特開2019-5791(P2019-5791A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-5791(P2019-5791A)
(43)【公開日】2019年1月17日
(54)【発明の名称】溶接トーチのノズル清掃装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/29 20060101AFI20181214BHJP
【FI】
   B23K9/29 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-125785(P2017-125785)
(22)【出願日】2017年6月28日
(71)【出願人】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐古 克博
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LA06
4E001LH06
4E001QA03
(57)【要約】
【課題】ノズルの内面及び先端に付着したスパッタを一工程で確実に除去できるようにして溶接品質及び効率を高める。
【解決手段】ノズル101の内面に接触する内面清掃用弾性部材20と、内面清掃用弾性部材20を囲むように配置され、ノズル101の先端に接触する先端清掃用弾性部材30とを備えている。内面清掃用弾性部材20と先端清掃用弾性部材30を回転させることにより、ノズル101の内面及び先端に堆積したスパッタを同時に除去する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスシールド式溶接トーチのノズルを清掃する溶接トーチのノズル清掃装置において、
上記ノズルの先端から該ノズルの内部に挿入されて該ノズルの内面に接触する内面清掃用弾性部材と、
上記内面清掃用弾性部材を囲むように配置され、上記ノズルの先端に接触する先端清掃用弾性部材と、
上記内面清掃用弾性部材及び上記先端清掃用弾性部材を上記ノズルの軸心周りに回転駆動する駆動部とを備えていることを特徴とする溶接トーチのノズル清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接トーチのノズル清掃装置において、
上記内面清掃用弾性部材及び上記先端清掃用弾性部材は、上記ノズルの軸心方向に圧縮変形するように配置されたコイルバネであることを特徴とする溶接トーチのノズル清掃装置。
【請求項3】
請求項2に記載の溶接トーチのノズル清掃装置において、
上記先端清掃用弾性部材の一端が上記ノズルの先端に接触するように配置されることを特徴とする溶接トーチのノズル清掃装置。
【請求項4】
請求項3に記載の溶接トーチのノズル清掃装置において、
上記内面清掃用弾性部材における上記ノズルへの挿入方向先端は、上記先端清掃用弾性部材の一端よりも上記ノズルへの挿入方向へ突出していることを特徴とする溶接トーチのノズル清掃装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の溶接トーチのノズル清掃装置において、
上記先端清掃用弾性部材のバネ定数は、上記内面清掃用弾性部材のバネ定数よりも大きく設定されていることを特徴とする溶接トーチのノズル清掃装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1つに記載の溶接トーチのノズル清掃装置において、
上記先端清掃用弾性部材の線径は、上記内面清掃用弾性部材の線径よりも大きく設定されていることを特徴とする溶接トーチのノズル清掃装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の溶接トーチのノズル清掃装置において、
上記駆動部は、上記内面清掃用弾性部材及び上記先端清掃用弾性部材が固定される固定部材と、該固定部材を回転させるモーターとを備えていることを特徴とする溶接トーチのノズル清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシールド式溶接トーチのノズルを清掃する清掃装置に関し、特に、ノズルの内面及び先端に堆積したスパッタを除去する構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスシールドアーク溶接を行う現場では、ガスシールド式溶接トーチが使用されている。ガスシールド式溶接トーチはノズルを備えており、このノズルからガスを噴出しながら溶接用ワイヤを供給するように構成されている。溶接時にはスパッタが発生し、発生したスパッタはノズルの先端だけでなくノズルの内面にも付着して堆積してしまう。スパッタの堆積は、溶接不良を招く恐れがあるとともに、自動溶接設備の場合には設備停止に繋がる恐れがある。そのため、ノズルは定期的に清掃する必要がある。
【0003】
溶接トーチのノズル清掃装置としては、例えば特許文献1〜3に開示されているものが知られている。特許文献1は、ノズル内に挿入されるコイルバネと、段付きブラシと、コイルバネ及び段付きブラシを回転させる回転機構とを備えている。ノズルを清掃する場合には、コイルバネをノズル内に挿入してノズルの内面のスパッタを除去し、その後、ノズルの先端を段付きブラシに接触させてノズルの先端のスパッタを除去するようにしている。
【0004】
特許文献2は、ノズル内に挿入されるコイルバネと、ノズルの先端に冷気を供給する冷気供給手段とを備えており、ノズルの内面のスパッタはコイルバネで除去し、ノズルの先端のスパッタは冷気の供給によって除去するようにしている。
【0005】
特許文献3は、ノズル内に挿入されるコイルバネと、ノズルの先端に接触する刃具とを備えている。ノズルを清掃する場合には、コイルバネをノズル内に挿入してノズルの内面のスパッタを除去し、その後、ノズルの先端を刃具に接触させてノズルの先端のスパッタを除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−302368号公報
【特許文献2】実用新案登録第3158385号公報
【特許文献3】特開2003−311423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1では、ノズルの内面をコイルバネで、ノズルの先端を段付きブラシでそれぞれ清掃するようにしているので、少なくとも2工程が必要になり、清掃に要する時間が長時間化してしまう。また、スパッタの堆積状態や段付きブラシの摩耗状態に応じて、ノズルを段付きブラシへ当てるときの当て方を変える必要がある。
【0008】
また、特許文献2では、ノズルの内面をコイルバネで、ノズルの先端を冷気でそれぞれ清掃するようにしているが、一般にノズルに使用されている銅合金の熱膨張係数とスパッタの熱膨張係数の差程度ではノズルの先端のスパッタを除去するのに十分な効果は期待できない。
【0009】
さらに、特許文献3では、ノズルの内面をコイルバネで、ノズルの先端を刃具でそれぞれ清掃するようにしているので、特許文献1と同様に、少なくとも2工程が必要になり、清掃に要する時間が長時間化してしまう。また、スパッタの堆積状態や刃具の摩耗状態に応じてノズルを刃具へ当てるときの当て方を変える必要がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ノズルの内面及び先端に堆積したスパッタを一工程で確実に除去できるようにして溶接品質及び効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、ノズル内に挿入される内面清掃用弾性部材と、この内面清掃用弾性部材とは別にノズルの先端に当接する先端清掃用弾性部材とを設け、内面清掃用弾性部材及び先端清掃用弾性部材を回転駆動するようにした。
【0012】
第1の発明は、ガスシールド式溶接トーチのノズルを清掃する溶接トーチのノズル清掃装置において、上記ノズルの先端から該ノズルの内部に挿入されて該ノズルの内面に接触する内面清掃用弾性部材と、上記内面清掃用弾性部材を囲むように配置され、上記ノズルの先端に接触する先端清掃用弾性部材と、上記内面清掃用弾性部材及び上記先端清掃用弾性部材を上記ノズルの軸心周りに回転駆動する駆動部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ノズルに内面清掃用弾性部材を挿入すると、内面清掃用弾性部材がノズルの内面に接触する。このとき、先端清掃用弾性部材が内面清掃用弾性部材を囲むように配置されているので、先端清掃用弾性部材がノズルの先端に接触することになる。この状態で内面清掃用弾性部材が回転すると、ノズルの内面に堆積しているスパッタを内面清掃用弾性部材が擦り取る。ノズルの内面におけるスパッタの堆積状態が異なる場合や内面清掃用弾性部材の摩耗状態が初期と異なる場合には、内面清掃用弾性部材が弾性変形することで対応可能である。また、先端清掃用弾性部材が回転すると、ノズルの先端に堆積しているスパッタを先端清掃用弾性部材が擦り取る。ノズルの先端におけるスパッタの堆積状態が異なる場合や先端清掃用弾性部材の摩耗状態が初期と異なる場合には、先端清掃用弾性部材が弾性変形することで対応可能である。つまり、ノズルの内面及び先端に付着したスパッタを一工程で確実に除去することが可能になる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記内面清掃用弾性部材及び上記先端清掃用弾性部材は、上記ノズルの軸心方向に圧縮変形するように配置されたコイルバネであることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、内面清掃用弾性部材及び先端清掃用弾性部材が低コストで得られる。また、ノズルをロボット等で移動させて清掃を行う際にノズルの多少の位置ずれを内面清掃用弾性部材及び先端清掃用弾性部材の圧縮変形等で許容することが可能になる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、上記先端清掃用弾性部材の一端が上記ノズルの先端に接触するように配置されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ノズルの先端に堆積したスパッタを、先端清掃用弾性部材の一端、即ちコイルバネの端部によって削るようにして取ることが可能になる。
【0018】
第4の発明は、第3の発明において、上記内面清掃用弾性部材における上記ノズルへの挿入方向先端は、上記先端清掃用弾性部材の一端よりも上記ノズルへの挿入方向へ突出していることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、内面清掃用弾性部材をノズルの内部に十分に挿入することが可能になる。
【0020】
第5の発明は、第2から4のいずれか1つの発明において、上記先端清掃用弾性部材のバネ定数は、上記内面清掃用弾性部材のバネ定数よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0021】
すなわち、内面清掃用弾性部材及び先端清掃用弾性部材を回転させると遠心力によって回転ブレが発生することがあるが、この発明では、先端清掃用弾性部材のバネ定数が大きいので、先端清掃用弾性部材がぶれにくくなる。さらに、この先端清掃用弾性部材に囲まれるように配置されている内面清掃用弾性部材は、先端清掃用弾性部材によって外方から支持されているので内面清掃用弾性部材もぶれにくくなる。
【0022】
第6の発明は、第2から5のいずれか1つの発明において、上記先端清掃用弾性部材の線径は、上記内面清掃用弾性部材の線径よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、先端清掃用弾性部材の線径が大きいので、ノズルが径方向に多少位置ずれしたとしても、先端清掃用弾性部材がノズルの先端に接触し易くなる。また、内面清掃用弾性部材の線径が小さいので、内面清掃用弾性部材をノズルの内部に挿入し易くなる。
【0024】
第7の発明は、第1から6のいずれか1つの発明において、上記駆動部は、上記内面清掃用弾性部材及び上記先端清掃用弾性部材が固定される固定部材と、該固定部材を回転させるモーターとを備えていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、モーターによって固定部材を回転させると、内面清掃用弾性部材及び先端清掃用弾性部材を同時に回転駆動することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、ノズルの内面に接触する内面清掃用弾性部材と、ノズルの先端に接触する先端清掃用弾性部材とをノズルの軸心周りに回転駆動するようにしたので、ノズルの内面及び先端に付着したスパッタを一工程で確実に除去することができ、溶接品質及び効率を高めることができる。
【0027】
第2の発明によれば、内面清掃用弾性部材及び先端清掃用弾性部材をコイルバネとしたので、低コスト化を図りながら、ノズルの多少の位置ずれを許容することができる。
【0028】
第3の発明によれば、ノズルの先端に堆積したスパッタをコイルバネの端部によって確実に除去することができる。
【0029】
第4の発明によれば、内面清掃用弾性部材の挿入方向先端を先端清掃用弾性部材の一端から突出させたので、内面清掃用弾性部材をノズルの内部に十分に挿入してノズルの内面の広い範囲を清掃することができる。
【0030】
第5の発明によれば、内面清掃用弾性部材及び先端清掃用弾性部材の回転ブレを抑制することができる。
【0031】
第6の発明によれば、先端清掃用弾性部材の線径を内面清掃用弾性部材の線径よりも大きくしたので、先端清掃用弾性部材をノズルの先端に接触させ易くなり、また、内面清掃用弾性部材をノズルの内部に挿入し易くなる。
【0032】
第7の発明によれば、内面清掃用弾性部材及び先端清掃用弾性部材を共通のモーターで回転駆動することができるので、構造をシンプルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る溶接トーチのノズル清掃装置の斜視図である。
図2】溶接トーチのノズル清掃装置の平面図である。
図3】溶接トーチのノズル清掃装置の正面図である。
図4】溶接トーチのノズル清掃装置の断面図であり、溶接トーチを清掃している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る溶接トーチのノズル清掃装置1を斜め上方から見た斜視図であり、図2は、溶接トーチのノズル清掃装置1を上方から見た平面図であり、図3は、溶接トーチのノズル清掃装置1の正面図である。
【0036】
(溶接設備の構成)
溶接トーチのノズル清掃装置1は、例えばガスシールドアーク溶接を行う現場に設置されるものであり、図4に示すようにガスシールド式溶接トーチ100のノズル101の内面及び先端101bを同時に清掃できるように構成されている。すなわち、ガスシールドアーク溶接を行う現場では、図4に示すガスシールド式溶接トーチ100が使用されている。ガスシールド式溶接トーチ100は円筒状部材からなるノズル101と、ノズル101の内部に配設されるワイヤ支持部材102とを備えている。ワイヤ支持部材102は、ノズル101と同心上に配置された柱状部材であり、ワイヤ支持部材102の中心部に形成された孔102aにワイヤ(図示せず)が挿入されて供給されるようになっている。ノズル101の内面101aとワイヤ支持部材102の外面との間には、全周に亘って隙間が形成されている。
【0037】
溶接時にはスパッタが発生する。発生したスパッタは、ノズル101の先端101bに付着して堆積するだけでなく、ノズル101の内面101aとワイヤ支持部材102の外面との間に隙間があるので、この隙間にも侵入してノズル101の内面101aに付着して堆積することがある。
【0038】
また、上記ガスシールド式溶接トーチ100は、自動溶接設備に使用することができる。ガスシールド式溶接トーチ100を例えばロボットに把持させてロボットによって所定の軌跡を描くように移動させることで、作業者によらず、自動で溶接を行うことが可能になる。尚、ガスシールド式溶接トーチ100は自動溶接設備に限定されるものではなく、作業者が持って移動させながら各種溶接を行うようにすることもできる。
【0039】
(溶接トーチのノズル清掃装置1の構成)
図1図3に示すように、溶接トーチのノズル清掃装置1は、本体部10と、ノズル101の先端101bから該ノズル101の内部に挿入されて該ノズル101の内面101aに接触する内面清掃用弾性部材20と、内面清掃用弾性部材20を囲むように配置され、ノズル101の先端101bに接触する先端清掃用弾性部材30とを備えている。ノズル清掃装置1は、溶接設備の一部とすることもできる。
【0040】
本体部10は、筐体11と、図3及び図4に示す駆動ユニット(駆動部)14とを備えている。筐体11は、例えば溶接現場の溶接設備に固定することができるようになっている。筐体11を固定する場所は、実際に溶接が行われる場所から離れており、かつ、ロボットによって溶接トーチ100を移動させることができる範囲内としておくのが好ましい。
【0041】
駆動ユニット14は、内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30を溶接トーチ100のノズル101の軸心周りに回転駆動するためのものである。駆動ユニット14は、筐体11の内部に収容された状態で該筐体11に固定されるモーター12と、内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30が固定される固定部材13とを備えており、固定部材13をモーター12によって回転することで内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30を回転駆動することができるように構成されている。
【0042】
モーター12は従来から周知の電動機である。図4に示すように、モーター12には制御装置40が接続されている。制御装置40は、外部から入力された信号や手動スイッチ(図示せず)のON/OFF操作に基づいてモーター12に電流を供給してモーター12を作動状態にし、また、モーター12への電流の供給を遮断してモーター12を停止させることができるように構成されている。制御装置40によってモーター12の回転速度(単位時間当たりの回転数)を調整することもできる。
【0043】
モーター12には出力軸12aが設けられている。モーター12は、出力軸12aが上下方向に延びる姿勢とされ、かつ、出力軸12aが筐体11の上面から上方へ突出するように配置されている。固定部材13は、略円板状の部材で構成されている。固定部材13は出力軸12aと直交するように配置されており、固定部材13の上面13aは略水平に延びている。固定部材13の上面13aに、内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30の下端が例えば溶接等により固定されるようになっている。固定部材13の下面には出力軸12aの上端が嵌合する嵌合孔13bが形成されている。出力軸12aは、その上端が固定部材13の嵌合孔13bに嵌合した状態で固定されている。
【0044】
内面清掃用弾性部材20は、溶接トーチ100のノズル101の軸心(図3に符号Xで示す)方向に圧縮変形するように配置されたコイルバネである。この実施形態では、ノズル101の軸心が上下方向に延びているので、内面清掃用弾性部材20の圧縮変形の方向は上下方向となる。内面清掃用弾性部材20の長さ(上下方向の寸法)は、ノズル101の清掃範囲の上下方向の寸法よりも長く設定されている。内面清掃用弾性部材20の上側がノズル101の先端101bから該ノズル101の内部に挿入されて該ノズル101の内面101aに接触する部分である。従って、内面清掃用弾性部材20の外径は、ノズル101の内径よりも若干小さめに設定されている。
【0045】
先端清掃用弾性部材30は、溶接トーチ100のノズル101の軸心(図3に符号Xで示す)方向に圧縮変形するように配置されたコイルバネであり、内面清掃用弾性部材20と同様に、先端清掃用弾性部材30の圧縮変形の方向は上下方向となる。また、先端清掃用弾性部材30の上端(一端)30aはノズル101の先端101bに接触するように配置されている。
【0046】
先端清掃用弾性部材30の内径は、内面清掃用弾性部材20の外径よりも大きく設定されており、先端清掃用弾性部材30と内面清掃用弾性部材20との間には隙間を形成しておくことができる。さらに、先端清掃用弾性部材30の外径は、溶接トーチ100のノズル101の内径よりも大きく設定されており、先端清掃用弾性部材30がノズル101に入らないようになっている。また、先端清掃用弾性部材30の外径及び内径は、ノズル101の先端101bに先端清掃用弾性部材30の上端30aが接触するように設定されている。すなわち、先端清掃用弾性部材30の外径は、ノズル101の先端101bの内径よりも大きくなっており、先端清掃用弾性部材30の内径は、ノズル101の先端101bの外径よりも小さくなっている。
【0047】
内面清掃用弾性部材20におけるノズル101への挿入方向先端(上端)20aは、先端清掃用弾性部材30の上端30aよりもノズル101への挿入方向(上方)へ突出している。この突出寸法は、ノズル101の清掃範囲の上下方向の寸法と同程度にすることができる。内面清掃用弾性部材20を構成する線材の線径は、ノズル101とワイヤ支持部材102との隙間よりも小さく設定されている。さらに、内面清掃用弾性部材20の内径は、ワイヤ支持部材102の外径よりも若干大きめに設定されている。
【0048】
また、先端清掃用弾性部材30のバネ定数は、内面清掃用弾性部材20のバネ定数よりも大きく設定されている。これにより、外力が作用した際に、内面清掃用弾性部材20に比べて先端清掃用弾性部材30の方が変形し難くなる。
【0049】
さらに、先端清掃用弾性部材30を構成する線材の線径は、内面清掃用弾性部材20を構成する線材の線径よりも大きく設定されている。具体的には、先端清掃用弾性部材30を構成する線材の線径は、ノズル101の周壁部分の厚み寸法よりも大きくなっている。
【0050】
(ノズル清掃方法)
次に、上記のように構成されたノズル清掃装置1を使用して溶接トーチ100のノズル101を清掃する要領について説明する。制御装置40からモーター12に電流を供給してモーター12の出力軸12aが回転すると、固定部材13が回転して内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30が回転する。内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30には形状のゆがみ等が発生することは避けられないので、内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30に遠心力が作用すると回転ブレを生じることがある。このとき、先端清掃用弾性部材30のバネ定数が内面清掃用弾性部材20のバネ定数よりも大きいので、先端清掃用弾性部材30がぶれにくくなる。さらに、このぶれにくい先端清掃用弾性部材30に囲まれるように内面清掃用弾性部材20が配置されているので、先端清掃用弾性部材30によって内面清掃用弾性部材20を外方から支持することができ、内面清掃用弾性部材20もぶれにくくなる。
【0051】
内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30を回転させている状態で、溶接トーチ100のノズル101をロボットにより移動させて、ノズル101の先端101bを内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30の上端20a、30aと対向するように配置した後、図4に示すように、ノズル101を下方へ移動させて内面清掃用弾性部材20の上側部分をノズル101の先端101bから該ノズル101の内部に挿入する。そして、先端清掃用弾性部材30がノズル101の先端101bに接触するまでノズル101を下方へ移動させる。
【0052】
こうすると、内面清掃用弾性部材20の上側部分がノズル101の内面101aに接触する。内面清掃用弾性部材20が回転しているので、ノズル101の内面101aに堆積しているスパッタを内面清掃用弾性部材20が擦り取る。ノズル101の内面101aにおけるスパッタの堆積状態が異なる場合や内面清掃用弾性部材20の摩耗状態が初期と異なる場合には、内面清掃用弾性部材20が径方向に弾性変形することで対応可能である。
【0053】
また、内面清掃用弾性部材20が回転によってぶれると、内面清掃用弾性部材20がワイヤ支持部材102の外面に接触する。これにより、ワイヤ支持部材102の外面に堆積しているスパッタも除去することができる。
【0054】
また、先端清掃用弾性部材30も回転しているので、ノズル101の先端101bに堆積しているスパッタを先端清掃用弾性部材30の上端30aが擦り取る。特に、先端清掃用弾性部材30の上端30aがスパッタに当たることで、スパッタを削るようにして除去することができる。また、ノズル101の先端101bにおけるスパッタの堆積状態が異なる場合や先端清掃用弾性部材30の摩耗状態が初期と異なる場合には、先端清掃用弾性部材30が軸心方向や径方向に弾性変形することで対応可能である。つまり、ノズル101の内面101a及び先端101bに付着したスパッタを内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30によって一工程で確実に除去することが可能になる。
【0055】
また、ノズル101をロボットで移動させて清掃を行う際にはノズル101が多少位置ずれすることがあるが、このノズル101の位置ずれを内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30の圧縮変形等で許容することが可能になる。
【0056】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る溶接トーチのノズル清掃装置1によれば、ノズル101の内面101aに接触する内面清掃用弾性部材20と、ノズル101の先端101bに接触する先端清掃用弾性部材30とをノズル101の軸心周りに回転駆動するようにしたので、ノズル101の内面101a及び先端101bに付着したスパッタを一工程で確実に除去することができ、溶接品質及び効率を高めることができる。
【0057】
また、内面清掃用弾性部材20及び先端清掃用弾性部材30をコイルバネとしたので、低コスト化を図りながら、ノズル101の多少の位置ずれを許容することができる。
【0058】
また、内面清掃用弾性部材20の挿入方向先端20aを先端清掃用弾性部材30の一端30aから突出させたので、内面清掃用弾性部材20をノズル101の内部に十分に挿入してノズル101の内面101aの広い範囲を清掃することができる。
【0059】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明に係る溶接トーチのノズル清掃装置は、例えばガスシールド式溶接トーチのノズルを清掃する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ノズル清掃装置
14 駆動ユニット(駆動部)
20 内面清掃用弾性部材
30 先端清掃用弾性部材
100 溶接トーチ
101 ノズル
101a 内面
図1
図2
図3
図4