特開2019-51101(P2019-51101A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-51101(P2019-51101A)
(43)【公開日】2019年4月4日
(54)【発明の名称】脱臭装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/14 20060101AFI20190308BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20190308BHJP
【FI】
   A61L9/14
   C02F1/46 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-177852(P2017-177852)
(22)【出願日】2017年9月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516061816
【氏名又は名称】ダイセンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】天野 喜一朗
(72)【発明者】
【氏名】藤井 哲
(72)【発明者】
【氏名】中川 徹太郎
(72)【発明者】
【氏名】門野 英彦
(72)【発明者】
【氏名】古川 勇
(72)【発明者】
【氏名】加藤 司
(72)【発明者】
【氏名】久保田 清幸
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 熱史
(72)【発明者】
【氏名】北沢 定男
【テーマコード(参考)】
4C180
4D061
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB06
4C180CB04
4C180CB08
4C180EA17X
4C180EA23Y
4C180EA24Y
4C180EA57Y
4C180EA58X
4C180EB05Y
4C180EB06X
4C180GG07
4C180HH05
4C180KK05
4D061DA08
4D061DB19
4D061DC15
4D061EA03
4D061EA06
4D061EB05
4D061EB14
4D061EB20
4D061EB30
4D061EB37
4D061EB39
4D061GA04
4D061GC04
(57)【要約】
【課題】安価な構成で処理能力を高め、気体を良好に浄化できる脱臭装置を提供する。
【解決手段】脱臭液Vを噴出させる吹出口を有する複数のノズルBと、複数のノズルBを上部に収容し、且つ、処理液Wを下部に貯留しており、臭い成分を含む気体を吸引する吸引口1aを有する処理槽Aと、を備え、複数のノズルBは、処理液Wの液面に対して交差する方向から脱臭液Vを噴出させるように配置されており、吸引口1aに隣り合う位置で吸引口1aよりも上方に配置された第一ノズルBaと、第一ノズルBaよりも吸引口1aから遠い位置で第一ノズルBaよりも下方に配置された第二ノズルBb,Bcと、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱臭液を噴出させる吹出口を有する複数のノズルと、
複数の前記ノズルを上部に収容し、且つ、処理液を下部に貯留しており、臭い成分を含む気体を吸引する吸引口を有する処理槽と、を備え、
複数の前記ノズルは、前記処理液の液面に対して交差する方向から前記脱臭液を噴出させるように配置されており、前記吸引口に隣り合う位置で前記吸引口よりも上方に配置された第一ノズルと、前記第一ノズルよりも前記吸引口から遠い位置で前記第一ノズルよりも下方に配置された第二ノズルと、を有している脱臭装置。
【請求項2】
前記処理槽に貯留された前記処理液の内部には、通電により前記臭い成分を電気分解する正電極と負電極とが交互に配置されており、
複数の前記ノズルは、平面視において前記正電極と前記負電極との間に夫々配置されている請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記吹出口は、円環状に形成されている請求項1又は2に記載の脱臭装置。
【請求項4】
複数の前記ノズルは、平面視において千鳥状に配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭い成分を含む気体を脱臭する脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部の空気の取り込みが可能なチェンバー内にノズルを備え、ノズルの下方に配置される脱臭筒の上部に狭い通路部分を形成してエジェクタを構成した技術が示されている。このような構成においては、ノズルから脱臭液を噴出することによりチャンバー内の空気を脱臭液に吸引させて混合し、脱臭を実現している。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、脱臭筒の下方に貯留された脱臭液をポンプによりノズルに供給する構成を備えることにより、空気を取り込む駆動源を備えずとも、エジェクタ効果によりチェンバー内の空気の吸引を可能にするものである。
【0004】
また、特許文献2では、ダクト内に供給される処理ガスにオゾン水や過酸化水素水を噴霧し、次に、反応空間内において処理ガスに紫外線を照射し、更に、ミスト除去手段およびオゾン分解層を通過させることで清浄ガスとして排出する技術が示されている。
【0005】
この特許文献2に開示された技術では、ダクト内にオゾン水や過酸化水素水を霧状に噴霧することで、処理ガスに含まれる悪臭成分にオゾン水等が接触して酸化分解を行い、その結果、脱臭を実現する。また、脱臭後の処理ガスに紫外線を照射することによりオゾン水において酸化分解力が強力なOHラジカルを発生させ、通常のオゾン水では分解困難なアルコール類や低級脂肪酸などの難分解有機化合物の分解も実現するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001‐286545号公報
【特許文献2】特開平10‐57749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、鋳造や鍛造のように加熱を伴う製造ラインにおいて、オイルや樹脂等が加熱されることにより発生する蒸気や煤煙類には、悪臭の原因となる微粒子が多く含まれている。
【0008】
特許文献1に示されるように、エジェクタにおいて処理液(脱臭液)に空気を混合させる構成では、微粒子を含む空気の吸引量が少なく処理能力を高めることが困難であった。また、処理能力向上のために、大型のエジェクタを備える構成を必要とし、装置全体の大型化を招くものであった。
【0009】
特許文献2に示されるように、オゾン水等を霧状に噴霧することにより、処理ガスに含まれる悪臭成分に対してオゾン水等を接触させて反応を行わせる構成では、微粒子との接触確率が低く、脱臭効率が悪いものであった。また、脱臭効率向上のために、多量の過酸化水素水を必要とし、紫外線を照射する機器を必要とする等、構造の複雑化を招き、ランニングコストを上昇させるものであった。
【0010】
そこで、安価な構成で処理能力を高め、気体を良好に浄化できる脱臭装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
脱臭装置の特徴構成は、脱臭液を噴出させる吹出口を有する複数のノズルと、
複数の前記ノズルを上部に収容し、且つ、処理液を下部に貯留しており、臭い成分を含む気体を吸引する吸引口を有する処理槽と、を備え、
複数の前記ノズルは、前記処理液の液面に対して交差する方向から前記脱臭液を噴出させるように配置されており、前記吸引口に隣り合う位置で前記吸引口よりも上方に配置された第一ノズルと、前記第一ノズルよりも前記吸引口から遠い位置で前記第一ノズルよりも下方に配置された第二ノズルと、を有している点にある。
【0012】
本構成では、処理槽の下部に貯留された処理液の液面に対して交差する方向から脱臭液を噴出させる複数のノズルを備えている。その結果、吸引口から処理槽の内部に吸引された臭い成分を含む気体は、噴出された脱臭液によって処理液の内部に引き込まれることとなる。そして、処理液の液面下で臭い成分を含む気体が微細な気泡となり、脱臭液によって臭い成分が分解される。
【0013】
よって、気体中に浮遊する臭い成分が微粒子であっても、気体と共に処理液の内部に引き込まれるため、特許文献2の技術に比べて該微粒子と脱臭液との接触確率を高めることができる。また、複数のノズルによって処理槽内部に充満した臭い成分を含む気体を一気に処理液内部に引き込むため、臭い成分を含む気体の吸引量を増大させ、特許文献1の技術に比べて処理能力を高めることができる。
【0014】
さらに、本構成では、複数のノズルが、吸引口に隣り合う位置で吸引口よりも上方に配置された第一ノズルと、第一ノズルよりも吸引口から遠い位置で第一ノズルよりも下方に配置された第二ノズルと、を有している。このため、第一ノズルが、脱臭液と臭い成分を含む気体との単位時間当たりの接触量を多く確保して、吸引口から吸引された臭い成分を含む気体の処理液内部への引き込み量を増大させる。そして、第二ノズルが、脱臭液を処理液内部に勢いよく混入させ、引き込まれる臭い成分を含む気体をより微細化し、臭い成分の微粒子と脱臭液との接触確率をさらに高めることとなる。これら第一ノズルおよび第二ノズルの配置を最適化するといった安価な構成によって、脱臭液による臭い成分の分解が促進され、処理能力を確実に高めることができる。
【0015】
このように、安価な構成で処理能力を高め、気体を良好に浄化する脱臭装置を提供できた。
【0016】
他の特徴構成は、前記処理槽に貯留された前記処理液の内部には、通電により前記臭い成分を電気分解する正電極と負電極とが交互に配置されており、複数の前記ノズルは、平面視において前記正電極と前記負電極との間に夫々配置されている点にある。
【0017】
ノズルから噴出された脱臭液によって引き込まれた臭い成分を含む気体の一部は、有害物質として処理液内部に混入している。そこで、本構成のように、臭い成分を電気分解する正電極と負電極とを処理液内部に交互に配置すれば、有害物質を無害化して処理液を適正に処分することができる。しかも、本構成では、複数のノズルを平面視において正電極と負電極との間に夫々配置しているため、負電荷を持つ臭い成分と正電荷を持つ臭い成分とを夫々正電極と負電極とに迅速に移動させることが可能となり、分解効率を高めることができる。
【0018】
他の特徴構成は、前記吹出口は、円環状に形成されている点にある。
【0019】
本構成のように、吹出口を円環状に形成すれば、一般的な円形状の吹出口と比較して噴出された脱臭液の表面積が増大するので、脱臭液と臭い成分を含む気体との接触面積をさらに高めることができる。その結果、吸引口から吸引された臭い成分を含む気体の処理液内部への引き込み量がさらに増大し、脱臭液による臭い成分の分解が促進され、処理能力を確実に高めることができる。
【0020】
他の特徴構成は、複数の前記ノズルは、平面視において千鳥状に配置されている点にある。
【0021】
本構成のように、複数のノズルを平面視において千鳥状に配置すれば、処理槽内部に充満された臭い成分を含む気体に対して、脱臭液を均等に接触させることができる。その結果、吸引口から吸引された臭い成分を含む気体の処理液内部への引き込み量がさらに増大し、脱臭液による臭い成分の分解が促進され、処理能力を確実に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】脱臭装置の全体構成を示す模式図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3】制御形態のブロック図である。
図4】別実施形態1に係るノズルを示す模式図である。
図5】別実施形態2に係るノズルを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る脱臭装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0024】
〔基本構成〕
図1に示すように、本実施形態における脱臭装置Yは、処理液Wの貯留部Cが下部に形成された処理槽Aと、処理槽Aの上部に収容される複数のノズルBと、貯留部Cに貯留された処理液WをノズルBに供給する循環ポンプPaと、処理液補給ユニットDと、電気分解ユニットEと、沈殿物回収ユニットFと、浮上物回収ユニットGと、分解液供給部Jと、オゾン供給部Kとを備えている。
【0025】
本実施形態における脱臭装置Yは、処理液Wとして水を用い、この処理液Wに後述する分解液およびオゾンを混合した脱臭液Vによって空気(「臭い成分を含む気体」の一例)の脱臭を行うものである。
【0026】
処理槽Aは、縦向き姿勢の軸芯Xを中心とする角筒状の側壁1と、中央ほど上方に突出する漏斗状の上壁2と、中央ほど下方に突出する漏斗状の底壁3とを備えている。
【0027】
側壁1のうち、処理液Wの液面の直上には、処理液Wの液面に浮き上がった状態で存在する浮上物を排出する浮上物排出口1bが形成されており、浮上物排出口1bより上方には、空気を吸引する吸引口1aが形成されている。この吸引口1aには、悪臭の原因となる蒸気や煤煙類を発生させる鋳造装置や切削装置等で構成される吸気対象10からブロア5により吸引された空気が通過する吸気ダクト4が接続されている。また、側壁1のうち貯留部Cの下部には、ストレーナ6aと液溜め部6bとで構成され、循環ポンプPaに向けて流出する処理液Wの異物を除去する異物除去部6が、全周に亘って配置されている。全周に亘って異物除去部6を配置することにより、ストレーナ6aと処理液Wとの接触面積を大きく確保し、ストレーナ6aの交換頻度を抑制してメンテナンス性を高めている。
【0028】
上壁2には、脱臭された空気を排出する空気排出口2aが形成されている。底壁3のうち下方への突出端には排出筒7が形成され、この排出筒7には電動式に開閉する排出弁30が接続されている。処理槽Aの下部には、貯留部Cに貯留される処理液Wの液面レベルを検知するようにフロート型の主液面センサ8と、処理液Wの水素イオン濃度を検知する水素イオン濃度計9とが配置されている。なお、水素イオン濃度計9に代えて、酸化還元電位を検知する酸化還元電位計を用いても良いし、水素イオン濃度計9および酸化還元電位計を併用しても良い。また、処理液Wの温度を検知するサーミスタ等の温度センサを設け、温度センサの検知温度に基づいて、冷却装置等により処理液Wの液温を所定の温度に制御するように構成しても良い。
【0029】
夫々のノズルBは、分解液供給部Jから循環ポンプPaを用いて分解液が供給されると共にオゾン供給部Kからオゾンが供給されることにより、分解液およびオゾンを含む脱臭液Vを下方(処理液Wの液面に垂直な方向、「処理液Wの液面に対して交差する方向」の一例)に直線状に噴出するように姿勢が設定されている。分解液は、亜塩素酸ナトリウムが混合された水成二酸化塩素、クエン酸、水酸化カルシウム等の水溶液で構成されている。オゾンおよび分解液によって、空気に含まれる臭い成分が化学反応により分解されて脱臭が行われる。なお、分解液は、複数の薬剤を併用して用いても良いし、オゾンをオゾン水の形態で用いても良い。
【0030】
図1に示すように、夫々のノズルBは、ハウジングHを有しており、ハウジングHの内周面は、脱臭液Vが導入される断面直線状の導入部H1と、導入部H1の直径よりも小さい直径で構成され、脱臭液Vを噴出させる断面直線状の吹出口H2と、導入部H1から吹出口H2に向かって縮径するテーパー部H3とを、中心線が軸芯Xと平行に形成されている。これによって、導入部H1に導入された脱臭液Vは、テーパー部H3によって円滑に加速されて吹出口H2から直線状に噴出する。
【0031】
また、複数のノズルBは、吸引口1aに隣り合う位置で吸引口1aよりも上方に配置された高位置ノズルBa(第一ノズルの一例)と、高位置ノズルBaよりも吸引口1aから遠い位置で高位置ノズルBaよりも下方に配置された低位置ノズルBb(第二ノズルの一例)と、高位置ノズルBaと低位置ノズルBbとの間の位置で高位置ノズルBaよりも下方且つ低位置ノズルBbよりも上方に配置された中位置ノズルBc(第二ノズルの一例)と、を有している。本実施形態では、吸引口1aから遠ざかるに従って、高位置ノズルBa,中位置ノズルBc,低位置ノズルBbをこの順に配置したが、中位置ノズルBcと低位置ノズルBbとを交互に配置したりランダムに配置したりしても良いし、中位置ノズルBcおよび低位置ノズルBbの何れか一方を省略しても良い。
【0032】
図2に示すように、本実施形態において、複数のノズルBは、平面視(軸芯Xに沿う方向視)において千鳥状に配置されている。具体的には、吸引口1aに近い方から順に列を設定したとき、吸気ダクト4を通過する空気の流通方向視において、吸引口1aに近い方から一列目に配置された夫々の高位置ノズルBaと二列目の高位置ノズルBaとが重なりなく配置され、一列目に配置された夫々の高位置ノズルBaと三列目に配置された夫々の中位置ノズルBcとが重なって配置されている。このように、吸気ダクト4を通過する空気の流通方向視において、奇数列のノズルBと偶数列のノズルBとは重なりなく配置され、奇数列どうしのノズルBおよび偶数列どうしのノズルBは、夫々重なって配置されている。なお、千鳥状に配置せずに、吸気ダクト4を通過する空気の流通方向視において、全てのノズルBが重なる格子状に配置されても良いし、重なりなくランダムに配置しても良く、特に限定されない。
【0033】
図1に戻って、循環ポンプPaは、インバータにより回転数が制御可能な電動モータで駆動される。この脱臭装置Yでは、循環ポンプPaの駆動により、ストレーナ6aによって異物が除去された処理液Wを液溜め部6bを介して吸引管12によって送り出し、脱臭液供給管13を経由してノズルBに供給するように処理液Wの循環が行われる。
【0034】
また、循環ポンプPaには、後述する分解液供給部Jの排出管28が接続されており、循環ポンプPaの駆動力により分解液が処理液Wに混合して送り出される。吸引管12の循環ポンプPaより下流側には、分解液を含む処理液Wの圧力を検知する圧力センサ17が配置されている。吸引管12と脱臭液供給管13との合流部分には、後述するオゾン供給部Kのオゾン供給管19が接続されている。
【0035】
処理液補給ユニットDは、処理槽Aの内部に処理液Wを補給する。処理液補給ユニットDは、処理液タンク21と、処理液タンク21からの処理液Wを送り出す補給管22と、補給管22での処理液Wの流れを制御するため電磁開閉型の補給弁23とを備えている。この処理液補給ユニットDでは、補給管22の注水口22aが処理槽Aの内部に配置されている。
【0036】
電気分解ユニットEは、外部の電源装置24と、電源装置24から電力線24aを介して通電される板状の電極25とを備えている。電力線24aに流れる電流は、処理槽Aの側壁1に設けられた絶縁端子24bによって地絡が防止されている。電極25は、ニッケルやチタン等で構成されており、特にニッケルで構成することが好ましい。電極25は、正電極25aと負電極25bとが交互に配置されており、通電により空気に含まれる臭い成分を電気分解する。また、図2に示すように、平面視(軸芯Xに沿う方向視)において、複数のノズルBを正電極25aと負電極25bとの間に配置している。処理液Wには、アンモニア性窒素の有害物質が多く存在しており、このまま下水道に排水処理できない。このため、分解液に含まれる亜塩素酸ナトリウムや水酸化カルシウムによって、下記(1)に示す化学反応を起こして無害化する。
(1)NH+NaClO+Ca(OH)+2CO+2H+HO → NHCl+NaHCO+CaCO+3H
【0037】
また、電気分解ユニットEは、臭い成分(異物)として処理液Wの液面に浮いている油やスラッジ、貯留部Cに沈殿している切粉類、液中に浮遊する切削液などの懸濁物を、電極25の一部が解離した陽イオンとの化学変化で凝集させる。そして、正の電荷を持った懸濁物は負電極25bに付着し、負の電荷を持った懸濁物は正電極25aに付着する。その後、正電極25aと負電極25bとの極性を逆転させることで、負電極25bに付着した正の電荷を持った懸濁物は正極性と反発して剥離し、同様に、正電極25aに付着した負の電荷を持った懸濁物は負極性と反発して剥離する。これによって、処理液Wよりも比重の大きい凝集した懸濁物は貯留部Cの底部に沈殿する沈殿物となり、処理液Wよりも比重の小さい凝集した懸濁物は処理液Wの液面の浮上物となる。
【0038】
沈殿物回収ユニットFは、貯留部Cの底部に沈殿する沈殿物を回収する。沈殿物回収ユニットFは、排出弁30を介して排出される沈殿物を回収する第1回収槽31と、第1回収槽31から沈殿物を含む処理液Wを排出する第1排出管32と、この第1排出管32を電動式に開閉する第1排出弁33と、第1排出管32において沈殿物を含む処理液Wを送り出す第1排出ポンプP1とを備えている。第1回収槽31には、液面レベルを検知するようにフロート型の第1液面センサ34が配置されている。
【0039】
浮上物回収ユニットGは、処理液Wの液面の浮上物を回収する。浮上物回収ユニットGは、浮上物排出口1bから排出される浮上物を回収する第2回収槽36と、第2回収槽36から浮上物を含む処理液Wを排出する第2排出管37と、この第2排出管37を電動式に開閉する第2排出弁38と、第2排出管37において浮上物を含む処理液Wを送り出す第2排出ポンプP2とを備えている。第2回収槽36には、液面レベルを検知するようにフロート型の第2液面センサ39が配置されている。
【0040】
分解液供給部Jは、上述した水成二酸化塩素、クエン酸等の分解剤を含む水溶液を貯留する分解剤タンク27と、排出管28と、この排出管28を開閉する電磁開閉型の排出制御弁29とを備えている。オゾン供給部Kは、空気を吸引し無声放電等により空気中の酸素からオゾンを生成して送り出すオゾン発生装置18と、オゾン供給管19と、吸引管12からの液体の逆流を防止する逆止弁20とを備えている。
【0041】
〔制御形態〕
図3に示すように、脱臭装置Yは、マイクロプロセッサやDSP(digital signal processor)等を有する制御部50により各部の制御を行うように構成されている。複数のポンプを駆動する電動モータには、誘導モータや同期モータが用いられ、制御部50には、電動モータに供給する電力の周波数の調整により電動モータの回転速度を制御するインバータ回路を備えている。尚、電動モータとしてブラシレスDCモータを用いた構成では、PWMの設定等により電力を調整する電力制御回路が用いられる。
【0042】
制御部50には、主液面センサ8と、水素イオン濃度計9と、圧力センサ17と、第1液面センサ34と、第2液面センサ39とからの検知信号が入力される。また、制御部50は、ブロア5と、循環ポンプPaと、補給弁23と、排出弁30と、第1排出弁33および第1排出ポンプP1と、第2排出弁38および第2排出ポンプP2と、排出制御弁29と、オゾン発生装置18と、電源装置24とに制御信号を出力する。
【0043】
このような構成から、図1に示すように、脱臭装置Yで空気の脱臭を行う場合には、排出弁30を閉じた状態で貯留部Cに処理液Wを所定の水位まで貯留し、オゾン発生装置18を運転させると共に排出制御弁29を開放して循環ポンプPaを駆動する。この駆動時には、圧力センサ17で検知される圧力が目標値に維持されるように循環ポンプPaに供給する電力が設定される。
【0044】
これによって、処理液Wに分解液供給部Jからの分解液を混合した液体が吸引管12に送り出され、オゾン供給部Kからのオゾンが脱臭液供給管13に合流して、処理液W,分解液およびオゾンを混合した脱臭液VをノズルBから直線状に噴出させる。そして、ブロア5を運転させて、吸引口1aから空気を処理槽Aの内部に吸引する。
【0045】
本実施形態では、脱臭液Vを直線状に噴出させる吹出口H2を有する複数のノズルBを備えている。その結果、吸引口1aから処理槽Aの内部に吸引された空気は、直線状に噴出された脱臭液Vによって処理液Wの内部に引き込まれることとなる。そして、処理液Wの液面下で空気が微細な気泡となり、脱臭液Vによって臭い成分が分解される。
【0046】
よって、空気中に浮遊する臭い成分が微粒子であっても、空気と共に処理液Wの内部に引き込まれるため、該微粒子と脱臭液Vとの接触確率を高めることができる。また、複数のノズルBによって処理槽Aの内部に充満した空気を一気に処理液Wの内部に引き込むため、空気の吸引量を増大させて処理能力を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態では、複数のノズルBが、吸引口1aに隣り合う位置で吸引口1aよりも上方に配置された高位置ノズルBaと、高位置ノズルBaよりも吸引口1aから遠い位置で高位置ノズルBaよりも下方に配置された中位置ノズルBcおよび低位置ノズルBbと、を有している。このため、高位置ノズルBaが、脱臭液Vと空気との単位時間当たりの接触量を多く確保して、吸引口1aから吸引された空気の処理液Wの内部への引き込み量を増大させる。そして、中位置ノズルBcおよび低位置ノズルBbが、脱臭液Vを処理液Wの内部に勢いよく混入させ、引き込まれる空気をより微細化し、臭い成分の微粒子と脱臭液Vとの接触確率をさらに高めることとなる。その結果、脱臭液Vによる臭い成分の分解が促進され、処理能力を確実に高めることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、複数のノズルBを平面視において千鳥状に配置しているので、処理槽Aの内部に充満された気体に対して、脱臭液Vを均等に接触させることができる。その結果、吸引口1aから吸引された空気の処理液Wの内部への引き込み量がさらに増大し、脱臭液Vによる臭い成分の分解が促進され、処理能力を確実に高めることができる。
【0049】
空気中に浮遊する臭い成分としての微粒子は、処理液Wに混合する状態に達して貯留部Cに送り込まれる。また、貯留部Cでは、処理液Wに含まれる空気が気泡となって処理液Wから分離し、清浄な空気として空気排出口2aから外部に排出される。
【0050】
分解液供給部Jから供給される分解液の供給量は、貯留部Cに貯留される処理液Wのイオン濃度に反映されるものであり、制御部50は、水素イオン濃度計11で検知される水素イオン濃度を目標値に維持するために排出制御弁29を制御して必要とする量の分解液を供給する。なお、水素イオン濃度計11に代えて、酸化還元電位計を用いることができる。この場合、制御部50は、酸化還元電位計で検知される酸化還元電位を目標値に維持するために排出制御弁29を制御して必要とする量の分解液を供給する。
【0051】
主液面センサ8で検知される液面が目標とするレベル未満まで低下した場合には、制御部50が処理液補給ユニットDの補給弁23を開放し、必要とする量の処理液Wを補給する。
【0052】
また、制御部50は、電源装置24を駆動して、臭い成分としての微粒子(懸濁物)を電極25の一部が解離した陽イオンとの化学変化で凝集させる。これによって、正の電荷を持った懸濁物は負電極25bに付着し、負の電荷を持った懸濁物は正電極25aに付着する。そして、所定時間経過後、制御部50は、電源装置24から供給される電流の方向を反転させて電極25の極性を逆転させ、懸濁物を剥離させる。これによって、処理液Wよりも比重の大きい凝集した懸濁物は貯留部Cの底部に沈殿する沈殿物となり、処理液Wよりも比重の小さい凝集した懸濁物は処理液Wの液面の浮上物となる。
【0053】
この沈殿物は、制御部50が設定インターバルで排出弁30を開放することにより、排出筒7から自重によって排出される。一方、浮上物は、処理液補給ユニットDで処理液Wが補給される毎に、浮上物排出口1bからオーバーフローする状態で排出され、第2回収槽36に回収される。
【0054】
第1回収槽31の液面レベルが設定値に達したことを第1液面センサ34が検知した場合には、制御部50が、第1排出弁33を開放し、第1排出ポンプP1を駆動する。これにより、第1回収槽31に回収された沈殿物が処理液Wとともに排出される。
【0055】
これと同様に、第2回収槽36の液面レベルが設定値に達したことを第2液面センサ39が検知した場合には、制御部50が、第2排出弁38を開放し、第2排出ポンプP2を駆動する。これにより、第2回収槽36に回収された浮上物が処理液Wとともに排出される。
【0056】
[別実施形態]
上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。なお、上述した実施形態と同じ機能を有するものには、共通の番号、符号を付している。
【0057】
(1)図4に示すように、ノズルBは、外円筒Haと、外円筒Haに固定される内円筒Hbとを備えている。内円筒Hbの一端に形成された雄ねじ部とナットとで締結機構Tを構成し、内円筒Hbの雄ねじ部に隣接する部分に環状凹部Hb1を形成して、この環状凹部Hb1にシール部材Sを挿入することで、内円筒Hbの一端側が外円筒Haに密封状態で固定されている。内円筒Hbの他端側は、他の部位よりも大径に形成した大径部Hb2を有しており、この大径部Hb2から一端側に向かうに連れて縮径する傾斜部Hb3と、大径部Hb2よりも小径の小径部Hb4とを有している。つまり、内円筒Hbの他端側から一端側に向かうに連れて大径部Hb2,傾斜部Hb3,小径部Hb4がこの順で配置されている。
【0058】
内円筒Hbの小径部Hb4と外円筒Haの内面Ha1との間に脱臭液供給管13から脱臭液Vが導入される導入空間M1が形成され、内円筒Hbの傾斜部Hb3と外円筒Haの内面Ha1との間に導入空間M1の流路断面積を絞る絞り空間M2が形成されている。この絞り空間M2に連続して、内円筒Hbの小径部Hb4と外円筒Haの内面Ha1との間に吹出口M3が形成されている。このような構成から、内円筒Hbの小径部Hb4の外径d1と外円筒Haの内径d2との間には、ノズルBの吹出口M3が円環状に形成されている。
【0059】
本実施形態のように、吹出口M3を円環状に形成すれば、一般的な円形孔と比較して噴出された脱臭液Vの表面積が増大するので、脱臭液Vと空気との接触面積をさらに高めることができる。その結果、空気の処理液Wの内部への引き込み量がさらに増大し、脱臭液Vによる臭い成分の分解が促進され、処理能力を確実に高めることができる。また、本実施形態では、導入空間M1の流路断面積を絞る絞り空間M2を設けているので、脱臭液Vの流速が加速されて脱臭液Vを噴出速度が高まるので、空気の処理液Wの内部への引き込み量を確実に増大させ、空気は、処理液Wの液面下で微細な気泡となり易い。
【0060】
(2)図5に示すように、脱臭液供給管13と接続されたノズルケースHcを設け、このノズルケースHcの内面に形成された段部Hc1に円盤状の板状部材Hdを配置して、この板状部材Hdに複数のノズルBを形成しても良い。この場合、複数のノズルBを個別に設ける場合に比べて、板状部材Hdに多くのノズルBを一括して形成するため、部品点数を少なくすることができる。
【0061】
(3)上述した実施形態における夫々のノズルBは、脱臭液Vを処理液Wの液面に垂直な方向に直線状に噴出するように姿勢を設定したが、脱臭液Vを処理液Wの液面に対して傾斜させた方向から直線状に噴出するように姿勢を設定しても良い。また、複数のノズルBから脱臭液Vを直線状に噴出させる構成に限定されず、拡がりを持って噴出させる等どのような噴出形態であっても良い。
【0062】
(4)上述した実施形態では、電気分解ユニットEを設けて処理液W内部の異物を凝集させたが、電気分解ユニットEに代えて、例えば撹拌装置を用いて遠心力の作用で異物を凝集させても良く、特に限定されない。
【0063】
(5)上述した実施形態では、複数のノズルBを正電極25aと負電極25bとの間に配置したが、複数のノズルBを正電極25aや負電極25bの直上に配置しても良く、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、臭い成分を含む気体を脱臭する脱臭装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1a :吸引口
19 :オゾン供給管
25 :電極
A :処理槽
B :ノズル
Ba :高位置ノズル(第一ノズル)
Bb :低位置ノズル(第二ノズル)
Bc :中位置ノズル(第二ノズル)
C :貯留部
H2 :吹出口
M3 :吹出口
V :脱臭液
W :処理液
Y :脱臭装置
図1
図2
図3
図4
図5