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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-49330(P2019-49330A)
(43)【公開日】2019年3月28日
(54)【発明の名称】すべり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/00 20060101AFI20190301BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20190301BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20190301BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20190301BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20190301BHJP
【FI】
   F16C17/00 A
   F16C33/10 Z
   F16C33/14 Z
   B23K26/364
   B23K26/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-174253(P2017-174253)
(22)【出願日】2017年9月11日
(71)【出願人】
【識別番号】506146909
【氏名又は名称】株式会社不二WPC
(71)【出願人】
【識別番号】511241583
【氏名又は名称】株式会社フリクション
(74)【代理人】
【識別番号】100134212
【弁理士】
【氏名又は名称】提中 清彦
(72)【発明者】
【氏名】下平 英二
(72)【発明者】
【氏名】荻原 秀実
(72)【発明者】
【氏名】矢追 和之
【テーマコード(参考)】
3J011
4E168
【Fターム(参考)】
3J011AA06
3J011AA10
3J011AA20
3J011BA02
3J011BA13
3J011CA03
3J011DA02
3J011JA02
3J011KA02
3J011LA05
3J011MA04
3J011MA07
3J011NA01
3J011PA02
3J011RA03
3J011SB04
4E168AB01
4E168AD01
4E168AD18
4E168DA42
4E168DA46
4E168DA47
4E168JA03
4E168JA15
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】 すべり軸受の摺動面に超短パルスレーザ等により微細なテクスチャを形成することにより、油膜の生成を改善して摺動抵抗を低減することで、低フリクション化を促進することができるすべり軸受等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0090】
このため、本発明に係るすべり軸受は、潤滑油の存在下において回転軸を摺動自在に支持するすべり軸受1であって、回転軸を摺動自在に支持する摺動面2に、微細なテクスチャ3が付与されたことを特徴とする。前記微細なテクスチャ3は、超短パルスレーザにより付与されることができると共に、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝、さらには当該V字状溝がヘリングボーン状に複数連設されたヘリングボーン溝であることを特徴とすることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油の存在下において回転軸を摺動自在に支持するすべり軸受であって、
回転軸を摺動自在に支持する摺動面に、微細なテクスチャが付与されたことを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】
前記微細なテクスチャは、超短パルスレーザにより付与されることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
【請求項3】
前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のすべり軸受。
【請求項4】
前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝がヘリングボーン状に複数連設されたヘリングボーン溝であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のすべり軸受。
【請求項5】
前記微細なテクスチャは、摺動面の有効幅の範囲内に収まるように付与されることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のすべり軸受。
【請求項6】
前記微細なテクスチャは、溝幅が5μm〜20μm程度、溝深さが1〜5μm程度であり、隣接する溝との間隙が0.1deg.程度であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載のすべり軸受。
【請求項7】
前記微細なテクスチャは、少なくとも主摺動部領域に付与されることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1つに記載のすべり軸受。
【請求項8】
潤滑油の存在下においてすべり軸受に摺動自在に支持される回転軸の摺動面に、超短パルスレーザにより微細なテクスチャが付与されたことを特徴とする回転軸。
【請求項9】
前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝であることを特徴とする請求項8に記載の回転軸。
【請求項10】
前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝がヘリングボーン状に複数連設されたヘリングボーン溝であることを特徴とする請求項8に記載の回転軸。
【請求項11】
前記微細なテクスチャは、回転軸の軸受部の有効幅の範囲内に収まるように付与されることを特徴とする請求項8〜請求項10の何れか1つに記載のすべり軸受。
【請求項12】
潤滑油の存在下において回転軸を摺動自在に支持するすべり軸受の摺動面に、超短パルスレーザにより微細なテクスチャを付与することを特徴とするすべり軸受の製造方法。
【請求項13】
前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝がヘリングボーン状に複数連設されたヘリングボーン溝であることを特徴とする請求項12に記載のすべり軸受の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関や工作機械等の各種機械装置の軸受として潤滑油の存在下で使用されるすべり軸受及びその製造方法、回転軸の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々のすべり軸受(滑り軸受、メタル)が提案されており、例えば、高強度Cu軸受合金にオーバレイめっきを付加した高強度ケルメットや、スパッタリング法によって軸受合金の上に下地軸受合金よりも硬質の表面層を形成したものなどがある。
【0003】
また、特許文献1には、軸受合金層に深さ3μm〜20μm程度の条痕(機械加工による切削痕)を周方向(例えば螺旋状)に形成し、その上にDLC(Diamond Like Carbon)等の硬質膜を形成することで、対荷重性能と対焼付性、異物埋収性などの向上を狙ったものなどが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−13958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この一方で、すべり軸受の摺動面の材質や条痕の有無等に拘らず、摺動面に対する動的な油膜生成の改善に関するアプローチにより、すべり軸受に対して、一層の低フリクション化を図ることができれば、それぞれの特徴を活かしつつ、一層の内燃機関の高出力化、省燃費化等に貢献可能であり、極めて有益な技術となり得る。
【0006】
また、近年の省燃費、省資源の観点から、エンジン(内燃機関)用潤滑油の低粘度化が進んでいる。
【0007】
このため、エンジンの各摺動部は、潤滑油の油膜厚さが薄くなるので、境界潤滑状態に移行し易く金属接触が生じ易くなるといったおそれがあり、これに伴い、クランクシャフトジャーナル部等のすべり軸受についても低粘度潤滑油により境界潤滑状態での使用状態に移行し易い状態となっているといった実情がある。
【0008】
また、近年の更なる省燃費(高出力化)、省資源の観点からエンジンの低フリクション化も求められている。
【0009】
ピストン、ピストンリング、シリンダライナの摺動部の次にフリクションが大きな部位であるクランクシャフトジャーナル部とそのすべり軸受との間の摺動部における低フリクション化を図るために、例えば二硫化モリブデンショットメタルなども提案されているが、更なる低フリクション化が求められているといった実情がある。
【0010】
なお、二硫化モリブデンショットメタルとは、すべり軸受の摺動面に、固体潤滑剤として高い潤滑性能を持つ二硫化モリブデン粉体を高速衝突させることで、二硫化モリブデン高純度層を形成、または熱拡散させたもので、摩擦抵抗を大幅に低減し耐摩耗性及び耐焼付き性を向上させることを可能にしたメタル(すべり軸受)である。
【0011】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、すべり軸受の摺動面に超短パルスレーザ等により微細なテクスチャを形成することにより、油膜の生成を改善して摺動抵抗を低減することで、低フリクション化を促進することができるすべり軸受、回転軸及びすべり軸受けの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明に係るすべり軸受は、
潤滑油の存在下において回転軸を摺動自在に支持するすべり軸受であって、
回転軸を摺動自在に支持する摺動面に、微細なテクスチャが付与されたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るすべり軸受において、前記微細なテクスチャは、超短パルスレーザにより付与されることを特徴とすることができる。
【0014】
本発明に係るすべり軸受において、前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝であることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明に係るすべり軸受において、前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝がヘリングボーン状に複数連設されたヘリングボーン溝であることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明に係るすべり軸受において、前記微細なテクスチャは、摺動面の有効幅の範囲内に収まるように付与されることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明に係るすべり軸受において、前記微細なテクスチャは、溝幅が5μm〜20μm程度、溝深さが1〜5μm程度であり、隣接する溝との間隙が0.1deg.程度であることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明に係るすべり軸受において、前記微細なテクスチャは、少なくとも主摺動部領域に付与されることを特徴とすることができる。
【0019】
本発明に係る回転軸は、
潤滑油の存在下においてすべり軸受に摺動自在に支持される回転軸の摺動面に、超短パルスレーザにより微細なテクスチャが付与されたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る回転軸において、前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝であることを特徴とすることができる。
【0021】
本発明に係る回転軸において、前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝がヘリングボーン状に複数連設されたヘリングボーン溝であることを特徴とすることができる。
【0022】
本発明に係る回転軸において、前記微細なテクスチャは、回転軸の軸受部の有効幅の範囲内に収まるように付与されることを特徴とすることができる。
【0023】
本発明に係るすべり軸受の製造方法は、潤滑油の存在下において回転軸を摺動自在に支持するすべり軸受の摺動面に、超短パルスレーザにより微細なテクスチャを付与することを特徴とする。
【0024】
本発明に係るすべり軸受の製造方法において、前記微細なテクスチャは、回転軸の回転方向下流側に頂点を有するV字状溝がヘリングボーン状に複数連設されたヘリングボーン溝であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、すべり軸受の摺動面に超短パルスレーザ等により微細なテクスチャを形成することにより、油膜の生成を改善して摺動抵抗を低減することで、低フリクション化を促進することができるすべり軸受、回転軸及びすべり軸受けの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係るすべり軸受(試験に供した分割式すべり軸受)のLOWER側(下側)の側面図(回転軸方向から見た図)及び正面図(回転軸中心から半径方向に向かって見た図)であり、(B)はUPPER側(上側)の側面図及び正面図であり、(C)はそれらに設けられているヘリングボーン溝(V字状溝)の一例を拡大して示した正面図である。
図2】同上実施の形態に係るすべり軸受のヘリングボーン溝(テクスチャ)の一例を概略的に示す正面図(回転軸の直交する方向から見た図)である。
図3】(A)は同上実施の形態に係るすべり軸受のヘリングボーン溝(テクスチャ)の断面形状(矩形状)の例を示す図2のA−A矢視図であり、(B)は他の断面形状(U字形状或いは樽形状)の例を示す図2のA−A矢視図であり、(C)は他の断面形状(略円弧状、略半円形状或いはR形状)の例を示す図2のA−A矢視図である。
図4】同上実施の形態に係るすべり軸受の摺動面に付与されたヘリングボーン溝(微細なテクスチャ)の一例を示す拡大写真(200倍、500倍、1000倍)である。
図5】同上実施の形態に係るすべり軸受の摺動面に付与されたヘリングボーン溝(微細なテクスチャ)の溝底の形状例を示す図である。
図6】(A)は同上実施の形態に係るすべり軸受の摺動面に付与された微細なテクスチャの一例(ドットをV字状に点在させた例)を示す正面図(回転軸中心から半径方向に向かって見た図)であり、(B)は他の一例(ドットを格子状に点在させた例)を示す正面図であり、(C)は他の一例(ドットを千鳥格子状に点在させた例)を示す正面図であり、(D)は他の一例(三角形状の凹部を形成した例)を示す正面図である。
図7】同上実施の形態に係るすべり軸受に採用可能な一般的なメタル(すべり軸受)の材料の例を示す図(テーブル)である。
図8】同上実施の形態に係るすべり軸受の潤滑油(エンジンオイル)の存在下における油膜圧力の発生の様子を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0028】
本発明は、潤滑油の存在下における摺動面に対する動的な油膜生成の改善(潤滑油の動圧効果)に関するアプローチにより、すべり軸受に関して一層の低フリクション化を図ることを狙ったもので、そのために摺動面に超短パルスレーザ加工により微細なテクスチャを付与することを特徴としている。
【0029】
すなわち、本発明においては、例えば、内燃機関(エンジン)のクランクシャフトのジャーナル部と、すべり軸受と、の間の摺動部において、すべり軸受の前記ジャーナル部との摺動面に微細なテクスチャを付与(形成)することで、
(1)流体(エンジン潤滑油)の動圧効果を高め、油膜反力を増大することで流体潤滑領域の拡大、つまり境界潤滑状態への移行を抑制することができる。
例えば、境界潤滑に移行し易い低粘度潤滑油を使用する際に、摺動面に付与する微細なテクスチャの一例としてヘリングボーン溝は有効である。
(2)また、適切なテクスチャの付与により平均油膜厚さを増大させることができるので、エンジン潤滑油のせん断抵抗が低減され、エンジンフリクションの低減に貢献することができる。
【0030】
ここで、本実施の形態において、テクスチャとは物体の表面の模様を意味し、ここでは、すべり軸受の摺動面(軸受面)に形成される微細な凹部(溝、窪み、ディンプル等)により表わされる表面形状(模様)をいう。
【0031】
本実施の形態では、図1に示すようなすべり軸受(プレーンメタル、平軸受)1の摺動面(軸を回転自在に支持する軸受面)2に、テクスチャの一例であるヘリングボーン溝3を、後述する超短パルスレーザにより付与する。超短パルスレーザによる加工によれば、従来の加工用レーザのようにレーザ加工時の熱で軸受面が溶けてデブリとなって摺動面を荒らすなど(摺動面に突起が生じるなど)といったおそれを招くことなく、非常に微細な凹部(溝)を精密に形成することができる。
【0032】
本実施の形態において、ヘリングボーン溝3を形成したすべり軸受1は、図1に示すような一般的なサイズのものを用いた。具体的には、外径φ59mm程度(内径φ56mm、厚さ3mm程度)、幅20mm程度のものを用いたが、これに限定されるものではない。
【0033】
なお、図1のすべり軸受1は、半割りタイプ(LOWER側1A、UPPER側1B)のすべり軸受で、摺動面2の軸方向中央部にオイル溝2Aが設けられているが、当該オイル溝2Aが無いタイプのすべり軸受にも、また半割りタイプでないすべり軸受であっても同様の効果があり、本発明は適用可能である。
【0034】
また、本実施の形態においてテクスチャを付与する前のベースとなるすべり軸受1の材質の例としては、例えば、図7に示すような一般的なメタル(すべり軸受)、例えばアルミニウム合金メタル(Al−Sn合金、Al−Sn−Si合金、Al−Zn合金等)などを採用することができる。
【0035】
但し、一般的なコーティングメタル、つまりコーティング面(層)にテクスチャ(ヘリングボーン溝等)3を付与することも可能である。
【0036】
すなわち、本実施の形態においてテクスチャの付与(加工)に用いる超短パルスレーザは、加工対象の材質には限定されない加工技術であるため、他の材質のすべり軸受(金属は勿論、金属以外の材質(樹脂、セラミックス等))にも本発明は適用可能である。
【0037】
ここで、本実施の形態に係る微細なテクスチャの一例であるヘリングボーン溝は、以下のような特徴を有する。
【0038】
[1]本実施の形態において、ヘリングボーン溝3は、すべり軸受1と軸(クランクシャフトやカムシャフト等のジャーナル部等)との摺動部のすべり軸受1側の摺動面2に付与する(図1図2等参照)。
【0039】
一般的には、摺動面二面(すべり軸受側の摺動面と、回転軸側の摺動面の対面する二面)に関して、高硬度材料(ジャーナル部:炭素鋼等)側にテクスチャを形成するのが一般的だが、へリングボーン溝が所謂やすりのように作用し、相手側を摩耗させるおそれが考えられるため、本実施の形態では、低硬度材料側であるすべり軸受1にヘリングボーン溝(テクスチャ)3を付与(形成)する。
【0040】
但し、材質や形状など様々な条件の相違によって、回転軸側に微細なテクスチャ(例えばヘリングボーン溝等)を付与(形成)しても各摺動面の摩耗が少ないような場合などには、微細なテクスチャ(例えばヘリングボーン溝等)を回転軸側に付与(形成)することも可能である。
【0041】
[2]へリングボーン溝とは、魚(ニシン)の骨に似た形状で、回転軸中心から半径方向に見た形がアルファベットのV字形の溝(V字状溝)を連続して周方向(縦方向)に所定間隙を持って複数並べたようなテクスチャ(当該テクスチャを横方向に複数列並べることもできる)である(図1図2参照)。
【0042】
本実施の形態では、そのテクスチャ(V字状溝)は、単一でも良いが、図1図2に示 すように、回転軸中心に対し周方向に複数所定間隔で整列させることができ、また、図2に示すように、V字の頂点が、軸の回転方向下流側となるように配設することができる。
【0043】
また、そのテクスチャ(V字状溝)は、断面(図2のA−A矢視図)が略矩形、略円弧状、または略U字状などの溝とすることができる(図3参照)。
【0044】
なお、回転軸側に微細なテクスチャ(例えばヘリングボーン溝等)を付与する場合においても、摺動面の幅方向の端部から中央に向かうに従って油膜反力が大きくなるように、V字状溝(ヘリングボーン溝)の場合にはその頂点が回転方向下流側の位置となるように付与されることができる。
【0045】
[3]へリングボーン溝が摩耗して消滅後も低フリクション効果が維持できる。
初期にテクスチャが存在した面には、テクスチャが消失後も元々テクスチャが無かった面(部分)より表面自由エネルギが高く、より親油性があり(濡れ性が高く)、油膜形成性、油膜保持性が高く、その結果、摩擦力が小さいことが明らかにされている(出典:2011年12月07日 (社)日本トライボロジー学会 第57回トライボロジー先端講座 足立孝志 東北大学)。
よって、摩耗し易い低硬度材料側であるすべり軸受側にヘリングボーン溝を付与(形成)し、それが摩耗した場合でも低フリクション効果を発揮することを期待できる。
【0046】
[4]すべり軸受(メタル)の摺動面の条痕(螺旋状切削溝など)の有無に拘らない。
条痕(上述した特許文献1に記載されているような回転軸中心を中心とする螺旋状溝)等のあるなしにかかわらず、超短パルスレーザによる加工であるため、へリングボーン溝を付与(形成)することができ、同様の潤滑油の動圧効果の改善による低フリクション化に交換可能である。
【0047】
[5]超短パルスレーザによる加工であるため、ショット面、コーティング面、その他のあらゆる表面処理を施した摺動面であってもヘリングボーン溝を付与可能である。
【0048】
[6]超短パルスレーザによる加工であるため、コーティング膜厚内において(基材に到達しない範囲で)へリングボーン溝を形成することができる。
【0049】
[7]超短パルスレーザによる加工であるため、メタル摺動面全面に付与せず、弾性流体潤滑範囲(領域)の局所当たりする主摺動部(周方向において高圧な油圧を受ける領域、後述及び図8等参照)のみに微細なテクスチャ(例えば、ヘリングボーン溝)を付与することができる。
【0050】
主摺動部以外へのヘリングボーン溝の付与(形成)は、動圧効果延いては低フリクション効果が得難くいばかりか、加工コスト並びに工程時間が長くなり生産性に欠けるなどのおそれがあるが、本実施の形態のように主摺動部(主摺動領域)にのみテクスチャを付与することで、このようなおそれを回避することができ、以って生産性の改善、低コスト化等に貢献可能である。
【0051】
言い換えると、微細なテクスチャ(例えば、ヘリングボーン溝)を少なくとも主摺動部領域に付与することが、動圧効果延いては低フリクション効果、生産コスト等の観点から有益である。
【0052】
但し、生産コスト等を考慮しなくて良い場合など条件によっては、図1に示したように、アッパー側1Bを含めすべり軸受1の摺動面2の周方向全域に亘ってテクスチャを付与することができる。
【0053】
なお、主摺動部とは、軸のジャーナル部と、すべり軸受の摺動面と、の間における潤滑状態が境界潤滑状態が主体となっているであろう部分(領域)で、ある期間運転(使用)した後(例えば、初期なじみ期間が終了した後)において、すべり軸受の摺動面に摺動痕(摩耗痕)が形成される部分である。また、主摺動部は、図8に示すように、軸が回転したときに油膜圧力が立ち上がる領域(例えば、最大油膜反力が発生するポイント及びその近傍(±15deg.(deg.=回転角度)程度)の領域に相当するとも言える。但し、主摺動部の位置、サイズ、形状等は、軸や軸の支持部の剛性等に左右されるので、一概には特定することは難しいため、実際には運転後のすべり軸受の摺動面の摺動痕(摩耗痕)を観察して特定することが望ましい。
【0054】
なお、主摺動部より広い領域にテクスチャを付与しても、動圧効果を良好に得ることができることから、生産コスト等とのトレードオフを考慮して、テクスチャを付与する領域を決定することが望ましい。
【0055】
[8]主摺動部領域内にヘリングボーン溝全体を少なくとも一本(一列)以上付与(形成)する。
すなわち、図2に示すように、主摺動部領域の幅方向(軸の長手方向)において軸受の有効幅(油膜反力を有効に受けることができる幅)の範囲内にV字の幅(全幅)が収まるようにヘリングボーン溝3を周方向に連設した列を少なくとも一列設けるようにする。これは、V字溝の端部がメタルの両端まで至って溝端部が幅方向においてはみ出して開放されてしまうと油圧が逃げてヘリングボーン溝による良好な油膜反力延いては低フリクション効果が得難くなるおそれがあるが、上記のようにV字の幅を制限することで、かかるおそれを回避することができる。
なお、有効幅の範囲内に複数列のヘリングボーン溝を軸方向(幅方向)に並設させる構成を採用することもできる。
【0056】
[9]本実施の形態では、上記[7]及び[8]等を満足するために、ヘリングボーン溝の折れ角度を考慮している。詳細については後述する。
【0057】
[10]ヘリングボーン溝の深さは、最大油膜反力が得られるように、一般的に最小油膜厚(軸受への最大面圧入力時)の2〜3倍に設定するが、すべり軸受の初期摩耗(なじみ運転終了時の条痕摩耗量)を考慮した値とすることができる。
【0058】
より具体的なヘリングボーン溝の仕様例を、以下に記載する。
(1)溝幅:5μm〜20μm程度、好ましくは10μm(+2μm〜+5μm)程度
(2)溝深さ:2μm±1μm程度(初期なじみ後)
初期なじみによる摩耗を考慮すると3〜5μm程度とすることができる。
なお、一般的な条痕(螺旋状加工痕)の深さは約3μm程度なので、当該条痕が摩滅し消滅してもヘリングボーン溝が残存するように溝深さを設定することができる。
(3)溝ピッチ:0.1deg.(48μm:周方向長さ間隔)程度とすることができる。
【0059】
(4)全幅:軸受摺動面の有効幅未満とする(図2参照)。
但し、できるだけ有効幅ギリギリに設定し、動圧効果を最大限発揮できるようにする。
【0060】
(5)折れ角度:良好な動圧効果を得ることができる範囲とすることができるが、例えば、約90deg.程度(45deg.〜120deg.の範囲)とすることができる。
弾性流体潤滑範囲の局部当たりする範囲に、ヘリングボーン溝と平坦部の比率を考慮し、できるだけ多数のヘリングボーン溝を付与(形成)することと、幅方向において真実摺動部からヘリングボーン溝がはみ出さない折れ角度とすることが望ましい。
【0061】
(6)ヘリングボーン溝を付与する範囲:上記[7]にて述べたように、最大油膜反力が発生するポイント及びその近傍(±15deg.程度)の領域とすることができる。但し、周方向の全域に亘って形成することもできる(図1参照)。
【0062】
(7)溝幅と平坦部の比率(溝幅:平坦部)は、1:1〜1:100程度とすることができる。
なお、図4で例示したように、溝幅と平坦部の比率(溝幅:平坦部)は、1:4程度(或いは他の例としては1:2(図3等参照)〜1:10程度)などとすることが好ましい。
【0063】
(8)ヘリングボーン溝の溝底形状(摺動面と略平行な底面の形状)は平坦とすることができるが、超短パルスレーザにより溝加工を施す場合には、その加工送り速度に応じて、本実施の形態に係るテクスチャ(へリングボーン溝等)は、図4の1000倍の拡大図に示されるように、微細なドット(微細孔或いは微細凹部)の集合体(隣接する微細なドット同士が数珠つなぎ状に連設された状態)とすることができるため、溝底面を連続した所謂凹凸形状とすることができる(図5参照)。
この場合には、一組の(隣接する)凹部凸部によって流体の動圧効果が発生するので、一般的な溝形状(底面が平坦な溝形状)のテクスチャ(へリングボーン溝等)に比べて、より大きな流体の動圧効果を発生させることができる。
【0064】
(9)また、本実施の形態においては、超短パルスレーザにより溝加工を施した後に、3Dラッピング処理を施すことができ、これにより溝と摺動面との境界(角部付近など)をバリ等の突起の無い良好な状態にすることができる。
すなわち、溝と摺動面の境界面に万が一突起(バリ等)が形成された場合を考慮し、3Dラッピング処理により突起を除去することができる(図3(A)参照)。このため、摺動面上の突起等によるメタルコンタクト或いは境界潤滑状態の発生を効果的に抑制することができ、一層確実な低フリクション化や摩耗低減に貢献可能である。
【0065】
(10)クランクシャフトのジャーナル部と、すべり軸受の摺動面と、の間のクリアランス(油膜厚さ)から最適溝深さ(クリアランス:溝深さ=1:1.8〜3程度)が決まるので、すべり軸受の幅方向に関し、端部側はジャーナルの接触があることを考慮すると、へリングボーン溝は幅方向端部に向かうほど、溝深さが減少(段階的に或いは漸減)するような構成を採用することも可能である。
これにより、例えば、平均油膜厚さを厚くすることなどが可能となるため、かかる場合には、オイルのせん断抵抗を低減することができ、以って流体潤滑領域の拡大が図れフリクションを低減することができ、結果的に境界、混合、流体の全潤滑領域で低フリクション効果を発揮することができる。
【0066】
(11)本実施の形態においては、テクスチャの例としてヘリングボーン溝を例示したが、これに限定されるものではない。
例えば、図6(A)に示すように、複数の微小ディンプル(φ5μm〜20μm程度、深さ3〜5μm程度)をヘリングボーン溝状に点在させた構成、或いは、図6(B)、(C)等に示すように、複数の微小ディンプルを規則正しく(碁盤の目状に)或いはランダムに点在させたり千鳥状に配設させた構成、更に、図6(D)に示すように、三角形の頂点を軸の回転方向下流側に位置するように三角形状の凹部を形成することなども可能である。更に、複数の微小ディンプルと三角形状の凹部を組み合わせて、規則正しく(碁盤の目状に)或いはランダムに点在させたり千鳥状に配設することなども可能である。
また、図6(A)から図6(D)では、略半球状(入口部円形状)の微小ディンプル(微小凹部)や三角形状に凹設された凹部を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、円形状や三角形状の他にも、菱形や六角形等の多角形形状を有するディンプルや凹部とすることができる。
【0067】
ここで、本実施の形態に係るすべり軸受へのテクスチャの付与による作用効果について説明しておく。
テクスチャ(例えばヘリングボーン溝)を付与しない従来のすべり軸受においても、軸の軸受部(ジャーナル部)とすべり軸受の間の軸の偏心により、ウェッジ効果(クサビ効果)が発生し油膜が形成され易くなり、メタルコンタクトや流体潤滑から境界潤滑への移行を抑制するといった作用効果があることは知られているところである。そして、摺動面にテクスチャ(例えばヘリングボーン溝)を付与すると、V字型という溝の構成から潤滑油が軸受部(ジャーナル部:すなわち、すべり軸受)の幅方向の中央部(図2参照)に集まり易くなり、結果的に面圧の高い領域でも油膜反力が増大することになる。このため、テクスチャ(例えばヘリングボーン溝)を付与した本実施の形態に係るすべり軸受によれば、従来のテクスチャ無しのすべり軸受に比べて、平均油膜厚さが増大し、潤滑油のせん断抵抗が減少することで低フリクション化が一層促進されることになる。
【0068】
また、潤滑油がすべり軸受の幅方向の中央部に集まり易くなるということは、潤滑油の側方漏れ(ジャーナル部とすべり軸受のクリアランス部からの幅方向外側へのオイル漏れ)が減少すると考えられ、オイルポンプの小容量化延いてはエンジンの小型化・軽量化に貢献可能であり、結果的にオイルポンプの駆動ロスも低減されエンジンのフリクションロスの低減に貢献することができる。
【0069】
なお、へリングボーン溝は、潤滑油の入口出口比の最適化(すなわち、へリングボーン溝深さの最適化)により、ステップ軸受(段階的に或いは徐々に溝深さを(1本のへリングボーン溝の中で、或いはヘリングボーン溝間において)異ならせたヘリングボーン溝を有する軸受)として機能させることができ、以って動圧効果(浮力:油膜反力)を効果的に発生させることで負荷能力を向上させることが可能である。その結果、高負荷時の油膜が薄くなり難く、言い換えれば流体潤滑領域が拡大され(より低回転、高負荷領域まで流体潤滑状態を維持することが可能となり)、へリングボーン溝なしの場合に比べ低フリクションなすべり軸受の実現に貢献可能である。
【0070】
また、その形状(溝深さを段階的に或いは漸増させた溝形状)から平均油膜厚さを厚くすることが可能であり、かかる場合には、オイルのせん断抵抗を低減することができ、以って流体潤滑領域を拡大できフリクションを低減することができ、結果的に境界、混合、流体の全潤滑領域で低フリクション効果を発揮することができる。
【0071】
本実施の形態では、微細なテクスチャを付与するすべり軸として条痕付きのすべり軸受に適用可能であるし、ボーリング加工により製造されたすべり軸受(螺旋状の条痕のない摺動面)にも適用可能である。
【0072】
以上のように、本実施の形態によれば、すべり軸受の摺動面に超短パルスレーザ等により微細なテクスチャを形成することにより、油膜の生成を改善して摺動抵抗を低減することで、低フリクション化を促進することができるすべり軸受、回転軸及びすべり軸受けの製造方法を提供することができる。
【0073】
ここで、本実施の形態においてテクスチャ(ヘリングボーン溝)の加工を行ったレーザ加工について説明する。
本実施の形態では、すべり軸受の摺動面に対してヘリングボーン溝を付与(形成)するレーザ加工に用いるレーザとしては、超短パルスレーザを用いることが望ましい。
【0074】
パルスレーザによる加工では,パルス幅が加工状態に大きく影響する。一般的には,パルス幅によりナノ秒(nano)レーザ,ピコ(pico)秒レーザ,フェムト(femto:fm)秒レーザに分けられる。
【0075】
パルス幅は同一エネルギであれば、短パルスほどエネルギ密度が高いこと、パルス幅が短いほど照射エネルギが照射部に伝わらないことから、パルス幅が長いほど熱影響が多くなり溶融・蒸発の加工に、短いほど溶融過程を経過せずに直接原子化される(アブレーション)加工となるため、バリ等の生じない精度の高い加工が可能である。
また,装置価格もナノ(nano)秒レーザ,ピコ(pico)秒レーザ,フェムト(femto:fm)秒レーザの順に高額となる。
【0076】
超短パルスレーザによる材料加工は、光が化学結合の電子系(電子による結合)を励起し、該結合を切断することにより溶融過程を経ずに、直接に原子化・蒸発を行う(アブレーション「ablation」:材料の表面が蒸発等によって剥ぎ取られる現象))とされ、溶融バリなどの発生が少なく、精細な加工(例えば、幅で10μm程度、深さ3〜5μm程度)の高精度な微小(微細)溝や凹形状の加工に好適である。
【0077】
このため、本発明では、溶融バリ等の発生がなく、加工精度や仕上がり精度、コスト等を勘案して、ピコ(pico)秒レーザ以上の超短パルスレーザ(パルス幅をピコ秒以上に短いパルス幅まで短パルス化したレーザ)により、すべり軸受の摺動面に微細なテクスチャ(例えば、へリングボーン溝)を付与(形成)することが好ましい。
【0078】
より具体的には、すべり軸受の摺動面のテクスチャ(例えば、ヘリングボーン溝)の加工に使用するレーザとしては、例えば、パルス幅20ps以下の超短パルスを出力可能なピコ秒レーザが好適であり、更にはパルス幅20ps以下の短パルスと最大250μJの高いパルスエネルギを両立できるピコ秒レーザが好ましい。かかる超短パルスレーザによる加工によれば、従来の加工用レーザのようにレーザ加工時の熱で軸受面が溶けてデブリ(溶融バリ等)となって摺動面を荒らすなど(摺動面に突起が生じるなど)といったおそれを招くことなく、非常に微細なテクスチャ(凹部、溝)を精密に形成することができる。
【0079】
本実施の形態においては、ピコ秒レーザとして、例えば、エッジウェーブ(edgewave)社製の短パルスレーザ「Ultra short pulse lasers PX-series」(スラブ型レーザ PX50−2−GM)(仕様等についてはURL:http://www.beams-inc.jp/edgewave_pico_pxqx.html or http://www.edge-wave.de/web/wp-content/uploads/2013/03/PX.pdf 参照)を用いて微小なスリット(溝)を形成した。
但し、これに限らず、他のレーザ加工装置を用いることは可能である。
【0080】
なお、超短パルスレーザに限らず、条件によっては、すべり軸受の摺動面のテクスチャ(例えば、ヘリングボーン溝)を形成するレーザ加工に用いるレーザとして、高密度連続波(CW)を採用することなども可能である。高密度連続波(CW)は、溶接、溶断など熱的に材料を溶融させて加工を施す方法であり、パルスレーザは光エネルギを圧縮化(パルス化)して加工を行う方法であり、これらは公知である。
【0081】
なお、かかる超短パルスレーザによる加工の際に溶融バリや再付着原子等が生じる場合には、これらの除去ならびにテクスチャ(ヘリングボーン溝)の入口部(摺動面と交差する角部)の周辺部の丸め(R取り、図3参照)を、WPC処理或いは三次元形状を研磨することができる三次元研磨(3Dラッピング「登録商標」)により実現することができる。
【0082】
WPC処理とは、「微粒子ピーニング」、「精密ショットピーニング」、「FPB(Fine Particle Bombarding)」などと称される表面処理で、金属製品の表面に、目的に応じた材質の微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させる表面改質処理である。かかるWPC処理により、溶融バリや再付着原子等を除去することができる。
【0083】
また、三次元研磨(3Dラッピング)処理について、以下に説明する。
(1)研磨砥粒:微小粒径(例えば粒径5μm以下)のダイヤモンドその他の研磨剤(炭化ケイ素、コランダム:アルミナなど)を単独もしくは樹脂等に担持させて研磨に用いる。
(2)複雑形状部材の研磨のために、上記の研磨砥粒を、部材に投射 (投射処理) 或いはバレル容器内で部材と共に運動させる(バレル処理)。
(3)投射処理
以下の2通りが想定される。
(a)研磨砥粒を空気あるいは各種気体と混合し、ノズルから圧送し、被加工部材に投射する。
(b)研磨砥粒を回転羽根等により機械的に速度を付加し,被加工部材に投射する。
(4)バレル処理
通常のバレル処理と同様(研磨砥粒を、バレル容器内で部材と共に運動させる)
【0084】
なお、3Dラッピングの具体的な例として、不二製作所のシリウス加工(URL:http://www.fujimfg.co.jp/ApplicationSirius.htm)、噴射式ラップマシン「SMAP」東洋研磨材工業株式会社製(URL:http://www.toyo−kenmazai−kogyo.jp/smap.html)などを利用することができる。
かかる3Dラッピング(砥粒研磨)を用いることにより、比較的容易にかつ精度良く溶融バリ、再付着原子の除去ならびに溝入口周辺部の丸めを行うことなどが可能である。
【0085】
なお、本実施の形態では、クランクシャフトのジャーナル部におけるすべり軸受を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、潤滑油が介在するすべり軸受(例えば、カムシャフトのジャーナル部のすべり軸受、スラスト軸受、ターボチャージャ用軸受等)であれば適用可能である。
【0086】
また、本実施の形態では、すべり軸受側に微細なテクスチャ(例えばヘリングボーン溝等)を付与する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、回転軸側に微細なテクスチャ(例えばヘリングボーン溝等)を付与(形成)する場合にも適用可能である。
【0087】
また、本実施の形態では、微細なテクスチャ(例えば、へリングボーン溝等)を付与する加工方法として超短パルスレーザ加工を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、他の加工方法(例えば、機械加工(切削等)、放電加工、エッチング、その他の加工方法)による場合にも適用可能である。
【0088】
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 すべり軸受
2 摺動面
2A オイル溝
3 微細なテクスチャ(V字状溝、ヘリングボーン溝)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8