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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-5794(P2019-5794A)
(43)【公開日】2019年1月17日
(54)【発明の名称】フィンチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 13/00 20060101AFI20181214BHJP
   B23K 13/08 20060101ALI20181214BHJP
【FI】
   B23K13/00 Z
   B23K13/08 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-126056(P2017-126056)
(22)【出願日】2017年6月28日
(71)【出願人】
【識別番号】390038807
【氏名又は名称】サンキン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】彦惣 隼人
(57)【要約】
【課題】金属管に金属帯を電気抵抗溶接するための高周波電流が一般的に入手容易な電源で出力可能で且つ無線のコントロール周波数帯と干渉しない程度の高周波電流であり、金属管と金属帯の少なくとも一方が透磁率が低くて電流の表皮効果を得にくい材料からなる場合であっても、その金属管の外周面に金属帯を電気抵抗溶接してフィンチューブを製造可能な製造方法を提供する。
【解決手段】フィンチューブの製造方法は、高周波電流が金属管101と金属帯112とを流れることで生じる熱により金属管101の外周面に溶接した金属帯112を螺旋状に成形してフィン102を形成するフィン形成工程を備え、フィン形成工程では、磁束を集めることで周囲の高周波電流の密度を高める効果を有する軟磁性体10を前記効果が金属管101と金属帯112との接触位置150に及ぶ範囲内に配置した上で金属管101に高周波電流を生じさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の金属管とその金属管に螺旋状に巻き付けられて溶接された金属帯からなるフィンとを有するフィンチューブを製造するための方法であって、
前記金属帯の幅方向の一方の端縁部が前記金属管の外周面へ接近して所定の接触位置でその金属管の外周面に接触するように前記金属帯を案内する案内工程と、
前記金属管と前記金属帯のうち少なくとも前記金属管に高周波電流を生じさせてその高周波電流が当該金属管を流れることで生じる熱により前記金属帯の前記一方の端縁部を前記接触位置で前記金属管の外周面に溶接することと、前記金属管をその軸心回りに回転させながらその軸心に沿って移動させることとにより、前記金属管の外周面に溶接した前記金属帯を螺旋状に成形して前記フィンを形成するフィン形成工程と、を備え、
前記フィン形成工程では、磁束を集めることで周囲の高周波電流の密度を高める効果を有する軟磁性体をその軟磁性体の前記効果が前記接触位置に及ぶ範囲内に配置した上で前記金属管に高周波電流を生じさせる、フィンチューブの製造方法。
【請求項2】
前記フィン形成工程では、前記金属管の外周面のうち前記接触位置に対応する部位に加えて、前記金属帯の前記一方の端縁部のうち前記接触位置で前記金属管の外周面に接触する部位にも高周波電流を生じさせる、請求項1に記載のフィンチューブの製造方法。
【請求項3】
前記フィン形成工程では、前記金属管の回転方向と逆向きに前記接触位置から離れた位置で前記金属管の外周面に接触する金属管接触電極と、前記金属帯の前記一方の端縁部を前記金属管の外周面に接近させるために前記金属帯を移動させる向きと逆向きに前記接触位置から前記一方の端縁部に沿って離れた位置で当該一方の端縁部に接触する金属帯接触電極と、前記金属管接触電極と前記金属帯接触電極に接続された電源とを用いて、前記金属管の外周面上において前記金属管接触電極と前記接触位置とを最短距離で結ぶ経路と前記金属帯の前記一方の端縁部のうち前記金属帯接触電極と前記接触位置との間の部分とを通って高周波電流が流れるように前記電源から前記金属管接触電極と前記金属帯接触電極を通じて前記金属管及び前記金属帯に高周波電流を流す、請求項2に記載のフィンチューブの製造方法。
【請求項4】
前記フィン形成工程では、前記金属管の周りを囲むコイルであって前記金属管の外周面との間に間隔をあけて配置したものと、前記コイルに接続された電源とを用いて、前記電源から前記コイルに高周波電流を流すことで電磁誘導により前記金属管に高周波電流を生じさせる、請求項1に記載のフィンチューブの製造方法。
【請求項5】
前記軟磁性体として、前記金属管の外周面と前記コイルの内周面との間で前記金属管の周りを囲む筒状のものを用いる、請求項4に記載のフィンチューブの製造方法。
【請求項6】
前記軟磁性体として、0.0001Ωcm以上の抵抗率を有するものを用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィンチューブの製造方法。
【請求項7】
前記軟磁性体として、0.001H/m以上の透磁率を有するものを用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィンチューブの製造方法。
【請求項8】
前記軟磁性体として、ソフトフェライトからなるものを用いる、請求項6又は7に記載のフィンチューブの製造方法。
【請求項9】
前記金属帯として、アルミニウムと銅のいずれか一方からなるものを用いる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィンチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器等に用いられるフィンチューブが知られている。このフィンチューブは、金属管と、その金属管の周りに巻き付くように設けられた螺旋状のフィンとを有する。このようなフィンチューブを製造するための製造装置の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたフィンチューブの製造装置は、金属管の外周にフィンとなる薄い肉厚の金属帯を螺旋状に巻き付け、その金属帯の内縁を金属管の外周面に加熱溶着するものである。具体的には、このフィンチューブ製造装置は、金属管の外周面に接触する第1通電子と、金属帯の内縁に接触する第2通電子と、それらの第1及び第2通電子に接続されて当該第1通電子と当該第2通電子との間で高周波交流電流を流す電源とを有する。電源は、1MC〜10MCの範囲内の非常に高い周波数の交流電流を供給するものである。このフィンチューブ製造装置では、第1通電子と第2通電子との間で金属管の外周面及び金属帯の内縁を通って高周波交流電流が流れることにより、金属管の外周面及び金属帯の内縁が加熱され、金属管の外周面に接触した金属帯の内縁がその金属管の外周面に溶着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭45−13701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の従来のフィンチューブ製造装置では、1MC〜10MCの高い周波数の交流電流を金属管及び金属帯に流して金属管の外周面及び金属帯の内縁において高い表皮効果を得ることにより、その金属管の外周面及び金属帯の内縁を溶接のために加熱しているが、高周波電流の中でも1MC〜10MCの範囲の周波数を持つものは極めて高い周波数の電流であり、そのような高周波電流を出力可能な電源は特殊な電源であって、一般的に入手することは困難である。このため、現実的には、前記のような製造装置を用意してその製造装置でフィンチューブを製造することは困難である。
【0006】
また、仮に1MC〜10MCの範囲の周波数の交流電流を出力可能な電源を入手できて、その電源を用いたフィンチューブ製造装置を用意できた場合であっても、1MC〜10MCの範囲の周波数の高周波電流は、無線のコントロール周波数帯に干渉するため、無線コントロールを採用している周囲の設備に誤動作等のトラブルを発生させる虞がある。
【0007】
もう少し低い周波数の高周波電流、例えば300kHz〜400kHzの範囲の高周波電流を出力する電源であれば一般的に入手が容易であり、また、このような周波数の高周波電流は無線のコントロール周波数帯と干渉することもないが、この場合には、電流の周波数に応じて得られる表皮効果が低くなるため、その替わりに金属管と金属帯の材料として高い表皮効果を得られる高透磁率のものを採用する必要がある。しかしながら、熱伝導率が高くて熱交換器用のフィンチューブの材料として好適なアルミニウムや銅などの金属は透磁率が低いため、金属管と金属帯の少なくとも一方がこのような金属からなる場合には、前記のような300kHz〜400kHzの範囲の高周波電流を金属管と金属帯に流したとしても、その金属管の外周面に金属帯を電気抵抗溶接することが困難であり、フィンチューブを製造できない。
【0008】
本発明の目的は、金属管に金属帯を電気抵抗溶接するための高周波電流が一般的に入手容易な電源で出力可能で且つ無線のコントロール周波数帯と干渉しない程度の高周波電流であり、金属管と金属帯の少なくとも一方が透磁率が低くて電流の表皮効果を得にくい材料からなる場合であっても、その金属管の外周面に金属帯を電気抵抗溶接してフィンチューブを製造可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により提供されるのは、円筒状の金属管とその金属管に螺旋状に巻き付けられて溶接された金属帯からなるフィンとを有するフィンチューブを製造するための方法であって、前記金属帯の幅方向の一方の端縁部が前記金属管の外周面へ接近して所定の接触位置でその金属管の外周面に接触するように前記金属帯を案内する案内工程と、前記金属管と前記金属帯のうち少なくとも前記金属管に高周波電流を生じさせてその高周波電流が当該金属管を流れることで生じる熱により前記金属帯の前記一方の端縁部を前記接触位置で前記金属管の外周面に溶接することと、前記金属管をその軸心回りに回転させながらその軸心に沿って移動させることとにより、前記金属管の外周面に溶接した前記金属帯を螺旋状に成形して前記フィンを形成するフィン形成工程と、を備え、前記フィン形成工程では、磁束を集めることで周囲の高周波電流の密度を高める効果を有する軟磁性体をその軟磁性体の前記効果が前記接触位置に及ぶ範囲内に配置した上で前記金属管に高周波電流を生じさせるものである。
【0010】
このフィンチューブの製造方法では、フィン形成工程で金属管に高周波電流を生じさせるときに、軟磁性体が磁束を集めてその周囲の高周波電流の密度を高める効果が前記接触位置に及ぼされる。このため、金属管に生じさせる高周波電流が、1MC以上の極めて高い周波数のものではなく、それよりも周波数が低くて一般的に入手容易な電源で出力可能で且つ無線のコントロール周波数帯と干渉しない程度の高周波電流であることにより、大きな表皮効果が得られない場合であっても、前記接触位置に流れる高周波電流の集中度を高めることができる。このため、金属管と金属帯の少なくとも一方が透磁率が低くて電流の表皮効果を得にくい材料からなる場合であっても、その金属管の外周面に金属帯を電気抵抗溶接してフィンチューブを製造することができる。
【0011】
前記フィンチューブの製造方法において、前記フィン形成工程では、前記金属管の外周面のうち前記接触位置に対応する部位に加えて、前記金属帯の前記一方の端縁部のうち前記接触位置で前記金属管の外周面に接触する部位にも高周波電流を生じさせてもよい。
【0012】
こうすれば、前記接触位置において金属管の外周面に金属帯の一方の端縁部をより有効に電気抵抗溶接することができる。
【0013】
この場合において、前記フィン形成工程では、前記金属管の回転方向と逆向きに前記接触位置から離れた位置で前記金属管の外周面に接触する金属管接触電極と、前記金属帯の前記一方の端縁部を前記金属管の外周面に接近させるために前記金属帯を移動させる向きと逆向きに前記接触位置から前記一方の端縁部に沿って離れた位置で当該一方の端縁部に接触する金属帯接触電極と、前記金属管接触電極と前記金属帯接触電極に接続された電源とを用いて、前記金属管の外周面上において前記金属管接触電極と前記接触位置とを最短距離で結ぶ経路と前記金属帯の前記一方の端縁部のうち前記金属帯接触電極と前記接触位置との間の部分とを通って高周波電流が流れるように前記電源から前記金属管接触電極と前記金属帯接触電極を通じて前記金属管及び前記金属帯に高周波電流を流すことが好ましい。
【0014】
こうすれば、高周波電流による表皮効果に加えて、金属管の外周面上の前記経路を流れる高周波電流と金属帯の一方の端縁部の前記部分を流れる高周波電流との間での近接効果により、金属管の外周面上の前記経路を流れる高周波電流の集中度をより高めることができるとともに、金属帯の一方の端縁部の前記部分に高い集中度で高周波電流を流すことができる。このため、前記接触位置において金属管の外周面に金属帯の一方の端縁部をより有効に電気抵抗溶接することができる。
【0015】
また、前記フィンチューブの製造方法において、前記フィン形成工程では、前記金属管の周りを囲むコイルであって前記金属管の外周面との間に間隔をあけて配置したものと、前記コイルに接続された電源とを用いて、前記電源から前記コイルに高周波電流を流すことで電磁誘導により前記金属管に高周波電流を生じさせてもよい。
【0016】
金属管の外周面に接触する電極を通じて金属管に高周波電流を流す場合には、電極が金属管の外周面に対して摺接することにより摩耗し、当該電極の煩雑な交換作業が必要であるが、前記の電磁誘導によれば、金属管の外周面に金属帯を溶接するための高周波電流を金属管に非接触で生じさせることができる。このため、前記のような電極の煩雑な交換作業を不要とすることができる。
【0017】
この場合において、前記軟磁性体として、前記金属管の外周面と前記コイルの内周面との間で前記金属管の周りを囲む筒状のものを用いることが好ましい。
【0018】
こうすれば、電磁誘導によって金属管に高周波電流を生じさせるときに発生する磁束が金属管の周りの筒状の軟磁性体に集まり、その結果、金属管の外周面のうち軟磁性体によって周りを囲まれた部位に流れる高周波電流の集中度が高められてその高周波電流によって生じる熱により接触位置での金属管の外周面への金属帯の溶接を有効に行うことができる。
【0019】
前記フィンチューブの製造方法において、前記軟磁性体として、0.0001Ωcm以上の抵抗率を有するものを用いることが好ましい。
【0020】
0.0001Ωcm以上の抵抗率は、フィンチューブを製造するために一般的に用いられる金属管及び金属帯の材料の抵抗率よりも十分に高い抵抗率であるため、この抵抗率を有する軟磁性体を用いることによって、当該軟磁性体に高周波電流が流れるのを抑制できる。このため、当該軟磁性体に電流が流れて当該軟磁性体が発熱した場合に生じる当該軟磁性体の磁束集中機能の低下を防ぐことができる。
【0021】
また、前記軟磁性体として、0.001H/m以上の透磁率を有するものを用いることが好ましい。
【0022】
0.001H/m以上の透磁率は、フィンチューブを製造するために一般的に用いられる金属管及び金属帯の材料の透磁率よりも確実に高い透磁率であるため、この透磁率を有する軟磁性体を用いることによって、金属管に高周波電流を生じさせるときに生じる磁束を当該軟磁性体に確実に集めることができる。
【0023】
また、前記軟磁性体として、代表的な材料であるソフトフェライトからなるものを用いることが好ましい。
【0024】
また、前記金属帯として、アルミニウムと銅のいずれか一方からなるものを用いることが好ましい。
【0025】
アルミニウム及び銅は、いずれも熱伝導率が高く、熱交換器に用いるフィンチューブのフィンの材料として好適な代表的な金属であるが、透磁率が低くて表皮効果を得にくいため、このようなアルミニウム又は銅を材料とした金属帯は金属管に電気抵抗溶接しにくいが、当該製造方法によれば、このようなアルミニウムと銅のいずれか一方からなる金属帯を金属管の外周面に溶接可能であり、熱交換効率の高いフィンチューブを製造できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明のフィンチューブの製造方法によれば、金属管に金属帯を電気抵抗溶接するための電流発生装置の電源が一般的に入手が容易な高周波交流電源であって無線のコントロール周波数帯と干渉しない程度の高周波電流を出力するものであり、金属管と金属帯の少なくとも一方が熱伝導率は高いが透磁率が低くて電流の表皮効果を得にくい材料からなる場合であっても、その金属管の外周面に金属帯を電気抵抗溶接してフィンチューブを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態によるフィンチューブの製造方法で用いるフィンチューブ製造装置がフィンチューブを製造している状態を側方から見た図である。
図2図1に示したフィンチューブ製造装置のうち金属管と金属帯との接触位置近傍を上方から見た図である。
図3図1に示したフィンチューブ製造装置のうち金属管と金属帯との接触位置近傍を金属管の軸心に沿った移動方向の後側から前側へ向かって見た図である。
図4】金属管への金属帯の溶接に使用する電力に対する軟磁性体の体積の比と比較例の溶接速度に対する実施例の溶接速度の比との相関関係を示す図である。
図5】接触位置と軟磁性体との間の距離と比較例の溶接速度に対する実施例の溶接速度の比との相関関係を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態によるフィンチューブの製造方法で用いるフィンチューブ製造装置がフィンチューブを製造している状態を側方から見た図である。
図7図6に示したフィンチューブ製造装置のうち金属管と金属帯との接触位置近傍を金属管の軸心に沿った移動方向の後側から前側へ向かって見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0029】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるフィンチューブの製造方法は、熱交換器に用いられるフィンチューブ100であって円筒状の金属管101とその金属管101に螺旋状に巻き付けられて溶接された金属帯112からなるフィン102とを有するものを製造するための方法である。図1は、この第1実施形態によるフィンチューブの製造方法で用いるフィンチューブ製造装置1がフィンチューブ100を製造している状態を側方から見た図である。なお、この図1では、後述の接触位置150周辺の構成を簡略化して見やすくするため、後述の支持装置4及び軟磁性体10の図示を省略している。
【0030】
金属管101は、例えばステンレス鋼によって形成された円筒管である。この金属管101内の空間が熱交換の対象の流体を流通させる流路となる。金属管101は、その軸心を中心とした円筒状の外周面を有する。
【0031】
フィン102は、金属管101の外周面上に設けられており、金属管101の軸心を中心軸とした螺旋状を呈している。このフィン102は、フィンチューブ100の伝熱面積を大きくして、金属管101内の空間を流通する流体とフィンチューブ100の外側の気体や液体等との熱交換効率を向上させる。
【0032】
フィン102は、金属管101の周りに当該金属管101の軸心を中心とした螺旋状に巻き付けられてその金属管101の外周面に溶接された金属帯112からなる。金属帯112の材料としては、高い熱伝導率を有する反面、15×10−7H/m以下の低い透磁率を有することにより表皮効果を得にくい金属が用いられる。また、金属管101への溶接しやすさを考慮して、1200℃以下の融点を有する金属が金属帯112の材料として用いられる。具体的には、金属帯112の材料として、前記のような条件を満たす例えばアルミニウム又は銅が用いられる。
【0033】
金属帯112は、薄い板体であり、例えば1mm以下の厚みと数cm程度の均一な幅とを有する。金属帯112は、その幅方向の一方の端縁である内縁部112aと、幅方向の他方の端縁である外縁部112bとを有する。この金属帯112の内縁部112aが金属管101の外周面に溶接されるとともに、当該金属帯112がその幅方向において金属管101の外周面から外側へ突出するように金属管101に螺旋状に巻き付けられることによって、その金属帯112からなるフィン102が形成されている。
【0034】
以上のようなフィンチューブ100を製造するための当該第1実施形態によるフィンチューブ製造装置1(以下、単に製造装置1と称する)は、金属管101をその軸心回りに回転させながらその軸心に沿って移動させつつ、金属帯112の内縁部112aが金属管101の外周面に接近して所定の接触位置150でその金属管101の外周面に接触するように当該金属帯112を案内し、その金属帯112の内縁部112aを当該内縁部112aが金属管101の外周面に接触した点(接触位置)でその外周面に電気抵抗溶接し、その外周面に溶接された金属帯112を金属管101の軸心回りの回転及び軸心に沿った移動により螺旋状に成形することでフィン102を形成するものである。以下、この製造装置1の具体的な構成について説明する。
【0035】
製造装置1は、金属管駆動装置2(図1参照)と、支持装置4(図2参照)と、スクイズロール6と、電流発生装置8(図1参照)と、軟磁性体10(図2及び図3参照)と、を備えている。
【0036】
金属管駆動装置2は、金属管101をその軸心が略水平方向に延びる姿勢で保持するとともに、当該金属管101の周りに金属帯112を巻き付けるために、当該金属管101をその軸心回りに回転させながらその軸心に沿って移動させる装置である。この金属管駆動装置2は、金属管101の軸方向における一端を保持する保持部14(図1参照)と、その保持部14を金属管101の軸心に一致する軸回りに回転可能となるように支持する装置本体16と、その装置本体16に設けられていて保持部14を前記軸回りに回転させる図略の回転駆動装置と、装置本体16に設けられていて当該装置本体16を金属管101の軸方向に移動させる移動装置18とを有する。保持部14が金属管101を保持した状態で前記回転駆動装置がその保持部14を前記軸回りに一定の回転速度で回転させつつ、移動装置18が装置本体16を金属管101の軸方向に一定の回転速度で移動させることで、金属管駆動装置2は、金属管101をその軸心回りに回転させながらその軸心に沿って移動させるようになっている。
【0037】
支持装置4(図2参照)は、スクイズロール6と、電流発生装置8の後述の金属管接触電極32及び金属帯接触電極34と、軟磁性体10とを支持するためのものである。支持装置4は、金属管駆動装置2にセットされる金属管101の側方に配設される。この支持装置4は、所定の場所に据え付けられる支持台22と、その支持台22上に設けられた支持軸23、クランプ24及び図略の電極支持部とを有する。
【0038】
支持軸23は、スクイズロール6が回転可能となるように当該スクイズロール6を支持するものである。支持軸23は、スクイズロール6と同心となるように当該スクイズロール6を貫通しており、それによって、スクイズロール6がその軸心回りに回転可能となっている。支持軸23は、金属管101の軸心に対して僅かに傾いて延びている。
【0039】
クランプ24は、後述するように軟磁性体10を挟み込んで保持するものである。このクランプ24は、軟磁性体10が着脱可能となるように当該軟磁性体10を保持している。このため、クランプ24に保持させた軟磁性体10を交換可能となっている。
【0040】
図略の電極支持部は、電流発生装置8の後述する金属管接触電極32及び金属帯接触電極34を支持するものである。
【0041】
スクイズロール6は、金属管101の回転に伴って上から下へ移動してきた金属帯112の内縁部112aが金属管101の外周面に接近してその金属管101の側部に位置する接触位置150でその金属管101の外周面に接触するように当該金属帯112を案内するとともに、その金属帯112が当該金属帯112の厚み方向にぶれないようにその厚み方向への当該金属帯112の移動を制限する。このスクイズロール6によって金属帯112が案内されることにより、金属帯112の内縁部112aは、前記接触位置150で当該金属管101の外周面に押し付けられるようになっている。
【0042】
スクイズロール6は、軸6aと、第1円板6bと、第2円板6cとを有する。
【0043】
軸6aは、金属管101の軸心に対して僅かに斜めに傾いている。この軸6aは、スクイズロール6の回転の中心となるものであり、当該軸6aの軸心を中心としてスクイズロール6が回転可能となるように支持装置4の支持軸23によってスクイズロール6が支持されている。
【0044】
第1円板6bは、円形の板体であり、軸6aの軸心に当該第1円板6bの中心が一致するようにその軸6aの一端に取り付けられている。第2円板6cは、第1円板6bよりも小径の円形の板体であり、軸6aの軸心に当該第2円板6cの中心が一致するように軸6aの前記一端と反対側の端に取り付けられている。第2円板6cは、金属管101の軸心に沿った移動方向において第1円板6bに対して後側で第1円板6bと平行に配置されている。第1円板6bと第2円板6cとの間には、軸6aの長さ分に相当する隙間が設けられている。スクイズロール6は、この第1円板6bと第2円板6cとの間の隙間に金属帯112を受け入れ、その受け入れた金属帯112の厚み方向への移動を第1円板6bと第2円板6cとで制限するようになっている。
【0045】
電流発生装置8は、金属管101及び金属帯112にその金属管101の外周面上及び金属帯112の内縁部112aを流れる高周波交流電流を発生させる装置である。具体的には、この電流発生装置8は、1MCよりも低くて無線コントロールの周波数帯と干渉しない周波数、例えば300kHz〜400kHzの範囲内の周波数の高周波電流を金属管101及び金属帯112に生じさせる。この電流発生装置8は、金属管接触電極32と、金属帯接触電極34と、電源36とを有する。
【0046】
金属管接触電極32は、前記図略の電極支持部によって支持されて、金属管101の軸心回りの回転方向と逆向きに接触位置150から所定距離だけ離れた位置で金属管101の外周面に接触している。金属管接触電極32は、金属管101の外周面に接触することでその金属管101との間で通電可能となっている。金属管接触電極32は、金属管101がその軸心回りに回転しつつその軸心に沿って移動するのに伴って当該金属管101の外周面が当該金属管接触電極32に対して摺動するのを許容するようにその金属管101の外周面に接触している。
【0047】
金属帯接触電極34は、前記図略の電極支持部によって支持されて、金属管101の回転に伴って金属帯112が移動する方向と逆向きに接触位置150から内縁部112aに沿って所定距離だけ離れた位置、すなわち接触位置150から内縁部112aに沿って上側に所定距離だけ離れた位置で金属帯112に接触している。この金属帯接触電極34は、金属帯112の内縁部112a及びその内縁部112aから僅かに当該金属帯112の幅方向内側に及ぶ範囲に接触しており、その範囲のうち金属管101の軸心に沿った移動方向と逆側を向く面に接触している。金属帯接触電極34は、金属帯112に接触することでその金属帯112との間で通電可能となっている。金属帯接触電極34は、金属帯112が移動するのに伴ってその金属帯112の前記逆側を向く面が当該金属帯接触電極34に対して摺動するのを許容するようにその金属帯112の前記逆側を向く面に接触している。
【0048】
電源36は、導線を介して金属管接触電極32と金属帯接触電極34とに接続されている。電源36は、高周波交流電源であり、導線を介して金属管接触電極32と金属帯接触電極34に高周波電流を出力する。この電源36は、1MC未満の周波数の高周波電流を出力するものであり、好ましくは300kHz〜400kHzの範囲内の周波数の高周波電流を出力するものである。すなわち、電源36は、一般的に入手可能な程度の高周波数の交流電流を出力する電源である。この電源36から金属管接触電極32と金属帯接触電極34に高周波電流が出力されることにより、金属管接触電極32と金属帯接触電極34との間で接触位置150を経由するように金属管101の外周面上及び金属帯112の内縁部112aを通って高周波電流が流れるようになっている。
【0049】
軟磁性体10は、金属管101及び金属帯112に高周波電流が流れるときに生じる磁束を集めることで当該軟磁性体10の周囲の高周波電流の密度を高める効果を有するものである。この軟磁性体10は、金属管101及び金属帯112の抵抗率よりも高い抵抗率を有するとともに、金属管101及び金属帯112の透磁率よりも高い透磁率を有する。具体的には、軟磁性体10は、0.0001Ωcm以上の抵抗率と0.001H/m以上の透磁率を有するものである。例えば、軟磁性体10は、酸化鉄の焼結体であるソフトフェライトからなり、約0.0004Ωcmの抵抗率と、約0.0015H/mの透磁率とを有する。
【0050】
軟磁性体10は、磁束を集めてその周囲の高周波電流の密度を高める当該軟磁性体10の効果が前記接触位置150に及ぶ範囲内に配置されている。具体的には、軟磁性体10は、金属管101の径方向において前記接触位置150の外側でその接触位置150に隣接するように配置されている。具体的には、軟磁性体10は、前記接触位置150から僅かな間隔をあけて配置されており、詳しくは前記接触位置150と当該軟磁性体10との間の間隔が最も小さい所で7mm以下になる位置に配置されている。
【0051】
軟磁性体10が前記のような抵抗率を有することから当該軟磁性体10自体にはほぼ電流が流れず、また、当該軟磁性体10は残留磁気も小さいという性質を持つことから、当該軟磁性体10に磁束が集まることによって当該軟磁性体10の周囲に電流が集中し、その結果、前記接触位置150に流れる高周波電流の集中度が高められるようになっている。
【0052】
また、軟磁性体10の形状は、四角柱、より具体的には直方体である。例えば、軟磁性体10は、約9.5mm四方の矩形断面と約19.1mmの高さを有する柱状体である。この軟磁性体10は、支持台22に設けられた前記クランプ24によってその高さ方向の両側から挟み込まれることにより、前記の位置に保持されるとともに、当該軟磁性体10の側面が金属帯112の厚み方向における一方の面、具体的には、軟磁性体10は、金属帯112のうち金属管101の軸心に沿った移動方向において後側を向く面に接触している。軟磁性体10は、スクイズロール6の第2円板6cと金属管101との間のスペースに配置されている。
【0053】
次に、本発明の第1実施形態によるフィンチューブの製造方法について説明する。この製造方法では、前記のような構成の製造装置1を用意し、この製造装置1を用いてフィンチューブ100を製造する。
【0054】
まず、製造装置1の金属管駆動装置2の保持部14に金属管101を保持させるとともに、金属帯112の先端をスクイズロール6の第1円板6bと第2円板6cとの間の隙間に上から挿入する。
【0055】
そして、スクイズロール6により金属帯112の内縁部112aが金属管101の外周面へ接近して接触位置150でその金属管101の外周面に接触するように金属帯112を案内すると案内工程と、電流発生装置8により金属管101及び金属帯112に高周波電流を生じさせてその高周波電流が金属管101及び金属帯112を流れることで生じる熱により金属帯112の内縁部112aを接触位置150で金属管101の外周面に溶接することと、金属管駆動装置2により金属管101をその軸心回りに一定の回転速度で回転させながらその軸心に沿って一定の速度で移動させることとにより、金属管101の外周面に溶接した金属帯112を螺旋状に成形してフィン102を形成するフィン形成工程と、を行う。
【0056】
具体的に、電流発生装置8の電源36が高周波電流を出力することにより、金属管接触電極32と金属帯接触電極34との間で前記接触位置150を経由するように金属管101の外周面上及び金属帯112の内縁部112aを通って流れる高周波電流が金属管101及び金属帯112に生じる。この高周波電流は、金属管101の外周面のうち金属管接触電極32と前記接触位置150とを最短距離で結ぶ経路と、金属帯112のうち金属帯接触電極34と前記接触位置150との間の内縁部112aとに集中して流れる。これは、高周波電流の表皮効果と、金属管101の外周面上の前記経路と金属帯112の内縁部112aとが近接していることによる近接効果とに起因するものである。
【0057】
そして、このように金属管101及び金属帯112に高周波電流が流れるときに磁束が発生し、その磁束は軟磁性体10に集まる。これにより、金属管101及び金属帯112のうちで軟磁性体10の周囲に流れる電流の密度が高くなる。その一方で、軟磁性体10は高い抵抗率を有することから、軟磁性体10自体にはほぼ電流が流れない。その結果、金属管101及び金属帯112に流れる高周波電流のうち軟磁性体10に隣接する接触位置150を通って流れる高周波電流の集中度が高められる。
【0058】
そして、前記のように金属管101及び金属帯112に高周波電流が流れることによって生じる熱で接触位置150において金属帯112の内縁部112aが金属管101の外周面に溶接され、その外周面に溶接された金属帯112が金属管駆動装置2による金属管101の軸回りの回転及びその軸心に沿った移動により螺旋状に成形される。この螺旋状に成形された金属帯112がフィン102となる。
【0059】
以上のようにして、金属管101とその金属管101の周りに螺旋状に巻き付けられて当該金属管101の外周面に溶接されたフィン102とからなるフィンチューブ100が製造される。
【0060】
当該第1実施形態によるフィンチューブの製造方法では、フィン102の形成工程で金属管101及び金属帯112に高周波電流を生じさせるときに、軟磁性体10が磁束を集めてその周囲の高周波電流の密度を高める効果が接触位置150に及ぼされる。このため、金属管101及び金属帯112に生じさせる高周波電流が、1MC以上の極めて高い周波数のものではなく、それよりも周波数が低くて一般的に入手容易な高周波交流電源によって出力可能で且つ無線のコントロール周波数帯と干渉しない程度の高周波電流であることにより、大きな表皮効果が得られない場合であっても、接触位置150に流れる高周波電流の集中度を高めることができる。このため、透磁率が低くて電流の表皮効果を得にくい金属材料からなる金属帯112を金属管101の外周面に電気抵抗溶接してフィンチューブ100を製造することができる。
【0061】
また、この第1実施形態によるフィンチューブの製造方法では、高周波電流が金属管101の外周面のうち金属管接触電極32と接触位置150とを最短距離で結ぶ経路とその経路に近接する金属帯112の内縁部112aの金属帯接触電極34と接触位置150との間の部分とを通って流れる。このため、高周波電流による表皮効果に加えて、金属管101の外周面上の前記経路を流れる高周波電流と金属帯112の内縁部112aの前記部分を流れる高周波電流との間での近接効果により、金属管101の外周面上の前記経路を流れる高周波電流の集中度をより高めることができるとともに、金属帯112の内縁部112aの前記部分を流れる高周波電流の集中度をより高めることができる。このため、接触位置150において金属管101の外周面に金属帯112の内縁部112aをより有効に溶接できる。
【0062】
また、この第1実施形態では、軟磁性体10が金属管101及び金属帯112の抵抗率よりも十分に高い0.0001Ωcm以上の抵抗率を有するため、金属管101及び金属帯112に高周波電流を生じさせたときに軟磁性体10には高周波電流が流れるのを抑制できる。このため、軟磁性体10に電流が流れて当該軟磁性体10が発熱した場合に生じる当該軟磁性体10の磁束集中機能の低下を防ぐことができる。
【0063】
また、軟磁性体10は、0.001H/m以上の透磁率を有しており、この透磁率は、フィンチューブ100を製造するために一般的に用いられる金属管101及び金属帯112の材料の透磁率よりも十分に高い透磁率である。このため、金属管101及び金属帯112に高周波電流を生じさせるときに発生する磁束を当該軟磁性体10に確実に集めることができる。
【0064】
また、この第1実施形態では、熱伝導率が高いアルミニウム又は銅からなる金属帯112でフィン102を形成しているため、熱交換器に用いるフィンチューブ100のフィン102として良好な熱交換効率をもたらすものを形成することができる。なお、アルミニウム及び銅はいずれも透磁率が低くて表皮効果を得にくいため、このようなアルミニウム又は銅からなる金属帯112は、従来の電気抵抗溶接を用いた製造方法では1MC以上の極めて高い周波数の高周波電流でなければ金属管101の外周面に溶接することが困難であるが、当該第1実施形態による製造方法では、前記の軟磁性体10による磁束の集中効果に起因する接触位置150への高周波電流の集中度の向上効果により、このようなアルミニウム又は銅からなる金属帯112を金属管101の外周面に良好に電気抵抗溶接することが可能である。
【0065】
次に、軟磁性体10の体積が金属管101への金属帯112の溶接速度に与える影響について調べた実験1と、接触位置150と軟磁性体10との間の距離が金属管101への金属帯112の溶接速度に与える影響について調べた実験2とについて説明する。
【0066】
(実験1)
この実験1では、第1実施形態による製造装置1、すなわち軟磁性体10を備える製造装置1を用いてフィンチューブ100を製造する実施例と、軟磁性体10を備えていないこと以外は実施例で用いた製造装置1と同様の製造装置を用いてフィンチューブ100を製造する比較例とについて、それぞれ、金属管101に対する金属帯112の溶接速度を測定した。
【0067】
具体的に、実施例及び比較例の両方において、金属管101はカーボン鋼からなるものを用い、金属帯112は冷間圧延鋼板もしくは熱間圧延鋼板からなるものを用いた。また、実施例及び比較例の両方において、電流発生装置8の電源36が出力する高周波電流の周波数を370kHz〜390kHzの範囲内の特定の周波数に設定した。また、実施例では、軟磁性体10として0.03Ωcmの抵抗率及び0.0015H/mの透磁率を有するものを用い、その軟磁性体10を当該軟磁性体10と接触位置150との間の最短距離が4mmになるように配置した。また、実施例では、体積が異なる複数の軟磁性体10をそれぞれ用いた場合について金属管101への金属帯112の溶接速度を測定した。また、比較例では、軟磁性体10を設けていないこと以外は実施例と同じ条件で金属管101への金属帯112の溶接速度を測定した。
【0068】
そして、体積が異なる軟磁性体10をそれぞれ用いた実施例の複数の場合で測定した溶接速度の比較例で測定した溶接速度に対する比を求めるとともに、実施例の前記複数の場合で金属管101への金属帯112の溶接に使用する電力、すなわち電源36から出力されて消費される電力に対する軟磁性体10の体積の比を求めた。このようにして求めた、実施例の前記複数の場合の使用電力に対する軟磁性体10の体積の比と、比較例の溶接速度に対する実施例の前記複数の場合の溶接速度の比との対応関係が、図4に示されている。
【0069】
この図4から判るように、前記使用電力に対する軟磁性体10の体積の比が大きくなるほど、溶接速度を高めることができる傾向にある。そして、前記使用電力に対する軟磁性体10の体積の比を20以上にすることで、軟磁性体10を設けていない比較例に比べて約1.35倍以上の溶接速度が得られ、軟磁性体10を設けることによる著しい溶接速度の向上効果が得られることが判った。
【0070】
(実験2)
この実験2では、前記実験1と同様、軟磁性体10を備える製造装置1を用いてフィンチューブを製造する実施例と、軟磁性体10を備えていないこと以外は実施例で用いた製造装置1と同様の製造装置を用いてフィンチューブ100を製造する比較例とについて、それぞれ、金属管101に対する金属帯112の溶接速度を測定した。
【0071】
実施例及び比較例の両方において、金属管101及び金属帯112の材料、及び、高周波電流の周波数は、前記実験1と同様のものを採用した。また、この実験2の実施例で用いた軟磁性体10の抵抗率及び透磁率は、前記実験1の実施例で用いた軟磁性体10の抵抗率及び透磁率と同様である。一方、この実験2では、実施例で用いる軟磁性体10の体積は1724mmとした。そして、実施例では、接触位置150と軟磁性体10との間の最短距離が異なる複数の場合について金属管101への金属帯112の溶接速度をそれぞれ測定した。また、比較例では、軟磁性体10を設けていないこと以外は実施例と同じ条件で金属管101への金属帯112の溶接速度を測定した。
【0072】
そして、比較例で測定した溶接速度に対する接触位置150と軟磁性体10との間の最短距離が異なる実施例の複数の場合で測定した溶接速度の比を求めた。図5には、接触位置150と軟磁性体10との間の最短距離と前記のように求めた溶接速度の比との対応関係が示されている。
【0073】
この図5から判るように、接触位置150と軟磁性体10との間の最短距離が7mmよりも大きくなると溶接速度が急激に低下する傾向にある一方、その最短距離を7mm以下にすることで高い溶接速度を保つことができる。具体的には、軟磁性体10を設けた実施例において接触位置150と軟磁性体10との間の最短距離を7mm以下にすることで、軟磁性体10を設けていない比較例に比べて約1.3倍以上の溶接速度が得られることが判った。
【0074】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態によるフィンチューブの製造方法で用いる製造装置1がフィンチューブ100を製造している途中の状態を側方から見た図である。この図6では、前記第1実施形態の図1と同様、接触位置150周辺の構成を簡略化して見やすくするため、支持装置4及び軟磁性体10の図示を省略している。
【0075】
この第2実施形態による製造装置1は、電磁誘導加熱により金属管101を加熱することでその金属管101の外周面に金属帯112の内縁部112aを溶接するように構成されている。すなわち、この第2実施形態による製造装置1は、電磁誘導により金属管101に高周波電流を生じさせ、その高周波電流が金属管101を流れることで発生する熱により金属帯112の内縁部112aを金属管101の外周面に溶接するように構成されている。そして、この第2実施形態による製造装置1では、金属管101の外周面と金属帯112の内縁部112aとが接触する接触位置150に隣接した位置で金属管101の周りを囲む軟磁性体44により前記電磁誘導の際に生じる磁束を集めることで、接触位置150において金属管101の外周面上を流れる高周波電流の集中度を高めるようになっている。
【0076】
具体的に、この第2実施形態による製造装置1は、金属管駆動装置2と、図略の支持装置と、スクイズロール6と、電流発生装置42と、軟磁性体44と、を備えている。
【0077】
この第2実施形態による製造装置1の金属管駆動装置2及びスクイズロール6の構成は、前記第1実施形態による製造装置1の金属管駆動装置2及びスクイズロール6の構成と同様である。
【0078】
電流発生装置42は、電磁誘導により金属管101に高周波電流を生じさせる装置である。この電流発生装置42は、誘導加熱用のコイル46と、電源48とを有する。
【0079】
コイル46は、金属管101の軸心に沿った移動方向において接触位置150の後側に隣接した位置で金属管101の周りを囲み、その金属管101の外周面と当該コイル46の内周面との間に隙間が設けられるように配置されている。
【0080】
電源48は、前記第1実施形態における電源36と同様の高周波交流電源であり、コイル46に接続されている。この電源48は、金属管101に電磁誘導によって高周波電流を生じさせるようにコイル46に高周波電流を流す。
【0081】
軟磁性体44は、コイル46による電磁誘導の際に生じる磁束を当該軟磁性体44に集め、それによって接触位置150において金属管101の外周面上を流れる高周波電流の集中度を高めるものである。
【0082】
この軟磁性体44は、前記第1実施形態の軟磁性体10と同様の材料からなり、前記第1実施形態の軟磁性体10と同様の物性を有する。この軟磁性体44は、金属管101の外径よりも大きい内径を有する円筒状を呈し、金属管101と同心となるように配置されるとともに、金属管101の外周面とコイル46の内周面との間で金属管101の周りを囲んでいる。軟磁性体44は、その軸心の延びる方向においてコイル46の同方向の長さよりも僅かに大きい長さを有する。軟磁性体44は、金属管101の軸心に沿った移動方向において接触位置150の後側に隣接して配置されている。
【0083】
次に、この第2実施形態によるフィンチューブの製造方法について説明する。
【0084】
この第2実施形態によるフィンチューブの製造方法では、前記のように電磁誘導により金属管101に高周波電流を生じさせるように構成された製造装置1を用意し、その製造装置1によってフィンチューブ100を製造する。
【0085】
このフィンチューブ100の製造の際、前記第1実施形態と同様に、金属管駆動装置2により金属管101をその軸心回りに一定の回転速度で回転させながらその軸心に沿って一定の速度で移動させるとともに、スクイズロール6によって案内された金属帯112の内縁部112aが接触位置150において金属管101の外周面に押し付けられる。
【0086】
そして、電源48からコイル46に高周波電流が流されることで、電磁誘導により金属管101のうちコイル46の径方向内側に位置する部位に高周波電流が生じる。この高周波電流が金属管101を流れることによって生じる熱により、接触位置150において金属帯112の内縁部112aが金属管101の外周面に溶接される。
【0087】
このとき、電磁誘導で生じる磁束が軟磁性体44に集まり、その結果、金属管101の外周面のうち当該軟磁性体44によって周りを囲まれた部位に流れる高周波電流の集中度が高まる。それに伴い、コイル46及び軟磁性体44に隣接する接触位置150において金属管101の外周面上を流れる高周波電流の集中度も高まり、接触位置150における金属管101の外周面への金属帯112の溶接が有効に行われる。
【0088】
この第2実施形態によるフィンチューブの製造方法の前記以外の構成は、前記第1実施形態によるフィンチューブの製造方法と同様である。
【0089】
この第2実施形態によるフィンチューブの製造方法では、金属管101の外周面に金属帯112を電気抵抗溶接するための高周波電流を、電磁誘導により金属管101に非接触で生じさせることができる。金属管101の外周面に接触する電極と金属帯112に接触する電極とを通じて、電気抵抗溶接のための高周波電流を金属管101及び金属帯112に流す場合には、それらの電極が金属管101及び金属帯112に摺接することで摩耗し、それらの電極の煩雑な交換作業が必要になるが、この第2実施形態の製造方法では、前記のように非接触で金属管101に高周波電流を生じさせてその金属管101の外周面に金属帯112を電気抵抗溶接できるため、前記のような電極の煩雑な交換作業を不要とすることができる。
【0090】
また、この第2実施形態では、円筒状の軟磁性体44が金属管101の外周面とコイル46の内周面との間に配置されて金属管101の周りを囲んでいるため、電磁誘導によって金属管101に高周波電流を生じさせるときに発生する磁束が金属管101の周りの円筒状の軟磁性体44に集まる。その結果、金属管101の外周面のうち軟磁性体44によって周りを囲まれた部位に流れる高周波電流の集中度が高められる。このため、その高周波電流によって生じる熱により当該部位に隣接する接触位置150での金属管101の外周面への金属帯の溶接を有効に行うことができる。
【0091】
この第2実施形態のフィンチューブの製造方法によって得られる前記以外の効果は、前記第1実施形態のフィンチューブの製造方法によって得られる効果と同様である。
【0092】
なお、本発明によるフィンチューブの製造方法は、前記実施形態のようなものに必ずしも限定されない。本発明によるフィンチューブの製造方法に例えば以下のような構成を採用することが可能である。
【0093】
例えば、金属管と金属帯との接触位置に隣接して配置する軟磁性体は、必ずしもソフトフェライトからなるものに限定されない。具体的には、当該軟磁性体は、0.0001Ωcm以上の抵抗率と0.001H/m以上の透磁率とを有するのであれば、ソフトフェライト以外の材料からなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 フィンチューブ製造装置
6 スクイズロール
8、42 電流発生装置
10、44 軟磁性体
32 金属管接触電極
34 金属帯接触電極
36、48 電源
100 フィンチューブ
101 金属管
102 フィン
112 金属帯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7