特開2019-44790(P2019-44790A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-44790バランサシリンダおよびバランサシリンダを用いたワーク搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-44790(P2019-44790A)
(43)【公開日】2019年3月22日
(54)【発明の名称】バランサシリンダおよびバランサシリンダを用いたワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/26 20060101AFI20190222BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20190222BHJP
   F15B 15/22 20060101ALI20190222BHJP
   B66F 19/00 20060101ALI20190222BHJP
【FI】
   F15B15/26
   F15B15/14 380B
   F15B15/14 350
   F15B15/14 345
   F15B15/22 D
   B66F19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-165116(P2017-165116)
(22)【出願日】2017年8月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】魚田 拓志
(72)【発明者】
【氏名】西 孝典
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB03
3H081CC15
3H081CC25
3H081DD02
3H081DD13
3H081DD32
3H081DD37
3H081FF11
3H081FF26
3H081FF39
3H081FF46
3H081HH03
3H081HH04
3H081HH10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置で確実に停止し、その停止位置でロック状態にできるバランサシリンダおよびバランサシリンダを用いたワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】圧力流体供給源を有するワーク搬送装置に対して軸方向が鉛直方向に沿うように取り付けられたバランサシリンダ10であって、シリンダチューブ22の下降時におけるストローク終端の近傍位置において、ロッドカバー20が移動弁30に当接し、位置決め用ラチェット38の係合位置を第1係止溝28cから第2係止溝28dへ移動させたとき圧力流体供給源と第1シリンダ室とを連通する第2流路28bが閉塞される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力流体供給源を有するワーク搬送装置に対して軸方向が鉛直方向に沿うように取り付けられたバランサシリンダであって、
ヘッドカバーおよびロッドカバーによって両端が閉塞されたシリンダ室を有するシリンダチューブと、
前記シリンダ室を前記ロッドカバー側の第1シリンダ室と前記ヘッドカバー側の第2シリンダ室とに区画するピストンと、
前記圧力流体供給源と前記第1シリンダ室とを連通する流路が内部に形成され、一端部が前記ピストンに連結されるとともに、外周面に複数の係止溝を設けたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記軸方向に沿って変位可能に設けられた移動弁と、
前記移動弁に設けられ、前記係止溝のいずれかに選択的に係合する係止部材と、
を備え、
前記シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置において、前記ロッドカバーが前記移動弁に当接し、前記係止部材の係合位置を一つの前記係止溝から他の前記係止溝へ移動させたとき前記圧力流体供給源と前記第1シリンダ室とを連通する前記流路が閉塞される
ことを特徴とするバランサシリンダ。
【請求項2】
請求項1記載のバランサシリンダであって、
前記ピストンは、
前記軸方向に貫通して形成されたピン収容孔と、
一端部が前記第1シリンダ室、他端部が前記第2シリンダ室にそれぞれ臨み、前記ピン収容孔に前記軸方向に沿って変位可能に収容された解除ピンと、
を有し、
前記ロッドカバーは、前記第1シリンダ室と前記圧力流体供給源とを連通可能な連通路を有し、
前記連通路から前記第1シリンダ室への圧力流体の供給に伴い、前記シリンダチューブの上昇時のストローク終端の近傍位置において、前記ヘッドカバーが前記解除ピンを介して前記移動弁を押圧し、前記係止部材の係合位置を前記他の係止溝から前記一つの係止溝へ移動させる
ことを特徴とするバランサシリンダ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバランサシリンダであって、
前記ピストンロッドの他端部は、前記ワーク搬送装置を構成する支持機構に固定されている
ことを特徴とするバランサシリンダ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のバランサシリンダであって、
前記ロッドカバーと前記移動弁との間に接触時の衝撃を吸収する衝撃吸収機構を備える
ことを特徴とするバランサシリンダ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバランサシリンダであって、
前記ヘッドカバーは、
前記ヘッドカバーの外周面に開口して形成され、前記第2シリンダ室を大気と連通する通気口と、
前記通気口に取り付けられ、空気が通過可能な消音部材と、
を有することを特徴とするバランサシリンダ。
【請求項6】
バランサシリンダと、
軸方向が鉛直方向に沿うように前記バランサシリンダを支持する支持機構と、
前記バランサシリンダに圧力流体を供給する圧力流体供給源と、
前記バランサシリンダを構成するシリンダチューブの前記鉛直方向に沿う動作を案内するガイドと、
前記シリンダチューブに着脱自在に連結されたワーク搬送用部材と、
を備え、
前記バランサシリンダは、
ヘッドカバーおよびロッドカバーによって両端が閉塞されたシリンダ室を有する前記シリンダチューブと、
前記シリンダ室を前記ロッドカバー側の第1シリンダ室と前記ヘッドカバー側の第2シリンダ室とに区画するピストンと、
前記圧力流体供給源と前記第1シリンダ室とを連通する流路が内部に形成され、一端部が前記ピストンに連結されるとともに、外周面に複数の係止溝を設けたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記軸方向に沿って変位可能に設けられた移動弁と、
前記移動弁の内部に設けられ、前記係止溝のいずれかに選択的に係合する係止部材と、
を有し、
前記シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置において、前記ロッドカバーが前記移動弁に当接し、前記係止部材の係合位置を一つの前記係止溝から他の前記係止溝へ移動させたとき前記圧力流体供給源と前記第1シリンダ室とを連通する前記流路が閉塞される
ことを特徴とするワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの搬送作業等に使用されるバランサシリンダおよびバランサシリンダを用いたワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の製造工場では、重量のあるワークを所望の作業場所へ搬送するために、ワークの重量を相殺するバランス機能および巻上機としての昇降機能を有するバランサシリンダが広く利用されている(特許文献1・2参照)。バランサシリンダの駆動方式としては、電動式、圧縮空気式、バキュームポンプ式、油圧式等があり、爆発や引火の危険性のある作業環境では圧縮空気式が用いられる。例えば、圧縮空気式のバランサシリンダは、ワーク搬送装置に対して軸方向が鉛直方向に沿うように取り付けられ、作業員はコントローラを操作してシリンダチューブ内への圧縮空気の給排を制御する。これにより、圧縮空気の供給により生じる鉛直上方向の力によりバランサシリンダの自重およびワークの重量を合わせた鉛直下方向の力を相殺あるいは軽減することができるため、作業員はワークを僅かな力で持ち上げて簡単に搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−62186号公報
【特許文献2】特開2006−297504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなバランサシリンダは、例えば、ピストンロッドがワーク搬送装置に固定され、シリンダチューブ側でワークを保持する場合、圧縮空気の供給作用下でシリンダチューブはワークとともに鉛直方向に沿って昇降する。具体的には、シリンダチューブ内へ圧縮空気を供給するとシリンダチューブが上昇し、圧縮空気の供給を停止するとシリンダチューブが停止し、シリンダチューブ内から圧縮空気を排出するとバランサシリンダの自重およびワークの重量によってシリンダチューブが下降する。しかし、シリンダチューブが過度に下降した場合には、下降時のストローク終端においてピストンとロッドカバーが衝突してしまうため、バランサシリンダが損傷する虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置で確実に停止し、その停止位置でロック状態にできるバランサシリンダおよびバランサシリンダを用いたワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバランサシリンダは、圧力流体供給源を有するワーク搬送装置に対して軸方向が鉛直方向に沿うように取り付けられたバランサシリンダであって、ヘッドカバーおよびロッドカバーによって両端が閉塞されたシリンダ室を有するシリンダチューブと、シリンダ室をロッドカバー側の第1シリンダ室とヘッドカバー側の第2シリンダ室とに区画するピストンと、圧力流体供給源と第1シリンダ室とを連通する流路が内部に形成され、一端部がピストンに連結されるとともに、外周面に複数の係止溝を設けたピストンロッドと、ピストンロッドの軸方向に沿って変位可能に設けられた移動弁と、移動弁に設けられ、係止溝のいずれかに選択的に係合する係止部材と、を備える。シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置において、ロッドカバーが移動弁に当接し、係止部材の係合位置を一つの係止溝から他の係止溝へ移動させたとき圧力流体供給源と第1シリンダ室とを連通する流路が閉塞される。
【0007】
本発明のバランサシリンダによれば、シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置で確実に作動を停止し、その停止位置でロック状態にすることができる。すなわち、シリンダチューブの下降に伴ってピストンロッドに対する移動弁の係合位置を変更させるとともに、第1シリンダ室と圧力流体供給源との連通状態を遮断して第1シリンダ室内を密閉状態にすることで、ストローク終端に達する前に停止できる。このため、ピストンが移動弁に衝突することを回避できる。また、停止位置でピストンロッドとシリンダチューブの間をロック状態にできるため、バランサシリンダのメンテナンスを容易に行うことが可能となる効果が得られる。
【0008】
本発明のバランサシリンダにおいて、ピストンは、軸方向に貫通して形成されたピン収容孔と、一端部が第1シリンダ室、他端部が第2シリンダ室にそれぞれ臨み、ピン収容孔に軸方向に沿って変位可能に収容された解除ピンと、を有し、ロッドカバーは、第1シリンダ室と圧力流体供給源とを連通可能な連通路を有する。そして、連通路から第1シリンダ室への圧力流体の供給に伴い、シリンダチューブの上昇時のストローク終端の近傍位置において、ヘッドカバーが解除ピンを介して移動弁を押圧し、係止部材の係合位置を他の係止溝から一つの係止溝へ移動させる構成としてもよい。これにより、連通路から圧力流体(圧縮空気)を供給することで、係止部材の係合位置を通常の使用状態(ロック解除状態)に対応する位置に戻して流路の閉塞状態を解除できるため、ピストンロッドとシリンダチューブの間のロック状態を容易に解除することができる。
【0009】
本発明のバランサシリンダにおいて、ピストンロッドの他端部は、ワーク搬送装置を構成する支持機構に固定されていてもよい。これにより、ピストンロッド側が鉛直方向で変位することなく、シリンダチューブ側が鉛直方向に変位するため、圧力流体供給源を構成するチューブ等をシリンダチューブの昇降動作に合わせて追従移動させる必要がない。すなわち、ピストンロッドに対して圧力流体を安定的に給排することができる。また、ピストンロッドと圧力流体供給源との連結部分がワーク搬送装置の上方領域に設けられるときは、支持機構の下方領域で昇降するシリンダチューブの周囲に作業スペースを広く確保することができる。
【0010】
本発明のバランサシリンダは、ロッドカバーと移動弁との間に接触時の衝撃を吸収する衝撃吸収機構を備えてもよい。これにより、シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置において、衝撃吸収機構によってロッドカバーとの接触時の衝撃を吸収して緩やかに停止させ、その停止位置でピストンロッドとシリンダチューブの間をロック状態にできる。
【0011】
本発明のバランサシリンダにおいて、ヘッドカバーは、ヘッドカバーの外周面に開口して形成され、第2シリンダ室を大気と連通する通気口と、通気口に取り付けられ、空気が通過可能な消音部材と、を有してもよい。これにより、第2シリンダ室内の空気は消音部材を介して大気中に排出されるため、排気音を低減させることができる。
【0012】
本発明のワーク搬送装置は、バランサシリンダと、軸方向が鉛直方向に沿うようにバランサシリンダを支持する支持機構と、バランサシリンダに圧力流体を供給する圧力流体供給源と、バランサシリンダを構成するシリンダチューブの鉛直方向に沿う動作を案内するガイドと、シリンダチューブに着脱自在に連結されたワーク搬送用部材と、を備える。バランサシリンダは、ヘッドカバーおよびロッドカバーによって両端が閉塞されたシリンダ室を有するシリンダチューブと、シリンダ室をロッドカバー側の第1シリンダ室とヘッドカバー側の第2シリンダ室とに区画するピストンと、圧力流体供給源と第1シリンダ室とを連通する流路が内部に形成され、一端部がピストンに連結されるとともに、外周面に複数の係止溝を設けたピストンロッドと、ピストンロッドの軸方向に沿って変位可能に設けられた移動弁と、移動弁の内部に設けられ、係止溝のいずれかに選択的に係合する係止部材と、を有する。シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置において、ロッドカバーが移動弁に当接し、係止部材の係合位置を一つの係止溝から他の係止溝へ移動させたとき圧力流体供給源と第1シリンダ室とを連通する流路が閉塞される。
【0013】
本発明のワーク搬送装置によれば、シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置で確実に作動を停止し、その停止位置でロック状態にすることができる。すなわち、バランサシリンダを構成するシリンダチューブの下降に伴ってピストンロッドに対する移動弁の係合位置を変更させるとともに、第1シリンダ室と流路の間の連通状態を遮断して第1シリンダ室内を密閉状態にすることで、ストローク終端に達する前に停止できる。このため、ピストンが移動弁に衝突することを回避できる。また、停止位置でピストンロッドとシリンダチューブの間をロック状態にできるため、バランサシリンダのメンテナンスを容易に行うことが可能となる効果が得られる。また、バランサシリンダを構成するシリンダチューブを鉛直方向に沿って案内するガイドを備えることで、シリンダチューブの昇降時においてワーク搬送用部材およびワークの揺れを抑えることができ、安定した動作を確保できる。さらに、バランサシリンダにワーク搬送用部材を着脱自在に連結しているため、形状や大きさの異なるワークに対応して用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリンダチューブの下降時におけるストローク終端の近傍位置で確実に停止し、その停止位置でロック状態にできるバランサシリンダおよびバランサシリンダを用いたワーク搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るバランサシリンダを取り付けたワーク搬送装置を示す外観図である。
図2図1に示すバランサシリンダの通常の使用状態を示す縦断面図である。
図3図1に示すバランサシリンダにおいてシリンダチューブが下降してストローク終端の近傍位置に至った際のバランサシリンダのロック状態を示す縦断面図である。
図4図1に示すバランサシリンダの一部省略分解斜視図である。
図5図2に示すバランサシリンダの一部省略拡大断面図である。
図6図3に示すバランサシリンダの一部省略拡大断面図である。
図7図3に示すバランサシリンダがロック解除される直前の状態を示す一部省略拡大断面図である。
図8】第2の実施形態に係るバランサシリンダの通常の使用状態を示す縦断面図である。
図9図8に示すバランサシリンダの一部省略分解斜視図である。
図10図8に示すバランサシリンダにおいてシリンダチューブが下降してストローク終端の近傍位置に至った際のバランサシリンダのロック状態を示す一部省略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るバランサシリンダについて、それを用いるワーク搬送装置との関係で好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係るバランサシリンダ10を取り付けたワーク搬送装置100を示す外観図、図2は、図1に示すバランサシリンダ10の通常の使用状態を示す縦断面図、図3は、図1に示すバランサシリンダ10においてシリンダチューブ22が下降してストローク終端の近傍位置に至った際のバランサシリンダ10のロック状態を示す縦断面図、図4は、図1に示すバランサシリンダ10の一部省略分解斜視図である。
【0018】
図1に示すように、ワーク搬送装置100は、バランサシリンダ10と、上方に配置された支持機構12と、内側にバランサシリンダ10を収容するガイド14と、バランサシリンダ10に圧力流体(圧縮空気)を供給する圧力流体供給源16と、ワークWを載置するテーブル18と、を備えている。
【0019】
バランサシリンダ10は、支持機構12に対して軸方向が鉛直方向(図中矢印A方向、矢印B方向)に沿うように取り付けられている。ガイド14は、鉛直方向に沿って延びる一対のガイドレール14a、14bとガイド部材14cを有する。ガイドレール14a、14bの一端部は、支持機構12に連結され、他端部はガイド部材14cに挿通されている。ガイド部材14cは、バランサシリンダ10のロッドカバー20と一体的に連結され、ガイドレール14a、14bに沿ってスライドする。これにより、ガイド14は、シリンダチューブ22の鉛直方向に沿う動作を案内する。圧力流体供給源16は、バランサシリンダ10のピストンロッド28に連結されている。テーブル18は、ヘッドカバー24に着脱自在に取り付けられており、ワークWの大きさに合わせて適宜選択される。
【0020】
図2に示すように、バランサシリンダ10は、ロッドカバー20と、シリンダチューブ22と、ヘッドカバー24と、ピストン26と、ピストンロッド28と、移動弁30と、解除ピン32と、例えば、焼結体からなる消音部材34a〜34cとを有する。
【0021】
シリンダチューブ22は、ロッドカバー20およびヘッドカバー24によって両端が閉塞されたシリンダ室36を内部に有する。ピストン26は、シリンダ室36に収容され、シリンダ室36を第1シリンダ室36aと第2シリンダ室36bの2室に区画する。ピストン26は、ピン収容孔26aとパッキン取付部26bを有する(図4参照)。
【0022】
ピン収容孔26aは、ピストン26の軸方向に延び且つその中心軸から偏位した貫通孔であり、解除ピン32を環状のピン用カバー33とともに収容する。解除ピン32は、一端部が第1シリンダ室36a、他端部が第2シリンダ室36bにそれぞれ臨む。ピン用カバー33は、解除ピン32の軸方向への変位を許容するが、解除ピン32とともにピン収容孔26aを閉塞している。パッキン取付部26bは、ピストン26の外周面に環状溝として形成されている。パッキン取付部26bには、ピストン26の外周面とシリンダチューブ22の内壁面との間を閉塞するピストンパッキン27が取り付けられる(図3参照)。このため、第1シリンダ室36aと第2シリンダ室36bの間で圧力流体は移動できない。
【0023】
ピストンロッド28は、一端部がピストンナット29を介してピストン26に連結され、他端部がワーク搬送装置100を構成する支持機構12に固定されている(図1参照)。ワーク搬送装置100の支持機構12とピストンロッド28との連結部分には、圧力流体供給源16が接続されている。また、ピストンロッド28の内部には、第1流路28aと第2流路28bからなり、圧力流体供給源16と第1シリンダ室36aとを連通する圧力流体の流路が形成されている。第1流路28aは、シリンダチューブ22の軸方向(鉛直方向)に沿って延びている。第2流路28bは、ピストン26の近傍位置で第1流路28aと第1シリンダ室36aとを連通する。本実施形態における第2流路28bは、ピストンロッド28の中心軸から径方向外側を指向して、軸回りに90度間隔で4本形成されている。
【0024】
ロッドカバー20には、ロッド保持孔20aと、該ロッド保持孔20aから偏位して連通路20bが形成され、連通路20bの一端部はプラグ20cで閉塞されている。ロッド保持孔20aは、ロッドカバー20の中央に軸方向に貫通して形成され、ピストンロッド28を移動自在に保持する。連通路20bは、ロッド保持孔20aと平行に形成されている。プラグ20cは、連通路20bの一端部、すなわち、大気側の入口(矢印A方向)に着脱自在に取り付けられている。後述するバランサシリンダ10のロック解除動作の際、プラグ20cは取り外され、連通路20bの一端部には圧力流体供給源16の図示しないチューブを接続することができる。ロッド保持孔20aの第1シリンダ室36a側の端部には、ピストンロッド28とロッドカバー20との隙間を閉塞する環状のパッキン20dが取り付けられている。
【0025】
ヘッドカバー24は、ピストンナット収容孔24aと、3つの通気口24b〜24dを有する。ピストンナット収容孔24aは、第2シリンダ室36bと連通し、シリンダチューブ22の上昇時、すなわち、ピストンロッド28の相対的収縮時にピストンナット29を収容する。通気口24bは、軸方向に開口し、通気口24c、24dは径方向に開口している。通気口24b〜24dは、ピストンナット収容孔24aを介して第2シリンダ室36bと連通する(図3参照)。
【0026】
移動弁30は、円筒状に形成され、ピストンロッド28の外周に嵌合する。移動弁30は、ピストンロッド28に対して軸方向に沿って変位可能である。移動弁30には、径方向に指向した貫通孔であるラチェット収容孔30aが形成されている。ラチェット収容孔30aは、後述する位置決め用ラチェット38を収容する。移動弁30の外周とシリンダチューブ22の内周との間には、圧力流体が自由に移動することができる隙間が設けられている。
【0027】
図4に示すように、位置決め用ラチェット38は、鋼球38aと、スプリング38bと、プラグ38cとを有し、移動弁30のピストンロッド28に対する位置を決める。鋼球38aは、ピストンロッド28の外周面に臨むように配置されている。スプリング38bの一端部には、鋼球38aが着座する。プラグ38cは、外側からラチェット収容孔30aを閉塞し、スプリング38bの他端部を支持する。位置決め用ラチェット38は、スプリング38bの弾性力によって鋼球38aをピストンロッド28の外周面に向けて付勢する。
【0028】
ピストンロッド28の外周面に刻設された環状溝には、軸方向において第2流路28bを両側から挟み込むように環状の第1シール部材40aおよび第2シール部材40bが嵌合している。第1シール部材40aおよび第2シール部材40bは、シリンダチューブ22の下降に伴って、ピストンロッド28の一部が移動弁30の内部に到達した所定の位置で、第2流路28bを閉塞する。この場合、ピストンロッド28の外周面には、第2流路28bおよび第1シール部材40aよりもロッドカバー20に近い位置に、環状溝である第1係止溝28cおよび第2係止溝28dが形成されている(図4参照)。したがって、位置決め用ラチェット38の鋼球38aが第1係止溝28cまたは第2係止溝28dに嵌合することにより、移動弁30が所定の保持力でピストンロッド28に保持される。なお、係止溝の数は、3つ以上でもよい。すなわち、位置決め用ラチェット38は、複数の係止溝のいずれかに選択的に係合する。
【0029】
ピストンロッド28の外周面における第1シール部材40a、第2シール部材40b、第2流路28b、第1係止溝28cおよび第2係止溝28dの相対的な位置関係と移動弁30の軸方向の長さは、位置決め用ラチェット38の係合位置に応じてバランサシリンダ10が「通常の使用状態(ロック解除状態)」と「ロック状態」とを切換可能に設定される。
【0030】
消音部材34a〜34cは、ヘッドカバー24の通気口24b〜24dに取り付けられている。消音部材34a〜34cは、前記の通り、焼結金属を材質としており、内部を流体(空気)が通過することができる。消音部材34a〜34cにより、流体の排気音を低減できる。
【0031】
次に、前記のように構成されたバランサシリンダ10の動作・作用をワーク搬送装置100との関係で以下に説明する。通常の使用状態では、位置決め用ラチェット38は、ピストンロッド28の第1係止溝28cに係合し、移動弁30の内周面とピストンロッド28の外周面の隙間には、上方側に配置された第1シール部材40aのみが挿入されており、ピストンロッド28の第2流路28bは第1シリンダ室36aに連通している。
【0032】
ピストンロッド28の第1流路28aに圧力流体が給排されていないとき、すなわち、第1流路28aと外部との間が遮断されているとき、ピストンロッド28は停止した状態にある。このとき、第1シリンダ室36a内の流体は圧縮され、シリンダチューブ22、テーブル18およびワークWを合わせた重量と釣り合う分だけ圧力が高くなっている。
【0033】
停止状態からシリンダチューブ22を上昇させる際には、図5の一点鎖線矢印に示すように、圧力流体供給源16からピストンロッド28の第1流路28aに圧力流体を供給する。第1流路28aを通過した圧力流体は複数の第2流路28bで分岐し、移動弁30とピストン26に挟まれた第1シリンダ室36aの下方領域に流入する。
【0034】
下方領域に流入した圧力流体は、移動弁30の外周面とシリンダチューブ22の内壁面との隙間を通り、移動弁30とロッドカバー20に挟まれた第1シリンダ室36aの上方領域に流入する。
【0035】
第1シリンダ室36aに圧力流体が供給されることにより、第1シリンダ室36a内の圧力が上昇する。このため、シリンダチューブ22に鉛直上方向の推力が生じ、シリンダチューブ22は上昇するに至る。その際、シリンダチューブ22にヘッドカバー24を介して連結されているワークWも前記シリンダチューブ22とともに上昇し、例えば搬送に供されることになる。
【0036】
一方、停止状態からシリンダチューブ22を下降させるときは、第1シリンダ室36aの圧力流体を第1流路28a、第2流路28bおよび図示しないバルブを介して大気中へ開放する。これにより、第1シリンダ室36aの圧力が低下し、シリンダチューブ22は自重により下降する。
【0037】
以上のシリンダチューブ22の停止、上昇および下降の各動作については、例えば作業者が、目視によりワークWの位置を確認しながら、図示しないコントローラを操作し、圧力流体の給排を制御することで実行できる。この場合、シリンダチューブ22が所望の高さに達したときに、作業員が圧力流体の給排を停止すると、シリンダチューブ22はその位置で停止する。
【0038】
次に、シリンダチューブ22が過度に下降した場合におけるバランサシリンダ10のロック動作について説明する。例えば、重量のあるワークWをテーブル18に載置して作業している際に、作業者が圧力流体を排出する操作を過度に行ったとき、移動弁30がロッドカバー20に当接するまでシリンダチューブ22が下降する。この当接により、位置決め用ラチェット38の鋼球38aが押し戻されて第1係止溝28cから離脱する。この結果、係止状態が解除されて、移動弁30がピストンロッド28に対して鉛直下方向に変位し、鋼球38aが第2係止溝28dに嵌合する。すなわち、シリンダチューブ22のそれ以上の下降変位は阻止されることになる。
【0039】
図6は、図3に示すバランサシリンダ10の一部省略拡大断面図であり、シリンダチューブ22の下降時のストローク終端近傍のロック状態を示している。図6に示すように、ロック状態では、位置決め用ラチェット38が第2係止溝28dに係止している。このように、位置決め用ラチェット38の係合位置の変更に伴って、第1シール部材40aおよび第2シール部材40bは、移動弁30とピストンロッド28との隙間に位置しており、この結果、第2流路28bが閉塞されロック状態にある。ロック状態となる位置は、ピストンロッド28の軸方向における第2係止溝28d、第2流路28b、第1シール部材40aおよび第2シール部材40bの位置関係により決められ、ピストン26と移動弁30は離間している位置にある。このように、シリンダチューブ22が過度に下降した場合には、移動弁30がロッドカバー20に衝突してピストンロッド28との係合位置が変更されるとともに、圧力流体の排出が自動的に停止される。すなわち、第1シリンダ室36aから第2流路28bへの圧力流体の流れが遮断されて第1シリンダ室36aが密閉状態になることにより、シリンダチューブ22はピストンロッド28に対してそれ以上変位することが抑制される。この結果、シリンダチューブ22は、下降時のストローク終端の近傍位置、すなわち、ストローク終端に達する前に確実に停止するため、ピストン26が移動弁30と衝突することはなく、過大な荷重がかかることが抑制される。なお、バランサシリンダ10のロック動作時、解除ピン32の他端部は、ピストン26の底面から鉛直下方向(矢印B方向)に突出し、後述するロック状態の解除動作時に使用される。
【0040】
最後に、上記のようなロック状態の解除動作について説明する。ロック状態を解除し、再び作業者による圧力流体の給排操作を可能にするためには、まず、図3に示すプラグ20cをロッドカバー20から外して、第1シリンダ室36aを大気に開放し、シリンダチューブ22を上昇可能な状態にする。
【0041】
次に、圧力流体供給源16の図示しないチューブを連通路20bの一端側、すなわち、大気側の入口(矢印A方向)に接続し、圧力流体の供給を開始する。これにより、連通路20bを介して第1シリンダ室36aに圧力流体が供給され、ロック状態のまま、シリンダチューブ22が上昇する。
【0042】
図7は、図3に示すバランサシリンダ10がロック解除される直前の状態を示す一部省略拡大断面図である。ロック状態のまま、シリンダチューブ22が上昇し続けると、図7に示すようにシリンダチューブ22は上昇時のストローク終端の近傍位置に達する。このとき、ピストン26の底面より突出している解除ピン32の他端部がヘッドカバー24に当接する。その結果、ヘッドカバー24が解除ピン32の他端部を鉛直上方向(矢印A方向)に押圧する。これにより、解除ピン32の一端部がピストン26の上面から鉛直上方向に突出し、移動弁30をロッドカバー20側へ押圧する。そのために、ロック動作時とは反対に、移動弁30がピストンロッド28に対して鉛直上方向に変位し、位置決め用ラチェット38を構成する鋼球38aは第2係止溝28dから離脱後、第1係止溝28cに嵌合する。これにより、第2流路28bが再び第1シリンダ室36aと連通し、この結果、バランサシリンダ10のロック状態が解除される。
【0043】
このように、本実施形態に係るバランサシリンダ10によれば、シリンダチューブ22の下降時におけるストローク終端の近傍位置で確実に作動を停止し、その停止位置でロック状態にすることができる。すなわち、シリンダチューブ22の下降に伴ってピストンロッド28に対する移動弁30の係合位置を変更させるとともに、第1シリンダ室36aと第2流路28bの連通状態を遮断して第1シリンダ室36a内を密閉状態にすることで、ストローク終端に達する前に停止できる。このため、ピストン26が移動弁30に衝突することを回避することが可能になる。また、停止位置でピストンロッド28とシリンダチューブ22の間をロック状態にできるため、バランサシリンダ10のメンテナンスを容易に行うことが可能となる効果が得られる。
【0044】
また、本実施形態に係るバランサシリンダ10において、ピストン26は、軸方向に貫通して形成されたピン収容孔26aと、一端部が第1シリンダ室36a、他端部が第2シリンダ室36bにそれぞれ臨み、ピン収容孔26aに軸方向に沿って変位可能に収容された解除ピン32と、を有している。また、ロッドカバー20は、第1シリンダ室36aと圧力流体供給源16とを連通可能な連通路20bを有している。そして、連通路20bから第1シリンダ室36aへの圧力流体の供給に伴い、シリンダチューブ22の上昇時のストローク終端の近傍位置において、ヘッドカバー24が解除ピン32を介して移動弁30を押圧し、位置決め用ラチェット38(係止部材)の係合位置を第2係止溝28dから第1係止溝28cへ移動させる。すなわち、連通路20bから圧力流体を供給することで、位置決め用ラチェット38(係止部材)の係合位置を通常の使用状態(ロック解除状態)に対応する位置(第1係止溝28c)に戻して第2流路28bの閉塞状態を解除できるため、ピストンロッド28とシリンダチューブ22の間のロック状態を容易に解除することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係るバランサシリンダ10において、ピストンロッド28の他端部は、ワーク搬送装置100を構成する支持機構12に固定されている。これにより、ピストンロッド28側が鉛直方向で変位することなく、シリンダチューブ22側が鉛直方向に変位するため、圧力流体供給源16の図示しないチューブをシリンダチューブ22の昇降動作に合わせて追従移動させる必要がない。すなわち、ピストンロッド28に対して圧力流体を安定的に給排することができる。また、図1に示すようにピストンロッド28と圧力流体供給源16との連結部分がワーク搬送装置100の上方領域に設けられるとき、支持機構12の下方領域で昇降するシリンダチューブ22の周囲に作業スペースを広く確保することができる。
【0046】
さらにまた、本実施形態に係るバランサシリンダ10のヘッドカバー24は、ヘッドカバー24の外周面に開口して形成され、第2シリンダ室36bを大気と連通する通気口24b〜24dと、通気口24b〜24dに取り付けられ、空気が通過可能な消音部材34a〜34cとを有する。これにより、第2シリンダ室36b内の空気は消音部材34a〜34cを介して大気中に排出されるため、排気音を低減させることができる。
【0047】
またさらに、本実施形態に係るバランサシリンダ10を取り付けたワーク搬送装置100は、バランサシリンダ10を構成するシリンダチューブ22を鉛直方向に沿って案内するガイド14を備える。このため、シリンダチューブ22の昇降時においてテーブル18およびワークWの揺れを抑えることができ、安定した動作を確保できる。さらに、バランサシリンダ10のシリンダチューブ22には、ヘッドカバー24を介し、ワーク搬送用部材としてテーブル18を着脱自在に連結しているため、ワークWの大きさに対応して選択することができる。なお、ワークWを吊り下げて搬送したい場合には、テーブル18の代わりに、例えばフック状のワーク搬送用部材をバランサシリンダ10に取り付けてもよい。ワークWの形状や大きさに応じて選択することができる。
【0048】
次に、第2の実施形態に係るバランサシリンダ50について説明する。なお、上述した第1の実施形態に係るバランサシリンダ10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0049】
図8は、第2の実施形態に係るバランサシリンダ50の通常の使用状態を示す縦断面図、図9は、図8に示すバランサシリンダ50の一部省略分解斜視図である。図8および図9に示すように、本実施形態に係るバランサシリンダ50は、ロッドカバー20と移動弁30との間に接触時の衝撃を吸収する衝撃吸収機構42を備える点で上述した第1の実施形態とは相違している。衝撃吸収機構42は、弾性部材であるスプリング42aと、スプリング42aの一端部を支持するスプリング押さえ42bと、スプリング押さえ42bを軸方向で所定位置に位置決めする止め輪42cと、から構成される。スプリング42aの一端部は、スプリング押さえ42bのフランジ部に着座し、その他端部は移動弁30の一面に着座する。止め輪42cは、ピストンロッド28の外周面に刻設された環状溝に嵌合してスプリング押さえ42bの移動を阻止する。
【0050】
以下、バランサシリンダ50のロック動作について説明する。図10は、図8に示すバランサシリンダ50においてシリンダチューブ22が下降してストローク終端の近傍位置に至った際のバランサシリンダ50のロック状態を示す一部省略拡大断面図である。例えば、重量のあるワークWをテーブル18に載置して作業している際に、作業者が圧力流体を排出する操作を行い、シリンダチューブ22が過度に下降した場合、衝撃吸収機構42の止め輪42cがロッドカバー20のロッド保持孔20aに取り付けられたパッキン20dに当接する。シリンダチューブ22がさらに下降すると、スプリング42aが弾性変形して収縮し、スプリング押さえ42bの他端部は移動弁30の一面に着座する。スプリング42aの弾性力により、シリンダチューブ22の下降速度は減速する。
【0051】
移動弁30が衝撃吸収機構42に所定以上の力で当接すると、位置決め用ラチェット38の鋼球38aが押し戻されて第1係止溝28cから離脱し、さらに、移動弁30が鉛直下方向に移動すると、鋼球38aが第2係止溝28dに嵌合する。このとき、第1シール部材40aと第2シール部材40bが移動弁30の内周面とピストンロッド28の外周面との隙間に介在することで、第1シリンダ室36aと第2流路28bの連通が遮断され、第1シリンダ室36a内が密閉状態になる。この結果、シリンダチューブ22は、下降時のストローク終端に達する前に停止し、その停止位置でロック状態となる。
【0052】
このように、本実施形態に係るバランサシリンダ50によれば、シリンダチューブ22の下降時のストローク終端の近傍位置において、衝撃吸収機構42によってロッドカバー20との接触時の衝撃を吸収して緩やかに停止させ、その停止位置でピストンロッド28とシリンダチューブ22の間をロック状態にすることができる。
【0053】
なお、本発明に係るバランサシリンダは、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、上述の実施形態では、ワーク搬送装置100を構成する支持機構12にピストンロッド28を固定したが、支持機構12にシリンダチューブ22を固定し、ワークWがピストンロッド28とともに昇降するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0054】
10、50…バランサシリンダ
16…圧力流体供給源
20…ロッドカバー
22…シリンダチューブ
24…ヘッドカバー
26…ピストン
28…ピストンロッド
28a…第1流路
28b…第2流路
28c…第1係止溝
28d…第2係止溝
30…移動弁
36a…第1シリンダ室
36b…第2シリンダ室
38…位置決め用ラチェット(係止部材)
40a…第1シール部材
40b…第2シール部材
42…衝撃吸収機構
42a…スプリング
42b…スプリング押え
42c…止め輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10