【実施例】
【0012】
<フライアッシュの加熱改質システム>
図1は、フライアッシュ原粉中の未燃カーボンを燃焼させてフライアッシュFの加熱改質を行う加熱改質システム1の構成を示すブロック図である。
【0013】
フライアッシュFの加熱改質システム1は、投入されたフライアッシュ原粉を貯留するフライアッシュ貯留設備3と、貯留されているフライアッシュ原粉を加熱焼成装置2に定量的に供給する定量供給装置4と、フライアッシュ原粉が含有する未燃カーボンを誘導加熱により加熱する電力加熱装置8(加熱装置)と未燃カーボンを燃焼させる炭素高温酸化炉9(焼成装置)とを有しフライアッシュFの改質を行う加熱焼成装置2と、加熱焼成装置2で改質された高温のフライアッシュFを冷却する冷却装置5と、加熱、燃焼処理時に加熱焼成装置2が排出する排気ガスに含まれる塵等を除去する除塵装置6と、除塵装置6で塵等が除去された排気ガスを加熱改質システム1外に排出する排気装置7と、を備えている。
【0014】
<フライアッシュ貯留設備>
フライアッシュ貯留設備3は、予熱装置10が設けられた原料ホッパー3cを備えている。
原料ホッパー3cは、投入されたフライアッシュ原粉を一時貯留する。
【0015】
予熱装置10は、フライアッシュ貯留設備3に設けられた余熱循環パイプ11と、余熱循環パイプ11内に排気ガスを循環させる余熱循環ファン12を備えている。余熱循環パイプ11には、余熱循環パイプ11内に200℃以上の高温の排気ガスを供給するための余熱供給パイプ13と、排気ガスを除塵装置6へ排出するための排出パイプ14が連結されている。さらに、余熱供給パイプ13は、加熱焼成装置2を構成する炭素高温酸化炉9の排気ガス口9aに連結されている。
【0016】
これにより、炭素高温酸化炉9が排出する200℃以上の高温の排気ガスの一部が、余熱供給パイプ13を介して、余熱循環パイプ11内に供給されるようになっている。余熱循環ファン12は、余熱循環パイプ11内に供給された高温の排気ガスを、余熱循環パイプ11内に循環させる。これにより、原料ホッパー3c内に貯留されているフライアッシュ原粉は、余熱循環パイプ11内を循環する高温の排気ガスからの熱伝導により予熱される。
【0017】
排出パイプ14には、排気ガスの排気の実行/停止を切り替えるコントロール弁16が設けられている。コントロール弁16による排気の実行/停止の切り替え信号とする温度センサ15は、余熱循環パイプ11に設けられている。
原料ホッパー3cは、予熱されたフライアッシュ原粉を、重力落下により、下部の連結管3bの下端にある連結口3aを介して定量供給装置4に搬出する。
【0018】
<定量供給装置>
定量供給装置4は、円筒状で、軸心が略水平方向を向いている供給管17と、供給管17の軸心上に配置され軸回りに回転可能なシャフト18と、シャフト18に周設されシャフト18と共に回転することにより供給管17内部において予熱されたフライアッシュ原粉を搬送するスクリュー19と、シャフト18を軸回りに回転駆動させる駆動装置20とを備えている。駆動装置20は、電動モータ20gを備えており、電動モータ20gのスプロケットとシャフト18のスプロケットに張架されたリング状のチェーンを介してシャフト18に回転力を伝達する。
【0019】
定量供給装置4は、原料ホッパー3cから搬出された予熱されたフライアッシュ原粉を、流入口17bを介して供給管17の前段に供給する。供給管17の前段に供給された予熱されたフライアッシュ原粉は、供給管17内部においてシャフト18の軸回りに回転するスクリュー19により、供給管17の後方側に徐々に送り出される。そして、供給管17の後端にまで送り出された予熱されたフライアッシュ原粉は、流出口17aを介して、電力加熱装置8に供給される。
【0020】
<電力加熱装置>
電力加熱装置8は、軸心が略水平方向を向いた内部が中空の円筒状の加熱処理管21と、加熱処理管21の外周に巻き付けるように設けられ、加熱処理管21の前段から後段に向かって複数段設けられている誘導コイル22と、誘導コイル22に高周波の交流電流を出力する高周波誘導加熱電源(高周波インバータ)(図示せず)を備えている。
【0021】
電力加熱装置8に供給された予熱されたフライアッシュ原粉は、定量供給装置4から加熱処理管21に供給される後続の予熱されたフライアッシュ原粉に押され、加熱処理管21内を移動する。予熱されたフライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボンは、予熱されたフライアッシュ原粉が加熱処理管21内を移動する間に、誘導コイル22に誘起される交番磁界による誘導加熱により段階的に加熱される。すなわち、磁界に誘導されて磁性体金属である加熱処理管21に渦電流が流れ、これによって加熱処理管21の抵抗により熱を発生して誘導加熱が実現する。また、導電性を有する未燃カーボン自身も誘導加熱により加熱される。この段階的な加熱は、最終段階での加熱が発火温度(自燃温度)である600℃であればよく、例えば前段から順に200℃、400℃、及び600℃といった三段階とするなど、適宜の段階に設定されている。これにより、途中で発火(自燃)が始まり暴走することを防止しつつ、発火温度(自燃温度)である600℃付近まで加熱する。含有する未燃カーボンが加熱されたフライアッシュ原粉は、加熱処理管21の後段部まで移動した後、投入部30から炭素高温酸化炉9内に投入される。
【0022】
<炭素高温酸化炉>
炭素高温酸化炉9は、フライアッシュ原粉に含まれる加熱された未燃カーボンを燃焼させる。炭素高温酸化炉9は、軸心が略水平方向を向いた内部が中空の円筒状の窯である炉体26と、炉体26を軸心の回りに回転可能に支持する炉体支持部27と、炉体26の一端部を覆う投入側フード28と、炉体26の他端部を覆う排出側フード29とを備えた回転式の炉である。
【0023】
炉体26は、酸化アルミ系の耐火材が内ライニング26aとして炉体26の内周壁に使用され、耐火材の外方側は冷却されている。また、炉体26内に面する内ライニング26aの内周面には、炉体26内に凸状で当該内周面に沿ってスクリュー状のスクリュー羽根26cが設けられている。当該内ライニング26aは、炉体26内に面する投入側フード28の内面に沿って延展され、投入側フード28の内ライニング26bを形成している。これら内ライニング26a、26bを設けることにより、炉体26は、フライアッシュ原粉が含有する酸化バナジュームに起因する高温下での金属腐食を回避することができ、これにより、1000℃程度(すなわち未燃カーボンを発火させて加熱改質処理を実施することに耐える十分な温度)の耐火性を有することができる。
【0024】
投入側フード28には、電力加熱装置8で加熱されたフライアッシュ原粉を炉体26内に投入するための投入部30と、炉体26内で発生した燃焼ガスを排気ガスとして排出するための排気ガス口9aとが設けられている。
【0025】
排気ガス口9aには、余熱供給パイプ13、及び余熱供給パイプ13から分岐された排気ガス管31が連結されている。そして、余熱供給パイプ13は、予熱装置10を経由し、また、排気ガス管31は、熱交換器32を経由して、それぞれ除塵装置6に連結されている。これにより、排気ガス口9aから排出された高温の排気ガスは、除塵装置6に送られる。
【0026】
排出側フード29には、炉体26内に空気(一次エア、二次エア)と共に燃料を噴出させ燃焼させる助燃バーナー33と、炉体26内に空気(三次エア)を吹き込む複数の吹き込みノズル34と、排出口35が設けられている。
【0027】
助燃バーナー33は、炉体26の中心軸上に位置し、燃料を噴出させる噴出孔33aがフライアッシュ原粉の投入部30に対向するように配置され、炉体26内を高温に加熱する。
【0028】
複数の吹き込みノズル34は、助燃バーナー33を周りから囲むようにして配置され、排出側フード29の炉体26内に面する内面に沿って、助燃バーナー33を中心として回転機構(図示せず)により回転する。
【0029】
助燃バーナー33に供給される空気(一次エア、二次エア)と吹き込みノズル34から炉体26内に吹き込まれる空気(三次エア)は、外の空気が押込ファン36により取り込まれ熱交換器32を介して炉体26内に送り込まれた空気である。そのため、空気(一次エア、二次エア)と空気(三次エア)は、熱交換器32において、排気ガス管31を流動する高温の排気ガスとの熱交換により加熱される。
【0030】
排出口35は、未燃カーボンが燃焼により減少したフライアッシュ原粉を排出するための排出口であり、排出側フード29の下部に設けられ、冷却装置5に連結されている。
【0031】
投入部30から炉体26内に投入されたフライアッシュ原粉は、軸心回りに回転する炉体26内で、スクリュー羽根26cにより撹拌されながら、排出口35に向かって徐々に移動する。この移動の間に、フライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボンは、高温の酸素雰囲気中で燃焼される。この時の炉体26内の温度は、800〜900℃になっている。こうして炉体26内に投入されたフライアッシュ原粉は、800〜900℃に加熱されている炉体26内で加熱され、吹き込みノズル34から供給される十分な酸素(空気中に含まれる)を受けて、フライアッシュ原粉中の未燃カーボンが発火温度である600℃で発火して自燃し、加熱改質が進行する。そして、排出口35に到達したフライアッシュ原粉は冷却装置5に排出される。
【0032】
<除塵装置>
除塵装置6は、前段のサイクロン6aと後段のバグフィルター6bとを備えている。前段のサイクロン6aには、炭素高温酸化炉9の排気ガス口9aから排出される高温の排気ガスを、予熱装置10で利用した後に排出する排出パイプ14と、熱交換器32で冷却した後に排出する排気ガス管31とが、連結されている。
【0033】
除塵装置6は、排出パイプ14及び排気ガス管31を介して流入した炭素高温酸化炉9からの排気ガスに含まれ粉塵等を、サイクロン6aとバグフィルター6bを用いて除去した後、粉塵等が除去された排気ガスを排気装置7に排出する。
【0034】
<排気装置>
排気装置7は、除塵装置6で粉塵等が除去された排気ガスを誘引ファン7aで誘引した後、排気塔7bを介して加熱改質システム1外に排出する。
【0035】
<冷却装置>
冷却装置5は、炭素高温酸化炉9の排出口35から排出された未燃カーボンを燃焼した後のフライアッシュFを受け入れて冷却処理する。
【0036】
図2は、冷却装置5の構成を示す説明図である。
冷却装置5は、未燃カーボンを燃焼して加熱改質された高温(800〜900℃)のフライアッシュFを受け入れて、吸熱媒体Bを混入させる受入ホッパー51(混合部)と、受入ホッパー51で受け入れた当該加熱後のフライアッシュF(加熱改質フライアッシュ)と吸熱媒体Bとを運搬する水平方向搬送部52と、当該加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとを撹拌して冷却するロータリークーラ54(回転体)と、水平方向搬送部52からロータリークーラ54に当該加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとを自由落下により搬送する落下搬送管53と、ロータリークーラ54から排出された当該加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bの混合物を分離し、当該加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとを別個に抽出する分離抽出装置55と、分離抽出装置55で分離抽出された吸熱媒体Bを受入ホッパー51に運搬するバケットコンベア56(搬送部)とを備えている。
【0037】
受入ホッパー51は、上下に伸びる筒状で、上方に、炭素高温酸化炉9の排出口35に接続された加熱後のフライアッシュFを受け入れる受入口51aを有し、上方側面に、吸熱媒体Bを混入させる混入口51bを有し、下方に、水平方向搬送部52の搬入口52eに接続された底部51cを有している。
【0038】
受入ホッパー51は、炭素高温酸化炉9から排出された当該加熱後のフライアッシュFを受け入れると同時に、吸熱媒体Bを一定の混入割合で定量的に混入させている。
【0039】
混入させる吸熱媒体Bは、セラミック素材で形成されている。加熱後のフライアッシュFの主成分は、シリカとアルミナである。吸熱媒体Bは、加熱後のフライアッシュFと接触させて急速に冷却させるために、セラミック素材の中でも、熱伝導率が比較的大きなアルミナ、炭化ホウ素、窒化ケイ素が好ましく、熱伝導率がさらに大きな炭化ケイ素、窒化アルミがより好ましい。また、少ない混入量で冷却温度を下げるためには、比熱が比較的大きな炭化ケイ素、窒化ケイ素が好ましく、比熱がさらに大きなアルミナ、シリカ、窒化アルミがより好ましい。また、吸熱媒体Bは、これらのセラミック素材のうち、フライアッシュFに含まれている成分であるアルミナ系または/及びシリカ系であることが好ましい。
【0040】
吸熱媒体Bは、ここでは、ボール状になっている。ボール状の吸熱媒体Bは、表面積が大きく、そのため、加熱後のフライアッシュFとの接触面積を大きく取れ、急速な冷却に適している。また、ボール状の吸熱媒体Bは、加熱後のフライアッシュF中でも動きやすく、そのため、加熱後のフライアッシュFと混ざりやすい。ボール状の吸熱媒体Bの直径は、所望のフライアッシュFの直径の3倍以上とすることができ、10倍以上とすることが好ましく、50倍以上とすることがより好ましく、90倍以上とすることがさらに好ましい。具体的には、吸熱媒体Bは、9〜12mmが好ましく、10〜11mmがより好ましい。
【0041】
吸熱媒体Bは、混入量が多いと、加熱後のフライアッシュFから吸熱する熱量が多くなるため冷却温度を下げるのに効果的であるが、冷却処理のできるフライアッシュFの量が少なくなり処理効率が悪化する。逆に、吸熱媒体Bの混入量が少ないと、冷却処理するフライアッシュFの量を増やすことができるため処理効率は良くなるが、加熱後のフライアッシュFから吸熱できる熱量が少なくなるため冷却温度はあまり下がらなくなる。そのため、吸熱媒体Bの混入量(質量)は、加熱後のフライアッシュFの受入量(質量)に対して、0.5〜2.0倍が好ましく、0.75〜1.5倍がより好ましい。吸熱媒体Bの形成に用いるセラミック素材にもよるが、ここでは、吸熱媒体Bの混入量を、加熱後のフライアッシュFの受入量とほぼ同じにしている。このため、受入ホッパー51で受け入れた際に、800〜900℃に熱せられていた加熱後のフライアッシュFは、吸熱媒体Bの吸熱により、概ね400〜450℃にまで急速に冷却することができる。
【0042】
このように、投入されたフライアッシュFの温度を40%〜60%程度(好ましくは50%程度)の温度にまで急速冷却することで、急速すぎる冷却によって球状のフライアッシュFが割れることを防止しつつ、かつ、短時間にある程度冷却することを実現している。また、400〜450℃にまで冷却することで、これより後段での冷却を、高価で故障しやすい液体クーラーではなく錆びないステンレスで実施することができる。すなわち、800〜900℃のフライアッシュFを冷却するには、これまで液体クーラー等で冷却する必要があったものの、吸熱媒体Bによって400〜450℃にまで急速冷却することで、そのような液体クーラーを用いずとも十分冷却することができる。
【0043】
水平方向搬送部52は、略水平に設置された円筒状の運搬管路52a内にベルトコンベア(52b、52c)が設けられて構成されている。水平方向搬送部52は、一方の搬入部側面上部に設けられた搬入口52eが受入ホッパー51の下方連結されており、他方の搬出部側面下部に設けられた搬出口52fが受入部53aに連結されている。運搬管路52aの内部には、運搬管路52aの短手方向(図示前後方向)に長い複数のローラ52cが運搬管路52aの長手方向に略等間隔で平行に配置されており、これらのローラ52cに環状のベルト52bが張架されている。ベルトコンベアは、この複数のローラ52cと、各ローラ52cを回転させる回転駆動部と、少なくとも搬入口52eまたは搬出口52fの近傍に配置された一端のローラ52cを回転させる駆動装置(図示せず)と、両端のローラ52cに張架された幅広の環状のベルト52bとを有している。運搬管路52a、ベルト52b、およびローラ52cは、錆びないステンレスにより形成されている。
【0044】
水平方向搬送部52は、運搬管路52a内に搬入口52eから搬入された加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとを、回転するローラ52cによって略水平に移動するベルト52b上に載せて搬出口52fに向けて運搬する。加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとの混合体が搬出口52fに達した時点で、加熱後のフライアッシュFから吸熱媒体Bへの熱の移動はほぼ完了し、加熱後のフライアッシュFの温度は、概ね400〜450℃に下がっている。すなわち、受入ホッパー51に投入される吸熱媒体Bは、加熱後のフライアッシュFよりも十分に低温であることが好ましく、この実施例では周囲の大気温度と同程度の温度とされている。なお、受入ホッパー51に投入される吸熱媒体Bは、周囲の大気温度よりも低い温度に冷却されたものであってもよく、例えば0℃程度とすることができる。
【0045】
落下搬送管53は、垂直に立設された搬送管本体53bと、搬送管本体53bの上部に設けられ水平方向搬送部52の搬出口52fに接続された広口の受入部53aと、搬送管本体53bの下部に設けられロータリークーラ54に接続された搬出部53cを有している。受入部53a、搬送管本体53b、および搬出部53cは、錆びないステンレスにより形成されている。この水平方向搬送部52により搬出口52fまで搬送される間に、フライアッシュFと吸熱媒体Bは、互いの熱交換が進んで同じ温度となる。
【0046】
水平方向搬送部52の搬出口52fにまで到達した加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとの混合体は、順次、受入部53aで受け入れられ、自由落下により落下搬送管53内を通過した後、搬出部53cからロータリークーラ54に投入される。この落下搬送管53内を通過するフライアッシュFと吸熱媒体Bはまとめて空冷され、温度が下がる。
【0047】
ロータリークーラ54は、中心線を回転軸として回転する内部が中空の横に寝かせた円筒状の周壁54aと、周壁54a内周面に設けられた螺旋状に巻回固定された帯状板で加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとを撹拌するスクリュー撹拌板54bと、周壁54aを中心線を回転軸として回転させる回転機構54c(回転駆動部)とを有する。周壁54aは、外周面側から冷却されている。周壁54aおよびスクリュー撹拌板54bは、錆びないステンレスにより形成されている。
【0048】
加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとの混合体は、ロータリークーラ54に投入されると、中空の周壁54a内部で周壁54aと共に回転するスクリュー撹拌板54bにより撹拌される。当該混合体は、凝縮し一部が密な状態になることがあるが、撹拌されている間に徐々に凝縮が解け、加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとに分解されていく。吸熱媒体Bは、フライアッシュFの何倍もの大きさのボール状である。そのため、ばらばらになった吸熱媒体Bは、周壁54a内部を転がり、ぶどうの房のようにクラスタ状態になっている加熱後のフライアッシュFと頻繁に衝突し、クラスタ状態の加熱後のフライアッシュFの解砕を促進する。一方、解砕されてばらばらになった加熱後のフライアッシュFは、吸熱媒体Bとともに周壁54aの内周面の下方全体に分布するようになる。周壁54aの下方のフライアッシュFおよび吸熱媒体Bは、回転により下方に回ってくる周壁54aの新たな低温領域と継続的に接することになるため、継続して熱が奪われ冷却される。こうして、フライアッシュFおよび吸熱媒体Bは、一緒に冷却され、ロータリークーラ54から排出される際には、室温近くにまで温度が低下している。ロータリークーラ54で解砕及び冷却された加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bは、次に、分離抽出装置55に送られる。
【0049】
分離抽出装置55は、上下に伸びる筒状で、解砕及び冷却された加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bを上方から投入する投入部55aと、投入部55aから重力落下する当該加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとをふるいに掛ける選別部55bと、選別部55bの下方に設置され、ふるいに掛けて抽出した当該加熱後のフライアッシュFを貯留する貯留部55dと、貯留部55dから当該加熱後のフライアッシュFを搬出する搬出機55eと、選別部55bの上方で且つ投入部55aの下方に設置され、ふるいに掛けて残った吸熱媒体Bを一時留置く留置部55cを有している。
【0050】
選別部55bは、網目の大きさが、吸熱媒体Bより小さく、加熱後のフライアッシュFより大きな網目状のふるいを有している。ここでは、選別部55bは、網目の大きさが1〜8mmの網目状のふるいを有している。吸熱媒体Bは、直径が10mm程度のボール状(塊状)であり、一方、加熱後のフライアッシュFの粒径は、1〜100μmの範囲に分布している。すなわち、加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとは、その大きさが何桁も異なっている。そのため、選別部55bは、上述のような簡易なふるいを用いて確実に選別することが可能である。また、選別部55bは、網目状のふるいを振動させて選別の処理速度を速めている。
【0051】
ロータリークーラ54から分離抽出装置55に送られた解砕及び冷却された加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bは、渾然一体となって、投入部55aに投入され、その後、重力落下により、選別部55bにまで到達する。選別部55bに到達した当該加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bは、ふるいによる選別を受ける。粒径の小さな加熱後のフライアッシュFは、ふるいの網目をすり抜けて選別部55b下方の貯留部55dに重力落下する。貯留部55dに貯まった加熱後のフライアッシュFは、適宜、搬出機55eにより搬出される。他方、粒径の大きな吸熱媒体Bは、ふるいの網目をすり抜けることができずに選別部55b上方の留置部55cに留置かれる。留置部55cに留置かれた吸熱媒体Bは、バケットコンベア56によって、受入ホッパー51に運搬され、加熱後のフライアッシュFに混入させる吸熱媒体Bとして再利用される。
【0052】
バケットコンベア56は、吸熱媒体Bを投入する投入部56aと、投入部56aに投入された吸熱媒体Bを水平搬送するベルト方式の水平搬送部56bと、水平搬送部56bにより水平搬送されてきた吸熱媒体Bをバケット56cを用いて垂直搬送する垂直搬送部56dと、高さ位置が受入ホッパー51より上方で、垂直搬送部56dにより垂直搬送されてきた吸熱媒体Bを受け取って受入ホッパー51に供給する供給部56eと、供給部56eと受入ホッパー51とを連結する管であって、供給部56eが供給した吸熱媒体Bが、当該管内を転がりながら落下し混入口51bから受入ホッパー51内に供給される供給管56fを有している。
【0053】
供給部56eが受入ホッパー51に供給する吸熱媒体Bの供給量は、水平搬送部56bや垂直搬送部56dの搬送速度、及びバケット56cの容量等の設定を変更することにより調節可能である。
【0054】
この実施例では、図示省略する制御部によって水平搬送部56bおよび垂直搬送部56dの搬送速度および搬送実行/搬送停止を調節し、供給部56eから受入ホッパー51に供給する吸熱媒体Bの供給量を調節する。受入口51aには受け入れている(投入される)フライアッシュFの量を検出するフライアッシュ検出センサが設けられ、垂直搬送部56dの上部には、供給部56eへ搬送する吸熱媒体Bの供給量を検出する吸熱媒体B検出センサが設けられている。従って、図示省略する制御部は、フライアッシュ検出センサによる検出したフライアッシュFの受け入れ量(質量)に対して、水平搬送部56bおよび垂直搬送部56dの搬送速度および搬送実行/搬送停止を調節して、吸熱媒体B検出センサにより検出する吸熱媒体Bの供給量が同程度の量(質量)となるように制御する。この制御部とフライアッシュ検出センサと水平搬送部56bおよび垂直搬送部56dと吸熱媒体B検出センサは、吸熱媒体B供給量調節部として機能する。なお、吸熱媒体B供給量調節部は、この構成に限らず、適宜の構成とすることができる。
【0055】
受入ホッパー51に供給される吸熱媒体Bは、受入ホッパー51が受け入れる加熱後のフライアッシュFに混入される。上述のように、吸熱媒体Bの混入量は、ここでは、加熱後のフライアッシュFの受入量とほぼ同じに設定されている。そのため、吸熱媒体Bの供給量は、受入ホッパー51が受け入れる加熱後のフライアッシュFの受入量とほぼ同じになるように調節される。
【0056】
以上の構成と動作により、冷却装置5は、加熱後のフライアッシュFを効率よく冷却することができる。すなわち、加熱後で高温状態のフライアッシュFは、当該吸熱媒体Bが混合されて当該吸熱媒体Bと接触し、熱伝導により当該吸熱媒体Bに熱が奪われ急速に冷却される。上述の例のように、例えば、加熱後のフライアッシュFにほぼ同量の当該吸熱媒体Bを混入させれば、フライアッシュFの温度を加熱後の800〜900℃から概ね400〜450℃にまで、すなわち約半分の温度にまで容易に下げることができる。
【0057】
吸熱媒体Bは、熱伝導度が高く比熱も大きいセラミック素材で形成されているため、フライアッシュFの熱を急速に奪うことができる。また、吸熱媒体Bは、ボール状(球状)に形成されているため、加熱後のフライアッシュFの中で動き回りやすく、フライアッシュF全体に亘って冷却することができる。また、ボール状の吸熱媒体Bは、フライアッシュFの何倍も大きく表面積が大きいため、加熱後のフライアッシュFとの接触面積が大きく、加熱後のフライアッシュFを急速に冷却できる。
【0058】
冷却装置5は、運搬管路52aと、運搬管路52aの略中心線上に配置された回転自在の複数のローラ52cと、両端のローラ52cに掛けられた環状のベルト52bを有し、加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bを運搬管路52a内のベルト52b上に載せて接触させながら運搬する水平方向搬送部52を備えている。加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bとは、互いに密に接触した状態でベルト52b上に載せられ運搬される。このため、当該運搬の間も、加熱後のフライアッシュFから吸熱媒体Bへの熱移動は継続する。それ故に、加熱後のフライアッシュFは、急速に冷却できる。
【0059】
また、係止部(スクリュー撹拌板54b)を有する回転体(周壁54a)が回転するロータリークーラ54により、回転体(周壁54a)内に投入されたフライアッシュFと吸熱媒体Bとを撹拌しつつ冷却して排出側の投入部55aまで移動させることができる。これにより、フライアッシュFをさらに低温に冷却することができるとともに、フライアッシュFとの熱交換にて温度が高まった吸熱媒体Bを一緒に冷却することができる。
【0060】
また、フライアッシュFと吸熱媒体Bをロータリークーラ54にて一緒に冷却した後、選別部55bによりふるいにかけてフライアッシュFと吸熱媒体Bを分離し、この吸熱媒体Bをバケットコンベア56により搬送して受入ホッパー51に投入し再利用することができる。このように吸熱媒体Bを循環させて再利用すう構成であるため、吸熱媒体Bを補充することなく連続運転することができる。しかも、フライアッシュFを直接冷却するのではなく、第1段階で吸熱媒体Bを用いて冷却することにより、急速に温度を半分程度まで下げてその後(第2段階以降)の冷却装置を簡易化することができる。つまり、本発明によれば、吸熱媒体Bを冷却して再利用する必要があるが、そもそも吸熱媒体BがフライアッシュFにより温度上昇した分だけフライアッシュFが温度低下しているため、トータルで冷却に必要な電力量や熱量は変わらない。従って、フライアッシュFの冷却に必要な電力量や熱量をさほど変えることなく、800℃〜900℃のフライアッシュFを直接冷却できる液体クーラーのような高価で壊れやすい冷却装置を使わずとも、400℃〜450℃のフライアッシュFを冷却できればよい簡易な構造の冷却装置に転換できる。
【0061】
尚、本願発明は本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。
例えば、ロータリークーラ54の周壁54aおよびスクリュー撹拌板54bは、例えば、断面が多角形若しくは略多角形状であり前記一端から前記他端へ向かって全体がねじれているねじれ多角筒状若しくはねじれ多角推台筒状に形成してもよい。この場合、例えば断面六角形または断面八角形が軸心方向にねじれながら進むようなねじれ多角形の筒状に形成することができる。この場合も、内部の加熱後のフライアッシュFと吸熱媒体Bを撹拌しつつ冷却するとともに、投入側から排出側へ少しずつ搬送することができる。
【0062】
また、水平方向搬送部52は、ベルトコンベアではなくスクリューコンベアにより搬送する方式とするなど、適宜の搬送方式とすることができる。また、水平方向搬送部52を無くし、受入ホッパー51からロータリークーラ54にフライアッシュFと吸熱媒体Bを直接投入して冷却する構成としてもよい。この場合も、上述した実施形態と同じ作用効果を得ることができる。