【解決手段】被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかを、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報に基づいて評価するか、又は、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報を、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかに基づいて評価する。
被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかを、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報に基づいて評価するか、又は、
被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報を、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかに基づいて評価する、
評価方法。
前記被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報には、前記被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が含まれる、
請求項1に記載の評価方法。
請求項1から4のいずれか1項に記載の評価方法により得られる評価結果に応じて前記被評価者に対して推奨する頭皮毛髪化粧料の選定を行う、頭皮毛髪化粧料の選定方法。
被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかの、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報に基づいた評価を支援するか、又は、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報の、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかに基づいた評価を支援するための評価支援ツールであって、
頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準が表示される、評価支援ツール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の診断方法等の従来の毛髪に関する評価方法では、毛髪自体の状態を目視により確認すること又は毛髪自体の画像を見比べることにより、毛髪の状態を評価するものばかりであり、毛髪自体の状態を確認する評価方法以外の毛髪の評価方法は提案されておらず、これまで検討もなされていない。また、頭皮に関する評価方法としても、これまでに提案されたものはない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、頭皮及び/又は毛髪に関する新規な評価方法、頭皮毛髪化粧料の選定方法、評価支援ツール、及びスクリーニング方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が、これまで着目されていなかった頭皮細菌叢における細菌が頭皮及び/又は毛髪に及ぼす影響について鋭意検討を行った結果、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在が、頭皮の赤み、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさと関係していることを見出し、頭皮及び/又は毛髪に関する評価方法として当該関係を用いることに着目して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の評価方法では、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかを、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報に基づいて評価するか、又は、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報を、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかに基づいて評価する。
【0008】
なお、上記評価方法では、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報には、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が含まれていてもよく、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報が、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合のみから構成されていてもよい。
【0009】
なかでも、上記評価方法においては、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準を用いて評価を行うことが好ましい。
【0010】
更に、上記評価方法においては、被評価者の年齢に応じた頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準を用いて評価を行うことが好ましい。当該評価方法によれば、より正確な評価を行うことが可能になる。
【0011】
また、本発明の頭皮毛髪化粧料の選定方法では、上記評価方法により得られる評価結果に応じて被評価者に対して推奨する頭皮毛髪化粧料の選定を行うものである。このように、被評価者のコリネバクテリウム属の細菌に関する情報を用いることで、当該被評価者に適した頭皮毛髪化粧料を選定することが可能となる。
【0012】
なお、上記頭皮毛髪化粧料の選定方法では、上記評価結果に基づいて抗炎症剤が配合された頭皮毛髪化粧料を選定することが好ましい。被評価者のコリネバクテリウム属の細菌に関する情報に基づいて把握される頭皮の炎症状態に応じて、当該被評価者に適した頭皮毛髪化粧料を選定することが可能となる。
【0013】
また、本発明の評価支援ツールは、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかの、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報に基づいた評価を支援するか、又は、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報の、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかに基づいた評価を支援するための評価支援ツールであって、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準が表示されるものである。
この評価支援ツールでは、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準が表示されることで、把握された被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報と比較することが可能となるため、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかの評価が支援される。また、この評価支援ツールでは、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準が表示されるため、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかに基づいて、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を評価する場合に、被評価者の当該存在割合が比較基準よりも大きいか否かの評価を支援することが可能になる。
【0014】
また、本発明の頭皮毛髪化粧料のスクリーニング方法は、少なくとも1回、頭皮毛髪化粧料を用いて被評価者の頭皮及び/又は毛髪を処理する工程と、上記頭皮及び/又は毛髪を処理する工程の前後の被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を比較する工程と、を備えるものである。このスクリーニング方法を用いることにより、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を低下させることが可能な頭皮毛髪化粧料の選定が容易となる。
【0015】
また、本発明における有効成分の候補物質のスクリーニング方法は、少なくとも1回、有効成分の候補物質を用いて被評価者の頭皮及び/又は毛髪を処理する工程と、上記頭皮及び/又は毛髪を処理する工程の前後の被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を比較する工程と、を備えるものである。このスクリーニング方法を用いることにより、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を低下させることが可能な有効成分の候補物質の選定が容易となる。
【0016】
また、本発明の被評価者を選別するスクリーニング方法は、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を確認する工程と、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準と被評価者の前記存在割合とを比較する工程と、を備えるものである。このスクリーニング方法を用いることにより、コリネバクテリウム属の細菌の存在割合が比較基準よりも大きい者と小さい者とを選別することが容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る評価方法によれば、頭皮及び/又は頭皮に関する新規な評価方法が提供される。
本発明に係る頭皮毛髪化粧料の選定方法によれば、被評価者に適した頭皮毛髪化粧料を選定することが可能となる。
本発明に係る評価支援ツールによれば、上記新規な評価方法が支援される。
本発明に係る頭皮毛髪化粧料のスクリーニング方法によれば、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を低下させることが可能な頭皮毛髪化粧料の選定が容易となる。
本発明に係る有効成分の候補物質のスクリーニング方法によれば、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を低下させることが可能な有効成分の候補物質の選定が容易となる。
本発明に係る被評価者を選別するスクリーニング方法によれば、コリネバクテリウム属の細菌の存在割合が比較基準よりも大きい者と小さい者とを選別することが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態に係る評価方法、頭皮毛髪化粧料の選定方法、評価支援ツール、及びスクリーニング方法を例に挙げつつ説明するが、これらは特に発明を限定するものではない。なお、本発明において、用語「及び/又は」は両方又はいずれか一方を指す。
【0020】
(1)評価方法
(1−1)第1実施形態の評価方法
第1実施形態の評価方法は、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標(以下、「赤み又は赤みに関する指標」について「赤み等」と称する場合がある。)、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかを、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報に基づいて評価する方法である。
【0021】
上記被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報には、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が含まれていてもよく、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報が、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合のみから構成されていてもよい。頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいほど、被評価者の頭皮の赤み等が強く、白髪が多く、毛髪本数が少なく、毛髪太さのばらつきが大きいと少なくともこれらのいずれかを評価することができる。例えば、同年代の複数の被評価者を対象として頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を調べることで、当該存在割合が大きい被評価者ほど、頭皮の赤み等が強く、白髪が多く、毛髪本数が少なく、毛髪太さのばらつきが大きいと少なくともこれらのいずれかを評価することができる。
【0022】
また、被評価者の頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかの評価を、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を比較基準と比較することで行ってもよい。
当該比較基準となる所定の値は、特に限定されないが、例えば、11.0%以上14.0%以下のいずれかの値、又は、12.0%以上13.0%以下のいずれかの値とすることができる。被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が上記比較基準よりも小さい場合には、年齢にかかわらず、頭皮の赤み等が弱い傾向、毛髪本数が多い傾向、毛髪太さのばらつきが小さい傾向の少なくともいずれかであると評価することができる。
【0023】
なお、上記比較基準は、被評価者の年齢に応じた値であることが好ましい。頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合は被評価者の年齢に応じて変化することが考えられるが、被評価者の年齢に応じた比較基準を用いて評価することで、被評価者の頭皮及び/又は毛髪の状態のより正確な評価が可能になる。
【0024】
具体的には、例えば、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合に関する、10歳毎や5歳毎等の所定の年代毎の情報を予め用意しておき、被評価者について測定された頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を、当該被評価者が属する年代の情報と比較することで、被評価者の同年代中でのコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の位置づけを把握できるようにしてもよい。ここでの所定の年代毎の情報としては、特に限定されないが、例えば、各年代におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の平均値であってもよいし、中央値であってもよいし、複数に分けられた各ランクにおける平均値や偏差値であってもよい。
【0025】
さらに、上記の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合に関して予め用意する各年代毎の情報それぞれに対応した、頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかの各情報を予め用意するようにしてもよい。これにより、被評価者の同年代中でのコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の位置づけを評価しつつ、同年代中の頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの位置づけも評価することが可能になる。
【0026】
(1−2)第2実施形態の評価方法
第2実施形態の評価方法は、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報を、被評価者の頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかに基づいて評価する方法である。
【0027】
上記被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報には、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が含まれていてもよく、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌に関する情報が、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合のみから構成されていてもよい。被評価者の頭皮の赤み等が強いほど被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価することができ、白髪が多いほど被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価することができ、毛髪本数が少ないほど被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価することができ、毛髪太さのばらつきが大きいほど被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価することができる。例えば、同年代の複数の被評価者を対象として、頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さの少なくともいずれかを調べることで、頭皮の赤み等が強い被評価者ほど頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価することができ、白髪が多い被評価者ほど頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価することができ、毛髪本数が少ない被評価者ほど頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価することができ、毛髪太さのばらつきが大きい被評価者ほど頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価することができる。
【0028】
また、被評価者の頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかの参照比較基準と、当該参照比較基準に対応する頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準と、を互いに対応させた状態で予め把握しておくことにより、被評価者の頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの参照比較基準との比較結果に基づいて、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が比較基準よりも大きいか又は小さいかを、当該コリネバクテリウム属の細菌の存在割合の測定を行わなくても、評価することが可能になる。
当該参照比較基準となる所定の値は、特に限定されないが、頭皮の赤み等についてはa
*の値が、例えば、8.0%以上16.0%以下、又は、9.0以上12.0以下のいずれかの値とすることができ、毛髪本数の少なさについては単位面積当たりの毛髪の総本数が、例えば、51本以上57本以下、又は、53本以上56本以下のいずれかの値とすることができ、毛髪太さのばらつきの大きさについては毛径(μm)の標準偏差が、例えば、2.2以上2.5以下、又は、2.3以上2.4以下のいずれかの値とすることができる。被評価者の頭皮の赤み等が上記参照比較基準よりも小さい場合、被評価者の単位面積当たりの毛髪の総本数が上記参照比較基準よりも大きい場合、被評価者の毛径(μm)の標準偏差が上記参照比較基準よりも小さい場合には、それぞれ、年齢にかかわらず、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が小さい傾向にあると評価することができる。
【0029】
なお、上記参照比較基準は、被評価者の年齢に応じた値であることが好ましい。特に、白髪の多さ(白髪率)についての参照比較基準は、被評価者の年齢に応じた値であることが好ましい。
【0030】
具体的には、例えば、頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかについて、10歳毎や5歳毎等の所定の年代毎の情報を予め用意しておき、被評価者について把握した頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさのいずれかを、当該被評価者が属する年代の対応する情報と比較することで、被評価者の同年代中での頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさのいずれかの位置づけを把握できるようにしてもよい。ここでの所定の年代毎の情報としては、特に限定されないが、例えば、各年代における頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさ等の平均値であってもよいし、中央値であってもよいし、複数に分けられた各ランクにおける平均値や偏差値であってもよい。
【0031】
さらに、上記の頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかについて予め用意する各年代毎の情報それぞれに対応した、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の各情報を予め用意するようにしてもよい。これにより、被評価者の同年代中での頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかについて、より正確な評価が可能となり、同年代中のコリネバクテリウム属の細菌の存在割合についてもより正確な評価が可能になる。
【0032】
上記第1実施形態及び第2実施形態の各評価方法によって、頭皮及び/又は毛髪に関する評価方法を提供することができる。なお、当該評価方法は、美容目的で用いることができる。
【0033】
(1−3)用語について
上記第1実施形態及び第2実施形態の各評価方法の説明において用いた用語に関し、以下の通り詳述する。
【0034】
頭皮細菌叢とは、頭皮に存在する一群の細菌の集合を意味する。頭皮細菌叢は、例えば、評価対象部位とする頭皮の一部の領域から粘着テープ等の適宜の手段により採取した検体を用いて、次世代DNAシークエンサーを用いた16S rRNAシークエンス法によって解析することができる。
【0035】
頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌とは、頭皮細菌叢に存在するコリネバクテリウム(Corynebacterium)属の細菌を意味する。頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌は、例えば、上記16S rRNAシークエンス法による頭皮細菌叢の解析結果をパイプライン解析ツールにより細菌の属(genus)レベルで分析することで、解析できる。
【0036】
頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合とは、頭皮細菌叢の解析によって取得された解析結果から得られる頭皮細菌叢の全細菌(T)に対するコリネバクテリウム属の細菌(C)の比[(C)/(T)]を意味する。より具体的には、上記16S rRNAシークエンス法による頭皮細菌叢の解析結果を、パイプライン解析ツールを用いて細菌の属(genus)レベルで分析した結果を解析して求められる比[(C)/(T)]をいう。
【0037】
赤みとは、特に限定されず、肉眼による観察又はマイクロスコープ等の画像取得手段を用いた観察により赤いと感じる度合いであってもよく、特に、評価の客観性を高める観点から、好ましくは、マイクロスコープ等の画像取得手段により得られる頭皮の評価対象部位の画像から把握されるL
*a
*b
*表色系における色度a
*値の高さを意味する。例えば、被評価者の頭皮のa
*値が、所定の基準となる者の頭皮のa
*値よりも高い場合には、被評価者の頭皮が、所定の基準となる者の頭皮よりも赤みが強いということになる。
【0038】
赤みに関する指標としては、特に限定されず、肉眼による観察又はマイクロスコープ等の画像取得手段を用いた観察により、赤に対して略補色の関係にある青、緑、青緑等の色味を感じる度合いであってもよく、評価の客観性を高める観点から、好ましくは、マイクロスコープ等の画像取得手段により得られる頭皮の評価対象部位の画像から把握されるL
*a
*b
*表色系における色度a
*値の低さを意味する。例えば、被評価者の頭皮のa
*値が、所定の基準となる者の頭皮のa
*値よりも低い場合には、被評価者の頭皮が、所定の基準となる者の頭皮よりも赤みが弱いということになる。
【0039】
白髪の多さの指標としては、例えば、頭皮の評価対象部位における所定の単位面積当たりに生える毛髪の合計本数中の白髪の本数の割合(白髪率)を用いることができる。所定の単位面積としては、特に限定されず、例えば、マイクロスコープ等の画像取得手段を所定の倍率で用いた場合に画面に映し出される範囲としてもよい(以下、同じ)。
【0040】
毛髪本数の少なさの指標としては、頭皮の評価対象部位における所定の単位面積当たりに生える毛髪の合計本数を用いてもよいし、マイクロスコープ等の画像取得手段で取得される画像に白黒二値化処理を施した場合の黒い部分の割合を用いてもよい。
【0041】
毛髪太さのばらつきの大きさの指標としては、例えば、頭皮の評価対象部位における所定の単位面積当たりに生える毛髪についての毛径の標準偏差を用いることができる。なお、毛髪の毛径は適宜の手段により測定できる。
【0042】
上記頭皮の評価対象部位としては、例えば、トップ(頭の頂上部)、フロント(前頭部)、サイド(耳の上)、バック(後頭部)、ネープ(後頭部の下部・えりあし)の各部を用いることができるが、目視やマイクロスコープで観察しやすい部位であるトップ(頭の頂上部)及び/又はフロント(前頭部)を評価対象部位とすることが好ましく、頭皮の日焼けが評価に与える影響を小さく抑える観点から、分け目やつむじ周囲を除くトップ(頭の頂上部)を評価対象部位とすることが好ましい。ここで、トップ(頭の頂上部)とは、頭上部の最も高い点から半径3cm以内の頭皮をいう。なお、評価の客観性を高める観点から、比較の際には同じ評価対象部位同士を比較することが好ましい。
【0043】
(2)頭皮毛髪化粧料の選定方法
頭皮毛髪化粧料の選定方法は、上述した第1実施形態の評価方法又は第2実施形態の評価方法により得られる評価結果に応じて被評価者に対して推奨する頭皮毛髪化粧料の選定を行う方法である。
例えば、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価された被評価者に対しては、頭皮の赤みが強い傾向にあることから、頭皮の赤みを弱めることが可能な成分が配合された頭皮毛髪化粧料を選定してその使用を推奨することや、頭皮の赤みを強める可能性のある成分を含む頭皮毛髪化粧料の使用を差し控えるように推奨することができる。
ここで、「頭皮毛髪化粧料」とは、頭皮及び/又は毛髪に用いられる化粧料を意味する。
【0044】
なお、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きさの程度に応じて薦める頭皮毛髪化粧料や使用を差し控える頭皮毛髪化粧料を、予め区別して一覧表として用意しておき、当該一覧表を用いて推奨する頭皮毛髪化粧料の選定を行うようにしてもよい。
また、頭皮の赤み等が強い、白髪が多い、毛髪本数が少ない、又は毛髪太さのばらつきが大きい等と評価された被評価者に対しては、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きく、頭皮の赤みが強い傾向にあることから、上記と同様にして頭皮毛髪化粧料の選定等を行うようにしてもよい。
【0045】
また、上述した第1実施形態の評価方法又は第2実施形態の評価方法により得られる評価結果に基づいて抗炎症剤が配合された頭皮毛髪化粧料を選定することが好ましい。
より具体的には、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価された被評価者に対しては、頭皮の赤み等が強い傾向にあるため、抗炎症剤が配合された頭皮毛髪化粧料の使用を薦め、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が小さいと評価された被評価者に対しては、頭皮の赤み等が弱い傾向にあるため、抗炎症剤が配合された頭皮毛髪化粧料に限らない頭皮毛髪化粧料の使用(例えば、頭皮の状態の改善よりも毛髪の状態の改善を優先させた頭皮毛髪化粧料の使用等)を薦めることができる。
【0046】
抗炎症剤としては、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、アラントインの一種又は二種以上を用いることができる。
【0047】
抗炎症剤の頭皮毛髪化粧料における配合量としては、頭皮の赤みを低減させやすい観点から、0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。なお、上記評価結果に応じて、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいと評価された被評価者ほど、抗炎症剤の頭皮毛髪化粧料における配合量が多くなるように配合量を定めてもよい。
【0048】
なお、上述した頭皮毛髪化粧料としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント(例えば、洗い流さないトリートメント、洗い流すトリートメント、整髪兼用トリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)、整髪剤、育毛剤等が挙げられる。
このような頭皮毛髪化粧料の剤型は、例えば、液状、クリーム状、ゲル状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。
【0049】
上記頭皮毛髪化粧料には、頭皮毛髪化粧料の原料として公知のものとして、例えば、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、低級アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤などを配合することができる。
【0050】
(3)評価支援ツール
評価支援ツールは、上記第1実施形態の評価方法における評価を支援するか又は上記第2実施形態の評価方法における評価を支援するための評価支援ツールであって、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準が表示されるものである。
【0051】
上記評価支援ツールとしては、特に限定されるものではなく、例えば、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準となる情報が掲載された頭皮及び/又は毛髪の状態を説明するためのシート、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合に応じて推奨される頭皮毛髪化粧料の種類が掲載されたパンフレット、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準となる情報を画面表示可能な情報端末や当該情報端末において用いられる各種データ及びプログラム、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合に応じて推奨される頭皮毛髪化粧料の種類を画面表示可能な情報端末や当該情報端末において用いられる各種データ及びプログラム等が挙げられる。
【0052】
さらに、上記評価支援ツールとしては、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合と、頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれか1つと、が対応するようにして掲載された頭皮及び/又は毛髪の状態を説明するためのシート、更に対応する頭皮毛髪化粧料の種類が掲載されたパンフレット、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合と、頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれか1つと、を対応させた情報が表示出力可能に格納されている情報端末や当該情報端末において用いられる各種データ及びプログラム、更に対応する頭皮毛髪化粧料の種類の情報が表示出力可能に格納されている情報端末や当該情報端末において用いられる各種データ及びプログラム等が挙げられる。
【0053】
なお、上記評価支援ツールとしての情報端末は、特に限定されないが、例えば、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合と、頭皮の赤み、赤みに関する指標、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかとの対応一覧表等を表示するディスプレイ、各種情報演算処理を行うCPU、RAM、被評価者の評価の際に用いる各種データやプログラム等が格納されるROM等の記録手段、ユーザからの情報入力を受けるタッチパネル又はキーボード等の入力手段等を有し、インターネット等のネットワークを介した通信が可能となるように構成されたものを挙げることができる。ここで、被評価者の評価の際に用いる各種データは、評価支援ツールの記録手段に予め格納されていてもよいし、ネットワークを介した通信を行うことで外部のサーバ等から入手して格納するように評価支援ツールが構成されていてもよい。この情報端末としては、例えば、記憶手段に上記年代毎の情報が格納されている場合には、入力手段を介して受け付けた被評価者の年代情報に基づいて、対応する上記年代の情報をCPUが記録手段から読み出してディスプレイに表示出力させるものであってもよい。
【0054】
(4)頭皮毛髪化粧料のスクリーニング方法
頭皮毛髪化粧料のスクリーニング方法は、少なくとも1回、頭皮毛髪化粧料を用いて被評価者の頭皮及び/又は毛髪を処理する工程と、頭皮及び/又は毛髪を処理する工程の前後の被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を比較する工程と、を備えるものである。なお、ここでの頭皮及び/又は毛髪を処理する回数としては、1回に限られず、例えば、30回、90回等の所定回数とすることができる。
【0055】
調製された頭皮毛髪化粧料により頭皮及び/又は毛髪の処理を行うことで、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を低下させることができるものがあれば、頭皮の赤み等を抑えること、白髪を低減させること、毛髪本数の減少を抑制させること、毛髪太さのばらつきを小さく抑えること、という各効果を得るのに有利な頭皮毛髪化粧料として選定することができる。
なお、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の低下程度が大きいものほど、上記効果を十分に得られるものとして選定してもよい。ここでのコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の低下程度の検討においても、頭皮毛髪化粧料のスクリーニング方法が行われる被評価者の年代に関する存在割合に基づいたものとすることが好ましい。
【0056】
(5)有効成分の候補物質のスクリーニング方法
有効成分の候補物質のスクリーニング方法は、少なくとも1回、有効成分の候補物質を用いて被評価者の頭皮及び/又は毛髪を処理する工程と、頭皮及び/又は毛髪を処理する工程の前後の被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を比較する工程と、を備えるものである。なお、ここでの頭皮及び/又は毛髪を処理する回数としては、1回に限られず、例えば、30回、90回等の所定回数とすることができる。
ここで、有効成分の候補物質は、頭皮毛髪化粧料に配合可能な公知の成分であってもよい。なお、頭皮及び/又は毛髪に処理する方法は、通常行いうる適宜の方法で行えば良い。
【0057】
有効成分の候補物質により頭皮及び/又は毛髪の処理を行うことで、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を低下させることができるものがあれば、頭皮の赤み等を抑えること、白髪を低減させること、毛髪本数の減少を抑制させること、毛髪太さのばらつきを小さく抑えること、という各効果を得るのに有利な有効成分として候補物質を選定することができる。
なお、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の低下程度が大きいものほど、上記効果を十分に得られるものとして選定してもよい。ここでのコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の低下程度の検討においても、有効成分の候補物質のスクリーニング方法が行われる被評価者の年代に関する存在割合に基づいたものとすることが好ましい。
【0058】
(6)被評価者を選別するスクリーニング方法
被評価者を選別するスクリーニング方法は、被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合を確認する工程と、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準と、被評価者の存在割合と、を比較する工程と、を備えるものである。
【0059】
確認された被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が比較基準よりも大きい場合には、当該比較基準となる者よりも、頭皮の赤み等が強い傾向、白髪が多い傾向、毛髪本数が少ない傾向、毛髪太さのばらつきが大きい傾向の少なくともいずれかである被評価者であるとして選別することができ、確認された被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が比較基準よりも小さい場合には、当該比較基準となる者よりも、頭皮の赤み等が弱い傾向、白髪が少ない傾向、毛髪本数が多い傾向、毛髪太さのばらつきが小さい傾向の少なくともいずれかである被評価者であるとして選別することができる。これにより、選別された被評価者に応じた頭皮毛髪化粧料の提案等のカウンセリングが可能になる。
【0060】
なお、上記被評価者の選別においては、確認された被評価者の頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の比較基準からの乖離度合いの大きさに応じた選別を行うようにしてもよい。
また、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合について比較基準と被評価者の測定値とを比較する工程においても、被評価者の年代に関する存在割合の比較基準を用いて比較を行うことが好ましい。
【実施例】
【0061】
30代(30〜39歳)及び50代(50〜59歳)の各60人ずつの被験者(モンゴロイドに分類される日本人女性)を対象に、マイクロスコープ(HiROX社製 DIGITAL MICROSCOPE KH−8700)を用いて、トップ(頭の頂上部)の頭皮を40倍の倍率で撮影した。続いて、トップ(頭の頂上部)の頭皮から粘着テープを用いて頭皮細菌叢を採取した。なお、撮影した頭皮及び頭皮細菌叢を採取した頭皮は、いずれも、分け目やつむじ周囲を除く、頭上部の最も高い点から半径3cm以内の頭皮を対象とした。
【0062】
マイクロスコープにより取得したトップ(頭の頂上部)の頭皮の画像データと、当該画像データから把握されるa
*値を用い、30代と50代のそれぞれ被験者について、頭皮の赤みが強い群(a
*値が高い上位10人)と頭皮の赤みが弱い群(a
*値が低い下位10人)とにグループ分けを行った。さらに、各群について10人当たりのa
*値の平均を求めた。
【0063】
頭皮の赤みが強い群と頭皮の赤みが弱い群から採取した各頭皮細菌叢の試料を、次の[1]〜[4]に示す手順に従い、16S rRNAシークエンス法にて解析した。
[1]粘着テープから採取した頭皮細菌叢の核酸を常法により抽出した。
[2]抽出後の核酸を用いて、PCR法を用いて16S rRNA遺伝子の増幅を行った。
[3]増幅した上記16S rRNA遺伝子を用いて、次世代シークエンサー(Illumina社製のMilseq(商品名))により、16S rRNA遺伝子のDNA解析を行った。
[4]得られた解析結果から、解析ツールのQIIMEを用いて、採取した頭皮細菌叢における各種細菌の属(genus)レベルの存在割合を求めた。
【0064】
また、頭皮の赤みが強い群(a
*値が高い上位10人)と頭皮の赤みが弱い群(a
*値が低い下位10人)とにグループ分けを行った30代と50代の各被験者について、マイクロスコープにより取得したトップ(頭の頂上部)の頭皮のマイクロスコープ画像から「白髪率」、「単位面積当たりの毛髪の総本数」、「毛径(μm)の標準偏差」をそれぞれ求めた。
ここで、被験者のマイクロスコープ画像に示された画像範囲における頭皮に生えた毛髪の合計本数の各群10人当たりの平均を「単位面積当たりの毛髪の総本数」とし、被験者のマイクロスコープ画像に示された画像範囲における頭皮に生えた毛髪の合計本数中の白髪の本数の割合の各群10人当たりの平均を「白髪率」とし、被験者のマイクロスコープ画像に示された画像範囲における頭皮に生えた毛髪から無作為に選んだ10本の毛髪の毛径値から算出した各群の標準偏差をそれぞれ「毛径(μm)の標準偏差」とした。
【0065】
表1に30代、50代の被験者における頭皮の赤みが強い群(10人分の平均)と頭皮の赤みが弱い群(10人分の平均)について、各群のa
*値の平均、頭皮細菌叢の解析結果(10人平均)、白髪率の平均、単位面積当たりの毛髪の総本数の平均、及び、各群の毛径(μm)の標準偏差を示す。また、表1の解析結果をグラフ化したものを
図1、2に示す。ここで、頭皮細菌叢における存在割合が1%以下であった細菌の属について、それらの存在割合を合計したものを「その他」として示している(表1及び
図1、2)。
【0066】
【表1】
【0067】
表1及び
図1、2に示す結果から、30代の被験者において、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合は、頭皮の赤みが強い群が36.3%(頭皮細菌叢の全細菌(T)に対する頭皮細菌叢のコリネバクテリウム属の細菌(C)の比[(C)/(T)]:0.363)、頭皮の赤みが弱い群が10.2%(比[(C)/(T)]:0.102)であった。また、50代の被験者において、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合は、頭皮の赤みが強い群が14.8%(頭皮細菌叢の全細菌(T)に対する頭皮細菌叢のコリネバクテリウム属の細菌(C)の比[(C)/(T)]:0.148)、頭皮の赤みが弱い群が7.0%(比[(C)/(T)]:0.070)であった。
【0068】
なお、30代と50代の被験者のいずれの群でも、頭皮細菌叢において最も存在割合が大きかったのはプロピオニウムバクテリウム属(Propionibacterium)であったが、頭皮の赤み等、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさに関連するプロピオニウムバクテリウム属の存在割合の変化は見られなかった。
また、表1及び
図1、2に示す結果から、30代、50代の被験者のいずれにおいても、頭皮の赤みが強い群は、頭皮の赤みが弱い群に比べて、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きく、しかもその差が大きい(2倍以上)ことが分かる。
【0069】
表1に示す結果から、30代、50代の被験者のいずれにおいても、頭皮の赤みが強い群は、頭皮の赤みが弱い群に比べて、「白髪率」及び「毛径(μm)の標準偏差」が大きく、「単位面積当たりの毛髪の総本数」が少ない結果であった。この結果より以下のことが言える。
<1>頭皮の赤みが強いほど、白髪が多く、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合も大きい傾向であることが分かる。また、白髪が多くなると、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きくなる傾向がある。
<2>頭皮の赤みが強いほど、毛髪本数が少ない傾向にあり、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合も大きい傾向であることが分かる。また、毛髪本数が少なくなると、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きくなる傾向がある。
<3>頭皮の赤みが強いほど、毛髪太さのばらつきが大きい傾向にあり、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合も大きい傾向であることが分かる。また、毛髪太さのばらつきが大きいと、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きくなる傾向がある。
【0070】
上記表1、
図1、2に示す事項とは別に、複数の年代を含む281人(モンゴロイドに分類される日本人女性281人)を対象としてマイクロスコープにより取得した頭皮の画像データと、当該画像データから把握されるa
*値を用い、頭皮の画像データを、年代別(10歳毎)且つa
*値の偏差値別に示したものを
図3に示す。
ここで偏差値は、年代毎にそれぞれa
*値を用いて求めたものである。例えば、40代で偏差値45〜55の欄に示す頭皮の画像データは、40代におけるa
*値の偏差値が45〜55である頭皮の画像データを示していることになる。
【0071】
以上の
図3を参照することで、例えば、被験者の頭皮のマイクロスコープ画像と被評価者の年代の欄(縦の欄)の各頭皮画像とを比べることにより、被評価者の頭皮画像が該当する当該年代での偏差値を特定することが可能になり、被評価者の同年代における頭皮の赤みの位置づけを評価することができる。
更に、ここで
図3に示す頭皮の赤み等に関する一覧だけでなく、当該一覧に対応するように、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合の各年代別・偏差値別の一覧、白髪の多さの各年代別・偏差値別の一覧、毛髪本数の少なさの各年代別・偏差値別の一覧、毛髪太さのばらつきの大きさの各年代別・偏差値別の一覧を予め用意しておくことで、被験者が該当する年代での当該被験者の赤みの偏差値に基づいて、コリネバクテリウム属の細菌の存在割合、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさについても、被評価者の同年代における位置づけを評価することができる。
【0072】
なお、赤み等に関する一覧としては、上記
図3の例に限らず、例えば、
図4に示すように、年代別(5歳毎)に、頭皮の画像データから把握されるa
*値の偏差値を複数のグループにランク分けして表示したものであってもよい。
【0073】
なお、
図3、4では、複数の年代のデータをまとめて一覧として表示したが、例えば、
図5〜
図9に示すように、a
*値が高いグループ(例えば、上位30%等)の画像データとa
*値が低いグループ(例えば、下位30%等)の画像データとを分けて並べて示したものを、年代別に用意しておき、被験者の年代に対応させて選んで用いることができるようにしてもよい。なお、
図5〜
図9は、
図3に示す表の作成に当たって収集した281人の年代別の頭皮の画像データから作成されたものである。
【0074】
なお、上記
図3に示す表の作成に当たって収集した281人の年代別の頭皮画像のデータに基づいて、頭皮の赤みと白髪率の年代別の関係を示すグラフを
図10に、頭皮の赤みと単位面積当たりの毛髪の総本数の年代別の関係を示すグラフを
図11に、頭皮の赤みと毛径の標準偏差の年代別の関係を示すグラフを
図12に、それぞれ示す。なお、
図10〜
図12において、「red」は頭皮のa
*値が高いグループ(上位30%等)を示し、「blue」は頭皮のa
*値が低いグループ(下位30%等)を示している。
【0075】
図10によれば、いずれの年代においても、頭皮の赤みが強い者ほど白髪率が高く、特に、頭皮の赤みが強い者については40歳を超えてから白髪率が急激な増大する傾向にあることが確認できる(
図10における矢印参照)。
また、
図11によれば、いずれの年代においても、頭皮の赤みが強い者ほど単位面積当たりの毛髪の総本数が少ない傾向にあることが確認できる(
図10における矢印参照)。
さらに、
図12によれば、違いの見られない20代を除く各年代において、頭皮の赤みが強い者ほど毛径の標準偏差が大きくなる傾向にあり、毛径にばらつきが生じやすい傾向があることが確認できる(
図12における矢印参照)。
以上の表1、
図1、2、10−12が示す内容をまとめれば、頭皮細菌叢におけるコリネバクテリウム属の細菌の存在割合が大きいほど、頭皮の赤みが強く、白髪率が高く、単位面積当たりの毛髪の総本数が少なく、毛径にばらつきが生じやすい傾向があると言える。