(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-48393(P2019-48393A)
(43)【公開日】2019年3月28日
(54)【発明の名称】透湿防水シート及び衣料用生地
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20190301BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20190301BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20190301BHJP
D04H 3/147 20120101ALI20190301BHJP
A41D 31/10 20190101ALI20190301BHJP
A41D 31/14 20190101ALI20190301BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20190301BHJP
【FI】
B32B5/18 101
B32B5/24 101
D04H3/007
D04H3/147
A41D31/00 501B
A41D31/00 501C
A41D31/00 502G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-172678(P2017-172678)
(22)【出願日】2017年9月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100188226
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊達
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】横田 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直也
(72)【発明者】
【氏名】小林 幹晴
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AK07
4F100AK07B
4F100AL09
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA01
4F100CB03
4F100DG04B
4F100DG15B
4F100DG20B
4F100DJ00B
4F100DJ03A
4F100EC18
4F100GB72
4F100JD02C
4F100JD04
4F100JD05
4F100JJ01
4F100JJ02
4F100JK02
4F100JK03
4F100JK08
4F100YY00A
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB03
4L047CA07
4L047CB06
4L047CC01
(57)【要約】
【課題】断熱性能を備えた透湿防水シート及び衣料用生地の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係る透湿防水シート10は、気泡径が100μm以下で発泡倍率が10〜30倍である連続気泡発泡シート11に、連続多孔構造を有する補強シート21が積層されてなる。そして、連続気泡発泡シート11と補強シート21の境界部分では、連続気泡発泡シート11の気泡12と補強シート21の孔24とが連通している。透湿防水シート10では、断熱性能を有する連続気泡発泡シート11を構成要素として備えるので、優れた断熱性能を発揮することが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡径が100μm以下で発泡倍率が10〜30倍である連続気泡発泡シートと、連続多孔構造を有する補強シートと、を積層して備え、
前記連続気泡発泡シートと前記補強シートの境界部分で、前記連続気泡発泡シートの気泡と前記補強シートの孔とが連通する透湿防水シート。
【請求項2】
前記連続気泡発泡シートは、超臨界状態の流体を発泡剤として発泡させたものである請求項1に記載の透湿防水シート。
【請求項3】
前記補強シートは、オレフィン系長繊維不織布で構成されている請求項1又は2に記載の透湿防水シート。
【請求項4】
前記補強シートは、芯鞘構造を有する繊維からなる不織布で構成されている請求項3に記載の透湿防水シート。
【請求項5】
前記連続気泡発泡シートと前記補強シートは、複数箇所に点在するホットメルト接着剤によって接着されてなる請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の透湿防水シート。
【請求項6】
前記連続気泡発泡シートのうち前記補強シートと反対側を向く面に、通気性を有する裏地材が積層されてなる請求項1乃至5のうち何れか1の請求項に記載の透湿防水シート。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1の請求項に記載の透湿防水シートを用いてなる衣料用生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿防水シート及びそれを用いてなる衣料用生地に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、防水機能を備えつつ透湿性を備えた透湿防水シートが建材に使用されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−93294号公報(段落[0008]〜[0011])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、透湿防水シートを、例えば、衣料用生地に使用するために、透湿防水シートに優れた断熱性能を持たせることが求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、優れた断熱性能を有する透湿防水シート及びそれを用いてなる衣料用生地の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、微細な気泡を有する連続気泡発泡シートを透湿防水シートに用いることで、透湿性と防水性を確保しつつ、優れた断熱性能を持たせることができるという知見を得た。そして、この知見に基づいて、以下の発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、請求項1の発明は、気泡径が100μm以下で発泡倍率が10〜30倍である連続気泡発泡シートと、連続多孔構造を有する補強シートと、を積層して備え、前記連続気泡発泡シートと前記補強シートの境界部分で、前記連続気泡発泡シートの気泡と前記補強シートの孔とが連通する透湿防水シートである。
【0008】
請求項2の発明は、前記連続気泡発泡シートは、超臨界状態の流体を発泡剤として発泡させたものである請求項1に記載の透湿防水シートである。
【0009】
請求項3の発明は、前記補強シートは、オレフィン系長繊維不織布で構成されている請求項1又は2に記載の透湿防水シートである。
【0010】
請求項4の発明は、前記補強シートは、芯鞘構造を有する繊維からなる不織布で構成されている請求項3に記載の透湿防水シートである。
【0011】
請求項5の発明は、前記連続気泡発泡シートと前記補強シートは、複数箇所に点在するホットメルト接着剤によって接着されてなる請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の透湿防水シートである。
【0012】
請求項6の発明は、前記連続気泡発泡シートのうち前記補強シートと反対側を向く面に、通気性を有する裏地材が積層されてなる請求項1乃至5のうち何れか1の請求項に記載の透湿防水シートである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のうち何れか1の請求項に記載の透湿防水シートを用いてなる衣料用生地である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る透湿防水シート及び衣料用生地は、断熱性能を有する連続気泡発泡シートを構成要素として備えるので、優れた断熱性能を発揮することが可能となる。また、透湿防水シートは、連続気泡発泡シートに補強シートが積層されてなるので、透湿防水シートの強度アップが図られる。しかも、本発明の透湿防水シートでは、補強シートは連続多孔構造を有し、連続気泡発泡シートの気泡径が100μm以下となっている。そして、連続気泡発泡シートと補強シートの境界部分で、連続気泡発泡シートの気泡と補強シートの孔とが連通するので、透湿性及び防水性を損なうことなく、強度アップを図ることが可能となる。
【0015】
ここで、連続気泡発泡シートを、超臨界流体を発泡剤として発泡させたもので構成すれば、100μm以下の微細な連続気泡を均一に形成し易くなる(請求項2の発明)。
【0016】
補強シートは、不織布、織物、編物、微多孔質フィルムの何れでもよい。特に、補強シートを、オレフィン系繊維不織布で構成すれば、接着剤を使用することなく、加熱のみで連続気泡発泡シートとの接着が可能となる。しかも、オレフィン系繊維不織布が長繊維不織布であると、補強シートの物理的強度の向上が図られ、透湿防水シートの耐久性アップが図られる(請求項3の発明)。また、補強シートは、芯鞘構造を有する繊維からなる不織布で構成されることが好ましい(請求項4の発明)。芯鞘構造の不織布を用いることで、補強シートの物理的強度を確保しつつ、低融点で連続気泡発泡シートとの積層が可能となる。
【0017】
連続気泡発泡シートと補強シートは、ホットメルト接着剤によって接着されてもよい。この場合、ホットメルト接着剤は、透湿防水シートの透湿、通気性を確保するために、複数箇所に点在することが好ましい(請求項5の発明)。
【0018】
また、連続気泡発泡シートのうち補強シートと反対側を向く面には、通気性を有する裏地材が積層されてもよい。このような構成とすれば、透湿防水シートを衣料用生地に用い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(A)透湿防水シートの断面図、(B)透湿防水シートの別の例を示す断面図
【
図2】連続気泡発泡シートと補強シートの境界部分を模式的に表した断面図
【
図4】実験例A4と実験例B1〜B3の実験結果を示すテーブル
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1(A)に示されるように、本実施形態の透湿防水シート10は、連続気泡発泡シート11と補強シート21を積層して備える。透湿防水シート10は、建材用又は精密機械用の防水シートに用いられてもよいし、衣料用生地として用いられてもよい。
【0021】
連続気泡発泡シート11は、超臨界状態の二酸化炭素や窒素を発泡剤として発泡させてなる。これにより、連続気泡発泡シート11において、100μm以下の微細な連続気泡が均一に形成され易くなる。具体的には、連続気泡発泡シート11の気泡径は、50〜100μmとなっていて、連続気泡発泡シート11の発泡倍率は、10〜30倍となっている。
【0022】
図2に示されるように、連続気泡発泡シート11の外表面には、スキン層がなく、気泡12が露出している。このような連続気泡発泡シート11は、発泡成形の過程でシート状の成形体の外表面に形成されるスキン層を切除することで容易に得ることができる。なお、スキン層が切除された後の連続気泡発泡シート11の厚みは、0.8〜1.2mmとなっている。
【0023】
連続気泡発泡シート11を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であってもよいし、ポリオレフィン系樹脂と熱可塑性エラストマー若しくはゴムを含む樹脂組成物であってもよい。後者の場合、高発泡体を得るためには、ポリオレフィン系樹脂が50〜95重量%で、熱可塑性エラストマー又はゴムが5〜50重量%であることが好ましい。熱可塑性エラストマー又はゴムの割合が5重量%未満であると、連続気泡発泡シート11に充分な柔軟性を持たせることが困難となる。また、熱可塑性エラストマー又はゴムの割合が50重量%を越えると、連続気泡発泡シート11の収縮が大きくなるという問題が生じる。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。ここで、共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。なお、α−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等のオレフィン類や、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン等のジエン類や、シクロペンテン、シクロペンタジエン等の環状オレフィン類が挙げられる。
【0025】
ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のいずれであってもよい。
【0026】
ポリプロピレンは、結晶構造の種類では、アタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチックの何れであってもよい。また、ポリプロピレンは、重合の種類では、ホモポリマー(単独重合体)であってもよいし、コポリマー(共重合体)であってもよい。ポリプロピレンのコポリマーは、ブロック系、ランダム系の何れであってもよい。なお、ポリプロピレンのコポリマーにおける共重合モノマーとしては、エチレンが一般的であるが、それに限られない。
【0027】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、エチレンとプロピレンの共重合体であるEPRやエチレン、プロピレン及び少量の非共役ジエンの共重合体であるEPDM等に代表されるエチレン−プロピレンゴムが挙げられる。また、オレフィン系エラストマーの他の例としては、メタロセン触媒を使用したエチレンとα−オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン−1−ブテンゴム、エチレン−1−オクテンゴム)が挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、炭化水素鎖からなるポリマーの一端又は両端にポリスチレンが結合したブロックコポリマーが挙げられる。このようなブロックコポリマーとしては、例えば、スチレンとブタジエン、イソプレン、イソブチレン等とのブロックコポリマー、或いは、それらのブロックコポリマーを更に水素添加したものが挙げられ、単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
補強シート21は、連続多孔構造を有している。そして、
図2に示されるように、透湿防水シート10では、連続気泡発泡シート11と補強シート21の境界部分において、連続気泡発泡シート11の気泡12と補強シート21の孔24とが連通している。これにより、透湿防水シート10の透湿性及び通気性が確保されている。なお、補強シート21は、連続多孔構造であれば特に制限されないが、透湿防水シート10が防水性を有するためには、補強シート21の孔24の径は、雨粒の最大径よりも小さいこと(具体的には、2000μm以下であること)が好ましく、霧雨の最大径よりも小さいこと(具体的には、500μm以下であること)がより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0029】
補強シート21の連続気泡発泡シート11への接着は、熱ラミネートや誘電加熱ラミネートで行われてもよいし、ホットメルト接着剤によって行われてもよい。補強シート21がホットメルト接着剤によって接着される場合には、透湿防水シート10の透湿性を維持するために、ホットメルト接着剤が連続気泡発泡シート11と補強シート21の境界部分に点在することが好ましい。
【0030】
具体的には、補強シート21は、不織布で構成されている。補強シート21の強度の観点から、不織布は、長繊維不織布であることが好ましい。また、不織布を構成する繊維は、
図2に示されるように、連続多孔構造を有する芯部22の外側が芯部22より低融点の鞘部23で覆われた芯鞘構造を有することが好ましい。不織布の繊維が芯鞘構造であると、上述した熱ラミネートや誘電加熱ラミネートによって補強シート21を連続気泡発泡シート11に接着する場合に、補強シート21の連続多孔構造を維持し易くなる。
【0031】
補強シート21を構成する不織布としては、オレフィン系繊維不織布、ポリエステル系繊維不織布、ナイロン系繊維不織布等が挙げられる。ポリオレフィン系繊維不織布を構成するポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等が挙げられる。また、ポリエステル系繊維不織布を構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等が挙げられる。ナイロン系繊維不織布を構成するナイロンとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12等が挙げられる。
【0032】
なお、補強シート21は、多孔質フィルムで構成されてもよい。多孔質フィルムは、孔径が100μm以下の微多孔質フィルムであればよく、その例としては、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム)、ポリオレフィンフィルム、ポリウレタンフィルム等が挙げられる。また、補強シート21は、織物で構成されてもよい。織物の例としては、経糸と緯糸で構成される平織、綾織、朱子織や3方向の糸で構成される三軸織等が挙げられる。さらに、補強シート21は、編物で構成されてもよい。編物の例としては、いわゆる天竺編やリブ編といった丸編、緯編、トリコット、ラッセル編等が挙げられる。
【0033】
図1(B)に示されるように、透湿防水シート10は、連続気泡発泡シート11のうち補強シート21と反対側を向く面に、通気性を有する裏地材31が接着された構造になっていてもよい。裏地材31は、接着性の観点から樹脂製であることが好ましい。裏地材31の接着は、例えば、ホットメルト接着剤によって行われる。
図1(B)の構成によれば、透湿防水シート10をそのまま衣料用生地として用いることが可能となる。また、裏地材31を備えたことで、ミシンを使用した縫製時に、ミシン台での滑りが良くなるといったハンドリングや加工性が良好となる。なお、裏地材31は、ポリエステル樹脂又はナイロン樹脂で構成されることが好ましい。
【0034】
[実験例]
以下、本発明を実験例によってさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実験例によって限定されるものではない。
【0035】
図3に示す実験例A1〜A3のサンプルは、従来の透湿防水シートである。実験例A1のサンプルは、微多孔質のPTFEフィルムである。実験例A2のサンプルは、微多孔質のオレフィン系フィルム(ポリプロピレンと有機フィラーで構成。孔径0.3μm以下)である。実験例A3のサンプルは、高密度ポリエチレン不織布であり、孔径が100μm以下の連続多孔構造を有する。また、実験例A4〜A7のサンプルは、何れも、超臨界状態の二酸化炭素を発泡剤としてポリプロピレン又はポリプロピレンとエラストマーの混合物を発泡倍率10〜30倍で発泡させてなる連続気泡発泡シートである。なお、電子顕微鏡観察により、実験例A4〜A7の連続気泡発泡シートの気泡径が50〜100μmとなっていることを確認した。
【0036】
図4に示す実験例B1〜B3のサンプルは、実験例A4の連続気泡発泡シートにオレフィン系長繊維不織布(芯材がポリエステルで鞘材がポリエチレンの芯鞘構造のスパンボンド不織布)を積層したものである。このオレフィン系長繊維不織布は、実験例A3と同様に、孔径が100μm以下の分布を有する連続多孔構造である。実験例B1では、オレフィン系長繊維不織布(目付50g/m
2)を熱ラミネートによって実験例A4の連続気泡発泡シート(厚さ1.0mm)に圧縮接着し、厚さ0.3mmの透湿防水シートにした。実験例B2では、オレフィン系長繊維不織布(目付50g/m
2)を誘電加熱ラミネートによって実験例A4の連続気泡発泡シート(厚さ1.0mm)に圧縮接着し、厚み0.7mmの透湿防水シートにした。実験例B3では、オレフィン系長繊維不織布(目付50g/m
2)をホットメルト接着剤によって実験例A4の連続気泡発泡シート(厚さ1.0mm)に圧縮接着し、厚さ0.9mmの透湿防水シートにした。なお、ホットメルト接着剤には、ウレタン系湿気硬化型接着剤(大日本インキ化学工業社製、タイホースNH−300)を用い、空隙率70%のドット状(散点状)で且つ平均付着量20g/m
2となるようにカーテンコート塗布した。
【0037】
<透湿度と耐水度>
実験例A1〜A7,B1〜B3の全てのサンプルについて透湿度と耐水度を測定した。透湿度は、JIS−L−1099 A−1法に準拠して測定した。耐水度は、JIS−L−1092に規定される耐水度試験 静水圧法 A法(低水圧)で測定した。
【0038】
<熱抵抗>
実験例A1〜A7のサンプルについて熱抵抗を測定した。熱抵抗は、JIS A1412−2 熱流計法(HFM法)に準拠して測定した。測定には、熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製、HC−074、200型)を使用した。試験片は、200mm×200mmとした。熱抵抗は、上記測定装置にデジタル厚みゲージで測定した厚みを入力して計測した。
【0039】
<引張荷重、伸び、引裂き荷重>
実験例A4と実験例B1〜B3のサンプルについて、引張荷重、伸び及び引裂き強度を測定した。各測定は、サンプルの横方向(TD:Transverse Direction)と縦方向(MD:Machine Direction)の2方向について行った。なお、引張荷重と伸びの測定は、JIS K6767に準拠して行った。引裂き強度は、JIS L1096A法(シングルタング法)に準拠した。具体的には、50mm×150mmの試験片を用意し、その試験片の短辺の中央に50mmの切込みを入れた。そして、つかみ具間距離40mmとし、引張速度150mm/分で測定した。引張試験機には、島津製作所製AGS−5kNBを使用した。
【0040】
<実験結果の検討>
図3の結果から、実験例A4〜A7の連続気泡発泡シートは、実験例A1〜A3の従来の透湿防水シートと同等かそれ以上の透湿度と耐水度を有することが分かる。一方、実験例A4〜A7の連続気泡シートは、実験例A1〜A3の透湿防水シートと比較して、高い熱抵抗を有することが分かる。これらの結果から、超臨界流体を発泡剤とした連続気泡発泡シート(実験例A4〜A7)は、従来の透湿防水シート(実験例A1〜A3)と同等かそれ以上の透湿性及び防水性を有しつつ、優れた断熱性能を有することが分かる。実験例A4〜A7の断熱性能は、連続気泡発泡シートの連続気泡構造に由来するものと考えられる。
【0041】
図4の結果から、実験例B1〜B3の積層シートは何れも、実験例A4の連続気泡発泡シートよりも優れた機械的強度を有することが有することが分かる。一方、実験例B1〜B3の積層シートは、実験例A4の連続気泡発泡シートよりも透湿度及び耐水度が若干低下するものの、
図3の実験例A3との比較によれば、実験例B1〜B3の積層シートの透湿度及び耐水度は、従来の透湿防水シートと同等又はそれ以上であり、実用への影響は少ないことが分かる。このことは、連続気泡発泡シートと不織布の境界部分で、連続気泡発泡シートの気泡と不織布の連続多孔構造の孔とが連通することで、透湿性が損なわれなかったことを意味する。
【0042】
このように、今回の実験例から、断熱性能を有する連続気泡発泡シートを構成要素として備える透湿防水シートは、優れた断熱性能を発揮することが確認できた。また、連続気泡発泡シートに補強シート(不織布)を積層すれば、透湿防水シートの強度アップが図られることが確認できた。しかも、補強シートが、連続多孔構造を有し、連続気泡発泡シートと補強シートの境界部分で、連続気泡発泡シートの気泡と補強シートの孔とが連通すると、透湿性及び防水性を損なわないことが確認できた。
【符号の説明】
【0043】
10 透湿防水シート
11 連続気泡発泡シート
21 補強シート
31 裏地材