【解決手段】合成樹脂で構成されたコア61aおよびコア状に形成されたクラッド61bを有する光ファイバ部61と、光ファイバ部のクラッド上に形成された第1の積層部62aと、第1の積層部の上に形成された第2の積層部62bと、を備え、第1の積層部の弾性率は、第2の積層部の弾性率よりも小さく、かつ、第1の積層部と光ファイバ部との間の密着強度は、第1の積層部と第2の積層部との間の密着強度よりも小さい。
試料長300mmを長手方向に等間隔で10か所切断した場合の径方向の断面において、7か所以上が、前記複数本の光ファイバケーブル間の距離が、当該複数本の金属ケーブル間の距離よりも小さいことを特徴とする、請求項7または8に記載の複合ケーブル。
前記複数本の光ファイバケーブルおよび前記複数本の金属ケーブルからなるケーブル群の中心と、ケーブル全体の中心とが同軸上にあることを特徴とする、請求項7ないし10のいずれかに記載の複合ケーブル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、光ファイバ部と、この光ファイバ部の周りにケブラー(登録商標)等の高強度繊維が配置された補強層と、この補強層を一体化して被覆する被覆層とで構成された光ファイバケーブルが開示されている。このような構成においては、例えば被覆層に対して、光ファイバケーブルに長手方向の引っ張り応力が加えられた場合であっても、補強層により、光ファイバ部の周辺を均一に保護しながらケーブルの張力を支持し、被覆層や光ファイバ部の伸長を抑制することができる。しかし、高信頼性を得るために十分に強い補強層を配置すると柔軟性が低下してしまう一方、柔軟性を確保するために補強層の強度や量を制限すると、高い信頼性を確保するのが難しい。つまり、柔軟性と耐久性とを両立することが難しかった。
【0005】
また、特許文献2には、撚り合わされた一対の光ファイバ部と、この光ファイバ部に対し介在層を介して巻回された緩衝層と、この緩衝層の外周に設けられた保護層を備える光ファイバケーブルが開示されている。このような構成においては、光ファイバ部は撚り合わせにより、長手方向の断面形状が変化する状態であり、外観に凹凸が形成されている。光ファイバケーブル長手方向の引張り応力が加えられたときには、光ファイバ部の長手方向における凹凸によって緩衝層との間に摩擦が大きく発生し、緩衝層は光ファイバ部に対して強い引張り応力を与える結果となる。光ファイバ部は、この本来意図しない張り応力によるストレスよって内部のコアが脆化し、伝送特性が低下してしまい、光ファイバケーブルとしての信頼性が低下してしまう虞がある。
【0006】
さらには、上述した特許文献1の光ファイバ部は石英で構成され、特許文献2の光ファイバ部はPOFで構成されている。POFは石英にくらべ柔軟性に富むが、同時に、それ自体の機械的強度が石英より小さいため、被覆層を介した外部からの機械的ストレスの影響を受けやすくなり、コアの濁化による伝送特性の低下などが生じることがあることを見出した。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、柔軟性および信頼性に優れた光ファイバケーブルを提供する。および、この光ファイバケーブルを備えた複合ケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る光ファイバケーブルは、合成樹脂で構成されたコアおよびコア状に形成されたクラッドを有する光ファイバ部と、光ファイバ部の前記クラッド上に形成された第1の積層部と、第1の積層部の上に形成された第2の積層部と、を備え、第1の積層部の弾性率は、第2の積層部の弾性率よりも小さく、かつ、第1の積層部と光ファイバ部との間の密着強度は、第1の積層部と第2の積層部との間の密着強度よりも小さく、第1の積層部から光ファイバ部を引き抜く際の力が0.1N以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【0009】
上記の構成によれば、光ファイバ部の外層に積層された第1の積層部の弾性率は、第2の積層部の弾性率よりも小さいため、光ファイバケーブルに長手方向の引張り応力が加えられた場合であっても、第2の積層部による伸長によって光ファイバケーブル全体の柔軟性を確保できる。また、第2の積層部が伸長したとしても、第1の積層部が光ファイバ部に対する変形を抑制し、光ファイバ部の伸長が抑制される。これにより、光ファイバケーブルに対するさらなる機械的なストレスに対しても、光ファイバ部の脆化が抑制され、長期にわたり伝送特性を良好に維持することができ、光ファイバケーブルの耐久性・信頼性が向上する。
【0010】
また、第1の積層部と光ファイバ部との間の密着強度は、第1の積層部と第2の積層部との間の密着強度よりも小さいため、上記の状態からさらに光ファイバケーブルに長手方向の引張り応力が加えられ、第2の積層部がさらに伸長し、第1の積層部の変形だけでは吸収しきれない状態となった場合であっても、第1の積層部と光ファイバ部との間において、微視的な滑りが発生し、光ファイバ部にストレスをかけることがない。したがって、光ファイバケーブルに対する引張り応力がさらに大きくなった場合であっても、光ファイバ部の脆化の抑制を維持でき、長期にわたり伝送特性を良好に維持することができ、これにより、光ファイバケーブルの耐久性・信頼性が向上する。
【0011】
以上のように、上記に記載の光ファイバケーブルは、外側に形成された第2の積層部と光ファイバ部との間に、弾性率が第2の積層部よりも小さな第1の積層部が設けられ、かつ、光ファイバ部と第1の積層部との間の密着強度は、この第1の積層部と第2の積層部との間の密着強度より小さいとの構成を含む。これにより、光ファイバケーブルの第2の積層部が伸長するようなストレスが加わった場合であっても、光ファイバ部に対して強い引っ張り応力を与えることなく、また、柔軟性を確保するために補強層の強度や量を制限したり、あるいは、補強層を配置しない場合であっても、極めて高い信頼性を有する光ファイバケーブルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(光ファイバケーブルの構造)
以下、本開示の一側面に係る光ファイバケーブルの構造について、図を参照しつつ説明する。但し、本開示の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。尚、以下の説明及び図において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態である光ファイバケーブル60を説明する図である。
図1(a)は光ファイバケーブル60の模式的な断面を示す図であり、
図1(b)は光ファイバケーブルの模式的な鳥瞰図である。同軸中心には、光ファイバ部61が配されている。光ファイバ部61は2層構造であり、光を伝搬する媒体であるコア61aを内層とし、伝搬する光をコアに閉じ込めるように機能するクラッド61bを外層とする。コア61aは高屈折率、高透明性、高強度等の特性を有するプラスチック(合成樹脂)で構成され、合成樹脂としては、例えば、完全フッ素化ポリマー、ポリカーボネート、ポリスチレン、含重水素化ポリマー等で構成される。一方、クラッド61bは低屈折率をもつフッ素系ポリマーで構成される。
【0015】
光ファイバ部61と同軸となるように被覆する外被層62は、平滑層62aと保護層62bとからなる。平滑層62aは、光ファイバ部61のコア61a上に、例えばテープ状のものを巻回することにより形成してもよく、またシート状のものを縦添えにして形成してもよい。一例としては、平滑層62aはテープ状の材料を巻き回して形成される。また、平滑層62aは、コア61aと接して設けられている。平滑層62aは、例えば、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)等の合成樹脂で構成される。テープ状の材料としては、ePTFEが好ましいが、これに限定されず、かつクッション性および滑り性を兼ね備えた材料を使用できる。以下、緩衝層にePTFEを用いた場合を例に説明する。
【0016】
また、上記の平滑層62aの外層には、光ファイバ部61および緩衝層62aと同軸になるように保護層62bが形成される。保護層62bは、フッ素樹脂や、ポリエチレン、シリコン変性ポリウレタン、シリコン変性ポリスチレン、シリコン等で構成され、例えばフッ素樹脂の溶融押出し被覆により形成される。溶融成形しうるフッ素樹脂としてはエチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、パーフロロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)、パーフロロアルコキシアルカンポリマー(PFA)、ポリエチレン、シリコン変性ポリウレタン、シリコン変性ポリスチレン、シリコン等が好ましい。特に比較的低温で成形可能なETFEは保護層62bを溶融成形する際の光ファイバ部61への影響を少なくすることができるため好ましい。また、平滑層62aは、光ファイバ部61に対し面接触している。
【0017】
図2は上記の実施形態にかかる光ファイバケーブルに対し、引張り応力が加えられた際の光ファイバ部61、平滑層62aおよび保護層62bの関係を示す概念図である。同図(a)は、光ファイバケーブルの初期状態、同図(b)は光ファイバケーブルに引張り応力がかかり、緩衝層および保護層の形状変化が起き始めた状態、同図(c)は、さらに引張り応力が加わり、光ファイバ部と緩衝層との間に滑りが生じた状態を示す。同図(a)の状態から引張り応力が加わると、平滑層62aが光ファイバ部61に密着した状態で保護層62bとともに長手方向に変形し始める。上記の構成によれば、平滑層62aの弾性率は保護層62bの弾性率よりも小さいため、保護層62bが長手方向に伸長することにより平滑層62aも併せて伸長するものの、光ファイバ部61の伸長は回避される。すなわち、保護層62bの伸長によっても、平滑層62aの内周面の長手方向の長さは、光ファイバ部61の初期状態の長手方向の長さを維持した状態であり、外周側に向かうにつれて保護層62bに密着した状態で伸長する。一定の引張り応力まで同図(b)の状態で伸長された後、さらに大きな引張り応力が加わった場合、平滑層62aと光ファイバ部61との間の密着強度は、平滑層62aと保護層62bとの間の密着強度よりも小さいため、平滑層62aの外周面と保護層62bの内周面は密着した状態であるのに対し、平滑層62aの内周面と光ファイバ部61の外周面の間では滑りが発生する。この滑りにより、さらなる引張り応力によっても保護層62bおよび平滑層62aは伸長するものの光ファイバ部61には影響がない。なお、上記の弾性率とは、変形のしやすさを示す材料物性値であり、JIS規格JIS K7127(引張弾性率測定方法)で測定する。また、上記の密着強度はJISC 3003(ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法)で測定する。
【0018】
以上のように、本実施形態の光ファイバケーブル60によれば、頻度の高い小さなストレスに対しては、弾性率の関係から平滑層62aによる弾性変形で対応することで柔軟性および耐久性を確保し、一定以上のストレスに対しては、密着強度の関係から光ファイバ部61と平滑層62aとの間の滑りで対応し、柔軟性および耐久性を確保する。これにより、光ファイバケーブルの信頼性を向上できる。
【0019】
また、平滑層62aは光ファイバ部61に対し、面接触しているため、光ファイバ部61に線状の部材が線接触している場合と比較し、光ファイバ部61と平滑層62aの接触面積が大きくなり、光ファイバ部61に局所的なダメージが入ることがなく、耐久性が低下することを回避できる。
【0020】
また、
図3は第2実施例を示す概念図である。同図に示すように、同図(a)と比較し、同図(b)の平滑層62aの径方向の厚みは、大きく構成されている。この構成により、同図(b)の光ファイバケーブルは、同図(a)の光ファイバケーブルと比較し、引張り応力に対する平滑層62aの変形によって伸長がより吸収され、耐久性をさらに向上させることができる。
【0021】
また、
図4は第3実施例を示す概念図である。同図に示すように、同図(a)と比較し、同図(b)の平滑層62aの径方向の厚みは、コア61aの径方向の厚みよりも大きく構成されている。この構成により、同図(b)の光ファイバケーブルは、同図(a)の光ファイバケーブルと比較し、コア61aの表面積が小さくなり、また平滑層62aの変形による伸長がより吸収されるため、耐久性をさらに向上させることができる。
【0022】
図5は、光ファイバケーブル60を用いた複合ケーブル100の模式的な断面図である。同図に示すように、複合ケーブル100は、1対の光ファイバケーブル60、60と、1対の金属ケーブル70、70との計4本のケーブルが長手方向(同図の奥行き方向)に撚り合わされており、1対の光ファイバケーブル60、60のそれそれぞれの中心を結ぶ線と一対の金属ケーブル70、70のそれぞれの中心を結ぶ線とが直交するように配置されている。一対の金属ケーブル70はそれぞれ、導体71a、及び導体被覆71bから構成される。例えば、導体71aは銅めっきタフピッチ軟銅で構成され、導体被覆71bは多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が好ましいが、誘電率が2.6以下の材料であればよい。金属ケーブル70の径方向の断面の外径は、光ファイバケーブルと同じ外径で構成されている。また、1対の光ファイバケーブル60、60と、1対の金属ケーブル70、70との計4本のケーブルは、それぞれ同じ外径を有しているため、2本で撚り合わされた場合と比較して、外接する円の形状が長手方向において変化が小さく構成されている。
【0023】
また、これらの1対の光ファイバケーブル60、60および1対の金属ケーブル70、70の外周には、これらのケーブル60、60、70、70と接するように、複合外被層75が設けられている。この複合外被層75は、複合平滑層76aと複合保護層76bとからなる。複合平滑層76aは、光ファイバ部61のコア61a上に、例えばテープ状のものを巻回することにより形成してもよく、またシート状のものを縦添えにして形成してもよい。一例としては、複合平滑層76aはテープ状の材料を巻き回して形成される。複合平滑層76aは、例えば、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)等の合成樹脂で構成される。テープ状の材料としては、ePTFEが好ましいが、これに限定されず、かつクッション性および滑り性を兼ね備えた材料を使用できる。
【0024】
また、上記の複合平滑層76aの外層には、複合保護層76bが形成される。複合保護層76bは、フッ素樹脂や、ポリエチレン、シリコン変性ポリウレタン、シリコン変性ポリスチレン、シリコン等で構成され、例えばフッ素樹脂の溶融押出し被覆により形成される。溶融成形しうるフッ素樹脂としてはエチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、パーフロロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)、パーフロロアルコキシアルカンポリマー(PFA)、ポリエチレン、シリコン変性ポリウレタン、シリコン変性ポリスチレン、シリコン、塩化ビニル等でもよい。
【0025】
また、複合平滑層76aは、複合保護層76bの弾性率よりも小さい材料で構成されている。また、複合平滑層76aとケーブル60、60、70、70との密着強度は、複合平滑層76aと複合保護層76bとの密着強度よりも小さくなるように構成されている。
【0026】
以上の構成により、複合ケーブル100に引張り応力が加えられた場合であっても、
図2で示した原理に基づき、頻度の高い小さなストレスに対しては、弾性率の関係から複合平滑層76aによる弾性変形で対応することで柔軟性および耐久性を確保し、一定以上のストレスに対しては、密着強度の関係から、ケーブル60、60、70、70と複合平滑層76aとの間に発生する滑りによって、柔軟性および耐久性を確保する。これにより、複合ケーブル100の信頼性を向上できる。
【0027】
また、
図6は1対の光ファイバケーブル60、60および1対の金属ケーブル70、70の互いの距離の違いによる構成を示す概念図である。同図に示すように、同図(a)と比較し、同図(b)の1対の光ファイバケーブル60、60間の距離は、1対の金属ケーブル70、70間の距離よりも短い。この構成により、同図(b)の光ファイバケーブル60、60は、同図(a)の光ファイバケーブル60、60と比較し、複合ケーブル100の中心軸により近づいた状態で配置されている。これにより、屈曲、摺動、捻回等の可動に伴い、複合ケーブル100が曲げられた状態で形状変化としても、複合ケーブル100の中心軸から光ファイバケーブル60、60までの距離の変動をより抑えることができ、また光ファイバケーブル60、60の変形による伸長をより抑えることができるため、光ファイバケーブル60、60ひいては複合ケーブル100の耐久性をさらに向上させることができる。このことは、
図7に示すような光ファイバケーブル60および金属ケーブル70のそれぞれの径方向の断面における外径が異なる場合でも同様である。
【0029】
(光ファイバケーブルの構造)
以下、本開示の一側面に係る光ファイバケーブルの構造について、図を参照しつつ説明する。但し、本開示の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。尚、以下の説明及び図において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
図8は、本発明の一実施形態である光ファイバケーブル1を説明する図である。
図8(a)は光ファイバケーブル1の模式的な断面を示す図であり、
図8(b)は光ファイバケーブルの模式的な鳥瞰図である。同軸中心には、光ファイバ11が配されている。光ファイバ11は2層構造であり、光を伝搬する媒体であるコア11aを内層とし、伝搬する光をコアに閉じ込めるように機能するクラッド11bを外層とする。コア11aは高屈折率、高透明性、高強度等の特性を有するプラスチック(合成樹脂)や、石英で構成され、合成樹脂としては、例えば、完全フッ素化ポリマー、ポリカーボネート、ポリスチレン、含重水素化ポリマー等で構成される。一方、クラッド11bは低屈折率をもつフッ素系ポリマーで構成される。
【0031】
光ファイバ11のコア11aをプラスチックで構成した場合には、石英ガラスよりコア径を太くすることができ、又、曲げに強くなる。本実施形態の光ファイバ11では、例えばクラッド層の外径が0.5mmであるが、本発明の実施に当たってはその他の組み合わせでも良いことは当然である。
【0032】
一方、光ファイバ11は適度な柔軟性を有する。光ファイバ11はコア11aが太くクラッド11bは薄いことから、主にコア11aの柔軟性を考慮すればよい。
【0033】
光ファイバ11を同軸となるように被覆する外被層12は、緩衝層12aと保護層12bとからなる。光ファイバ11のクラッド11bに接して緩衝層12aが同軸となるように設けられる。緩衝層12aは、例えば、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)や発泡パーフロロアルコキシアルカンポリマー(PFA)等の合成樹脂や、芳香族ポリアミド系樹脂で構成された繊維を製織し、表面に滑り性を持たせるように表面改質したもので構成される。一例としては、緩衝層12aはテープ状の材料を巻き回して形成される。テープ状の材料としては、ePTFEが好ましいが、これに限定されず、かつクッション性および滑り性を兼ね備えた材料を使用できる。例えば、緩衝層12aの外周径は、プラスチック光ファイバ11の口径0.5mmに対して、0.2mmの厚さのePTFEテープを2ラップすることにより、最大外径が0.9mmとなる。以下、緩衝層にePTFEを用いた場合を例に説明する。
【0034】
緩衝層12aを構成するePTFEは、スポンジ状によるクッション機能により、光ファイバケーブル1に対する外力を吸収して、光ファイバ11を保護する。更に、光ファイバ11のクラッド11bと接する緩衝層12は、滑り性の高い材料で構成しているため、クラッド11bとの間に滑り易さを生む。長手方向の滑り易さは光ファイバケーブル1の曲げによる光ファイバ11への影響を少なくし、光ファイバ11の破損等を防止する。同様に軸方向の滑り易さは光ファイバケーブル1に対する捻じれや外圧による光ファイバ11への影響を少なくして、光ファイバ11を保護する。
【0035】
また、上記の緩衝層12の外層には、光ファイバ11と緩衝層12に同軸になるように保護層12bが形成される。保護層12bは、フッ素樹脂や、ポリエチレン、シリコン変性ポリウレタン、シリコン変性ポリスチレン、シリコン等で構成され、例えばフッ素樹脂の溶融押出し被覆により形成される。溶融成形しうるフッ素樹脂としてはエチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、パーフロロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)、パーフロロアルコキシアルカンポリマー(PFA)、ポリエチレン、シリコン変性ポリウレタン、シリコン変性ポリスチレン、シリコン等が好ましい。特に比較的低温で成形可能なETFEは保護層12bを溶融成形する際の光ファイバ11への影響を少なくすることができるため好ましい。
【0036】
上記の保護層12bは、光ファイバケーブル1に対する外力から光ファイバ11を保護する機能を有する。又、保護層12bは柔軟性に富む光ファイバ11の過度の曲がりを防止し、過度の曲りによる光ファイバ11の破損を防止する。更に、保護層12bは、光ファイバケーブル1が配線しやすいように光ファイバケーブル1に適度な形状安定性を与える。このような構成により、屈曲、摺動、または捻回動作が求められる可動部に配線した際、耐久性が向上する。すなわち、ケーブルが湾曲状態において繰り返し屈曲等の動作が行われると、ケーブルの配線形状は動作によって変化する。このような変化に対し、従来技術のようなコアとクラッドのみで構成される光ファイバケーブルでは、繰り返しの屈曲等の動作によりケーブルが暴れ、配線の形状安定性を欠く。これに対し、上述した緩衝層および保護層を備える光ファイバケーブル1は、適度な柔軟性を保ちつつ、繰り返しの屈曲等の動作によってもケーブルが暴れることがなく、形状安定性を備え、ひいては繰り返しの屈曲等の動作に対する耐久性が向上する。例えば、保護層12bの厚さは、プラスチック光ファイバ11の口径0.5mmのとき、0.15mmである。
【0037】
(光ファイバケーブルの特性を示す試験)
本願発明に係る光ファイバケーブルは、光ファイバ11を取り巻く緩衝層12aと保護層12bとからなる外被層12が外圧を低減するクッションとなる特徴を有する。クッションとなる外被層12は、屈曲による内外輪差から生じる内側の圧縮により、光ファイバ11に負荷がかかって光ファイバ11が脆化することを防止する。これらにより、耐久性を向上させる。この特性を示す試験として、引き抜き力を測定する試験1と、曲げ及び捻じれを測定する試験2を行った。
【0038】
図9は、引き抜き力を測定する試験1を説明する図である。試験に用いられる光ファイバケーブルの試料長は長さ300mmであり、該試料の一端側に20mm以上の余長をつける。該余長部においては光ファイバ(コアおよびクラッド)11がむき出しになるように外被層12をストリップした先端加工を施す。試料を水平面上に載置し、試料の他端側を直径が20mmのキャプスタンまたは丸棒に一周させた状態で光ファイバケーブルが潰れないように、光ファイバケーブルの外被層と、キャプスタンまたは丸棒の表面とを固定する。前記固定は接着剤を用いてもよく、または丸棒等に光ファイバケーブルを巻きつけた状態でその上からテープなどで形状を固定することによって行ってもよい。このとき、外被を介して過度の圧力が光ファイバに加わらないように調整する。次に
図9(b)に示すように、余長部においてむき出しになった光ファイバ11をクランプする(この状態を初期位置とする)。その後、プッシュプルゲージを用いて、光ファイバケーブルの一端側においてむき出しになった光ファイバ11を引き抜き治具に固定して引っ張ることで光ファイバを引き抜き、初期位置から100mm移動させるまでにかかった負荷の最大値を引き抜き力として測定する。
【0039】
図10は、曲げ及び捻じれを測定する試験2を説明する図である。光ファイバケーブル長300mmの試料を取り、一端を固定部21に取り付け、他端を可動部22に取り付ける。
図10(a)に示すように試料の光ファイバケーブルを水平面の第1方向に置き、静かに、水平面の第1方向と直交する第2方向に可動部を移動させる、固定部21と可動部21に取り付けられた光ファイバケーブル試料が50mmの距離となるように可動部を移動させ、光ファイバケーブル試料をU字型に湾曲させる。U字型となった対向する光ファイバケーブル試料の第2方向の最大離間距離D1を測定する。最大離間距離D1は曲げの程度を示すこととなる。
【0040】
図10(b)は、固定部21と可動部22の方向から第1方向に光ファイバケーブル試料を見たときを示す図である。光ファイバケーブル試料全体は、水平面に接した状態である。次に、
図10(c)に示すように、可動部22を取り付けられた光ファイバケーブル試料の周方向に時計回りに90°回転させ、90°回転した状態での、光ファイバケーブル試料の水平面からの浮き上がりの最大高さD2を測定する。最大高さD2は、光ファイバケーブルの捻じれの度合いを示すこととなる。
【0041】
様々な光ファイバケーブルの試料を用いての、試験1と試験2の結果を以下に示す。
【表1】
(注)
POF:Plastic Optical Fiber
ePTFE:多孔質ポリテトラフルオロエチレン
ケブラ―(登録商標)
ETFE:エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー
発泡PFA:70%の発泡率で発泡させたパーフロロアルコキシアルカンポリマー
表面改質繊維(製織):芳香族ポリアミド系樹脂で構成された繊維を製織し、表面に滑り性を持たせるようにフッ素樹脂で表面改質したもの
【0042】
各試料の詳細は以下のとおりである。
(1)光ファイバ
‐POF
コア外径:0.4mm
クラッド外径0.1mm
‐石英
コア外径:0.05mm
クラッド外径:0.25mm
(2)緩衝層
肉厚:0.2mm
(3)保護層
肉厚:0.15mm
【0043】
上述の試料とした各光ファイバケーブルについて、耐久性評価試験として、摺動試験機による摺動性試験を行った。ただし、摺動試験での各光ファイバケーブルの長さは1.0mである。
【0044】
図11(a)は、ケーブル摺動試験装置40を示す図である。ケーブル摺動試験装置40は、固定部41と、可動部42と、第1及び第2ケーブル固定部43及び44とを有する。固定部41は、建物の壁面などに固定部材により固定される。可動部42は、不図示の駆動装置により長手方向に移動する。第1ケーブル固定部43は、試料ケーブル45の一端を固定部に固定し、第2ケーブル固定部44は、試料ケーブル45の他端を可動部42に固定する。
図11(a)の矢印2Rは、試料ケーブル45の曲げ径を示す。本試験では、曲げ半径は50mmとした。すなわち、本試験における曲げ径2Rは100mmである。試料光ファイバケーブル45は、試験対象の光ファイバケーブルであり、試料光ファイバケーブル45の長さは1.0mである。
【0045】
図11(b)は、ケーブル摺動試験装置40の可動部42が最も移動した状態を示す図である。
図4(b)の矢印Sは可動ストロークを示す。本試験では、可動ストロークSは、200mmとした。また、摺動速度は、100回/分とした。5000万回摺動した後、光ファイバケーブルの合否を判定した。ここで合格/不合格の基準は、光源および光パワーメータを用いて、試験後の光パワーの損失を計測し、損失が−9dB以下であれば合格、測定不能または−9dBよりも大きな値になる時は不合格とした。以上の結果を下表に示す。
【0046】
耐久性評価試験内容を示す表
【表2】
【0047】
耐久性評価試験の結果、本発明に係る光ファイバケーブル1の特性は、次の三つの特性により規定される。
(1)試験1による光ファイバケーブルの引抜力は0.5N以下である。
(2)試験2による光ファイバケーブルの曲げの程度を示す最大離間距離(最大幅)D1は70〜80mmである。
(3)試験2による光ファイバケーブルの捻じれの度合いを示す最大高さD2は30mm以下である。
【0048】
(光ファイバケーブルを用いた複合ケーブル)
図12は、上述の一実施形態である光ファイバケーブル1を用いた複合ケーブル5を説明する図である。
図12(a)は複合ケーブル5の模式的な断面を示す図であり、
図12(b)は複合ケーブル5の模式的な鳥瞰図である。同軸中心には抗張線51が配される。抗張線は強化繊維、例えばケブラ―(登録商標)により構成される。
【0049】
抗張線51を挟んで対称に1対の光ファイバケーブル1が配置される。更に、1対の光ファイバケーブル1のそれそれぞれの中心を結ぶ線と抗張線51の中心で直交するように1対の導体線52が配置される。例えば、導体線52は、導体52a、導体被膜52b、及び導体被覆52cから構成される。例えば、導体52aと導体被膜52bの構成としては銅めっきタフピッチ軟銅である。導体被覆52cは多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が好ましいが、誘電率が2.6以下の材料であればよい。導体線52は光ファイバケーブルと撚り合されるため光ファイバの太さと同程度が好ましい。
【0050】
1対の光ファイバケーブル1と1対の導体線52は、抗張線41を中心に撚り合される。複数本を縒り合せることにより複合ケーブル全体の強度を増すことができる。縒り合された1対の光ファイバケーブル1と1対の導体線52と同軸となるようにジャケット53により被覆される。好ましくは、ジャケット53はエチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)により構成されるが、パーフロロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)、パーフロロアルコキシアルカンポリマー(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)塩化ビニル等でもよい。
【0051】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換、及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。