特開2019-59633(P2019-59633A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-59633(P2019-59633A)
(43)【公開日】2019年4月18日
(54)【発明の名称】充填材及び充填材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20190322BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20190322BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20190322BHJP
   C04B 22/00 20060101ALI20190322BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20190322BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20190322BHJP
   C04B 24/14 20060101ALI20190322BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20190322BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20190322BHJP
   C09K 17/44 20060101ALI20190322BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20190322BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20190322BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B18/14 A
   C04B22/10
   C04B22/00
   C04B22/08 Z
   C04B22/06 Z
   C04B24/14
   C04B24/16
   C09K17/10 P
   C09K17/44 P
   E21D11/00 A
   C09K103:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-183753(P2017-183753)
(22)【出願日】2017年9月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 高明
(72)【発明者】
【氏名】井本 英一
【テーマコード(参考)】
2D155
4G112
4H026
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155JA00
2D155LA14
4G112MB06
4G112PA29
4G112PB01
4G112PB03
4G112PB05
4G112PB08
4G112PB21
4G112PB22
4H026CA01
4H026CA05
4H026CB01
4H026CB02
4H026CB05
4H026CB07
4H026CB08
4H026CC03
(57)【要約】
【課題】十分な強度を有し、かつ取扱いが容易な発泡性を有する充填材及びその製造方法にする。
【解決手段】この充填材は、セメント及びスラグの少なくともいずれか一方、過炭酸ナトリウム及び過酸化水素の少なくともいずれか一方、並びに水が配合されてなる。また、セメント及びスラグの少なくともいずれか一方、過炭酸ナトリウム及び過酸化水素の少なくともいずれか一方、アルミン酸ナトリウム、酸化マンガン及びカタラーゼの少なくともいずれか一方、並びに水を混合して充填材を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント及びスラグの少なくともいずれか一方、過炭酸ナトリウム及び過酸化水素の少なくともいずれか一方、並びに水が配合されている、
ことを特徴とする充填材。
【請求項2】
アルミン酸ナトリウムが配合されている、
請求項1に記載の充填材。
【請求項3】
酸化マンガン及びカタラーゼの少なくともいずれか一方が配合されている、
請求項1又は請求項2に記載の充填材。
【請求項4】
非イオン系界面活性剤及び陰イオン系界面活性剤の少なくともいずれか一方が配合されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項5】
セメント及びスラグの少なくともいずれか一方、過炭酸ナトリウム及び過酸化水素の少なくともいずれか一方、アルミン酸ナトリウム、酸化マンガン及びカタラーゼの少なくともいずれか一方、並びに水を混合する、
ことを特徴とする充填材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工体や擁壁、護岸、モルタル吹付け面等の背面空洞や、栗石層などを充填するために使用することができる充填材及び充填材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル覆工体の背面空洞充填(裏込め)等に使用する充填材としては、モルタルを有効成分とするもの、発砲ウレタンを有効成分とするもの等がある。しかしながら、モルタルを有効成分とする充填材は、強度の点では優れるが、充填前の充填材が重くなる、容量が大きくなる等の欠点を有している。他方、発砲ウレタンを有効成分とする充填材は、重さや容量の点では優れるが、強度が不十分になる、高価になる等の欠点を有している。また、ウレタンはイソシアミネートを使用するため、環境影響が懸念される。
【0003】
そこで、近年では、モルタルに発泡剤たるアルミニウム粉を混合してなる充填材が提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。アルミニウム粉は、セメントと反応して発泡する性質を有する。したがって、アルミニウム粉を使用することで、充填する前の充填材を軽くすることができ、また、容量を小さくすることができる。
【0004】
しかしながら、アルミニウム粉は、危険物第2類に指定されている材料であり、取扱いに危険が伴う。また、アルミニウム粉は、水に溶けない材料である。したがって、反応させるためには細かい粉体状にする必要がある。結果、空気中に舞い易くなり、取扱いが難しくなる。さらに、アルミニウム粉から発生するガスは、水素ガスである。したがって、燃焼の危険を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−051232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする主たる課題は、十分な強度を有し、かつ取扱いが容易な発泡性を有する充填材及び充填材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
(請求項1に記載の手段)
セメント及びスラグの少なくともいずれか一方、過炭酸ナトリウム及び過酸化水素の少なくともいずれか一方、並びに水が配合されている、
ことを特徴とする充填材。
【0008】
(請求項2に記載の手段)
アルミン酸ナトリウムが配合されている、
請求項1に記載の充填材。
【0009】
(請求項3に記載の手段)
酸化マンガン及びカタラーゼの少なくともいずれか一方が配合されている、
請求項1又は請求項2に記載の充填材。
【0010】
(請求項4に記載の手段)
非イオン系界面活性剤及び陰イオン系界面活性剤の少なくともいずれか一方が配合されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の充填材。
【0011】
(請求項5に記載の手段)
セメント及びスラグの少なくともいずれか一方、過炭酸ナトリウム及び過酸化水素の少なくともいずれか一方、アルミン酸ナトリウム、酸化マンガン及びカタラーゼの少なくともいずれか一方、並びに水を混合する、
ことを特徴とする充填材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、十分な強度を有し、かつ取扱いが容易な発泡性を有する充填材及び充填材の製造方法になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、この実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、この実施の形態の範囲に限定されない。
【0014】
本形態の充填材は、セメント及びスラグの少なくともいずれか一方、過炭酸ナトリウム及び過酸化水素の少なくともいずれか一方、並びに水が配合されている。
【0015】
(セメント)
セメントは、水硬性を有する物質である。セメントは、通常、粉体である。
【0016】
セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、低熱、中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらのポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ等を混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合したフィラーセメント、各種産業廃棄物を主原料として製造される環境調和型セメント(いわゆるエコセメント)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0017】
(スラグ)
スラグは、鉱石から金属を製錬する際に、当該金属から溶融によって分離した鉱物成分を含む物質等である。スラグは、自然界に存在するものであり、その化学組成は、普通ポルトランドセメントに類似する。スラグは、アルカリ刺激があると硬化する性質を有する。
【0018】
スラグとしては、鉄鋼スラグ、製鋼スラグ等の高炉水砕スラグを使用するのが好ましい。鉄鋼スラグは、酸化カルシウム(CaO,石灰)及びシリカ(SiO2)を主成分とする。特に高炉スラグは、アルミナ(Al23)、酸化マグネシウム(MgO)、硫黄(S)等も成分とする。高炉スラグの中でも、高炉水砕スラグは、アルカリ刺激により硬化する潜在水硬性を有し、土木用途で広く用いられているので、好適に使用することができる。一方、製鋼スラグは、酸化鉄(FeO)、酸化マグネシウム(MgO)等を成分とする。
【0019】
セメントとスラグ(合計量)の配合割合は、配合薬液1m3あたり、例えば50kg〜800kg、好ましくは100kg〜700kg、特に好ましくは200kg〜600kgである。
【0020】
(過炭酸ナトリウム、過酸化水素)
過炭酸ナトリウム(炭酸ナトリウム過酸化水素付加物、過炭酸ソーダ)は、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)及び過酸化水素が2:3の割合で混合された化合物である。過炭酸ナトリウムの化学式は、2Na2CO3・3H22又はNa2CO3・1.5H22である。
【0021】
過炭酸ナトリウムは、分解して過酸化水素が生成される。また、この過酸化水素は、分解して酸素が生成される。したがって、過炭酸ナトリウムや過酸化水素は、発泡剤として機能する。また、発泡剤として過炭酸ナトリウムや過酸化水素を使用すると、発泡ガスとして酸素が生成されることになるため、安全性に優れる。さらに、過炭酸ナトリウムは水溶性であるため、反応させるためには細かい粉体状にする必要がない。したがって、取扱いが容易である。なお、過炭酸ナトリウムは水に溶けると炭酸ナトリウム及び過酸化水素に分解し、過酸化水素が触媒と反応して水及び酸素が生じる。したがって、直接過酸化水素を添加しても発泡効果が得られる。
【0022】
過炭酸ナトリウム中の炭酸ナトリウムは、セメントやスラグと反応し、炭酸カルシウムを生成する。したがって、過炭酸ナトリウムの配合量を調整することで、ゲルタイムの調整も図ることができる。
【0023】
過炭酸ナトリウムの配合量は、配合薬液1m3あたり、好ましくは0.5〜20kg、より好ましくは0.8〜15kg、特に好ましくは1〜10kgである。
【0024】
また、過酸化水素の配合量は、配合薬液1m3あたり、H22として好ましくは0.01〜5kg、より好ましくは0.1〜4kg、特に好ましくは1〜3kgである。
【0025】
(増粘剤)
本形態の充填材には、増粘剤としてアルミン酸ナトリウムを配合するのが好ましい。アルミン酸ナトリウムを配合すると、充填材が動沈降して流されてしまう可能性等が低くなる。
【0026】
充填材のゲルタイムは、5分〜8時間に調節するのが好ましく、20分〜3時間に調節するのがより好ましい。ゲルタイムが短すぎると背面空洞に充填材が行きわたらなくなる可能性がある。他方、ゲルタイムが長過ぎると、充填材が動沈降で流されてしまう可能性がある。
【0027】
アルミン酸ナトリウムの配合量は、配合薬液1m3あたり、AlO3量で好ましくは0.2〜5kg、より好ましくは0.3〜4kg、特に好ましくは0.5〜3kgである。また、[Na2O]/[AlO3]モル比は、1.3〜1.8であるのが好ましい。
【0028】
(カタラーゼ)
本形態の充填材には、カタラーゼを配合するのが好ましい。カタラーゼは、過炭酸ナトリウムから生成する過酸化水素を分解する酵素として機能する。したがって、カタラーゼを配合すると、発泡が促進される。この点、充填材がゲル化した後に発泡すると、固結部の縁切れにより硬化体の強度が低下する可能性がある。したがって、カタラーゼを配合することで、充填材がゲル化する前に一気に発泡させるのが好ましい。
【0029】
カタラーゼの配合量は、過炭酸ナトリウム100質量部に対して、好ましくは10〜800容量部、より好ましくは50〜500容量部、特に好ましく200〜400容量部である(カタラーゼ溶液酵素活性 50000u/g)。
【0030】
(酸化マンガン)
本形態の充填材には、酸化マンガンを配合するのが好ましい。酸化マンガンは、過炭酸ナトリウムから生成する過酸化水素を分解する触媒として機能する。したがって、酸化マンガンを配合すると、発泡が促進される。発泡を促進すると好ましいとするのは、上記カタラーゼの場合と同様である。
【0031】
酸化マンガンの配合量は、過炭酸ナトリウム100質量部に対して、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは100〜800質量部、特に好ましくは250〜500質量部である。
【0032】
(整泡剤)
本形態の充填材には、整泡剤として非イオン系界面活性剤及び陰イオン系界面活性剤の少なくともいずれか一方を配合するのが好ましい。
【0033】
非イオン系界面活性剤としては、ツイン20を使用するのが好ましい。ツイン20は、アルカリ性での界面活性効果、流出した場合の環境影響の点において優れる。なお、ツイン20の英名は、Polyoxyethylene Sorbitan Monolaurate(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)である。また、ツイン20は、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンとも言われる。
【0034】
陰イオン界面活性剤としては、αオレフィンスルフォン酸ナトリウムを使用するのが好ましい。
【0035】
ツイン20やαオレフィンスルフォン酸ナトリウムを使用する場合、その配合量は、配合薬液1m3あたり、好ましくは0.01〜10kg、より好ましくは0.1〜3kg、特に好ましくは0.5〜3kgである。
【0036】
(使用方法)
本形態の充填材は、トンネル覆工体の背面空洞等にそのまま充填する。つまり、本形態の充填材は、1液型である。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の実施例を説明し、本発明による効果を明らかにする。
表1に示す配合の充填材を得た。得られた硬化体(充填材)のゲルタイム、ブリージング、粘度、一軸圧縮強度(7日、28日)、供試体密度を調べた。結果は、表2に示した。また、発泡経時変化も調べ、表3に示した。
【0038】
なお、供試体(硬化体)は、直径50mm×高さ220mmのモールドに上部まで練り混ぜた各懸濁液(充填材)を投入し固化させて得た。各供試体は、各材令で脱型し、中央部(上下端より約5cmで切断)を強度試験供試体とし、切断残部を上部、下部として密度を測定した。また、発泡経時変化の試験においては、3分間ミキシングした700mlの懸濁液(充填材)を1L(試験例7においては2L)のメスシリンダーに全量投入して測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、トンネル覆工体や擁壁、護岸、モルタル吹付け面等の背面空洞や、栗石層などを充填するために使用することができる充填材及び充填材の製造方法として利用可能である。