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特開2019-70953加工プログラム処理装置およびこれを備えた多軸加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-70953(P2019-70953A)
(43)【公開日】2019年5月9日
(54)【発明の名称】加工プログラム処理装置およびこれを備えた多軸加工機
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20190412BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20190412BHJP
【FI】
   G05B19/404 E
   G05B19/4093 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-196790(P2017-196790)
(22)【出願日】2017年10月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100133260
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 路彦
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 宗生
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB05
3C269AB31
3C269BB03
3C269BB05
3C269CC07
3C269EF10
3C269EF39
3C269EF76
3C269EF93
3C269QB02
(57)【要約】
【課題】 工具先端点として先端刃先を想定する加工プログラムに対しても、加工面に対する削り込みを発生させることなく工具姿勢を補正でき、加工面の面品位を向上するとともに、加工時間を短縮することができる加工プログラム処理装置およびこれを備えた多軸加工機を提供する。
【解決手段】 少なくとも2つの直線軸および少なくとも1つの回転軸を有する多軸加工機11の動作を制御する加工プログラムを処理する加工プログラム処理装置1であって、加工プログラムによって指令される工具先端点の指令位置および工具姿勢の指令角度と、工具の寸法とに基づいて、工具による切削面を変えることなくワークに対する工具姿勢を補正しうる補正基準点を算出する補正基準点算出部34と、工具先端点の指令位置を補正基準点の位置に書き換える指令位置書換部35とを有している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの直線軸および少なくとも1つの回転軸を有する多軸加工機の動作を制御する加工プログラムを処理する加工プログラム処理装置であって、
前記加工プログラムによって指令される工具先端点の指令位置および工具姿勢の指令角度と、工具の寸法とに基づいて、前記工具による切削面を変えることなくワークに対する工具姿勢を補正しうる補正基準点を算出する補正基準点算出部と、
前記工具先端点の指令位置を前記補正基準点の位置に書き換える指令位置書換部と、
を有している、加工プログラム処理装置。
【請求項2】
前記補正基準点算出部は、下記式(1)を用いて前記補正基準点の位置を算出する、請求項1に記載の加工プログラム処理装置;
P’=P+R(α)R(β)(P’−P) …式(1)
だだし、各符号は以下を表す。
P’:補正基準点の位置
P:工具先端点(直線軸)の指令位置
R:工具姿勢を定義する回転行列
α:第1の回転軸の指令角度
β:第2の回転軸の指令角度
’−P:所定方向に向けられた工具の先端(刃先)から補正基準点までのベクトル
【請求項3】
前記加工プログラム処理装置は、前記加工プログラムによって前記多軸加工機を制御しワークの加工を行う数値制御装置、前記多軸加工機で利用可能な前記加工プログラムの生成および編集を行うコンピュータ支援製造(CAM)装置、またはコンピュータ装置である、請求項1または請求項2に記載の加工プログラム処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の加工プログラム処理装置を備えてなる多軸加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸加工機の動作を制御する加工プログラムを処理する加工プログラム処理装置およびこれを備えた多軸加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直交する直線軸3軸と回転軸2軸とが同時に制御される5軸加工機等の多軸加工機においては、CAD(Computer-Aided Design:コンピュータ支援設計)機能およびCAM(Computer Aided Manufacturing:コンピュータ支援製造)機能を兼ね備えたCAD/CAM装置によって生成された加工プログラムが使用されている。そして、図14に示すように、当該加工プログラムによって指令された加工経路(Px、Py、Pz)および工具姿勢(α、β)に従って、工具先端点を制御する工具先端点制御が行われている。
【0003】
しかしながら、上述したCAD/CAM装置の性能によっては、生成された加工プログラムによって指令される工具姿勢にブレが生じる場合がある。そして、このようなブレが存在する加工プログラムによってワークを加工した場合、加工面に傷が入って面品位が低下したり、移動方向が変わるたびに加減速する必要があるため、加工時間が増大してしまうという問題がある。
【0004】
上記のような問題を解決するものとして、例えば、特開2015−15006号公報には、5軸加工機を工具先端点制御によって制御する数値制御装置において、工具方向(工具姿勢)の変化が滑らかとなるように工具方向ベクトルを補正する数値制御装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−15006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明においては、工具先端点の指令値として、工具の先端における中心位置(以下、先端中心という場合がある)を想定している。具体的には、ボールエンドミルを使用する加工プログラムであれば、図15(a)に示すように、工具の先端に設けられた球状部分の中心位置が工具先端点の指令値とされている。このため、工具先端点として先端中心を想定する場合、工具の刃先までの長さのみならず工具の径を計測し、これらの差から工具の中心位置までの長さを算出しなければならず、手間がかかるという問題がある。
【0007】
このため、加工プログラムの生成に際しては、一般的に、工具の刃先位置(以下、先端刃先という場合がある)を工具先端点の指令値と想定する方法が好まれている。しかしながら、工具先端点として先端刃先を想定する加工プログラムにおいて、上記特許文献1に係る工具姿勢の補正を行うと、図15(b)に示すように、補正後の加工プログラムによって工具先端点制御される工具が、ワークの加工面を必要以上に削り込み、傷を発生させてしまうという問題がある。一方、削り込みが発生しないように工具姿勢の補正量を抑制すると、補正による効果が薄れてしまうという問題もある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、工具先端点として先端刃先を想定する加工プログラムに対しても、加工面に対する削り込みを発生させることなく工具姿勢を補正でき、加工面の面品位を向上するとともに、加工時間を短縮することができる加工プログラム処理装置およびこれを備えた多軸加工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加工プログラム処理装置は、工具先端点として先端刃先を想定する加工プログラムに対しても、加工面に対する削り込みを発生させることなく工具姿勢を補正でき、加工面の面品位を向上するとともに、加工時間を短縮するという課題を解決するために、少なくとも2つの直線軸および少なくとも1つの回転軸を有する多軸加工機の動作を制御する加工プログラムを処理する加工プログラム処理装置であって、前記加工プログラムによって指令される工具先端点の指令位置および工具姿勢の指令角度と、工具の寸法とに基づいて、前記工具による切削面を変えることなくワークに対する工具姿勢を補正しうる補正基準点を算出する補正基準点算出部と、前記工具先端点の指令位置を前記補正基準点の位置に書き換える指令位置書換部と、を有している。
【0010】
また、本発明の一態様として、前記補正基準点の位置を簡便に算出するという課題を解決するために、前記補正基準点算出部は、下記式(1)を用いて前記補正基準点の位置を算出してもよい。
P’=P+R(α)R(β)(P’−P) …式(1)
だだし、各符号は以下を表す。
P’:補正基準点の位置
P:工具先端点(直線軸)の指令位置
R:工具姿勢を定義する回転行列
α:第1の回転軸の指令角度
β:第2の回転軸の指令角度
’−P:所定方向に向けられた工具の先端(刃先)から補正基準点までのベクトル
【0011】
さらに、本発明の一態様として、前記加工プログラム処理装置は、前記加工プログラムによって前記多軸加工機を制御しワークの加工を行う数値制御装置、前記多軸加工機で利用可能な前記加工プログラムの生成および編集を行うコンピュータ支援製造(CAM)装置、またはコンピュータ装置であってもよい。
【0012】
また、本発明に係る多軸加工機は、上述したいずれかの態様の加工プログラム処理装置を備えてなるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、工具先端点として先端刃先を想定する加工プログラムに対しても、加工面に対する削り込みを発生させることなく工具姿勢を補正でき、加工面の面品位を向上するとともに、加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る加工プログラム処理装置およびこれを備えた多軸加工機の第1実施形態を示すブロック図である。
図2】本第1実施形態における、加工プログラムの一例を示す図である。
図3】本第1実施形態の5軸加工機における直線軸3軸および回転軸2軸を示す図である。
図4】本第1実施形態において、(a)ボールエンドミルの補正基準点、および(b)当該補正基準点を基準にして傾けた状態を示す図である。
図5】本第1実施形態において、(a)スクエアエンドミルの補正基準点、および(b)当該補正基準点を基準にして傾けた状態を示す図である。
図6】本第1実施形態において、(a)ラジアスエンドミルの補正基準点、および(b)当該補正基準点を基準にして傾けた状態を示す図である。
図7】本第1実施形態において、(a)工具先端点の指令位置Pと補正基準点の位置P’との位置関係を示す図、および(b)Z軸方向を基準方向とした場合における工具の先端から補正基準点までのベクトルP’−Pを示す図である。
図8】本第1実施形態における、加工プログラムをブロックバッファに保存する処理を示すフローチャートである。
図9】本第1実施形態における、加工プログラムを補正する処理を示すフローチャートである。
図10】本発明に係る加工プログラム処理装置およびこれを備えた多軸加工機の第2実施形態を示すブロック図である。
図11】本実施例1における、ボールエンドミルの補正基準点の算出方法を示す図である。
図12】本実施例2における、スクエアエンドミルの補正基準点の算出方法を示す図である。
図13】本実施例3における、ラジアスエンドミルの補正基準点の算出方法を示す図である。
図14】5軸加工機における工具先端点制御の動作を示す図である。
図15】ボールエンドミルにおける(a)工具先端点を示す図、および(b)先端刃先を基準として工具姿勢を補正した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る加工プログラム処理装置1およびこれを備えた多軸加工機11の各実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明に係る加工プログラム処理装置1は、多軸加工機11の動作を制御する加工プログラムを処理可能な全ての装置を含む概念である。また、本発明にかかる多軸加工機11は、少なくとも2つの直線軸(例えば、X軸およびZ軸)および少なくとも1つの回転軸(例えば、B軸)を有する全ての工作機械を含む概念である。
【0016】
まず、本発明に係る加工プログラム処理装置1およびこれを備えた多軸加工機11の第1実施形態として、数値制御装置1Aおよびこれを備えた5軸加工機11Aについて説明する。本第1実施形態の数値制御装置1Aは、図1に示すように、外部記憶装置10に記憶されている加工プログラムに基づいて、5軸加工機11Aへ各種の命令信号を出力することにより5軸加工機11Aを制御し、ワークに対して様々な加工を行うためのものである。以下、各構成について詳細に説明する。なお、本発明に係る数値制御装置1Aは、いわゆるコンピュータ数値制御(CNC:Computerized Numerical Control)等の数値制御処理を実行可能な全ての装置を含む概念である。
【0017】
外部記憶装置10は、一般的なオペレーティングシステムが搭載されたパーソナルコンピュータ等によって構成されている。本第1実施形態において、外部記憶装置10は、CFカード等のメモリーカードを差し込むためのカードスロット(図示せず)を備えており、当該メモリーカード内に加工プログラムが記憶されている。そして、外部記憶装置10は、当該メモリーカードから加工プログラムを読み出し、LANケーブルで通信可能に接続された数値制御装置1Aへ供給するようになっている。
【0018】
また、加工プログラムは、CAD機能およびCAM機能を兼ね備えたCAD/CAM装置等によって作成されており、5軸加工機11Aを工具先端点制御するためのプログラム指令を含むものである。本第1実施形態において、加工プログラムは、図2に示すように、複数のブロックによって構成されており、各ブロックには、工具長補正(工具先端点制御の起動に相当)を指令するGコード(G43.3)、工具先端点の指令位置および工具姿勢の指令角度、および工具長補正のキャンセル(工具先端点制御の終了に相当)を指令するGコード(G49)等が記述されている。なお、本第1実施形態において、工具先端点の指令位置は、ワーク座標系における工具先端点の位置座標(xn、yn、zn)によって指定され、工具姿勢の指令角度は、回転軸(B軸,C軸)の移動角度(bn、cn)によって指定されている。
【0019】
5軸加工機11Aは、金属、木材、石材、樹脂等のワークに対して、旋削、中ぐり、フライス削り、穴あけ、ねじ立てなど多種類の加工を施すための工作機械である。具体的には、5軸加工機11Aは、図3に示すように、直交する直線軸3軸(X軸、Y軸、Z軸)と、回転軸2軸(B軸、C軸)とを有している。そして、これら5軸が、後述する命令信号補間部37から出力された命令信号に基づいて同時制御されることにより、工具先端点や工具姿勢を移動させ、各種の加工処理を実行するようになっている。なお、本第1実施形態では、直線軸3軸がX軸、Y軸、Z軸によって構成され、回転軸2軸がB軸、C軸によって構成されているが、これらの構成に限定されるものではなく、各軸の名称は、多軸加工機11の機械構成によって異なる。
【0020】
なお、本第1実施形態において、5軸加工機11Aは、一方の回転軸1軸(B軸)で工具ヘッドを回転させ、もう一方の回転軸(C軸)でテーブルを回転させる混合型を想定しているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、回転軸2軸が工具ヘッド側に設けられる工具回転ヘッド型や、回転軸2軸でテーブルを回転するテーブル回転型であっても本発明は適用可能である。また、本第1実施形態において、5軸加工機11Aは、数値制御装置1Aを備えてなる5軸制御マシニングセンタを想定しているが、この構成に限定されるものではなく、5軸加工機11Aと数値制御装置1Aとは別体として構成されていてもよい。
【0021】
数値制御装置1Aは、コンピュータ等によって構成されており、加工プログラムによって5軸加工機11Aを制御しワークの加工を行うものである。図1に示すように、数値制御装置1Aは、主として、各種のデータを記憶するとともに、演算処理手段3が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能する記憶手段2と、記憶手段2にインストールされた数値制御装置用プログラム1aを実行することにより、各種の演算処理を実行する演算処理手段3とを有している。以下、各構成手段について説明する。
【0022】
記憶手段2は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等で構成されており、図1に示すように、プログラム記憶部21と、ブロックバッファ22とを有している。
【0023】
プログラム記憶部21には、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)が搭載されているとともに、本第1実施形態の数値制御装置1Aを制御するための数値制御装置用プログラム1aがインストールされている。そして、演算処理手段3が、当該数値制御装置用プログラム1aを実行することにより、コンピュータを後述する各構成部として機能させるようになっている。
【0024】
なお、数値制御装置用プログラム1aの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、CD−ROMやUSBメモリ等のように、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に数値制御装置用プログラム1aを記憶させておき、当該記録媒体から直接読み出して実行してもよい。また、外部サーバ等からクラウドコンピューティング方式やASP(Application Service Provider)方式等で利用してもよい。
【0025】
ブロックバッファ22は、加工プログラムを構成する複数のブロックを保存するものである。本第1実施形態において、ブロックバッファ22は、後述する加工プログラム解析部32によって解析された各種のブロックを順次保存するようになっている。そして、各ブロックは、FIFO(ファーストインファーストアウト)方式に従って、ブロックバッファ22に格納された順番で順次処理され、メモリ残量が無くなると処理済みのブロックから順次上書きされるようになっている。
【0026】
つぎに、演算処理手段3は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成されており、記憶手段2にインストールされた数値制御装置用プログラム1aを実行することにより、図1に示すように、加工プログラム取得部31と、加工プログラム解析部32と、工具先端点判定部33と、補正基準点算出部34と、指令位置書換部35と、加工プログラム補正部36と、命令信号補間部37として機能するようになっている。以下、各構成部についてより詳細に説明する。
【0027】
加工プログラム取得部31は、加工プログラム解析部32からの要求に応じて、加工プログラムを外部記憶装置10から取得するものである。なお、本第1実施形態では、数値制御装置1Aが外部記憶装置10とがLANケーブルで通信可能に接続されているが、この構成に限定されるものではなく、ブルートゥース(登録商標)等の無線通信インターフェースを介して無線通信可能に構成されていてもよく、また、TCP/IP等の通信プロトコルによってネットワークを介して通信可能に構成されていてもよい。さらに、USBメモリ等の記録媒体を用いてデータを移動させてもよい。
【0028】
加工プログラム解析部32は、加工プログラムを解析するためのものである。本第1実施形態において、加工プログラム解析部32は、加工プログラム取得部31によって取得された加工プログラムを1ブロックずつ読み込み、記述された動作命令を解析し、解析結果としてのブロックをブロックバッファ22へ順次格納するようになっている。
【0029】
工具先端点判定部33は、加工プログラムの指令値が想定している工具先端点を判定するものである。上述したとおり、工具先端点制御においては、先端中心を工具先端点として想定する場合と、先端刃先を工具先端点として想定する場合がある。このため、工具先端点判定部33は、ブロックバッファ22内の加工プログラムや、数値制御装置1Aに設定されている各種のパラメータを参照し、工具先端点として先端刃先が想定されているか否かを判定するようになっている。
【0030】
具体的には、加工プログラムを参照する場合、工具先端点判定部33は、図2に示すように、工具先端点制御の起動指令(G43.3 Hn)に、工具の種類を指定するコード(P)、刃部の半径(d)を指定するコード(D)、および工具のボール半径またはコーナ半径(r)を指定するコード(R)等の情報が付加されている場合、工具先端点として先端刃先が想定されていると判定する。
【0031】
また、パラメータを参照する場合、工具先端点判定部33は、上述した工具先端点制御の起動指令(G43.3 Hn)によって工具先端点制御が有効になったとき、工具の種類や工具の寸法が設定されたパラメータを参照する。そして、工具先端点判定部33は、当該パラメータに基づいて指令値が指定する位置を特定し、工具先端点として先端刃先が想定されているか否かを判定するようになっている。
【0032】
補正基準点算出部34は、工具による切削面を変えることなくワークに対する工具姿勢を補正しうる補正基準点を算出するものである。当該補正基準点を有する工具としては、図4(a)に示すように、球状の先端部を有するボールエンドミルやそれにテーパー形状を付けたテーパーボールエンドミルがある。これらの工具では、図4(b)に示すように、球状部の中心位置を基準としてワークに対する工具姿勢を傾けても切削面が変わることがないため、当該球状部の中心位置が補正基準点となる。
【0033】
また、補正基準点を有する工具としては、図5(a)に示すように、角型のコーナー部を有するスクエアエンドミルやそれにテーパー形状を付けたテーパースクエアエンドミルがある。これらの工具では、図5(b)に示すように、角部を基準としてワークに対する工具姿勢を傾けても切削面が変わることがないため、当該角部が補正基準点となる。
【0034】
さらに、補正基準点を有する工具としては、図6(a)に示すように、丸みを帯びたコーナー部を有するラジアスエンドミルやそれにテーパー形状を付けたテーパーラジアスエンドミルがある。これらの工具では、図6(b)に示すように、丸みの中心位置を基準としてワークに対する工具姿勢を傾けても切削面が変わることがないため、当該丸みの中心位置が補正基準点となる。
【0035】
上述したいずれの工具においても、図7(a)に示すように、工具先端点の指令位置である点Pの位置座標に、当該点Pから補正基準点P’までのベクトルを足し合わせることによって補正基準点P’の位置座標が算出される。また、図7(b)に示すように、点Pから点P’までのベクトルは、所定方向に向けられた工具の先端(刃先)Pから補正基準点P’までのベクトルであるP’−Pを、任意の回転軸周りに加工プログラムで指定される指令角度で回転させたベクトルとして特定される。
【0036】
なお、所定方向に向けられた工具の先端(刃先)から補正基準点までのベクトルP’−Pは、工具の寸法を用いて特定される。具体的には、ボールエンドミルの場合、球状部の半径(ボール半径:r)であり、スクエアエンドミルの場合、刃部の中心から端部までの距離(刃部の半径:d)であり、ラジアスエンドミルの場合、当該刃部の半径(d)と、コーナー部の丸みの半径(コーナ半径:r)である。すなわち、上記ベクトルP’−Pは、工具の種類によって異なるため、後述する実施例1〜3で検討する。
【0037】
以上より、補正基準点算出部34は、工具先端点として先端刃先が想定されているブロックのそれぞれについて、加工プログラムによって指令される工具先端点の指令位置および工具姿勢の指令角度と、工具の寸法とに基づいて、補正基準点を算出するようになっている。具体的には、補正基準点算出部34は、下記式(1)を用いて補正基準点の位置を算出する。
P’=P+R(α)R(β)(P’−P) …式(1)
だだし、各符号は以下を表す。
P’:補正基準点の位置
P:工具先端点(直線軸)の指令位置
R:工具姿勢を定義する回転行列
α:第1の回転軸の指令角度
β:第2の回転軸の指令角度
’−P:所定方向に向けられた工具の先端(刃先)から補正基準点までのベクトル
【0038】
なお、上記式(1)におけるパラメータのうち、工具姿勢を定義する回転行列Rは、回転角度と回転中心軸とによって決定される回転行列であり、任意の単位ベクトル(n,n,n)回りの回転行列は、下記式(2)によって表される。
ただし、各符号は以下を表す。
R:任意の単位ベクトルを任意の回転軸周りに任意の回転角度で回転させる回転行列
θ:任意の回転軸の指令角度
:任意の単位ベクトルのx成分
:任意の単位ベクトルのy成分
:任意の単位ベクトルのz成分
【0039】
また、本第1実施形態では、上述したとおり、混合形(工具側B軸、テーブル側C軸、基準方向Z軸)の機械構成を有する5軸加工機11Aを想定している。この場合、R(α)はZ軸まわりの回転行列、R(β)はY軸まわりの回転行列、αは加工プログラムのC軸の指令位置、βは加工プログラムのB軸の指令位置となる。
【0040】
さらに、上記式(1)に用いられる各種のパラメータは、ワークと工具との相対的な位置関係によって決定されるものである。このため、多軸加工機11の装置構成、工具軸(主軸)の基準方向の向き、および工具の種類等に応じて様々な状況があり得るが、各パラメータを適宜設定することにより、任意の状況に対して上記式(1)は適用可能である。
【0041】
指令位置書換部35は、工具先端点の指令位置を補正基準点の位置に書き換えるものである。本第1実施形態において、指令位置書換部35は、ブロックバッファ22内のブロックのうち、補正基準点が算出された各ブロックについて、工具先端点の指令位置を補正基準点の位置に自動的に書き換える。これにより、工具姿勢を補正する場合、補正基準点が基準となるため、工具による切削面が変化せず、ワークの加工面に対する削り込みが発生しない。
【0042】
また、本第1実施形態において、指令位置書換部35は、工具先端点の指令位置を補正基準点の位置に書き換えた場合、各ブロックで指令される5軸座標変換のパラメータ設定を適宜変更するようになっている。例えば、ボールエンドミルを使用する場合であれば、工具先端点の指令位置と補正基準点の位置との距離分だけ、各ブロックで指令される工具長を短く設定するようになっている。これにより、ワークを実際に加工する点の位置を変えることなく、5軸加工機11Aによって制御される点だけが内側にオフセットされる。
【0043】
加工プログラム補正部36は、各ブロックにおける工具先端点の指令位置および/または工具姿勢の指令角度を補正するものである。本第1実施形態において、加工プログラム補正部36は、指令位置書換部35によって書き換えられた補正基準点での新たな指令位置について、指令位置や指令角度を補正する。また、加工プログラム補正部36は、指令位置書換部35によって書き換えられていない場合には、元の指令位置について、指令位置や指令角度を補正する。なお、具体的な補正方法としては、上述した特許文献1や、本願発明者らによる特願2016−94687号に係る工具姿勢の補正等、各種の補正が適用可能である。
【0044】
なお、本第1実施形態において、加工プログラム補正部36は、1ブロックずつ順次補正するようになっている。しかしながら、適用する補正方法によっては、補正対象のブロックの前後における複数のブロックを用いて補正する場合もある。この場合には、指令位置書換部35によって書き換えられたブロックを一旦ブロックバッファ22に保存し、当該ブロックバッファ22から必要なブロックを複数読み出すようにしてもよい。
【0045】
また、加工プログラム補正部36は、工具先端点の指令位置および工具姿勢の指令角度のうち、いずれか一方のみを補正してもよく、双方を補正してもよい。また、回転軸が複数ある場合には、いずれか一つまたは二以上の回転軸の指令角度を補正してもよく、全ての回転軸の指令角度を補正してもよい。
【0046】
命令信号補間部37は、5軸加工機11Aへの命令信号を補間処理し、当該命令信号を実行させるものである。本第1実施形態において、命令信号補間部37は、ブロックバッファ22に格納されている補正後のブロックを順次読み出して各軸の指令位置を求める補間演算を実行する。そして、各軸の移動指令量を、X軸サーボアンプ、Y軸サーボアンプ、Z軸サーボアンプ、B軸サーボアンプおよびC軸サーボアンプのそれぞれへ出力し、当該ブロックに応じた動作を5軸加工機11Aに実行させるようになっている。
【0047】
つぎに、本第1実施形態の数値制御装置1Aおよびこれを備えた5軸加工機11Aによる作用について説明する。
【0048】
まず、本第1実施形態の数値制御装置1Aによって5軸加工機11Aを制御しワークの加工を行う場合、図8に示すように、加工プログラム取得部31が、外部記憶装置10から加工プログラムを取得する(ステップS1)。加工プログラムを外部記憶装置10に保存することで、数値制御装置1A側のメモリを増設することなく、ファイルサイズの大きな加工プログラムを処理することが可能となる。
【0049】
つぎに、加工プログラム解析部32が、加工プログラム取得部31によって取得された加工プログラムを解析し(ステップS2)、その解析結果としてのブロックをブロックバッファ22へ順次格納する(ステップS3)。これにより、ブロックバッファ22には、工具先端点(直線軸3軸)の指令位置、工具姿勢(回転軸2軸)の指令角度等を含む各ブロックが格納される。
【0050】
上述したステップS1〜S3の各処理は、加工プログラムを構成する全ブロックが取得されるまで繰り返された後(ステップS4)、終了する。また、これらの処理と同時並行して、図9に示す加工プログラムの補正処理が実行される。そして、補正されたブロックから順次、命令信号補間部37によって命令信号へ補間処理された後、5軸加工機11Aへ出力されて実行されることとなる。
【0051】
具体的には、図9に示すように、パラメータnが1に初期化されると(ステップS11)、ブロックバッファ22から第nブロックが取得される(ステップS12)。そして、当該第nブロックについて、工具先端点判定部33が、工具先端点の指令値が先端刃先を想定しているか否かを判定する(ステップS13)。当該判定の結果、指令値が先端中心を想定している場合(ステップS13:NO)、指令位置を書き換えなくても、工具姿勢の補正による削り込みは発生しないため、後述する補正処理(ステップS16)へ進む。
【0052】
一方、ステップS13における判定の結果、指令値が先端刃先を想定している場合(ステップS13:YES)、補正基準点算出部34が、工具先端点の指令位置および工具姿勢の指令角度と、工具の寸法とに基づいて、補正基準点を算出する(ステップS14)。これにより、使用する工具の種類に関わらず、工具による切削面を変えることなくワークに対する工具姿勢を補正しうる補正基準点が算出される。
【0053】
また、本第1実施形態において、補正基準点算出部34は、補正基準点の算出に際して、上記式(1)を使用する。これにより、5軸加工機11Aの装置構成、工具軸(主軸)の基準方向の向き、および工具の種類に応じた各種のパラメータを上記式(1)に適宜代入するだけで、補正基準点の位置が簡便に算出される。
【0054】
つづいて、指令位置書換部35が、工具先端点の指令位置をステップS14で算出された補正基準点の指令位置に書き換える(ステップS15)。これにより、指令値が先端刃先であることを想定した加工プログラムであっても、工具姿勢の補正による悪影響を受けない加工プログラムに自動的に書き換えられる。
【0055】
つぎに、加工プログラム補正部36が、工具先端点の指令位置および/または工具姿勢の指令角度を補正する(ステップS16)。このとき、先端刃先が想定されていた指令値については、全て補正基準点に書き換えられている。このため、当該補正基準点を基準として工具姿勢が補正されるため、工具による切削面が変化せず、ワークの加工面に対する削り込みの発生が防止される。
【0056】
また、加工プログラムを補正することにより、工具姿勢のブレが解消されて加工面の面品位が向上するとともに、加工経路上の移動方向がきれいに揃うため、加工時間が短縮する。さらに、指令角度の補正量を大きくしても工具による切削面は変化しないため、工具の切削面が変わらない範囲で、補正量の制限を緩和することができる。
【0057】
つづいて、パラメータnがインクリメントされ(ステップS17)、当該パラメータnが全ブロック数を超えたか否かが判定される(ステップS18)。当該判定の結果、全ブロック数を超えていなければ(ステップS18:NO)、再びステップS12に戻り、上述したステップS12からステップS17までの処理を繰り返す。一方、パラメータnが全ブロック数を超えていれば(ステップS18:YES)、本処理を終了する。なお、本第1実施形態では、1ブロックずつ処理しているが、この構成に限定されるものではなく、複数ブロックを使用して補正してもよい。
【0058】
なお、上述した各処理が実行されるのと同時並行して、命令信号補間部37は、ブロックバッファ22内のブロックを順次読み出して補間処理し、5軸加工機11Aに命令信号を出力する。これにより、補正前のブロックが順次先読みされて補正されながら、命令信号補間部37が補正後のブロックに基づく命令信号を順次出力することが可能となる。
【0059】
以上のような本第1実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1.工具先端点として先端刃先を想定する加工プログラムに対しても、加工面に対する削り込みを発生させることなく工具姿勢を補正でき、加工面の面品位を向上するとともに、加工時間を短縮することができる。
2.加工プログラムの補正量の制限を緩和することができ、補正による効果を最大限に享受することができる。
3.工具先端点として先端刃先を想定する加工プログラムを生成しても、自動的に補正基準点が算出されて書き換えられるため、ユーザの好みに応じて先端刃先を選択し易くすることができる。
4.形状が異なる工具であっても、補正基準点の位置を簡便に算出することができる。
【0060】
つぎに、本発明に係る加工プログラム処理装置1およびこれを備えた多軸加工機11の第2実施形態として、コンピュータ支援製造装置(以下、「CAM装置」という)1Bおよびこれを備えた5軸加工機11Aについて説明する。なお、第2実施形態の構成のうち、上述した第1実施形態と同一もしくは相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0061】
本第2実施形態の特徴は、多軸加工機11で利用可能な加工プログラムの生成および編集を行うCAM装置1Bに、上述した工具先端点判定部33、補正基準点算出部34および指令位置書換部35を実装した点にある。
【0062】
本第2実施形態のCAM装置1Bは、図10に示すように、コンピュータ支援設計装置(以下、「CAD装置12」という)で生成されたCADデータに基づいて、5軸加工機11Aで利用可能な加工プログラムの生成および編集を行うためのものである。以下、各構成について説明する。
【0063】
CAD装置12は、一般的なオペレーティングシステムが搭載されたパーソナルコンピュータ等によって構成されている。本第2実施形態において、CAD装置12は、図示しない表示手段や入力手段を用いることにより、加工しようとする工作物の3次元形状を定義するCADデータを生成するようになっている。
【0064】
CAM装置1Bは、一般的なオペレーティングシステムが搭載されたコンピュータ等によって構成されている。本第2実施形態において、CAM装置1Bは、図10に示すように、主として、各種のデータを記憶するとともに、演算処理手段3が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能する記憶手段2と、記憶手段2にインストールされたCAM用プログラム1bを実行することにより、各種の演算処理を実行する演算処理手段3とを有している。以下、各構成手段について説明する。
【0065】
なお、本第2実施形態において、CAM装置1Bは、CAD装置12と別体として構成されているがこの構成に限定されるものではない。すなわち、CAD装置12によるCADデータ生成機能を兼ね備えたCAM装置1Bとして構成してもよい。また、本第2実施形態において、CAM装置1Bは、5軸加工機11Aに加工プログラムを転送可能に接続されているが、この構成に限定されるものではなく、スタンドアローンとしてもよい。
【0066】
記憶手段2は、図10に示すように、プログラム記憶部21と、加工プログラム記憶部23とを有している。プログラム記憶部21には、本第2実施形態のCAM装置1Bを制御するためのCAM用プログラム1bがインストールされている。そして、演算処理手段3が、当該CAM用プログラム1bを実行することにより、コンピュータを後述する各構成部としてとして機能させるようになっている。
【0067】
加工プログラム記憶部23は、CAM装置1Bによって生成および編集された加工プログラムを記憶するものである。本第2実施形態において、加工プログラム記憶部23は、後述する加工プログラム生成部39によって生成された加工プログラム、図示しない加工プログラム編集部によって編集された加工プログラム、および加工プログラム補正部36によって補正された後の加工プログラムを記憶するようになっている。
【0068】
つぎに、演算処理手段3は、記憶手段2にインストールされたCAM用プログラム1bを実行することにより、図10に示すように、工具経路データ生成部38と、加工プログラム生成部39と、工具先端点判定部33と、補正基準点算出部34と、指令位置書換部35と、加工プログラム補正部36と、加工プログラム転送部40として機能するようになっている。以下、各構成部について説明する。
【0069】
工具経路データ生成部38は、メインプロセッサで構成されており、CADデータから工具経路データ(CLデータ)を生成するものである。本第2実施形態において、工具経路データ生成部38は、CAD装置12で生成された工作物のCADデータを取得するとともに、経路生成情報(工具形状、面に対する工具姿勢、送りピッチ等)を取得する。そして、工具経路データ生成部38は、これらCADデータと経路生成情報とからワーク座標系における各工具移動位置の工具中心点を算出し、工具軸(主軸)の方向を表す工具軸ベクトルを算出するようになっている。
【0070】
また、5軸加工機11Aでは、工具が工作物に対して任意の姿勢をとれることから、主軸側(主軸、工具、チャック等)とテーブル側(テーブル、治具、工作物等)との干渉が問題となる。このため、工具経路データ生成部38は、当該干渉の有無を確認し、干渉がある場合は、当該干渉を回避するように工具姿勢等を変更する。以上のようにして、ワーク座標系における工具経路データ(CLデータ)が生成される。
【0071】
加工プログラム生成部39は、ポストプロセッサで構成されており、工具経路データから加工プログラムを生成するものである。本第2実施形態において、加工プログラム生成部39は、工具経路データ生成部38によって生成された工具経路データを取得するとともに、工作機械ごとに予め設定された工作機械データを取得する。そして、これら工具経路データおよび工作機械データに基づいて、加工プログラム生成部39は、工具経路データを構成する工具軸ベクトルから回転軸の回転角度を算出する。
【0072】
続いて、加工プログラム生成部39は、当該回転角度および前記ワーク座標系における工具先端点に基づいて、当該回転軸が回転した後の絶対座標系における工具先端点を算出する。そして、加工プログラム生成部39は、工具経路を幾つかに分割して位置偏差を許容値以下に抑えるリニアライゼーション処理を行った後、予め設定された加工条件データに基づいて、送り速度制御処理、主軸回転速度制御処理を順次実行する。以上のようにして、多軸加工機11で利用可能な加工プログラム(NCデータ)が生成され、当該加工プログラムを構成する複数のブロックが加工プログラム記憶部23に保存されるようになっている。
【0073】
工具先端点判定部33は、上述した第1実施形態と同様、加工プログラムの指令値が想定している工具先端点を判定するものである。本第2実施形態において、工具先端点判定部33は、加工プログラム記憶部23に記憶されている加工プログラムを参照し、工具先端点として先端刃先が想定されているか否かを判定するようになっている。
【0074】
補正基準点算出部34は、上述した第1実施形態と同様、工具による切削面を変えることなくワークに対する工具姿勢を補正しうる補正基準点を算出するものである。本第2実施形態において、補正基準点算出部34は、工具先端点として先端刃先が想定されているブロックのそれぞれについて、補正基準点を算出するようになっている。
【0075】
指令位置書換部35は、上述した第1実施形態と同様、工具先端点の指令位置を補正基準点の位置に書き換えるものである。本第2実施形態において、指令位置書換部35は、補正基準点が算出されたブロックのそれぞれについて、当該ブロックの指令位置を補正基準点の位置に書き換えるようになっている。
【0076】
加工プログラム補正部36は、上述した第1実施形態と同様、各ブロックにおける指令位置および/または指令角度を補正するものである。本第2実施形態において、加工プログラム補正部36は、各ブロックにおける指令位置および/または指令角度について、各種の補正を行うようになっている。
【0077】
なお、本第2実施形態では、補正処理の終了後、補正前の指令位置や指令角度が、補正後の指令位置や指令角度によって上書きされる。そして、補正基準点に書き換えられたブロックについては、補正後の指令位置に基づいて、再度、工具先端点(先端刃先)の指令位置に変換されるようになっている。
【0078】
加工プログラム転送部40は、CAM装置1Bによって生成、編集または補正された加工プログラムを多軸加工機11へ転送するものである。本第2実施形態において、加工プログラム転送部40は、加工プログラム補正部36によって、各ブロックの指令位置や指令角度が補正された加工プログラムを図示しない有線通信手段または無線通信手段によって転送するようになっている。なお、上述したとおり、CAM装置1Bをスタンドアローンで使用する場合、加工プログラム転送部40を機能させる必要はない。
【0079】
以上のような本第2実施形態のCAM装置1Bおよびこれを備えた5軸加工機11Aによれば、工具先端点判定部33によって、先端刃先を想定していると判定されたブロックについては、補正基準点算出部34によって補正基準点が算出され、指令位置書換部35によって工具先端点の指令値が補正基準点の位置に書き換えられる。このため、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、本発明に係る工具先端点判定機能、補正基準点算出機能および指令位置書換機能をCAM装置1Bに実装することができる。
【0080】
なお、本発明に係る加工プログラム処理装置1は、上述した第1実施形態の数値制御装置1Aや、第2実施形態のCAM装置1B以外にも、パーソナルコンピュータやタブレット等の独立したコンピュータ装置によって実施することができる。この場合、当該コンピュータ装置には、上述した工具先端点判定部33、補正基準点算出部34、指令位置書換部35、加工プログラム補正部36および加工プログラム転送部40が実装される。
【0081】
つぎに、本発明に係る加工プログラム処理装置1およびこれを備えた多軸加工機11の具体的な実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の各実施例によって示される特徴に限定されるものではない。
【0082】
なお、以下の各実施例では、多軸加工機11として、図2に示すような混合形の5軸加工機11Aを想定した。そして、上述した補正基準点の一般的な算出式(1)を刃先の形状が異なる工具ごとに具体化する検討を行った。
【実施例1】
【0083】
本実施例1では、上述したボールエンドミルおよびテーパーボールエンドミルについて、補正基準点の位置を算出する算出式を検討した。ボールエンドミルの場合、上記式(1)におけるベクトルP’−P(Z軸に向けられた工具の先端刃先Pから補正基準点P’までのベクトル)は、球状部のボール半径をrとした場合、図11に示すように、(0,0,r)で表される。
【0084】
したがって、多軸加工機11が、直交する3つの直線軸(X軸,Y軸,Z軸)と、2つの回転軸(B軸,C軸)を有する5軸加工機11Aであって、工具がZ軸方向に向けられたボールエンドミルまたはテーパーボールエンドミルの場合、上述した一般式(1)は、上記式(2)を用いて、下記式(3)によって表される。
ただし、各符号は以下を表す。
P’x:補正基準点のX座標
P’y:補正基準点のY座標
P’z:補正基準点のZ座標
Px:工具先端点のX座標
Py:工具先端点のY座標
Pz:工具先端点のZ座標
Pb:B軸の指令角度
Pc:C軸の指令角度
r:ボール半径
【0085】
以上のような本実施例1によれば、ボールエンドミルまたはテーパーボールエンドミルを装着した5軸加工機11Aにおいては、上記式(3)を用いることで、補正基準点の位置が容易に算出されることが示された。
【実施例2】
【0086】
本実施例2では、上述したスクエアエンドミルおよびテーパースクエアエンドミルについて、補正基準点の位置を算出する算出式を検討した。スクエアエンドミルの場合、上記式(1)におけるベクトルP’−P(Z軸に向けられた工具の先端刃先Pから補正基準点P’までのベクトル)は、刃部の半径をdとした場合、図12に示すように、(d,0,0)で表される。
【0087】
したがって、多軸加工機11が、直交する3つの直線軸(X軸,Y軸,Z軸)と、2つの回転軸(B軸,C軸)を有する5軸加工機11Aであって、工具がZ軸方向にスクエアエンドミルまたはテーパースクエアエンドミルの場合、上述した一般式(1)は、上記式(2)を用いて、下記式(4)によって表される。
ただし、各符号は以下を表す。
P’x:補正基準点のX座標
P’y:補正基準点のY座標
P’z:補正基準点のZ座標
Px:工具先端点のX座標
Py:工具先端点のY座標
Pz:工具先端点のZ座標
Pb:B軸の指令角度
Pc:C軸の指令角度
d:刃部の半径
【0088】
以上のような本実施例2によれば、スクエアエンドミルまたはテーパースクエアエンドミルを装着した5軸加工機11Aにおいては、上記式(4)を用いることで、補正基準点の位置が容易に算出されることが示された。
【実施例3】
【0089】
本実施例3では、上述したラジアスエンドミルおよびテーパーラジアスエンドミルについて、補正基準点の位置を算出する算出式を検討した。ラジアスエンドミルの場合、上記式(1)におけるベクトルP’−P(Z軸に向けられた工具の先端刃先Pから補正基準点P’までのベクトル)は、刃部の半径をdとし、丸みのコーナ半径をrとした場合、図13に示すように、(d−r,0,r)で表される。
【0090】
したがって、多軸加工機11が、直交する3つの直線軸(X軸,Y軸,Z軸)と、2つの回転軸(B軸,C軸)を有する5軸加工機11Aであって、工具がZ軸方向に向けられたラジアスエンドミルまたはテーパーラジアスエンドミルの場合、上述した一般式(1)は、上記式(2)を用いて、下記式(5)によって表される。
だだし、各符号は以下を表す。
P’x:補正基準点のX座標
P’y:補正基準点のY座標
P’z:補正基準点のZ座標
Px:工具先端点のX座標
Py:工具先端点のY座標
Pz:工具先端点のZ座標
Pb:Y軸の指令角度
Pc:Z軸の指令角度
d:刃部の半径
r:コーナ半径
【0091】
以上のような本実施例3によれば、ラジアスエンドミルまたはテーパーラジアスエンドミルを装着した5軸加工機11Aにおいては、上記式(5)を用いることで、補正基準点の位置が容易に算出されることが示された。
【0092】
なお、本発明に係る加工プログラム処理装置1およびこれを備えた多軸加工機11は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、上述した各実施形態では、工具として、ボールエンドミル、テーパーボールエンドミル、スクエアエンドミル、テーパースクエアエンドミル、ラジアスエンドミル、テーパーラジアスエンドミルを例示しているが、これらに限定されるものではなく、工具姿勢を傾けても工具による切削面が変わることのない補正基準点が一意に特定される刃部を有する全ての工具に対して、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 加工プログラム処理装置
1A 数値制御装置
1a 数値制御装置用プログラム
1B コンピュータ支援製造(CAM)装置
1b CAM用プログラム
2 記憶手段
3 演算処理手段
10 外部記憶装置
11 多軸加工機
11A 5軸加工機
12 コンピュータ支援設計(CAD)装置
21 プログラム記憶部
22 ブロックバッファ
23 加工プログラム記憶部
31 加工プログラム取得部
32 加工プログラム解析部
33 工具先端点判定部
34 補正基準点算出部
35 指令位置書換部
36 加工プログラム補正部
37 命令信号補間部
38 工具経路データ生成部
39 加工プログラム生成部
40 加工プログラム転送部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15