【解決手段】電動ポンプ1は、シャフトを有するモータ部10と、モータ部10のフロント側に位置するポンプ部40とを有し、モータ部10は、ロータ20と、ステータ22と、これらを収容するモータハウジング13と、モータハウジング13のリア側に位置するインバータ部70と、を有する。ポンプ部40は、シャフト11のフロント側に取り付けられるポンプロータ47と、ポンプロータ47を収容するポンプハウジング51と、を有する。モータハウジング13はポンプ部40に固定されるモータ固定部15を有し、モータ固定部15はモータハウジング13の外側のインバータ部側に配置される。ポンプハウジング51は固定されるポンプ固定部65を有し、モータ固定部15はポンプ固定部65に固定される固定位置Qに対してモータハウジング13側で且つインバータ部70側に配置する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電動オイルポンプについて説明する。また、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0010】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向他方向と平行な方向とする。X軸方向は、
図1に示す電動オイルポンプの短手方向と平行な方向、すなわち、
図1の左右方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0011】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「リア側」と記し、Z軸方向の負の側(−Z側)を「フロント側」と記す。なお、リア側及びフロント側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と記し、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と記し、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と記す。
【0012】
なお、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0013】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、第1実施形態に係る電動オイルポンプの断面図である。本実施形態の電動オイルポンプ1は、
図1に示すように、モータ部10と、ポンプ部40と、を有する。モータ部10とポンプ部40は、軸方向に沿って配置される。モータ部10は、軸方向に延びる中心軸Jに沿って配置されたシャフト11を有する。ポンプ部40は、モータ部10の軸方向一方側(フロント側)に位置し、モータ部10によってシャフト11を介して駆動されオイルを吐出する。以下、構成部材毎に詳細に説明する。
【0014】
<モータ部10>
モータ部10は、
図1に示すように、モータハウジング13と、ロータ20と、シャフト11と、ステータ22と、インバータ部70と、を有する。
【0015】
モータ部10は、例えば、インナーロータ型のモータであり、ロータ20がシャフト11の外周面に固定され、ステータ22がロータ20の径方向外側に位置する。
【0016】
(モータハウジング13)
モータハウジング13は、
図1に示すように、ステータ保持部13aと、インバータ保持部13bと、ポンプボディ保持部13cと、モータ固定部15と、を有する。モータハウジング13は、金属製である。モータハウジング13は、インバータ部70側に底部13dを有した有底筒状である。
【0017】
(ステータ保持部13a)
ステータ保持部13aは、軸方向に延びて内部に貫通孔13a1を有する。貫通孔13a1内にモータ部10のシャフト11と、ロータ20と、ステータ22とが配置される。ステータ保持部13aの内側面には、ステータ22の外側面、すなわち、後述するコアバック部22aの外側面が嵌め合わされる。これにより、ステータ保持部13aにステータ22が収容される。
【0018】
(インバータ保持部13b)
インバータ保持部13bは、ステータ保持部13aのリア側端部に繋がる部分である。本実施形態では、インバータ保持部13bは、ステータ保持部13aのリア側端部13b1と、リア側端部13b1から径方向内側に延びる円板状の底部13dと、を有する。底部13dの中央部には、軸方向に貫通する連通孔13d1が設けられる。この連通孔13d1は、インバータ部70に設けられる貫通孔71と連通して、モータ部10内とインバータ部70内とを連通する。
【0019】
底部13dは、連通孔13d1の径方向外側に周方向に間隔を有して軸方向に貫通する複数のねじ孔13d2を有する。本実施形態では、ねじ孔13d2が設けられる底部13dのねじ孔部13d3の軸方向の厚さ(肉厚)は、底部13dの径方向外側部分13d4の厚さよりも厚くなっている。これは、ねじ孔13d2の軸方向長さを必要最低限確保するために、ねじ孔部13d3の軸方向の厚さを厚くしている。なお、ねじ孔部13d3は、板金をバーリング加工して軸方向一方側へ突出する筒状のフランジ部を形成し、フランジ部の内面に雌ねじ部を設けたものでもよい。
【0020】
(ポンプボディ保持部13c)
ポンプボディ保持部13cは、フロント側が開口した筒状であり、ステータ保持部13aのフロント側端に連続して繋がる。ポンプボディ保持部13c内は、軸方向に延びる孔部13c1を有する。孔部13c1の内径は、後述するポンプ部40のポンプボディ52のリア側の外径よりも僅かに大きな寸法を有する。孔部13c1の内側面にポンプボディ52のリア側が嵌め合わされる。
【0021】
ポンプボディ保持部13cの外側面13c2には、径方向に突出するモータ側フランジ部13c3を有する。モータ側フランジ部13c3は、後述するポンプボディ52に設けられるポンプ側フランジ部52aに対向して配置されて、ボルト42等の締結手段によってポンプ側フランジ部52aに固定される。これにより、モータハウジング13にポンプ部40が固定される。
【0022】
(モータ固定部15)
図2は、本実施形態に係るモータ固定部15を有したモータ部10の斜視図である。モータ固定部15は、
図1及び
図2に示すように、ポンプ部に固定される。モータ固定部15は、モータハウジング13の外側面13eに対向して配置される固定面部15aと、固定面部15aから突出する突出部15bと、を有する。固定面部15aは、モータハウジング13の外側面13eに沿って湾曲する板状である。固定面部15aは、外側周縁に溶着部15a1を有する。溶着部15a1は、溶接によって固定面部15aをモータハウジング13の外側面13eに溶着する部分である。このため、固定面部15aは溶着部15a1を介してモータハウジング13の外側面13eに強固に固定される。なお、固定面部15aは、溶接によってモータハウジング13の外側面13eに固定される場合に限るものではない。固定面部15aは、ボルト等の締結手段によってモータハウジング13の外側面13eに固定されてもよい。
【0023】
突出部15bは、固定面部15aの周方向一方側端部から径方向外側へ突出する。本実施形態では、突出部15bは、周方向両側に平面状の一対の側面15b1を有した板状である。突出部15bの突出方向先端側には、孔部15b2が設けられる。この孔部15b2にボルト16が通されてポンプ部40側に設けられたポンプ固定部65に固定される。ポンプ固定部65の詳細については後述する。
【0024】
モータ固定部15は、モータハウジング13の側面よりも外側に位置してインバータ部70側に配置される。さらに、モータ固定部15は、ポンプ固定部65に固定される固定位置Qよりもモータハウジング13側で且つインバータ部70側に配置される。本実施形態では、ポンプ固定部65の固定孔部65aの中心Pが電動オイルポンプ1の重心G0を通って軸方向に対して直交する方向に延びる仮想線L0上に配置され、且つモータ固定部15の突出部15bの孔部15b2の中心Sの位置が、ポンプ固定部65の固定孔部65aの中心Pよりもモータハウジング13側で且つインバータ部70側に配置される。よって、モータ固定部15はインバータ部70側に近づけた状態で、ポンプ固定部65に固定することができる。また、ポンプ固定部65が電動オイルポンプ1の重心G0を通る仮想線L0上に位置するので、ポンプ固定部65に伝わる振動が、電動オイルポンプ1に伝播する振動の増大を抑制することができる。なお、固定位置Qは、固定孔部65aに通されるボルトの頭部によってポンプ固定部65が変速機等に固定される領域をいう。このため、固定位置Qは、固定孔部65a及び固定孔部65aの径方向外側のボルトの頭部がポンプ固定部65に接触する領域を含む。よって、固定位置Qの中心が中心Pとなる。
【0025】
また、モータ固定部15は、突出部15bの孔部15b2の中心Sの位置が、モータ部10、ロータ20、ステータ22のいずれかの重心G1、G2、G3を通って軸方向に対して直交する方向に延びる仮想線L1、L2,L3よりもインバータ部70側の位置に配置されてもよい。重心G1、G2、G3は、重心G0よりもインバータ部70側に位置する。このため、孔部15b2の中心Sの位置を、重心G1、G2、G3を通って軸方向に対して直交する方向に延びる仮想線L1、L2,L3よりもインバータ部70側の位置に配置することで、モータ固定部15をよりインバータ部70側に近づけた位置に配置することができる。なお、モータ固定部15をポンプ固定部65に固定する際に、振動を吸収可能な弾性体をモータ固定部15とポンプ固定部65の固定突起部67との間に配置して、モータ固定部15をポンプ固定部65に締結固定してもよい。
【0026】
(ロータ20)
ロータ20は、ロータコア20aと、ロータマグネット20bと、を有する。ロータコア20aは、シャフト11を軸周り(θ方向)に囲んで、シャフト11に固定される。ロータマグネット20bは、ロータコア20aの軸周り(θ方向)に沿った外側面に固定される。ロータコア20a及びロータマグネット20bは、シャフト11と共に回転する。なお、ロータ20は、ロータ20の内部に永久磁石が埋め込まれた埋込磁石型でもよい。埋込磁石型のロータ20は、永久磁石をロータ20の表面に設けた表面磁石型と比較して、遠心力によって磁石が剥がれる虞を軽減することができ、また、リラクタンストルクを積極的に利用することができる。
【0027】
(ステータ22)
ステータ22は、ロータ20を軸周り(θ方向)に囲み、ロータ20を中心軸J周りに回転させる。ステータ22は、コアバック部22aと、ティース部22cと、コイル22bと、インシュレータ(ボビン)22dと、を有する。
【0028】
コアバック部22aの形状は、シャフト11と同心の円筒状である。ティース部22cは、コアバック部22aの内側面からシャフト11に向かって延びる。ティース部22cは、複数設けられ、コアバック部22aの内側面の周方向に均等な間隔で配置される。コイル22bは、インシュレータ(ボビン)22dの周囲に設けられ、導電線22eが巻回されてなる。インシュレータ(ボビン)19は、各ティース部22cに装着される。
【0029】
(シャフト11)
シャフト11は、
図1に示すように、中心軸Jに沿って延びてモータ部10を貫通する。シャフト11のフロント側(−Z側)は、モータ部10から突出してポンプ部40内に延びる。シャフト11のリア側(+Z側)は、ロータ20から突出して自由端となる。このため、ロータ20は、シャフト11のフロント側が後述するすべり軸受45で支持される片持ち支持の状態となる。
【0030】
(インバータ部70)
インバータ部70は、リア側が開口してフロント側に窪む収容部73aを有してX軸方向に延びる有底容器状のインバータハウジング73と、カバー部90と、を有する。
【0031】
収容部73aは、カバー部90によって収容部73aのリア側の開口が覆われる。収容部73a内には、回路基板75、コネクタ側端子77、バスバー79(
図4参照)、端子部81等が収容される。
【0032】
コネクタ側端子77は、収容部73a内のX軸方向左側に配置され、一端側がバスバー79を介してモータ部10のコイル端22b1に電気的に接続され、他端側が回路基板75に電気的に接続される。端子部81は、収容部73a内のX軸方向右側に配置され、一端側が図示しない外部コネクタに電気的に接続され、他端側が回路基板75に電気的に接続される。
【0033】
回路基板75は、モータ出力信号を出力する。回路基板75は、収容部73aのリア側に配置されて軸方向に対して交差する方向に延びる。本実施形態では、回路基板75は、軸方向に対して直交するX軸方向に延びる。回路基板75のフロント側面75aには、図示しないプリント配線が設けられる。また、回路基板75のフロント側面75aには、複数の電子部品が実装される。図示した実施形態では、リードが回路基板75に電気的に接続された電子部品83(例えば、コンデンサ83a、チョークコイル83b等)が実装される。また、回路基板75として、銅インレイ基板を用いることにより、図示しない発熱素子で発生した熱をカバー部を介して放熱することができる。
【0034】
図1に示すように、インバータハウジング73のフロント側には、モータハウジング13の底部13dに固定される固定部73bを有する。本実施形態では、固定部73bは、軸方向視において中心軸Jを中心とした円板状であり、モータハウジング13の底部13d上に載置された状態で、複数のボルト74を介して底部13dに締結固定される。固定部73bは、底部13dの径方向内側に配置される。
【0035】
固定部73bのリア側の面には、複数のバスバー79が配置される。本実施形態では、3つのバスバー79が周方向に間隔を有して配置される(
図4参照)。3つのバスバー79の夫々には、コネクタ側端子77およびコイル端22b1が接続される。
【0036】
インバータハウジング73は、固定部73bの周縁部からフロント側へ延びる壁部73cを有する。壁部73cの内側には、モータハウジング13のリア側を嵌合する嵌合穴部73c1が設けられる。このため、モータハウジング13のリア側を嵌合穴部73c1に嵌合させた状態で固定部73bをモータハウジング13の底部13dに固定することで、モータハウジング13に対してインバータ部70を所定の姿勢を維持した状態で、インバータ部70をモータハウジング13に固定することができる。
【0037】
<ポンプ部40>
ポンプ部40は、モータ部10の軸方向一方側、詳細にはフロント側(−Z側)に位置する。ポンプ部40は、モータ部10によってシャフト11を介して駆動される。ポンプ部40は、ポンプロータ47と、ポンプハウジング51と、を有する。ポンプハウジング51は、ポンプボディ52と、ポンプカバー57と、を有する。以下、各部品について詳細に説明する。
【0038】
(ポンプボディ52)
ポンプボディ52は、モータ部10のフロント側(−Z側)においてモータハウジング13のフロント側(−Z側)内に固定される。ポンプボディ52は、リア側(+Z側)の面からフロント側(−Z側)に窪む凹部54を有する。凹部54内にはシール部材59が収容される。ポンプボディ52のリア側の外側面52bには径方向内側に窪んだ環状の凹部60が設けられる。この凹部60にはシール部材61(例えば、Oリング)が挿入される。
【0039】
ポンプボディ52は、中心軸Jに沿って貫通する貫通孔55を有する。貫通孔55は軸方向両端が開口してシャフト11が通され、リア側(+Z側)の開口が凹部54に開口し、フロント側(−Z側)の開口がポンプボディ52のフロント側端に開口する。貫通孔55は、シャフト11を回転可能に支持するすべり軸受45として機能する。
【0040】
ポンプボディ52の径方向外側端部には、ポンプ側フランジ部52aが設けられる。ポンプ側フランジ部52aは、周方向に間隔を有して複数設けられる。
【0041】
(ポンプカバー57)
ポンプカバー57は、
図1に示すように、ポンプボディ52の軸方向一方側に取り付けられるポンプカバー本体部57aと、ポンプカバー本体部57aの径方向一方側端部からモータ部10側へ向かって延びるポンプカバー腕部57bと、を有する。ポンプカバー本体部57aは、ポンプロータ47を収容し側面及びモータ部10のフロント側(−Z側)に位置する底面を有する収容部53を有する。収容部53は、リア側(+Z側)に開口してフロント側(−Z側)に窪む。収容部53の軸方向から視た形状は、円形状である。
【0042】
ポンプカバー本体部57aは、ポンプボディ52に対してフロント側(−Z側)から覆うことで、ポンプボディ52との間に収容部53を設ける。
【0043】
ポンプカバー本体部57aの径方向外側端部には、ポンプカバー側フランジ部57a1が設けられる。ポンプカバー側フランジ部57a1は、周方向に間隔を有して複数設けられる。ポンプカバー側フランジ部57a1には、ボルト42が螺合可能な雌ねじが設けられる。
【0044】
ポンプカバー側フランジ部57a1上には、モータ側フランジ部13c3及びポンプ側フランジ部52aが重なるように配置されて、モータ側フランジ部13c3及びポンプ側フランジ部52aに通されたボルト42がポンプカバー側フランジ部57a1に設けられた雌ねじに締結されることで、モータ部10をポンプ部40に固定することができる。
【0045】
ポンプカバー腕部57bは、ポンプカバー本体部57aの径方向一方側の外側端部からモータハウジング13の外側面13eに沿ってモータ部10のリア側へ延びる。ポンプカバー腕部57bは、直方体状に形成されて剛性が強化される。ポンプカバー腕部57bのリア側端部には、固定されるポンプ固定部65を有する。本実施形態では、ポンプ固定部65は、例えば変速機に固定される。ポンプ固定部65は、箱状であり、Y軸方向に貫通する固定孔部65aを有する。この固定孔部65aにボルト等の締結手段が挿入されて、ポンプ固定部65は、変速機等の固定対象物に強固に固定される。
【0046】
ポンプ固定部65のリア側端部には、モータ部10側へ突出する固定突起部67が設けられる。固定突起部67の突出方向先端部には、雌ねじ部が設けられる。モータ固定部15は、突出部15bの孔部15b2に挿入されたボルトが固定突起部67の雌ねじ部に螺合することで、固定突起部67に固定される。ここで、モータ固定部15は、ポンプ固定部65の近傍に配置される。図示した実施形態では、モータ固定部15は、ポンプ固定部65の固定孔部65aの中心よりもモータ部10側で且つインバータ部70側に配置される。
【0047】
このため、モータ部10は、ポンプ固定部65に近傍配置されたモータ固定部15を介してポンプ固定部65に強固に固定される。
【0048】
なお、前述した第1実施形態では、ポンプロータ47を収容する収容部53がポンプカバー57に設けられた例を示したが、これに限るものではない。収容部53はポンプボディ52に設けられてもよい。
【0049】
(ポンプロータ47)
ポンプロータ47は、シャフト11に取り付けられる。より詳細には、ポンプロータ47は、シャフト11のフロント側(−Z側)に取り付けられる。ポンプロータ47は、シャフト11に取り付けられるインナーロータ47aと、インナーロータ47aの径方向外側を囲むアウターロータ47bと、を有する。インナーロータ47aは、円環状である。インナーロータ47aは、径方向外側面に歯を有する歯車である。
【0050】
インナーロータ47aは、シャフト11に固定される。より詳細には、インナーロータ47aの内側にシャフト11のフロント側(−Z側)の端部が圧入される。インナーロータ47aは、シャフト11と共に軸周り(θ方向)に回転する。アウターロータ47bは、インナーロータ47aの径方向外側を囲む円環状である。アウターロータ47bは、径方向内側面に歯を有する歯車である。
【0051】
インナーロータ47aとアウターロータ47bとは互いに噛み合い、インナーロータ47aが回転することでアウターロータ47bが回転する。すなわち、シャフト11の回転によりポンプロータ47は回転する。言い換えると、モータ部10とポンプ部40とは同一の回転軸を有する。これにより、電動オイルポンプ1が軸方向に大型化することを抑制できる。
【0052】
また、インナーロータ47aとアウターロータ47bとが回転することで、インナーロータ47aとアウターロータ47bの噛み合わせ部分の間の容積が変化する。容積が減少する領域が加圧領域なり、容積が増加する領域が負圧領域となる。ポンプロータ47の負圧領域のフロント側(−Z側)には、吸入ポートが配置される。また、ポンプロータ47の加圧領域Apのフロント側(−Z側)には、吐出ポートが配置される。ここで、ポンプカバー57に設けられた吸入口57cから収容部53内に吸入されるオイルは、インナーロータ47aとアウターロータ47bの間の容積部分に収容され、加圧領域に送られる。その後、オイルは、吐出ポートを通ってポンプカバー57に設けられた吐出口57dから吐出される。
【0053】
<電動オイルポンプ1の作用・効果>
次に、電動オイルポンプ1の作用・効果について説明する。
図1に示すように、電動オイルポンプ1のモータ部10が駆動すると、モータ部10のシャフト11が回転して、ポンプロータ47のインナーロータ47aの回転にともなってアウターロータ47bも回転する。ポンプロータ47が回転すると、ポンプ部40の吸入口57cから吸引されたオイルは、ポンプ部40の収容部53内を移動して、吐出ポートを通って吐出口57dから吐出される。
【0054】
(1)ここで、本実施形態に係る電動オイルポンプ1のポンプハウジング51は、固定されるポンプ固定部65を有し、モータ固定部15は、モータハウジング13の側面よりも外側に位置してインバータ部70側に配置されるとともに、ポンプ固定部65に固定される固定位置Qよりもモータハウジング13側で且つインバータ部70側に配置される。このため、モータ部10は、モータ固定部15及びポンプ固定部65を介して固定先(例えば、変速機)に強固に固定される。また、インバータ部70は、ポンプ固定部65に固定される固定位置Qに対して片持ち支持された状態にあるが、モータ固定部15は、モータハウジング13側で且つインバータ部70側に配置されるので、モータ固定部15をインバータ部70に近づけることができる。このため、エンジン等から発生した振動が、固定対象物(例えば、変速機)を介してモータ固定部15に伝達されてモータハウジング13及びインバータ部70に伝播した場合、モータハウジング13に伝播される振動の増大を抑制することができる。よって、モータハウジング13に固定されたインバータ部70への振動の伝播に対して、振動の増大を抑制することができる。
【0055】
(2)また、モータ固定部15は、モータハウジング13に溶接で固定される溶着部15a1を有する。このため、モータ固定部15をモータハウジング13に容易に設けることができる。
【0056】
(3)また、
図2に示すように、モータ固定部15は、固定面部15aと突出部15bとを有し、固定面部15aは外側周縁に溶着部15a1を有する。このため、突出部15bをモータハウジング13に溶接で直接に固定する場合と比較して、固定面部15aをモータハウジング13に溶接する溶接長をより長くすることができる。このため、モータ固定部15のモータハウジング13に対する固定強度を増大することができる。
【0057】
(4)また、モータ固定部15がポンプカバー57に固定されるので、ポンプカバー57を介してモータ部10をポンプ部40に固定することができる。
【0058】
(5)また、ポンプカバー腕部57bは、ポンプカバー本体部57aの径方向一方側端部からモータ部10側へ向かって延びるので、ポンプカバー腕部57bの先端部に対して、モータ固定部15を近傍した位置に配置することができる。よって、モータ固定部15をポンプカバー腕部57bに容易に固定することができる。
【0059】
[第1実施形態の変形例](モータ部10をポンプボディ52に固定する変形例)
図3は、第1実施形態に係る電動オイルポンプ1の変形例の断面図である。
図1に示した第1実施形態に係るモータ固定部15は、ポンプカバー57から延びるポンプカバー腕部57bに固定される。しかしながら、この構造に限定されるものではなく、例えば、
図3に示すように、モータ固定部15は、ポンプボディ93から延びるポンプボディ腕部93bに固定されてもよい(変形例1)。なお、変形例1の説明においては、前述した第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同一態様部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
ポンプハウジング91は、収容部94を有したポンプボディ93と、ポンプボディ93の軸方向一方側に取り付けられるポンプカバー96と、を有する。ポンプボディ93は、モータハウジング13のフロント側に取り付けられるポンプボディ本体部93aと、ポンプボディ本体部93aの径方向一方側端部からモータ部10側へ向かって延びるポンプボディ腕部93bと、を有する。ポンプボディ本体部93aに設けられた収容部94は、フロント側が開口してリア側へ窪む。貫通孔55は、リア側(+Z側)の開口が凹部54に開口し、フロント側(−Z側)の開口が収容部94に開口する。
【0061】
ポンプボディ腕部93bは、ポンプボディ本体部93aの径方向一方側の外側端部からモータハウジング13の外側面13eに沿ってモータ部10のリア側へ延びる。ポンプボディ腕部93bは、直方体状に形成されて剛性が強化される。ポンプボディ腕部93bのリア側端部には、ポンプ固定部65が設けられる。
【0062】
ポンプ固定部のリア側端部には、固定突起部67が設けられる。固定突起部67の突出方向先端部にボルト等の締結手段を介してモータ固定部15が固定される。
【0063】
この変形例では、モータ固定部15がポンプボディ93に固定されるので、ポンプボディ93を介してモータ部10をポンプ部40に固定することができる。また、ポンプボディ腕部93bは、ポンプボディ本体部93aの径方向一方側端部からモータ部10側へ向かって延びるので、ポンプボディ腕部93bの先端部に対して、モータ固定部15を近傍させた位置に配置することができる。よって、モータ固定部15をポンプボディ腕部93bに容易に固定することができる。
【0064】
なお、前述した第1実施形態の変形例1では、ポンプボディ93にポンプロータ47を収容する収容部53を設けた例を示したが、これに限るものではない。収容部94はポンプカバー96に設けられてもよい。ディに設けられてもよい。
【0065】
[第1実施形態の他の変形例](電子部品のモータ固定部に対する位置)
図4は、第1実施形態に係る回路基板75をモータ部10側へ向かって透明視して見た回路基板75の変形例の平面図である。
図5は、第1実施形態に係る回路基板75を斜めフロント側からリア側に目視した回路基板75の変形例の斜視図である。
図1に示した第1実施形態に係る回路基板75には、フロント側面75aにリードが電気的に接続された電子部品83(例えば、コンデンサ83a、チョークコイル83b)が実装されている。しかしながら、電子部品83の他の構成部品に対する位置関係については特定されていない。そこで、電子部品83は、回路基板75をリア側からフロント側へ向かって見たときに、電子部品83の少なくとも一部がモータ固定部15に重なる位置に配置されてもよい(変形例2)。
【0066】
図4に示すように、電子部品83は、回路基板75をリア側からフロント側へ向かって見たときに、電子部品83の少なくとも一部がモータ固定部15に重なる位置に配置される。本実施形態では、コンデンサ83aのY軸方向プラス側の部分がモータ固定部15の突出部15bに重なる位置に配置される。
【0067】
ここで、モータ部10は、モータ固定部15を固定点とした片持ち支持された状態にある。このため、回路基板75をリア側からフロント側へ向かって見たときに、電子部品83とモータ固定部15との間の距離に応じたモーメントが電子部品83に作用する。そして、エンジン等から発生した振動が固定対象物の変速機を介してモータ部10に伝わると、振動は、モータ部10を介して回路基板75に伝播する。この振動が回路基板75に実装された電子部品83に繰り返し作用すると、電子部品83のコンデンサ83a及びチョークコイル83bのリードに繰り返し応力が発生して、リードの寿命を低下させる虞が生じる。そこで、変形例2では、電子部品83の少なくとも一部をモータ固定部15に重なる位置に配置することで、Y軸方向の電子部品83とモータ固定部15との間の距離を短縮することができる。したがって、電子部品83に作用するモーメントの増大を抑制することができ、よって、電子部品83の寿命が低下する虞を抑制することができる。
【0068】
また、例えば、
図4に示すように、電子部品83は、回路基板75のモータ部10側を向く面部(フロント側面75a)のうち、インバータ部70の固定部70bよりも径方向外側に配置されて、モータ部10側を向いてもよい(変形例3)。
【0069】
この変形例では、コンデンサ83a及びチョークコイル83bは、モータ固定部15よりもリア側の回路基板75のフロント側面75aのうちインバータ部70の固定部73bよりも径方向外側の位置に実装されて、モータ部10側を向く。コンデンサ83a及びチョークコイル83bは大きさが大きな部品であるので、コンデンサ83a及びチョークコイル83bを固定部73bの径方向内側に配置すると、コンデンサ83a及びチョークコイル83bがボルト74に接触する虞が生じる。このため、コンデンサ83a及びチョークコイル83bをボルト74からリア側に離して配置すると、コンデンサ83a及びチョークコイル83bとモータ固定部15との間のZ軸方向の距離が増大して、コンデンサ83a及びチョークコイル83bに作用するモーメントの増大を招く。そこで、コンデンサ83a及びチョークコイル83bは、モータ固定部15よりもリア側の回路基板75のフロント側面75aのうち固定部73bよりも径方向外側の位置に実装されてモータ部10側を向くことで、電子部品83とモータ固定部15との間のZ軸方向の距離を短縮化することができる。したがって、電子部品83に作用するモーメントの増大を抑制することができる。
【0070】
また、コンデンサ83a及びチョークコイル83bのいずれかの電子部品83は、電子部品83のモータ部10側の端面83a1がモータ固定部15側を向いてもよい(変形例4)。本実施形態では、
図5に示すように、コンデンサ83aのモータ部10側の端面83a1がモータ固定部15側を向く。なお、チョークコイル83bは、コンデンサ83aに対してY軸方向プラス側に隣接して配置されてフロント側を向く。
【0071】
この変形例では、大きさが大きく及び重量が重い電子部品83を、モータ固定部15側に向かって実装する事で、モータ固定部15がポンプ部40に固定される位置からの距離を伸ばすことなく、電子部品83が実装できるため、モータハウジング13に固定されたインバータ部70の電子部品83への振動の伝播に対して、振動の増大をより抑制することができる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発名とその均等の範囲に含まれるものである。