された吹出口側流路と、前記弁と前記本体部材を接続する外部流路と、前記本体部材の内部に形成され、前記吹出口側流路と前記外部流路を接続する内部流路と、を有し、前記空気室が前記本体部材に形成されてもよい。
【0012】
エアノズルでは、搬送路上を搬送されるワークの大きさや処理内容に応じて吹出口から噴出される気体の噴出量を変える必要がある。気体の噴出量を変えるため、内部流路の形状が異なる複数の本体部材を用意する。このとき、内部流路の形状に応じて共振を防止する空気室を予め、それぞれの本体部材内に形成しておく。これにより、補助部材を交換することなく、ワークの大きさや処理内容に応じて本体部材を交換するだけで、共振を防止しつつワークへの噴出量を変えることができる。
【0013】
パーツフィーダが、ワークを搬送する搬送路と、上記エアノズルとを備え、前記吹出口が、前記搬送路に気体を吹出し可能に配置された。これによりパーツフィーダにおいて、共振に起因して基幹流路内で負圧が生じるのを防ぎ、吹出口に搬送路上のワークが引き寄せられるのを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明によると、弁を開閉することにより生じる基幹流路の圧力振動が、基幹流路内の気体の固有振動数と等しくなることによる共振を防止できる。これにより、共振に起因して基幹流路内で負圧が生じるのを防ぎ、吹出口に搬送路上のワークが引き寄せられるのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0017】
図1および
図2に示すように、パーツフィーダ1は、搬送路2に沿って複数のワークWを搬送するものであり、図示しない良否判別手段によりワークWの姿勢等を判別して良否を判別する。本実施形態では、良否判断手段としてカメラを用いる。不良と判別されたワークWは、エアノズル10の吹出口32から噴出される圧縮空気により、搬送路2に設定された所定の処理位置で搬送路2上から排除または搬送路2上で反転して姿勢矯正される。
【0018】
図3に示すようにエアノズル10は、気体である圧縮空気を供給する圧縮空気源(気体供給部)11に一端側が接続された供給流路20と、供給流路20の途中に配置された弁である電磁弁12と、供給流路20の他端側に設けられた吹出口32と、後述するブロック14内に形成された空気室55とを備えている。
【0019】
電磁弁12は通電されないとき供給流路20を閉じるので、圧縮空気源11の圧縮空気が吹出口32から噴出されない。電磁弁12が通電されることにより供給流路20を開放し、圧縮空気源11から供給された圧縮空気が吹出口32からワークWに向かって噴出される。
【0020】
図4を併せて参照すると、ブロック14は図中上方に配置された直方体形状の本体ブロック(本体部材)15と、下方に配置された補助部材17とからなる。この補助部材17は、パーツフィーダ1に一体に設けられている。本体ブロック15の下面16と補助部材17の上面18とが向かい合って接合されることで、1つのブロック14を構成している。以下、本体ブロック15の下面16と補助部材17の上面18をまとめて、ブロック14の接合部と称する。
【0021】
供給流路20は、電磁弁12より上流に配置された上流側流路22と、電磁弁12より下流に配置された基幹流路である下流側流路21とから構成されている。上流側流路22は、圧縮空気源11と電磁弁12を接続する。下流側流路21は、電磁弁12から吹出口32まで延びている。下流側流路21は、電磁弁12とブロック14(本体ブロック15)を接続する外部流路23と、吹出口32に接続された吹出口側流路43と、吹出口側流路43と外部流路23を接続する内部流路30とを備えている。
【0022】
内部流路30は本体ブロック15の内部に形成され、上流から下流に向かって順に配置された第1流路35と第2流路40を有する。第1流路35は、本体ブロック15の内部に横たわって形成された円柱形状の空間である。この第1流路35は、内部流路30の吹出口32と反対側の端部に形成された流路入り口31から本体ブロック15の内側に向かって直線状に延び、本体ブロック15の内部で終端している。第1流路35が終端する近傍には、第2流路40と接続する開口36が形成されている。第1流路35は、外部流路23と第2流路40を接続している。外部流路23と第1流路35とは、流路入り口31に取り付けられた連結部材25を介して接続されている。第1流路35と第2流路40とは、開口36を介して接続されている。
【0023】
第2流路40は、本体ブロック15の内部に形成され、上下方向に延びる円柱形状の空間である。この第2流路40は、第1流路35と吹出口側流路43を接続している。具体的には
図4中、第2流路40の上端が第1流路35の開口36と接続し、第2流路40の下端が、吹出口側流路43の吹出口32と反対側の端部に形成された開口44と接続されている。吹出口側流路43の開口44は本体ブロック15の下面16に形成されているため、第2流路40は第1流路35の開口36から延び、本体ブロック15の下面16に貫通している。
【0024】
吹出口側流路43はブロック14の接合部に形成され、直線状に延びる平板状の空間である。具体的には、吹出口側流路43は、本体ブロック15の下面16に形成された細長い溝45と、この溝45を被覆する補助部材17の上面18の平面部とから構成されている。本体ブロック15単体を下方から見たとき、溝45が露出している。また吹出口側流路43の長さ方向略中央部かつ本体ブロック15側には、空気室55と連通する開口46が形成されている。この吹出口側流路43は、第2流路40と、先端に吹出口32が形成された吹出口側流路43の一部である吹出し通路50とを接続している。具体的には吹出口側流路43は、開口44を介して第2流路40の下端と接続し、吹出口側流路43の吹出口32側に形成された開口47を介して吹出し通路50と接続されている。
【0025】
吹出し通路50はブロック14の接合部に形成され、開口47から吹出口32まで延びる直方体形状の空間である。具体的には吹出し通路50は、本体ブロック15の下面16に形成された細長い溝51と、この溝51を被覆する補助部材17の上面18の平面部とから構成されている。本体ブロック15単体を下方から見たとき、溝51が露出している。
【0026】
空気室55は、本体ブロック15の内部に形成され、上下方向に延びる円柱形状の空間である。空気室55は、供給流路20において電磁弁12から吹出口32の間に形成された下流側流路21に連通し、具体的には、空気室55は吹出口側流路43から分岐して設けられている。なお空気室55は、電磁弁12と吹出口32との間で供給流路20に連通する限り、吹出口側流路43から分岐する構成に限定されない。空気室55の下端は、吹出口側流路43にネック部(接続部)57を介して接続され、空気室55の上端は、本体ブロック15の内部で終端している。ネック部57は、本体ブロック15の内部に形成され、吹出口側流路43と空気室55との間を上下方向に延びる円柱形状の空間である。ネック部57の断面は、空気室55の断面よりも十分に小さい。ネック部57の断面とは、ネック部57の長さ方向(
図4中、上下方向)と直交する方向の断面である。空気室55の断面とは、空気室55の長さ方向(
図4中、上下方向)と直交する方向の断面である。ネック部57の下端は吹出口側流路43の開口46に接続され、ネック部57の上端は空気室55の下端に接続されている。
【0027】
空気室55とネック部57はヘルムホルツ共振器として機能し、この共振器内の気体の固有振動数は、供給流路20の電磁弁12より下流の下流側流路21内の気体の固有振動数と同じ固有振動数を有する。下流側流路21内の気体の固有振動数をf、空気室55とネック部57から構成されるヘルムホルツ共振器内の気体の固有振動数をf
Hとすると以下の式1が成立する。なお固有振動数fは、下流側流路21の長さや、電磁弁12の種類によって変動する。
f=f
H (式1)
【0028】
更に、空気室55の体積をV,ネック部57の断面積をS,ネック部57の長さをL,音速をcとすると、以下の式2が成立する。
f
H=(c/2π)√(S/(VL)) (式2)
【0029】
また空気室55は、本体ブロック15を掘り込み加工することで形成されている。このため、
図5(a)に示すように本体ブロック15の段部15aに蓋体56aを嵌合することで、空気室55を形成している。本実施形態では蓋体56aの厚みがL1である。
図5(b)に示すように蓋体56bの厚みをL2とすることで、空気室55の体積Vすなわち固有振動数f
Hを変化させることができる。したがって、供給流路20の製造誤差、推定誤差などによる固有振動数fの変動に対し、所望の厚みを有する蓋体を選択するだけで固有振動数f
Hを調整できる。
【0030】
[本実施形態のエアノズルの特徴]
本実施形態のエアノズルには以下の特徴がある。
【0031】
本実施形態のエアノズル10では、空気室55とネック部57から構成されるヘルムホルツ共振器内の気体が、電磁弁12より下流の下流側流路21内の気体の固有振動数fと同じ固有振動数f
Hを有する。したがって、電磁弁12を開閉することにより生じる下流側流路21の圧力振動が、下流側流路21内の気体の固有振動数fと等しくなることによる共振を防止できる。これにより、共振に起因して下流側流路21内で負圧が生じるのを防ぎ、吹出口43に搬送路2上のワークWが引き寄せられるのを防止できる。
【0032】
本実施形態のエアノズル10では、下流側流路21と空気室55とが、空気室55の断面より小さい断面のネック部57で接続されることにより、共振および共振に起因する負圧の発生を防止するための空気室55の体積を小さくすることができる。
【0033】
エアノズルでは、搬送路2上を搬送されるワークWの大きさや処理内容に応じて吹出口43から噴出される気体の噴出量を変える必要がある。気体の噴出量を変えるため、内部流路の形状が異なる複数の本体部材を用意する。このとき、内部流路の形状に応じて共振を防止する空気室を予め、それぞれの本体部材内に形成しておく。これにより、補助部材17を交換することなく、ワークWの大きさや処理内容に応じて本体部材を交換するだけで、共振を防止しつつワークWへの噴出量を変えることができる。
【0034】
次に、前記実施形態の空気室55に係る変形例について説明する。前記実施形態では、空気室55とネック部57は本体ブロック15の内部に形成されたがこれに限定されない。なお、以下において圧縮空気源11、電磁弁12および供給流路22は前記実施形態と同様の構成を有する。その他、前記実施形態と同様の構成には、同じ符号を付してその説明を適宜省略する。
【0035】
<変形例1>
図6に示すように、変形例1の空気室60とネック部61は補助部材17の内部に形成されている。空気室60は、補助部材17の内部を上下方向に延びる円柱形状の空間である。空気室60の上端は、吹出口側流路43にネック部61を介して接続され、空気室60の下端は、補助部材17の内部で終端している。ネック部61は、補助部材17の内部に形成され、吹出口側流路43と空気室60との間を上下方向に延びる円柱形状の空間である。ネック部61の断面は、空気室60の断面よりも十分に小さい。ネック部61の断面とは、ネック部61の長さ方向(
図6中、上下方向)と直交する方向の断面である。空気室60の断面とは、空気室60の長さ方向(
図6中、上下方向)と直交する方向の断面である。ネック部61の上端は吹出口側流路43の開口62に接続され、ネック部61の下端は空気室60の上端に接続されている。開口62は、吹出口側流路43の長さ方向略中央部かつ補助部材17側に形成されている。これにより、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
<変形例2>
図7に示すように、変形例2の空気室65は本体ブロック15の内部に形成される一方、ネック部が形成されていない。空気室65は、本体ブロック15の内部を上下方向に延びる円柱形状の空間である。空気室65の下端は、吹出口側流路43に開口46を介して直接、接続され、空気室65の上端は、本体ブロック15の内部で終端している。
【0037】
空気室65は、供給流路20の電磁弁12より下流の下流側流路21内の気体の固有振動数と同じ固有振動数の気体を内部に有する。これにより空気室65が、気柱共振器として機能する。下流側流路21内の気体の固有振動数をf、空気室65内の気体の固有振動数をf
Cとすると以下の式3が成立する。なお固有振動数fは、下流側流路21の長さや、電磁弁12の種類によって変動する。
f=f
C (式3)
【0038】
更に、空気室65の長さ(上下方向の寸法)をL,音速をcとすると、以下の式4が成立する。
f
C=c/(4L) (式4)
これにより、供給流路20の製造誤差、推定誤差などによる固有振動数fの変動に対し、空気室65の長さを変えることで固有振動数f
Cを調整できる。
【0039】
<変形例3>
図8に示すように、変形例3の空気室66とネック部68はブロック14の外側に設けられ、外部流路23に連通されている。空気室66は、ブロック14の外側に設けられ、上下両端部が閉蓋された大径円筒部67の内部に形成されている。大径円筒部67の下端は、外部流路23にネック部68を介して接続されている。ネック部68は、空気室66と外部流路23との間を上下方向に延びる小径円筒部69の内部に形成されている。小径円筒部69の断面は、大径円筒部67の断面よりも十分に小さい。小径円筒部69の断面とは、小径円筒部69の長さ方向(
図8中、上下方向)と直交する方向の断面である。大径円筒部67の断面とは、大径円筒部67の長さ方向(
図8中、上下方向)と直交する方向の断面である。小径円筒部69の上端は大径円筒部67の下端に接続され、小径円筒部69の下端は、外部流路23に設けられた開口70を介して外部流路23に接続されている。この構成により前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
<変形例4>
図9に示すように、変形例4では、変形例3の空気室66とネック部68に加え、本体ブロック15に形成された前記実施形態の空気室55とネック部57を備えている。このとき、下流側流路21の圧力振動に複数の周波数成分が含まれる場合には、それぞれの周波数成分に対応した固有振動数の気体を内部に有する空気室55,66とする。これにより、確実に共振を防止できる。
【0041】
<変形例5>
図10に示すように変形例5では、空気室72が、偏平の円柱形状の空間から形成されている。これにより、空気室を種々の形状とすることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0043】
前記実施形態は、空気室を円柱形状の空間から形成したがこれに限定されない。空気室は、直方体形状又は多角柱形状の空間から形成されてもよい。
【0044】
前記実施形態では、ブロック14を本体ブロック15と補助部材17から構成したが、ブロックを一体に形成してもよい。
【0045】
前記実施形態では本体ブロック15と補助部材17の接合によりエアノズル10を形成したが、どのような形態のノズル(例えばニードル状)であってもよい。