【課題】油脂を高含有し、低温保存下でも安定で、飲料に用いた際にも分散性、乳化安定性、風味に優れ、飲料向けの乳化組成物として好適な乳化組成物と、この乳化組成物を用いた分散性、乳化安定性、風味に優れた飲料を提供する。
【解決手段】水、油脂、多価アルコール、及び乳化剤を含有する乳化組成物。乳化剤は親水性乳化剤であるショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含む。油脂中の全構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸含有量が30%以上。組成物中の油脂の含有量が60〜90重量%。油脂の上昇融点が0〜50℃。多価アルコールの重量平均分子量が1500未満。組成物中のショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量がポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上。この乳化組成物を含有する飲料。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0022】
[乳化組成物]
本発明の乳化組成物は、水、油脂、多価アルコール、及び乳化剤を含有する乳化組成物であって、該乳化剤が親水性乳化剤であるショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含み、該油脂中の全構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸含有量が30%以上であり、該組成物中の該油脂の含有量が60〜90重量%であり、該油脂の上昇融点が0℃以上、50℃以下であり、該多価アルコールの重量平均分子量が1500未満であり、該組成物中の該ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量が該ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上であることを特徴とする。
【0023】
<メカニズム>
本発明の乳化組成物では、多価アルコールと、特定の2種類の親水性乳化剤を用いてD相型乳化物を調製することで、高含油であっても、製造時および保存中に油が分離せず、更に分散性に優れる乳化組成物を得ることが出来る。また、親水性乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)という少なくとも2種類の親水性乳化剤を、ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量がポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上となるように含有することで、油脂を高含有させることが可能で、かつ、界面膜を強固にし、低温で油脂が結晶化しても油脂の合一を抑制し、乳化物からの油脂分離を防ぐという作用効果を得ることができる。これらの結果、飽和脂肪酸含有量が高い油脂を60〜90重量%という高含油であっても、低温保存下でも安定で、飲料に用いた際にも分散性、乳化安定性、風味に優れた乳化組成物とすることができる。
【0024】
<乳化剤>
本発明で用いるショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、いずれも親水性乳化剤である。
ここで、親水性乳化剤とは、該乳化剤のゲル−液晶転移点以上の温度での加熱条件下でミセル等を形成して安定に水に分散し、経時的に沈殿や不溶物を形成しない乳化剤のことであり、好ましくはHLBが5以上、より好ましくは7以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは15以上の乳化剤である。ここで、HLB値は、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性、疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えばGriffin、Davis、川上式、有機概念図等の方法が使用できる。また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
【0025】
(ショ糖脂肪酸エステル(A))
ショ糖脂肪酸エステル(A)としては、好ましくはHLBが5以上、より好ましくは7以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは15以上、とりわけ15〜16で、構成脂肪酸の炭素数が12〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸であるものが、乳化組成物が油脂を高含有できるという観点から好ましい。例えば、ショ糖脂肪酸エステル(A)の構成脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらのうち、特に炭素数12〜18の飽和脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が飲料中での乳化安定性と風味の観点から好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸がより好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸がさらに好ましく、特にステアリン酸が好ましい。
【0026】
また、ショ糖脂肪酸エステル(A)は、親水基の分子構造内にあるエステル結合可能な複数の水酸基に対して、結合しているアルキル基の数に分布がある混合物のため、混合物中のアルキル基を1つ有する構造をもつモノエステルの比率が、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上、とりわけ75%以上であるものが、乳化組成物が油脂を高含有できるという観点から好ましい。
【0027】
特に、後述の風味付け素材として乳酵素分解物及び/またはミネラル類を用いた乳化組成物の場合、ショ糖脂肪酸エステル(A)としては、HLBが5〜16、特に7〜16、とりわけ10〜16、中でも10〜13で、構成脂肪酸の炭素数が12〜18、好ましくは14〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸であるものが、乳化組成物が油脂を高含有できるという観点から好ましい。
また、上記のショ糖脂肪酸エステル(A)の混合物中のアルキル基を1つ有する構造をもつモノエステルの比率が、好ましくは40%以上85%以下、より好ましくは50%以上85%以下、さらに好ましくは50%以上75%以下、特に好ましくは50%以上65%以下であるものが、乳化組成物が油脂を高含有できるという観点から好ましい。
【0028】
なお、ショ糖脂肪酸エステル(A)の構成脂肪酸は、すべて同一である必要はなく、ショ糖脂肪酸エステル(A)中の構成脂肪酸の60重量%以上が上記の好適な構成脂肪酸であればよい。この比率は好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90%以上であることが、乳化組成物が低温保存時の安定性が高いという観点から好ましい。
【0029】
ショ糖脂肪酸エステル(A)は、それ自体既知の食品用乳化剤であり、市販されているショ糖脂肪酸エステルを使用できる。ショ糖脂肪酸エステル(A)の市販品としては、例えば、「リョートーシュガーエステルS−1670」、「リョートーシュガーエステルP−1670」、「リョートーシュガーエステルS−1570」、「リョートーシュガーエステルM−1695」、「リョートーシュガーエステルL−1695」、「リョートーシュガーエステルP−1570」、「リョートーシュガーエステルO−1570」、「リョートーシュガーエステル モノエステル−P」、「リョートーシュガーエステルS−1170」、「リョートーシュガーエステルS−970」、「リョートーシュガーエステルS−770」、「リョートーシュガーエステルS−570」(以上、三菱ケミカルフーズ社製、商品名);「DKエステルSS」、「DKエステルF−160」、「DKエステルF−140」、「DKエステルF−110」、「DKエステルF−90」、「DKエステルF−70」、「DKエステルF−50」(以上、第一工業製薬社製、商品名)等が挙げられる。また、ショ糖脂肪酸エステル(A)として、特許第5945756号公報に記載のように、マイクロ波を照射して製造したショ糖脂肪酸エステルを用いてもよい。
【0030】
ショ糖脂肪酸エステル(A)は上記のショ糖脂肪酸エステルの1種のみからなるものであってもよく、2種以上のショ糖脂肪酸エステルからなるものであってもよい。
【0031】
(ポリグリセリン脂肪酸エステル(B))
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)としては、特に制限はないが、HLBが7以上、特に11以上、とりわけ15以上で、グリセリンの平均重合度が4以上、特に6以上、とりわけ6〜10であるものが乳化組成物の油の取り込みの観点から好ましい。
また、構成脂肪酸の炭素数が12〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸であるものが、飲料中での風味の観点から好ましい。例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の構成脂肪酸としては、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらのうち、特に炭素数12〜18の飽和脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が飲料中での乳化安定性と風味の観点から好ましく、特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が好ましい。
【0032】
なお、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の構成脂肪酸は、すべて同一である必要はなく、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)中の構成脂肪酸の70重量%以上が上記の好適な構成脂肪酸であればよい。
【0033】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、それ自体既知の食品用乳化剤であり、市販されているポリグリセリン脂肪酸エステルを使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の市販品としては、例えば、「リョートーポリグリエステルM−7D」、「リョートーポリグリエステルL−7D」、「リョートーポリグリエステルM−10D」、「リョートーポリグリエステルL−10D」、「リョートーポリグリエステルCE−19D」、「リョートーポリグリエステルP−8D」、「リョートーポリグリエステルS−10D」、「リョートーポリグリエステルSWA−10D」、「リョートーポリグリエステルSWA−15D」、「リョートーポリグリエステルSWA−20D」、「リョートーポリグリエステルS−24D」、「リョートーポリグリエステルS−28D」、「リョートーポリグリエステルO−50D」(以上、三菱ケミカルフーズ社製、商品名);「SYグリスターML750」、「SYグリスターML500」、「SYグリスターMM750」、「SYグリスターMSW−7S」、「SYグリスターMS−5S」、「SYグリスターMS−3S」、「SYグリスターSS−5S」、「SYグリスターTS−7S」、「SYグリスターTS−5S」、「SYグリスターTS−3S」、「SYグリスターPS−5S」、「SYグリスターMO−7S」、「SYグリスターMO−5S」、「SYグリスターMO−3S」、「SYグリスターPO−5S」、「SYグリスターMCA−750」、「SYグリスターMCA−150」、「SYグリスターHB−750」、「SYグリスターCR−500」(以上、阪本薬品工業社製、商品名);「サンソフトQ−18S」、「サンソフトQ−17S」、「サンソフトQ−14S」、「サンソフトQ−12S」、「サンソフトA−181E」、「サンソフトA−171E」「サンソフトA−141E」、「サンソフトA−121E」、「サンソフトA−173E」、「サンソフトQ−18B」、「サンソフトQ−17B」、「サンソフトQ−18D」(以上、太陽化学社製、商品名)、「ポエムJ−2081V」、「ポエムJ−0021」、「ポエムJ−0081HV」、「ポエムJ−0381V」、「ポエムDP−95RF」、「ポエムTRP−97RF」(以上、理研ビタミン社製、商品名)、「NIKKOL Hexaglyn 1−M」、「NIKKOL Hexaglyn 1−L」、「NIKKOL Decaglyn 1−SV」、「NIKKOL Decaglyn 1−OV」、「NIKKOL Decaglyn 1−M」、「NIKKOL Decaglyn 1−L」(以上、日光ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
【0034】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は上記のポリグリセリン脂肪酸エステルの1種のみからなるものであってもよく、2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルからなるものであってもよい。
【0035】
(乳化剤の含有量)
本発明の乳化組成物において、ショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含む乳化剤の合計の含有量は、0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、とりわけ3〜10重量%であることが乳化安定性と風味の観点から好ましい。
【0036】
また、本発明の乳化組成物に含まれるショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量は、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上である。ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量をポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上、好ましくはショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量をポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量より多くすることで、界面膜を強固にし、低温で油脂が結晶化しても油脂の合一を抑制し、乳化物からの油脂分離を防ぐという作用効果を得ることができるため、乳化組成物の低温安定性をより効果的に高めることができる。具体的には、ショ糖脂肪酸エステル(A)とポリグリセリン脂肪酸エステル(B)との含有割合は、これらを併用することによる効果を有効に得る上で、重量比で、ショ糖脂肪酸エステル(A)(2種以上のショ糖脂肪酸エステルを用いる場合は、その合計):ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)(2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる場合はその合計)=1:0.01〜1の範囲であること好ましく、より好ましくは1:0.02〜0.9、さらに好ましくは1:0.04〜0.8、殊更に好ましくは1:0.06〜0.75、特に好ましくは1:0.08〜0.7であり、とりわけ1:0.08〜0.68の範囲であることが乳化組成物の低温安定性をより効果的に高めることができる点から好ましい。
【0037】
特に、本発明の乳化組成物中のショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量は、0.1〜19.9重量%、特に0.5〜10重量%で、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量は0.1〜19.9重量%、特に0.5〜10重量%であることが好ましい。
【0038】
なお、本発明においては、親水性乳化剤として、上記の好適なショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)以外の乳化剤を用いてもよいが、その場合、乳化組成物中の全親水性乳化剤に占めるショ糖脂肪酸エステル(A)とポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の合計の割合が1重量%以上、特に10重量%以上、とりわけ50〜100重量%であることが好ましい。
【0039】
また、乳化剤としては、親油性の乳化剤、例えばHLB=5未満の乳化剤もあり、親油性の乳化剤を用いた飲料用乳化組成物も提供されている。本発明の乳化組成物は、効果に影響が無い範囲で親油性の乳化剤を含んでもよいが、乳化安定性の観点から、乳化組成物中の親油性の乳化剤の含有量は通常1重量%未満、特に0.5重量%未満、さらに好ましくは、0.1重量%未満、とりわけ0重量%であること、即ち、本発明の乳化組成物に含まれる乳化剤はすべて親水性乳化剤であることが好ましい。
【0040】
<油脂>
油脂は脂肪酸のグリセリンエステルであり、通常、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、ヘキサデカトリエン酸、オクタデカトリエン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラヘキサエン酸等の脂肪酸混合物のグリセリンエステルである。
【0041】
一般的な油脂としては、魚油、牛脂、豚脂、乳脂(バターや無水バター)、馬油、蛇油、卵油、卵黄油、タートル油、ミンク油などの動物性油脂類;大豆油、とうもろこし油、綿実油、なたね油、ごま油、シソ油、こめ油、ひまわり油、落花生油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、米胚芽油、小麦胚芽油、玄米胚芽油、ハトムギ油、ガーリックオイル、マカデミアンナッツ油、アボガド油、月見草油、フラワー油、つばき油、ヤシ油、ひまし油、あまに油、カカオ油などの植物性油脂類:およびこれらを水素添加又はエステル交換したもの、例えば、これら植物性油脂又は動物性油脂の液状又は固体状物を精製や脱臭、分別、硬化、エステル交換といった油脂加工した、MCT(中鎖脂肪酸油)、硬化ヤシ油、硬化パーム核油などの硬化油脂や加工油脂、更にこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等;中鎖脂肪酸トリグリセライド等が挙げられる。
【0042】
本発明で用いる油脂は上昇融点が0℃以上の油脂であることが保存時の酸化臭がなく、かつ冷蔵状態でも風味のよい飲料を作る上で重要である。上昇融点は、基準油脂分析試験法「日本油化学会制定基準油脂分析試験法
2.2.4.2(1996)」などの方法で測定することができる。上昇融点が0℃未満の油脂は乳代替の油脂として用いた時、油脂によるコク感やマイルドさが不足する。また、上昇融点が50℃を超えるものでは口どけが悪いため、飲料には不向きである。そのため、本発明では、上昇融点が0〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは15〜43℃、更に好ましくは20〜40℃の油脂を用いる。このような油脂としては、上記油脂のうち、乳脂、牛脂、豚脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、カカオ油、硬化ヤシ油や硬化パーム核油などの硬化油脂や分別して得られる固体脂、および植物性油脂又は動物性油脂や加工油脂を原料としてエステル交換により調製したエステル交換油等が挙げられる。
【0043】
また、本発明の乳化組成物では、上記上昇融点を満たすと共に、全構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸含有量が30%の油脂を用いる。ここで、油脂中の全構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸含有量(以下、単に「飽和脂肪酸含有量」と称す場合がある。)とは、抽出した油脂中の脂肪酸をケン化、メチルエステル化しガスクロマトグラフィーで分析することで得られたピーク面積より、以下の式で算出することが出来る。
飽和脂肪酸含有量(%)=(飽和脂肪酸ピーク面積の積算値/全構成脂肪酸ピーク面積の積算値)×100
【0044】
飽和脂肪酸含有量が30%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上の油脂を用いることで、飲料に用いた時の殺菌や高温保存における酸化臭がなく、良好な風味となるため好ましい。
【0045】
本発明の乳化組成物は、これらの油脂の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。また、2種以上の油脂を用いる場合、混合後の飽和脂肪酸含有量が30%以上であれば、飽和脂肪酸含有量が30%未満の油脂を含んでもよい。更に、食品に用いることが出来る脂肪酸、脂溶性ビタミン、色素、香料等の油溶性物質を含んでもよい。
【0046】
本発明の乳化組成物中の油脂の含有量は60〜90重量%である。油脂の含有量が60重量%未満では、油脂高含有量の乳化組成物を提供する本発明の目的を達成し得ない。油脂の含有量が90重量%を超えると、乳化剤等の他の必要成分の含有量を十分に確保し得ず、乳化組成物の安定性が損なわれる。
本発明の乳化組成物の油脂の含有量は、特に70〜85重量%であることが好ましく、とりわけ75〜83重量%であることが好ましい。
【0047】
<多価アルコール>
多価アルコールとしては、通常、水溶性多価アルコールが用いられ、なかでも分子内に水酸基を3個以上有するものが好ましく用いられる。
【0048】
多価アルコールの平均分子量としては、1500未満であり、1200未満であることが好ましく、900未満であることがさらに好ましく、600未満であることが乳化安定性の観点から好ましい。本発明において、多価アルコールの平均分子量とは、重量平均分子量(Mw)のことであり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分子量分布を測定した結果から、Mw=ΣHi×Mi/Σ(Hi)(Hi:ピーク高さ、Mi:分子量)により求められる。
【0049】
多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン、グルコース、マルトース(麦芽糖)、マルチトール、ショ糖、フラクトース、キシリトール、イノシトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マルトトリオース、澱粉分解糖などの糖及びこれらの糖の還元アルコールなどが挙げられ、好ましくはグルコース、マルトース(麦芽糖)、マルチトール、ショ糖、フラクトース、キシリトール、イノシトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マルトトリオース、澱粉分解糖などの糖及びこれらの糖の還元アルコールであり、風味や味質の点で最も好ましくはグルコース、マルトース(麦芽糖)、マルチトール、ショ糖、フラクトース、キシリトール、イノシトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マルトトリオース、澱粉分解糖などの糖である。これらは、1種のみを用いてもよく、2以上を組み合わせて用いてもよいが、グリセリンは原材料表示の面で、化学的なイメージを持つため、近年の消費者の志向にあわず、食品への使用が制限される場合がある。
また、多価アルコールはそのまま用いても、水に溶解して40〜99.9重量%、好ましくは50〜75重量%程度の水溶液として用いてもよい。水を含有した状態で市販されている多価アルコールをそのまま用いることもできる。
【0050】
本発明の乳化組成物において、多価アルコールの含有量は、1〜39重量%、特に3〜35重量%、とりわけ5〜30重量%であることが乳化剤液晶の制御効果を高め、乳化組成物の低温安定性をより効果的に高めることができる点から好ましい。
【0051】
<水>
本発明の乳化組成物中の水の含有量は、上記の油脂含有量において、安定な乳化組成物を形成し得る程度であればよく、特に制限はないが、液状の多価アルコールを用いる場合は、実質、水を含有しなくてもよい。粉末状の多価アルコールを用いる場合、水の含有量は1〜39重量%、特に3〜35重量%、とりわけ4〜30重量%であることが乳化組成物の低温安定性をより効果的に高めることができる点から好ましい。
【0052】
なお、この水の含有量には、前述の多価アルコールを水溶液として用いた場合、当該水溶液中の水も含むものである。
【0053】
<その他の成分>
本発明の乳化組成物は、上記のショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を必須とする乳化剤、油脂、多価アルコール及び水の他、本発明の効果を損なわない程度に、必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。
【0054】
その他の成分としては、有機酸、重曹、リン酸塩等のpH調整剤、更に、効果に影響がない範囲で必要により、マンノオリゴ糖、マルトオリゴ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン、デキストリン、難消化性デキストリン、大豆多糖類、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、プルラン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、アラビアガム、キサンタンガム、寒天、微結晶セルロース、発酵セルロース、キトサン、ファーセラン、でんぷん、加工でんぷん、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物などの各種甘味料;カゼインナトリウム、ホエータンパク質、アルブミン、ゼラチン、大豆タンパク質などの各種動物および植物由来のタンパク質とその分解物;レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、ミルクフレーバー等の香料;β−カロテン、アスタキサンチン、リコピン、パプリカ色素などのカロテノイド、クロロフィル等の色素;チーズ、クリーム、カゼインおよびその塩、トータルミルクプロテイン、ホエイ、ミネラル濃縮ホエイ、脱乳糖ホエイ、脱塩ホエイなどの乳タンパク、乳清ミネラル、バターミルクやバターセラムおよびそれらを粉末化したバターミルクパウダー、バターセーラムパウダーなどのバターミルク類、等の乳製品、乳製品を酵素を用いて分解した乳酵素分解物、食塩(塩化ナトリウム)、粗塩、塩化カリウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、苦汁、ドロマイト、ステアリン酸マグネシウム、リン酸一水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、セピオライト、タルク、フィチン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、カルシウム、鉄等のミネラル類、等の風味付け素材;ビタミンやコエンザイムQ10、アミノ酸、ペプチド等のような栄養素材;ビタミンC、ビタミンE、ローズマリー抽出物、茶抽出物、ヤマモモ抽出物などの酸化防止剤;カラシ抽出物、リゾチーム等の日持向上剤;ナイシン、ソルビン酸およびその塩などの保存料;などが挙げられる。
風味付け素材としては、乳に特徴的な香気成分を含んだ乳酵素分解物が好ましく、原料としての乳製品に特に制限はないが、チーズ、クリームを原料としたものがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
<乳化組成物の調製方法>
本発明の乳化組成物は、常法に従って、配合成分を乳化処理することにより製造される。
乳化処理は、ショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含む乳化剤と多価アルコールと水を含む水相部に対して、油脂を徐々に添加して、市販の乳化機を用いて行えばよい。
【0056】
乳化機としては、例えば、パドルミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ニーダー、インラインミキサー、スタティックミキサー、オンレーター、コンビミックス、アヂホモミキサー等を用いることができ、この乳化処理時の温度は、用いる油脂の上昇融点によっても異なるが、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下で、通常0.005〜20時間、好ましくは0.01〜10時間行われる。
【0057】
乳化処理は1回のみ行っても、2回以上(複数回)を行ってもよい。
乳化処理を複数回行うとは、乳化機に被処理物を導入して所定の条件下で乳化処理した後、乳化処理物を取り出す操作を複数回行うことをさす。ここで、複数回の乳化処理に用いる乳化機は同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0058】
乳化処理時の被処理物のpHについては、用いる乳化剤が水に充分分散し、効率良く油脂を乳化するという点から好ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上で、通常9.0以下、好ましくは8.0以下である。被処理物のpHは、被処理物に重曹、リン酸塩等のpH調整剤、その他の添加剤を添加することにより調整することができる。
【0059】
また、殺菌処理を行う場合には、乳化処理を殺菌処理の前で行ってもよいし、殺菌処理の後で行ってもよい。殺菌処理は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、通常160℃以下、好ましくは150℃以下で、通常0.01分以上、好ましくは0.03分以上、通常60分以下、好ましくは30分以下程度で行う。殺菌方法は特に制限はない。
【0060】
このようにして製造される本発明の乳化組成物は、後述の実施例の項に記載される方法で、乳化組成物2gを70℃の温水18gに撹拌分散させて得られる分散液について、レーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−950」等)で粒度分布を測定した際に得られるメジアン径が、0.01μm以上、特に0.05μm以上、とりわけ0.1μm以上であることが好ましく、20μm以下、特に10μm以下、とりわけ好ましくは5μm以下である。
また、本発明の乳化組成物のpHは、5.0以上であることが好ましく、5.5以上であることがより好ましく、9.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましく、5.5〜8.0であることが最も好ましい。
【0061】
[飲料]
本発明の飲料は、本発明の乳化組成物を含有するものであり、通常、上述のようにして調製された本発明の乳化組成物に、飲料として必要な成分を混合して製造される。乳飲料であれば、更に少なくとも乳成分を混合して製造される。
【0062】
乳成分としては、乳、全脂乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、バター、バターオイル、バターミルク、バターミルクパウダー、カゼイン、ホエー、ミネラル濃縮ホエー、乳清ミネラル、チーズなどが挙げられる。
【0063】
飲料中の本発明の乳化組成物の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上で、通常85重量%以下、好ましくは80重量%以下、最も好ましくは70重量%以下である。飲料中の本発明の乳化組成物の含有量が上記下限値以上であると、油脂の濃厚感、コクを付与することにより、良好な味質の飲料が生産可能であり、また、上記上限値以下であることにより、飲料の殺菌や保存中における乳化安定性を良好な状態で保つことができる。
【0064】
乳飲料中の無脂乳固形分量は、特に制限はないが、より濃厚な乳の風味が必要な場合は、通常0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは1.4重量%以上、最も好ましくは1.5重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは5.0%質量以下、より好ましくは4.0重量%以下、最も好ましくは3.0重量%以下である。飲料中の無脂乳固形分量を、この範囲にすることにより、製品が安定で、かつ油脂とのバランスの良い乳風味が得られるため好ましい。
【0065】
本発明の飲料は、これら以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、コーヒー、茶及びそのエキス、豆類・穀物またはその粉末やペースト、果汁・果肉またはその粉砕物やペースト、乳化剤、pH調整剤、糖類、糖アルコール、甘味料、タンパク質またはその分解物、香料、風味付け素材、ミネラル素材、栄養素材、酸化防止剤、保存料、二酸化炭素、酒類、エタノールなどが挙げられる。具体的には以下のとおりである。
【0066】
<コーヒー、茶及びそのエキス>
コーヒー、茶(紅茶、緑茶、烏龍茶など)およびそのエキス
<豆類・穀物またはその粉末やペースト>
カカオ豆、大豆、小豆、アーモンド、ピーナッツ、胡桃、杏仁、コメ、麦などの豆類・穀物、またはその粉末やペースト
【0067】
<果汁・果肉またはその粉砕物やペースト>
ココナッツミルク、ココナッツジュースなどの果汁や果肉、またはその粉砕物やペースト
【0068】
<乳化剤>
レシチン、リゾレシチン、モノグリセリン有機酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、サポニン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウムなどの乳化剤。中でも以下に記載する静菌性乳化剤。
<pH調整剤>
有機酸およびその塩、重曹、リン酸塩等のpH調整剤
【0069】
<糖類>
砂糖、果糖、ブドウ糖、マルトース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、トレハロース、ラクトース、マンノオリゴ糖、マルトオリゴ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン、デキストリン、難消化性デキストリン、大豆多糖類、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、プルラン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、アラビアガム、キサンタンガム、寒天、微結晶セルロース、発酵セルロース、キトサン、ファーセラン、でんぷん、加工でんぷん、イヌリン等の単糖やオリゴ糖、多糖類を含む糖類
【0070】
<糖アルコール>
エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール等の糖アルコール
<甘味料>
スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物などの各種甘味料
<タンパク質またはその分解物>
カゼインナトリウム、ホエータンパク質、アルブミン、ゼラチン、大豆タンパク質などの各種動物および植物由来のタンパク質またはその分解物
【0071】
<香料>
レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、コーヒーフレーバー、紅茶フレーバー、バター香料、チーズ香料、ミルク香料等の香料
<色素>
β−カロテン、アスタキサンチン、リコピン、パプリカ色素などのカロテノイド、クロロフィル等の色素
<風味付け素材>
食塩(塩化ナトリウム)、粗塩、塩化カリウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、苦汁、ドロマイト、ステアリン酸マグネシウム、リン酸一水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、セピオライト、タルク、フィチン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、カルシウム、鉄等などのミネラル類などの風味付け素材
<栄養素材>
ビタミンやコエンザイムQ10、アミノ酸、ペプチド、DHA、EPA等のような栄養素材
【0072】
<酸化防止剤>
ビタミンC、ビタミンE、ローズマリー抽出物、茶抽出物、ヤマモモ抽出物などの酸化防止剤
<保存料>
カラシ抽出物、リゾチーム等の日持向上剤、ナイシン、ソルビン酸およびその塩などの保存料
【0073】
<酒類>
リキュール、ウォッカ、焼酎などの酒類
【0074】
また、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、食用油脂、およびその乳化物、または粉末化物を飲料成分として含有していてもよい。
【0075】
本発明の飲料は、その他の成分として乳化剤を含むことが好ましく、乳化剤の中でも静菌性乳化剤を含むことが好ましい。静菌性乳化剤とは、飲料における危害菌である耐熱性菌に対して効果を持つ食品用乳化剤であり、その効果を有する食品用乳化剤であれば、特に制限なく使用することができるが、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドが好ましく、これらの中でも、特に、構成脂肪酸の炭素数が14以上のものが好ましく、16以上のものがより好ましく、22以下のものがより好ましく、18以下のものがさらに好ましい。
【0076】
静菌性乳化剤としては、特に、構成脂肪酸の炭素数が16〜18の、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、これらは菌に対する有効性が高いため好適である。また、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノエステル含量が50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上であることが、菌に対する有効性が高いため好適である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンの平均重合度が2以上であることが好ましく、5以下であることが好ましく、さらに3以下であることが、菌に対する有効性が高いため最も好ましい。
【0077】
本発明の飲料における乳化剤の含有量は、通常0.0005重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、通常1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下である。なお、ここで、飲料の乳化剤の含有量とは、前述の本発明の乳化組成物に含まれる乳化剤をも含む合計の乳化剤の含有量をいう。
【0078】
特に、本発明の飲料は、静菌性乳化剤を含有することが好ましく、本発明の飲料における静菌性乳化剤の含有量は、通常0.001重量%以上、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、通常0.6重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下である。なお、ここで、飲料の静菌性乳化剤の含有量とは、前述の本発明の乳化組成物に含まれる静菌性乳化剤をも含む合計の静菌性乳化剤の含有量をいう。
【0079】
本発明の飲料は、例えば以下のように製造される。
【0080】
まず、本発明の乳化組成物の他、上記飲料に含まれていてもよいものとして例示した材料を、必要に応じて水などと共に混合して混合液を調製する。
【0081】
次いで、得られた混合液を撹拌して乳化する。乳化方法としては、通常食品に用いられる均質乳化方法であれば特に制限なく使用することができ、例えば、ホモジナイザーを用いる方法や、コロイドミルを用いる方法、ホモミキサーを用いる方法などいずれも用いることができる。この均質乳化処理は、通常40〜80℃の加温条件下で行われる。
【0082】
なお、ホモジナイザーを用いた均質乳化処理としては、高圧乳化処理を適用することも好ましい。1段式であればその高圧乳化時点の処理圧が、2段式等の多段式であれば、少なくとも1段の高圧乳化時点の処理圧が、通常5MPa以上、好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上、最も好ましくは25MPa以上、通常200MPa以下、好ましくは100MPa以下の高圧乳化処理を行うことで、安定な飲料を得ることができる。高圧乳化処理の回数としては1回以上、好ましくは2回以上である。
【0083】
なお、該均質乳化処理は、乳化組成物の添加の前後のいずれで行ってもよい。乳化組成物添加後に行う場合は、静菌性乳化剤も混合液中に含まれていることが、より一層乳化安定性を向上させるという点で好ましい。
【0084】
この均質乳化処理後には、UHT殺菌、レトルト殺菌などの殺菌処理を行う。通常レトルト殺菌は、110〜140℃、例えば121℃で、10〜40分の条件で行われる。一方、PETボトル用飲料などに用いられるUHT殺菌は、より高温、例えば殺菌温度120〜150℃で、且つ121℃での殺菌価(Fo)が10〜50に相当する超高温殺菌である。UHT殺菌は飲料に直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクション式や飲料を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式などの直接加熱方式、プレートやチューブなど表面熱交換器を用いる間接加熱方式など公知の方法で行うことができ、例えばプレート式殺菌装置を用いることができる。
【0085】
尚、製造された本発明の飲料は、容器詰め飲料に好適であり、例えば、缶飲料、ペットボトル飲料、紙パック飲料、ビン詰飲料などに適用することができる。
【実施例】
【0086】
以下に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0087】
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で乳化組成物の調製に用いた原料は次の通りである。
【0088】
<親水性乳化剤>
(ショ糖脂肪酸エステル(A))
ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルS−1670」、HLB=16、モノエステル含有量78重量%
ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルS−1570」、HLB=15、モノエステル含有量71重量%
ショ糖ミリスチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルM−1695」、HLB=16、モノエステル含有量83重量%
ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルS−1170」、HLB=11、モノエステル含有量58重量%
ショ糖ステアリン酸エステル:第一工業製薬社製「DKエステルF−160」、HLB=15、モノエステル含有量75重量%
【0089】
(ポリグリセリン脂肪酸エステル(B))
デカグリセリンミリスチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーポリグリエステルM−7D」、HLB=16
デカグリセリンミリスチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーポリグリエステルM−10D」、HLB=15
デカグリセリンパルミチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーポリグリエステルP−8D」、HLB=16
デカグリセリンラウリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーポリグリエステルL−7D」、HLB=17
ヘキサグリセリンラウリン酸エステル:阪本薬品工業社製「SYグリスターML500」、HLB=13.4
ヘキサグリセリンオレイン酸エステル:阪本薬品工業社製「MO−5S」、HLB=11.6
【0090】
<親油性乳化剤>
ショ糖パルミチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルP−170」、HLB=1
【0091】
<油脂>
無水バター:飽和脂肪酸含有量65%、上昇融点27℃
硬化ヤシ油:飽和脂肪酸含有量99%、10℃におけるSFCが90%、上昇融点32℃
ナタネ油:飽和脂肪酸含有量7%、上昇融点−20℃以下
【0092】
<多価アルコール>
麦芽糖液:日本食品化工社製「ハイマルトースシロップMC−45」(グルコース、マルトース、マルトトリオース混合物、平均分子量:310)、Brix:70%、水含有量30重量%
65%マルトース溶液:マルトース(分子量:342)を水に加温溶解させた65重量%マルトース水溶液
50%マルトース溶液:マルトースを水に加温溶解させた50重量%マルトース水溶液
70%グルコース溶液:グルコース(分子量:180)を水に加温溶解させた70重量%グルコース水溶液
50%グルコース溶液:グルコースを水に加温溶解させた50重量%グルコース水溶液
50%ショ糖溶液:ショ糖(分子量:342)を水に加温溶解させた50重量%ショ糖水溶液
50%還元水飴溶液:粉末還元水飴(ソルビトール、マルチトール混合物、平均分子量:300)を水に加温溶解させた50重量%還元水飴溶液
70%デキストリン溶液:デキストリン(DE25、平均分子量1887)を水に加温溶解させた70重量%デキストリン水溶液
70%ソルビトール溶液:物産フードサイエンス社製「ソルビトールC」(分子量182)、Brix:70%、水含有量30重量%
【0093】
<風味付け素材>
クリームフレーバー:TATUA社製「C890」(クリーム酵素分解物)
チーズフレーバー:TATUA社製「CH403」、TATUA社製「CH400」
(チーズ酵素分解物)
ミネラル:食塩(塩化ナトリウム)
【0094】
[乳化組成物の調製]
<実施例1>
麦芽糖液15重量%と、ショ糖脂肪酸エステル(A)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)としてショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16、「S−1670」)4重量%とデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16、「M−7D」)1重量%を80℃で攪拌して均一に溶解させて水相部を得た。この水相部を80℃に保持しながらパドルミキサーを用いて300rpmで攪拌し、80℃で溶融させた無水バター80重量%を徐々に添加することで乳化組成物(pH6.0)を調製した。
なお、麦芽糖液は、水含有量30重量%であるため、麦芽糖液15重量%を配合することで、得られる乳化組成物の水含有量は4.5重量%、マルトース含有量は10.5重量%となる。
【0095】
<実施例2>
ショ糖脂肪酸エステル(A)として、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)の代わりにショ糖ステアリン酸エステル(HLB=15、「S−1570」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0096】
<実施例3>
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の代わりにデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=15、「M−10D」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0097】
<実施例4>
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の代わりにデカグリセリンパルミチン酸エステル(HLB=16、「P−8D」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0098】
<実施例5>
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の代わりにデカグリセリンラウリン酸エステル(HLB=17、「L−7D」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0099】
<実施例6>
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の代わりにヘキサグリセリンラウリン酸エステル(HLB=13.4、「SYグリスターML500」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0100】
<実施例7>
ショ糖脂肪酸エステル(A)としてショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)4重量%と、ショ糖ミリスチン酸エステル(HLB=16、「M−1695」)0.5重量%を用い、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)としてデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)0.5重量%を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0101】
<実施例8>
麦芽糖液の代わりにマルトース9.75重量%を水5.25重量%に加温溶解した65重量%マルトース溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0102】
<実施例9>
麦芽糖液の代わりにグルコース10.5重量%を水4.5重量%に加温溶解した70%グルコース溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0103】
<実施例10>
麦芽糖液の代わりにマルトース7.5重量%を水7.5重量%に加温溶解した50%マルトース溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0104】
<実施例11>
麦芽糖液の代わりにショ糖7.5重量%を水7.5重量%に加温溶解した50%ショ糖溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0105】
<実施例12>
麦芽糖液の代わりに粉末還元水飴7.5重量%を水7.5重量%に加温溶解した50%還元水飴溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0106】
<実施例13>
麦芽糖液20重量%、無水バター75重量%を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0107】
<実施例14>
無水バターの代わりに硬化ヤシ油を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0108】
<実施例15>
ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)とデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の配合量をそれぞれ3重量%、2重量%に変更した他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0109】
<実施例16>
ショ糖7.2重量%、水7.5重量%、ショ糖脂肪酸エステル(A)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=11、「S−1170」)4重量%とデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)1重量%を80℃で攪拌して均一に溶解させたものに、乳酵素分解物としてクリームフレーバー(C890)0.6重量%、チーズフレーバー(CH403)0.3重量%、チーズフレーバー(CH400)1.7重量%を、ミネラルとして食塩(塩化ナトリウム)0.3重量%を添加して均一にして水相部を調製し、この水相部を80℃に保持しながらパドルミキサーを用いて300rpmで攪拌し、80℃で溶融させた無水バター77.4重量%を徐々に添加することで乳化組成物(pH6.0)を調製した。
【0110】
<実施例17>
ショ糖脂肪酸エステル(A)として、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=11)の代わりにショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)を用いた他は実施例16と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0111】
<比較例1>
親水性乳化剤として、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)5重量%のみを用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0112】
<比較例2>
親水性乳化剤として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)5重量%のみを用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0113】
<比較例3>
親水性乳化剤として、デカグリセリンパルミチン酸エステル(HLB=16)5重量%のみを用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0114】
<比較例4>
親水性乳化剤として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)5重量%のみを用い、更に親油性乳化剤であるショ糖パルミチン酸エステル(HLB=1、「P−170」)を1重量%用い、麦芽糖液を14重量%用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0115】
<比較例5>
麦芽糖液の代わりにデキストリン10.5重量%を水4.5重量%に加温溶解した70%デキストリン溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0116】
<比較例6>
ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)とデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の配合量をそれぞれ2重量%、3重量%に変更した他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0117】
<比較例7>
麦芽糖液の代わりに70%ソルビトール溶液10重量%を用い、親水性乳化剤としてデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)10重量%を80℃で攪拌して均一に溶解させて水相部を得た他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0118】
<比較例8>
麦芽糖液の代わりに70%ソルビトール溶液10重量%を用い、親水性乳化剤としてデカグリセリンラウリン酸エステル(HLB=17)7.5重量%とヘキサグリセリンオレイン酸エステル(HLB=11.6、「MO−5S」)2.5重量%を80℃で攪拌して均一に溶解させて水相部を得た他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
【0119】
[乳化組成物の評価]
実施例1〜17及び比較例1〜8で調製した乳化組成物について、以下の評価を行った。
【0120】
<分散性評価>
調製直後の乳化組成物2gに70℃の温水18gを加え、マグネチックスターラーを用いて攪拌分散させた。分散液の液面を目視観察し、下記の評価基準で評価した。
(評価基準)
◎:油滴がほとんど見られない
○:わずかに油滴が見られるが、均一に分散
△:分散液に油滴が多数浮き、正確な粒度分布測定が困難
×:分散前から油脂が分離しており、分散しない
【0121】
<粒度分布測定>
分散液の粒度分布をレーザー回析粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA−950」)で測定し、メジアン径を求めた。このメジアン径は、前述の通り0.01〜20μm、特に0.05〜10μm、とりわけ0.1〜5μmの範囲であることが好ましい。
なお、分散する前から油脂が分離していたものや分散後に油分離が激しいものは、安定性がないと判定し、粒度分布の測定は行わなかった。
【0122】
<冷蔵安定性の評価>
10℃以下の冷蔵庫で2週間から12週間保持した後、25℃恒温槽で一晩常温に戻した乳化組成物を、上記の分散性評価と同様に、70℃の温水に分散させて、液面観察と粒度分布を測定した。この評価で分散液が均一であり、求められるメジアン径が、調製直後と大きく変わっていないものが冷蔵安定性に優れる。
【0123】
<冷凍安定性の評価>
−20℃以下の冷凍庫で2週間保持した後、25℃恒温槽で一晩常温に戻した乳化組成物を、上記の分散性評価と同様に、70℃の温水に分散させて、液面観察と粒度分布を測定した。この評価で分散液が均一であり、求められるメジアン径が、調製直後と大きく変わっていないものが冷凍安定性に優れる。
【0124】
[評価結果]
実施例1〜17の冷蔵安定性の評価結果を表1(表1A,表1B)に、実施例1および7の冷凍安定性の評価結果を表2に、比較例1〜8の冷蔵安定性の評価結果を表3にそれぞれ示す。また、保存試験を行っていない保存区についてはN.T.(not tested)と記す。
なお、前述の通り、麦芽糖液は、4.5重量%の水を含有するものであるが、表1〜3においては、このように水を含む麦芽糖液含有量を多価アルコールの含有量の欄に記載した。同様に、ソルビトールについても3重量%の水を含有するものであるが、表3においては、水を含む70%ソルビトール溶液含有量を多価アルコールの含有量の欄に記載した。また、表中の空欄は、乳化組成物の原料として用いていないことを示し、表中の「−」はその項目に該当しないことを示す。
【0125】
【表1A】
【0126】
【表1B】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
表1〜3より次のことが分かる。
表1A,1Bの実施例1〜実施例7、実施例13〜17より、ショ糖脂肪酸エステル(A)とポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を併用し、ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量がポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上含まれる本発明の乳化組成物は、低温保存を行っても乳化安定性が維持される。さらに表2より、実施例1と実施例7の乳化物は冷凍保存を行っても乳化安定性が維持されることが分かる。
これに対して、表3より、ショ糖脂肪酸エステル(A)のみを用いた比較例1では、油脂を高含油することができず、オイル分離してしまう。又、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)のみを用いた比較例2〜3、比較例7〜8、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)と親油性乳化剤を用いた比較例4、ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量がポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量未満の乳化組成物である比較例6では、低温保存を行うとオイルが分離し、安定な乳化状態を保てない。
また、表1Aの実施例1および8〜12より、分子量1500未満の多価アルコールを用いた場合、その種類、濃度に関わらず、分散性、低温安定性が維持された乳化組成物が得られる。一方、表3の比較例5は、多価アルコールとして分子量1500以上のデキストリンを用いた点のみが実施例1等と異なるが、油脂を高含油することができず、オイル分離してしまうため、乳化物自体を調製することができない。
また、実施例1,15と比較例6との対比より、ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量がポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量よりも少ないと、低温保存を行うとオイルが分離し、安定な乳化状態を保てないことが分かる。
【0130】
[ミルクコーヒー添加時の評価]
以下の製造方法に従い、乳化組成物を添加したミルクコーヒー飲料を調製した。
【0131】
<実施例18>
コーヒー抽出液(コーヒー焙煎豆:ユニカフェ社製コロンビアEX、L値:20より抽出。Brix:3.2%)39重量%に、重曹0.1重量%、砂糖5.0重量%、脱脂粉乳0.96重量%、実施例1の乳化組成物0.47重量%、静菌性乳化剤としてショ糖パルミチン酸エステル(三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルP−1670」)0.03重量%、水を加えて、100重量%にした後、十分に撹拌溶解した。その後、高圧乳化機(イズミフードマシナリー社製「HV−OA−2.4−2.2S」)で1段目:15MPa、2段目:5MPa、合計:20MPa、65℃の条件で乳化し、缶容器に充填した後、121.1℃で30分間、レトルト殺菌して、缶容器詰めミルクコーヒー飲料を得た。
【0132】
<比較例9>
乳化組成物として、無水バターの代わりにナタネ油(飽和脂肪酸含有量7%)を用いた以外、実施例1と同様に調製した乳化物を用い、実施例18と同様に缶容器詰めミルクコーヒー飲料を調製した。
【0133】
得られたミルクコーヒー飲料を、油脂の結晶化の影響を受け不安定化しやすい流通時の温度である20℃で8週間、および、高温販売時の温度である60℃で4週間保管し、乳化安定性と風味を評価した。
その結果、保存後も、実施例18のミルクコーヒー飲料は目立ったクリームの塊や浮上が見受けられず、訓練されたパネル3名で試飲した際の風味も、保存による酸化劣化や乳化不良に起因する油脂の劣化臭発生が、一般的な乳製品を含有するミルクコーヒーと比べても大差なく、良好であった。
一方、飽和脂肪酸含有量が低く、上昇融点が0℃未満であるナタネ油を用いた比較例9のミルクコーヒー飲料は、殺菌直後から酸化による油脂の劣化臭(揮発性の油脂酸化生成物の不快な臭気)が強く、飲用には不向きであった。
【0134】
<実施例19>
コーヒー抽出液(コーヒー焙煎豆:ユニカフェ社製コロンビアEX、L値:20より抽出。Brix:3.2%)27重量%に、重曹0.1重量%、砂糖5.0重量%、脱脂粉乳3.9重量%、実施例16の乳化組成物1.7重量%、水を加えて、100重量%にした後、十分に撹拌溶解してミルクコーヒー飲料を調製した。
【0135】
<実施例20>
乳化組成物として実施例1の乳化組成物を用いた以外は実施例19と同様にミルクコーヒー飲料を調製した。
【0136】
<実施例21>
乳化組成物として実施例17の乳化組成物を用いた以外は実施例19と同様にミルクコーヒー飲料を調製した。
【0137】
得られたミルクコーヒー飲料の風味と乳化組成物の分散性を評価した。
その結果、実施例19のミルクコーヒー飲料の表面に目立った油滴やクリームが見られず、乳化組成物の分散性が良好であった。また、訓練されたパネル3名で試飲した際の風味は油脂の濃厚感、コク感が特に優れており、一般的な乳製品を含有するミルクコーヒー飲料と比べて同等以上に良好であった。
同じく、実施例20のミルクコーヒー飲料の表面に目立った油滴やクリームが見られず、乳化組成物の分散性が良好であった。試飲した際の風味は油脂の濃厚感、コク感が優れており、一般的な乳製品を含有するミルクコーヒー飲料と比べても大差なく、良好であった。
一方、実施例21のミルクコーヒー飲料は、試飲した際の風味は油脂の濃厚感、コク感が優れており、一般的な乳製品を含有するミルクコーヒー飲料と比べて同等以上に良好であったが、ミルクコーヒー飲料の表面には明確に油滴が見られた。
実施例19と実施例21との対比から、風味付け素材として乳酵素分解物やミネラル類を用いた場合は、ショ糖脂肪酸エステル(A)としてHLBが低めのものを用いる方が好ましいことが分かる。