特開2019-53145(P2019-53145A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2019053145-カムフォロア及びレンズ鏡筒 図000003
  • 特開2019053145-カムフォロア及びレンズ鏡筒 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-53145(P2019-53145A)
(43)【公開日】2019年4月4日
(54)【発明の名称】カムフォロア及びレンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20190308BHJP
【FI】
   G02B7/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-176247(P2017-176247)
(22)【出願日】2017年9月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】白井 純一
(72)【発明者】
【氏名】桐井 亮多
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044BD06
2H044BD09
2H044BD11
2H044BD16
(57)【要約】
【課題】 簡易な構成ながら、レンズ鏡筒の大きさに影響せず、衝撃に強く、溝部壁面との間のガタの発生を効果的に防止することが可能なカムフォロア及びレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】 本発明を実施のカムフォロアは、少なくとも1つの溝部に係合し、溝部の一方の壁面と面接触する当接面を有するカムフォロア本体と、一方の壁面と当接面とを押圧接触させる付勢力を発生し、カムフォロア本体に対して押圧接触する係止腕部と、カムフォロア本体から突出し、他方の壁面に対して押圧接触する付勢腕部と、を有するコイルバネと、を有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの溝部に係合し、前記溝部の一方の壁面と面接触する当接面を有するカムフォロア本体と、
一方の前記壁面と前記当接面とを押圧接触させる付勢力を発生し、前記カムフォロア本体に対して押圧接触する係止腕部と、前記カムフォロア本体から突出し、他方の前記壁面に対して押圧接触する付勢腕部と、を有するコイルバネと、
を有することを特徴とするカムフォロア。
【請求項2】
前記カムフォロア本体は、略矩形形状をした上段部と略円柱形状をした下段部とを有し、前記当接面は、前記上段部の略矩形形状の一つの側面を構成することを特徴とする請求項1に記載のカムフォロア。
【請求項3】
前記付勢腕部は、前記上段部のうち、前記当接面ではない面から突出することを特徴とする請求項2に記載のカムフォロア。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のカムフォロアを有するレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムにより移動される被移動部材のガタの発生を防止することが可能なカムフォロア及びそれを有するレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
カム溝とそれに係合するカムフォロアとの間には若干のクリアランスが設けられており、これにより滑らかな駆動が可能となったり、環境変化によるカムフォロアの膨張や収縮に対するロバスト性が向上する。しかしながら、このクリアランスによりカム溝とカムフォロアとの間にガタが生じると、保持されるレンズの位置精度が低下し、ズーミングやフォーカシングの精度が低下するという問題が生じる。また、撮影者自身の操作により駆動される場合には、操作時にガタつきが生じることで品位が低下する。また、このクリアランスは、カムによる移動回数が多くなるほどカムフォロアに若干の削れが発生し、拡大するおそれがある。
【0003】
このような問題点を解決するために、カム溝とカムフォロアとの間のガタを抑制する種々の技術が従来より提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示の発明では、カム部材とカムフォロワによってレンズを移動制御するズームレンズ鏡筒において、上記カムフォロワを上記カム部材のカム面に圧接する板バネと、上記レンズを保持するレンズ枠に対する上記カムフォロワの固定向きを調整する固定向き調整手段とを備え、上記固定向き調整手段による上記カムフォロワの固定向きの調整により、上記板バネの圧接度合いを調整可能とした構成としている。
【0005】
この発明によれば、小型化とコストの低減を両立しながらもスムーズなズーム動作を得ることが可能になる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3482266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術では以下のような問題点があった。すなわち、特許文献1に開示の発明では、カム溝の幅をカムフォロアの径以上に設定する必要があるので、カム筒の強度が低下したり、レンズ鏡筒が大型化するおそれがある。
【0008】
また、一般的に多く用いられるカムフォロアの形状は円柱形状のものが多い。この場合、落下等によりレンズ鏡筒に衝撃が加わると、カムフォロアとカム溝との接触面積が小さいために衝撃力が集中し、カムフォロアの曲面やカム溝の壁面に打痕を生じさせてしまうおそれがある。
【0009】
さらに、レンズ鏡筒の中には、高倍率ズームレンズやマクロレンズなど、ズーミングやフォーカシングに応じて直進筒が被写体側に大きく伸長するものが存在する。伸長した直進筒に大きく重いレンズが配置されていれば、その自重により鉛直方向下向きに直進筒を傾かせるトルクが発生する。このとき、カムフォロアとカム溝との接触面積が小さいと、このトルクに負けて直進筒に傾きが生じ、光学性能が低下してしまうおそれがある。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、簡易な構成ながら、レンズ鏡筒の大きさに影響せず、衝撃に強く、溝部壁面との間のガタの発生を効果的に防止することが可能なカムフォロア及びそれを有するレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明を実施のカムフォロアは、少なくとも1つの溝部に係合し、溝部の一方の壁面と面接触する当接面を有するカムフォロア本体と、一方の壁面と当接面とを押圧接触させる付勢力を発生し、カムフォロア本体に対して押圧接触する係止腕部と、カムフォロア本体から突出し、他方の壁面に対して押圧接触する付勢腕部と、を有するコイルバネと、を有すること特徴とする。
【0012】
また、本発明を実施のカムフォロアは、好ましくは、カムフォロア本体は、略矩形形状をした上段部と略円柱形状をした下段部とを有し、当接面は、上段部の略矩形形状の一つの側面を構成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明を実施のカムフォロアは、好ましくは、付勢腕部は、上段部のうち、当接面ではない面から突出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明を実施のレンズ鏡筒は、上記いずれかに記載のカムフォロアを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明を実施のカムフォロア及びそれを有するレンズ鏡筒によれば、簡易な構成ながら、レンズ鏡筒の大きさに影響せず、衝撃に強く、溝部壁面との間のガタの発生を効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態であるレンズ鏡筒100の部分断面図である。
図2】カムフォロア200を説明するための図であり、(a)はカムフォロア200及びビス230の斜視図、(b)はカムフォロア200の上面図である。
図3】カムフォロアとカム溝との関係を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明が適用されたレンズ鏡筒100の部分断面図である。本図に示すレンズ鏡筒100は単焦点レンズであり、結像光学系として被写体側から順に、少なくとも、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2とを有している。
【0019】
レンズ鏡筒100は結像光学系の他に、主要な構成として、固定筒110と、カム筒120と、直進筒130と、フォーカス操作リング140と、を有している。結像光学系の光軸を中心にして内周側より、直進筒130、固定筒110、カム筒120、フォーカス操作リング140の順番で配置されている。
【0020】
第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2はフォーカシングに応じて光軸方向に進退される。本図中の上側はINF状態、下側は最短撮影状態のレンズ鏡筒100をそれぞれ示している。各レンズ群のレンズは、カシメや押え環等によりそれぞれの鏡室に固定されており、さらに各鏡室がそれぞれレンズ移動枠に固定される構成となっている。
【0021】
1群移動枠151は第1レンズ群G1を保持しており、また、直進筒130に対して不図示のビスにより締結されている。1群移動枠151はさらに複数のカムフォロア200を介して、固定筒110に設けられた直進案内溝111と、カム筒120に設けられたカム溝121とに係合されている。これにより、1群移動枠151は所定の位置に保持されている。
【0022】
一方、2群移動枠152は第2レンズ群G2を保持しており、不図示のカムフォロアを介して、固定筒110に設けられた不図示の直進案内溝と、カム筒120に設けられた不図示のカム溝とに係合されている。
【0023】
固定筒110及びカム筒120はカム機構を構成しており、ユーザがフォーカス操作リング140を操作すると、操作力がカム筒120に伝達されてカム筒120が光軸を中心にして回転する。カムフォロア200は、カム筒120の回転によりカム溝121と直進案内溝111との協働により光軸方向に進退させられる。
【0024】
カム溝121の形状を所定のものとすることで、1群移動枠151及び1群移動枠152が所定の位置関係を満たしながら移動され、これにより、レンズ鏡筒100のフォーカシング動作が行われる。本実施例においてカム溝121は、レンズ鏡筒100の光軸とのなす角が全移動範囲において概ね一定となった、いわゆるリードカムが採用されている。
【0025】
図2は、図1に示した本発明を実施のカムフォロア200を説明するための図である。図2(a)はカムフォロア200及びビス230の斜視図、図2(b)はカムフォロア200の上面図である。これらの図を用いて、カムフォロア200の付勢機構を説明する。
【0026】
本図に示すように、カムフォロア200は、カムフォロア本体210と、カムフォロア本体210内に保持されるコイルバネ220と、を有している。また、カムフォロア本体210中央に設けた貫通孔にビス230が挿通される。本実施例では、カムフォロア200は、この挿通されたビス230が1群移動枠151に設けられたビス孔と締結することにより固定される。
【0027】
カムフォロア本体210の外周部は、固定筒110の直進案内溝111とカム筒120のカム溝121とにそれぞれ当接し、摺動する側面を構成している。図1の断面図からもわかるように、本実施例のカムフォロア本体210では側面が段付きの形状となっており、それぞれ異なる幅を有する溝と係合する。本実施例においては、下段部は、相対的に狭い溝幅を有する固定筒110の直進案内溝111と係合し、上段部は、相対的に太い溝幅を有するカム筒120のカム溝121と係合している。
【0028】
カムフォロア本体210の下端部には切り欠き部211が設けられている。カムフォロア200が固定される1群移動枠151には、この切り欠き部211と対向する位置に不図示の突起部が設けられている。これらは、カムフォロア200を固定した際に、カムフォロア200自体の回転規制として機能する。
【0029】
カム溝121に係合するカムフォロア本体210上段部は、図2(b)に示すように上から見ると矩形形状をしている。矩形形状の1組の長辺は、溝部と接触して摺動面として機能する摺動側面212となっており、平坦な形状を有していることがわかる。
【0030】
矩形形状をした上段部には、付勢機構を構成するコイルバネ220が保持されている。図2(b)はこのコイルバネ220の保持状態がわかりやすくなるように、ビス230を取り除いた状態の上面図となっている。
【0031】
カムフォロア本体210の中心軸には、ビス230が挿通される貫通孔が設けられている。貫通孔の外周には、コイルバネ220の円環部221が配置されている。本実施例のカムフォロア200においては、コイルバネ220がカムフォロア本体210から脱落しないように、ビス230の頭で蓋をする構成としている。
【0032】
コイルバネ220は、上述した中心軸と同軸の円環部221と、バネ両端の腕部とで構成される。腕部は、カムフォロア本体210に係止される係止腕部222と、カムフォロア本体210から突出する付勢腕部223と、からなる。
【0033】
カムフォロア本体210には、これらの腕部を収納するための逃がし溝が設けられている。
【0034】
コイルバネ220は、カムフォロア本体210に対して、巻き戻す方向に弾性変形された状態で組み込まれている。そのため、2つの腕部には常に巻き込む方向に付勢力が発生しており、図2(b)においては、係止腕部222、付勢腕部223共に、巻き込む側の逃がし溝と弾性接触している。これらにより付勢機構が構成されている。
【0035】
図3は、カムフォロア200と係合するカム溝121との関係を示す上面図である。本図では、理解のためにカム筒120を透過させ、カム筒120に覆われる直進筒110の直進案内溝111を破線で示している。
【0036】
上述したように、カムフォロア本体210上段部は平坦形状の摺動側面212を有している。また、これも上述したように、この摺動側面212と対向するカム溝121はいわゆるリードカムが採用されている。
【0037】
そのため、カムフォロア本体210上段部の摺動側面212と、対向するカム溝121の壁面とは、面接触になりやすい構成となっている。
【0038】
カムフォロア200の摺動側面212とカム溝121の側壁とが面接触することにより、従来の円柱形状のカムフォロアを採用する場合と比較して、レンズ鏡筒100に加わる外力に対する耐衝撃性を向上させることができる。
【0039】
また、フォーカシングにより被写体側に進退する1群移動枠151が自重により重力方向に傾いてしまい、光学性能が低下するのを抑制することができる。
【0040】
次に、カムフォロア200とカム溝121との間の付勢関係について説明する。
【0041】
図2(b)にも示すように、付勢腕部223は、ユニット状態で摺動側面212の形成する平面よりも壁面側に突出しており、さらに、巻き込む方向に付勢力を有している。
【0042】
そのため、カム溝121に本発明を実施のカムフォロア200を組み込むと、図3に示すように、付勢腕部223が対向する一方の壁面に対して押圧接触することになる。これにより、付勢腕部223と壁面とは互いに離れる方向の力を受ける。本実施例においては、像面側の壁面と押圧接触している。
【0043】
付勢腕部223が一方の壁面を押圧すると、カムフォロア200にその反力が発生し、反対側の摺動側面212がカム溝121の他方の壁面に押圧接触する。これにより、摺動側面212と壁面とは押し付けあう方向の力を受ける。
【0044】
これらの押圧接触により、カムフォロア本体210とカム溝121との間に生じるガタつきを防止することができる。
【0045】
なお、上述した実施例においては、カムフォロア200から突出した付勢腕部223が、カム溝121のうち、像面側の壁面と押圧接触していた。しかし、これを被写体側の壁面と押圧接触するように構成することも可能である。その場合、壁面からの反力により、カムフォロア本体210の像面側の摺動側面212が対向する壁面に押圧接触され、それによりガタの発生を抑制することができる。
【0046】
また、上述した実施例においては、レンズ鏡筒100の光軸側から見て、固定筒110、カム筒120の順番で構成されていた。これをカム筒120、固定筒110の順番として構成することも可能である。その場合、本発明を実施のカムフォロア200は、矩形形状をした上段部が固定筒110の直進案内溝111と係合し、そこでガタの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
100 レンズ鏡筒、110 固定筒、111 直進案内溝、120 カム筒、121 カム溝、130 直進筒、140 フォーカス操作リング、151 1群移動枠、152 2群移動枠、200 カムフォロア、210 カムフォロア本体、211 切り欠き部、212 摺動側面、220 コイルバネ、221 円環部、222 係止腕部、223 付勢腕部、230 ビス
図1
図2
図3