【実施例】
【0066】
(実施例1)
ウシ胎児血清の非存在下での、膵内分泌前駆細胞への細胞株H1のヒト胚性幹細胞の分
化−BMP/TGF−B経路の調節は膵臓内胚葉集団の産生の改善及びSOX2+集団の
百分率の低下をもたらす。
この実施例は、CDX2及びSOX2の低レベルの発現を有する一方でPDX−1及び
NKX6.1の非常に高い発現レベルを有する膵臓内胚葉培養物が生成され得ることを示
すために実施した。
【0067】
ヒト胚性幹細胞株H1(hESC H1)は、多様な継体(継体40〜継体52)で収
穫し、10μMのY27632(Rock阻害剤、カタログ番号Y0503、米国ミズー
リ州のSigmaAldrich)を追補したmTeSR(登録商標)1培地(カナダ、
VancouverのStemCell Technologies)において、単一細
胞として、1cm
2当たり細胞100,000個の濃度で、MATRIGEL(商標)(
1:30希釈、米国ニュージャージー州のBD Biosciences)で被覆された
皿上に播種した。播種の48時間後に、培養物を不完全なPBS(Mg又はCaを含まな
いリン酸緩衝生理食塩水)中で約30秒間洗浄し、インキュベートした。培養物は、以下
のようにして膵内分泌系統に分化させた。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−3日):ステージ1の培地(0.1%の無脂肪
酸BSA(カタログ番号68700、米国アイオワ州のProliant)、0.001
2g/mLの重炭酸ナトリウム(カタログ番号S3187、米国ミズーリ州のSigma
Aldrich)、1X GlutaMax(商標)(カタログ番号35050−079
、Invitrogen)、5mMのD−グルコース(カタログ番号G8769、米国ミ
ズーリ州のSigmaAldrich)が追補された、100ng/mLのGDF8(米
国ミネソタ州R&D Systems)及び1μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤、
14−Prop−2−エン−1−イル−3,5,7,14,17,23,27−ヘプタア
ザテトラシクロ[19.3.1.1〜2,6〜.1〜8,12〜]ヘプタコサ−1(25
),2(27),3,5,8(26),9,11,21,23−ノナエン−16−オン、
米国特許出願第12/494,789号、参照によりその全容が本明細書に援用される)
を含有するMCDB−131培地(カタログ番号10372−019、米国カリフォルニ
ア州のInvitrogen)中で、細胞を1日培養した。次いで、0.1%の無脂肪酸
BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、
5mMのD−グルコース、100ng/mLのGDF8、及び100nMのMCX化合物
を追補したMCDB−131倍地中で細胞を1日培養した。次いで、0.1%の無脂肪酸
BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、
5mMのD−グルコース、及び100ng/mLのGDF8を追補したMCDB−131
倍地中で細胞を1日培養した。
b.ステージ2(原腸管−2日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、5mMの
D−グルコース、及び25ng/mLのFGF7を追補したMCDB−131倍地で2日
間処理した。
c.ステージ3(前腸−2日):ステージ2の細胞を、ステージ3の培地(ITS−X
(Invitrogen)の1:200希釈液)、2.5mMのグルコース、1X Gl
utaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BS
A、25ng/mLのFGF7、10ng/mLのアクチビン−A(R & D sys
tems)、0.25μMのSANT−1(shh阻害剤、SigmaAldrich)
、1μMのレチノイン酸(RA)(SigmaAldrich)、及び200nMのTP
B(PKC活性化剤、カタログ番号565740;米国ニュージャージー州のEMD)を
追補した、100nMのLDN−193189(BMP受容体阻害剤;カタログ番号04
−0019;米国カリフォルニア州のStemgent)を含有するMCDB−131倍
地)中で、1日培養した。次いで、それらの細胞を、10nMのLDN−193189を
追補したステージ3の培地中で更に1日培養した。
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−2日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの1:
200希釈、2.5mMのグルコース、1XのGlutaMax(商標)、0.0015
g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、5
0nMのRA、200nMのTPB、及び50nMのLDN−193189を追補したM
CDB−131倍地中で2日培養した。
e.ステージ5(膵臓内胚葉−2〜7日):ステージ4の細胞を、ITS−Xの1:2
00希釈、2.5mMのグルコース、1XのGlutaMax(商標)、0.0015g
/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、及び
50nMのRAを追補したMCDB−131倍地中で2〜7日培養した。
【0068】
特定のステージで、リアルタイムPCR、免疫組織化学、又は蛍光活性化細胞選別(F
ACS)により試料を収集し、解析した。
【0069】
FACS解析については、hESC由来の細胞をTrypLE Express(カタ
ログ番号12604、Invitrogen)にて37℃で3〜5分間インキュベートす
ることによって単一細胞懸濁液中に放出した。次いで、細胞を染色緩衝液(0.2%無脂
肪酸BSAを含有するPBS)(カタログ番号554657、米国ニュージャージー州の
BD Biosciences)において2回洗浄した。細胞内抗体染色については、細
胞を最初にGreen Fluorescent LIVE/DEAD細胞染料(Inv
itrogenカタログ番号L23101)にて4℃で20分間インキュベートして、解
析中の生/死の区別を可能にし、次いで、冷たいPBSにて一回洗浄した。細胞を250
μLのCytofix/Cytoperm Buffer(BD Bioscience
sカタログ番号554722)にて4℃で20分間固定し、次いで、BD Perm/W
ash Buffer Solution(BD Biosciencesカタログ番号
554723)で2回洗浄した。細胞を、(二次抗体の適切な種の)2%正常血清を追補
したPerm/Wash緩衝液からなる染色/ブロッキング溶液100μL中に再懸濁し
た。次いで、経験的に予め決定した希釈で一次抗体を用いて細胞を4℃で30分間インキ
ュベートし、次いで、Perm/Wash緩衝液にて2回洗浄した。最後に、適切な二次
抗体を用いて細胞を4℃で30分間インキュベートし、次いで、Perm/Wash緩衝
液で2回洗浄してから、BD FACS Canto IIで解析した。
【0070】
以下の希釈の一次抗体を使用した。ウサギ抗インスリン(1:100;カタログ番号C
27C9、米国マサチューセッツ州のCell Signaling)、マウス抗インス
リン(1:100;カタログ番号ab6999、米国マサチューセッツ州のAbcam)
、マウス抗グルカゴン(1:1250;カタログ番号G2654;Sigma−Aldr
ich)、ウサギ抗シナプトフィジン(1:100;カタログ番号A0010、米国カリ
フォルニア州のDako)、ウサギ抗クロモグラニンA(1:800;Dako)、マウ
ス抗NKX6.1(1:50;DSHB、米国アイオワ州のUniversity of
Iowa)、マウス抗CDX2(1:250;Invitrogen)、ヤギ抗Neu
roD(1:500;R&D Systems)、マウス抗SOX2(米国カリフォルニ
ア州のBD)、マウス抗NKX2.2(DSHB)、マウス抗Pax6(米国カリフォル
ニア州のBD)、マウス抗PDX−1(米国カリフォルニア州のBD)。以下の希釈で二
次抗体を使用した。ヤギ抗マウスAlexa 647(1:500;Invitroge
n)、ヤギ抗ウサギPE(1:200;Invitrogen)、ロバ抗ヤギ(1:80
0;Invitrogen)。二次抗体を添加後に、試料を4℃で30分間インキュベー
トし、次いで、Perm/Wash緩衝液にて最終洗浄した。BD FACS Diva
ソフトウェアを使用して細胞をBD FACS Canto IIで解析し、少なくとも
30,000イベントを獲得した。
【0071】
図1A〜
図1Gは、実施例1に従って分化し、S3の2日目に解析した細胞のアイソタ
イプコントロール(
図1A)、クロモグラニン(
図1B)、KI−67(
図1C)、NK
X6.1(
図1D)、SOX2(
図1E)、CDX2(
図1F)、PDX−1(
図1G)
のFACSヒストグラム発現プロファイルを図示する。各マーカーの発現百分率を各ヒス
トグラムに示す。ステージ3の2日目に、細胞の95%以上がPDX−1(
図1G)の発
現について陽性であり、集団の細胞の約60%がSOX2(
図1E)の発現について陽性
であったが、CDX2(
図1F)若しくはNKX6.1(
図1D)、又はクロモグラニン
(
図1B)について陽性であったのは細胞の10%未満であった。KI−67陽性細胞の
百分率の高さによって示されているように、ステージ3では、有意な百分率の細胞が活性
細胞周期にあった(
図1C)。
【0072】
図2A〜
図2Gは、実施例1に従って分化し、S4の2日目に収穫した細胞の、FAC
S染色により決定したアイソタイプコントロール(
図2A)、クロモグラニン(
図2B)
、KI−67(
図2C)、NKX6.1(
図2D)、SOX2(
図2E)、CDX2(図
2F)、PDX−1(
図2G)の発現プロファイルを図示する。各マーカーの発現百分率
を各ヒストグラムに示す。ステージ3と同様に、細胞の95%以上がPDX−1(
図2G
)の発現について陽性であったが、CDX2の発現(
図2F)については細胞の約10%
が陽性であり、NKX6.1の発現(
図2D)については細胞の約40%が陽性であった
。SOX2の発現(
図2E)については細胞の約45%が陽性であり、これはS3より6
0%低い。クロモグラニンの発現は約3%であった(
図2B)。KI−67陽性細胞(図
2C)の百分率の高さによって示されているように、ステージ4では、有意な百分率の細
胞が活性細胞周期にあった。
【0073】
図3A〜
図3Gは、本実施例に概略を記載した分化プロトコルに続いて、ステージ5の
2日目に収穫した細胞のFACS解析により決定した相対発現プロファイルを図示する。
図3A:アイソタイプコントロール;
図3B:クロモグラニン;
図3C:KI−67;図
3D:NKX6.1;
図3E:SOX2;
図3F:CDX2;
図3G:PDX−1。各マ
ーカーの発現百分率を各ヒストグラムに示す。ステージ3及び4と同様に、細胞の95%
以上がPDX−1の発現について陽性であったが、CDX2の発現については細胞の約1
0%が陽性であり、NKX6.1の発現については細胞の約67%以上が陽性であった。
SOX2の発現は約50%であり、ステージ3と比較すると低いが、S4での発現と同様
であった。
【0074】
図4A〜
図4Gは、本実施例に概略を記載したプロトコルに従った分化のステージ5の
7日目に収穫し解析した細胞のFACS染色により測定したときのPDX−1(
図4G)
、NKX6.1(
図4D)、CDX2(
図4F)、SOX2(
図4E)、Ki−67(増
殖マーカー;
図4C)、及びクロモグラニン(膵内分泌腺マーカー;
図4B)の発現を図
示する。ステージ3及び4と同様に、細胞の>90%がPDX−1について陽性であった
が、CDX2の発現は10%未満であり、NKX6.1の発現は>70%に有意に増加し
、SOX2の発現は約2%に劇的に減少した。
【0075】
更に、SOX2、CDX2、及びNKX6.1を発現する細胞の大部分は、クロモグラ
ニンの発現について陰性であった(
図5A〜
図5Cを参照)。したがって、本実施例に概
略を記載したプロトコルに従って調製されたS5の培養物がもたらす細胞の集団において
、細胞の少なくとも50%はPDX−1及びNKX6.1を発現するが、CDX−2、S
OX2、及びクロモグラニンについては陰性である。表Iは、S3〜S5の様々な内胚葉
マーカーの発現百分率をまとめたものである。
【0076】
【表1】
*分化開始以降の総日数
【0077】
図6A〜
図6Tは、本実施例で概説したプロトコルに従って分化したS2、S3、S4
、及びS5の細胞のリアルタイムPCRによって測定し、未分化H1細胞における発現の
倍数変化として報告したmRNA発現プロファイルを図示する。ステージ3で、FOXe
1(
図6C)及びNKX2.1(
図6E)のような前方前腸マーカーの非常に低い発現が
認められた。しかし、腸管の胃領域をマークするSOX2(
図6M)及びOSR1(
図6
H)はステージ3で有意に上方調節され、それらの発現はS4〜S5で低下した。PTF
1a(
図6K)、NKX6.1(
図6G)、及びPDX−1(
図6I)のような膵臓内胚
葉マーカーは、培養のS5の2日目に最大発現レベルに達した。PDRデータは、細胞が
ステージ3でPDX−1+ SOX2+集団を通じた移行を経てからS4〜S5でPDX
−1+ NKX6.1+ SOX2− CDX2−になることを示している(
図6I、図
6G、
図6M、及び
図6Aを参照)。内分泌マーカー(クロモグラニン、インスリン、グ
ルカゴン、及びソマトステイン)の発現は、S5の終わりに最大発現レベルに達した。膵
内分泌前駆細胞マーカーNKX2.2、NeuroD、及びNGN3の発現は、S4〜S
5で最大発現レベルに達した。ZIC1及びSOX17のような他の系統のマーカーの発
現は、S4〜S5で低いままであった。
【0078】
結論として、本実施例で概説したプロトコルに従って分化したステージ5の2日目の細
胞は、CDX2及びSOX2を低レベルで発現する一方で、NKX6.1及びPDX−1
の高い発現レベルを維持する。タイムリーなBMP阻害、S4〜S5での低用量RAの使
用、及びS1〜S2での高グルコースの使用という独特の組み合わせが、実施例1に記載
の細胞集団を結果的にもたらしたと考えられる。
【0079】
(実施例2)
BMPの阻害及びPKC活性化がS3〜S4でSOX2の発現に与える影響
本実施例で概説したプロトコルは、BMPの阻害、FGF7の添加、及びPKCの活性
化がS3〜S4でのSOX2の発現に与える影響を明らかにするために行った。
【0080】
ヒト胚性幹細胞株H1の細胞は、多様な継体(継体40〜継体52)で収穫し、10μ
MのY27632を追補したmTesr(登録商標)1培地において、単一細胞として、
1cm
2当たり細胞100,000個の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希
釈)で被覆された皿上に播種した。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分
泌系統の細胞に分化した。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−3日):DEの開始の前に、培養物を洗浄し、
不完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、ステージ1
の培地を加えた。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒト胚性
幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X
GlutaMax(商標)、2.5mMのD−グルコース、100ng/mLのGDF
8、1.5μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤)を追補したMCDB−131培地で
1日処理した。次いで、2日目〜3日目にかけて、細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5m
Mのグルコース、及び100ng/mLのGDF8を追補したMCDB−131倍地で処
理した。
b.ステージ2(原腸管−3日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5m
MのD−グルコース、及び50ng/mLのFGF7を追補したMCDB−131倍地で
3日間処理した。
c.ステージ3(前腸−3日):ステージ2の細胞を、50ng/mLのFGF7、5
0nM又は200nMのLDN−193189、及び/又は200nMのTPBの存在下
若しくは非存在下で、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X G
lutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸B
SA、0.25μMのSANT−1、20ng/mLのアクチビン−A、2μMのRAを
追補したMCDB−131倍地で処理した。下の表IIに記載した組み合わせを用いた培
地にて細胞を3日間インキュベートした。
【0081】
【表2】
【0082】
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−3日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの1:
200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015
g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、2
00nMのTPB、400nMのLDN−193189、2μMのALk5阻害剤(SD
−208、Molecular Pharmacology 2007,72:152〜
161に開示されている)、及び100nMのCYP26A阻害剤(N−{4−[2−エ
チル−1−(1H−1,2,4−トリアゾル−1−イル)ブチル]フェニル}−1,3−
ベンゾチアゾール−2−アミン、ベルギー、Janssen)を追補したMCDB−13
1倍地で3日間処理した。
【0083】
上記の全ての条件に関し、mRNAをS2〜S4で収集し、リアルタイムPCRを用い
て解析した。S3の対照条件は、FGF7、AA、SANT、RA、及び200nMのL
DN−193189を上記の工程cに記載されている濃度で用いた培養物を指す。
図7A
〜
図7Gに示したPCRデータにより明らかなように、S3でのLDN−193189の
除去は、NGN3のような内分泌マーカー(
図7D)及びクロモグラニンのような膵内分
泌マーカー(
図7Cを参照)の有意な減少をもたらした。S3でのPKC活性化剤の添加
及びLDN−193189の除去は、内分泌マーカーを更に減少させる一方でNKX6.
1の発現を高めた(
図7A〜
図7Gを参照)。更に、50nMのLDN−193189の
添加は、内分泌マーカー(クロモグラニン及びNGN3)の誘導において200nMのL
DN−193189に匹敵する有効性を有した。S3でのLDN−193189の除去及
びTPBの添加は、CDX2(
図7E)及びアルブミン(
図7F)の発現を高める一方で
SOX2(
図7G)の発現を抑制した。更に、FGF7及びLDN−193189の両方
の除去は、LDN−193189を除去しFGF7を保持した培養物と比較して、有意に
SOX2(
図7G)の発現を高め、アルブミン(
図7F)の発現を低下させた。これらの
データは、BMPの阻害、FGFの活性化、及びPKCの活性化の正確な調節が、PDX
−1及びNKX6.1が豊富な一方でCDX2、SOX2及びアルブミンが低い内胚葉ド
メインをもたらし得ることを実証している。最後に、S3〜S4でのBMPの持続的な阻
害は、プロ内分泌遺伝子の発現及びSOX2発現の上方調節を高めた。このことは、膵内
分泌遺伝子を増す一方で、膵臓の発達においては欠如しているか又は低いが胃のような前
方前腸内胚葉臓器に存在するSOX2の発現を上方調節しないように、BMPの阻害を正
確に調整する必要があることを裏付けている。
【0084】
(実施例3)
続いて内分泌マーカーを誘導するには、前腸ステージでのBMPの早期阻害が必要であ
る。
本実施例は、続いて内分泌マーカーを誘導するにはS3でBMPシグナル伝達を早期に
阻害する必要があることを示す。しかし、ステージ3でのBMPの持続的な阻害もまた、
SOX2の強発現を結果としてもたらす。内分泌マーカーの高発現及びSOX2の低発現
の両方を得るためには、SXO2及びCDX2の低発現を有する一方でプロ膵内分泌マー
カーを誘導するBMP阻害の勾配が必要である。
【0085】
ヒト胚性幹細胞株H1の細胞は、多様な継体(継体40〜継体52)で、10μMのY
27632を追補したmTesr(商標)1培地において、単一細胞として、1cm
2当
たり細胞100,000個の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)で被覆
された皿上に播種した。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分泌系統の細
胞に分化した。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−4日):DEの開始の前に、細胞を洗浄し、不
完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、S1の培地に
てインキュベートした。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒ
ト胚性幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム
、1X GlutaMax(商標)、2.5mMのD−グルコース、100ng/mLの
GDF8、1.5μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤)を追補したMCDB−131
培地で1日処理した。次いで、細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/m
Lの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5mMのグルコース、及
び100ng/mLのGDF8を追補したMCDB−131倍地で2日間(2〜4日目)
処理した。
b.ステージ2(原腸管−3日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5m
MのD−グルコース、及び50ng/mLのFGF7を追補したMCDB−131倍地で
3日間処理した。
c.ステージ3(前腸−3日):ステージ2の細胞を、ITS−Xの1:200希釈、
2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重
炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、20ng/mL
のアクチビン−A、2μMのRA、50ng/mLのFGF7、100nMのLDN−1
93189(1日目のみ又はステージ3の期間中)、及び200nMのTPBを追補した
MCDB−131倍地で処理した。いくつかの培地では、LDN−193189をステー
ジ3から除去した。
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−3日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの1:
200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015
g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、1
00nMのTPB、200nMのLDN−193189、2μMのALk5阻害剤、及び
100nMのCYP26A阻害剤を追補したMCDB−131倍地で3日間処理した。
e.ステージ5(膵臓内胚葉/内分泌−4日):ステージ4の細胞を、ITS−Xの1
:200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.001
5g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、200nMのLDN−1931
89、及び2μMのALk5阻害剤を追補したMCDB−131倍地で4日間処理した。
【0086】
図8A〜
図8Gに示すPCRの結果により明らかなように、ステージ3からのLDN−
193189(BMP阻害剤)の除去は、ステージ4及びステージ5でのプロ内分泌遺伝
子NGN3(
図8C)、NeuroD(
図8D)、クロモグラニン(
図8E)の発現を止
める。しかし、PDX−1(
図8B)及びNKX6.1(
図8A)の発現は、ステージ4
〜5でのNGN3及びNeuroDと比較して有意に下方調節されない。更に、ステージ
3でのLDN−193189の完全な除去は、CDX2の発現の有意な増加をもたらす(
図7F)。ステージ3の初日のLDN−193189の添加の後、ステージ3の2〜3日
目にそれを除去することは、NGN3及びNeuroDの発現を有意に高める一方で、ス
テージ4でのCDX2及びSOX2の発現を減少させた。ステージ3の期間中LDN−1
93189を保持した培養物は、S3〜S4でSOX2の非常に高い発現を示した(
図8
G)。このデータは、ステージ3の1日目のBMPの阻害が、膵内分泌マーカーをトリガ
する一方でSOX2及びCDX2の発現を抑制するのに十分であることを示している。
【0087】
要約すると、ステージ4〜5に内分泌前駆細胞の形成を誘導し、かつPDX−1及びN
KX6.1の発現を維持し、その一方でSOX2の発現を抑制するために、BMPの阻害
はステージ3の1日目に必要である。更に、ステージ3でのPKC活性剤の添加は、PD
X−1及びNKX6.1の発現を更に高めた。
【0088】
(実施例4)
ステージ3の1日目でのBMPシグナル伝達の阻害は、ステージ4で膵臓前駆細胞を生
成するために十分であり、一方、ステージ3の最終日でのBMPシグナル伝達の阻害は、
内分泌マーカーの発現の有意な低下をもたらす。
本実施例は、ステージ3でのBMPシグナル伝達の早期阻害が、膵内分泌前駆細胞マー
カーの誘導を可能にし、一方、ステージ3の後期でのBMPシグナル伝達の阻害が、ステ
ージ4での内分泌前駆細胞マーカーの発現レベルを有意に低下させることを示している。
【0089】
多様な継体(継体40〜継体52)のヒト胚性幹細胞株H1の細胞を、10μMのY2
7632を追補したmTesr(商標)1培地において、単一細胞として、1cm
2当た
り細胞100,000個の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)で被覆さ
れた皿上に播種した。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分泌系統の細胞
に分化した。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−4日):DEの開始の前に、培養物を洗浄し、
不完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、ステージ1
の培地を加えた。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒト胚性
幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X
GlutaMax(商標)、2.5mMのD−グルコース、100ng/mLのGDF
8、及び1.5μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤)を追補したMCDB−131培
地で1日処理した。次いで、細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mL
の重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5mMのグルコース、及び
100ng/mLのGDF8を追補したMCDB−131倍地で3日間処理した。
b.ステージ2(原腸管−3日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5m
MのD−グルコース、及び50ng/mLのFGF7を追補したMCDB−131倍地で
3日間処理した。
c.ステージ3(前腸−3日):ステージ2の細胞を、ITS−Xの1:200希釈、
2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重
炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、50ng/mL
のFGF7、2μMのRA、及び下の表IIIに記載した混合物を追補したMCDB−1
31倍地で3日間処理した。
【0090】
【表3】
【0091】
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−3日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの1:
200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015
g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、1
00nMのTPB、200nMのLDN−193189、2μMのALk5阻害剤、及び
100nMのCYP26A阻害剤を追補したMCDB−131倍地で3日間処理した。
【0092】
図9A〜
図9Hは、上記の培養条件の組み合わせに関しての膵臓内胚葉、内分泌前駆細
胞、及び前腸内胚葉マーカーの遺伝子発現プロファイルを図示する。前述の実施例と同じ
く、ステージ3の1日目のBMP経路の遮断は、膵内分泌マーカー、クロモグラニンの発
現による測定でのその後の内分泌プログラムの誘導のために重要である(
図9Cを参照)
。しかし、ステージ3の1日目でのBMP阻害剤の添加は、後続ステージでの内分泌マー
カーの発現をトリガする。更に、ステージ3の1日目でのBMP阻害剤の添加はまた、ス
テージ3〜4で、前腸マーカーであるSOX2の発現を減少させた(
図9H)。しかし、
ステージ3の最終日でのみBMP阻害剤を添加することは、ステージ3の1日目でのみB
MP阻害剤で処理した細胞と比較して、ステージ3の終わりに、SOX2の有意により高
い発現を示す。
図9A〜
図9Hに示す発現レベルは、SOX2の非常に高い発現レベルを
有する未分化H1細胞の発現レベルに相対している。前方前腸のマーカーであることに加
えて、SOX2は、ES細胞の多能性の維持において重要な周知の転写因子である。本実
施例は、BMPシグナル伝達の持続期間及び動力学に対するステージ3培養物の感度並び
にその後のSOX2の膵内分泌誘導及び発現への影響を明らかにした前述の結果を更に裏
付けている。
【0093】
(実施例5)
膵臓前腸ステージ(ステージ4)でのBMP阻害の最適用量
前述の実施例では、ステージ3でのBMP阻害の最適な期間について説明した。本実施
例では、S4の培地でのBMP阻害剤の最適な用量を特定する。
【0094】
多様な継体(継体40〜継体52)のヒト胚性幹細胞株H1の細胞を、mTesr(商
標)1培地において、10μMのY27632と、1cm
2当たり細胞100,000個
の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)で被覆された皿上に単一細胞とし
て播種した。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分泌系統の細胞に分化し
た。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−4日):DEの開始の前に、培養物を洗浄し、
不完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、ステージ1
の培地を加えた。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒト胚性
幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X
GlutaMax(商標)、2.5mMのD−グルコース、100ng/mLのGDF
8、1μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤)を追補したMCDB−131培地で1日
処理した。次いで、2日目〜4日目にかけて、細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.
0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5mMの
グルコース、及び100ng/mLのGDF8を追補したMCDB−131倍地で処理し
た。
b.ステージ2(原腸管−3日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5m
MのD−グルコース、及び50ng/mLのFGF7を追補したMCDB−131倍地で
3日間処理した。
c.ステージ3(前腸−4日):ステージ2の細胞を、ITS−Xの1:200希釈、
2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重
炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、50ng/mL
のFGF7、2μMのRA、20ng/mLのアクチビン−A、100nMのLDN−1
93189、及び100nMのTPBを追補したMCDB−131倍地で1日処理した。
次いで、細胞を、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X Glu
taMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA
、0.25μMのSANT−1、50ng/mLのFGF7、2μMのRA、20ng/
mLのアクチビン−A、及び100nMのTPBを追補したMCDB−131倍地中で3
日間処理した。
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−4日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの1:
200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015
g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、200nMのLDN−19318
9、2μMのALk5阻害剤、100nMのCYP26A阻害剤、及び表IV(下記)に
記載した濃度のLDN−193189(LDN-193189-193189)を追補したMCDB−13
1倍地で、ステージ4の1〜4日目にかけて処理した。
【0095】
【表4】
【0096】
d.ステージ5(膵臓内胚葉/内分泌前駆細胞−3日):ステージ4の細胞を、ITS
−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0
.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、50nMのLDN−1
93189、及び1μMのALk5阻害剤を追補したMCDB−131倍地で3日間処理
した。
【0097】
上記の処理後に収穫した細胞のリアルタイムPCR解析の結果を
図10A〜
図10Hに
示す。この図は、50nM又は100nMのLDN−193189をS4の1日目又は2
日目又は3日目又は4日目に添加することが、内分泌マーカーの発現を延長する一方でS
4〜S5でのSOX2の低発現を維持することができることを示している(
図10A〜図
10Hを参照)。
【0098】
(実施例6)
前腸ステージ(ステージ3)でのBMP阻害の最適用量
本実施例は、ステージ3でのBMP阻害の最適用量、及びその後のステージ6での内分
泌マーカーへの影響を特定する。
【0099】
ヒト胚性幹細胞株H1の細胞は、多様な継体(継体40〜継体52)で、10μMのY
27632を追補したmTesr(商標)1培地において、単一細胞として、1cm
2当
たり細胞100,000個の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)で被覆
された皿上に播種した。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分泌系統の細
胞に分化した。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−4日):DEの開始の前に、培養物を洗浄し、
不完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、ステージ1
の培地を加えた。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒト胚性
幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X
GlutaMax(商標)、2.5mMのD−グルコース、100ng/mLのGDF
8、及び1.5μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤)を追補したMCDB−131培
地で1日処理した。次いで、2日目〜4日目にかけて、細胞を、0.1%の無脂肪酸BS
A、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.
5mMのグルコース、及び100ng/mLのGDF8を追補したMCDB−131倍地
で処理した。
b.ステージ2(原腸管−3日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5m
MのD−グルコース、及び50ng/mLのFGF7を追補したMCDB−131倍地で
3日間処理した。
c.ステージ3(前腸−3日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの1:200希釈、
2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重
炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、50ng/mL
のFGF7、2μMのRA、20ng/mLのアクチビン−A、100nMのTPB、及
び10〜50nMのLDN−193189を追補したMCDB−131倍地で1日処理し
た。次いで、細胞を、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X G
lutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸B
SA、0.25μMのSANT−1、50ng/mLのFGF7、2μMのRA、20n
g/mLのアクチビン−A、及び100nMのTPBを追補したMCDB−131倍地で
2日間処理した。
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−3日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの1:
200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015
g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、20nMのLDN−193189
、2μMのALk5阻害剤、100nMのCYP26A阻害剤、及び100nMのTPB
を追補したMCDB−131倍地で3日間処理した。
e.ステージ5(膵臓内胚葉/内分泌前駆細胞−3日):ステージ4の細胞を、ITS
−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0
.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、+/−25nMのLD
N−193189、及び/又は2μMのALk5阻害剤を追補したMCDB−131倍地
で3日間処理した。
f.ステージ6(膵内内分泌ホルモン生成−3日):ステージ5の細胞を、ITS−X
の1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0
015g/mLの重炭酸ナトリウム、及び2%の無脂肪酸BSAを追補したMCDB−1
31倍地で3日間処理した。
【0100】
図11A〜
図11Hは、内分泌マーカーの発現をトリガする一方でSOX2の低発現を
維持するには、ステージ3の1日目のBMPの低〜中等度の阻害が必要であることを示し
ている。更に、内分泌マーカーを高めながらステージ5でBMPを阻害することもまた、
SOX2の発現の上方調節につながった。
【0101】
本実施例のデータは、これまでの実施例で提示した結果を更に確定する。このデータは
、SOX2の発現を抑制しながら膵内分泌マーカーの誘導をトリガするにはステージ3〜
5でのBMP経路の正確な調整が必要であることを裏付けている。
【0102】
(実施例7)
S3(前腸ステージ)でのBMP阻害の最適な時間枠
本実施例は、後のステージでの内分泌の誘導を保持しかつSOX2の発現を減少させな
がら、BMPシグナル伝達を阻害するための、ステージ3における最適な時間枠を特定す
る。
【0103】
多様な継体(継体40〜継体52)のヒト胚性幹細胞株H1の細胞を、mTesr(商
標)1培地において、10μMのY27632と、1cm
2当たり細胞100,000個
の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)で被覆された皿上に単一細胞とし
て播種した。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分泌系統の細胞に分化し
た。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−4日):DEの開始の前に、培養物を洗浄し、
不完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、ステージ1
の培地を加えた。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒト胚性
幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X
GlutaMax(商標)、2.5mMのD−グルコース、100ng/mLのGDF
8、及び1.5μMのMCX化合物を追補したMCDB−131培地で1日処理した。次
いで、2日目〜4日目にかけて、細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/
mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5mMのグルコース、
及び100ng/mLのGDF8を追補したMCDB−131倍地で処理した。
b.ステージ2(原腸管−3日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5m
MのD−グルコース、及び50ng/mLのFGF7を追補したMCDB−131倍地で
3日間処理した。
c.ステージ3(前腸−3日):ステージ2の細胞を、ステージ3の最初の2時間のみ
又は6時間のみ又は24時間のみ、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコー
ス、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%
の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、50ng/mLのFGF7、2μMの
RA、20ng/mLのアクチビン−A、及び100nMのTPBを追補した、100n
MのLDN−193189を含有するMCDB−131倍地で処理した。
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−3日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの1:
200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015
g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、25nMのLDN−193189
、2μMのALk5阻害剤、100nMのCYP26A阻害剤、及び100nMのTPB
を追補したMCDB−131倍地で3日間処理した。
e.ステージ5(膵臓内胚葉/内分泌前駆細胞−3日):ステージ4の細胞を、ITS
−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0
.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、及び2μMのALk5
阻害剤を追補したMCDB−131倍地で3日間処理した。
【0104】
図12A〜
図12Gは、本実施例で収集したデータのリアルタイムPCR解析を示す。
ステージ3で少なくとも2時間BMP阻害剤で処理することは、Ngn3(
図12D)及
びNeuroD(
図12E)のようなプロ内分泌転写因子の発現をトリガする一方で、S
OX2(
図12G)の非常に低い発現を維持することができ、S4〜S5でのNKX6.
1(
図12A)及びPDX−1(
図12B)の発現を有意に増加させる。しかし、ステー
ジ5の3日目に、CDX2の発現は、BMP阻害剤で24時間処理した細胞よりも、その
阻害剤で2時間又は6時間処理した細胞においての方が高かった(
図12F)。
【0105】
本実施例のデータは、CDX2の発現及びSOX2の発現を低レベルに維持するために
、及び膵臓内胚葉マーカーの高発現を維持する一方で内分泌の分化を開始するために、B
MP経路の24時間の阻害が最適であることを示唆している。
【0106】
(実施例8)
ステージ3(前腸段階)及びステージ4(膵臓前腸前駆細胞ステージ)の最適な期間
本実施例は、膵内分泌系統の細胞集団への多能性細胞の段階的分化におけるS3及びS
4の最適な期間を決定するために実施した。
【0107】
多様な継体(継体40〜継体52)のヒト胚性幹細胞株H1の細胞を、10μMのY2
7632を追補したmTesr(商標)1培地において、単一細胞として、1cm
2当た
り細胞100,000個の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)で被覆さ
れた皿上に播種した。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分泌系統の細胞
に分化した。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−4日):DEの開始の前に、培養物を洗浄し、
不完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、ステージ1
の培地を加えた。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒト胚性
幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X
GlutaMax(商標)、2.5mMのD−グルコース、100ng/mLのGDF
8、1.5μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤)を追補したMCDB−131培地で
1日処理した。次いで、2日目〜4日目にかけて、細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5m
Mのグルコース、及び100ng/mLのGDF8を追補したMCDB−131倍地で処
理した。
b.ステージ2(原腸管−2日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、2.5m
MのD−グルコース、及び50ng/mLのFGF7を追補したMCDB−131倍地で
2日間処理した。
c.ステージ3(前腸−2〜3日):ステージ2の細胞を、ITS−Xの1:200希
釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mL
の重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、50ng/
mLのFGF7、2μMのRA、20ng/mLのアクチビン−A、100nMのTPB
を追補した、100nMのLDN−193189を含有するMCDB−131倍地で1日
処理した。次いで、細胞を、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1
X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂
肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、50ng/mLのFGF7、2μMのRA、
20ng/mLのアクチビン−A、及び100nMのTPBを追補したMCDB−131
倍地で処理した。
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−2〜3日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの
1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.00
15g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、25nMのLDN−1931
89、100nMのCYP26A阻害剤、及び100nMのTPBを追補したMCDB−
131倍地で2〜3日間処理した。
e.ステージ5(膵臓内胚葉/内分泌前駆細胞−2日):ステージ4の細胞を、ITS
−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0
.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、及び1μMのALk5
阻害剤を追補したMCDB−131倍地で2日間処理した。
f.ステージ6(膵内分泌前駆細胞/ホルモン−2日):ステージ5の細胞を、ITS
−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0
.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、及び2%の無脂肪酸BSAを追補したMCDB
−131倍地で2日間処理した。
【0108】
ステージ3、ステージ4、ステージ5、又はステージ6で収穫した試料のリアルタイム
PCR解析のデータを
図13A〜
図13Gに示す。このデータは、S3及びS4が2日間
である培養と比較して、S3及びS4を3日間に延長することがNKX6.1の発現を高
めることを示す(
図13A)。ステージ3で3日間処理した細胞は、S3及びS4の期間
が2日間だけである培養と比較したとき、プロ内分泌マーカーの発現の下方調節を示す(
図13D及び
図13E)。更に、ステージ4を3日間に延長することは、SOX2の発現
を有意に高めた(
図13G)。
【0109】
本実施例で得たデータは、これまでの実施例で生成されたデータと同じく、延長された
BMP阻害が前腸をSOX2の高い集団の方へ促すことを示している。本実施例及び前述
の実施例からのデータに基づき、ステージ3及びステージ4の最適な期間は2日間である
と結論することができる。理想的なプロトコルは、プロ内分泌マーカーの高レベルの発現
、NKX6.1の高発現、CDX2の低発現、及びSOX2の低発現を伴う分化された細
胞をもたらすであろう。
【0110】
(実施例9)
高グルコース及びB27サプリメントの存在下での、BMPの阻害への長時間の曝露は
、S3及びS4のSOX2の発現を有意に増加させる。
このプロトコルは、ホルモン産生細胞への多能性細胞の段階的分化の間にS3及びS4
でのSOX2の発現に影響を与える因子を決定するために行った。
【0111】
ヒト胚性幹細胞株H1の細胞は、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)被覆皿上
で培養し、mTesr(商標)1培地で70%のコンフルエンスまで培養し、以下のよう
に分化した。
a.未分化細胞を、0.2% FBS、100ng/mLのアクチビンA、20ng/
mLのWNT−3aが追補されたRPMI培地(Invitrogen)中で1日培養し
た。次いで、細胞を、0.5% FBS、100ng/mLのアクチビンAが追補された
RPMI培地で更に2日間処理した(ステージ1)。
b.ステージ1の細胞を、2%FBS、50ng/mLのFGF7を添加したDMEM
/F12培地で3日間処理した(ステージ2)。
c.ステージ2の細胞を、1%のB27、0.25%のSANT−1、2μMのRA、
100ng/mLのノギン(米国ミネソタ州のR & D systems)が追補され
たDMEM−高グルコース培地中で4日間培養した(ステージ3)。
d.ステージ3の細胞を、1%のB27、100ng/mLのノギン、1μMのALK
5阻害剤II(米国カリフォルニア州のAxxora)、及び50nMのTPBが追補さ
れたDMEM−高グルコース培地にて4日間処理した(ステージ4)。
【0112】
図14A〜
図14Hは、以下のマーカーに関して得られたステージ3の4日目に収穫し
た細胞のFACSヒストグラムを図示する:アイソタイプコントロール(
図14A)、ク
ロモグラニン(
図14B)、KI−67(
図14C)、NKX6.1(
図14D)、SO
X2(
図14E)、HNF3B(
図14F)、CDX2(
図14G)、PDX−1(
図1
4H)。各マーカーの発現百分率を各ヒストグラムに示す。ステージ3での細胞の大部分
は、PDX−1(
図14H)及びHNF3B(
図14F)の発現について陽性であり、N
KX6.1(
図14D)の発現について陰性であり、クロモグラニン(
図14B)及びC
DX2(
図14G)について低発現を示した。しかし、90%を超える細胞が、SOX2
(
図14E)についてもまた強陽性であった。これは、ステージ3では細胞の大部分がP
DX−1及びSOX2について陽性かつNKX6.1について陰性であり、膵臓のPDX
−1ドメインに前方の前腸集団と一貫した内胚葉集団の確立を示唆している。
【0113】
更に、本実施例で概要を述べたプロトコルを用いて生成した細胞集団において、ステー
ジ3でSOX2+であった細胞の百分率は、実施例1に概要を述べたプロトコルを用いて
生成した細胞集団においてSOX2+であった細胞の百分率より有意に高かった。この差
は、本実施例のステージ3での培養培地における、BMPアンタゴニスト(ノギン)への
長時間の曝露並びにFGF7及びPKC活性化剤の欠如に起因し得る。
【0114】
図15A〜
図15Gは、実施例9に従って分化した、S4の2日目の以下のマーカーの
FACSヒストグラム発現プロファイルを示す。
図15A:アイソタイプコントロール、
図15B:NKX6.1、
図15C:KI−67、
図15D:クロモグラニン、
図15E
:SOX2、
図15F:CDX2、
図15G:PDX−1。各マーカーの発現百分率を各
ヒストグラムに示す。
【0115】
図16A〜
図16Fは、実施例9に従って分化された細胞のS4の4日目の以下のマー
カーのFACSヒストグラム発現プロファイルを示す。
図16A:アイソタイプコントロ
ール、
図16B:NKX6.1、
図16C:クロモグラニン、
図16D:SOX2、
図1
6E:CDX2、
図16F:PDX−1。各マーカーの発現百分率を各ヒストグラムに示
す。
【0116】
下の表Vは、本実施例に概要を述べたプロトコルに従って分化した細胞のS3及びS4
での内胚葉マーカーの発現率(%)について得られたデータをまとめたものである。
【0117】
【表5】
【0118】
図17A〜
図17Jは、実施例9に従って分化したヒト胚性幹細胞株H1の細胞におけ
る以下の遺伝子の発現のリアルタイムPCR解析の結果を示す。
図17A:CDX2、図
17B:HHex、
図17C:FOXE1、
図17D:IPF1(PDX−1)、
図17
E:NKX2.1、
図17F:NKX2.2、
図17G:NKX6.1、
図17H:PR
OX1、
図17I:SOX2、
図17J:SOX9。
【0119】
図14〜
図17及び表Vに見られるように、ステージ4の2日目から4日目に、NKX
6.1の有意な増加があり、一方、PDX−1の高発現は維持された。ステージ3からス
テージ4にかけてSOX2の発現は低下したが、75%までの細胞がなおSOX2+であ
った。
図5と同じく、CDX2+細胞、SOX2+細胞、及びNKX6.1+細胞は、ク
ロモグラニン集団から相互排他的であった。これは、実施例9に概要を述べたプロトコル
を用いて生成したステージ4の4日目の細胞集団のNKX6.1+ SOX2+ PDX
−1+ CDX2−クロモグラニン陰性の割合が50%までであることを示唆している。
これは、S4〜S5にPDX−1+ NKX6.1+ SOX2−、CDX2−、クロモ
グラニン陰性の割合が約40〜70%で、PDX−1+ NKX6.1+ SOX2+が
2〜25%であった実施例1で生成された細胞集団と対照的である。明らかに、実施例1
のプロトコルを用いて生成された細胞は、PDX−1+かつNXK6.1+でありながら
も実施例9で生成された細胞と比較してSOX2及びCDX2について低い又は陰性の集
団として定義されたように、はるかに高い膵臓内胚葉の百分率を有していた。
【0120】
本実施例で得たデータは、高グルコース及びB27サプリメントの存在下でのBMP阻
害への長時間の曝露がステージ3及び4の分化でのSOX2の発現を有意に増加させるこ
との裏付けを提供するものである。
【0121】
(実施例10)
これまでに公開されたプロトコルは、ステージ3〜4で有意な数のSOX2+の集団の
形成をもたらす。
Kroonらは、ヒト胚性幹細胞からの膵臓内胚葉系統の細胞を調製するためのプロト
コルを公開している(Nature Biotech 2008,26:443〜452
、これ以降においては「Kroon」)。本明細書において提供される実施例においては
、ヒト胚性幹細胞は、Kroonのプロトコルに従って分化させ、分化の異なる段階に特
徴的なマーカーの発現についてアッセイした。
【0122】
ヒト胚性幹細胞株H1の細胞をMATRIGEL(商標)(1:30希釈)被覆皿上に
播種し、70%のコンフルエンスまでmTesr(商標)培地中で培養し、Kroonに
よりこれまでに公開されているプロトコルを用いて以下のように分化した。
a)未分化細胞を、0.2%のFBS、100ng/mLのアクチビンA、20ng/
mLのWNT−3aが追補されたRPMI培地に1日曝露した後、0.5%のFBS、1
00ng/mLのアクチビンAが追補されたRPMI培地にて更に2日間処理した(ステ
ージ1)。
b)ステージ1の細胞を、2%のFBS、50ng/mLのFGF7を添加したRPM
I培地で3日間処理した(ステージ2)。
c)ステージ2の細胞を、1%のB27、0.25μMのSANT−1、2μMのRA
、50ng/mLのノギン(ミネソタ州のR & D systems)が追補されたD
MEM−高グルコース培地にて3日間処理した(ステージ3)。
d)ステージ3の細胞を、1%のB27が追補されたDMEM−高グルコース培地中で
3日間培養した(ステージ4)。
e)ステージ4の細胞をウェルから掻き取り、1%のB27が追補されたDMEM−高
グルコース培地中にクラスターとして2日間再懸濁した。
【0123】
図18A〜
図18Gは、実施例10に従って分化した、S3の3日目の以下のマーカー
のFACSヒストグラム発現プロファイルを示す。アイソタイプコントロール(
図18A
)、NKX6.1(
図18B)、クロモグラニン(
図18C)、SOX2(
図18D)C
DX2(
図18E)、KI−67(
図18F)、PDX−1(
図18G)。各マーカーの
発現百分率を各ヒストグラムに示す。
【0124】
図19A〜
図19Gは、実施例10に従って分化された細胞のS4の5日目の以下のマ
ーカーのFACSヒストグラム発現プロファイルを示す。アイソタイプコントロール(図
19A)、NKX6.1(
図19B)、クロモグラニン(
図19C)、SOX2(
図19
D)、CDX2(
図19E)、KI−67(
図19F)、PDX−1(
図19G)。各マ
ーカーの発現百分率を各ヒストグラムに示す。
【0125】
図18及び
図19に示されるように、ステージ4の終わり(5日目)までに、懸濁液中
の細胞のクラスターの20%までがNKX6.1+ PDX−1+ SOX2−であり、
かつ20%までがPDX−1+ NKX6.1+ SOX2+であった。これらの結果は
、実施例10に従って生成された細胞集団の有意な割合がステージ4でNKX6.1+か
つSOX2+であったことを示している。
【0126】
下の表VIは、本実施例で生成された細胞のS3〜S4での内胚葉マーカーの百分率を
まとめたものである。
【0127】
【表6】
*懸濁培養物中での最後の2日
【0128】
(実施例11)
アスコルビン酸の添加は、多ホルモン細胞数を有意に減少させ、単一ホルモンのインス
リン陽性細胞数を同時に増加させた。
【0129】
ホルモン生成細胞への多能性細胞の分化中のマーカーの発現にアスコルビン酸が与える
影響をテストした。以下のように、分化の全ての段階でグルコースを追補し、ステージ3
、4及び5の形成でアスコルビン酸を追補した培地中で細胞を培養した。
【0130】
多様な継体(継体40〜継体52)のヒト胚性幹細胞株H1の細胞を、mTesr(商
標)1培地において、10μMのY27632と、1cm
2当たり細胞100,000個
の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)被覆皿上に単一細胞として播種し
た。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分泌系統の細胞に分化した。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−3日):DEの開始の前に、培養物を洗浄し、
不完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、ステージ1
の培地を加えた。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒト胚性
幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X
GlutaMax(商標)、5mMのD−グルコース、100ng/mLのGDF8、
及び1μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤)を追補したMCDB−131培地で1日
処理した。次いで、細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸
ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、5mMのグルコース、100ng/mL
のGDF8、及び100nMのMCX化合物が追補されたMCDB−131倍地で2日目
に処理し、続いて、更に1日、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭
酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、5mMのグルコース、及び100ng
/mLのGDF8が追補されたMCDB−131倍地にて処理した。
b.ステージ2(原腸管−2日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、5mMの
D−グルコース、及び25ng/mLのFGF7を追補したMCDB−131倍地で2日
間処理した。
c.ステージ3(前腸−2日):ステージ2の細胞を、ITS−Xの1:200希釈、
2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重
炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、10ng/mLのアクチビン−A、25ng/
mLのFGF7、0.25μMのSANT−1、1μMのRA、200nMのTPB(P
KC活性剤)、100nMのLDN−193189(BMP受容体阻害剤)を追補したM
CDB−131倍地で1日処理した。次いで、細胞を、ITS−Xの1:200希釈、2
.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭
酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、10ng/mLのアクチビン−A、25ng/m
LのFGF7、0.25μMのSANT−1、1μMのRA、200nMのTPB(PK
C活性剤)、10nMのLDN−193189を追補したMCDB−131倍地で更に1
日処理した。いくつかの培養物は、ステージ3の期間中、0.25mMのアスコルビン酸
(カタログ番号A4544、Sigma、米国ミズーリ州)で処理した。
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−2日):ステージ3の細胞を、0.25mMのア
スコルビン酸あり又はなしで、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、
1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無
脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、50nMのRA、200nMのTPB、5
0nMのLDN−193189を追補したMCDB−131倍地で2日間処理した。
e.ステージ5(膵臓内胚葉−2〜7日):ステージ4の細胞を、0.25mMのアス
コルビン酸あり又はなしで、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコース、1
X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂
肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、50nMのRAを追補したMCDB−131
倍地で2〜7日間処理した。
【0131】
図20A〜
図20Jは、実施例11に従って分化したヒト胚性幹細胞株H1の細胞にお
ける以下の遺伝子の発現のリアルタイムPCR解析を示す。
図20A:ソマトスタチン、
図20B:PDX1、
図20C:Pax6、
図20D:Pax4、
図20E:NKX6.
1、
図20F:NGN3、
図20G:グルカゴン、
図20H:NeuroD、
図20I:
インスリン、
図20J:クロモグラニン。この図は、ステージ3、又はステージ3及び4
でのアスコルビン酸の添加が、ステージ4〜5でソマトスタチン及びグルカゴンの発現を
有意に減少させる一方で、インスリンの発現を増加させることを示している(
図20A、
図20G、及び
図20Iを参照)。更に、ステージ4〜5で、PDX−1及びNKX6.
1のような膵臓内胚葉マーカーの発現は、0.25mMのアスコルビン酸の添加によって
有意に変化しなかった(
図20B及び
図20Dを参照)。ステージ4〜5で、Pax6の
発現は下方調節され、Pax4の発現は維持された(
図20C及び
図20Dを参照)。S
3〜S5で+/−アスコルビン酸で処理した培養物は、ステージ5の終わりにインスリン
、グルカゴン、及びソマトスタチンホルモンに対して免疫染色された。表VIIは、イン
スリン陽性細胞、グルカゴン及びソマトスタチン陽性細胞、並びに多ホルモン細胞(1つ
の細胞内で2つ以上のホルモンを発現)の平均百分率をまとめたものである。
【0132】
【表7】
【0133】
(実施例12)
ステージ3でのアスコルビン酸の最適用量
本実施例は、単一ホルモン、PDX−1陽性、かつNKX6.1陽性のインスリン陽性
細胞を生成するために使用するアスコルビン酸の最適用量を決定するために実行した。
【0134】
多様な継体(継体40〜継体52)のヒト胚性幹細胞株H1の細胞を、mTesr(商
標)1培地において、10μMのY27632と、1cm
2当たり細胞100,000個
の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)被覆皿上に単一細胞として播種し
た。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分泌系統の細胞に分化した。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−3日):DEの開始の前に、培養物を洗浄し、
不完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、ステージ1
の培地を加えた。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒト胚性
幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X
GlutaMax(商標)、5mMのD−グルコース、及び100ng/mLのGDF
8と1μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤)を追補したMCDB−131培地で1日
処理した。次いで、細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸
ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、5mMのグルコース、100ng/mL
のGDF8、及び100nMのMCX化合物が追補されたMCDB−131倍地で2日目
に処理し、続いて、更に1日、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭
酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、5mMのグルコース、及び100ng
/mLのGDF8が追補されたMCDB−131倍地にて処理した。
b.ステージ2(原腸管−2日):ステージ1の細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、
0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、5mMの
D−グルコースが追補されたMCDB−131倍地で、0.25mMのアスコルビン酸及
び25ng/mLのFGF7あり又はなしで、2日間処理した。
c.ステージ3(前腸−2日):ステージ2の細胞を、ITS−Xの1:200希釈、
2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重
炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、10ng/mLのアクチビンA、25ng/m
LのFGF7、0.25μMのSANT−1、+/−0.25mMのアスコルビン酸、1
μMのRA、及び200nMのTPB、並びに1日目については100nMのLDN−1
93189が追補されたMCDB−131倍地で処理し、続いて、ITS−Xの1:20
0希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/
mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、10ng/mLのアクチビンA、25
ng/mLのFGF7、0.25μMのSANT−1、+/−0.25mMのアスコルビ
ン酸、1μMのRA、及び200nMのTPB、並びに更に1日は10nMのLDN−1
93189が追補されたMCDB−131倍地で処理した。
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−2日):ステージ3の細胞を、ITS−Xの1:
200希釈、2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015
g/mLの重炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、5
0nMのRA、200nMのTPB、及び50nMのLDN−193189を追補したM
CDB−131倍地にて、0.25mM〜1mMのアスコルビン酸の添加あり又はなしで
、2日間処理した。
e.ステージ5(膵臓内胚葉−2〜9日):ステージ4の細胞を、0.25mMのアス
コルビン酸の添加あり又はなしで、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMのグルコー
ス、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、2%
の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、及び50nMのRAを追補したMCD
B−131倍地で2〜9日間処理した。
【0135】
図21A〜
図21Jは、実施例12に従って分化したヒト胚性幹細胞株H1の細胞にお
ける以下の遺伝子の発現のリアルタイムPCR解析のデータを示す。
図21A:ソマトス
タチン、
図21B:PDX1、
図21C:Pax6、
図21D:Pax4、
図21E:N
KX6.1、
図21F:NGN3、
図21G:NeuroD、
図21H:インスリン、図
21I:グルカゴン、
図21J:クロモグラニン。実施例10からのデータと一貫し、ス
テージ2〜4でのアスコルビン酸の添加は、ソマトスタチン、グルカゴン、及びPax6
の発現を有意に低減する一方で、ステージ5でのインスリン及びPax4の発現を維持し
た。更に、0.25mMのアスコルビン酸と比較して、S4で0.5〜1mMのアスコル
ビン酸を使用することに有意な利益はなかった。最後に、ステージ2でのアスコルビン酸
の添加もまた、ステージS3〜5でグルカゴン及びソマトスタチンの発現を低下する一方
でインスリンの発現を維持することに有効であることが証明された。したがって、アスコ
ルビン酸は、ステージ特定のやり方で単一ホルモン細胞の発現の調節のために作用する。
アスコルビン酸の添加は分化プロトコルの早期ステージで重要であるが、後期ステージで
は多ホルモン細胞数を減少するのに有効であると証明されなかった。
【0136】
(実施例13)
レチノイン酸及びアスコルビン酸の組み合わせは、単一ホルモンのインスリン陽性細胞
を生成するために必要である。
この実施例は、多能性細胞の分化中に単一ホルモンのインスリン陽性細胞を生成するた
めの要件を明らかにするために実施した。
【0137】
多様な継体(継体40〜継体52)のヒト胚性幹細胞株H1の細胞を、mTesr(商
標)1培地において、10μMのY27632と、1cm
2当たり細胞100,000個
の濃度で、MATRIGEL(商標)(1:30希釈)被覆皿上に単一細胞として播種し
た。播種から48時間後に、培養物を以下のように膵内分泌系統の細胞に分化した。
a.ステージ1(胚体内胚葉(DE)−3日):DEの開始の前に、培養物を洗浄し、
不完全なPBS(Mg又はCaなし)で30秒間インキュベートし、次いで、ステージ1
の培地を加えた。MATRIGEL(商標)被覆皿上で単一細胞として培養したヒト胚性
幹細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X
GlutaMax(商標)、5mMのD−グルコース、100ng/mLのGDF8、
1μMのMCX化合物(GSK3B阻害剤)を追補したMCDB−131培地で1日処理
した。次いで、細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、重炭酸ナトリウム、GlutaMa
x(商標)、更に5mMのグルコース、100ng/mLのGDF8、及び100nMの
MCX化合物が追補されたMCDB−131倍地で2日目に処理し、続いて、更に1日、
0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012g/mLの重炭酸ナトリウム、1X Glut
aMax(商標)、5mMのグルコース、及び100ng/mLのGDF8が追補された
MCDB−131倍地にて処理した。
b.ステージ2(原腸管−2日):細胞を、0.1%の無脂肪酸BSA、0.0012
g/mLの重炭酸ナトリウム、1X GlutaMax(商標)、5mMのD−グルコー
ス、0.25mMのアスコルビン酸、及び25ng/mLのFGF7が追補されたMCD
B−131倍地で2日間処理した。
c.ステージ3(前腸−2日):細胞を、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMの
グルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウ
ム、2%の無脂肪酸BSA、10ng/mLのアクチビンA、25ng/mLのFGF7
、0.25mMのアスコルビン酸、0.25μMのSANT−1、1μMのRA、200
nMのTPB、及び1日目については100nMのLDN−193189が追補されたM
CDB−131倍地で処理し、続いて、ITS−Xの1:200希釈、2.5mMのグル
コース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナトリウム、
2%の無脂肪酸BSA、10ng/mLのアクチビンA、25ng/mLのFGF7、0
.25mMのアスコルビン酸、0.25μMのSANT−1、1μMのRA、及び200
nMのTPB、並びに更に1日については10nMのLDN−193189が追補された
MCDB−131倍地で処理した。
d.ステージ4(膵臓前腸前駆細胞−2日):細胞を、ITS−Xの1:200希釈、
2.5mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重
炭酸ナトリウム、2%の無脂肪酸BSA、0.25μMのSANT−1、50nMのRA
、200nMのTPB、50nMのLDN−193189、及び0.1mMのアスコルビ
ン酸が追補されたMCDB−131倍地で2日間処理した。
e.ステージ5(膵臓内胚葉−3日):細胞を、ITS−Xの1:200希釈、2.5
mMのグルコース、1X GlutaMax(商標)、0.0015g/mLの重炭酸ナ
トリウム、及び2%の無脂肪酸BSAを追補したMCDB−131倍地にて、以下の培養
条件で3日間処理した。
・+0.1mMのアスコルビン酸
・0.1mMのアスコルビン酸+50nMのRA
・0.1mMのアスコルビン酸+50nMのRA+0.25μMのSANT−1
・0.1mMのアスコルビン酸+50nMのRA+0.25μMのSANT−1+5
0nMのLDN−193189
・0.1mMのアスコルビン酸+50nMのRA+0.25μMのSANT−1+1
μMのAlk5 inh
・0.1mMのアスコルビン酸+50nMのRA+0.25μMのSANT−1+1
μMのAlk5 inh+50nMのLDN−193189
【0138】
図22A〜
図22Lは、実施例13に従って分化し、S5の3日目に収穫した胚性幹細
胞株H1の細胞における、Pax4(
図22A)、Pax6(
図22B)、PDX1(図
22C)、PTF1a(
図22D)、グルカゴン(
図22E)、インスリン(
図22F)
、NeuroD(
図22G)、ngn3(
図22H)、Zic1(
図22I)、CDX2
(
図22J)、アルブミン(
図22K)、NKX6.1(
図22L)の発現のリアルタイ
ムPCR解析からのデータを示している。
【0139】
上記の組み合わせで処理した培養物は、ステージ5の終わりに、インスリン、グルカゴ
ン、及びソマトスタチンホルモンに対して免疫染色された。表VIIIは、インスリン陽
性細胞、グルカゴン及びソマトスタチン陽性細胞、並びに多ホルモン細胞(1つの細胞内
で2つ以上のホルモンを発現)の平均百分率をまとめたものである。
【0140】
図22及び下記の表VIIIに示されるように、ステージ5での低用量のレチノイン酸
とアスコルビン酸の添加は、S5でビタミンCのみで処理された培養物と比較して、ホル
モン陽性細胞の総数を有意に減少させる一方で、単一ホルモンのインスリン陽性細胞の百
分率を増加させた。更に、レチノイン酸、アスコルビン酸、ソニックヘッジホッグ阻害剤
、及びALK5阻害剤の組み合わせは、アスコルビン酸(ビタミンC)のみで処理された
培養物と比較して、単一ホルモンのインスリン陽性細胞の数を更に増加させた。このデー
タは、単一ホルモンのインスリン陽性細胞を生成するには因子の独特の組み合わせが必要
であることを示している。
【0141】
【表8】
本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
多能性細胞の段階的分化から得られる、膵臓内胚葉細胞のインビトロ分化集団であって
、分化の各段階の細胞が、5mM〜20mMのグルコースを含む培地中で培養される、膵
臓内胚葉細胞の分化集団。
[2]
前記分化された膵臓内胚葉細胞の30%超が、PDX−1+NKX6.1+、SOX2
−、及びCDX2−である、上記[1]に記載の膵臓内胚葉細胞の分化集団。
[3]
前記分化集団の細胞の10%超が単一ホルモンのインスリン陽性細胞である、上記[1
]又は[2]に記載の膵臓内胚葉細胞の分化集団。
[4]
前記段階的分化が、未分化のヒト胚性幹細胞をTGF−Bリガンドが更に追補された培
地中で培養する工程を含む、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の膵臓内胚葉細胞
の分化集団。
[5]
前記段階的分化が、未分化のヒト胚性幹細胞をWNT活性化剤が更に追補された培地中
で培養する工程を含む、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の膵臓内胚葉細胞の分
化集団。
[6]
前記段階的分化が、胚体内胚葉細胞をFGFリガンドが更に追補された培地中で培養す
る工程を含む、上記[1]に記載の膵臓内胚葉細胞の分化集団。
[7]
前記段階的分化が、shh阻害剤、FGFリガンド、PKC活性化剤、TGF−Bリガ
ンド、レチノイド、及びBMP阻害剤の勾配が更に追補された培地中で腸管細胞を培養す
る工程を含む、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の膵臓内胚葉細胞の分化集団。
[8]
前記段階的分化が、PKC活性化剤、shh阻害剤、レチノイド、及びBMP阻害剤が
更に追補された培地中で後方前腸細胞を培養する工程を含む、上記[5]に記載の膵臓内
胚葉細胞の分化集団。
[9]
前記段階的分化が、アスコルビン酸が更に追補された培地中で細胞を培養する工程を含
む、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の膵臓内胚葉細胞の分化集団。
[10]
膵臓内胚葉系統の細胞の集団への多能性細胞の段階的分化のためのインビトロの方法で
あって、5mM〜20mMのグルコースを含む培地中での分化の各段階で細胞を培養する
工程を含む、方法。
[11]
TGF−Bリガンド及びWNT活性化剤を追補した培地中で前記多能性細胞を培養する
ことによって、前記多能性細胞を胚体内胚葉(DE)細胞に分化する工程を更に含む、上
記[10]に記載のインビトロの方法。
[12]
FGFリガンドを追補した培地中で前記DE細胞を培養することによって、前記DE細
胞を腸管細胞に分化する工程を更に含む、上記[11]に記載のインビトロの方法。
[13]
shh阻害剤、FGFリガンド、PKC活性化剤、TGF−Bリガンド、レチノイド、
及びBMP阻害剤を追補した培地中で腸管細胞を培養することによって、前記腸管細胞を
後方前腸内胚葉細胞に分化する工程を更に含む、上記[12]に記載のインビトロの方法
。
[14]
PKC活性化剤、shh阻害剤、レチノイド、及びBMP阻害剤を追補した培地中で後
方前腸内胚葉細胞を培養することによって、前記後方前腸内胚葉細胞を膵臓前腸細胞に分
化する工程を更に含む、上記[13]に記載のインビトロの方法。
[15]
shh阻害剤、TGF−B阻害剤、及びレチノイドを追補した培地中で前記膵臓前腸細
胞を培養することによって、前記膵臓前腸細胞を膵臓内胚葉細胞に分化する工程を更に含
む、上記[14]に記載のインビトロの方法。
[16]
前記膵臓内胚葉細胞を膵臓β細胞集団に分化する工程を更に含む、上記[15]に記載
のインビトロの方法。
[17]
少なくとも一工程において前記培地にアスコルビン酸を更に追補する、上記[10]〜
[16]のいずれか一項に記載のインビトロの方法。
[18]
前記分化集団の細胞の10%超が単一ホルモンのインスリン陽性細胞である、上記[1
0]〜[17]のいずれか一項に記載のインビトロの方法。
[19]
培養物の膵臓内胚葉細胞の30%超がPDX−1+、NKX6.1+、SOX2−、及
びCDX2−である、上記[18]に記載のインビトロの方法。
[20]
ヒト胚性幹細胞を膵臓β細胞に分化するためのインビトロの方法であって、
a)胚体内胚葉(DE)細胞の集団を生成するために、未分化のヒト胚性幹細胞を、グ
ルコース、TGF−Bリガンド、及びWNT活性化剤を追補した培地中で培養する工程と
、
b)腸管細胞の集団を生成するために、前記DE細胞を、グルコース及びFGFリガン
ドを追補した培地中で培養する工程と、
c)PDX−1及びSOX2を発現する後方前腸内胚葉細胞の集団を生成するために、
グルコース、shh阻害剤、FGFリガンド、PKC活性化剤、TGF−Bリガンド、レ
チノイド、及びBMP阻害剤の勾配を追補した培地中で前記腸管細胞を培養する工程と、
d)PDX−1及びNKX6.1を発現し、かつ前記後方前腸細胞と比較して低いレベ
ルのSOX2を発現する膵臓前腸細胞の集団を生成するために、グルコース、PKC活性
剤、shh阻害剤、レチノイド、及びBMP阻害剤を追補した培地中で前記後方前腸細胞
を培養する工程と、
e)PDX−1及び膵臓前腸細胞と比較して高いレベルのNKX6.1並びに低いレベ
ルのSOX2を発現する膵臓内胚葉細胞の集団を得るために、グルコース、shh阻害剤
、TGF−B阻害剤、及びレチノイドを追補した培地中で前記膵臓前腸細胞を培養する工
程と、
f)前記膵臓内胚葉細胞を膵臓β細胞集団に分化する工程と、を含む、方法。
[21]
前記膵臓β細胞集団がPDX−1+、NKX6.1+、SOX2−、及びCDX2−で
ある、上記[20]に記載の方法。
[22]
少なくとも一工程において前記培地にアスコルビン酸が更に追補される、上記[20]
又は[21]に記載の方法。
[23]
前記膵臓β細胞が、NKX6.1+及びPDX−1+でもある単一ホルモンのインスリ
ン産生細胞である、上記[22]に記載の方法。