特開2019-49660(P2019-49660A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2019049660-カムフォロア及びレンズ鏡筒 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-49660(P2019-49660A)
(43)【公開日】2019年3月28日
(54)【発明の名称】カムフォロア及びレンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20190301BHJP
【FI】
   G02B7/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-174261(P2017-174261)
(22)【出願日】2017年9月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】武澤 秀行
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044BD09
2H044BD16
(57)【要約】
【課題】 簡易な構成ながら、溝部壁面との間のガタの発生を効果的に防止することが可能なカムフォロア及びレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】 カムフォロア200は、少なくとも1つの溝部に係合するカムフォロア本体210と、カムフォロア本体210の中心軸に対して周方向に設けられた保持部211に保持されるコイルバネ220と、カムフォロア本体210側面に設けられた孔より突出し、コイルバネ220の付勢力により溝部の一方の壁面と弾性当接する押圧部材230と、を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの溝部に係合するカムフォロア本体と、
前記カムフォロア本体の中心軸に対して周方向に設けられた保持部に保持されるコイルバネと、
前記カムフォロア本体側面に設けられた孔より突出し、前記コイルバネの付勢力により前記溝部の一方の壁面と弾性当接する押圧部材と、
を有することを特徴とするカムフォロア。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記孔を介して突出する突出部と前記コイルバネの両端と押圧接触するバネ受け部とを有し、前記コイルバネを前記保持部に沿う方向に弾性圧縮し、弾性圧縮により前記バネ受け部に生じる付勢力のうち、前記突出部の突出方向の合力が前記押圧部材の付勢力となる
ことを特徴とする請求項1に記載のカムフォロア。
【請求項3】
前記カムフォロアは、前記中心軸方向に隣接する2つの前記溝部に係合し、それぞれの前記溝部に対応するように、前記コイルバネ及び前記押圧部材からなる付勢機構を前記中心軸方向に積層して備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカムフォロア。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のカムフォロアを有するレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムにより移動される被移動部材のガタの発生を防止することが可能なカムフォロア及びそれを有するレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
一眼レフカメラ等に装着されるレンズ鏡筒において、ズーミングやフォーカシングに応じて移動するレンズ保持枠の移動は、主にカム溝(リードカム溝)と直進溝との協働により達成される。
【0003】
カム溝とそれに係合するカムフォロアとの間には若干のクリアランスが設けられており、これにより滑らかな駆動が可能となっている。しかしながら、このクリアランスによりカム溝とカムフォロアとの間にガタが生じると、保持されるレンズの位置精度が低下し、光学性能が低下するという問題が生じる。また、ズーミングやフォーカシングの精度が低下するという問題が生じる。また、撮影者自身の操作により駆動される場合には、操作時にガタつきが生じることで品位が低下する。
【0004】
このような問題点を解決するために、カム溝とカムフォロアとの間のガタを抑制する種々の技術が従来より提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示の発明では、カム部材とカムフォロワによってレンズを移動制御するズームレンズ鏡筒において、上記カムフォロワを上記カム部材のカム面に圧接する板バネと、上記レンズを保持するレンズ枠に対する上記カムフォロワの固定向きを調整する固定向き調整手段とを備え、上記固定向き調整手段による上記カムフォロワの固定向きの調整により、上記板バネの圧接度合いを調整可能とした構成としている。
【0006】
この発明によれば、小型化とコストの低減を両立しながらもスムーズなズーム動作を得ることが可能になる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3482266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では以下のような問題点があった。すなわち、特許文献1に開示の発明では、カム溝の幅をカムフォロアの径以上に設定する必要があるので、カム筒の強度が低下したり、レンズ鏡筒が大型化するおそれがある。
【0009】
また、落下等によりレンズ鏡筒に衝撃が加わると、衝撃力が板バネに集中し、その結果板バネに塑性変形が生じるおそれがある。
【0010】
また、カムフォロアに板バネを固定しておくことができないので、組み込んだユニット状態で保存管理することができない。そのため組み立て工数が増加する。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、簡易な構成ながら、溝部壁面との間のガタの発生を効果的に防止することが可能なカムフォロア及びそれを有するレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明を実施のカムフォロアは、少なくとも1つの溝部に係合するカムフォロア本体と、カムフォロア本体の中心軸に対して周方向に設けられた保持部に保持されるコイルバネと、カムフォロア本体側面に設けられた孔より突出し、コイルバネの付勢力により溝部の一方の壁面と弾性当接する押圧部材と、を有すること特徴とする。
【0013】
また、本発明を実施のカムフォロアは、好ましくは、押圧部材が、孔を介して突出する突出部とコイルバネの両端と押圧接触するバネ受け部とを有し、押圧部材は、コイルバネを保持部に沿う方向に弾性圧縮し、弾性圧縮によりバネ受け部に生じる付勢力のうち、突出部の突出方向の合力が押圧部材の付勢力となることを特徴とする。
【0014】
また、本発明を実施のカムフォロアは、好ましくは、中心軸方向に隣接する2つの溝部に係合し、それぞれの溝部に対応するように、コイルバネ及び押圧部材からなる付勢機構を中心軸方向に積層して備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明を実施のカムフォロア及びそれを有するレンズ鏡筒によれば、簡易な構成ながら、溝部壁面との間のガタの発生を効果的に防止することが可能となる。
【0016】
さらに、カムフォロア本体に付勢機構を組み込んだユニット状態で容易に管理及び取り扱いすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態であるレンズ鏡筒100の部分断面図である。
図2】カムフォロア200を説明するための図であり、(a)はカムフォロア200及びビス240の斜視図、(b)はカムフォロア200の断面図である。
図3】付勢力の発生を説明するための模式図であり、(a)は押圧部材230に生じる付勢力を説明するための断面図、(b)はカムフォロア200の付勢機構とカム溝との関係を説明するための上面図である。
図4】コイルバネ220の保持状態を説明するための断面図である。
図5】第2の実施形態であるカムフォロア200の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明が適用されたレンズ鏡筒100の部分断面図である。本図に示すレンズ鏡筒100は単焦点レンズであり、結像光学系として被写体側から順に、少なくとも、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2とを有している。
【0020】
レンズ鏡筒100は結像光学系の他に、主要な構成として、固定筒110と、カム筒120と、直進筒130と、フォーカス操作リング140と、を有している。結像光学系の光軸を中心にして内周側より、直進筒130、固定筒110、カム筒120、フォーカス操作リング140の順番で配置されている。
【0021】
第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2はフォーカシングに応じて光軸方向に進退される。本図中の上側はINF状態、下側は最短撮影状態のレンズ鏡筒100をそれぞれ示している。各レンズ群のレンズは、カシメや押え環等によりそれぞれの鏡室に固定されており、さらに各鏡室がそれぞれレンズ移動枠に固定される構成となっている。
【0022】
1群移動枠151は第1レンズ群G1を保持しており、また、直進筒130に対して不図示のビスにより締結されている。1群移動枠151はさらに複数のカムフォロア200を介して、固定筒110に設けられた直進案内溝111と、カム筒120に設けられたカム溝121とに係合されている。これにより、1群移動枠151は所定の位置に保持されている。
【0023】
一方、2群移動枠152は第2レンズ群G2を保持しており、不図示のカムフォロアを介して、固定筒110に設けられた不図示の直進案内溝と、カム筒120に設けられた不図示のカム溝とに係合されている。
【0024】
固定筒110及びカム筒120はカム機構を構成しており、ユーザがフォーカス操作リング140を操作すると、操作力がカム筒120に伝達されてカム筒120が光軸を中心にして回転する。カムフォロア200は、カム筒120の回転によりカム溝121と直進案内溝111との協働により光軸方向に進退させられる。カム溝121の形状を所定のものとすることで、1群移動枠151及び2群移動枠152が所定の位置関係を満たしながら移動され、これにより、レンズ鏡筒100のフォーカシング動作が行われる。
【0025】
図2は、図1に示した本発明を実施のカムフォロア200を説明するための図である。図2(a)はカムフォロア200及びビス240の斜視図、図2(b)はカムフォロア200の断面図である。これらの図を用いて、カムフォロア200の付勢機構を説明する。
【0026】
本図に示すように、カムフォロア200は、カムフォロア本体210と、カムフォロア本体210内に保持されるコイルバネ220と、カムフォロア本体210の側面より突出する押圧部材230とを有している。また、カムフォロア本体210中央に設けた貫通孔にビス240が挿通される。本実施例では、カムフォロア200は、この挿通されたビス240が1群移動枠151に設けられたビス孔と締結することにより固定される。
【0027】
カムフォロア本体210の外周部は、固定筒110の直進案内溝111とカム筒120のカム溝121とにそれぞれ当接し、摺動する側面を構成している。本実施例のカムフォロア200では、それぞれ異なる溝と係合する2段の摺動面を有している。本実施例においては、下段部は固定筒110の直進案内溝111と係合し、上段部はカム筒120のカム溝121と係合している。
【0028】
次に、本発明のカムフォロア200が備える付勢機構の仕組みについて説明する。上述したように、カムフォロア本体210内部にはコイルバネ220と押圧部材230とが保持されている。
【0029】
コイルバネ220は、本図(b)にも示すように、カムフォロア本体210の内周側に設けられた保持溝211に沿うような形で保持されている。そして、同じく保持溝211内に位置する押圧部材230が、コイルバネ220を弾性圧縮して挟持されている。
【0030】
押圧部材230は、カムフォロア本体210の側面に設けられた孔より突出する突出部231と、カムフォロア本体210内部に保持されたコイルバネ220と押圧接触するバネ受け部232とを有する構造となっている。押圧部材230は全体として、Y字形状若しくは刺股形状をしていると言える。
【0031】
この押圧部材230のバネ受け部232に対して弾性圧縮されたコイルバネ220が付勢することで、突出部231がカムフォロア本体210側面から突出し、カムフォロア200が係合するカム溝121壁面に当接する。バネ受け部232は圧縮されたコイルバネ220により常に付勢されているので、突出部231の当接は弾性当接となる。
【0032】
図3(a)は、コイルバネ220により発生する付勢力の大きさと向きを説明するための模式図である。上述したように、押圧部材230は、周方向に保持されたコイルバネ220とバネ受け部232で接触しており、両部材の接触面には圧縮状態のコイルバネ220が自然長に戻ろうとする付勢力が発生している。
【0033】
バネ受け部232は2ヶ所あり、ここで発生する付勢力は同じ大きさで向きが異なるものである。2ヶ所の付勢力を受けた押圧部材230は、これらの合力を伴って突出部231がカムフォロア本体210の側面から突出する。
【0034】
押圧部材230に生じる合力の大きさは、コイルバネ220とバネ受け部232との間に生じる付勢力の向きに影響を受ける。原理的には、これらの付勢力の向きが合力の向きと一致している状態であれば最も合力の大きさが大きくなる。すなわち、バネ受け部232の脚の長さを保持溝211に沿って延長し、保持溝211の中心軸を中心に180度の広がりを持たせた状態が、最も合力を大きくできる形状となる。
【0035】
一方で、押圧部材230は、カムフォロア本体210に設けられた開口を介して内部の保持溝211に組み込む必要がある。従って、必要な合力の大きさとカムフォロア本体210の開口の大きさとを考慮して、最適なバネ受け部232の長さを設定する必要がある。
【0036】
図3(b)は、上述した付勢構造を持つカムフォロア200と、カムフォロア200が係合するカム溝121との間の付勢力の関係を説明する模式図である。本図に示すように、カムフォロア200の押圧部材230は、カム溝121の一方の壁面と当接接触しており、この側面には付勢力の合力が作用している。この合力の反力により、カムフォロア200はもう一方の壁面に常に付勢されることで、カムフォロア200とカム溝121との間におけるガタの発生が防止される。
【0037】
ここで、押圧部材230の突出部231に注目する。突出部231のうちカム溝121の側壁と接触する接触面は、図3等からもわかるように、面形状がカムフォロア本体210の側面と概ね同じとなっている。このような曲面形状とすることにより、接触面が平面上の場合と比較して、係合するカム溝の光軸に対する傾斜角度が変化した場合でも適切に付勢が行える角度範囲を広くすることが可能となる。また、平面を接触面に採用してもよい。
【0038】
なお、本実施例においては、図2(a)からもわかるように、付勢機構はカムフォロア200の上段部にのみ設けられているものとする。すなわち、付勢機構はカム筒120のカム溝121に対応するように構成されている。そして、固定筒110の直進案内溝111に対応する付勢機構は設けられていない。
【0039】
次に、カムフォロア本体210におけるコイルバネ220の保持について説明する。図4は、押圧部材230を組み込む前のカムフォロア200を説明する断面図である。コイルバネ220を圧縮する押圧部材230がないので、本図に示すコイルバネ220は自然長状態となっている。
【0040】
図2(a)にも示したように、コイルバネ220は、カムフォロア本体210の内周側に設けられた保持溝211に保持されている。保持溝211は、カムフォロア本体210内周側の内径が1段大きくなるように形成された溝であり、収納されるコイルバネ220がビス240と干渉しない程度の大きさを有している。コイルバネ220はこの保持溝211に沿うようにして保持されている。
【0041】
コイルバネ220は、自身の持つバネの真っ直ぐに戻ろうと働く弾性力によってこの保持溝211に保持されている。従って、押圧部材230を組み込まない本図の状態のままでも、カムフォロア本体210からコイルバネ220が脱落することはない。そのため、組み立て工程におけるカムフォロア200のユニット状態での保管や取り扱いが非常に容易となる。
【0042】
ユニット状態での保管性や取扱性についてさらに検討すると、押圧部材230を組み込んだ状態であれば、これらの性能はより向上することがわかる。例えば、コイルバネ220のみ組み込んだ状態では、押圧部材230の突出部231が貫通する孔からコイルバネ220が脱落する可能性は否定できない。そこで、押圧部材230を組み込むことで貫通孔が塞がれるので、より確実にコイルバネ220の脱落が防止される。
【0043】
すなわち、本発明を実施のカムフォロア200は、付勢機構に必須のコイルバネ220及び押圧部材230を組み込んだユニット状態で保管や取り扱いをすることが可能となる。これは、付勢機構を有さない通常のカムフォロアと同様の保管・取り扱いができることを意味しており、大きなメリットであると言える。
【0044】
なお、上述した実施例においては、カムフォロア200の上段部にのみ本発明の付勢機構を設けていた。しかし、付勢機構を設ける部位はこれに限られることはない。カムフォロア200の下段部にのみ付勢機構を設けることもできる。
【0045】
また、図5の斜視図に示すように、上下段いずれにも付勢機構を設けることも可能である。この場合、上述した実施例の構成であれば、カムフォロア200が係合するカム溝121及び直進案内溝111のいずれに対してもガタ取りを行うことが可能となるので、非常に高い効果が見込まれる。
【0046】
以上で説明したように、本発明に記載のカムフォロア及びそれを有するレンズ鏡筒によれば、カムフォロアの中心軸の周方向にコイルバネを配置し、このコイルバネの両端の付勢力の合力により押圧部が溝の内壁を押圧するようにしたので、簡易な構成ながら、カムフォロアのガタの発生を効果的に防止可能となる。また、コイルバネは自身の弾性力により保持部から脱落することはないので、コイルバネを組み込んだユニット状態での保管や取り扱いが容易となる。
【符号の説明】
【0047】
100 レンズ鏡筒、110 固定筒、111 直進案内溝、120 カム筒、121 カム溝、130 直進筒、140 フォーカス操作リング、151 1群移動枠、152 2群移動枠、200 カムフォロア、210 カムフォロア本体、211 保持溝、220 コイルバネ、230 押圧部材、231 突出部、232 バネ受け部、240 ビス
図1
図2
図3
図4
図5