【課題】表皮と裏地である立体布帛を接着剤を介して接着し、立体布帛と表皮の間に、接着剤が付着している接着部分と、接着剤が付着していない非接着部分を有すること等で、「通気性の確保」、「乾燥時間の短縮」等を実現する。
【解決手段】着脱可能な座席Sのカバー部材1である。表皮2と、表皮2の裏2b側に位置した裏地3を少なくとも有し、裏地3は、表皮2の裏2b側に接着剤4を介して接着された立体布帛3であり、この立体布帛3と表皮2の間において、接着剤4が付着している接着部分5と、接着剤4が付着していない非接着部分5’を有している。又、立体布帛3は、ポリエステル樹脂製の糸で編成された立体編地3’であったり、接着部分5は、網目状とドット状と市松模様状のうち何れか1つであったり、不規則に配置されている等でも良い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたクッション材は、当該クッション材を表皮に接着し、シートカバーとして利用した場合、そのシートカバー全体の通気性が確保できない虞がある。
更に、このように通気性が確保できないシートカバーを洗濯した際には、洗濯後の乾燥に時間がかかることも問題となる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、表皮と裏地である立体布帛を接着剤を介して接着し、立体布帛と表皮の間に、接着剤が付着している接着部分と、接着剤が付着していない非接着部分を有すること等で、「通気性の確保」、「乾燥時間の短縮」等を同時に実現するカバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカバー部材1は、着脱可能な座席のカバー部材であって、表皮と、この表皮の裏側に位置した裏地を少なくとも有し、前記裏地は、前記表皮の裏側に接着剤を介して接着された立体布帛であり、この立体布帛と表皮の間において、前記接着剤が付着している接着部分と、前記接着剤が付着していない非接着部分を有していることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係るカバー部材1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記立体布帛は、ポリエステル樹脂製の糸で編成された立体編地である点にある。
【0008】
本発明に係るカバー部材1の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記接着部分は、網目状とドット状と市松模様状のうち何れか1つである点にある。
【0009】
本発明に係るカバー部材1の第4の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記接着部分は、不規則に配置されている点にある。
【0010】
本発明に係るカバー部材1の第5の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記接着部分が占める領域は、前記非接着部分が占める領域より狭く、前記接着部分は、複数であり且つ互いに連続しておらず、前記非接着部分は、1つであり且つ連続しており、前記接着部分は、前記非接着部分に囲まれて配置されている点にある。
【0011】
本発明に係るカバー部材1の第6の特徴は、上記第1〜5の特徴に加えて、前記立体布帛は、ポリエステル樹脂製の経糸で編成される2枚の経編地の間を連結糸で連結したダブルラッシェル編地であり、前記表皮は、ポリエステル樹脂製の経糸で編成された経編地である点にある。
【0012】
本発明に係るカバー部材1の第7の特徴は、上記第1〜6の特徴に加えて、前記接着部分の単位面積当たりに占める割合である付着率が、10%以上90%以下である点にある。
【0013】
本発明に係るカバー部材1の第8の特徴は、着脱可能な座席のカバー部材であって、表皮と、この表皮の裏側に位置した裏地を少なくとも有し、前記裏地は、前記表皮の裏側に接着剤を介して接着された立体布帛であり、当該カバー部材に対してJIS−L−0217:1995の103法又はJIS−L−0001:2014の140法で示される洗濯処理を1回行った後において、前記接着剤にて接着された表皮と裏地間の剥離強さが、当該カバー部材の縦方向と横方向の少なくとも一方向で1.0N/cm以上10.0N/cm以下である点にある。
尚、本発明において「JIS−L−0217:1995の103法又はJIS−L−0001:2014の140法で示される洗濯処理」とは、JIS−L−0217:1995の103法又はJIS−L−0001:2014の140法に記載された通りの洗濯処理だけでなく、当該JISそれぞれに記載された洗濯処理に準ずる処理も含む。
【0014】
本発明に係るカバー部材1の第9の特徴は、着脱可能な座席のカバー部材であって、表皮と、この表皮の裏側に位置した裏地を少なくとも有し、前記裏地は、前記表皮の裏側に接着剤を介して接着された立体布帛であり、当該カバー部材に対してJIS−L−0217:1995の103法又はJIS−L−0001:2014の140法で示される洗濯処理を1回行ってから2時間後において、当該カバー部材の水分含有率が、3%以下である点にある。
【0015】
これらの特徴により、表皮2と裏地である立体布帛3を接着剤4を介して接着し、立体布帛3と表皮2の間に、接着剤4が付着している接着部分5と、接着剤4が付着していない非接着部分5’を設けることによって、フィルム状や全面に接着剤を塗布した場合と比べて、カバー部材1全体としての通気性が確保され、乾燥時間が短縮できる(「通気性の確保」と「乾燥時間の短縮」の実現)。
【0016】
又、立体布帛3を、ポリエステル樹脂製の糸で編成された立体編地3’とすることによって、シート部材としてのクッション性が確保されると共に、物理的な外圧に対しても耐久性が保持できる。
そして、使用者(乗務員)と接触する表皮(意匠表皮)2の裏2b側に、クッション性と水分の排出を両立する傾斜材料として、密度が除変した(密度がほぼ除かれた(単位体積当たりの重さがほぼゼロになった)、又は、表皮2に比べて密度が大きく変化した)構造物である立体編地3’を配することによって、水分の排出を容易に出来るため、カバー部材1は、より速く乾燥し、洗剤の除去も更に簡単に出来る。
【0017】
更に、接着部分5を、網目状とドット状と市松模様状のうち何れか1つとすることによって、フィルム状や全面に接着剤を塗布した場合と比べて、通気性が阻害されることはなく、更なる「乾燥時間の短縮」が図れる。
【0018】
その他、接着部分5を不規則に配置していたり、接着部分5が占める領域を非接着部分5’が占める領域より狭くし、接着部分5を複数とし且つ互いに連続させず、非接着部分5’を1つとし且つ連続させ、接着部分5を非接着部分5’で囲んで配置することによっても、フィルム状や全面に接着剤を塗布した場合と比べて、通気性が阻害されることはなく、「乾燥時間の短縮」が図れる。
尚、接着部分5の単位面積当たりに占める割合である付着率Fを10%以上90%以下としても良い。
【0019】
そして、立体布帛3をポリエステル樹脂製の経糸で編成される2枚の経編地11、12の間を連結糸13で連結したダブルラッシェル編地とし、表皮2をポリエステル樹脂製の経糸で編成された経編地とすることによって、カバー部材1としてのクッション性を確保しつつ、通気性を阻害せず、「乾燥時間の短縮」も図れる。
【0020】
又、洗濯処理を1回行った後の剥離強さHを、カバー部材1の縦方向か横方向で1.0N/cm以上10.0N/cm以下とすることで、耐洗濯性を向上でき、洗濯処理を1回行ってから2時間後におけるカバー部材1の水分含有率B2K”を3%以下とすることで、「乾燥時間の短縮」を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るカバー部材によると、表皮と裏地である立体布帛を接着剤を介して接着し、立体布帛と表皮の間に、接着剤が付着している接着部分と、接着剤が付着していない非接着部分を有すること等で、「通気性の確保」、「乾燥時間の短縮」を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<カバー部材1の全体構成>
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1〜3には、本発明に係るカバー部材1が示されており、このカバー部材1は、乗用車のカーシートなどの座席Sを覆うものであって、座席Sに対して着脱可能(取り外し可能)である。
まずは、カバー部材1が覆う座席Sについて述べる。
【0024】
<座席S>
図1に示したように、座席Sは、乗務員などの使用者が着座するものであって、上述した乗用車のカーシートの他、使用者が着座できるのであれば、座席(操縦席)・椅子等であっても良い。
座席Sは、その形状、色、素材など特に限定はなく、又、ヘッドレストや肘掛の有無も問わない。
以下、座席Sは、主にカーシートであるとして述べる。
【0025】
このような座席Sに対して、カバー部材1は、その座席Sの全体を覆っても良いが、背凭れのみを覆ったり、座部のみを覆ったり、複数の部材に分かれて背凭れと座部の両方を覆うなど何れの構成であっても構わない。
カバー部材1は、表皮2と、この表皮2の裏2b側に位置した裏地3を少なくとも有している。
【0026】
カバー部材1は、これら表皮2や裏地3以外にも、層状のものを有しても良く、例えば、表皮2と裏地3の間に、シート状物やメッシュ状物(網目状物)など別の部材が存在していたり、裏地3の更に裏3b側に、シート状物を配しても構わない。
その他、カバー部材1は、面ファスナーや紐等の着脱部材や、ポケットなどを有していても良い。
【0027】
<表皮2>
図1〜3に示したように、表皮2は、カバー部材1における最も外方側に位置し、上述したように、使用者(乗務員)と接触する部分(露出した部分)である。
又、表皮2(特に、表2a側)は、露出して使用者の目に触れるため、意匠性も有する(つまり、意匠表皮である)と言え、その色、模様や、凹凸等の表面性状は、何れの構成であっても良い。
【0028】
表皮2の素材も、特に限定はなく、例えば、合成皮革(合皮)、人工皮革(人皮)、天然皮革などや、織物、編物(経糸で編成されたトリコット編地等の経編地や、緯糸で編成された緯編地など)、不織布等の布帛、合成樹脂製のフィルムやシート等であっても良い。
このような表皮2は、その裏2b側に裏地3が位置しており、表皮2の裏2b側が、表皮2における接着面(裏地3に対する接着面)であるとも言える。
【0029】
<裏地(立体布帛)3>
図2、3に示したように、裏地3は、表皮2の裏2b側に位置し、且つ、その裏2b側に接着された立体布帛3である。
ここで、本発明において「裏地3が表皮2の裏2b側に接着剤4を介して接着される」とは、裏地3が表皮2の裏2bに接着剤4によって直接接着している場合や、裏地3が表皮2の裏2bに対して、別の部材を挟んで接着剤4を介して接着されている(詳解すれば、表皮2と別の部材が接着剤4を介して接着され、別の部材と裏地3が接着剤4を介して接着されている)場合など、裏地3が、表皮2の裏2b側に位置していれば何れの場合も含む。
尚、このような裏地3は、その表3a側に上述した表皮2が位置しているとも言え、裏地3の表3a側が、裏地3における接着面(表皮2に対する接着面)であるとも言える。
【0030】
又、本発明において「布帛」とは、経糸又は緯糸にて編成される編地(編物)や、経糸及び緯糸にて織成される織地(織物)の他、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡したニードルパンチ法や、熱融着性繊維が含有され加熱により成形するサーマルボンド法等にて形成される不織布を含む。
【0031】
立体布帛3は、ダブルラッシェル編地等の立体編地3’、モケット等のパイル織物や不織布など、立体的でクッション性を有する布帛であれば、何れの素材であっても構わない。
立体布帛3を構成する糸は、ポリエステル樹脂製であったり、ナイロン(ポリアミド、PA)樹脂製、アクリル(PMMAなど)樹脂製、ポリエチレン(PE)樹脂製やポリプロピレン(PP)樹脂製等のポリオレフィン樹脂製などであっても良い。
以下、立体布帛3とは、主に立体編地3’であるとして述べる。
【0032】
<立体編地3’>
図2、3に示したように、立体編地3’は、ダブルラッシェル編地(経糸で編成される2枚の経編地(表経編地と裏経編地)の間を連結糸で連結した編地)や、シングルジャージ編地を起毛させたパイル編地など、立体的でクッション性を有する編地であれば、何れの編組織・構成であっても良い。
この立体編地3’を編成する糸は、ポリエステル樹脂製の糸(ポリエステル糸)であって、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂製、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂製などでも良い。
又、立体編地3’の糸は、その繊度、フィラメント数、撚数、断面形状なども特に限定はない。
【0033】
<接着剤4>
図2、3に示すように、裏地3は、表皮2の裏2b側に対して、接着剤4を介して接着されても良い。
接着剤4は、裏地3を表皮2の裏2b側に接着させるのであれば、その素材に限定はなく、例えば、アクリル樹脂系接着剤や、オレフィン樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、ポリスチレン樹脂溶剤系接着剤、ポリビニルアルコール樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ポリアミド樹脂系接着剤などの合成樹脂系接着剤、その他、膠や松やに、デンプン系接着剤等の天然系接着剤など何れでも良い。
接着剤4の状態も、特に限定はなく、エマルジョン、液体状、固形状(ホットメルト状)、テープ状、不織布状などでも構わない。
尚、接着剤4の状態について、裏地3が表皮2の裏2bに接着する前は、不織布状等であっても、接着した後は、不織布状等でなくなっても良く、例えば、接着した後には、後述するドット状であったり、後述する接着部分5が占める領域が、後述する非接着部分5’が占める領域より狭く、接着部分5は、複数であり且つ互いに連続しておらず、非接着部分5’は、1つであり且つ連続しており、接着部分5は、非接着部分5’に囲まれて配置されていても構わない。
【0034】
接着剤4は、表皮2の裏2b側と、裏地3(その表3a側)の間に存在し、表皮2と裏地3を接着させるのであれば、表皮2の裏2b側と、裏地3の表3a側の間において、接着剤4が、少なくとも一部に付着し(つまり、接着剤4が付着している接着部分5と、接着剤4が付着していない非接着部分5’を有し)ていたり、又は、表皮2の裏2b側と裏地3の表3a側の全面に付着していても良い。
以下、接着剤4については、接着部分5と非接着部分5’を有している場合を主に述べる。
【0035】
<接着部分5、非接着部分5’>
図2、3に示したように、接着部分5、非接着部分5’は、表皮2と裏地3の間において、接着剤4が少なくとも一部に付着していれば、その形状(特に、平面視形状)は、特に限定はない。
例えば、接着部分5の平面視形状は、網目状(
図2参照)や、ドット状(
図3参照)の他、市松模様状であっても良い。
【0036】
接着部分5が網目状である場合、その網目の形状は、正方形、ひし形、平行四辺形などの四角形、六角形、三角形、五角形、八角形など何れでも良く、その網目の大きさも特に限定はない。
接着部分5がドット状である場合も同様で、そのドットの形状も、真円状や楕円状などでも良く、その直径やドット間の距離等も、特に限定はない。
接着部分5が市松模様(チェック模様)状である場合も同様で、この市松模様を構成する各図形が、正方形、ひし形、平行四辺形などの四角形であったり、それぞれの四角形が湾曲していたり、複数の市松模様が組み合わさって組市松模様を形成していても良く、各四角形の大きさも、特に限定はない。
尚、ここまで述べた接着部分5は、1枚のカバー部材1における表皮2や裏地3の接着面にて、網目状やドット状、市松模様状の何れか1つであっても良いが、これらの形状が組み合わさっていても良い。
【0037】
その他、表皮2や裏地3の接着面にて、接着部分5は、不規則に(規則性なく、ランダムに)配置されていても良い(
図5、6等参照)。
又、この不規則に配置された接着部分5それぞれの形状は、特に限定はなく、略真円状や略楕円状、略三角形状、略正方形状、略ひし形状、略平行四辺形状などの略四角形状であったり、それ以外に、略五角形状や略六角形状、略八角形状などであっても良く、これらの形状が、1枚のカバー部材1における表皮2や裏地3の接着面にて、組み合わされていても構わない。
【0038】
又、表皮2や裏地3の接着面にて、接着部分5が占める領域は、非接着部分5’が占める領域より狭く、接着部分5は、複数であり且つ互いに連続しておらず、非接着部分5’は、1つであり且つ連続し、接着部分5は、非接着部分5’に囲まれて配置されていても良い(
図5、6等参照)。
ここまで述べた接着部分5におけるドット状等の形状や、接着部分5と非接着部分5’の
図5、6等で示した配置などの特徴は、表皮2と裏地3を実際に接着する前の接着面における特徴であっても良いが、一度接着した表皮2と裏地3を敢えて剥離させた状態の接着面における特徴であっても構わない。
【0039】
<接着剤4の付着率Fなど>
上述した接着剤4が表皮2と裏地3の間の少なくとも一部に付着していれば、その接着剤4が付着している接着部分5が、単位面積当たりに占める割合(接着剤4の付着率)Fも、特に限定はないが、例えば、10%以上90%以下、好ましくは20%以上80%以下、更に好ましくは30%以上70%以下であっても良い。
この付着率Fは、10%より小さいと、接着剤4と、立体布帛3(特に、ダブルラッシェル編地の立体編地3’)が点接触となる割合が大きくなり、裏地3を表皮2の裏2b側に確り接着させ難くなるとも言え、90%より大きいと、水分の排出性が悪くなるとも言える。
又、付着率Fは、表皮2と裏地3の間において、一様でなくとも良く、部分的に、付着率Fが高い箇所や低い箇所があっても構わない。
この他、接着剤4の目付(単位面積当たりの塗布量)Mも、特に限定はないが、例えば、20g/m
2 以上50g/m
2 以下、好ましくは25g/m
2 以上45g/m
2 以下、更に好ましくは30g/m
2 以上40g/m
2 以下であっても良い。
【0040】
<剥離強さH>
このような接着剤4にて接着される表皮2と裏地3間の剥離強さHは、接着剤4の付着率Fや目付M、素材、状態、洗濯前か洗濯後(洗濯処理を所定回数行った後)か、表皮2や裏地3の接着面における表面性状などによって異なるとも言える。
剥離強さHの具体的な値は、特に限定はなく、例えば、まず洗濯前(常態)における剥離強さHは、縦方向(表皮2や裏地3が編地や織地であれば、経方向)では1.0N/cm以上6.0N/cm以下、好ましくは1.5N/cm以上5.5N/cm以下、更に好ましくは2.0N/cm以上5.0N/cm以下であっても良く、横方向(表皮2や裏地3が編地や織地であれば、緯方向)では1.0N/cm以上13.0N/cm以下、好ましくは1.5N/cm以上12.0N/cm以下、更に好ましくは2.0N/cm以上10.0N/cm以下であっても良い。
又、洗濯後(例えば、洗濯処理(JIS−L−0217:1995の103法又はJIS−L−0001:2014の140法で示される洗濯処理等)を1回行った後など)における剥離強さHの具体的な値は、縦方向では1.0N/cm以上6.0N/cm以下、好ましくは2.0N/cm以上5.0N/cm以下、更に好ましくは3.0N/cm以上4.0N/cm以下であっても良く、横方向では1.0N/cm以上10.0N/cm以下、好ましくは1.5N/cm以上9.0N/cm以下、更に好ましくは2.0N/cm以上8.0N/cm以下であっても良い。
尚、剥離強さHは、所定の規格によって測定しても良いが、JIS−K−6848−1:1999、JIS−K−6854−1:1999、JIS−K−6854−2:1999、JIS−K−6854−3:1999、JIS−K−6854−4:1999等で示された試験方法によって測定しても良い。
又、本発明における「JIS−K−6848−1:1999等で示された試験方法」とは、上述したように、JIS−K−6848−1:1999等に記載された通りの試験方法だけでなく、当該JISそれぞれに記載された試験方法に準ずる方法も含む。
【0041】
<通気度T>
カバー部材1全体としての通気度Tは、カバー部材1を構成する表皮2や裏地3の素材・組織や目付の他、接着剤4の付着率Fや目付M、素材、状態、洗濯前か洗濯後か等によって異なるとも言える。
通気度Tの具体的な値も、特に限定はないが、例えば、10ml(ミリリットル)/cm
2 /sec以上40ml/cm
2 /sec以下、好ましくは15ml/cm
2 /sec以上35ml/cm
2 /sec以下、更に好ましくは18ml/cm
2 /sec以上30ml/cm
2 /sec以下であっても良い。
尚、通気度Tも、所定の規格によって測定しても良いが、JIS−L−1096:2010のA法(フラジール形法)、B法(ガーレ形法)、C法(ISO法)等で示された試験方法によって測定しても良い。
又、本発明における「JIS−L−1096:2010のA法等で示された試験方法」とは、上述したように、JIS−L−1096:2010のA法等に記載された通りの試験方法だけでなく、当該JISそれぞれに記載された試験方法に準ずる方法も含む。
【0042】
<乾燥性K>
カバー部材1全体としての乾燥性Kも、カバー部材1を構成する表皮2や裏地3の素材・組織や目付の他、接着剤4の付着率Fや目付M、素材、状態、洗濯前か洗濯後か等によって異なるとも言える。
カバー部材1の乾燥性Kについては、例えば、洗濯前のカバー部材1の重量(A)を測定し、洗濯直後(例えば、洗濯処理(JIS−L−0217:1995の103法又はJIS−L−0001:2014の140法で示される洗濯処理等)を1回行った直後など)における重量(B0)を測定し、以後乾燥するまで1時間毎の重量(1時間後であればB1、2時間後であればB2とし、n時間後であればBnとする)を測定し、BnからAを引けば(=Bn−A)、洗濯してからn時間後におけるカバー部材1中の水分含有量BnK’がわかり、BnからAを引いたものをAで割れば(=(Bn−A)/A)、洗濯してからn時間後におけるカバー部材1中の水分含有率BnK”(単位は%)がわかり、これら水分含有量BnK’や水分含有率BnK”の変化(減り具合)から、乾燥性Kが判断できるとも言える。
尚、n時間後における水分含有量BnK’の具体的な値は、測定する試料そのものの重さによっても変化する。
そこで、洗濯してからn時間後における水分含有率BnK”の具体的な値について言及すれば、水分含有率BnK”の具体的な値も、特に限定はないが、例えば、0時間後(洗濯直後)における水分含有率B0K”は、10%以上80%以下、好ましくは15%以上70%以下、更に好ましくは20%以上65%以下であっても良く、1時間後における水分含有率B1K”は、0%以上40%以下、好ましくは3%以上35%以下、更に好ましくは5%以上30%以下であっても良く、2時間後における水分含有率B2K”は、0%以上20%以下、好ましくは0%以上15%以下、更に好ましくは0%以上13%以下であっても良い。
特に、カバー部材1中の3時間後以降における水分含有率B3K”、B4K”、B5K”…は、0%であるとも言える。
【0043】
<試験1〜4>
ここからは、まず本発明に係るカバー部材1の実施例1〜5と、比較例1について言及する。
これらのうち、実施例1〜3を用いて後述する試験1を行い、実施例1、2と比較例1を用いて後述する試験2、3を行い、実施例5を用いて後述する試験4を行う。
尚、本発明に係るカバー部材1は、当然に、以下の実施例1〜5で言及する表皮2や裏地3(立体編地3’)に限定されるものではない。
又、上述した実施例1〜5に対して施す洗濯処理は、例えば、JIS−L−0217:1995に記載の103法や、JIS−L−0001:2014に記載の140、141、142法、その他、JIS−L−0217:1995やJIS−L−0001:2014に記載された洗い方など、何れの洗濯処理であっても良い。
【0044】
<実施例1>
図4〜6に示された実施例1における表皮2は、第1筬(バック筬)と第2筬(ミドル筬)と第3筬(フロント筬)の3枚の筬を用いて編成されたトリコット編地である。
実施例1の表皮2であるトリコット編地は、第1筬を1−0/4−5/1−0/3−4の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(167dtex48フィラメント、加工糸)が編み込まれ、第2筬を1−2/2−3/1−0/1−2の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(75dtex24フィラメント、生糸)が編み込まれ、第3筬を1−0/1−2/1−2/2−3の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(75dtex24フィラメント、生糸)が編み込まれている。
表皮2であるトリコット編地は、機上で、ウェール密度が28本(ウェール)/インチ、コース密度が59コース/インチであり、熱処理後で、ウェール密度が35本(ウェール)/インチ、コース密度が50コース/インチである。
【0045】
図4〜6に示された実施例1における裏地3(立体編地3’)は、5枚の筬(第1〜5筬)を用いて、2枚の経編地(表経編地11、裏経編地12)の間を連結糸13で連結するように編成されたダブルラッシェル編地である。尚、表経編地11は、裏地3の表3a側の経編地であって、裏地3の接着面となり、裏経編地12は、裏地3の裏3b側の経編地であって、カバー部材1全体の最も裏1b側に位置する。
実施例1の裏地3(立体編地3’)であるダブルラッシェル編地は、第1筬を0−1・1−1/2−1・1−1/2−3・3−3/2−1・1−1の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex36フィラメント、加工糸)が編み込まれ、第2筬を2−3・3−3/2−1・1−1/0−1・1−1/2−1・1−1の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex36フィラメント、加工糸)が編み込まれ、第3筬を2−3・1−2/1−0・2−1の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(75dtex36フィラメント、生糸)が編み込まれ、第4筬を1−2・2−3/2−1・1−0の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(75dtex36フィラメント、生糸)が編み込まれ、第5筬を0−0・2−3/3−3・1−0の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex36フィラメント、加工糸)が編み込まれている。
裏地3であるダブルラッシェル編地は、機上で、ウェール密度が22本(ウェール)/インチ、コース密度が45コース/インチであり、熱処理後で、ウェール密度が24本(ウェール)/インチ、コース密度が43コース/インチである。
尚、実施例1では、第1筬と第2筬にて裏地3の裏経編地12を編成し、第3筬と第4筬にて裏地3の裏経編地12と表経編地11を連結糸13で連結し、第5筬にて裏地3の表経編地11を編成している。
これを詳解すれば、第1筬と第2筬を、上述したように、各コースの前半(第1筬で例示すれば、「/」で区切られた「0−1・1−1」や「2−1・1−1」などの各コースにおける前半の「0−1」や「2−1」など)のように操作して裏経編地12においてはニードルループを形成し、各コースの後半(同じく第1筬で例示すれば、「/」で区切られた「0−1・1−1」や「2−1・1−1」などの各コースにおける後半の各「1−1」など)のように操作して表経編地11においてはニードルループを形成しないことで、第1筬と第2筬にて裏地3の裏経編地12を編成することとなる。
又、第3筬と第4筬を、上述したように、各コースの前半のように操作して裏経編地12においてニードルループを形成し、各コースの後半のように操作して表経編地11においてもニードルループを形成することで、第3筬と第4筬にて裏地3の裏経編地12と表経編地11を連結糸13で連結することとなる。尚、実施例1においては、第3筬と第4筬を上述したように操作することで、連結糸13は、1コース毎に逆方向位置に(互い違いに)ニードルループを形成することとなり、カバー部材1(立体編地3’)の側面視において、複数の連結糸13それぞれが、互いに交差している(
図4(b)参照)。
更に、第5筬を、第1筬や第2筬とは反対に、上述したように、各コースの前半のように操作して裏経編地12においてはニードルループを形成せず、各コースの後半のように操作して表経編地11においてはニードルループを形成することで、第5筬にて裏地3の表経編地11を編成することとなる。
【0046】
図5、6に示されたように、実施例1における表皮2や裏地3の接着面にて、接着部分5は、不規則に(規則性なく、ランダムに)配置されていたり、接着部分5が占める領域は、非接着部分5’が占める領域より狭く、接着部分5は、複数であり且つ互いに連続しておらず、非接着部分5’は、1つであり且つ連続し、接着部分5は、非接着部分5’に囲まれて配置されている。
又、実施例1では、接着部分5となる接着剤4として、ポリアミド樹脂系の不織布状ホットメルト剤を用いており、接着剤4の目付(単位面積当たりの塗布量)Mは、30g/m
2 である。
【0047】
<実施例2>
実施例1のカバー部材1において、接着剤4の目付Mを、40g/m
2 とすることで、実施例2のカバー部材1を得た。
【0048】
<実施例3>
実施例1のカバー部材1において、接着部分5となる接着剤4として、ポリエステル樹脂系の不織布状ホットメルト剤を用い、接着剤4の目付Mを、30g/m
2 とすることで、実施例3のカバー部材1を得た。
【0049】
<実施例4>
実施例4における表皮2は、上述したように、特に限定はないが、例えば、実施例1のように、第1筬(バック筬)と第2筬(ミドル筬)と第3筬(フロント筬)の3枚の筬を用いて編成されたトリコット編地であったり、その他の経編地や緯編地などの編物、織物であっても良い。
【0050】
実施例4における裏地3(立体編地3’)も、5枚の筬を用いるが、より詳しくは、第1〜3筬と第5、6筬を用いて、2枚の経編地(表経編地11、裏経編地12)の間を連結糸13で連結するように編成されたダブルラッシェル編地である。尚、実施例1〜3と同様に、表経編地11は、裏地3の表3a側の経編地であって、裏地3の接着面となり、裏経編地12は、裏地3の裏3b側の経編地であって、カバー部材1全体の最も裏1b側に位置する。
実施例4の裏地3(立体編地3’)であるダブルラッシェル編地は、第1筬を(2−1・1−1/2−3・3−3)×2/2−1・1−1/(1−2・2−2/1−0・0−0)×2/1−2・2−2の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex36フィラメント、単糸・セミダル生糸)が編み込まれ、第2筬を(1−2・2−2/1−0・0−0)×2/1−2・2−2/(2−1・1−1/2−3・3−3)×2/2−1・1−1の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex36フィラメント、単糸・セミダル生糸)が編み込まれ、第3筬を1−0・1−0/1−2・1−2の順に繰り返し操作してポリエステルモノフィラメント糸(33dtex、単糸・セミダル生糸)が編み込まれ、第5筬を2−2・1−0/0−0・1−2の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex48フィラメント、単糸・セミダル生糸)が編み込まれ、第6筬を0−0・1−2/2−2・1−0の順に繰り返し操作してポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex48フィラメント、単糸・セミダル生糸)が編み込まれている。
裏地3であるダブルラッシェル編地は、機上で、ウェール密度が22本(ウェール)/インチ、コース密度が43コース/インチであり、熱処理後で、ウェール密度が22本(ウェール)/インチ、コース密度が46コース/インチである。
尚、実施例4では、第1筬と第2筬にて裏地3の裏経編地12を編成し、第3筬にて裏地3の裏経編地12と表経編地11を連結糸13で連結し、第5筬と第6筬にて裏地3の表経編地11を編成している。
これを詳解すれば、第1筬と第2筬を、上述したように、各コースの前半のように操作して裏経編地12においてはニードルループを形成し、各コースの後半のように操作して表経編地11においてはニードルループを形成しないことで、第1筬と第2筬にて裏地3の裏経編地12を編成することとなる。
又、第3筬を、上述したように、各コースの前半のように操作して裏経編地12においてニードルループを形成し、各コースの後半のように操作して表経編地11においてもニードルループを形成することで、第3筬にて裏地3の裏経編地12と表経編地11を連結糸13で連結することとなる。尚、実施例4においては、第3筬を上述したように操作することで、連結糸13は、2コース毎に逆方向位置に(互い違いに)ニードルループを形成することとなり、カバー部材1(立体編地3’)の側面視において、複数の連結糸13それぞれが、互いに交差している。
更に、第5筬と第6筬を、第1筬や第2筬とは反対に、上述したように、各コースの前半のように操作して裏経編地12においてはニードルループを形成せず、各コースの後半のように操作して表経編地11においてはニードルループを形成することで、第5筬と第6筬にて裏地3の表経編地11を編成することとなる。
【0051】
実施例4においても、表皮2や裏地3の接着面にて、接着部分5は、不規則に(規則性なく、ランダムに)配置されていたり、接着部分5が占める領域は、非接着部分5’が占める領域より狭く、接着部分5は、複数であり且つ互いに連続しておらず、非接着部分5’は、1つであり且つ連続し、接着部分5は、非接着部分5’に囲まれて配置されている。
又、実施例4では、接着部分5となる接着剤4として、ウレタン樹脂系のホットメルト剤を用いており、接着剤4の目付Mは、35g/m
2 である。
【0052】
<実施例5>
実施例5における表皮2も、上述したように、特に限定はないが、例えば、実施例1のように、第1筬(バック筬)と第2筬(ミドル筬)と第3筬(フロント筬)の3枚の筬を用いて編成されたトリコット編地であったり、その他の経編地や緯編地などの編物、織物であっても良い。
【0053】
実施例5における裏地3(立体編地3’)は、6枚の筬(第1〜6筬)を用いて、2枚の経編地(表経編地11、裏経編地12)の間を連結糸13で連結するように編成されたダブルラッシェル編地である。尚、実施例1〜4と同様に、表経編地11は、裏地3の表3a側の経編地であって、裏地3の接着面となり、裏経編地12は、裏地3の裏3b側の経編地であって、カバー部材1全体の最も裏1b側に位置する。
実施例5の裏地3(立体編地3’)であるダブルラッシェル編地は、第1筬を所定の順に操作してポリエステルマルチフィラメント糸(75dtex36フィラメント、単糸・セミダル生糸)が編み込まれ、第2筬を所定の順に操作してポリエステルマルチフィラメント糸(75dtex36フィラメント、単糸・セミダル生糸)が編み込まれ、第3筬を所定の順に操作してポリエステルモノフィラメント糸(30dtex、分繊糸)が編み込まれ、第4筬を所定の順に操作してポリエステルモノフィラメント糸(30dtex、分繊糸)が編み込まれ、第5筬を所定の順に操作してポリエステルマルチフィラメント糸(75dtex36フィラメント、単糸・セミダル生糸)が編み込まれ、第6筬を所定の順に操作してポリエステルマルチフィラメント糸(75dtex36フィラメント、単糸・セミダル生糸)が編み込まれている。
裏地3であるダブルラッシェル編地は、機上で、ウェール密度が22本(ウェール)/インチ、コース密度が30コース/インチであり、熱処理後で、ウェール密度が25本(ウェール)/インチ、コース密度が32コース/インチである。
尚、実施例5では、第1筬と第2筬にて裏地3の裏経編地12を編成し、第3筬と第4筬にて裏地3の裏経編地12と表経編地11を連結糸13で連結し、第5筬と第6筬にて裏地3の表経編地11を編成している。
【0054】
実施例5においても、表皮2や裏地3の接着面にて、接着部分5は、不規則に(規則性なく、ランダムに)配置されていたり、接着部分5が占める領域は、非接着部分5’が占める領域より狭く、接着部分5は、複数であり且つ互いに連続しておらず、非接着部分5’は、1つであり且つ連続し、接着部分5は、非接着部分5’に囲まれて配置されている。
又、実施例5でも、接着部分5となる接着剤4として、ウレタン樹脂系のホットメルト剤を用いており、接着剤4の目付Mは、32g/m
2 である。
【0055】
<比較例1>
実施例1のカバー部材1について、裏地3を、略板状のウレタン発泡材(目付20kg/m
2 で、厚さ3mm)とすると共に、接着部分5となる接着剤4として、ポリエステル樹脂系の不織布状ホットメルト剤を用い、接着剤4の目付Mを、30g/m
2 とすることで、比較例1のカバー部材を得た。
【0056】
<試験1(剥離強さHなど)>
試験1では、上述した実施例1〜3に対して、JIS−L−0217:1995の103法で示された洗濯処理を1回行う前後(洗濯前後)において、縦方向(経方向)と横方向(緯方向)の剥離強さHを測定し、その結果を表1に示す。
尚、試験1において、剥離強さHは、所定の規格によって測定した。
【0058】
<試験1(剥離強さHなど)の評価>
表1に示すように、表皮2や裏地3(立体編地3’)が全く同じ実施例1〜3は、それぞれの接着剤4の素材や目付Mが互いに異なることで、洗濯前後における剥離強さHが若干異なるものの、洗濯前か洗濯後か、そして、縦方向か横方向かを問わず、少なくとも1.9N/cmの剥離強さHを確保しており、実施例1〜3は、洗濯後においても、剥離等の異常はなく、十分な耐洗濯性を有している。
そして、表1により、実施例1〜3は、洗濯処理を1回行った後において、剥離強さHが、カバー部材1の縦方向と横方向の少なくとも一方向で1.0N/cm以上10.0N/cm以下であることがわかる。
尚、接着剤4の素材がポリエステル樹脂である実施例3は、接着剤4の素材がポリアミド樹脂である実施例1、2より、剥離強さHそのものの値が高いとも言える。
又、実施例1の縦方向及び横方向や、実施例2の横方向においては、洗濯後の剥離強さHが、洗濯前の剥離強さHより高くなっている。
【0059】
<試験2(水分含有率BnK”など)>
試験2では、上述した実施例1、2と比較例1に対して、JIS−L−0217:1995の103法で示された洗濯処理を1回行う前(洗濯前)のカバー部材1の重量(A)を測定し、当該洗濯処理を行った直後(洗濯直後)における重量(B0)を測定し、以降、洗濯処理を行ってから1時間毎(洗濯してから1時間毎)における重量(1時間後であればB1、2時間後であればB2とし、n時間後であればBnとする)を測定し、その結果を表2に示す。
又、試験2では、この表2の値に基づき、BnからAを引く(=Bn−A)ことで、洗濯してからn時間後におけるカバー部材1中の水分含有量BnK’を計算し、その結果を表3に示し、BnからAを引いたものをAで割る(=(Bn−A)/A)ことで、洗濯してからn時間後におけるカバー部材1中の水分含有率BnK”(単位は%)を計算し、その結果を表4に示す。
ここで、試験2において、実施例1、2及び比較例1の試料の大きさは、20cm×20cmとし、乾燥条件は、温度が21℃、相対湿度が50.6%RHで、乾燥方法は「吊乾かし」とした。
尚、表2、3中の値の単位は、g(グラム)である。
又、表3中における実施例1、2及び比較例1の水分含有量B3K’、B4K’の値は、マイナスとなっているが、測定誤差と思われ、表4中における実施例1、2及び比較例1の水分含有率B3K”、B4K”の値は0%とした。
【0063】
<試験2(水分含有率BnK”など)の評価>
表2〜4に示すように、実施例1、2と、比較例1とは、表皮2は同じであるが、裏地3が立体編地3’かウレタン発泡材かで異なることで、洗濯直後の水分含有率B0K”から既に大きく異なっており、洗濯処理を行ってから1時間後であっても引き続き水分含有率B1K”には大きな差があり、そして、洗濯処理を行ってから2時間後であっても水分含有率B1K”には差が出ている。
従って、裏地3を立体編地3’とすることで、「乾燥時間の短縮」が実現できる。
そして、表4により、実施例1、2は、洗濯処理を1回行ってから2時間後において、カバー部材1の水分含有率B2K”が、3%以下であることがわかる。
【0064】
<試験3(通気度T)>
試験3では、上述した実施例1、2と比較例1の通気度Tを測定し、その結果を表5に示す。
尚、試験3において、通気度Tは、所定の規格によって測定した。
【0066】
<試験3(通気度T)の評価>
表5に示すように、通気度Tの値そのものは、実施例1、2と比較例1で大きくは異ならないが、試験2で上述したように、裏地3を立体編地3’とした実施例1、2は、洗濯直後の水分含有率B0K”や、洗濯処理を行ってから1時間後の水分含有率B1K”等に大きな差があることから、実施例1、2は、裏地3を立体編地3’とすることで、裏地3をウレタン発泡材とした場合と遜色ない「通気性の確保」と、「乾燥時間の短縮」を両立できると共に、試験1で示したように、洗濯後においても、剥離等の異常はなく、「十分な耐洗濯性」も同時に実現していると言える。
【0067】
<試験4(耐洗濯性)>
試験4では、上述した実施例5に対して、洗濯処理としてドライクリーニングの処理を所定回数行った後における外観を、以下の表6に示す。
ここで、「ドライクリーニング」とは、JIS−L−0217:1995の401法に記載された通りのドライクリーニングだけでなく、当該JISに記載されたドライクリーニングに準ずる処理も含む。
【0069】
表6で示されたように、ドライクリーニングを所定回数繰り返しても、実施例5の外観は、剥離等の異常はなく、十分な耐洗濯性を有している。
このように、本発明に係るカバー部材1は、洗濯可能(ウォッシャブル)であると共に、「通気性の確保」、「乾燥時間の短縮」等も同時に実現している。
【0070】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。カバー部材1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
カバー部材1には、撥水防汚などの機能性樹脂を塗布しても良い。
カバー部材1には、インクジェット等でプリントを施したり、シールを張り付ける等をしても良い。
カバー部材1が、表皮2や裏地3以外に、表皮2と裏地3の間にシート状物やメッシュ状物(網目状物)など別の部材を有している場合に、接着剤4は、その別の部材と表皮2との間において少なくとも一部に付着し、及び/又は、その別の部材と裏地3との間において少なくとも一部に付着しても良く、同様に、表皮2と裏地3の間に別の部材が複数ある場合には、接着剤4は、表皮2と裏地3とそれぞれの別の部材の何れかの間において、少なくとも一部に付着していても良い。
表皮2が布帛である場合には、表皮2を構成する糸と、裏地(立体布帛)3を構成する糸が接触している箇所に、接着部分5が配置されていても良い。