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特開2019-5898研磨部材、特に回転研磨ディスクおよび研磨部材、特に回転研磨ディスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-5898(P2019-5898A)
(43)【公開日】2019年1月17日
(54)【発明の名称】研磨部材、特に回転研磨ディスクおよび研磨部材、特に回転研磨ディスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/00 20060101AFI20181214BHJP
   B24D 5/04 20060101ALI20181214BHJP
【FI】
   B24D3/00 340
   B24D5/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-120980(P2018-120980)
(22)【出願日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】17177941.6
(32)【優先日】2017年6月26日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518227614
【氏名又は名称】ドロンコ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】DRONCO GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ブレッヒシュミット
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ルス
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン シュスター
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シュナーベル
(72)【発明者】
【氏名】ラッセ ベッカー
【テーマコード(参考)】
3C063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA02
3C063BA32
3C063BF03
3C063BF08
3C063CC17
3C063CC24
3C063FF30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面仕上げまたは表面処理中での研磨による材料除去中におけるディスク回転中に増大した振動を低減する。
【解決手段】特に切削または研削ディスクなどの概してディスク形状を有する、研磨部材10aの製造方法は、補強インサート13、24の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触し、補強インサート13、24が裏当て部材15、16により少なくとも部分的に覆われ、かつ、裏当て部材15、16の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように、型内において硬化性研磨樹脂化合物の層、特に硬化性研磨粒の層と裏当て部材15、16との間に補強インサート13、24を配設するステップと、硬化性研磨樹脂化合物を硬化させることにより補強インサート13、24と裏当て部材15、16とを接合するステップであって、硬化した研磨樹脂化合物が研磨部材10aの研磨層12を形成する、ステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に切削ディスクまたは研削ディスクなどの概してディスク形状を有する、研磨部材(10a、10)の製造方法であって、前記方法が、
−補強部材(13)の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触し、前記補強部材(13)が裏当て部材(16)により少なくとも部分的に覆われ、かつ前記裏当て部材(16)の少なくとも一部分が前記硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように、型内において前記硬化性研磨樹脂化合物の層、特に硬化性研磨粒の層と前記裏当て部材(16)との間に前記補強部材(13)を配設するステップと、
−前記硬化性研磨樹脂化合物を硬化させることにより前記補強部材(13)と前記裏当て部材(16)とを接合するステップであって、前記硬化した研磨樹脂化合物が前記研磨部材(10)の研磨層(12)を形成する、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記補強部材(13)および前記裏当て部材(16)が互いに物理的に係合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補強部材(13)および前記裏当て部材(16)が互いに機械的に連結される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記補強部材(13)および前記裏当て部材(16)が、前記硬化性研磨樹脂化合物を硬化させて前記研磨部材(10)の中心開口(14)を画定する前に同軸に位置合わせされる、特に面一に嵌合するように位置合わせされる中心孔を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記補強部材(13)が、外側環状形状を有し、かつ前記中心開口(14)の周囲の円周部分において前記研磨部材(10)を補強するようになされる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記裏当て部材(15)は、前記中心開口(14)を取り囲む前記裏当て部材(16)の径方向内側部分が前記補強部材(13)に物理的に直接接触しかつ前記裏当て部材(16)の径方向外側部分が前記硬化性研磨樹脂化合物の層に物理的に直接接触するように、前記型内に位置決めされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記補強部材(13)が、機械的な力、特にトルクを前記研磨部材(10)に伝達するようになされる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記補強部材(13)が、特に補強部材に配置された打ち抜き孔の周囲の円周に、突出部を含み、前記突出部が、硬化後に前記研磨層(12)の材料中に少なくとも部分的に入り込むように配設される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
硬化前および硬化中の少なくともいずれか一方において、特に前記型内の、前記研磨部材(10、10a)の構成要素に軸方向圧力を加えることを更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化性研磨樹脂化合物が熱硬化される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の裏当て部材(15)が、前記硬化性研磨樹脂化合物を前記型内に導入する前に該型に挿入される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記補強部材(13)は、前記補強部材(13)が、硬化後に、前記概してディスク形状の研磨部材(10)の上側平表面と下側平表面との中間にある中心部に位置する様式で、前記型内に位置決めされる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記裏当て部材(15、16)、特に前記第1の裏当て部材(15)が、繊維織物から、特に樹脂含浸ガラス繊維織物から作製され、および/または前記硬化性研磨樹脂化合物が、熱硬化性合成ポリマー、好ましくはフェノール樹脂を含み、および/または前記補強部材(13)が金属または合金から作製される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記研磨層(12)と裏当て部材(16)との間に位置する補強部材(13)を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法に従って製造された研磨部材(10a、10)、特に切削ディスクまたは研削ディスク。
【請求項15】
前記補強部材(13)が前記研磨部材(10)の重心を取り囲むように位置決めされる、請求項14に記載の研磨部材(10a、10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転研磨部材、特に研削ディスクまたは切削ディスクなどの概してディスク形状を有する樹脂性回転研磨部材の製造方法に関する。本発明はまた、新規な方法に従って製造される研削ディスクまたは切削ディスクなどの概してディスク形状を有する樹脂性回転研磨部材に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の異なる種類の切削または研削ディスクのような研磨部材は、当該技術分野において十分に確立されている。既知の研磨部材は、特に、キャリアまたは同様のものへの研磨剤の接合の種類に関して異なる。
【0003】
(特許文献1)は、研磨剤で被覆される2つの研磨面を有する研磨ディスクを開示している。典型的には、研摩剤は、接着によって、特に接着剤による接着によって研磨ディスクの外表面に接合される。ワッシャなどの中間部材が研磨ディスクの中心開口の周囲に配設される。中間部材は研磨部材に埋設されない。
【0004】
(特許文献2)は、砥石本体を備えた回転研削砥石を開示しており、砥石本体は、樹脂性研磨材料と繊維ガラスとの4〜10層の交互層で構築されており、樹脂性研磨材料は埋設鋼製リングを含んでおり、該リングは、研磨層中の樹脂が、樹脂性研磨層を間に挟む1対のガラス繊維製の裏当て層のそれぞれの隣接する1つに前記リングの対向する両側面を接合するように、研磨層よりも薄い、内部の樹脂性研磨層に受け入れられる。前記リングの各側面と隣接する裏当て層との樹脂接合は、側面荷重性が不必要に低くかつトルク伝達性が低下した研削砥石を生み出す可能性があるだけでなく、砥石本体からリングに伝達可能なトルクの最大量が、リングを両方の裏当て層に接合するために使用される研磨層中の樹脂の粘弾性特性に起因する経時変化を含む、研削砥石動作中の熱蓄積により不利に更に低減される可能性がある。結果的に、動作寿命の低下または時期尚早の突然の故障を有害にもたらす可能性がある不必要に低下した側面荷重特性およびトルク伝達特性を有する比較的厚い研削砥石となる。
【0005】
現在の技術水準の回転研削ディスクまたは回転切削ディスクは、組立時に配設された、少なくとも1つの研磨層とガラス繊維織物からなる1対の外側裏当て層とで構成され、外側裏当て層の1つにより形成されたディスクの一方の側面に対して機械的に係合するように圧入された、ディスク本体における中心開口と同軸の少なくとも1つの側面装着金属補強リングを有する少なくとも一方の側面に後にラベルが貼り付けられる環状ディスク本体であって、外側裏当て層により形成されたディスクの対向する側面に対してそれぞれ圧入された1対の側面装着補強リングを有することができる環状ディスク本体を形成する。各補強リングは、ディスク本体へのリングのより確実な機械的取り付けを提供できる組立時に側面装着リングが押し当てられる外側裏当て層に係合してこの層内に入り込むことができる、1つまたは複数の突起などの、1つまたは複数の離間した突出部を有することができる。各側面装着リングはまた、ディスク本体における中心開口と一致して配置されたリングの内周縁部にわたって延びる軸方向に延びるフランジまたはリップの形態の環状突出部を含むことができる。各側面装着は、中心開口の周りのディスク本体を補強するのに役立つだけでなく、グラインダまたは同様のものなどの、回転電動工具へのディスクの取り外し可能な装着も容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4951423号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1028414767号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
側面装着リングを備えたこのようなディスクは、表面仕上げまたは表面処理中での研磨による材料除去中におけるディスク回転中に増大した振動を受ける傾向があり、このことが、最大回転速度の制限と、研磨による材料除去速度の低下と、使用および動作中に材料を研磨して除去できる精度の低下と併せて、操作者の疲労の増大および他の健康上の問題をもたらす可能性がある。このようなディスクは、典型的には、振動を悪化させる可能性があるだけでなく、動作速度、研磨による材料除去速度、および精度を低下させる可能性もある、側面荷重要件を満たすのに十分に大きな厚さを必要とする。側面装着補強リングを備えたこのような研削または切削ディスクは過去には大きな商業的成功を収めているが、それにもかかわらず、これらの欠点の1つまたは複数に鑑みて改良が依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、特に構造的完全性および機械的安定性に関して、改良されたレイアウトおよび構造の回転研磨部材、特に回転研磨ディスクを提供することである。
この目的は、請求項1に記載の研磨部材の製造方法および請求項14に記載の研磨部材により達成される。
【0009】
回転研磨部材、特に、環状切削ディスクまたは環状研削ディスクなどの概してディスク形状を有する研磨部材の製造方法は、
−補強インサートの少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触し、補強インサートが裏当て部材により少なくとも部分的に覆われ、かつ裏当て部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように、型内において硬化性研磨樹脂化合物の層、特に硬化性研磨粒の層と裏当て部材との間に補強インサート(または補強部材)を配設するステップと、
−硬化性研磨樹脂化合物を硬化させることにより補強インサートと裏当て部材とを接合するステップであって、硬化した研磨樹脂化合物が研磨部材の研磨層を形成する、ステップとを含む。
【0010】
回転研磨部材のかかる1つの製造方法において、補強インサートは、補強インサートが裏当て部材に固定されるようにインサートが裏当て部材に機械的に連結される様式で裏当て部材に物理的に係合される。回転研磨部材のかかる別の製造方法において、補強インサートと裏当て部材との物理的係合は、熱硬化性樹脂のような硬化性接着材料の使用などによる、補強インサートと裏当て部材との接着接合で補うことができ、それにより補強インサートを裏当て部材に機械的にも接着によっても連結する。
【0011】
本発明は、特に研磨部材を回転機械の回転シャフトに装着するための手段を提供する一体化された補強部材(または補強インサート)を有する研磨部材の製造方法を提供する。補強部材は、略平面形状を有し、かつ物質間接合によって硬化後に研磨層に強固に連結される。特に、物質間接合は、研磨剤を含有する硬化樹脂によりもたらされる接合である。製造中に、補強部材は、特に型内に配置された硬化性研磨粒の層により提供され得る硬化性研磨樹脂化合物の層と、繊維織物のシートなどの、略平面状裏当て部材との間に配設される。補強部材の一方の側面は、硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触し、かつ補強部材の反対側の側面は、裏当て部材により少なくとも部分的に覆われる。裏当て部材の少なくとも一部分もまた、硬化性研磨樹脂化合物の層に物理的に直接接触する。硬化後に、硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように配設された部分において物質間接合がもたらされる。換言すれば、補強部材は、補強部材が研磨部材により完全に取り囲まれる様式で、硬化後に形成された研磨層に埋設されるのではなく、裏当て部材により覆われない領域において研磨層に接合される。一方側における補強部材および/または裏当て部材と他方側における研磨層との物質間接合は、機械的安定性および構造的完全性が向上した研磨部材を提供する。補強部材は、研磨層に強固に連結され、かつ特に機械的な力またはトルクを研磨部材に伝達するためのリンクを提供するようになされる。
【0012】
本明細書で前述したような技術水準の既知の研磨部材のレイアウトと比較して、補強部材(または補強インサート)は、研磨部材の外表面の1つに近接して配設されるのではなく研磨部材の中心部分に配設される。補強部材は、特に研磨部材の重心の周囲に配設されてもよい。この構成は、アンバランスを最小限に抑えるのを有益に補助する。特に、研磨部材が回転切削ディスクまたは回転研磨ディスクとして構成される場合に、研磨部材の向上したレイアウト性は、より速い回転速度での動作を補助し得る。
【0013】
硬化した研磨樹脂化合物の物質間接合により提供される、補強部材(または補強インサート)と研磨層との強固な連結は、十分な機械的安定性を提供するために研磨層内に入り込むようになされる突起または突出部のような機械的特徴部に主に依存するものではない。したがって、補強部材の表面は、特に、完全に平坦で滑らかであってもよい。結果として、研磨部材の全体の厚さが低減されてもよい。全体の厚さが低減された研磨部材は、より速い切削速度もしくは研削速度および/または高い精度の点で特に望ましい。
【0014】
補強部材(または補強インサート)および裏当て部材には、好ましくは、硬化性研磨樹脂化合物を硬化させる前に裏当て部材および補強部材が型内に配設されるときに位置合わせされる中心孔が設けられる。中心孔は、特に面一に嵌合するように位置合わせされてもよい。別の実施形態において、補強部材には、裏当て部材の直径よりも小さな直径を有する中心孔が設けられる。いずれの場合も、中心孔は、硬化性研磨樹脂化合物の硬化後に研磨部材の中心開口を画定するように同軸に位置合わせされる。
【0015】
好ましくは、補強部材(または補強インサート)は、環状の外形を有し、その一方で、内側の形状は環状であるが、他の形態をとることもできる。補強部材は、中心開口の周囲の円周部分において研磨部材を補強するようになされる。特に、補強部材は、特に研磨部材の他の構成要素と比較して、高い機械的強度、安定性または剛性を有する材料から作製されたリングにより提供されてもよい。補強部材は、研磨部材を回転させることが可能な回転機械の装着手段により係合されるようになされてもよい。補強材には、特に研磨部材をセンタリングするための手段を提供するために、中心開口内に突出する1つまたは複数の突出部が設けられても設けられなくてもよい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、裏当て部材は、中心開口を取り囲む裏当て部材の径方向内側部分が補強部材(または補強インサート)に物理的に直接接触し、かつ裏当て部材の径方向外側部分が硬化性研磨樹脂化合物の層に物理的に直接接触するように、型内に位置決めされる。換言すれば、裏当て部材は、特に径方向において補強部材よりも大きな寸法を有する。裏当て部材および補強部材は、硬化性研磨樹脂化合物を硬化させた後に形成された研磨層を介して間接的に連結される。
【0017】
補強部材(または補強インサート)は、好ましくは、機械的な力、特にトルクを研磨部材に伝達するようになされる。補強部材は、特に、研磨部材を動作させる、特に回転させるための機械の装着手段により係合されるようになされてもよい。装着手段は、クランプ、ねじ、ボルトまたは同様のものを含み得る。
【0018】
補強部材(または補強インサート)は、好ましくは、特に補強部材に配置された打ち抜き孔の周囲の円周に、突出部を含む。突出部は、硬化後に研磨層の材料中に少なくとも部分的に入り込むように配設される。したがって、突出部は、硬化後に研磨層の材料に埋設され、ひいては、研磨部材の構造的完全性および機械的安定性を更に向上させるために研磨層との機械的接合を形成する。
【0019】
好ましくは、研磨部材の製造方法は、硬化前および/または硬化中に、型内に配設された構成要素に軸方向圧力を加えるステップを更に含む。前記研磨部材の製造方法は、好ましくは、
−硬化性研磨樹脂化合物、特に硬化性研磨粒の層を型内に導入するステップと、
−補強部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように補強インサート(または補強部材)を型に挿入するステップと、
−補強部材が裏当て部材により少なくとも部分的に覆われかつ裏当て部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように裏当て部材を型に挿入するステップと、
−特に略平面状裏当て部材に略直交する方向に、型内に配設された構成要素に軸方向圧力を加えるステップと、
−研磨部材の研磨層を形成するために硬化性研磨樹脂化合物を硬化させるステップであって、硬化性研磨樹脂化合物の硬化中に、補強部材および裏当て部材が、硬化した研磨樹脂化合物により確立された物質間接合によって研磨層に接合される、ステップと、を特に順に含む。
【0020】
硬化性研磨樹脂化合物の層、補強インサート(または補強部材)および裏当て部材は型内に逆の順序で導入することもできることが理解される。
好ましくは、軸方向圧力が、成形前または成形中に研磨部材の構成要素に加えられる。いくつかの場合では、硬化中に、型内に配設された構成要素に対して軸方向圧力を加えることが維持されてもよい。他の場合では、研磨部材を構成する構成要素の層状構造に軸方向圧力が加えられている間に、硬化がオーブン内の型の外側で起こる。
【0021】
硬化性研磨樹脂化合物は、特にオーブン内で熱硬化させることができる。任意選択的に、型内の構成要素の予備硬化または更には完全な硬化が可能である。熱硬化させるステップは、型内に配設された構成要素、特に硬化性研磨樹脂化合物を熱にさらすことを含む。研磨部材の製造方法は、好ましくは、
−硬化性研磨樹脂化合物、特に硬化性研磨粒の層を型内に導入するステップと、
−補強部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように補強インサート(または補強部材)を型に挿入するステップと、
−補強部材が裏当て部材により少なくとも部分的に覆われかつ裏当て部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように裏当て部材を型に挿入するステップと、
−任意選択的に、特に略平面状裏当て部材に略直交する方向に、型内に配設された構成要素に軸方向圧力を加えるステップと、
−特にオーブン内での焼成により、研磨部材の研磨層を形成するために硬化性研磨樹脂化合物を熱硬化させるステップであって、硬化性研磨樹脂化合物の硬化中に、補強部材および裏当て部材が、硬化した研磨樹脂化合物により確立された物質間接合によって研磨層に接合される、ステップと、を特に順に含む。
【0022】
硬化性研磨樹脂化合物の層、補強インサート(または補強部材)および裏当て部材は型内に逆の順序で導入することもできることが理解される。
好ましくは、第1の裏当て部材は、硬化性研磨樹脂化合物を型内に導入する前に型に挿入される。研磨部材の製造方法は、好ましくは、
−第1の裏当て部材を型に挿入するステップと、
−第1の裏当て部材が硬化性研磨樹脂化合物の層により少なくとも部分的に覆われるように硬化性研磨樹脂化合物の層、特に硬化性研磨粒の層を型内に導入するステップと、
−補強部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように補強インサート(または補強部材)を型に挿入するステップと、
−補強部材が第2の裏当て部材により少なくとも部分的に覆われかつ第2の裏当て部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように第2の裏当て部材を型に挿入するステップと、
−任意選択的に、特に略平面状の第1および/または第2の裏当て部材に略直交する方向に、型内に配設された構成要素に軸方向圧力を加えるステップと、
−研磨部材の研磨層を形成するために硬化性研磨樹脂化合物を硬化させる、特に熱硬化させるステップであって、硬化性研磨樹脂化合物の硬化中に、補強部材、第1の裏当て部材および第2の裏当て部材が、硬化した研磨樹脂化合物により確立された物質間接合によって研磨層に接合される、ステップと、を特に順に含む。
【0023】
硬化性の第1の裏当て部材の層、研磨樹脂化合物、補強インサート(または補強部材)および第2の裏当て部材は型内に逆の順序で導入することもできることが理解される。
好ましくは、補強部材(または補強インサート)は、補強部材が、硬化後に、概してディスク形状の研磨部材の上側平表面と下側平表面との中間にある中心部に位置する様式で、型内に位置決めされる。補強部材は、特に、研磨部材を回転機械に装着するための装着手段を提供してもよい。研磨部材の中心部における補強部材の構成は、切削または研削動作を行うように研磨部材を回転させたときのアンバランスおよび横力を最小限に抑えることを有益に可能にする。
【0024】
裏当て部材、特に第1および/または第2の裏当て部材は、好ましくはフェノール樹脂を含浸させた、繊維織物、特にガラス繊維織物で作製されることが好ましい。
好ましくは、硬化性研磨樹脂化合物、特に硬化性研磨粒は、少なくとも研磨剤および硬化性樹脂を含む多成分混合物である。
【0025】
好ましくは、補強部材(または補強インサート)は、金属または合金から作製される。
好ましくは、硬化性研磨樹脂化合物、特に硬化性研磨粒は、熱硬化性合成ポリマー、好ましくはフェノール樹脂を含む。
【0026】
本発明はまた、本明細書で前述したような方法に従って製造される、研磨部材、特に切削または研削ディスクに関する。研磨部材は、研磨層と裏当て部材との間に位置する補強部材(または補強インサート)を含む。補強部材は、研磨層に埋設され、かつ研磨層に接合される。補強部材は、裏当て部材により少なくとも一方の側面が裏打ちされ、したがって、研磨層の材料により完全に取り囲まれない。補強部材は、研磨部材の中心部に、特に研磨部材の重心に近接して位置する。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態は、切削ディスクとして構成された研磨部材に関する。切削ディスクは、繊維織物、特に樹脂含浸ガラス繊維織物から作製された、2つの裏当て部材、第1の裏当て部材と第2の裏当て部材との間に配設される硬化した研磨樹脂化合物から作製された単一の研磨層を有する。裏当て部材は、切削ディスクの平面状端面を実質的に形成する。一方または両方の裏当て部材はまたラベルを支えてもよい。
【0028】
好ましくは、補強部材(または補強インサート)は、研磨部材に埋設され、かつ研磨部材の重心を取り囲むように位置決めされる。
以下、添付図面を参照して、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態を詳細に説明する。概略断面図で示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施形態による研磨部材の上部平面図である。
図2図1の線2−2に沿って切断した本発明の第1の実施形態による研磨部材の断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態による研磨部材である。
図4】本発明の第3の実施形態による研磨部材である。
図5】本発明の第4の実施形態による研磨部材である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
類似のまたは対応する部分は、全ての図において類似の参照符号で示されている。
図1図5に示す本発明の種々の実施形態の概略図は原寸に比例したものではないことが理解される。
【0031】
図1および図2は、軸線Aに関して回転対称のレイアウトを有する切削ディスクである環状研磨ディスク17aとして構成される第1の研磨部材10aを示している。軸線Aは、研磨部材10aの環状ディスク形状の本体18における中心開口14の中心を貫通して延び、研磨部材10aは、研摩切削中などの、研摩による材料除去中にディスク形状の本体18を回転させる、グラインダ、例えば、アングルグラインダ、回転ドリル、または同様のものなどの、回転電動工具(図示せず)への取り外し可能な装着のための装着ハブ19を画定できる。切削ディスクである研磨ディスク17aとして構成された研磨部材10aは、切削動作を行うために軸線Aを中心に回転させられる。軸線Aに直交する方向は概して径方向と称される。
【0032】
図2に最も良く示すように、研磨部材10aは、一方からもう一方まで、すなわち、概してディスク形状の研磨部材10aの一方の側面21における下側平表面20から反対側の側面23における上側平表面22まで順に、繊維ガラス材料のシートなどの、ガラス繊維織物のシートから作製された第1の裏当て部材15と、硬化した研磨樹脂化合物から作製された研磨層12と、金属または合金から作製される研磨層12よりも高い剛性を有する環状ワッシャ形状の金属リング25を補強する中心ハブ領域の形態の、ディスク形状の中心ハブ補強インサート24のような、リング形状の補強部材13と、ガラス繊維材料のシートなどの、ガラス繊維織物のシートから作製された第2の裏当て部材16と、視覚的に知覚可能な表示を含むラベル11とにより画定された層、を含む多層構造を有する。第1の裏当て部材15、研磨層12、および第2の裏当て部材16は、補強部材13が埋設される環状研磨ディスク本体26を形成する。補強部材13は、研磨層12と第2の裏当て部材16との間に挟まれる。研磨層12の形成または作製で使用するのに適した好適な硬化性樹脂化合物の例としては、フェノール樹脂、例えば、熱硬化フェノール樹脂、ポリアミド樹脂のような、イミドまたはアミド樹脂、および他の種類の既知の硬化性研磨剤接合剤が挙げられる。
【0033】
図2に描かれている例示的な実施形態の切削ディスクである研磨ディスク17aは、単一の研磨層12のみを示す。研磨層12の径方向内側部分は、補強部材13と第1の裏当て部材15との間に配置される。研磨部材12の径方向外側部分は、第1の裏当て部材15と第2の裏当て部材16との間に配置される。補強部材13と第2の裏当て部材16との間には研磨部材が配置されていない。
【0034】
研磨層12は、硬化した研磨樹脂化合物から作製される。研磨層12は、研磨樹脂化合物および樹脂含浸裏当て部材13、15の硬化中に確立された、物質間接合、樹脂接合によって、補強部材13、第1の裏当て部材15および第2の裏当て部材16に強固に接合される。ラベル11は、第2の裏当て部材16の上側平表面に接着剤で接着されてもよい。
【0035】
補強部材13は、補強部材13に面する裏当て部材16の側面30または表面31との機械的連結により補強部材13が取り付けられるように一方の側面28または表面29が接触または当接する裏当て部材16に物理的に係合される。補強部材13は、補強部材13と補強部材13が移動不能に固定される裏当て部材16との物理的係合および機械的連結の表面領域を強固にする裏当て部材16に入り込み、係合され、噛み合わされ、かつ/または埋設される裏当て部材16に面する側面28または表面29から隆起した、図2に示す突起などの、軸方向に延びる複数の離間した表面突出部32を有するように形成することができる。所望により、補強部材13の外周縁部34が、裏当て部材16における窪みにより形成された隆起した当接部36に対して物理的に停止するように、補強部材16の側面28または表面29の少なくとも一部を裏当て部材13の側面30または表面31に埋め込むまたは落ち込ませるのに十分な力で、機械的連結強度を増大させる突出部32に面する裏当て部材16の側面30または表面31に補強部材13を押し当てるまたは押し込むことができる。補強部材13と裏当て部材16との結果として得られる物理的連結は、それにより、補強部材13および裏当て部材16の軸方向に対向する接触側面または接触表面に沿った補強部材13と裏当て部材16との軸方向の係合および支持と、補強部材13を裏当て部材16により強く固定する、補強部材13および裏当て部材16の当接部34の径方向に対向する接触縁部33に沿った補強部材13と裏当て部材16の当接部34との径方向の係合および支持とを有利に提供する。所望により、補強部材13と裏当て部材16との物理的係合および機械的連結は、例えば硬化性樹脂化合物により提供される、接着接合剤、またはエポキシ樹脂、水溶性樹脂、アルコール可溶性樹脂、ウレタン樹脂などの、別の種類の接着接合剤、または別の種類の接合剤を使用して補うことができる。補強部材13の反対側の側面または表面33は、反対方向に面しており、かつ研磨層12の研磨樹脂化合物または接合剤中に完全に包まれるかまたは沈められ、それにより、研磨層の研磨樹脂化合物が硬化したときに研磨層12を補強部材13に確実に接合する。
【0036】
補強部材13はまた、アングルグラインダ、回転ドリル、または同様のもののような回転機械または回転電動工具との取り外し可能な取り付けを容易にするように構成する、例えば三次元的に形作るまたは形成することができるディスク本体26における中心開口14に連通して配置された補強部材13の内周縁部33全体にわたって延びる、図2に示すような、フランジまたはリップの形態の、軸方向に延びる隆起した突出部35を有することができる。このようなフランジまたはリップのような軸方向に延びる円周突出部35を備える場合、補強部材13は、ディスク本体26における中心開口14内に径方向内方に延びることができ、または中心開口14を画定するディスク本体26の内周縁部と面一とすることができる。
【0037】
補強部材13は、中心開口14の全周から径方向外方にかつ全周の周囲に延びる図1に示すような円周ハブ補強領域27の周りのディスク本体26を補強することにより機械的安定性を提供する。研磨部材10aは、補強インサート13により補強される中心開口14を取り囲む円周ハブ補強領域27内の研磨部材10aに解放可能に係合または結合する、特に結合構成、例えば、フランジおよびロックナット組立体、チャック、またはクランプによって、グラインダ、例えば、アングルグラインダ、またはドリルなどの、回転電動工具のような回転機械の回転シャフトまたは回転主軸に強固に装着されてもよい。研磨切削中などの研磨による材料除去中における回転研磨部材10aの接触中に研磨部材10aが多大なトルクまたは力に耐えることを可能にする回転シャフトまたは回転主軸に解放可能に結合されることにより、補強部材13が、回転機械、例えば、回転電動工具に解放可能に装着され、結合され、または別様に取り付けられたときに、補強部材13は、ディスク本体と一体に回転するようにディスク本体に移動不能に固定または接地される。補強部材13が軸方向におけるディスク本体26の外表面と外表面とのほぼ中間にディスク本体26の概して中心に埋設される結果として、研磨部材10aは、回転中により良好にバランスが保たれて、有利には、より滑らかな研磨による材料除去動作をもたらし、結果として、研磨による材料除去中に、回転機械、例えば回転電動工具の人間の操作者に振動があまり伝達されない。このような構造はまた、有利には作製に僅かな材料しか必要としないのでより経済的であり、より良好にバランスが保たれ、かつ振動を減衰させる、回転研磨ディスク17aである研磨部材10aを生み出し、より良好な側面荷重特性を有し、かつ、特にディスク17aが研磨切削に使用される切削ディスクである場合に、より精密な研磨による材料除去を可能にするより薄いディスク17aが生み出されることを可能にする。
【0038】
図3に示す第2の実施形態において、研磨部材10は、裏当て部材15、16および研磨層12よりも小さな内径を有する補強インサート13を有する。したがって、補強インサート13は、小径の部分を画定するために中心開口14内の研磨部材10の中心部分に突出する。
【0039】
図4に示す第3の実施形態は、図3の第2の実施形態と同様である。第1の裏当て部材15と第2の裏当て部材16の両方がラベル11を支える。
図5は、研磨部材10の第4の実施形態を示している。第4の実施形態の研磨部材10は、単一の裏当て部材16のみを含む。追加のラベル11は、研磨層12上に直接配置される。
【0040】
図2図5に描かれている研磨部材10は、好ましくは、以下の方法に従って製造される。
硬化性研磨樹脂化合物が準備される。硬化性研磨樹脂化合物は、少なくとも研磨剤および硬化性樹脂、特にフェノール樹脂を含む多成分混合物である。多成分混合物は、好ましくは、混合物が実質的に均質になるまで混合される。
【0041】
型が準備される。
いくつかの場合では、特に、2つのラベル(例えば、図4または図5を参照)を有する研磨部材10を製造するときに、1つのラベル11が最初に型に挿入される。
【0042】
第1の裏当て部材15が型に挿入される。硬化性研磨樹脂化合物が型に導入される。第4の実施形態(図5)の場合には、研摩樹脂化合物の層が下側ラベル11上に直接配置される。
【0043】
硬化性研磨樹脂化合物は、第1の裏当て部材15(例えば、図2図4を参照)または下側ラベル11(例えば、図5を参照)を実質的に覆う層を形成する。
補強部材13は、硬化性研磨樹脂化合物の層の上に位置決めされる。次いで、第2の裏当て部材16は、補強インサート13が第2の裏当て部材16の径方向内側部分により覆われかつ硬化性研磨樹脂化合物の層の径方向外側部分が第2の裏当て部材16の径方向外側部分により覆われるように、補強インサート13および硬化性研磨樹脂化合物の層の上に位置決めされる。軸線Aの方向の軸方向圧力が、型内に配設された構成要素に加えられる。硬化性研磨樹脂化合物は、オーブン内で熱にさらされることにより硬化される。硬化中に、研磨層12が、硬化した研磨樹脂化合物から形成される。一方側における補強インサートならびに第1の裏当て部材15および第2の裏当て部材16と他方側における研磨層12との物質間接合はまた、硬化性研磨樹脂化合物を硬化させることにより確立される。硬化後に、製造方法が実質的に終了する。
【符号の説明】
【0044】
1…ラベル、2…研磨層、3…補強インサート、4…中心開口、5…裏当て部材、6…突出部、10…研磨部材、10a…研磨部材、11…ラベル、12…研磨層、13…補強インサート、14…中心開口、15…第1の裏当て部材、16…第2の裏当て部材、17a…研磨ディスク、18…本体、19…装着ハブ、20…表面、21…側面、22…表面、23…側面、24…補強インサート、25…リング、26…本体、27…領域、28…側面、29…表面、30…側面、31…表面、32…突出部、33…縁部、34…縁部、35…突出部、36…当接部、A…軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】
2019005898000001.pdf