特開2019-54720(P2019-54720A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イエフペ エネルジ ヌヴェルの特許一覧 ▶ マヴェル ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータの特許一覧

特開2019-54720内側管状スリーブを備えた固定子を有する電気機械
<>
  • 特開2019054720-内側管状スリーブを備えた固定子を有する電気機械 図000004
  • 特開2019054720-内側管状スリーブを備えた固定子を有する電気機械 図000005
  • 特開2019054720-内側管状スリーブを備えた固定子を有する電気機械 図000006
  • 特開2019054720-内側管状スリーブを備えた固定子を有する電気機械 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-54720(P2019-54720A)
(43)【公開日】2019年4月4日
(54)【発明の名称】内側管状スリーブを備えた固定子を有する電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/20 20060101AFI20190308BHJP
【FI】
   H02K1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-171980(P2018-171980)
(22)【出願日】2018年9月14日
(31)【優先権主張番号】1758618
(32)【優先日】2017年9月18日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(71)【出願人】
【識別番号】517357424
【氏名又は名称】マヴェル ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】MAVEL S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ボワソン、 ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーサン、 ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ミロサヴルジェヴィク、 ミザ
(72)【発明者】
【氏名】ル ヴェール、 ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ベットーニ、 ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ファブレ、 ルカ
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA05
5H601AA16
5H601AA23
5H601AA26
5H601BB11
5H601BB16
5H601CC01
5H601CC15
5H601CC19
5H601DD01
5H601DD11
5H601FF03
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB32
5H601GB33
5H601GB48
5H601GB49
5H601GE12
5H601JJ08
5H601JJ09
5H601KK13
(57)【要約】
【課題】電気機械の性能をさらに向上させることが望ましい。
【解決手段】本発明は、回転子と固定子とを有する電気機械であって、固定子は、固定子に沿って周方向に配置された複数の半径方向通路と、半径方向通路に収容された複数の磁束発生装置と、回転子を受け入れる内側管状スリーブとを有し、半径方向通路は、磁束発生装置と対向する複数の流体循環ギャラリーを有する電気機械に関する。管状スリーブの内面は平滑である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(10)と固定子(12)とを有する電気機械であって、
前記固定子(12)は、前記固定子(12)に沿って周方向に配置された複数の半径方向通路(28)と、前記半径方向通路(28)に収容された複数の磁束発生装置(34)と、前記回転子(10)を受け入れる内側管状スリーブ(24)とを有し、
前記半径方向通路(28)は、前記磁束発生装置(34)と対向する複数の流体循環ギャラリー(36)を有し、
前記管状スリーブ(24)の内面は、平滑であることを特徴とする電気機械。
【請求項2】
前記回転子(10)の外面は、平滑である、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
各半径方向通路(28)は、固定子歯(26)、前記固定子(20)の外縁部および前記管状スリーブ(24)によって画定される、請求項1または2のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項4】
前記管状スリーブ(24)は、前記固定子歯(26)と一体のインサート(38)であり、特に楔または円筒状の輪の形である、請求項3に記載の電気機械。
【請求項5】
各流体循環ギャラリー(36)は、前記固定子歯(26)、前記固定子(20)の前記外縁部および前記磁束発生装置(34)によって画定される、請求項3または4のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項6】
前記管状スリーブ(24)は、強磁性体で形成される、請求項1から5のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項7】
前記管状スリーブは、非磁性体で形成される、請求項1から5のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項8】
前記管状スリーブ(24)の厚さは、0.1mmから5mmの間の範囲である、請求項1から7のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項9】
各半径方向通路(28)は、2つの磁束発生装置(34)を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項10】
各磁束発生装置(34)は、いくつかの電気位相(A、B、C)に接続され、各半径方向通路(28)は、同じ電気位相(A、B、C)に接続された2つの磁束発生装置を有する、請求項9に記載の電気機械。
【請求項11】
各磁束発生装置(34)は、いくつかの電気位相(A、B、C)に接続され、各半径方向通路(28)の周方向分布では、同じ電気位相(A、B、C)に接続された2つの磁束発生装置を含む半径方向通路(28)と、2つの異なる電気位相(A、B、C)に接続された2つの磁束発生装置を含む半径方向通路(28)とが交互に配置される、請求項9に記載の電気機械。
【請求項12】
前記固定子(12)は、12個の半径方向通路を有し、前記磁束発生装置(34)は3つの電気位相(A、B、C)に接続され、各半径方向通路(28)内の前記磁束発生装置(34)の周方向分布では、
a)第1の半径方向通路(28)は、前記電気位相(A)に接続された2つの磁束発生装置(34)を有し、
b)第2の半径方向通路(28)は、第2の電気位相(B)に接続された磁束発生装置(34)と前記第1の電気位相(A)に接続された磁束発生装置とを有し、
c)第3の半径方向通路(28)は、前記第2の電気位相(B)に接続された2つの磁束発生装置(34)を有し、
d)第4の半径方向通路(28)は、第3の電気位相(C)に接続された磁束発生装置(34)と前記第2の電気位相(B)に接続された磁束発生装置(34)とを有し、
e)第5の半径方向通路(28)は、前記第3の電気位相(C)に接続された2つの磁束発生装置を有し、
f)第6の半径方向通路(28)は、前記第1の電気位相(A)に接続された磁束発生装置(28)と前記第3の電気位相(C)に接続された磁束発生装置(34)とを有し、
g)前記周方向分布による第7〜第12の半径方向通路(28)は、前記固定子(12)の中心に対して前記第1〜第6の半径方向通路(28)と対称である、請求項9に記載の電気機械。
【請求項13】
前記流体は、前記電気機械を冷却する液状流体またはガス状流体である、請求項1から12のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項14】
前記電気機械は、前記固定子(12)の外側部分において前記磁束発生装置(34)の近くに配置された冷却システムを有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項15】
各磁束発生装置(34)は、電機子巻線からなる、請求項1から14のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の電気機械と圧縮機とを有する電動圧縮機。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか1項に記載の電気機械とタービンとを有する電動タービン。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか1項に記載の電気機械と圧縮機とを有する電動ターボチャージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子と固定子とを有する回転電気機械に関する。
【0002】
一般的にこのような電気機械は、従来、互いに対して同軸に配置された固定子と回転子とを有する。
【0003】
回転子は、永久磁石または巻線などの複数の磁束発生装置を保持する回転子本体からなる。
【0004】
この回転子は、一般に、各磁石と回転子の各巻線との少なくとも一方によって発生する磁場と組み合わされて、回転子を回転駆動することを可能にする磁場を発生させる電気巻線(または電機子巻線)の形をした磁束発生装置を保持する固定子内に収容される。
【0005】
固定子は、従来、固定子の全周に沿って延びる複数の半径方向スロットを回転子の方向に有する。これらのスロットは、任意の公知の手段によってスロットに締結される電機子巻線を受け入れることを目的としている。
【背景技術】
【0006】
回転子と固定子との間に、場合によってはガス状流体または液状流体を通過させるように数センチメートルの長さになることもある、大きな空隙を有する種類の電気機械が知られている。
【0007】
この種の機械は、特に、低速で動作する大きな空隙を有し、その大きな空隙により流体を通過させるシンクロ消音装置に関する特許文献1、特許文献2または特許文献3によって知られている。
【0008】
しかしながら、この大きな空隙には、磁束が回転子と固定子との間通過するという欠点があり、これにより、機械の固有効率と同じ出力を有する固定子のサイズとに制限がある。
【0009】
上述の欠点を解消するために、固定子と回転子との間のエネルギー変換を改善することを可能にする小さな空隙を有し、かつ、流体が機械を通過することが可能な電気機械が開発されている。この種の機械は、特に特許文献4によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第2008−289333号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2013−169074号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2013−043745号明細書
【特許文献4】仏国特許発明第3041831号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この種の機械は、特に、固定子磁束を通過させることを目的とした歯によって各側に画定された固定子の半径方向通路が、回転子が挿入される管状スリーブを形成するため良好な機械である。しかしながら、特に、電気機械の鉄損、磁気損失および空力損失を抑制することによって、電気機械の性能をさらに向上させ、電気機械のコストが抑制されるようにその組立てを容易にすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的を実現するために、本発明は、回転子と固定子とを有する電気機械に関する。固定子は、いくつかの半径方向通路と、いくつかの磁束発生装置と、管状スリーブとを有する。
【0013】
本発明は、回転子と固定子とを有する電気機械であって、固定子は、固定子に沿って周方向に配置された複数の半径方向通路と、半径方向通路に収容された複数の磁束発生装置と、回転子を受け入れる内側管状スリーブとを有し、半径方向通路は、磁束発生装置と対向する複数の流体循環ギャラリーを有する電気機械に関する。管状スリーブの内面は平滑である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、回転子の外面は平滑である。
【0015】
一実施形態によれば、各半径方向通路は、固定子歯、固定子の外縁部および管状スリーブによって画定される。
【0016】
有利には、管状スリーブは、固定子歯と一体のインサートであり、特に楔または円筒状の輪の形である。
【0017】
一実施形態によれば、各流体循環ギャラリーは、固定子歯、固定子の外側縁部および磁束発生装置によって画定される。
【0018】
一実施形態によれば、管状スリーブは、強磁性体で形成される。
【0019】
あるいは、管状スリーブは、非磁性体で形成される。
【0020】
管状スリーブの厚さは、0.1mmから5mmの間の範囲であることが好ましい。
【0021】
一実施形態によれば、各半径方向通路は、2つの磁束発生装置を有する。
【0022】
有利には、各磁束発生装置は、いくつかの電気位相に接続され、各半径方向通路は、同じ電気位相に接続された2つの磁束発生装置を有する。
【0023】
変形例としては、各磁束発生装置は、いくつかの電気位相に接続され、各半径方向通路の周方向分布では、同じ電気位相に接続された2つの磁束発生装置を含む半径方向通路と、2つの異なる電気位相に接続された2つの磁束発生装置を含む半径方向通路とが交互に配置される。
【0024】
あるいは、固定子は、12個の半径方向通路を有し、磁束発生装置は、3つの電気位相に接続され、各半径方向通路内の磁束発生装置の周方向分布では、
a)第1の半径方向通路は、第1の電気位相に接続された2つの磁束発生装置を有し、
b)第2の半径方向通路は、第2の電気位相に接続された磁束発生装置と第1の電気位相に接続された磁束発生装置とを有し、
c)第3の半径方向通路は、第2の電気位相に接続された2つの磁束発生装置を有し、
d)第4の半径方向通路は、第3の電気位相に接続された磁束発生装置と第2の電気位相に接続された磁束発生装置とを有し、
e)第5の半径方向通路は、第3の電気位相に接続された2つの磁束発生装置を有し、
f)第6の半径方向通路は、第1の電気位相に接続された磁束発生装置と第3の電気位相に接続された磁束発生装置とを有し、
g)周方向分布による第7〜第12の半径方向通路は、固定子の中心に対して第1〜第6の半径方向通路と対称である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、流体は、電気機械を冷却する液状流体またはガス状流体である。
【0026】
有利には、この電気機械は、固定子の外側部分において磁束発生装置の近くに配置された冷却システムを有する。
【0027】
各磁束発生装置は、電機子巻線からなることが好ましい。
【0028】
さらに、本発明は、上記の特徴のいずれかによる電気機械と圧縮機とを有する電動圧縮機に関する。
【0029】
本発明は、上記の特徴のいずれかによる電気機械とタービンとを有する電動タービンにも関する。
【0030】
本発明は、上記の特徴のいずれかによる電気機械と圧縮機とを有する電動ターボチャージャーにさらに関する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、管状スリーブは、磁場の通過を推進し、したがって、磁気損失を制限するように強磁性体から作るか、あるいは逆に、歯同士の間の短絡を防止するように非磁性体から作ることができる。さらに、管状スリーブの内面(すなわち、回転子と向かい合う表面)は、空力損失を制限するように平滑である。さらに、管状スリーブは、固定子、特に固定子歯の機械強度に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態による電気機械を示す図である。
図2】本発明の第2の実施形態による電気機械を示す図である。
図3】本発明の第1の変形実施形態による磁束発生装置の周方向分布を示す図である。
図4】本発明の第2の変形実施形態による磁束発生装置の周方向分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、非制限的な例として、本発明の一実施形態による電気機械を概略的に示す。図1に示す回転電気機械、つまり、ここでの一例としての電動機は、取り付け時に、互いに同軸で嵌合する回転子10と固定子12とを備え、回転子は自由に回転可能である。
【0034】
この機械は、一例に過ぎないが、以下の説明では1極対同期機械である。
【0035】
この機械から、より多くの極対を有する任意の他の電気機械、巻線型回転子非同期機械および、かご形回転子非同期機械が除外されることはない。
【0036】
図1による機械の回転子は、それ自体は公知のように、好ましくは磁気を有する軸14を備え、軸14上に、多数の平坦な強磁性シート、強磁性塊状材料、磁石、または、これらの手段の組合せが配置され、回転子本体16を形成するように任意の公知の手段によって組み立てられる。図1の実施形態の場合、回転子本体16は、磁気軸と磁石とから構成される。
【0037】
この回転子は、複数の磁束発生装置、主に長さが回転子本体の長さに略等しい複数の永久磁石を保持する。
【0038】
固定子は、任意の公知の手段によって、管状固定子本体18を形成するように互いに接続された多数の平坦な強磁性シートを有する。
【0039】
この固定子本体は、内部に回転子が収容された管状スリーブ24(管状軸受とも呼ばれる)によって画定された中空の中央部22を有する。本発明によれば、管状スリーブ24は、歯を互いに連結することによって、または、インサートによって形成することができる。
【0040】
このようにして、回転子10の外周と固定子12の管状スリーブ24の内周との間に空隙Eが得られる。
【0041】
さらに、管状スリーブ24の内面は、平滑である。したがって、管状スリーブ24は、回転子10が回転する完全に平滑な円筒管を有することを可能にする。この平滑な表面は、高エンジン速度(100000rpm以上)で大きくなる恐れがある空力損失を抑制することが可能になる。
【0042】
本発明の一形態によれば、管状スリーブ24は強磁性体で形成することができる。この強磁性体で形成された管状スリーブ24を有する固定子12の構成は、高速で動作する際に顕著となることがある回転子の鉄損を全体的に軽減し、これらの鉄損を回転子から固定子に移すことを可能にする。固定子では、適切な冷却システム、特に、冷却用の空気流によって横断される固定子格子を有する機械によって、鉄損を除去することが一般的に容易である。
【0043】
あるいは、管状スリーブ24は、主に固定子の機械的補強と空力損失低減機能を実現する非磁性体で形成することができる。
【0044】
したがって、本発明による電気機械は、全体的な損失、より具体的には、回転子損失と、空隙における空力損失、つまり、一般に損失を除去するのが困難な回転子の近くにおける空力損失とを抑制しつつ、高い効率を示す。これによって、回転子の適度な温度における動作を維持し、一般的により温度の影響を受けやすいがより効率的な磁石を使用することが可能になり、それにより、電気機械の固有性能を向上させることが可能になる。
【0045】
固定子本体18は、多数の周方向に分散された固定子歯26(半径方向ウェブとも呼ばれる)によって管状スリーブ24と連結される。非制限的な例として、図1の固定子12は、互いに30°を成すように配置された12個の固定子歯を有する。固定子歯は、頂点が管状スリーブ24の方へ向けられた略三角形の半径方向通路28を確定する。これらの通路は、環状のヨーク20の下縁部30から軸受の外縁部32まで半径方向に延びており、固定子本体18全体に沿って軸線方向に広がっている。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、回転子10の外面は平滑である。したがって、空隙Eは、固定子12の内側部分および回転子10の外側部分上の完全に円筒状の2つの表面によって画定されている。この特徴は、特に高エンジン速度において大きくなる空力損失を抑制することを可能にする。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、機械から要求される電力に応じて、管状スリーブ24は、薄い磁気ブリッジが得られるように0.1mmから5mmの範囲の厚さを有することができる。したがって、回転子の誘導高調波を低減させる(鉄損を固定子に移す)ことが可能になる。
【0048】
図1に示されているように、固定子12は、半径方向通路28内、より厳密には環状のヨークの下縁部30の近傍に収容された、好ましくは液密であるかまたは防護物を備えた磁束発生装置34、例えば、電機子巻線を有する。本発明の一実施形態によれば、磁束発生装置34は、環状のヨーク20の下縁部30に接触するように配置することができる。この構成は、特に電気機械を冷却するか、あるいは圧縮システムまたは膨張システムに流体を供給するために、電気機械内を流体が通過することを可能にする大形の半径方向通路28を使用可能にする。したがって、流体が電気機械内を流れ、かつ回転子における損失が抑制されるために冷却システムが簡略化され、回転子をより容易に冷却することが可能になり、場合によって、電気機械内の対流および構造拡散によって損失を除去することが可能になるときには、回転子を冷却しないことも可能になる。
【0049】
したがって、長い固定子歯26は、各磁束発生装置34を管状スリーブ24の各磁束発生装置34から離れた位置に設けることを可能にする。さらに、これらの固定子歯26は、この回転子10から離れた位置に配置された磁束発生装置34(巻線)によって生成される磁束を回転子10の方へ案内することを可能にする。
【0050】
したがって、空隙Eの寸法は(数十分の1ミリメートル)減少し、それにより、電気機械の効率および性能を最適化することが可能になる。
【0051】
この場合、巻線同士の間に形成された軸線方向流体循環ギャラリー36、管状スリーブ24の外縁部および固定子歯26は、ガス状流体または液状流体などの流体を通過させることを可能にする、(閉鎖スロットを有する)固定子格子を形成する。
【0052】
これによって、機械のガス流または流体流と機械の冷却との少なくとも一方の組み込みが可能になり、したがって、空間要件と熱放出との少なくとも一方によって制約される所与のシステムにおける位置決めが最適化される。
【0053】
さらに、この電気機械の磁気特性は、特に空隙の大きい機械に関して、所与の性能レベルのためのアクティブマターの量を制限することを可能にし、それによって、回転子の質量、したがって慣性を抑制するのを可能にする。
【0054】
特性によれば、電気機械は、固定子12の外側部分において各磁束発生装置34の近くに配置された冷却システム(不図示)をさらに有してもよい。この第2の冷却システムは、電気機械内を通って流れる流体と同じ流体、または別の熱媒によって実現することができる。この特徴は、電気機械の性能を向上させるのを可能にする。したがって、特に電流密度を高くすることによって高出力密度電気機械を提供することが可能になる。
【0055】
図2は、本発明の第2の実施形態による電気機械を非制限的な例として概略的に示す。第2の実施形態による電気機械は、管状スリーブ24を除いて図1に示されている電気機械と同一である。図1に関連して説明した同一の要素については、詳しく説明はしない。
【0056】
この第2の実施形態の場合、管状スリーブ24は、固定子歯26上のインサート38から構成されている。インサート38は、楔または円筒状の輪によって構成してもよい。インサート38は、固定子歯26によって形成される固定子格子のスロットを閉鎖する。
【0057】
さらに、インサート38は、強磁性体で形成される。この強磁性体は、固定子歯26の強磁性体と同様でもよいし、固定子歯26の強磁性体と異なっていてもよい。
【0058】
このように各スロットを閉鎖すると、開放スロット構造の利点、特に、製造コストの削減を伴う巻線を巻くことの自動化、および閉鎖スロット構造の利点、具体的には、特に回転子における損失の低減による利益を得ることが可能になる。
【0059】
図1および図2に示されているように、各半径方向通路28は、2つの磁束発生装置34を有してもよい。磁束発生装置34は、回転子10を回転させるように回転磁場を発生させるために電圧インバータの電気位相に接続してもよい。
【0060】
図3は、図1の実施形態による電気機械に関する各磁束発生装置34と3つの電気位相A、B、Cとの間の第1の接続変形実施形態を非制限的な例として概略的に示す。図1に示されている電気機械に関連する同一の要素については、詳しく説明はしない。この構成に制限されることはなく、特に、図3の変形実施形態を図2の実施形態とともに実施して各磁束発生装置34の組立てを容易にすることができる。図3は、3つの電気位相A、B、Cとの接続に対応するが、電気機械は異なる数の電気位相、例えば、2つ、4つまたは6つ以上の電気位相に接続してもよい。
【0061】
図3の変形実施形態の場合、半径方向通路の2つの磁束発生装置34は、同じ電気位相A、BまたはCと接続される。したがって、半径方向通路28には、電気位相Aに接続された2つの半径方向通路、電気位相Bに接続された2つの磁束発生装置34、または、電気位相Cに接続された2つの磁束発生装置34がある。
【0062】
好ましくは、各磁束発生装置34と電気位相A、B、Cとの間の接続の周方向分布は、固定子12の中心に対して対称である。言い換えれば、電気位相A同士が中心対称によって互いに面しており、電気位相B同士が中心対称によって互いに面しており、電気位相C同士が中心対称によって互いに面している。
【0063】
図3の例の場合、12個の半径方向通路内の磁束発生装置34の周方向分布では、
−第1の半径方向通路28が、電気位相Aに接続された2つの磁束発生装置34を有し、
−第2の半径方向通路28が、電気位相Aに接続された2つの磁束発生装置34を有し、
−第3の半径方向通路28が、電気位相Bに接続された2つの磁束発生装置34を有し、
−第4の半径方向通路28が、電気位相Bに接続された2つの磁束発生装置34を有し、
−第5の半径方向通路28が、電気位相Cに接続された2つの磁束発生装置34を有し、
−第6の半径方向通路28が、電気位相Cに接続された2つの磁束発生装置34を有し、
−この周方向分布による第7〜第12の半径方向通路28は、固定子12の中心に関して第1〜第6の半径方向通路28と対称である(すなわち、第7の半径方向通路は第1の半径方向通路と同一であり、第8の半径方向通路は第2の半径方向通路と同一であり、…、第12の半径方向通路は第6の半径方向通路と同一である)。
【0064】
この変形実施形態は、12個の半径方向通路28を有する実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱せずに、任意の数、特に6つ、8つなどの半径方向通路に対しても適合することができる。
【0065】
図4は、図1の実施形態による電気機械に関する各磁束発生装置34と3つの電気位相A、B、Cと接続に関する第1の変形実施形態を非制限的な例として概略的に示す。図1に示されている電気機械に関連する同一の要素については、詳しく説明はしない。この構成に制限されることはなく、特に、図3の変形実施形態を図2の実施形態とともに実施して各磁束発生装置34の組立てを容易にすることができる。図4は、3つの電気位相A、B、Cとの接続に対応するが、電気機械は異なる数の電気位相、たとえば、2つ、4つ、または6つ以上の電気位相に接続してもよい。
【0066】
図4の変形実施形態の場合、各半径方向通路の周方向分布では、同じ電気位相に接続された2つの磁束発生装置34を含む半径方向通路28と、2つの異なる電気位相に接続された2つの磁束発生装置34を含む半径方向通路28が交互に配置されている。言い換えれば、半径方向通路28の第1の半分では、2つの磁束発生装置34が同じ電気位相に接続されており、半径方向通路28の第2の半分では、2つの磁束発生装置34が2つの異なる電気位相に接続されており、第2の半分に含まれる各半径方向通路28は、第1の半分に含まれる2つの半径方向通路28の間に配置されている。
【0067】
各磁束発生装置34と電気位相A、B、Cとの接続の周方向分布は、固定子12の中心に対して対称であってもよい。言い換えれば、電気位相A同士が中心対称によって互いに面しており、電気位相B同士が中心対称によって互いに面しており、電気位相C同士が中心対称によって互いに面している。
【0068】
図4の例の場合、12個の半径方向通路内の磁束発生装置34の周方向分布では、
−第1の半径方向通路28が、電気位相Aに接続された2つの磁束発生装置34を有し、
−第2の半径方向通路28が、電気位相Bに接続された磁束発生装置34と電気位相Aに接続された磁束発生装置34とを有し、
−第3の半径方向通路28が、電気位相Bに接続された2つの磁束発生装置34を有し、
−第4の半径方向通路28が、電気位相Cに接続された磁束発生装置34と電気位相Bに接続された磁束発生装置34とを有し、
−第5の半径方向通路28が、電気位相Cに接続された2つの磁束発生装置34を有し、
−第6の半径方向通路28が、電気位相Aに接続された磁束発生装置34と電気位相Cに接続された磁束発生装置34とを有し、
−この周方向分布による第7〜第12の半径方向通路28は、固定子12の中心に対して第1〜第6の半径方向通路28と対称である(すなわち、第7の半径方向通路は第1の半径方向通路と同一であり、第8の半径方向通路は第2の半径方向通路と同一であり、…、第12の半径方向通路は第6の半径方向通路と同一である)。
【0069】
この変形実施形態は、12個の半径方向通路28を有する実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱せずに、任意の数、特に6つ、8つなどの半径方向通路に対しても適合することができる。
【0070】
この周方向分布は、図3の実施形態よりも正弦波的な起磁力を得ることを可能にし、それにより、トルクリップルと、回転子および固定子における鉄損を抑制するのを可能にする。
【0071】
図1図4に示されているように、固定子格子を構成する各固定子歯26は、それを通って流れる流体の方向に対する影響最小限に抑えるように、その流体と略平行、つまり、固定子の長手軸に略平行な軸方向を有してもよい。
【0072】
本発明の図示されていない変形実施形態によれば、これらの固定子歯の軸線方向は、固定子の長手方向軸線に対して傾斜させることができる。
【0073】
さらに、この方向は、流体の動きを案内/開始または停止させることを目的としたらせん状などの複雑な空力学的形状であってもよい。
【0074】
このらせん形状は、各固定子歯と流体との間の接触面を大きくするのを可能にすることができる。
【0075】
この固定子歯のらせん形状は、傾斜角度に応じてトルクリップルを低減させることを可能にするため、磁気的な観点から適切な形状にすることができる。
【0076】
さらに、これらの固定子歯は、断面形状、涙滴形状、または飛行機の翼の形状など、格子内を通る流体の流れに関する圧力降下を最小限に抑える空力学的形状を有してもよい。
【0077】
この機械を任意の種類の流体に適合させ、かつ運送業、食品産業、石油産業、建築分野、および電気機械内において流体を移送または案内することを必要とする他の分野における任意の種類の使用に適合させるために、固定子および回転子に表面処理を施すことができる。
【0078】
電気機械の冷却に関しては、この電気機械構成では、固定子における非常に広い交換表面が形成され、同様の性能を有する従来の電気機械と比較して簡略化された冷却システムを使用することが可能になり、場合によっては、冷却がこのように最適化されるので固定子の電流密度を高くすることが可能になる。そればかりでなく、この構成は、
−受動冷却または固有冷却と、
−固定子ヨークの周辺に対する能動的または受動的な追加の冷却の少なくとも一方を有することを可能にする。
【0079】
この種の機械は、その幾何学的な形状に関する固有の利点により、機械を流体に横切らせることを可能にし、かつ固定子磁束発生装置を回転子磁束発生装置から半径方向に離して設けることを可能にするため、組み込みに関するわずかな修正を施すだけで既存のシステムに容易に組み込むことができる。
【0080】
本発明の例示的な実施形態によれば、電気機械は、電動圧縮機構成、電動タービン構成、または電動ターボチャージャー構成内の圧縮機とコンパクトに組み合わせることができる。このコンパクトさは、システムが非常に高いエンジン速度で動作しなければならず、できるだけ回転軸の長さを短くするとともに回転軸の質量/慣性を低減させる必要があるときに適切である。
【0081】
適用例
本発明による電気機械の特徴および利点は、以下の適用例を読んだときに明らかになるであろう。
【0082】
この例では、(従来技術AAによる)開放スロット型の電気機械と(図1の例による強磁性体で作られた平滑な管状スリーブを有する)本発明INVによる閉鎖スロット型の電気機械とを比較する。これら2つの電気機械は、スロットが開放されているかまたは閉鎖されているかを除いて同一である。どちらの電気機械もNO.20スチールシートで作られている。
【0083】
表1は、鉄損レベルに対するスロットを閉鎖することの影響を示す。この表において、Ipeakは、この位相における最大電流に相当し、Psiはデフラックス角度(deflux angle)に相当する。
【表1】
【0084】
全体的に、本発明による電気機械では、鉄損が減少することに留意されたい。回転子における鉄損が26%程度減少することがわかる。同時に、固定子における鉄損は4%の増加に過ぎない。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】
2019054720000001.pdf