特開2019-44952(P2019-44952A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-44952エアシリンダ用流体回路およびその設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-44952(P2019-44952A)
(43)【公開日】2019年3月22日
(54)【発明の名称】エアシリンダ用流体回路およびその設計方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/064 20060101AFI20190222BHJP
【FI】
   F15B11/064
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-197673(P2017-197673)
(22)【出願日】2017年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2017-165113(P2017-165113)
(32)【優先日】2017年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 芳行
(72)【発明者】
【氏名】浅葉 毅
(72)【発明者】
【氏名】風間 晶博
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 満
(72)【発明者】
【氏名】張 護平
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089BB14
3H089BB27
3H089CC01
3H089DB86
3H089GG03
(57)【要約】
【課題】固定オリフィスを設ける必要を無くす等流体回路の簡素化を図るとともに、圧縮空気の消費量の低減を図る。
【解決手段】エアシリンダ用流体回路10は、圧縮空気の給排を切り換える切換弁14とエアシリンダ12のシリンダポート部34、36との間を配管16、18で接続したものであって、配管16、18の音速コンダクタンスが切換弁14およびシリンダポート部34、36の音速コンダクタンスよりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気の給排を切り換える切換弁とエアシリンダのシリンダポート部との間を配管で接続したエアシリンダ用流体回路であって、
前記配管の音速コンダクタンスが前記切換弁および前記シリンダポート部の音速コンダクタンスよりも小さい
ことを特徴とするエアシリンダ用流体回路。
【請求項2】
請求項1記載のエアシリンダ用流体回路において、
前記配管の音速コンダクタンスが前記切換弁および前記シリンダポート部の音速コンダクタンスの1/2以下である
ことを特徴とするエアシリンダ用流体回路。
【請求項3】
請求項1記載のエアシリンダ用流体回路において、
前記配管と前記シリンダポート部との間にスピードコントローラが介設され、前記配管の音速コンダクタンスが前記スピードコントローラの音速コンダクタンスよりも小さい
ことを特徴とするエアシリンダ用流体回路。
【請求項4】
請求項3記載のエアシリンダ用流体回路において、
前記配管の音速コンダクタンスが前記切換弁、前記シリンダポート部および前記スピードコントローラの音速コンダクタンスの1/2以下である
ことを特徴とするエアシリンダ用流体回路。
【請求項5】
請求項4記載のエアシリンダ用流体回路において、
前記配管の音速コンダクタンスが前記スピードコントローラの音速コンダクタンスの略1/2である
ことを特徴とするエアシリンダ用流体回路。
【請求項6】
請求項1記載のエアシリンダ用流体回路において、
前記切換弁の排気ポートにサイレンサが設けられ、前記配管の音速コンダクタンスが前記サイレンサの音速コンダクタンスよりも小さい
ことを特徴とするエアシリンダ用流体回路。
【請求項7】
請求項6記載のエアシリンダ用流体回路において、
前記配管の音速コンダクタンスが前記切換弁、前記シリンダポート部および前記サイレンサの音速コンダクタンスの1/2以下である
ことを特徴とするエアシリンダ用流体回路。
【請求項8】
圧縮空気の給排を切り換える切換弁とエアシリンダのシリンダポート部との間を配管で接続したエアシリンダ用流体回路の設計方法であって、
エアシリンダ用データベース、配管用データベースおよび切換弁用データベースの中から所定のものを選択して、前記配管の音速コンダクタンスが前記切換弁および前記シリンダポート部の音速コンダクタンスよりも小さくなるように設計することを特徴とするエアシリンダ用流体回路の設計方法。
【請求項9】
請求項8記載のエアシリンダ用流体回路の設計方法であって、
前記エアシリンダ用流体回路は前記配管と前記シリンダポート部との間にスピードコントローラが介設されるものであり、スピードコントローラ用データベースの中から所定のものを選択して、前記配管の音速コンダクタンスが前記スピードコントローラの音速コンダクタンスよりも小さくなるように設計することを特徴とするエアシリンダ用流体回路の設計方法。
【請求項10】
請求項8記載のエアシリンダ用流体回路の設計方法であって、
前記エアシリンダ用流体回路は前記切換弁の排気ポートにサイレンサが設けられるものであり、サイレンサ用データベースの中から所定のものを選択して、前記配管の音速コンダクタンスが前記サイレンサの音速コンダクタンスよりも小さくなるように設計することを特徴とするエアシリンダ用流体回路の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアシリンダの流体を給排する流体回路およびその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エアシリンダの流体回路にスピードコントローラ(可変オリフィス機構)を設け、エアシリンダに供給する圧縮空気の流量またはエアシリンダから排出する圧縮空気の流量を調整することでピストンの移動速度を調整する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、流体圧シリンダに供給する圧力流体の流量を調整可能なスピードコントローラを、流体圧シリンダのポートと駆動切換弁とを接続する配管に設けた流体圧システムが記載されている。
【0004】
一般に、エアシリンダの流体回路を構成する配管は、ピストンの動作を早めてシリンダのレスポンスタイムを短縮するため、その有効断面積を大きくし、エアの流通抵抗を小さくしておくのが常識である。
【0005】
特許文献2には、シリンダから離れた位置にスピードコントローラを配置するとともに、シリンダとスピードコントローラとを容積低減部を備えた配管で接続したものが記載されている。これによれば、配管が長くなっても、ピストンの移動速度を高精度に調節できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−12746号公報
【特許文献2】特開2017−89820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、エアシリンダの流体回路を構成する配管は、通常、その有効断面積が大きく設定されているため、エアシリンダの内部に到達しないで配管内に貯留した圧縮空気が、切換弁の排出位置への切り換え時に大気に放出されてしまう。すなわち、エアシリンダの動作に直接寄与しないまま捨てられる圧縮空気が相当量存在し、圧縮空気の消費量が多くなる。また、スピードコントローラを装着しない場合を想定して、エアシリンダのポート等に流体回路の基準抵抗となる固定オリフィスを設けておくことも必要になる。特許文献2では、配管の容積が小さくされているが、圧縮空気の消費量低減を図るものではない。
【0008】
本発明は、配管によって流体回路の基準抵抗が概ね決まるように設計するもので、固定オリフィスを設ける必要を無くす等流体回路の簡素化を図るとともに、圧縮空気の消費量の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエアシリンダ用流体回路は、圧縮空気の給排を切り換える切換弁とエアシリンダのシリンダポート部との間を配管で接続したものであり、配管の音速コンダクタンスが切換弁およびシリンダポート部の音速コンダクタンスよりも小さいことを特徴とする。
【0010】
上記のエアシリンダ用流体回路によれば、回路全体の抵抗が配管によって最も影響を受けるので、エアシリンダに固定オリフィスを設ける必要がない(エアシリンダに微細な孔を加工する必要がない)。また、圧縮空気の消費量を低減することができる。
【0011】
上記のエアシリンダ用流体回路において、配管の音速コンダクタンスが切換弁およびシリンダポート部の音速コンダクタンスの1/2以下であるのが好ましい。これによれば、回路全体の抵抗が配管によって決まるので、エアシリンダに固定オリフィスを設ける必要がないほか、配管を基準としてエアシリンダの使用速度を設定することができる。
【0012】
また、配管とシリンダポート部との間にスピードコントローラが介設される場合にあっては、配管の音速コンダクタンスがスピードコントローラの音速コンダクタンスよりも小さいことが必要である。この場合、配管の音速コンダクタンスが切換弁、シリンダポート部およびスピードコントローラの音速コンダクタンスの1/2以下であるのが好ましい。これによれば、配管とシリンダポート部との間にスピードコントローラが介設される場合においても、回路全体の抵抗が配管によって支配される。特に、配管の音速コンダクタンスがスピードコントローラの音速コンダクタンスの略1/2であるときは、前記使用速度を最高使用速度としてそれよりも所定量低い速度までの範囲で、使用速度を良好な感度で調整することができる。
【0013】
さらに、切換弁の排気ポートにサイレンサが設けられる場合にあっては、配管の音速コンダクタンスがサイレンサの音速コンダクタンスよりも小さいことが必要である。この場合、配管の音速コンダクタンスが切換弁、シリンダポート部およびサイレンサの音速コンダクタンスの1/2以下であるのが好ましい。これによれば、切換弁の排気ポートにサイレンサが設けられる場合においても、回路全体の抵抗が配管によって支配される。
【0014】
本発明に係るエアシリンダ用流体回路の設計方法は、圧縮空気の給排を切り換える切換弁とエアシリンダのシリンダポート部との間を配管で接続したエアシリンダ用流体回路の設計方法である。そして、エアシリンダ用データベース、配管用データベースおよび切換弁用データベースの中から所定のものを選択して、配管の音速コンダクタンスが切換弁およびシリンダポート部の音速コンダクタンスよりも小さくなるように設計することを特徴とする。エアシリンダ用流体回路がスピードコントローラまたはサイレンサを備える場合は、スピードコントローラ用データベースまたはサイレンサ用データベースの中から所定のものを選択して、配管の音速コンダクタンスがそれらの音速コンダクタンスよりも小さくなるように設計する。このように設計すれば、配管によって流体回路の基準抵抗を概ね決めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエアシリンダ用流体回路は、回路全体の抵抗が配管によって支配されるので、エアシリンダに固定オリフィスを設ける必要がなく、流体回路を簡素化することができる。また、圧縮空気の消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るエアシリンダ用流体回路の概略図である。
図2図2Aは、図1のエアシリンダ用流体回路のA部拡大図であり、図2Bは、図1のエアシリンダ用流体回路のB部拡大図である。
図3】配管の内径、長さおよび音速コンダクタンスの関係を示す図である。
図4図1のエアシリンダ用流体回路の設計方法に係るフローチャートの一部である。
図5図1のエアシリンダ用流体回路の設計方法に係るフローチャートの残部である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るエアシリンダ用流体回路について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施形態に係るエアシリンダ用流体回路を示す。
【0018】
エアシリンダ用流体回路10は、複動型のエアシリンダ12と切換弁14との間を第1配管16および第2配管18で接続したものである。
【0019】
エアシリンダ12は、シリンダチューブ20、エンドカバー22、ロッドカバー24、ピストン26およびピストンロッド28を含む。円筒状のシリンダチューブ20の軸方向一端にエンドカバー22が固定され、シリンダチューブ20の軸方向他端にロッドカバー24が固定される。シリンダチューブ20の内部にはピストン26が摺動自在に設けられ、一端がピストン26に連結されたピストンロッド28の他端がロッドカバー24に挿通されて外部に延びる。シリンダチューブ20の内部空間は、エンドカバー22側の第1シリンダ室30とロッドカバー24側の第2シリンダ室32とに区画される。
【0020】
エンドカバー22には、第1シリンダ室30に圧縮空気を給排するための第1シリンダポート部34が設けられる。図2Aに示すように、第1シリンダポート部34は、エンドカバー22の側面に開口する開口部34aとこれに続く穴部34bとを有する。ロッドカバー24には、第2シリンダ室32に圧縮空気を給排するための第2シリンダポート部36が設けられる。図2Bに示すように、第2シリンダポート部36は、ロッドカバー24の側面に開口する開口部36aとこれに続く穴部36bとを有する。
【0021】
第1シリンダポート部34の開口部34aには第1スピードコントローラ38が装着され、第2シリンダポート部36の開口部36aには第2スピードコントローラ40が装着される。第1スピードコントローラ38は、第1シリンダ室30から排出される圧縮空気の流量を手動により調整可能なものであり、第2スピードコントローラ40は、第2シリンダ室32から排出される圧縮空気の流量を手動により調整可能なものである。すなわち、第1スピードコントローラ38および第2スピードコントローラ40はメータアウトと呼ばれる形式のものであるが、シリンダ室に供給する圧縮空気の流量を調整可能なメータインと呼ばれる形式のものであってもよい。
【0022】
図2Aに示すように、第1スピードコントローラ38は、管継手38aの内部にニードル弁38bが配設されてなる。ニードル弁38bに連結されたつまみ38cを手動で操作することにより、管継手38aの内部を所定方向に流れる圧縮空気の流量を調整することができる。管継手38aは、エアシリンダ12の第1シリンダポート部34に接続されるポート接続部38dおよび第1配管16に接続される配管接続部38eを有する。
【0023】
図2Bに示すように、第2スピードコントローラ40は、管継手40aの内部にニードル弁40bが配設されてなる。ニードル弁40bに連結されたつまみ40cを手動で操作することにより、管継手40aの内部を所定方向に流れる圧縮空気の流量を調整することができる。管継手40aは、エアシリンダ12の第2シリンダポート部36に接続されるポート接続部40dおよび第2配管18に接続される配管接続部40eを有する。
【0024】
切換弁14は、バルブハウジング42、スプール44、電磁コイル46、スプリング48等から構成される。バルブハウジング42は、供給配管50および減圧弁52を介してコンプレッサ54に接続される供給ポート56と、第1配管16に接続される第1出力ポート58と、第2配管18に接続される第2出力ポート60と、大気に接続される二つの排気ポート62a、62bとを備える。バルブハウジング42の内部にスプール44が摺動自在に配設される。各排気ポート62a、62bにはサイレンサ64a、64bが設けられている。
【0025】
電磁コイル46に通電しないとき、スプール44はスプリング48の付勢力で第1位置に保持され、電磁コイル46に通電したとき、スプール44はスプリング48の付勢力に抗して第2位置に移動する。スプール44が第1位置にあるとき、第1出力ポート58は排気ポート62aに接続されるとともに第2出力ポート60は供給ポート56に接続される(図1参照)。スプール44が第2位置にあるとき、第1出力ポート58は供給ポート56に接続されるとともに第2出力ポート60は排気ポート62bに接続される。
【0026】
エアシリンダ用流体回路10は、回路全体の抵抗が第1配管16および第2配管18によって最も影響を受けるように設計される。すなわち、第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスは、切換弁14、第1シリンダポート部34、第2シリンダポート部36、第1スピードコントローラ38、第2スピードコントローラ40およびサイレンサ64a、64bの各音速コンダクタンスよりも小さくなるように設計される。特に、第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスが上記各回路要素の音速コンダクタンスの1/2以下である場合は、回路全体の抵抗が第1配管16および第2配管18によって決まり、上記各回路要素に左右されない。
【0027】
なお、音速コンダクタンスは、2000年のJIS規格(JIS B 8390-2000)で採用されたISO方式による流量表示式の所定の係数で、有効断面積あるいはCV値と同様、エアの流れ易さを表す指標である。音速コンダクタンスの単位は、dm3/(s・bar)である。音速コンダクタンスが小さいほどエアが流れるときの抵抗が大きいことを意味する。
【0028】
ここで、配管の音速コンダクタンスについて述べる。図3は、配管の内径、配管の長さおよび配管の音速コンダクタンスの関係を示したものである。具体的には、配管の内径が5.0mm、4.0mm、3.0mm、2.0mm、1.0mmのそれぞれ場合について、配管の長さを0.1〜5.0mの範囲で変えたときの音速コンダクタンスの値を示したものである。図3に示されるように、配管の内径が小さいほど音速コンダクタンスは小さく、配管が長いほど音速コンダクタンスは小さい。例えば、配管の長さを2mとした場合、配管の内径を上記各値としたときの音速コンダクタンスは、それぞれ1.63、0.92、0.44、0.15、0.02である。
【0029】
第1配管16および第2配管18を含めたエアシリンダ用流体回路10における各回路要素の音速コンダクタンスは、例えば、以下のように設計される。
【0030】
第1配管16および第2配管18については、それらの内径を3.0mmとし、それらの長さを2.0mとする。これにより、第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスはいずれも0.44となる。なお、第1配管16および第2配管18の長さは、基本的には、エアシリンダ12と切換弁14の設置環境(エアシリンダ12と切換弁14との間の設置距離)に応じて決められるものである。
【0031】
第1シリンダポート部34および第2シリンダポート部36については、各穴部34b、36bの内径を10.9mmとする。これにより、第1シリンダポート部34および第2シリンダポート部36の音速コンダクタンスは16.8となる。なお、従来においては、第1シリンダポート部34および第2シリンダポート部36の各穴部34b、36bは、固定オリフィスとして作用させるため、内径が2mm程度に設計されていた。
【0032】
切換弁14は、音速コンダクタンスが1.92のものを採用し、サイレンサ64a、64bは、音速コンダクタンスが2.0のものを採用する。第1スピードコントローラ38および第2スピードコントローラ40については、いずれも音速コンダクタンスが0.88のものを採用する。
【0033】
上記の設計例によれば、第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスは、切換弁14、第1シリンダポート部34、第2シリンダポート部36、第1スピードコントローラ38、第2スピードコントローラ40およびサイレンサ64a、64bの各音速コンダクタンスの1/2以下である。したがって、エアシリンダ用流体回路10全体の抵抗は、第1配管16および第2配管18によって決まる。また、第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスは、第1スピードコントローラ38および第2スピードコントローラ40の音速コンダクタンスのちょうど1/2となっている。
【0034】
本発明の実施形態に係るエアシリンダ用流体回路10およびその具体的な設計例は、以上のとおりであり、次にその動作および作用効果について説明する。
【0035】
切換弁14が第1位置にあるとき、コンプレッサ54から減圧弁52を介して供給される圧縮空気は、切換弁14の供給ポート56および第2出力ポート60を通って第2配管18内に供給される。第2配管18内に供給された圧縮空気は、第2スピードコントローラ40および第2シリンダポート部36を経て第2シリンダ室32に供給される。また、第1シリンダ室30内の圧縮空気は、第1シリンダポート部34を通り、第1スピードコントローラ38で流量が調整された後、第1配管16内に排出される。第1配管16内に排出された圧縮空気は、切換弁14の第1出力ポート58および排気ポート62aを通り、さらにサイレンサ64aを通って大気中に放出される。これにより、ピストン26はエンドカバー22に向かって駆動され、ピストンロッド28は引き込まれる。
【0036】
電磁コイル46に通電がされ切換弁14が第2位置にあるとき、コンプレッサ54から減圧弁52を介して供給される圧縮空気は、切換弁14の供給ポート56および第1出力ポート58を通って第1配管16内に供給される。第1配管16内に供給された圧縮空気は、第1スピードコントローラ38および第1シリンダポート部34を経て第1シリンダ室30に供給される。また、第2シリンダ室32内の圧縮空気は、第2シリンダポート部36を通り、第2スピードコントローラ40で流量が調整された後、第2配管18内に排出される。第2配管18内に排出された圧縮空気は、切換弁14の第2出力ポート60および排気ポート62bを通り、さらにサイレンサ64bを通って大気中に放出される。これにより、ピストン26はロッドカバー24に向かって駆動され、ピストンロッド28は押し出される。
【0037】
次に、第1配管16および第2配管18の内部に貯留する圧縮空気が切換弁14の排気ポート62a、62bから放出されることによる圧縮空気の消費量について述べる。第1配管16および第2配管18の内径が5.0mmである場合の上記圧縮空気の消費量を100とすると、第1配管16および第2配管18の内径が4.0mm、3.0mm、2.0mm、1.0mmの場合の上記圧縮空気の消費量は、それぞれ64、36、16、4である。すなわち、第1配管16および第2配管18の内径を小さくすることで上記圧縮空気の消費量は大幅に少なくなる。
【0038】
エアシリンダ12の最高使用速度(ピストン26の最高駆動速度)は、シリンダチューブ20の内径等にも依存するが、上記設計例では、第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスに応じた値となる。そして、エアシリンダ12の使用速度は、第1スピードコントローラ38および第2スピードコントローラ40を駆使することにより、該最高使用速度からそれよりも所定量低い速度までの範囲で調整することができる。上記設計例では、第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスを第1スピードコントローラ38および第2スピードコントローラ40の音速コンダクタンスの1/2としているので、つまみ38cおよびつまみ40cによる操作領域の全範囲で有効にエアシリンダ12の使用速度を調整することができる。
【0039】
本実施形態のエアシリンダ用流体回路10、特に上記設計例によれば、エアシリンダ用流体回路10全体の抵抗が第1配管16および第2配管18によって決まるので、エアシリンダ12に固定オリフィスを設ける必要がない。また、第1配管16および第2配管18の内径が小さいので、圧縮空気の消費量を低減することができる。さらに、エアシリンダ12の最高使用速度を第1配管16および第2配管18に基づいて決めることができる。
【0040】
本実施形態のエアシリンダ用流体回路10では、第1シリンダポート部34および第2シリンダポート部36にそれぞれ第1スピードコントローラ38および第2スピードコントローラ40を装着したが、第1スピードコントローラ38および第2スピードコントローラ40は装着しなくてもよい。すなわち、第1配管16および第2配管18をそれぞれ第1シリンダポート部34および第2シリンダポート部36に直接接続してもよい。また、切換弁14の排気ポート62a、62bにサイレンサ64a、64bを設けたが、サイレンサ64a、64bは設けなくてもよい。
【0041】
次に、本発明に係るエアシリンダ用流体回路10の設計方法について好適な実施形態を挙げ、図4および図5を参照しながら以下に説明する。
【0042】
エアシリンダ用流体回路10のエアシリンダ12、第1配管16、第2配管18、第1スピードコントローラ38、第2スピードコントローラ40およびサイレンサ64a、64bを設計するに際して、予め必要なデータベースが作成されている。すなわち、エアシリンダ用データベース、配管用データベース、スピードコントローラ用データベース、切換弁用データベースおよびサイレンサ用データベースが作成されている。
【0043】
エアシリンダ用データベースは、複数のエアシリンダデータからなり、各エアシリンダデータはシリンダチューブの内径(シリンダのボア径)およびシリンダポート部の音速コンダクタンスを含む。配管用データベースは、複数の配管データからなり、各配管データは当該配管の内径を含む。スピードコントローラ用データベースは、複数のスピードコントローラデータからなり、各スピードコントローラデータは当該スピードコントローラの音速コンダクタンスを含む。切換弁用データベースは、複数の切換弁データからなり、各切換弁データは当該切換弁の音速コンダクタンスを含む。サイレンサ用データベースは、複数のサイレンサデータからなり、各サイレンサデータは当該サイレンサの音速コンダクタンスを含む。
【0044】
S1において、エアシリンダ12のストローク量、エアシリンダ12の要求されるストローク時間、エアシリンダ12に供給されるエア圧、エアシリンダ12の負荷、第1配管16の長さ、第2配管18の長さ等の条件が入力される。
【0045】
S2において、エアシリンダ12のストローク量、エアシリンダ12に供給されるエア圧、エアシリンダ12の負荷等の条件に基づいて、エアシリンダ用データベースの中から一つのエアシリンダが選択される。
【0046】
S3において、配管用データベースの中から最も小さい内径の配管が選択され、S4において、第1配管16の長さおよび第2配管18の長さも考慮して、第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスが求められる。
【0047】
S5において、S4で求められた第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスがS2で選択されたエアシリンダのシリンダポート部の音速コンダクタンスより小さいか否かが判定される。第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスがシリンダポート部の音速コンダクタンスより小さいと判定されたときは、S6に移行する。そうでないときは、S2に戻り、既に選択されたエアシリンダを除いて、エアシリンダが再び選択される。
【0048】
S6において、S4で求められた第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンス、S2で選択されたエアシリンダの音速コンダクタンス、シリンダチューブの内径等に基づいて、エアシリンダのストローク時間がシミュレーション計算される。
【0049】
S7において、S6で計算された値と要求されるストローク時間とが比較される。計算値が要求されるストローク時間より大きいと判断されたとき、すなわち要求を満たさないと判断されたときは、S8に進む。計算値が要求されるストローク時間以下であると判断されたとき、すなわち要求を満たすと判断されたときは、S9に移行する。
【0050】
S8において、配管用データベースの中から最も大きい内径の配管が選択されているか否かが判定される。最も大きい内径であるときは、S2に戻り、既に選択されたエアシリンダを除いて、エアシリンダが再び選択される。そうでないときは、S3に戻り、既に選択された配管を除いて配管選定用データベースの中から最も小さい内径の配管が再び選択される。
【0051】
S9において、スピードコントローラ用データベースの中から、音速コンダクタンスが第1配管16および第2配管18よりも大きいスピードコントローラであって、かつ、その中で音速コンダクタンスが最も小さいスピードコントローラが選択される。また、切換弁用データベースの中から、音速コンダクタンスが第1配管16および第2配管18よりも大きい切換弁であって、かつ、その中で音速コンダクタンスが最も小さい切換弁が選択される。さらに、サイレンサ用データベースの中から、音速コンダクタンスが第1配管16および第2配管18よりも大きいサイレンサであって、かつ、その中で音速コンダクタンスが最も小さいサイレンサが選択される。
【0052】
S10において、S9で選択されたスピードコントローラ、切換弁およびサイレンサの各音速コンダクタンスが加味されて、エアシリンダのストローク時間がシミュレーション計算される。
【0053】
S11において、S10で計算された値と要求されるストローク時間とが比較される。計算値が要求されるストローク時間より大きいと判断されたときは、S9に戻り、前回選択されたスピードコントローラ、切換弁およびサイレンサのうち音速コンダクタンスが最も小さいものについて改めて選択がなされる。例えば、前回のスピードコントローラの音速コンダクタンスが前回の切換弁およびサイレンサの音速コンダクタンスより小さいときは、スピードコントローラについては音速コンダクタンスが前回より一つ大きいものが選択され、切換弁およびサイレンサについては前回と同じものが選択される。
【0054】
S11でストローク時間の計算値が要求されるストローク時間以下であると判断されたときは、S12に移行する。S12において、最後に選択された配管の内径を第1配管16および第2配管18に適用することを決定するとともに、最後に選択されたエアシリンダ、スピードコントローラ、切換弁およびサイレンサを採用することを決定し、終了する。
【0055】
本実施形態の設計方法によれば、第1配管16および第2配管18の音速コンダクタンスは、エアシリンダ12のシリンダポート部、第1スピードコントローラ38、第2スピードコントローラ40、切換弁14およびサイレンサ64a、64bの各音速コンダクタンスより小さい。すなわち、配管によって流体回路の基準抵抗が概ね決まる。また、データベースの中から機器を選択するので、設計が簡単である。
【0056】
本実施形態の設計方法では、S9において、音速コンダクタンスが単に配管よりも大きいスピードコントローラの中から選択したが、音速コンダクタンスが配管の2倍以上であるスピードコントローラの中から選択してもよい。切換弁およびサイレンサについても同様である。
【0057】
本発明に係るエアシリンダ用流体回路およびその設計方法は、上述の実施形態および設計例に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0058】
10…エアシリンダ用流体回路 12…エアシリンダ
14…切換弁 16…第1配管
18…第2配管 34…第1シリンダポート部
36…第2シリンダポート部 38…第1スピードコントローラ
40…第2スピードコントローラ 64a、64b…サイレンサ
図1
図2
図3
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図5