【課題】本発明は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する固形製剤の提供、特に、経時的な類縁物質の増加が抑制され安定性に優れた固形製剤の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の固形製剤は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、安定化剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む。これにより経時的な類縁物質の増加が抑制され安定性に優れた固形製剤を提供できる。
レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩に対するメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの質量比は、レボセチリジンの量に対する比率として、0.1〜10である、請求項1に記載のレボセチリジン固形製剤。
レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、安定化剤とを含有するレボセチリジン固形製剤の製造方法であって、前記安定化剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり、溶媒を用いて造粒する湿式造粒工程により、前記レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを含む顆粒を製造する湿式造粒工程を有することを特徴とする、レボセチリジン固形製剤の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に錠剤は、小児や高齢者には嚥下しにくく服用性に劣る。一方、シロップ剤は、液状であり小児や高齢者であっても服用しやすいが、冷所に保管する必要がある場合が多く、携帯もしにくい等、取扱性に劣る。そこで、嚥下性に優れ、一般に冷所に保管する必要がなく、携帯もしやすい顆粒製剤等の開発が望まれる。また、これら固形製剤には、保存時の安定性に優れることが当然に要求される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する固形製剤(以下、レボセチリジン固形製剤ともいう。)の提供、特に、経時的な類縁物質の増加が抑制され安定性に優れた固形製剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者がレボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する顆粒製剤等の開発を進めていく過程で、レボセチリジン固形製剤にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合することにより、経時的な類縁物質の増加を抑制でき、安定性に優れる固形製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、安定化剤とを含有するレボセチリジン固形製剤であって、前記安定化剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである、レボセチリジン固形製剤。
〔2〕レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩に対するメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの質量比は、レボセチリジンの量に対する比率として、0.1〜10である、〔1〕に記載のレボセチリジン固形製剤。
〔3〕顆粒製剤である、〔1〕または〔2〕に記載のレボセチリジン固形製剤。
〔4〕錠剤である、〔1〕または〔2〕に記載のレボセチリジン固形製剤。
〔5〕レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、安定化剤とを含有するレボセチリジン固形製剤の製造方法であって、前記安定化剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり、溶媒を用いて造粒する湿式造粒工程により、前記レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを含む顆粒を製造する湿式造粒工程を有することを特徴とする、レボセチリジン固形製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定性に優れたレボセチリジン固形製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のレボセチリジン固形製剤(以下、単に「固形製剤」ともいう。)は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、安定化剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する。
【0010】
レボセチリジンの薬学的に許容される塩としては、塩酸塩等が挙げられ、なかでもレボセチリジン二塩酸塩が好ましい。
固形製剤100質量%中のレボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩の含有量は、特に制限はなく、固形製剤の剤形等に応して適宜設定できるが、レボセチリジンとして、0.05〜10質量%が好ましい。
固形製剤がたとえば顆粒製剤の場合には、0.05〜2質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましく、0.2〜0.7質量%がさらに好ましい。
固形製剤がたとえば錠剤の場合には、0.3〜7質量%が好ましく、0.5〜6質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0011】
固形製剤100質量%中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量は、特に制限はなく、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩の含有量、固形製剤の剤形等に応じて適宜設定できるが、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜8質量%がより好ましく、0.3〜7質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であれば、固形製剤の経時的な類縁物質の増加を抑制でき、安定性を向上させる効果が十分に得られる。一方、上記範囲の上限値以下であれば、たとえば固形製剤を製造する際の造粒性が低下したり、固形製剤を口腔内に含んだ際にざらつきを感じたりすることが生じにくい。
【0012】
固形製剤中における、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩に対するメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの質量比は、レボセチリジンの量に対するメタケイ酸アルミン酸マグネシウム酸の比率として、0.1〜10が好ましく、0.2〜7がより好ましく、0.2〜4がさらに好ましい。この範囲内であれば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムによる固形製剤の安定性向上効果がより優れる。
【0013】
本発明の固形製剤は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム以外の1種以上の添加剤を含有してもよく、固形製剤の剤形等に応じて選択できる。
添加剤としては、たとえば賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、流動化剤、結合剤、着色剤、界面活性剤等が挙げられ、医薬品分野において使用可能な添加剤であれば、必要に応じて、1種以上を使用できる。
【0014】
賦形剤としては、たとえば、結晶セルロース、マンニトール、乳糖水和物、無水乳糖、精製白糖、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、リン酸水素カルシウム、粉末還元麦芽糖水アメ等が挙げられる。
崩壊剤としては、たとえば、セルロース系崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等。)、クロスポビドン、デンプン系崩壊剤(トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等。)等が挙げられる。
滑沢剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
矯味剤としては、β−シクロデキストリン、アスコルビン酸、アスパルテーム、エリスリトール、キシリトール、クエン酸水和物、グリチルリチン酸モノアンモニウム、スクラロース、l−メントール等が挙げられる。
流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、タルク等が挙げられる。
結合剤としては、たとえば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、デキストリン、水アメ等が挙げられる。
着色剤としては、たとえば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、カラメル等が挙げられる。
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等が挙げられる。
その他の添加剤としては、酸化チタン、カルナウバロウ等が挙げられる。
【0015】
本発明のレボセチリジン固形製剤としては、錠剤、顆粒製剤、散剤、チュアブル錠等が挙げられる。これらのいずれの剤形においても、安定化剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合することにより、経時的な類縁物質の増加が抑制され、安定性に優れた固形製剤とすることができる。
【0016】
本段落では、固形製剤が顆粒製剤の場合について説明する。
固形製剤が、たとえば顆粒製剤の場合には、糖または糖アルコールと、レボセチリジンの苦味をマスキングする矯味剤とを併用することが、味のよい固形製剤が得られる点で好ましい。
糖または糖アルコールとしては、味がよく、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムによる安定性向上効果を損なわない点で、粉末還元麦芽糖水アメを用いることが好ましい。
矯味剤としては、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩の苦味をマスキングする効果が高く、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムによる安定性向上効果を損なわない点で、β−シクロデキストリンが好ましい。
糖または糖アルコールの含有量は、固形製剤100質量%中、25〜97質量%が好ましく、後述するその他の添加剤の使用割合や剤形等に応じて、適宜設定できる。なかでも40〜97質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましい。
矯味剤の含有量は、固形製剤100質量%中、1〜15質量%が好ましく、2.5〜10質量%がより好ましい。
本発明の固形製剤が顆粒製剤の場合、そのまま服用してもよいが、水へ懸濁して服用する形態、すなわち、ドライシロップ製剤とすることも好適であり、いずれの場合でも良好な味を呈する。
【0017】
本段落では、固形製剤が錠剤の場合について説明する。
固形製剤が錠剤の場合には、必要に応じて、賦形剤、流動化剤、滑沢剤、崩壊剤、矯味剤等を添加することが好ましい。
賦形剤の含有量は、固形製剤100質量%中、45〜95質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましく、60〜95質量%がさらに好ましい。
流動化剤の含有量は、固形製剤100質量%中、0.01〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
滑沢剤の含有量は、固形製剤100質量%中、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
崩壊剤の含有量は、固形製剤100質量%中、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。
矯味剤の含有量は、固形製剤100質量%中、0.1〜20質量%が好ましく、2.5〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
【0018】
本発明の固形製剤の製造方法は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを含む固形製剤を製造できる方法であれば特に制限はなく、剤形に応じた公知の製法により製造できるが、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを含む顆粒を造粒する乾式造粒、湿式造粒等の造粒工程を有する方法が挙げられ、得られた造粒物をそのまま用いて顆粒製剤としたり、該造粒物を打錠して錠剤としたりすることができる。造粒工程としては、水等の溶媒を用いて、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩とメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを含む顆粒を製造する湿式造粒工程が好ましい。水等の溶媒には、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩や添加剤のうちの一部をあらかじめ懸濁または溶解しておいてもよい。造粒工程がたとえば溶媒を用いない溶融造粒法の場合、使用成分のうちの少なくとも1種が溶融する温度まで加熱する必要があり熱履歴が加わる点で好適ではない。
【0019】
本発明の固形製剤がたとえば顆粒製剤の場合には、上述のとおり湿式造粒工程により造粒することが好ましい。レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩とメタケイ酸アルミン酸マグネシウムに加えて、糖または糖アルコールと矯味剤とを用いる場合の顆粒製剤の製造方法の一例としては、糖または糖アルコールと矯味剤とを混合し、混合物(A)を得る工程(i)と、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩とメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを精製水に混合、溶解し、混合液(B)を得る工程(ii)と、流動状態または転動状態にある混合物(A)に対して、混合液(B)をスプレーして造粒する湿式造粒工程(iii)とを行う方法が挙げられる。
造粒工程の後、適宜乾燥工程を行い、必要に応じてふるいで篩過し整粒することにより、顆粒製剤を得ることができる。
【0020】
本発明の固形製剤がたとえば錠剤の場合には、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを含む混合物を打錠する打錠工程を有する方法が挙げられる。打錠工程には、錠剤成形に一般に使用される打錠機を使用できる。
打錠工程の前には、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム他とを含む混合物をあらかじめ造粒する、造粒工程を有することが好ましい。造粒工程としては、上述のとおり、湿式造粒工程が好ましい。打錠工程では、造粒工程で得られた造粒物のみを打錠しても、造粒物に対してさらに成分を後添加して打錠してもよい。後添加する成分としては、たとえば賦形剤、流動化剤、滑沢剤、崩壊剤等が挙げられる。
錠剤をフィルムコーティング錠とする場合には、打錠工程で得られた素錠にコーティングを施す被覆工程をさらに有していてもよい。造粒工程および被覆工程は、それぞれ公知の方法により行える。
【実施例】
【0021】
[実施例1、2]
次のようにして表1の処方のレボセチリジン固形製剤(顆粒製剤(ドライシロップ剤))を製造した。
まず、粉末還元麦芽糖水アメと、β−シクロデキストリンと、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムをそれぞれ秤量して混合した混合物に対し、レボセチリジン二塩酸塩を精製水に加えて溶解させた混合液を加え、造粒、乾燥、整粒を行い、実施例1および2の顆粒製剤を得た。
得られた顆粒製剤について、後記の方法にて純度試験を行った。結果を表1に示す。
【0022】
<純度試験>
実施例1および2の各顆粒製剤を表1に示す各条件で保存した際の保存前後の総類縁物質量を測定することで、純度試験を実施した。
総類縁物質量は、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法にて測定、定量した複数種の類縁物質量の総和であり、表1に記載の総類縁物質量の数値は、レボセチリジン二塩酸塩由来のピーク面積に対する、各類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0023】
[比較例1]
表1に示すように、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを使用しない処方とし、その分、粉末還元麦芽糖水アメの比率を高めた以外は、実施例1および2と同様にして比較例1の顆粒製剤(ドライシロップ剤)を得て、実施例1および2と同様の方法で純度試験を行った。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
[実施例3〜4,比較例2]
下記の表2の処方に従い、一錠あたり100mgの錠剤を製造した。
具体的には、湿式造粒により表2の造粒物の欄に記載の組成の造粒物(顆粒)を得て、乾燥、整粒を行い、整粒物を得た。得られた整粒物に対して、表2の後末の欄に記載の各成分を加えて混合して、打錠用の混合物とし、この混合物をロータリー打錠機(VELA5、菊水製作所製)で打錠成形し、錠剤を得た。
得られた錠剤について、実施例1および2と同様にして純度試験を行った。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
表1に示すように、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含まない比較例1の顆粒製剤は、表1に示す各条件での保存後に、総類縁物質量の増加が顕著であった。これに対して、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む実施例1および2の顆粒製剤は、いずれの条件で保存した場合にも、総類縁物質量の増加が少なく、安定性が改善されていた。
また、表2に示すように、錠剤においても、顆粒製剤の場合と同様の傾向が認められた。すなわち、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含まない比較例2の場合には、各保存条件において、保存後の総類縁物質量の増加が顕著であった。これに対して、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む実施例3〜4の場合には、保存後の総類縁物質量の増加が少なく、安定性が改善されていた。