【解決手段】基材10と、基材10の少なくとも一方の表面に形成され、基材10の側面から基材10の内部に入射された内部伝播光を基材の外部に取出す光取出し部11と、を有し、光取出し部11は、凹部11aおよび凸部11bの少なくとも一方が錐台形状を有する凹凸構造11cを有し、凹凸構造11cの充填率が15%以上であり、光透過率が50%以上であることを特徴とする、光学体1が提供される。
前記凹凸構造は、格子配列、千鳥配列、および六方細密配列からなる群から選択されるいずれか1種以上の態様で配列されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学体。
前記凹凸構造の最小構造単位の中心軸間を連結することで得られる単位領域の面積Bと、前記最小構造単位を構成するテーパ面部のうち、前記単位領域内に存在する部分の面積Aとの比A/Bが、0.68以下であることを特徴とする、請求項2または3に記載の光学体。
前記凹凸構造は、円錐台、楕円錐台、正多角形錐台、多角形錐台、半円錐台、1/4円錐台、及び異形の多角形錐台形状からなる群から選択される何れか1種以上の錐台形状を有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の光学体。
前記基材は、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、およびガラスからなる群から選択される何れか1種以上で構成されることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の光学体。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
<1.光学体の構成>
まず、
図1〜
図14に基づいて、本実施形態に係る光学体1の構成について説明する。光学体1は、導光板とも称される部材であり、基材10と、光取出し部11とを備える。光取出し部11は、基材10の表面10Aのうち、少なくとも一部の領域に形成される。
【0025】
基材10は、基材10の内部に入射された光、すなわち内部伝播光を基材10の面方向(すなわち、厚さ方向に垂直な方向、
図1では水平方向)に伝播させる。したがって、基材10は、光の伝導性に優れた樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂で構成されることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート。なお、PETの性状は特に問われず、非晶質であってもよいし、延伸したものであっても良い)、TAC(トリアセチルセルロース)、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。また、基材10は、光の伝導性に優れた無機材料で構成されてもよい。このような無機材料としては、例えばケイ素系の材料、より具体的にはガラス等が挙げられる。基材10の厚さは特に制限されず、光学体1の用途等によって適宜調整すればよい。
【0026】
光取出し部11は、表面10Aの少なくとも一部の領域に形成される。光取出し部11は、その表面に形成される凹凸構造11cを有する。
【0027】
光取出し部11は、内部伝播光を取出し、光学体1の外部に出射する。
図1の直線L10は、光源20から基材10内部に入射される入射光の光路を示し、直線L11は内部伝播光の光路を示し、直線L12は、外部に取出された光、すなわち、取出し光の光路を示す。つまり、光取出し部11に到達した内部伝播光は、凹凸構造11cで反射(拡散)し、光の回折現象により、表面10Bから外部に出射される。光取出し部11は、表面10Aのうち、光を取出したい箇所に形成される。光源20の点灯と消灯により、光取出し部11のパターンが形成された領域、すなわち発光領域からあたかも光が浮き上がるような表現が可能となる。発光領域の形状によって様々な意匠が実現される。発光領域によって形成される意匠は様々であり、例えば、各種のキャラクタ画像、文字画像等が挙げられる。もちろん、意匠はこれらの例に限定されない。例えば、パチンコなどの遊戯機器におけるデジタルサイネージ(遊戯機器用表示装置)に本実施形態を適用しても良い。この場合、光源20(後述)の光度を変化させることで、光学体1の視認性に変化を与えることができる。また、各種表示装置に導光板を重畳して使用する技術であれば特に制限なく本実施形態の光学体1を適用することができる。
【0028】
ここで、凹凸構造11cについてより詳細に説明する。凹凸構造11cは、多数の凸部11aおよび凹部11bを有する。凸部11aは、光学体1の厚さ方向外側に突出した形状を有し、凹部11bは、光学体1の厚さ方向内側にへこんだ形状を有する。
【0029】
凸部11aは、錐台形状を有する。ここで、錐台形状とは、錐体から、当該錐体と頂点を共有し、相似に縮小した錐体を取り除いた形状を意味する。具体的には、凸部11aは、錐台の上端面(錐台の互いに平行な2つの面のうち、小さい方の面)を構成する平面部11a−1と、錐台のテーパ面を構成するテーパ面部11a−2とを備える。ここで、錐台形状の種類は特に制限されない。錐台形状の例としては、円錐台(
図2)、楕円錐台(
図3)、正多角形錐台(
図4〜
図6)、多角形錐台、半円錐台(
図7)、および1/4円錐台(
図8)等が挙げられる。正多角形錐台の例としては、正三角錐台(
図4)、正四角錐台(
図5)、および正六角錐台(
図6)等が挙げられる。さらに、錐台形状は異形の多角形錐台形状(すなわち、平面部11a−1が異形の(歪んだ)多角形となっている錐台形状)であってもよい。
図44及び
図45は凸部11aが異形の多角形錐台形状となっている例を示す。
図44及び
図45に示される通り、凸部11aが異形の多角形錐台形状となる場合、各凸部11aの形状は互いに異なっていてもよい。もちろん、各凸部11aの形状は同じであってもよい。凸部11aは、これらの錐台形状のうち、何れか1種で構成されていてもよく、複数種類の錐台形状で構成されていても良い。
【0030】
ここで、凸部11aを半円錐台とすることで、テーパ面部11a−2の面積を円錐台に対して約18%程度低減することができる。さらに、凸部11aを1/4円錐台とすることで、テーパ面部11a−2の面積を円錐台に対して約45%低減することができる。これにより、テーパ面部11a−2の面積を必要なだけ(つまり、必要な発光輝度を実現する分だけ)形成することができる。なお、平面部11a−1の面積は円錐台に対して減少するが、その分平面部11b−1の面積が増える。さらに、テーパ面部11a−2の面積が減少する分、平面部11b−1の面積が増える。この結果、平面部11a−1、11b−1の総面積が大きくなる。この結果、透過率を高めることができる。なお、凸部11aを半円錐台あるいは1/4円錐台とする場合、テーパ面部11a−2を光源20側に向ける必要がある。テーパ面部11a−2が光取出し機能を有するからである。他の部分(すなわち、光学体1の端面に垂直な部分)に内部伝播光が到達しても、内部伝播光は光学体1の端面側に反射される。
【0031】
また、凸部11aを半円錐台あるいは1/4円錐台とすることで、同一の光学体1から様々な発光色の意匠を表示することができる。例えば、凸部11aを半円錐台とする場合、光学体1の異なる端面に異なる発光色の光源20を配置する。そして、第1の発光領域を構成する凸部11aのテーパ面部11a−2を第1の光源20に向ける。さらに、第2の発光領域を構成する凸部11aのテーパ面部11a−2を第2の光源20に向ける。これらの凸部11aは、テーパ面部11a−2でしか内部伝播光を外部に出射しない。したがって、第1の発光領域は、第1の光源20に対応する発光色の意匠を表示し、第2の発光領域は、第2の光源20に対応する発光色の意匠を表示することができる。同様の原理で、1/4円錐台であれば、4色の意匠(例えば、白・赤・青・緑等)を表示することができる。
【0032】
平面部11a−1は、基材10の面方向に平行であり、外来光を透過させる部分である。詳細は後述するが、本実施形態では、凸部11aが平面部11a−1を有しているので、発光輝度を高めるために凹凸構造の充填率を高くしても、高い透過率を維持することができる。
【0033】
テーパ面部11a−2は、内部伝播光を反射し、外部に出射する部分である。テーパ面部11a−2は、平面状であってもよく、湾曲状(球面状)であってもよい。テーパ面部11a−2が平面状となる場合、テーパ面部11a−2と基材10の面方向とのなす角度は45度程度が好ましいが、25〜75度程度であってもよい。テーパ面部11a−2が球面状となる場合、テーパ面部11a−2の曲率半径(
図22参照)は特に制限されない。ただし、曲率半径が大きいほどテーパ面部11a−2の平面視の面積が大きくなり、平面部11a−1の平面視の面積が小さくなるので、発光輝度が増加し、透過率が減少する傾向がある。したがって、光学体1に要求される特性に応じて曲率半径を設定すれば良い。曲率半径と発光輝度および透過率との相関については後述する。ここで、凹凸構造11cに関する「平面視」とは、凹凸構造11cを面方向に平行な面に投影することを意味する。したがって、平面視の面積とは、凹凸構造11cを面方向に平行な面に投影することで得られる領域(
図12、
図13参照)の面積である。
【0034】
凹凸構造11cのうち、凸部11a以外の領域が凹部11bを形成する。凹部11bの平面部(底面部)11b−1は基材10の面方向に平行であり、外来光を透過させる部分である。なお、外来光は、例えば、光学体1の裏側(すなわち、表面10A側)に配置された表示装置500(
図15〜
図17参照)から出射される外来光である。表示装置500から出射された外来光が光学体1を透過した場合、視認者は、光学体1の裏側に配置された表示装置500の表示画像を視認することができる。
【0035】
凹凸構造11cの充填率は15%以上である。ここで、凹凸構造11cの充填率は、凹凸構造11cの平面視での全面積に占める凸部11a(すなわち、錐台形状を有する部分)の平面視の面積(専有面積)の比である。充填率が高いほど発光輝度を高めることができる。充填率は、25%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、70%以上であることがより好ましく、100%であることがより好ましい。凹凸構造11cの充填率は、凹凸構造11cの平面視形状を観察することで測定することができる。凹凸構造11cの平面視形状は、例えば光学顕微鏡により観察することができる。
【0036】
このように、本実施形態では、凸部11aが錐台形状となっており、平面部11a−1を有する。したがって、光学体1のオン時(すなわち、光源20が発光している時)には、光源20から光学体1に光が入射される。光学体1に入射された光、すなわち内部伝播光は、光学体1内を全反射しながら伝播し、やがて凹凸構造11cに到達する。凸部11aのテーパ面部11a−2に到達した内部伝播光は、テーパ面部11a−2で反射(拡散)し、光の回折現象により、表面10Bから外部に出射される。凹凸構造11cの他の部分、すなわち、凸部11aの平面部11a−1、凹部11bの平面部11b−1に到達した内部伝播光は全反射し、光学体1内をさらに伝播する。これにより、凹凸構造11cが形成された領域、すなわち発光領域が発光するので、視認者は、発光領域の意匠を視認することができる。
【0037】
一方、
図9に示すように、光学体1のオフ時(すなわち、光源20が発光していない時)には、光学体1内に光が入射されないので、発光領域は発光しない。そして、凸部11aの平面部11a−1および凹部11bの平面部11b−1が外来光を透過させる。直線L13は外来光の光路を示す。このように、本実施形態では、凹部11bの平面部11b−1のみならず、凸部11aの平面部11a−1でも外来光を透過させることができる。したがって、高い透過率を実現することができる。一方、凸部11aのテーパ面部11a−2は、内部伝播光を反射させ、外部に出射させることができる。ここで、本実施形態では、凹凸構造11cの充填率が15%以上となっているので、凸部11aのテーパ面部11a−2が高い密度で分布している。したがって、多くの内部伝播光を外部に出射させることができるので、光学体1のオン時には、発光輝度を高めることができる。
【0038】
一方、凸部11aには、平面部11a−1が形成されている。したがって、凹凸構造11cの充填率を高めても、凹凸構造11cには、多くの平面部分、すなわち凸部11aの平面部11a−1および凹部11bの平面部11b−1が存在する。したがって、光学体1のオフ時には、外来光を高い透過率で透過させることができる。具体的には、透過率は50%以上となる。ここで、透過率は、外来光の全強度に対する透過光の強度の比となる。本実施形態では、凹凸構造11cに多くの平面部分が存在するので、透過率は高くなる傾向にある。ただし、充填率を非常に高くした場合等には、透過率が50%未満となりうる。この場合、後述する面積比A/Bを調整することで、透過率をより確実に50%以上とすることができる。透過率は、65%以上であることが好ましい。したがって、本実施形態では、高い発光輝度と透過率とを両立させることができる。
【0039】
なお、
図1からも明らかな通り、光学体1のオン時であっても、外来光は凸部11aの平面部11a−1および凹部11bの平面部11b−1を透過する。したがって、厳密には、発光領域からの発光には、外来光も含まれる。この点、凹凸構造11cの充填率を高め、発光輝度を高くすることで、外来光を目立たなくする(実質的に外来光による画像を見えなくする)ことが可能である。逆に、充填率を15%以上の範囲で意図的に落とすことで、発光領域の意匠と外来光による画像とを重畳させて視認者に視認させることもできる。
【0040】
図10は従来の光学体の一例として光学体1000を示す。光学体1000は、マイクロレンズ形状の凹部1010を有し、凹部1010が内部伝播光を反射し、外部に出射する。凹部1010間の領域が凸部1020となる。この例では、凹凸構造の充填率を高めることで、光学体1000のオン時に発光輝度を高めることができる。しかし、平面部分が凸部1020の上端面のみとなるため、光学体1000のオフ時に外来光の透過率が低くなってしまう。つまり、光学体1000のオフ時であっても、凹部1010が外来光を散乱させるため、視認者は、凹凸構造による意匠を視認してしまう。この問題を解決する方法として、凹部1010間のピッチL100を長くすることが挙げられる。この方法によれば、外来光を透過させる平面部分、すなわち凸部1020の上端面の平面視の面積を高めることができるので、外来光の透過率を高めることができる。しかし、この場合、凹凸構造の充填率が低下するので、光学体1000のオン時に発光輝度が低下してしまう。したがって、凹凸構造が錐台形状となっていない場合、発光輝度および透過性を高いレベルで両立させることができない。
【0041】
特許文献1、2には、凹凸構造が有する形状として錐台形状が挙げられている。凹凸構造を錐台形状とすることで、凹凸構造に多くの平面部分を形成することができるので、光学体のオフ時に高い透過率が実現できる可能性がある。しかし、単に凹凸構造を錐台形状にしただけでは、発光輝度および透過性を高いレベルで両立させることはできない。具体的には、凹凸構造の密度が低すぎると、高い発光輝度が実現できない。特許文献1、2では、光学体を表示装置に重畳させて使用することを何ら想定していない。つまり、特許文献1、2では、発光輝度および透過性を高いレベルで両立させるために、凹凸構造の充填率を高めることは記載されていない。したがって、特許文献1、2に開示された技術では、発光輝度および透過性を高いレベルで両立させることはできない。
【0042】
なお、
図1に示す例では、凸部11aが錐台形状を有することとしたが、
図11に示すように、凹部11bが錐台形状を有していても良い。この場合、凹部11bは、錐台の上端面を構成する平面部11b−1と、錐台のテーパ面を構成するテーパ面部11b−2とを備える。これらの機能は凸部11aが錐台形状を有する場合と同様である。この場合にも上記と同様の効果が得られる。
【0043】
凹凸構造11cは、周期的に配列されていても良いし、ランダムに配列されていても良い。ここで、凹凸構造11cが周期的に配列されているとは、凹凸構造11cのピッチに周期性があることを意味し、凹凸構造11cがランダムに配列されているとは、凹凸構造11cのピッチがランダムであることを意味する。凹凸構造11cのピッチとは、凸部11aおよび凹部11bのうち、錐台形状を有する構造体(以下、「錐台構造体」とも称する。
図1の例では錐台構造体は凸部11aとなり、
図11の例では錐台構造体は凹部11bとなる)の中心軸間の面方向の距離を意味する。また、配列の態様も特に制限されない。例えば、凹凸構造11cは、格子配列、千鳥配列、および六方細密配列から選択されるいずれか1種以上の態様で配列されていても良い。凹凸構造11cをランダムに配列させる場合、凹凸構造11cの配列を格子配列、千鳥配列、および六方細密配列等の周期配列からずらした配列としてもよい。周期配列からのずれ量は特に制限されないが、例えば凹凸構造11cを構成する凸部11aを周期配列の位置から数μm、例えば1〜5μm程度、あるいは2〜4μm程度ずらしてもよい。
【0044】
ここで、凹凸構造11cが周期的に配列されている場合、以下に説明する面積比A/Bを調整することで、透過率をより確実に高めることができる。
図12および
図13に基づいて、面積比A/Bについて説明する。
【0045】
図12の例では、凸部11aが円錐台形状を有している。さらに、凸部11aが六方細密配列で規則的に配列されている。配列の最小構造単位は、互いに隣接する3つの凸部11aである。これらの中心軸Pを連結することで、単位領域X1が得られる。この例では、中心軸Pが正三角形の頂点を構成するので、単位領域X1は正三角形となる。そして、単位領域X1の面積(より詳細には、平面視の面積)をBとする。さらに、最小構造単位を構成するテーパ面部11a−2のうち、単位領域X1内に存在する部分11a−3の面積(より詳細には、平面視の面積)をAとする。そして、面積比A/Bは、0.68以下であることが好ましい。これにより、外来光の透過率を50%以上とすることができる。面積比A/Bは、0.40以下であることがより好ましい。この場合、透過率を65%以上とすることができる。実用上、透過率は50%以上であればよく、65%以上であれば、外来光による画像をより鮮明に表示することができる。
【0046】
なお、面積比A/Bの好ましい範囲は、錐台形状の種類、配列の種類によらない。
図13に示す例では、凸部11aが正四角錐台形状を有している。さらに、凸部11aが格子配列で規則的に配列されている。この例では、互いに隣接する4つの凸部11aである。これらの中心軸Pを連結することで、単位領域X1が得られる。この例では、中心軸Pが正四角形の頂点を構成するので、単位領域X1は正四角形となる。
【0047】
つぎに、
図1に基づいて、錐台形状の曲率半径と発光輝度および透過率との相関について説明する。テーパ面部11a−2が球面状となる場合、テーパ面部11a−2は、何らかの曲率半径を有することとなる。凸部11aの平面視の面積が一定の下では、曲率半径が大きくなるほど、テーパ面部11a−2の平面視の面積が大きくなる。この一方で、平面部11a−1の平面視の面積が小さくなる。したがって、透過率は減少し、発光輝度が増大する。つまり、発光輝度と透過率とは互いにトレードオフの関係がある。
【0048】
本発明者は、錐台形状の曲率半径と発光輝度および透過率との相関を詳細に調べた。具体的には、本発明者は、凹凸構造11cを規則的に配列し、錐台構造体の曲率半径と発光輝度および透過率との相関について調べた。本発明者は、凹凸構造11cのピッチを様々に変更して当該相関を調べた。この結果、ピッチ毎に多少の変動はあるものの、錐台構造体の曲率半径が大きくなるほど、発光輝度が増加し、透過率が減少する傾向があることが明らかになった。相関の一例を
図26、
図27に示す。この例では、凸部11aが円錐台形状を有する。
【0049】
本発明者は、上記相関についてさらに詳細に検討した。この結果、本発明者は、曲率半径およびピッチの如何にかかわらず、透過率と発光輝度とは一意の関係にあることを見出した。具体的には、本発明者は、凹凸構造11cのピッチおよびテーパ面部の曲率半径毎に測定した透過率および発光輝度を、横軸が透過率、縦軸が発光輝度となるxy平面上にプロットした。そして、これらの点の近似直線を最小二乗法で求めた。この結果、非常に高い相関係数(0.9以上)で近似直線を引くことができた。近似直線の一例を
図28に示す。この例では、凸部11aが円錐台形状を有している。点P1は透過率および発光輝度の測定値を示し、グラフL1は近似直線を示す。
【0050】
さらに、本発明者は、凸部11aの錐台形状を正六角錐台に変更して同様の調査を行った。この結果、本発明者は、凸部11aの錐台形状を正六角錐台に変更しても上記と同様の結果が得られた。ただし、近似直線は異なっていた。この結果、本発明者は、錐台形状の種類が同じであれば(例えば、錐台構造体が円錐台形状であれば)、曲率半径およびピッチの如何にかかわらず、透過率と発光輝度とは一意の関係にあることを見出した。透過率と発光輝度との相関は、錐台形状の種類毎に異なる。
【0051】
この結果、凹凸構造11cの設計が容易になることが期待できる。例えば、錐台構造体の曲率半径と発光輝度および透過率との相関を示すグラフを、ピッチ毎、および錐台形状の種類毎に作成しておく。ここで、発光輝度は光源20からの光量にも依存するので、発光輝度を測定した際の光源20からの光量も記録しておく。さらに、透過率および発光輝度の近似直線を錐台形状の種類ごとに求めておく。そして、光学体1に求められる透過率および発光輝度が特定できたら、それらを満たす錐台形状、曲率半径、およびピッチを、上記のグラフ等に基づいて決定する。具体的には、発光輝度は、光学体1と対になる光源20からの光量によっても変動する。そこで、グラフを作製した際の光源20の光量と、実際に使用される光源20の光量とに基づいて、発光輝度の目標値を補正する。例えば、光学体1と対になる光源20の光量が、グラフ作成時の光量よりも大きい場合には、発光輝度の目標値を小さくしてもよい。そして、例えば、光学体1に求められる透過率および補正後の発光輝度を実現できる錐台形状を上記近似直線に基づいて決定する。ついで、錐台構造体の曲率半径と発光輝度および透過率との相関を示すグラフに基づいて、発光輝度および透過率を満たす曲率半径、およびピッチを特定する。この決定プロセスにおいて、様々な制約(例えば製造プロセス、コスト、歩留り上の制約等)を考慮することが好ましい。これにより、様々な制約を考慮しつつも、光学体1に求められる特性を実現可能な凹凸構造11cを容易に設計することができる。
【0052】
さらに、本発明者は、凸部11aの形状を円錐台形状または異形の多角形錐台形状とし、さらに凹凸構造11cをランダムに配列して(具体的には、凸部11aの配列を六方細密配列から2〜4μmの範囲内でずらして)、発光輝度および透過率との相関を検討した。この結果、非常に高い相関係数(0.9以上)で近似直線を引くことができた。近似直線の一例を
図28に示す。点P2は透過率および発光輝度の測定値を示し、グラフL2は近似直線を示す。この結果、凸部11aの形状を円錐台形状または異形の多角形錐台形状とし、さらに凹凸構造11cをランダムに配列した場合であっても、透過率と発光輝度とは一意の関係にあることがわかった。比較のために従来の光学体の透過率と発光輝度との関係も
図28に示す。点P3は光取出し部がシボ加工された例であり、点P4は光取出し部がマイクロレンズアレイとなっている例である。直線L3は点P3、P4の近似直線である。シボ加工はガラス原盤にアルミナ性の研磨剤を用いてブラスト加工することで行ったものであり、マイクロレンズアレイは市販品である。
図28から明らかな通り、凸部11aの形状が異形の多角形錐台形状であるか否か、または凹凸構造11cの配列が周期配列であるか否かに関わらず、従来例よりも高い効率で光を取り出すことができ、外来光を透過させることができる。さらに、キメの細かい光取出し部11を表現でき、かつ光学体1のオフ時には、光取出し部11が見えにくくなり、透明性が向上する。つまり、このような光学体1を用いた導光板、または導光シートなどの導光デバイスを提供することが可能となる。さらに、凹凸構造11cをランダム配列とするか、凸部11aを異形の多角形錐台形状とするか、またはこれらを組み合わせることで、光源20を点光源などの比較的安価な構成にしても回折による輝線(回折光)を抑制できるため設計が容易になる。
【0053】
光取出し部11は、例えば、基材10上に未硬化の樹脂層を形成し、この樹脂層に転写型の凹凸構造を転写しつつ樹脂層を硬化させることで作製される。この例では、転写型は、凹凸構造11cの反転形状を有する。また、光取出し部11は、硬化性樹脂の硬化物で構成される。硬化性樹脂の硬化物は、透明性を有することが好ましい。硬化性樹脂は、重合性化合物と硬化開始剤とを含む。重合性化合物は、硬化開始剤によって硬化する樹脂である。重合性化合物としては、例えばエポキシ重合性化合物、及びアクリル重合性化合物等が挙げられる。エポキシ重合性化合物は、分子内に1つまたは2つ以上のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、またはプレポリマーである。エポキシ重合性化合物としては、各種ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型、F型等)、ノボラック型エポキシ樹脂、ゴムおよびウレタン等の各種変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、及びこれらのプレポリマー等が挙げられる。
【0054】
アクリル重合性化合物は、分子内に1つまたは2つ以上のアクリル基を有するモノマー、オリゴマー、またはプレポリマーである。ここで、モノマーは、さらに分子内にアクリル基を1つ有する単官能モノマー、分子内にアクリル基を2つ有する二官能モノマー、分子内にアクリル基を3つ以上有する多官能モノマーに分類される。
【0055】
「単官能モノマー」としては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸等)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル又は脂環類のモノマー(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル−アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル−アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。
【0056】
「二官能モノマー」としては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、ウレタンジアクリレートなどが挙げられる。
【0057】
「多官能モノマー」としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどが挙げられる。
【0058】
上記で列挙したアクリル重合性化合物以外の例としては、アクリルモルフォリン、グリセロールアクリレート、ポリエーテル系アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、脂肪族ウレタンオリゴマー、ポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
【0059】
硬化開始剤は、硬化性樹脂を硬化させる材料である。硬化開始剤の例としては、例えば、熱硬化開始剤、光硬化開始剤等が挙げられる。硬化開始剤は、熱、光以外の何らかのエネルギー線(例えば電子線)等によって硬化するものであってもよい。硬化開始剤が熱硬化開始剤となる場合、硬化性樹脂は熱硬化性樹脂となり、硬化開始剤が光硬化開始剤となる場合、硬化性樹脂は光硬化性樹脂となる。
【0060】
ここで、光学体1の透明性の観点からは、硬化開始剤は、紫外線硬化開始剤であることが好ましい。紫外線硬化開始剤は、光硬化開始剤の一種である。紫外線硬化開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。したがって、硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。透明性の観点から、硬化性樹脂は、紫外線硬化性アクリル樹脂であることがより好ましい。硬化性樹脂は、基材10の樹脂との組み合わせ(例えば、屈折率の違い、密着性等)を考慮して適宜選択されれば良い。例えば、硬化性樹脂の屈折率が基材10よりも大きい場合、基材10と光取出し部11との境界面の全反射による光取出し部11への光の閉じ込め効果によって凸部11a(すなわち、錐台形状を有する部分)に入射する光の量が増加し、これにより凸部11aからの発光効率を向上させることができる。
【0061】
また、光取出し部11は、親水性、撥水性、曇り防止等の機能性が付与された樹脂で構成されていても良い。
【0062】
また、光取出し部11には、光学体1の用途に応じた添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば、無機フィラー、有機フィラー、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などが挙げられる。なお、無機フィラーの種類としては、例えば、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、SnO
2、Al
2O
3などの金属酸化物微粒子が挙げられる。
【0063】
光学体1は、光取出し部11が形成されたフィルムを粘着層により基材10に貼り付けることで作製されても良い。粘着層は、例えば透明性を有する両面テープである。また、
図14に示すように、転写型11dをそのまま光取出し部11とし、光取出し部11を粘着層11eによって基材10に貼り付けることで作製されても良い。この場合、転写型は透明性を有する材料、つまり上述した硬化性樹脂で構成されることが好ましい。粘着層11eは、例えば透明性を有する両面テープである。
【0064】
また、光学体1は、射出成形により一体成型されてもよい。また、基材10上に直接凹凸構造11cを形成することで光学体1を作製しても良い。ただし、詳細は後述するが、上述した製造方法(すなわち、基材10上に別途光取出し部11を形成する方法)で光学体1を作製することが好ましい。
【0065】
また、基材10の両面のうち、光取出し部11が形成されていない領域には、反射防止構造が形成されていても良い。反射防止構造としては、凹凸の平均周期が可視光波長より低い微細凹凸構造、高屈折率膜と低屈折率膜とが交互に積層された積層膜(所謂AR膜)等が挙げられる。
【0066】
<2.発光装置の構成>
次に、
図1に基づいて、発光装置の構成について説明する。発光装置は、上述した光学体1と、光源20とを有する。光源20の種類は特に問われず、従来の導光板に適用される光源であればよい。すなわち、光源20は、白色光を出射するものであっても、単色光を出射するものであってもよい。発光装置の動作は概略以下の通りである。まず、光源20から光学体1に光が入射する。光学体1の内部に入射された光、すなわち内部伝播光は、基材10の両面で反射しながら光学体1の内部を伝播する。
【0067】
内部伝播光の一部は、光取出し部11の凹凸構造11cに到達する。凹凸構造11cに到達した内部伝播光は、凹凸構造11cで反射し、表面10Bから外部に取出される。これにより、発光領域が発光する。一方、光源20が発光していない場合、光学体1の発光領域は発光しない。この場合、光学体1は、外来光を高い透過率で透過させることができる。
【0068】
<3.発光装置の使用方法>
次に、
図15〜
図17に基づいて、発光装置の使用方法について説明する。
図15に示すように、発光装置は、例えば、表示装置500(例えば液晶表示装置)に重畳して使用される。表示装置500は例えば遊戯機器に内蔵される表示装置であってもよい。光学体1がオフされると(
図15の右側の状態)、上述したように、光学体1の発光領域は発光しない。この時、
図16に示すように、光学体1は、表示装置500のうち、光学体1の裏側に配置された部分からの外来光(すなわち、この部分に表示された表示画像500a)を透過する。したがって、視認者(人物U)は、表示画像500aを視認することができる。一方、光学体1がオンされると(
図15の左側の状態)、
図17に示すように、光学体1の発光領域1aが発光する。したがって、視認者は、発光領域1aの意匠を視認することができる。なお、この例では発光輝度が高く、視認者は、表示画像500aを実質的に視認できない。もちろん、表示領域の発光輝度を下げる(例えば、凹凸構造11cの充填率を下げる、光源20からの光量を下げる)ことで、発光領域1aの意匠および表示画像500aを同時に視認者に視認させるようにしてもよい。このように、本実施形態では、光学体1が高い発光輝度および透過率を有するので、光学体1のオン時には発光領域の意匠を視認者に視認させることができ、光学体1のオフ時には光学体1の裏側に表示された表示画像500aを視認者に視認させることができる。
【0069】
<4.光学体の製造方法>
つぎに、光学体1の製造方法について説明する。光学体1の製造方法は、凹凸構造11cの反転形状を有する転写型を作製する第1の工程と、基材の表面に未硬化の樹脂層を形成する第2の工程と、未硬化の樹脂層を硬化させるとともに、転写型の凹凸構造を硬化後の樹脂層に転写する第3の工程と、を含む。
【0070】
(4−1.第1の工程)
第1の工程は、凹凸構造11cの反転形状を有する転写型を作製する工程である。転写型は、例えば
図18に示す原盤100である。
【0071】
(4−1−1.原盤の構成)
そこで、原盤100の構成について説明する。原盤100は、円筒形状となっている。原盤100は円柱形状であっても、他の形状(例えば平板状)であってもよい。ただし、原盤100が円柱または円筒形状である場合、ロールツーロール方式によって原盤100の凹凸構造(すなわち、原盤凹凸構造)120を樹脂基材等にシームレス的に転写することができる。これにより、基材10の表面10Aに凹凸構造11cを高い生産効率で形成することができる。このような観点からは、原盤100の形状は、円筒形状または円柱形状であることが好ましい。
【0072】
原盤100は、原盤基材110と、原盤基材110の周面に形成された原盤凹凸構造120とを備える。原盤基材110は、例えば、ガラス体であり、具体的には、石英ガラスで形成される。ただし、原盤基材110は、SiO
2純度が高いものであれば、特に限定されず、溶融石英ガラスまたは合成石英ガラス等で形成されてもよい。原盤基材110は、金属母材上に上記の材料を積層したものや金属母材(例えば、Cu、Ni、Cr、Al)であってもよい。原盤基材110の形状は円筒形状であるが、円柱形状、他の形状であってもよい。ただし、上述のように、原盤基材110は円筒形状または円柱形状であることが好ましい。原盤凹凸構造120は、凹凸構造11cの反転形状を有する。
【0073】
(4−1−2.原盤の製造方法)
つぎに、原盤100の製造方法を説明する。まず、原盤基材110上に、基材レジスト層を形成(成膜)する。ここで、基材レジスト層を構成するレジスト材は特に制限されず、有機レジスト材及び無機レジスト材のいずれであってもよい。有機レジスト材としては、例えば、ノボラック系レジスト、または化学増幅型レジストなどが挙げられる。また、無機レジスト材としては、例えば、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)などの1種または2種以上の遷移金属を含む金属酸化物等が挙げられる。その他、無機レジスト材としては、Cr、Au等が挙げられる。ただし、熱反応リソグラフィを行うためには、基材レジスト層は、金属酸化物を含む熱反応型レジストで形成されることが好ましい。
【0074】
有機レジスト材を使用する場合、基材レジスト層は、スピンコーティング、スリットコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、またはスクリーン印刷等を用いることで原盤基材110上に形成されてもよい。また、基材レジスト層に無機レジスト材を使用する場合、基材レジスト層は、スパッタ法を用いることで形成されてもよい。有機レジスト材、無機レジスト材は併用されても良い。例えば、
図20Aに示すように、第1の無機レジスト層(例えばCr)110a、第2の無機レジスト層(例えばAu)110b、有機レジスト層110cを積層しても良い。
【0075】
次に、露光装置200(
図19参照)により基材レジスト層の一部を露光することで、基材レジスト層に潜像を形成する。具体的には、露光装置200は、レーザ光200Aを変調し、レーザ光200Aを基材レジスト層に対して照射する。これにより、レーザ光200Aが照射された基材レジスト層の一部が変性するため、基材レジスト層に原盤凹凸構造120に対応する潜像を形成することができる。
【0076】
続いて、潜像が形成された基材レジスト層上に現像液を滴下することで、基材レジスト層を現像する。これにより、基材レジスト層に凹凸構造が形成される。ついで、基材レジスト層をマスクとして原盤基材110及び基材レジスト層をエッチングすることで、原盤基材110上に原盤凹凸構造120を形成する。なお、エッチングの方法は特に制限されないが、垂直異方性を有するドライエッチングであることが好ましく、例えば、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)であることが好ましい。以上の工程により、原盤100を作製する。エッチングはウエットエッチングであっても良い。
【0077】
(4−1−3.露光装置の構成)
次に、
図19に基づいて、露光装置200の構成について説明する。露光装置200は、基材レジスト層を露光する装置である。露光装置200は、レーザ光源201と、第1ミラー203と、フォトダイオード(Photodiode:PD)205と、偏向光学系と、制御機構230と、第2ミラー213と、移動光学テーブル220と、スピンドルモータ225と、ターンテーブル227とを備える。また、原盤基材110は、ターンテーブル227上に載置され、回転することができるようになっている。
【0078】
レーザ光源201は、レーザ光200Aを発する光源であり、例えば、固体レーザまたは半導体レーザなどである。レーザ光源201が発するレーザ光200Aの波長は、特に限定されないが、例えば、400nm〜500nmの青色光帯域の波長であってもよい。また、レーザ光200Aのスポット径(レジスト層に照射されるスポットの直径)は、原盤凹凸構造120の凹部の開口面の直径より小さければよく、例えば200nm程度であればよい。レーザ光源201から発せられるレーザ光200Aは制御機構230によって制御される。
【0079】
レーザ光源201から出射されたレーザ光200Aは、平行ビームのまま直進し、第1ミラー203で反射され、偏向光学系に導かれる。
【0080】
第1ミラー203は、偏光ビームスプリッタで構成されており、偏光成分の一方を反射させ、偏光成分の他方を透過させる機能を有する。第1ミラー203を透過した偏光成分は、フォトダイオード205によって受光され、光電変換される。また、フォトダイオード205によって光電変換された受光信号は、レーザ光源201に入力され、レーザ光源201は、入力された受光信号に基づいてレーザ光200Aの位相変調を行う。
【0081】
また、偏向光学系は、集光レンズ207と、電気光学偏向素子(Electro Optic Deflector:EOD)209と、コリメータレンズ211とを備える。
【0082】
偏向光学系において、レーザ光200Aは、集光レンズ207によって、電気光学偏向素子209に集光される。電気光学偏向素子209は、レーザ光200Aの照射位置を制御することが可能な素子である。露光装置200は、電気光学偏向素子209により、移動光学テーブル220上に導かれるレーザ光200Aの照射位置を変化させることも可能である(いわゆる、Wobble機構)。レーザ光200Aは、電気光学偏向素子209によって照射位置を調整された後、コリメータレンズ211によって、再度、平行ビーム化される。偏向光学系から出射されたレーザ光200Aは、第2ミラー213によって反射され、移動光学テーブル220上に水平かつ平行に導かれる。
【0083】
移動光学テーブル220は、ビームエキスパンダ(Beam expader:BEX)221と、対物レンズ223とを備える。移動光学テーブル220に導かれたレーザ光200Aは、ビームエキスパンダ221により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ223を介して、原盤基材110上に形成された基材レジスト層に照射される。また、移動光学テーブル220は、原盤基材110が1回転する毎に矢印R方向(送りピッチ方向)に1送りピッチ(トラックピッチ)だけ移動する。ターンテーブル227上には、原盤基材110が設置される。スピンドルモータ225はターンテーブル227を回転させることで、原盤基材110を回転させる。これにより、レーザ光200Aを基材レジスト層上で走査させる。ここで、レーザ光200Aの走査方向に沿って、基材レジスト層の潜像が形成される。
【0084】
また、制御機構230は、フォーマッタ231と、ドライバ233とを備え、レーザ光200Aの照射を制御する。フォーマッタ231は、レーザ光200Aの照射を制御する変調信号を生成し、ドライバ233は、フォーマッタ231が生成した変調信号に基づいて、レーザ光源201を制御する。これにより、原盤基材110へのレーザ光200Aの照射が制御される。
【0085】
フォーマッタ231は、基材レジスト層に描画する任意のパターンが描かれた入力画像に基づいて、基材レジスト層にレーザ光200Aを照射するための制御信号を生成する。具体的には、まず、フォーマッタ231は、基材レジスト層に描画する任意の描画パターンが描かれた入力画像を取得する。入力画像は、軸方向に基材レジスト層の外周面を切り開いて一平面に伸ばした、基材レジスト層の外周面の展開図に相当する画像である。この展開図には、原盤100の周面形状に相当する画像が描かれている。この画像は、凹凸構造11cの反転形状を示す。なお、原盤100の原盤凹凸構造120が転写された転写用フィルムを作製し、この転写用フィルムを転写型として用いて基材10上に凹凸構造11cを形成しても良い。この場合、原盤凹凸構造120は凹凸構造11cと同じ凹凸構造を有することになる。
【0086】
次に、フォーマッタ231は、入力画像を所定の大きさの小領域に分割し(例えば、格子状に分割し)、小領域の各々に凹部描画パターン(つまり、原盤100の凹部に相当するパターン)が含まれるか否かを判断する。続いて、フォーマッタ231は、凹部描画パターンが含まれると判断した各小領域にレーザ光200Aを照射するよう制御する制御信号に生成する。この制御信号(すなわち、露光信号)は、スピンドルモータ225の回転と同期されることが好ましいが、同期されていなくてもよい。また、制御信号とスピンドルモータ225の回転との同期は原盤基材110が1回転する毎に取り直されても良い。さらに、ドライバ233は、フォーマッタ231が生成した制御信号に基づいてレーザ光源201の出力を制御する。これにより、基材レジスト層へのレーザ光200Aの照射が制御される。なお、露光装置200は、フォーカスサーボ、レーザ光200Aの照射スポットの位置補正等のような公知の露光制御処理を行ってもよい。フォーカスサーボはレーザ光200Aの波長を用いてもよく、他の波長を参照用に用いても良い。
【0087】
また、レーザ光源201から照射されたレーザ光200Aは、複数系統の光学系に分岐された後に基材レジスト層に照射されても良い。この場合、複数の照射スポットが基材レジスト層に形成される。この場合、一方の光学系から出射されたレーザ光200Aが他方の光学系によって形成された潜像に到達した際に、露光を終了すればよい。
【0088】
したがって、本実施形態によれば、入力画像の描画パターンに応じた潜像をレジスト層に形成することができる。そして、レジスト層を現像し、現像後のレジスト層をマスクとして原盤基材110及び基材レジスト層をエッチングすることで、原盤基材110上に入力画像の描画パターンに応じた原盤凹凸構造120を形成する。すなわち、描画パターンに応じた任意の原盤凹凸構造120を形成することができる。したがって、描画パターンとして、光学体1の反転形状が描かれた描画パターンを準備すれば、光学体1の反転形状を有する原盤凹凸構造120を形成することができる。
【0089】
例えば、
図20Aに示すレジスト層を原盤基材110に形成した場合、まず、
図20Bに示すように、露光後の現像を行う。ついで、
図20Cに示すように、各レジスト層を順次エッチングする。最終的に原盤基材110をエッチングする。ついで、
図20Dに示すように、レジスト層を除去する。
【0090】
なお、本実施形態で使用可能な露光装置は露光装置200に制限されず、露光装置200と同様の機能を有するものであればどのような露光装置を使用しても良い。
【0091】
(4−1−4.原盤を用いた凹凸構造の形成方法について)
次に、
図21を参照して、原盤100を用いた凹凸構造11cの形成方法の一例について説明する。凹凸構造11cは、原盤100を用いたロールツーロール方式の転写装置300によって基材10上に形成可能である。
図21に示す転写装置300では、光硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂)を用いて光学体1を作製する。転写装置300を用いて、上述した第2および第3の工程が行われる。
【0092】
転写装置300は、原盤100と、基材供給ロール301と、巻取りロール302と、ガイドロール303、304と、ニップロール305と、剥離ロール306と、塗布装置307と、光源309とを備える。
【0093】
基材供給ロール301は、長尺な基材10がロール状に巻かれたロールであり、巻取りロール302は、光学体1を巻き取るロールである。また、ガイドロール303、304は、基材10を搬送するロールである。ニップロール305は、未硬化樹脂層310が積層された基材10、すなわち被転写フィルム3aを原盤100に密着させるロールである。剥離ロール306は、光学体1を原盤100から剥離するロールである。
【0094】
塗布装置307は、コーターなどの塗布手段を備え、未硬化の光硬化性樹脂組成物を基材10に塗布し、未硬化樹脂層310を形成する。塗布装置307は、例えば、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、またはダイコーターなどであってもよい。また、光源309は、光硬化性樹脂組成物を硬化可能な波長の光を発する光源であり、例えば、紫外線ランプなどであってもよい。
【0095】
転写装置300では、まず、基材供給ロール301からガイドロール303を介して、基材10が連続的に送出される。なお、送出の途中で基材供給ロール301を別ロットの基材供給ロール301に変更してもよい。送出された基材10に対して、塗布装置307により未硬化の光硬化性樹脂組成物が塗布され、基材10に未硬化樹脂層310が積層される。これにより、被転写フィルム3aが作製される。被転写フィルム3aは、ニップロール305により、原盤100と密着させられる。光源309は、原盤100に密着した未硬化樹脂層310に光を照射することで、未硬化樹脂層310を硬化する。これにより、原盤100の外周面に形成された原盤凹凸構造120が未硬化樹脂層310に転写される。すなわち、原盤凹凸構造120の反転形状を有する凹凸構造11cが基材10上に形成される。続いて、凹凸構造11cが形成された基材10は、剥離ロール306により原盤100から剥離される。ついで、凹凸構造11cが形成された基材10は、ガイドロール304を介して、巻取りロール302によって巻き取られる。なお、原盤100は縦置きであっても横置きであってもよく、原盤100の回転時の角度、偏芯を補正する機構を別途設けても良い。例えば、チャッキング機構に偏芯チルト機構を設けても良い。転写は圧空転写により行われても良い。
【0096】
このように、転写装置300では、被転写フィルム3aをロールツーロールで搬送する一方で、原盤100の周面形状を被転写フィルム3aに転写する。これにより、基材10上に凹凸構造11cが形成される。
【0097】
なお、基材10を熱可塑性樹脂フィルムとした場合、塗布装置307及び光源309は不要となる。この場合、原盤100よりも上流側に加熱装置を配置する。この加熱装置によって基材10を加熱して柔らかくし、その後、基材10を原盤100に押し付ける。これにより、原盤100の周面に形成された原盤凹凸構造120が基材10に転写される。なお、基材10を熱可塑性樹脂以外の樹脂で構成されたフィルムとし、基材10と熱可塑性樹脂フィルムとを積層してもよい。この場合、積層フィルムは、加熱装置で加熱された後、原盤100に押し付けられる。したがって、転写装置300は、基材10上に凹凸構造11cが形成された転写物を連続的に作製することができる。
【0098】
また、原盤100の原盤凹凸構造120が転写された転写用フィルムを作製し、この転写用フィルムを転写型として用いて基材10上に凹凸構造11cを形成しても良い。転写用フィルムの凹凸構造をさらに転写した転写用フィルムを転写型としてもよい。また、電鋳や熱転写などにより原盤100を複製し、この複製品を転写型として用いてもよい。さらに、原盤100の形状はロール形状に限られる必要は無く平面状の原盤でもよく、レーザ光200Aをレジスト照射する方法のほか、マスクを用いた半導体露光、電子線描画、機械加工、陽極酸化等、種々の加工方法を選択することができる。また、上述した製造方法によって凹凸構造11cが形成された樹脂フィルムを基材10の両面に貼り付けても良い。
【0099】
このように、凹凸構造11cは、原盤100(または原盤凹凸構造120を転写した転写用フィルム)の凹凸構造を基材10上に転写することで基材10上に形成される。本実施形態では、基材10上に上記方法により光取出し部11を形成することで、任意の形状、材質の基材10上に光取出し部11を形成することができる。したがって、少量多品種に容易に対応することができる。これに対し、射出成形により光学体1を一体成型する場合、基材の形状毎に金型を準備する必要がある。したがって、少量多品種に対応することが困難となる。
【0100】
なお、反射防止構造として微細凹凸構造を形成する場合、上記と同様の方法により、基材10上に微細凹凸構造を形成することができる。この場合、転写型には、凹凸構造11cの反転形状と、微細凹凸構造の反転形状とが形成すればよい。
【実施例】
【0101】
<1.実施例1>
次に、本実施形態の実施例について説明する。実施例1では、以下の工程により光学体1を作製した。
【0102】
(1−1.基材の準備)
基材10として、厚さ3mmのアクリル板(三菱レイヨン社製アクリライトEX)を準備した。
【0103】
(1−2.光学体の作製)
上述した第1〜第3の工程を行うことで、光学体1を作製した。具体的には、ガラス製の原盤基材110を用意し、上述した第1の工程により、原盤100を作製した。ここで、基材レジスト層は、
図20Aに示すレジスト層とした。第1の無機レジスト層110aはCr層とし、第2の無機レジスト層110bはAu層とした。Cr層、Au層はスパッタにより形成した。有機レジスト層を構成する材料は、東京応化社製THMR−IP3250とした。露光装置200に相当する露光装置としてニコン社製NSR−4425iを使用した。現像液は、東京応化社製NMD−3を使用し、Auエッチング液としてTransene社製GE8111を使用し、Crエッチング液として林純薬工業社製CR100を使用し、ガラスエッチング液としてステラケミファ社製フッ化水素酸50質量%水溶液を水で希釈したものを使用した(希釈後濃度5質量%)。
【0104】
ついで、原盤100の原盤凹凸構造を転写した転写用フィルムを作製した。具体的には、
図21に示す転写装置300を用いて、厚さ125μmの東洋紡社製ポリエステルフィルムの一方の表面に原盤100の原盤凹凸構造を転写した転写用フィルムを作製した。ここで、光硬化性樹脂組成物として、デクセリアルズ社製の紫外線硬化性アクリル樹脂組成物SK1120を使用した。そして、転写用フィルムを転写型として用いて、基材10の表面10Aに凹凸構造11cを形成した。具体的には、紫外線硬化性アクリル樹脂組成物として、東亞合成社製UVX6366と大阪有機化学工業社製ビスコート#150とを1:1の質量比で混合した組成物を準備した。この紫外線硬化性アクリル樹脂組成物を基材10の表面10A上に塗布することで未硬化の樹脂層を形成した。ついで、未硬化の樹脂層に転写用フィルムの凹凸構造を転写し、未硬化の樹脂層を硬化させた。
【0105】
以上の工程により、光学体1を作製した。実施例1に係る光学体1では、凸部11aが円錐台形状となっており、テーパ面部11a−2を球面状とした。テーパ面部11a−2の曲率半径を1.25μm、凸部11aの平面視の直径を15μm、充填率を80%、配列を六方細密配列の規則配列とし、ピッチを20μmとした。凹部11bの幅(隣接する凸部11aに挟まれる部分の平面視長さ)を2.5μmとした。
図22に凹凸構造11cの断面SEM写真(倍率10000倍)を示し、
図23に凹凸構造11cの平面光学顕微鏡写真(倍率2090倍)を示す。
【0106】
(1−3.輝度および透過率測定)
次に、光学体1を発光させた際の輝度を測定した。測定は以下の工程で行った。なお、測定は暗所環境下で行った。まず、光学体1の行方向側の端部にLED光源(アイテックシステム社製LPAC1−2430NCW−R24)を設置した。また、表面10B側に輝度計(コニカミノルタ社製CS1000)を設置した。設置位置は表面10Bから50cm離間した位置とし、輝度計の光軸を表面10Bと垂直とした。ついで、LED光源から高輝度白色光を光学体1に入射し、輝度計で発光輝度(cd/m
2)を測定した。また、日本分光社製V650により光学体1の透過率として波長550nmにおける垂直透過率(%)を測定した。結果、発光輝度は336cd/m
2となり、垂直透過率は79%であった。
【0107】
<2.比較例1>
比較例1では、実施例1と同様の工程により光学体を作製した。ここで、比較例1に係る光学体1では、凸部11aがマイクロレンズ形状となっている。つまり、凸部11aは錐台形状となっていない。凸部11aの曲率半径を33μm、凸部11aの平面視の直径を75μm、充填率を70%、配列を六方細密配列のランダム配列とした。
図39に凹凸構造11cの平面光学顕微鏡写真(倍率235倍)を示し、
図40に凹凸構造11cの断面SEM写真(倍率1000倍)を示す。また、実施例1と同様に発光輝度および垂直透過率を測定したところ、発光輝度は286cd/m
2となり、垂直透過率は28%であった。
【0108】
<3.対比>
実施例1と比較例1とを対比すると、実施例1は、比較例1よりも充填率が高いにもかかわらず、垂直透過率が優れた結果となった。さらに、実施例1の発光輝度は、比較例1よりも優れていた。したがって、実施例1では、高い発光輝度を維持しつつ、垂直透過率を高めることができた。なお、実施例1の光学体1を液晶表示装置に重畳し、光学体1をオンオフしてみた。この結果、光学体1のオン時には、発光領域の意匠を明確に視認することができた。一方、光学体1のオフ時には、裏側の液晶表示装置の表示画像をはっきりと視認することができた(発光領域の意匠はほとんど確認できなかった)。
【0109】
<4.実施例2>
実施例2では、凸部11aの錐台形状を正六角錐台形状とした他は実施例1と同様の処理を行った。ここで、凸部11aの配列を六方細密配列の規則配列とし、充填率を約90%とした。また、凸部11aのピッチを40μmとし、六角錐台の平面視での対角寸法を33μmとした。また、テーパ面部11a−2の曲率半径を2.5μmとし、凹部11bの幅を2.5μmとした。
図30に凹凸構造11cの平面光学顕微鏡写真(倍率1045倍)を示す。光学体1の発光輝度は362(cd/m
2)、垂直透過率は75.4%であった。したがって、錐台形状が円錐台形状以外であっても同様の効果が得られることが明らかになった。特に、充填率が90%と非常に高いが、垂直透過率は実施例1と遜色ない値であった。平面部分が多く形成されるからである。
【0110】
<5.実施例3>
実施例3では、発光輝度および垂直透過率に影響を与えるパラメータについて検討した。具体的には、実施例1と同様の工程により複数種類の光学体1を作製した。ここで、凸部11aを円錐台形状とした。さらに、凹部11bの幅を2.5μmで固定した。さらに、ピッチを10、20、40、80、160、および320μmのいずれかに設定し、テーパ面部11b−2の曲率半径を1.25、2.5、5.4、10.9、および21.25μmの何れかに設定した。
図23は、ピッチ20μm、曲率半径1.25μmの光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率2090倍)を示し、
図24は、ピッチ20μm、曲率半径2.5μmの光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率2090倍)を示し、
図25は、ピッチ20μm、曲率半径5.4μmの光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率2090倍)を示す。
図23〜
図25に示すように、ピッチが同じで、凹部11bの幅が同じであれば、凸部11aの平面視の直径(すなわち、面積)が同じになる。このような条件では、曲率半径が大きくなるほど、テーパ面部11a−2の平面視の面積が大きくなり、平面部11a−1の平面視の面積が小さくなる。
【0111】
そして、これらの光学体1の発光輝度および垂直透過率を実施例1と同様の工程により測定した。結果を
図26および
図27に示す。この結果、ピッチ毎に多少の変動はあるものの、テーパ面部11a−2の曲率半径が大きくなるほど、発光輝度が増加し、透過率が減少する傾向があることが明らかになった。
【0112】
さらに、上記で測定した透過率および発光輝度を、横軸が透過率、縦軸が発光輝度となるxy平面上にプロットした。そして、これらの点の近似直線を最小二乗法で求めた。この結果、非常に高い相関係数(0.9以上)で近似直線を引くことができた。結果を
図28に示す。点P1は透過率および発光輝度の測定値を示し、グラフL1は近似直線を示す。
図28によれば、近似直線の式は、y=−13.144x+1298.2となり、相関係数は0.9057であった。この結果、曲率半径およびピッチの如何にかかわらず、透過率と発光輝度とは一意の関係にあることが判明した。
【0113】
実施例3では、凸部11aの錐台形状を変更して上記と同様の調査を行った。具体的には、凸部11aを正六角錐台形状とした。さらに、凹部11bの幅を2.5μmで固定した。さらに、ピッチを40μmに設定し、テーパ面部11a−2の曲率半径を1.25、2.5、5.4、および10.9μmの何れかに設定した。上記以外のパラメータは実施例2と同様とした。
図29は、ピッチ40μm、曲率半径1.25μmの光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率1045倍)を示し、
図30は、ピッチ40μm、曲率半径2.5μmの光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率1045倍)を示す。
図31は、ピッチ40μm、曲率半径5.4μmの光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率1045倍)を示し、
図32は、ピッチ40μm、曲率半径10.9μmの光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率1045倍)を示す。曲率半径と発光輝度および垂直透過率との相関を
図33および
図34に示す。
【0114】
さらに、上記で測定した透過率および発光輝度を、横軸が透過率、縦軸が発光輝度となるxy平面上にプロットした。結果を
図35に示す。近似直線の式は、y=−4.8609x+732.97となり、相関係数は0.9932であった。
【0115】
したがって、凸部11aの錐台形状を正六角錐台に変更しても円錐台形状と同様の結果が得られた。ただし、近似直線は異なっていた。この結果、錐台形状の種類が同じであれば(例えば、錐台構造体が円錐台形状であれば)、曲率半径およびピッチの如何にかかわらず、透過率と発光輝度とは一意の関係にあることになる。そして、透過率と発光輝度との相関は、錐台形状の種類毎に異なる。
【0116】
<6.実施例4>
実施例4では、充填率について調査した。具体的には、凸部11aを正四角錐台形状とした。凸部11aの平面視での寸法を20μm×20μmとし、テーパ面部11a−2の曲率半径を2.5μmとした。凸部11aの配列は格子配列の規則配列とした。この条件下で、ピッチを30μm(充填率約44%)、40μm(充填率約25%)、60μm(充填率約11%)、および80μm(充填率約6%)の何れかとした。こうすることで単位面積当たりに配置される凸部11aの数が変わるので、凸部11aの充填率、言い換えれば平面部分の面積比(凹凸構造11cの平面視の全面積に対する平面部分の平面視の面積の比)が変動する。
図36は、ピッチが30μmの光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率1045倍)を示し、
図37は、ピッチが80μmの光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率1045倍)を示す。これらの光学体1の発光輝度および垂直透過率を実施例1と同様に測定した。結果を
図38に示す。
【0117】
図38によれば、凸部11aのピッチが60μm以下(すなわち、充填率が11%以下)となる場合、発光輝度が50(cd/m
2)未満と非常に低くなることが明らかになった。したがって、単に凹凸構造11cを錐台形状にしただけでは、発光輝度および垂直透過率を高いレベルで両立することができないことが明らかになった。
【0118】
発光輝度は、充填率が15%以上であれば50(cd/m
2)以上となる。したがって、充填率は少なくとも15%以上であることが必要である。充填率が高くなるほど(すなわち、単位面積あたりに存在する凸部11aの数が多くなるほど)発光輝度は増加し、垂直透過率は減少した。この相関は上述した例と同様であった。ただし、垂直透過率は、充填率にかかわらず高い値を維持できた。充填率を高めても平面部分の面積は十分大きくなるからである。これらの結果から、充填率が15%以上であれば、基本的には、発光輝度および垂直透過率を高いレベルで維持できることになる。しかし、充填率を非常に高くした場合等には、垂直透過率が50%を下回る場合もありうる。その場合、以下で説明する面積比A/Bを調整すればよい。
【0119】
<7.実施例5>
実施例5では、面積比A/Bの好ましい範囲について調査した。具体的には、テーパ面部11a−2の曲率半径を変える他は実施例1と同様の処理を行うことで、面積比A/Bの値が異なる複数種類の光学体1を作製した。つまり、ここでは、単位領域X1の面積Bを固定し、テーパ面部11a−2のうち、単位領域X1内に存在する部分11a−3の面積Aを変更した。そして、これらの光学体1の発光輝度および垂直透過率を実施例1と同様の処理により測定した。結果を
図41に示す。
図41から明らかな通り、面積比A/Bが小さいほど、垂直透過率が高まることがわかる。そして、面積比A/Bが0.68以下となる場合に、垂直透過率が50%以上となり、面積比A/Bが0.40以下となる場合に、垂直透過率が65%以上となる。実用上、透過率は50%以上であればよく、65%以上であれば、外来光による画像をより鮮明に表示することができる。したがって、面積比A/Bは0.68以下が好ましく、0.40以下がより好ましいことが明らかになった。
【0120】
<8.実施例6>
実施例6では、実施例1の凹凸を逆転した光学体1を作製した。具体的には、実施例1で作製した転写型の凹凸をさらに転写した転写型を作製し、これを用いて実施例1と同様の処理を行うことで、実施例1の凹凸を逆転した光学体1を作製した。凹凸が逆転していることは、光学顕微鏡による表面観察、SEMを用いた断面観察の他、三菱ケミカルシステム社製のVertscan(型番:R5300GL−Lite−AC)を用いて確認した。この光学体1の発光輝度は342cd/m
2となり、垂直透過率は79%であった。したがって、凹凸を入れ替えても同様の結果が得られた。
【0121】
<9.実施例7>
実施例7では、凸部11aの形状を円錐台形状または異形の多角形錐台形状とし、かつ凹凸構造11cをランダム配列として、光学体1の光学特性を検証した。まず、実施例1と同様の工程により複数種類の光学体1を作製した。ただし、原盤100を作製する際の基材レジスト総はCu層のみとした。Cu層はスパッタにより形成した。Cuエッチング液は林純薬工業社製Pure Etch CR201を使用した。また、転写用フィルムの基材をポリエステルフィルムからPETフィルムに変更した。光学体1においては、凹凸構造11cは六方細密配列を基準とし、基準配列からのずれ量を2、3、4μmのいずれかに設定した。基準配列のピッチは20、30、40、50、60μmのいずれかに設定し、テーパ面部11a−2の曲率半径は1.25μmで固定した。そして、凸部11aの形状を円錐台形状または異形の多角形錐台形状とした。実施例7では、凸部11aの形状が円錐台形状である光学体1、凸部11aの形状が異形の多角形錐台形状である光学体1をそれぞれ15種類(ずれ量3種×ピッチ5種)、合計30種類の光学体1を作製した。ここで、凸部11aの形状が異形の多角形錐台形状となる光学体1では、各凸部11aの形状がランダムとなるように設定した。そして、これらの光学体1の輝度および透過率を実施例1と同様の方法で測定した。
【0122】
図42〜45に光学体1の例を示す。
図42は、円錐台形状、基準配列からのずれ量2μm、充填率約83%、ピッチ30μm、平面部11a−1の直径25μm、凹部11bの幅2.5μmとなる光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率2090倍)を示す。なお、
図42〜
図45では、凸部11aがランダムに配列されているため、凹部11bの幅は、いくつかの測定点で測定された幅の算術平均値とした。
図42の例では、光学体1の発光輝度は222(cd/m
2)、垂直透過率は75%であった。
【0123】
図43は、円錐台形状、基準配列からのずれ量4μm、充填率約78%、ピッチ50μm、平面部11a−1の直径44μm、凹部11bの幅3.5μmとなる光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率1045倍)を示す。この例では、光学体1の発光輝度は162(cd/m
2)、垂直透過率は83%であった。
【0124】
図44は、異形の多角形錐台形状、基準配列からのずれ量2μm、充填率約51%、ピッチ20μm、平面部11a−1の直径12.5μm、凹部11bの幅5μmとなる光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率2090倍)を示す。なお、
図44及び
図45では、凸部11aが異形の多角形錐台形状となるため平面部11a−1が円形とならない。このため、平面部11a−1の直径はいわゆる円相当直径の算術平均値である。すなわち、いくつかの凸部11aで測定された円相当直径の算術平均値を平面部11a−1の直径とした。
図44の例では、光学体1の発光輝度は179(cd/m
2)、垂直透過率は73%であった。
【0125】
図45は、異形の多角形錐台形状、基準配列からのずれ量4μm、充填率約69%、ピッチ30μm、平面部11a−1の直径23.6μm、凹部11bの幅3.9μmとなる光学体1の平面光学顕微鏡写真(倍率1568倍)を示す。この例では、光学体1の発光輝度は166(cd/m
2)、垂直透過率は78%であった。
【0126】
図42〜
図45の写真から明らかな通り、円錐台形状または異形の多角形錐台形状の凸部11aがランダムに配列された場合であっても、凸部11aは錐台形状となっているため、凹凸構造11cには、多くの平面部分が存在することがわかる。さらに、凸部11aが規則的に配列された例と同様に、高い発光輝度及び透過率が実現されている。
【0127】
つぎに、すべての光学体1について測定した透過率および発光輝度を、横軸が透過率、縦軸が発光輝度となるxy平面上にプロットした。そして、これらの点の近似直線を最小二乗法で求めた。この結果、非常に高い相関係数(0.9以上)で近似直線を引くことができた。結果を
図28に示す。点P2は透過率および発光輝度の測定値を示し、グラフL2は近似直線を示す。比較のために従来の光学体の透過率と発光輝度との関係も
図28に示す。点P3は光取出し部がシボ加工された例であり、点P4は光取出し部がマイクロレンズアレイとなっている例である。直線L3は点P3、P4の近似直線である。
図28から明らかな通り、凸部11aの形状が異形の多角形錐台形状であるか否か、または凹凸構造11cの配列が周期配列であるか否かに関わらず、従来例よりも高い効率で光を取り出すことができ、外来光を透過させることができる。
【0128】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。