【解決手段】本発明の睡眠障害を判別する方法は、被検者の身長方向の加速度TAを計測するステップと、所定の条件により、負加速度NAを算出して、第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯および睡眠時間帯を算出するステップと、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無、または第1臥位時間帯と第2臥位時間帯の合計時間から睡眠時間帯の時間を除いた第3臥位時間帯の有無を検出するステップと、を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、睡眠障害を容易にかつ客観的に判別する方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成し得た本発明の睡眠障害を判別する方法は、被検者の身長方向の加速度TAを計測するステップと、下記条件(1)〜(3)により、負加速度NAを算出して、第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯および睡眠時間帯を算出するステップと、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無、または第1臥位時間帯と第2臥位時間帯の合計時間から睡眠時間帯の時間を除いた第3臥位時間帯の有無を検出するステップと、を有することを特徴とする。
[条件:
(1)負加速度NAの算出
被検者の立位時においてTA≧0の場合、NA=(−1)×(TA)
被検者の立位時においてTA<0の場合、NA=TA
(2)第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯の算出
第1臥位時間帯L
m1:NA≧C1(C1は定数)が第1所定時間T
1以上である時間帯
間隙時間帯L
sm:第1臥位時間帯L
m1が2以上あって、隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間のNA<C1が第2所定時間T
2以内である時間帯
第2臥位時間帯L
m2:隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12と間隙時間帯L
smを合計した時間帯
(3)睡眠時間帯の算出
睡眠時間帯:所定計測単位時間中、第1臥位時間帯L
m1と、第2臥位時間帯L
m2のうち最長の時間帯]
【0006】
上記方法は、条件(1)〜(3)を有しているため、睡眠時間帯の算出を客観的にかつ精度よく行うことができる。また、上記方法は、簡単に測定可能なパラメータである被検者の臥位姿勢の時間から算出される間隙時間帯または第3臥位時間帯の少なくともいずれか一方により、睡眠障害を客観的かつ容易に判別することができる。
【0007】
上記方法において、第1所定時間T
1および第2所定時間T
2がそれぞれ30分以上2時間以下であることが好ましい。
【0008】
上記方法において、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無、および第3臥位時間帯の有無を検出することが好ましい。
【0009】
上記方法は、さらに、睡眠時間帯の開始前の第3所定時間T
3以内にNA≧C1であった時間帯の有無を検出するステップを有することが好ましい。
【0010】
上記方法において、第3所定時間T
3が30分以上2時間以下であることが好ましい。
【0011】
上記方法は、さらに、睡眠時間帯の終了後の第4所定時間T
4以内にNA≧C1であった時間帯の有無を検出するステップを有することが好ましい。
【0012】
上記方法において、第4所定時間T
4が30分以上2時間以下であることが好ましい。
【0013】
上記方法は、さらに、第3臥位時間帯の合計時間の長さを検出するステップを有することが好ましい。
【0014】
上記方法は、さらに、第3臥位時間帯の個数を検出するステップを有することが好ましい。
【0015】
また、本発明の睡眠障害を判別する装置は、睡眠時間帯を算出する時間算出部と、睡眠障害を判別する判別部を有しており、時間算出部は、下記条件(1)〜(3)により、被検者の身長方向の加速度TAから負加速度NAを算出して、第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯および睡眠時間帯を算出するものであり、判別部は、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無と、第1臥位時間帯と第2臥位時間帯の合計時間から睡眠時間帯の時間を除いた第3臥位時間帯の有無の少なくともいずれか一方を検出するものであることを特徴とする。
[条件:
(1)負加速度NAの算出
被検者の立位時においてTA≧0の場合、NA=(−1)×(TA)
被検者の立位時においてTA<0の場合、NA=TA
(2)第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯の算出
第1臥位時間帯L
m1:NA≧C1(C1は定数)が第1所定時間T
1以上である時間帯
間隙時間帯L
sm:第1臥位時間帯L
m1が2以上あって、隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間のNA<C1が第2所定時間T
2以内である時間帯
第2臥位時間帯L
m2:隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12と間隙時間帯L
smを合計した時間帯
(3)睡眠時間帯の算出
睡眠時間帯:所定計測単位時間中、第1臥位時間帯L
m1と、第2臥位時間帯L
m2のうち最長の時間帯]
【0016】
上記装置の時間算出部では、条件(1)〜(3)により、睡眠時間帯の算出を客観的にかつ精度よく行うことができる。また、判別部では、簡単に測定可能なパラメータである被検者の臥位姿勢の時間から算出される間隙時間帯または第3臥位時間帯の少なくともいずれか一方により、客観的かつ容易に睡眠障害を判別することができる。
【0017】
上記装置において、判別部が、睡眠時間帯の開始前の第3所定時間T
3以内にNA≧C1であった時間帯の有無、睡眠時間帯の終了後の第4所定時間T
4以内にNA≧C1であった時間帯の有無、第3臥位時間帯の合計時間の長さの少なくともいずれか1つを検出するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の睡眠障害を判別する方法および装置によれば、睡眠時間帯の算出を客観的にかつ精度よく行うことができる。このため、簡単に測定可能なパラメータである被検者の臥位姿勢の時間から算出される間隙時間帯の有無、または第3臥位時間帯の有無の少なくともいずれか一方により、睡眠障害を客観的かつ容易に判別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.睡眠障害を判別する方法
本発明の睡眠障害を判別する方法は、被検者の身長方向の加速度TAを計測するステップと、後述する条件(1)〜(3)により、負加速度NAを算出して、第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯および睡眠時間帯を算出するステップと、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無、または第1臥位時間帯と第2臥位時間帯の合計時間から睡眠時間帯の時間を除いた第3臥位時間帯の有無を検出するステップと、を有する。各ステップの詳細について説明する。
【0021】
(A)計測ステップ
上記方法は、被検者の身長方向の加速度TAを計測するステップを有する。身長方向とは、被検者の足部から頭部へ向かう方向である。一般に、身長方向の加速度が立位時に負の値となるように加速度計が調整されている場合、臥位の身長方向の加速度は、立位や座位の身長方向の加速度と比べて大きい傾向にある。被検者の立位時であって動きがないときには、被検者の身長方向の加速度の大きさは1である。睡眠障害の場合、睡眠時間帯の活動が過度に多かったり、覚醒時間帯の活動が過度に少なかったりするため、被検者の身長方向の加速度TAは睡眠障害の有無または程度を示しているといえる。
【0022】
計測ステップでは、身長方向の加速度TAを所定計測時間計測することが好ましい。所定計測時間とは、計測を行う合計時間を指す。所定計測時間は、1以上の睡眠時間帯と、1以上の覚醒時間帯が得られる時間長であることが好ましい。あるいは、所定計測時間は、2以上の覚醒時間帯と、2以上の睡眠時間帯が得られる時間長であってもよい。したがって、所定計測時間は2日間以上であることが好ましく、3日間以上であることがより好ましく、4日間以上であることがさらに好ましい。また、所定計測時間が長いほど信頼性の高いデータが取得できるが被検者への負担を考慮して、所定計測時間は、例えば14日間以内、より好ましくは10日間以内に設定することができる。なお、覚醒時間帯は、被検者の目が覚めている、つまり起きている時間帯である。睡眠時間帯は、被検者が眠っている時間帯であるが、詳しくは後述する。
【0023】
(B)時間算出ステップ
上記方法は、下記条件(1)〜(3)により、負加速度NAを算出して、第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯および睡眠時間帯を算出するステップを有する。これら時間帯の算出は、多数のデータを処理する必要があるため計算機等の機械により行われることが好ましい。
【0024】
条件(1)負加速度NAの算出
被検者の立位時においてTA≧0の場合、NA=(−1)×(TA)
被検者の立位時においてTA<0の場合、NA=TA
【0025】
負加速度NAは、符号がマイナスの加速度であり、重力加速度g(=9.8m/s
2)に対する比で表される(単位:無次元量)。負加速度の算出には、(A)計測ステップで計測した身長方向の加速度TAを用いる。
【0026】
条件(2)第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯の算出
第1臥位時間帯L
m1:NA≧C1(C1は定数)が第1所定時間T
1以上である時間帯
間隙時間帯L
sm:第1臥位時間帯L
m1が2以上あって、隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間のNA<C1が第2所定時間T
2以内である時間帯
第2臥位時間帯L
m2:隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12と間隙時間帯L
smを合計した時間帯
【0027】
臥位時間帯は、臥位の姿勢、例えば、仰向け姿勢である仰臥位、横向きで寝た姿勢である側臥位、うつぶせ姿勢である伏臥位になった時間帯を示し、睡眠、うたた寝、昼寝などの時間を含む。上記方法では、臥位時間帯を第1臥位時間帯と第2臥位時間帯に分けて算出する。
【0028】
第1臥位時間帯L
m1はNA≧C1(C1は定数)が第1所定時間T
1以上である時間帯である。負加速度NAがC1以上とは、被検者が臥位であることを示している。第1臥位時間帯L
m1の算出では、睡眠時間帯の算出精度を高めるために第1所定時間T
1によるしきい値を設けている。
【0029】
第1所定時間T
1は、例えば、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上、さらに好ましくは1時間以上に設定することができるが、2時間以下、または1時間半以下に設定することもできる。NA≧C1が第1所定時間T
1未満である時間帯も実際には臥位であるといえるが、比較的短い時間のうたた寝や昼寝等、本来の睡眠と評価することができない時間を睡眠時間帯と算出することを防ぐために、NA≧C1が第1所定時間T
1未満である時間帯を臥位時間帯とみなしていない。
【0030】
第2臥位時間帯L
m2は、第1臥位時間帯L
m1が2以上あって、隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間のNA<C1である間隙時間帯L
smが第2所定時間T
2以内の場合、隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12と間隙時間帯L
smを合計した時間帯である。NA<C1は、臥位以外の姿勢を取っていることを示している。このように第2臥位時間帯を算出しているのは、第1臥位時間帯L
m1が細切れになっている場合、2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間の間隙時間帯L
smも含めて1つの臥位時間帯(第2臥位時間帯L
m2)として算出するためである。これにより、被検者が睡眠時間帯に頻繁に臥位以外の姿勢を取っても、睡眠時間帯を算出しやすくなる。
【0031】
第2所定時間T
2は、例えば、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上、さらに好ましくは1時間以上に設定することができ、2時間以下、または1時間半以下に設定することもできる。また、第1所定時間T
1と第2所定時間T
2は同じであってもよく、異なっていてもよい。第1所定時間T
1および第2所定時間T
2がそれぞれ30分以上2時間以下であることが好ましく、45分以上1時間以下であることがより好ましい。
【0032】
定数C1(単位:無次元量)の値は特に制限されないが、例えば−0.75以上であることが好ましく、−0.62以上であることがより好ましく、−0.5以上であることがさらに好ましい。定数C1は、−0.4以下、または−0.45以下であっても許容される。
【0033】
条件(3)睡眠時間帯の算出
睡眠時間帯:所定計測単位時間中、第1臥位時間帯L
m1と、第2臥位時間帯L
m2のうち最長の時間帯
【0034】
睡眠時間帯とは、被検者が眠っている時間帯であり、所定計測単位時間中、第1臥位時間帯L
m1と、第2臥位時間帯L
m2のうち最長の時間帯を指す。被検者に自己申告してもらう場合、思い込みや思い違いが入り込む余地があるが、本発明では計測された被検者の身長方向の加速度TAを用いているため、睡眠時間帯の算出を客観的にかつ精度よく行うことができる。
【0035】
所定計測単位時間は、日毎の睡眠時間帯を推定するために設定される時間長である。所定計測単位時間は12時間以上であることが好ましく、18時間以上であることがより好ましく、また、24時間以内であることが好ましい。つまり、睡眠時間帯の数は日毎にそれぞれ1つであることが好ましい。日勤者でも夜勤者でも18時前後には覚醒しているのが一般的であるから、所定計測単位時間の始点は、17時〜19時に好ましく設定される。
【0036】
上記条件(1)〜(3)において、第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯および睡眠時間帯を算出する場合、例えば、身長方向の加速度TAや負加速度NAで表される当該加速度は、加速度−時間波形に対してモルフォロジー演算を行った後の値であることが好ましい。モルフォロジー演算は、画像処理でノイズ除去のために用いられる。このため、加速度−時間波形に対してモルフォロジー演算を行った後の値を各条件式に適用すれば、得られた加速度のうち、所定計測時間と比較して短時間(例えば、所定計測時間の1/150時間以内)に変化する値は除去される。このため、加速度−時間波形の全体の輪郭が抽出されて、睡眠時間帯を算出しやすくなる。モルフォロジー演算は、身長方向の加速度TAに対して行ってもよく、負加速度NAに対して行ってもよい。
【0037】
モルフォロジー演算に先立ち、身長方向の加速度TAに対して二値化処理を行ってもよい。二値化処理では、例えば、負加速度NAがしきい値C2(単位:無次元量)以上であれば負加速度NAは0とみなされ、負加速度NAがC2未満であれば1とみなされる。二値化処理により、モルフォロジー演算に要する処理時間を短縮することができる。しきい値C2の値は特に制限されないが、例えば−0.75以上であることが好ましく、−0.62以上であることがより好ましく、−0.5以上であることがさらに好ましい。しきい値C2は、−0.4以下、または−0.45以下であっても許容される。なお、負加速度NAのデータに対してモルフォロジー演算を行う例を説明したが、身長方向の加速度TAに対してモルフォロジー演算を行った後、負加速度NAを算出してもよい。
【0038】
モルフォロジー演算は、例えば、線を太くする処理を行う膨張演算、線を細くする処理を行う収縮演算、収縮演算後に膨張演算を行うオープニング処理、膨張演算後に収縮演算を行うクロージング処理がある。モルフォロジー演算後の加速度を用いて睡眠時間帯を算出する場合、モルフォロジー演算が、所定の時間幅で行われるオープニング処理とクロージング処理の少なくともいずれか一方であることが好ましい。また、モルフォロジー演算として、オープニング処理およびクロージング処理の両方を行うことがより好ましい。膨張演算と収縮演算を組み合わせることによって、加速度−時間波形の全体の輪郭を抽出しやすくなるため、睡眠時間帯をより一層算出しやすくなる。
【0039】
オープニング処理やクロージング処理を行う回数は特に限定されないが、オープニング処理、クロージング処理をそれぞれ1回以上実施することが好ましく、オープニング処理、クロージング処理をそれぞれ2回以上実施することがより好ましい。
【0040】
膨張演算や収縮演算を行う際の時間幅についても適宜設定すればよいが、処理回数を重ねる毎に、処理時の時間幅を大きくすることが好ましい。このように、オープニング処理およびクロージング処理の時間幅を段階的に大きくすることで、所定計測時間と比較して短時間に変化した加速度のデータが除去されるのを抑止する。
【0041】
(C)検出ステップ
上記方法は、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無、または第1臥位時間帯と第2臥位時間帯の合計時間から睡眠時間帯の時間を除いた第3臥位時間帯の有無を検出するステップを有する。
【0042】
検出項目の一つである睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無について説明する。睡眠時間帯中に間隙時間帯が有るとは、第1臥位時間帯ではなく、第2臥位時間帯が睡眠時間帯として算出されたということである。上述したとおり、間隙時間帯は臥位以外の姿勢を取っている時間帯であることから、睡眠時間帯中に間隙時間帯が有る場合、中途覚醒がある、つまり断眠傾向があると判別することができる。このように睡眠時間帯のうちの間隙時間帯の有無を検出することにより、客観的かつ容易に睡眠障害を判別することができる。以下で説明する、睡眠障害を判別するために用いられる各種時間帯の有無、個数、長さ等の算出は、多数のデータを処理する必要があるため計算機等の機械により行われることが好ましい。
【0043】
所定計測時間において、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無を検出することが好ましい。これにより、断眠傾向にある被検者を広くスクリーニングすることができる。判別精度を高めるためには、所定計測単位時間毎に、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無を検出してもよい。全ての所定計測単位時間において、間隙時間帯が有る場合に、断眠傾向があると判別してもよい。
【0044】
上記方法は、睡眠時間帯中の間隙時間帯の合計時間の長さを検出するステップを有していてもよい。また、上記方法は、睡眠時間帯中の間隙時間帯の個数を検出するステップを有していてもよい。これにより、断眠傾向の強さを判別することができる。
【0045】
別の検出項目である第3臥位時間帯の有無について説明する。第3臥位時間帯は、睡眠時間帯以外に臥位姿勢を取っている時間である。ここで、第3臥位時間帯には、第2臥位時間帯を構成する第1臥位時間帯が含まれる。不規則な生活や、慢性疲労、うつ状態、不眠症などの症状がある場合、第3臥位時間帯が検出される。第3臥位時間帯が有る場合、睡眠が断片化傾向にあると判別してもよい。
【0046】
所定計測時間内における第3臥位時間帯の有無を検出してもよい。これにより、睡眠が断片化傾向にある被検者を広くスクリーニングすることができる。判別精度を高めるために、所定計測単位時間毎に第3臥位時間帯の有無を検出してもよい。全ての所定計測単位時間において、第3臥位時間帯が有る場合に、断眠傾向があると判別してもよい。
【0047】
睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無、および第3臥位時間帯の有無を検出することが好ましい。このように、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無と、第3臥位時間帯の有無の両方を検出することによって、睡眠障害の判別精度を高めることができる。
【0048】
上記方法は、第3臥位時間帯の合計時間の長さを検出するステップを有していてもよい。上記方法は、さらに、第3臥位時間帯の個数を検出するステップを有していることが好ましい。これにより、睡眠の断片化傾向の強さや、過眠の傾向を判別することができる。
【0049】
上記方法は、第3臥位時間帯の合計時間と睡眠時間帯の時間を比較するステップを有していてもよい。第3臥位時間帯の合計時間が睡眠時間帯の時間より長い場合、睡眠の断片化傾向を判別することができる。第3臥位時間帯が複数ある場合、第3臥位時間帯のうち最長の時間帯の時間と、睡眠時間帯の時間の差を検出してもよい。
【0050】
上記方法は、さらに、前記睡眠時間帯の開始前の第3所定時間T
3以内にNA≧C1であった時間帯(以下、「第4臥位時間帯」と称することがある)の有無を検出するステップを有していてもよい。このステップでは、睡眠前に第3所定時間T
3以内に臥位姿勢であった時間帯の有無を検出している。第4臥位時間帯と睡眠時間帯は区別されるため、第4臥位時間帯と睡眠時間帯の間には臥位以外の姿勢であったNA<C1の時間帯がある。第4臥位時間帯が有る場合、例えば、寝付きが悪い、中途覚醒がある、または眠ってはいるが熟睡できていない傾向にあると判別することができる。
【0051】
所定計測時間内における第4臥位時間帯の有無を検出してもよく、所定計測単位時間毎に第4臥位時間帯の有無を検出してもよい。
【0052】
第3所定時間T
3は、例えば、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上、さらに好ましくは1時間以上、また、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間半以下に設定することができる。第3所定時間T
3は、第1所定時間T
1未満の時間に設定されることが好ましい。また、第3所定時間T
3は、睡眠時間帯の時間よりも少ない時間に設定されることが好ましい。
【0053】
上記方法は、さらに、第4臥位時間帯の個数を検出するステップを有していてもよい。第4臥位時間帯の個数が多いほど、臥位と臥位以外の姿勢を交互に行っていたといえるため、睡眠が断片化傾向にあると判別することができる。
【0054】
上記方法は、さらに、第4臥位時間帯の合計時間の長さを検出するステップを有していてもよい。第4臥位時間帯の合計時間が長いほど、寝付きが悪い、または睡眠が断片化傾向にあると判別することができる。
【0055】
上記方法は、さらに、睡眠時間帯の終了後の第4所定時間T
4以内にNA≧C1であった時間帯(以下、「第5臥位時間帯」と称することがある)の有無を検出するステップを有していてもよい。このステップでは、睡眠後に第4所定時間T
4以内に臥位姿勢であった時間帯の有無を検出している。睡眠時間帯と第5臥位時間帯は区別されるため、睡眠時間帯と第5臥位時間帯の間には臥位以外の姿勢であったNA<C1の時間帯がある。第5臥位時間帯が有ると検出された場合、例えば、寝起きが悪いといった起床困難の傾向があると判別することができる。第5臥位時間帯が無いと検出された場合、例えば、寝起きがよいと判別することができる。
【0056】
第4所定時間T
4は、例えば、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上、さらに好ましくは1時間以上、また、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間半以下に設定することができる。第4所定時間T
4は、第1所定時間T
1未満の時間に設定されることが好ましい。また、第4所定時間T
4は、睡眠時間帯の時間よりも少ない時間に設定されることが好ましい。また、第3所定時間T
3と第4所定時間T
4は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
上記方法は、さらに、第5臥位時間帯の個数を検出するステップを有していてもよい。第5臥位時間帯の個数が多いほど、臥位と臥位以外の姿勢を交互に行っているといえるため、睡眠の断片化傾向が強いと判別できる。
【0058】
上記方法は、さらに、第5臥位時間帯の合計時間の長さを検出するステップを有していてもよい。第5臥位時間帯の合計時間が長いほど、寝起きが悪い、または睡眠が断片化傾向にあると判別することができる。
【0059】
2.睡眠障害を判別する装置
本発明の実施形態に係る睡眠障害を判別する装置は、睡眠時間帯を算出する時間算出部と、睡眠障害を判別する判別部を有している。本明細書では、「睡眠障害を判別する装置」を単に「装置」と称することがある。装置としては、各種データの送受信や各種演算処理を行うことが可能なパソコン、マイコン等の計算機(コンピュータ)、タブレット端末、スマートフォンが挙げられる。
【0060】
図1は、本発明の実施の形態に係る装置10の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、装置10には、被検者の身長方向の加速度TAを計測可能なセンサ50から送信されたデータを受信する受信部11が設けられていてもよい。また、装置10とは別のセンサで身長方向の加速度TAを計測してもよい。
【0061】
センサ50は、身長方向の加速度TAを検出する計測部51を備える。センサ50の計測部51では、身長方向の加速度TAに相当する被検者のX軸、Y軸、Z軸方向の少なくともいずれか一方向の加速度を計測して時間算出部12に送信することが好ましい。加速度を計測するセンサ50の種類は特に限定されず、例えば、ピエゾ抵抗体型加速度センサ、圧電型加速度センサ、静電容量型加速度センサなどを用いることができる。ピエゾ抵抗体型加速度センサは、半導体を用いているため小型で量産化がしやすい。圧電型加速度センサは、比較的高い加速度の検出がしやすい。静電容量型加速度センサはピエゾ抵抗体型加速度センサに比べて高感度で、検出可能な加速度の範囲が広く、温度依存性も小さい。
【0062】
受信部11は、時間算出部12や判別部13に設けられてもよい。センサ50から装置10にデータを送受する方法としては、無線通信を用いてもよいし、有線通信を用いてもよい。特に無線通信でデータを送受する場合は、内蔵するバッテリーの持ちを向上させるために、複数個のデータをまとめて送信することにより送受信の頻度を下げることが好ましい。
【0063】
時間算出部12は、受信部11を介して、センサ50から送信された被検者の身長方向の加速度TAのデータを受信する。時間算出部12は、下記条件(1)〜(3)により、被検者の身長方向の加速度TAから負加速度NAを算出して、第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯および睡眠時間帯を算出する。詳細には、第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯および睡眠時間帯は、「1.睡眠障害を判別する方法」に記載したとおり算出することができる。時間算出部12では、下記条件(1)〜(3)により、睡眠時間帯の算出を客観的にかつ精度よく行うことができる。
[条件:
(1)負加速度NAの算出
被検者の立位時においてTA≧0の場合、NA=(−1)×(TA)
被検者の立位時においてTA<0の場合、NA=TA
(2)第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯の算出
第1臥位時間帯L
m1:NA≧C1(C1は定数)が第1所定時間T
1以上である時間帯
間隙時間帯L
sm:前記第1臥位時間帯L
m1が2以上あって、隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間のNA<C1が第2所定時間T
2以内である時間帯
第2臥位時間帯L
m2:前記隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12と前記間隙時間帯L
smを合計した時間帯
(3)睡眠時間帯の算出
睡眠時間帯:所定計測単位時間中、前記第1臥位時間帯L
m1と、前記第2臥位時間帯L
m2のうち最長の時間帯]
【0064】
時間算出部12では、前記睡眠時間帯の開始前の第3所定時間T
3以内にNA≧C1であった時間帯(第4臥位時間帯)を算出してもよい。これにより、判別部13で第3臥位時間帯の有無、合計時間、個数の少なくともいずれか1つを検出することができる。
【0065】
時間算出部12では、前記睡眠時間帯の終了後の第4所定時間T
4以内にNA≧C1であった時間帯(第5臥位時間帯)を算出してもよい。これにより、判別部13で第4臥位時間帯の有無、合計時間、個数の少なくともいずれか1つを検出することができる。
【0066】
図示していないが、時間算出部12は、モルフォロジー演算部を有していてもよい。モルフォロジー演算部では、負加速度−時間波形のノイズを除去するためにモルフォロジー演算を行うことができる。時間算出部12は、モルフォロジー演算部での処理前に、所定値をしきい値として負加速度の値の大きさを二値化する二値化処理部を有していてもよい。モルフォロジー演算や二値化処理は、上述した方法で行うことができる。
【0067】
図示していないが、装置10は、データの異常値を除去する機能を有していてもよい。すなわち、装置10は、異常値検出部と異常値除去部を備えていてもよい。異常値検出部および異常値除去部は、時間算出部12の前段または判別部13の前段に好ましく設けることができる。これにより、異常値が除去されたデータを判別部13に送信することができるため、精度が高い判別指標を作成することができる。
【0068】
判別部13は、時間算出部12から送信されたデータに基づき、睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無と、第1臥位時間帯と第2臥位時間帯の合計から睡眠時間帯の時間を除いた第3臥位時間帯の有無の少なくともいずれか一方を検出する。睡眠時間帯のうち間隙時間帯が有る場合、睡眠途中の覚醒、つまり断眠傾向があると判別することができる。第3臥位時間帯が有る場合、睡眠が断片化傾向にあると判別することができる。このように判別部13では、簡単に測定可能なパラメータである被検者の臥位姿勢の時間から算出される間隙時間帯の有無または第3臥位時間帯の有無を検出することにより、客観的かつ容易に睡眠障害を判別することができる。
【0069】
判別部13では、間隙時間帯の有無または第3臥位時間帯の有無以外を検出してもよい。判別部が、睡眠時間帯の開始前の第3所定時間T
3以内にNA≧C1であった時間帯(第4臥位時間帯)の有無、睡眠時間帯の終了後の第4所定時間T
4以内にNA≧C1であった時間帯(第5臥位時間帯)の有無、第3臥位時間帯の合計時間の長さの少なくともいずれか1つを検出するものであってもよい。これにより、睡眠障害の判別精度をより高めることができる。
【0070】
また、判別部13は、間隙時間帯の個数または合計時間の長さ、第3臥位時間帯の個数、第4臥位時間帯または第5臥位時間帯の個数または合計時間の長さ等、「1.睡眠障害を判別する方法」で挙げたものを検出することができる。これにより、睡眠障害の判別精度を一層高めることができる。
【0071】
図示していないが、計算機1には、判別部13での判別結果を被検者等に通知する通知部が設けられていてもよい。通知方法は、音声、静止画、動画など特に限定されない。医師やカウンセラーなどの専門家、被検者やその家族等、通知対象者の専門知識レベルに応じて通知内容を変えることも可能である。計算機1とは別の通知用機器に判別結果を送信し、被検者等へ結果を通知してもよい。通知用機器としては、例えば外付けモニタ、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、スピーカー、イヤホンなどが挙げられる。
【実施例】
【0072】
(実施例1)第1所定時間および定数C1の好ましい値の検証
ウェアラブル心拍センサ(myBeat(登録商標)WHS−1、ユニオンツール社製)を被検者(身長162cm、体重46kg、女性健常者)の胸部に装着し、20秒ごとに各種姿勢をとった時のY軸方向の加速度を測定した。結果を
図2に示す。座位、立位、歩行、座位で左右に動くという姿勢では、Y軸方向の加速度−0.5未満となる傾向があるが、臥位、立位からしゃがんだときの姿勢、立位からうずくまったときの姿勢は、Y軸方向の加速度−0.5以上となる傾向にあった。この結果から、定数C1が−0.5以上であり、第1所定時間が30分以上であることが好ましいことが分かった。したがって、定数C1を−0.5以上にすることにより、臥位、立位からしゃがんだときの姿勢、立位からうずくまったときの姿勢の時間帯を好適に算出することができる。また、第1所定時間が30分以上であれば、第1臥位時間帯から立位からしゃがんだ時の姿勢やうずくまった時の姿勢を除くことができることが分かった。
【0073】
(実施例2)睡眠障害を判別する方法の適用例
米国精神医学会が作成したDSM−5によりうつ病と診断されたうつ病患者18名、健常者18名の計36名を被検者とした。ウェアラブル心拍センサ(myBeat(登録商標)WHS−1、ユニオンツール社製)を被検者の人体胸部に装着し、被検者の身長方向の加速度TAに相当するY軸方向の加速度を72時間計測した。所定計測単位時間は24時間とした。
【0074】
下記条件(1)〜(3)により、計測した加速度TAから負加速度NAを算出して、第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯を算出した。C1=−0.5、第1所定時間T
1=1時間、第2所定時間T
2=1時間、第3所定時間T
3=1時間、第4所定時間T
4=1時間に設定した。
[条件:
(1)負加速度NAの算出
被検者の立位時においてTA≧0の場合、NA=(−1)×(TA)
被検者の立位時においてTA<0の場合、NA=TA
(2)第1臥位時間帯、間隙時間帯、第2臥位時間帯の算出
第1臥位時間帯L
m1:NA≧C1(C1は定数)が第1所定時間T
1以上である時間帯
間隙時間帯L
sm:前記第1臥位時間帯L
m1が2以上あって、隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間のNA<C1が第2所定時間T
2以内である時間帯
第2臥位時間帯L
m2:前記隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12と前記間隙時間帯L
smを合計した時間帯
(3)睡眠時間帯の算出
睡眠時間帯:所定計測単位時間中、前記第1臥位時間帯L
m1と、前記第2臥位時間帯L
m2のうち最長の時間帯]
【0075】
次いで、所定計測単位毎の睡眠時間帯のうち間隙時間帯の有無、個数および時間、第3臥位時間帯の有無および個数、睡眠前1時間以内にNA≧C1であった時間帯(第4臥位時間帯)の有無および個数、睡眠後1時間以内にNA≧C1であった時間帯(第5臥位時間帯)の有無および個数を検出した。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
うつ病患者は健常者よりも間隙時間帯が多く、すなわち中途覚醒が起こりやすい傾向が見られた。また、うつ病患者は健常者と比較して第3臥位時間帯がある傾向が見られた。特に、男性健常者に対して男性うつ病患者は有意に第3臥位時間帯がある傾向が見られた。うつ病患者は健常者と比較して、第4臥位時間帯および第5臥位時間帯がある傾向が見られた。