【実施例】
【0017】
以下本発明の一実施例による消防車について説明する。
図1は本実施例による消防車の(a)正面図、(b)上面図、及び(c)後方側側面図である。
【0018】
本実施例による消防車は、運転席を有するキャビン10と、ポンプ装置31、水槽32、圧縮空気泡消火装置(CAFS)33、機材収納部34、及びブーム装置40を搭載する荷台20とを備えている。
荷台20は、車輌の後方に配置される。キャビン10は車輌の前輪11に、荷台20は車輌の後輪21に位置する。
荷台20の両側部には、機材収納部34を配置している。機材収納部34は、シャッターなどの開閉扉を備えている。一対の機材収納部34の間には、前方から後方にかけて空間が形成され、この空間に、ポンプ装置31、水槽32、圧縮空気泡消火装置33、及びブーム装置40を配置している。荷台20の前方と後方とには、機材収納部34を設けることなく開放している。
【0019】
機材収納部34の後方部34aは、収納奥行き寸法を小さくし、後方部34aにおける一対の機材収納部34の間に形成される後方空間34bを、他の空間よりも広くしている。ブーム装置40に設けているバスケット42は、ブーム装置40の収納時には、一対の機材収納部34の間に形成される後方空間34bに配置される。なお、バスケット42は、キャビン10の上面より低い位置に配置している。バスケット42を、機材収納部34の上面又はキャビン10の上面より低い位置とすることで、バスケット42とともに、バスケット42を配置する第2ブーム45の収納時の高さを低くすることができる。
ポンプ装置31は、キャビン10と水槽32との間に配置している。ブーム装置40を構成するターンテーブル41は、水槽32より後方に配置している。
なお、ブーム装置40には、水槽32の消火用水又は圧縮空気泡消火液を流す流路管22を備え、バスケット42には、この流路管22に接続された放水銃(図示せず)を備えている。また、荷台20の下方には、4つのジャッキ23を備えている。
【0020】
図2は、機材収納部を取り外した状態における本実施例による消防車の正面図である。
ブーム装置40は、ターンテーブル41とともに旋回する旋回ポスト43と、旋回ポスト43に一端を接続した第1ブーム44と、第1ブーム44の他端に一端を接続した第2ブーム45とを備えている。
第1ブーム44の一端は、第1ブーム起伏軸44aによって旋回ポスト43に回動自在に取り付けている。第2ブーム45の一端は、第2ブーム起伏軸44bによって第1ブーム44の他端に回動自在に取り付けている。
旋回ポスト43には、第1油圧シリンダ47の一端を設けている。第1油圧シリンダ47の一端は、第1油圧シリンダ根元軸47aによって旋回ポスト43に回動自在に取り付けている。第1油圧シリンダ47の他端は、第1油圧シリンダ先端軸47bによって第1ブーム44に回動自在に取り付けている。
【0021】
第1ブーム44の他端には第1ブームリンク材49を有し、第2ブーム45の一端には第2ブームリンク材50を有している。
第1ブームリンク材49の一端は、第1ブームリンク軸49aによって第1ブーム44の他端に回動自在に取り付けている。
第2ブームリンク材50の一端は、第2ブームリンク軸50aによって第2ブーム45の一端に回動自在に取り付けている。
第1ブームリンク材49の他端、及び第2ブームリンク材50の他端は、第2油圧シリンダ根元軸48aによって第2油圧シリンダ48の一端に回動自在に取り付けている。第2油圧シリンダ48の他端は、第2油圧シリンダ先端軸48bによって第1ブーム44に回動自在に取り付けている。
バスケット42は、第2ブーム45の他端に、旋回接手46を介して取り付けている。旋回接手46は、バスケット回動軸45aによって第2ブーム45の他端に回動自在に取り付けている。
バスケット42及び旋回接手46は、鉄鋼材で形成される。鉄鋼材としては、例えば一般構造用圧延鋼材(SS400)を用いることができる。バスケット回動軸45aは、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。
旋回ポスト43は、ターンテーブル41とともに旋回動作する。第1ブーム44は、第1油圧シリンダ47によって水平面に対して80度まで起伏することができる。
【0022】
第1ブーム44の他端は、ブーム装置40の収納時には、荷台20上に位置し、キャビン10に至らない。第1ブーム44の他端をキャビン10上方に配置しないことで、ブーム装置40の収納時において、第1ブーム44を低く配置できると共に第2ブーム45も低く配置できる。
第2ブーム45は、第2油圧シリンダ48によって起伏でき、第2ブーム45の起伏角度は、水平面に対してマイナス65度からプラス75度の範囲である。
【0023】
水槽32は、その重心位置を、後輪21の車軸上としている。重量物である水槽32を後輪21の車軸上とすることで、車両の走行時だけでなくブーム装置40の使用時での安定性を高めることができる。なお、本実施例では、水槽32の重心位置を、後輪21の車軸上としているが、後輪21の車軸よりも前方としてもよい。
圧縮空気泡消火装置33は、キャビン10とポンプ装置31との間に配置している。キャビン10の下方に配置されるエンジンからPTOを介して動力を得るポンプ装置31を水槽32に近い位置に配置し、圧縮空気泡消火装置33をキャビン10とポンプ装置31との間に配置することで、伝達機構や水配管を必要最小限とすることができる。
【0024】
図3は、本実施例による消防車の旋回ポストと第1ブームとを示す部分構成図である。
図3(a)は本実施例による消防車の一部の構成を示す正面図、
図3(b)は第1ブームの左側面図、
図3(c)は第1ブームを起伏させた状態を示す正面図、
図3(d)は旋回ポストの左側面図、
図3(e)は旋回ポストの上面図、
図3(f)は
図3(a)のA−A断面図、
図3(g)は
図3(a)のB−B断面図、
図3(h)は
図3(a)のC−C断面図である。
【0025】
図3(a)及び
図3(c)に示すように、第1ブーム44は、第1油圧シリンダ47の伸縮動作によって第1ブーム起伏軸44aを回動支点として、起伏動作を行う。
図3(b)に示すように、第1ブーム44は、底面材44xと両側面材44yとで構成されている。第1ブーム44は、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。
【0026】
図3(d)及び
図3(e)に示すように、旋回ポスト43は、一対の側板43aと、一対の側板43aを接続する補強板43bとで構成され、一対の側板43aと補強板43bとは基台43cに接続している。旋回ポスト43は、基台43cによってターンテーブル41に接続される。旋回ポスト43は、鉄鋼材で形成される。鉄鋼材としては、例えば一般構造用圧延鋼材(SS400)を用いることができる。
【0027】
図3(f)に示すように、第1ブーム起伏軸44aは、一対の側板43aによって保持される。一対の側板43aの間における第1ブーム起伏軸44aの両端には、ブッシュ51aを設けている。ブッシュ51aの外周面には第1ブーム44の一端側を嵌合している。第1ブーム起伏軸44aは、ブッシュ51aの内周面で回動する。
第1ブーム起伏軸44aは、鉄鋼材で形成される。鉄鋼材としては、例えば一般構造用圧延鋼材(SS400)を用いることができる。ブッシュ51aは、内径摺動面にグリースを塗布する給油タイプが適しており、青銅鋳物系のうち、耐圧性、耐摩耗性、被削性、鋳造性に優れた鉛入りレッドブラスを用いることができる。
図3(g)に示すように、第1油圧シリンダ根元軸47aは、一対の側板43aによって保持される。第1油圧シリンダ根元軸47aは、鉄鋼材で形成される。鉄鋼材としては、例えば一般構造用圧延鋼材(SS400)を用いることができる。
図3(h)に示すように、第1油圧シリンダ先端軸47bは、第1ブーム44の取付片によって保持される。第1油圧シリンダ先端軸47bは、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。
【0028】
図4は、本実施例による消防車の第1ブームと第2ブームとを示す部分構成図である。
図4(a)は本実施例による消防車の一部の構成を示す正面図、
図4(b)は第2ブームを伸展させた状態を示す正面図、
図4(c)は
図4(a)のD−D断面図、
図4(d)は
図4(a)のE−E断面図、
図4(e)は
図4(a)のF−F断面図、
図4(f)は
図4(a)のG−G断面図、
図4(g)は
図4(a)のH−H断面図である。
【0029】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第2ブーム45は、第2油圧シリンダ48の伸縮動作によって第2ブーム起伏軸44bを回動支点として、第1ブーム44に対して伸展動作を行う。
第2ブーム45は、第1ブーム44と同様に、底面材と両側面材とで構成されている。第2ブーム45は、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。
また、第1ブームリンク材49及び第2ブームリンク軸50aは、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。
【0030】
図4(c)に示すように、第2ブーム起伏軸44bは、第2ブーム45の一対の側板によって保持される。一対の側板の間における第2ブーム起伏軸44bの両端には、ブッシュ51bを設けている。ブッシュ51bの外周には第1ブーム44の他端側を嵌合している。第2ブーム起伏軸44bは、ブッシュ51bの内周面で回動する。
第2ブーム起伏軸44bは、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。また、第2ブーム起伏軸44bは、少なくともブッシュ51bが摺動する面にアルマイト処理を施すことが好ましい。ブッシュ51bは、内径摺動面にグリースを塗布する給油タイプが適している。
特に、本実施例の第2ブーム起伏軸44bは、第2ブーム45の一対の側板によって保持され、第2ブーム起伏軸44bの両端にブッシュ51bを設けているため、第2ブーム起伏軸44bは撓みやすい。第2ブーム起伏軸44bに撓みが生じると、ブッシュ51bに対して均一に面圧が加わらなくなる場合があるが、少なくともブッシュ51bが摺動する面にアルマイト処理を施すことによって部分的なかじりを防止できる。
【0031】
図4(d)に示すように、第1ブームリンク軸49aは、第1ブーム44の両側に配置する一対の第1ブームリンク材49によって保持される。一対の第1ブームリンク材49の間における第1ブームリンク軸49aの両端には、ブッシュ51cを設けている。ブッシュ51cの外周には第1ブーム44の他端側を嵌合している。第1ブームリンク軸49aは、ブッシュ51cの内周面で回動する。
第1ブームリンク軸49aは、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。また、第1ブームリンク軸49aは、少なくともブッシュ51cが摺動する面をアルマイト処理することが好ましい。ブッシュ51cは、内径摺動面にグリースを塗布する給油タイプが適している。
特に、本実施例の第1ブームリンク軸49aは、第1ブーム44の両側に配置する一対の第1ブームリンク材49によって保持され、第1ブームリンク軸49aの両端にブッシュ51cを設けているため、第1ブームリンク軸49aは撓みやすい。第1ブームリンク軸49aに撓みが生じると、ブッシュ51cに対して均一に面圧が加わらなくなる場合があるが、少なくともブッシュ51cが摺動する面にアルマイト処理を施すことによって部分的なかじりを防止できる。
【0032】
図4(e)に示すように、第2ブームリンク軸50aは、第2ブーム45の両側に配置する一対の第2ブームリンク材50によって保持される。一対の第2ブームリンク材50の間における第2ブームリンク軸50aの両端には、ブッシュ51dを設けている。ブッシュ51dの外周には第2ブーム45の一端側を嵌合している。第2ブームリンク軸50aは、ブッシュ51dの内周面で回動する。
第2ブームリンク軸50aは、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。また、第2ブームリンク軸50aは、少なくともブッシュ51dが摺動する面にアルマイト処理を施すことが好ましい。ブッシュ51dは、内径摺動面にグリースを塗布する給油タイプが適している。
特に、本実施例の第2ブームリンク軸50aは、第2ブーム45の両側に配置する一対の第2ブームリンク材50によって保持され、第2ブームリンク軸50aの両端にブッシュ51dを設けているため、第2ブームリンク軸50aは撓みやすい。第2ブームリンク軸50aに撓みが生じると、ブッシュ51dに対して均一に面圧が加わらなくなる場合があるが、少なくともブッシュ51dが摺動する面にアルマイト処理を施すことによって部分的なかじりを防止できる。
【0033】
図4(f)に示すように、第2油圧シリンダ根元軸48aは、一対の第1ブームリンク材49によって保持される。一対の第1ブームリンク材49の間における第2油圧シリンダ根元軸48aの両端には、ブッシュ51eを設けている。ブッシュ51eの外周には一対の第2ブームリンク材50の他端側を嵌合している。第2油圧シリンダ根元軸48aは、ブッシュ51eの内周面で回動する。
第2油圧シリンダ根元軸48aは、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。また、第2油圧シリンダ根元軸48aは、少なくともブッシュ51eが摺動する面にアルマイト処理を施すことが好ましい。ブッシュ51eは、内径摺動面にグリースを塗布する給油タイプが適している。
特に、本実施例の第2油圧シリンダ根元軸48aは、一対の第1ブームリンク材49によって保持され、第2油圧シリンダ根元軸48aの両端にブッシュ51eを設けているため、第2油圧シリンダ根元軸48aは撓みやすい。第2油圧シリンダ根元軸48aに撓みが生じると、ブッシュ51eに対して均一に面圧が加わらなくなる場合があるが、少なくともブッシュ51eが摺動する面にアルマイト処理を施すことによって部分的なかじりを防止できる。
【0034】
図4(g)に示すように、第2油圧シリンダ先端軸48bは、第1ブーム44の取付片によって保持される。第2油圧シリンダ先端軸48bは、アルミニウム合金材で形成される。アルミニウム合金材としては、MgとSiを添加したAl−Mg−Si系合金で、熱処理型の耐食性合金を用いることができる。また、第2油圧シリンダ先端軸48bの摺動面には、アルマイト処理を施すことが好ましい。
【0035】
本実施例によれば、第1ブーム44及び第2ブーム45をアルミニウム合金材で形成することで軽量化を図り、旋回ポスト43を鉄鋼材で形成することで高所機能の十分な強度を確保し、バスケット42を鉄鋼材で形成することで耐火性や耐衝撃性に優れている。
また、本実施例によれば、第2ブーム起伏軸44b及びバスケット回動軸45aをアルミニウム合金材で形成することで軽量化を図り、第1ブーム起伏軸44aを鉄鋼材で形成することで高所機能の十分な強度を確保し、第1ブーム起伏軸44a及び旋回接手46を鉄鋼材で形成することで耐火性や耐衝撃性に優れている。
また、本実施例によれば、第1油圧シリンダ先端軸47bをアルミニウム合金材で形成することで軽量化を図り、第1油圧シリンダ根元軸47aを鉄鋼材で形成することで高所機能の十分な強度を確保できる。
また、本実施例によれば、第1ブームリンク材49、第2ブームリンク材50、第1ブームリンク軸49a、第2ブームリンク軸50a、第2油圧シリンダ根元軸48a、及び第2油圧シリンダ先端軸48bをアルミニウム合金材で形成することで更に軽量化を図ることができる。
また、本実施例によれば、第2ブーム起伏軸44bにアルマイト処理を施すことで、第2ブーム起伏軸44bの耐摩耗性を高めることで、更なる軽量化を図ることができる。
また、本実施例によれば、第1ブームリンク軸49a、第2ブームリンク軸50a、及び第2油圧シリンダ根元軸48aにアルマイト処理を施すことで、第1ブームリンク軸49a、第2ブームリンク軸50a、及び第2油圧シリンダ根元軸48aの耐摩耗性を高めることで、更なる軽量化を図ることができる。
また、本実施例によれば、荷台20の両側部に、機材収納部34を配置し、一対の機材収納部34の間で、荷台20の後方に、ターンテーブル41を配置しても、ブーム装置40の重量を大幅に軽減できることから、安定性にも優れている。
また、本実施例によれば、ブーム装置40の重量を大幅に軽減できることから、ポンプ装置31や水槽32を搭載し、更に4輪駆動機構を備えることができる。